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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01T
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01T
管理番号 1313662
審判番号 不服2015-10545  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-03 
確定日 2016-04-21 
事件の表示 特願2013-223732「放射線画像撮影装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月10日出願公開、特開2014- 62908〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年5月30日(優先権主張 平成12年6月27日)に出願した特願2001-162568号(以下、「親出願」という。)の一部を平成16年5月6日に特願2004-137312号(以下、「子出願」という。)として分割し、さらに、子出願の一部を平成23年9月2日に特願2011-191695号(以下、「孫出願」という。)として分割し、さらに、孫出願の一部を平成24年6月25日に特願2012-142175号(以下、「ひ孫出願」という。)として分割し、さらに、ひ孫出願の一部を平成25年10月28日に新たな特許出願としたものであって、平成26年6月30日付けで拒絶理由が通知され、同年9月8日付けで、意見書及び手続補正書が提出され、平成27年2月27日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年6月3日付けで拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同時に手続補正がされたものである。

第2 平成27年6月3日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年6月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正について
本件補正は、本件補正により補正される前の特許請求の範囲について、下記アを、下記イと補正するものを含む。
ア 本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
被写体を透過した放射線を検出する光電変換素子を二次元状に配列して実質的に方形をなす検出面を有する検出手段と、
前記検出手段を内包する筐体と、
を有するカセッテ型の放射線画像撮影装置であって、
前記検出手段の前記検出面の反対側に位置する前記筐体の面は、前記筐体の端に向かって前記筐体の厚みが小さくなるように前記筐体の厚み方向に傾斜する傾斜面を、前記筐体の両端部にそれぞれ有することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記検出手段からの電気信号を読み取る読取回路部と、前記検出手段を駆動する駆動回路部と、前記読取回路部及び前記駆動回路部に電力を供給する電源と、を更に有し、
前記筐体は、前記検出手段、前記読取回路部、前記駆動回路部、及び、前記電源を内包し、
前記検出面は実質的に方形をなし、前記読取回路部は前記検出面の4辺のうち対向する第1辺及び第2辺のうちの少なくとも一方の側で前記筐体に内包され、前記駆動回路部は前記4辺のうち前記第1辺及び前記第2辺と異なる第3辺及び第4辺のうちの一方の側で前記筐体に内包され、前記電源は前記第3辺及び第4辺のうちの一方の側で前記読取回路部の方が前記駆動回路部よりも距離が長くなるように前記筐体に内包されることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記検出面は実質的に長方形をなし、前記読取回路部は前記検出面の長辺である前記第1辺及び前記第2辺の側で前記筐体に内包され、前記駆動回路部及び前記電源部は前記検出面の短辺である前記第3辺及び前記第4辺のうちの一方の側で前記筐体に内包されることを特徴とする請求項2記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記読取回路部は前記検出面の2つの短辺の各々に並ぶ領域に配置され、前記検出面をその長辺方向に実質的に2等分してできる各領域を、該各領域に隣接する読取回路部が読み取るように構成したことを特徴とする請求項2又は3記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記筐体は、前記第3辺及び前記第4辺のうちの他方の側に把手部を有し、
前記把手部は前記筐体に設けられた穴部から構成されることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記筐体の前記把手部側の一辺において、前記検出面の反対側に位置する前記筐体の底面が厚み方向に凹形状であることを特徴とする請求項5に記載の放射線画像撮影装置。」

イ 本件補正後の特許請求の範囲(下線は、補正箇所を示す。)
「【請求項1】
被写体を透過した放射線を検出する光電変換素子を二次元状に配列して実質的に方形をなす検出面を有する検出手段と、
前記検出手段を内包する筐体と、
を有するカセッテ型の放射線画像撮影装置であって、
前記筺体は、前記検出手段の前記検出面に対して法線方向から見た外形が略方形であり、前記検出手段の前記検出面の反対側に位置する前記筐体の面は、前記筐体の端に向かって前記筐体の厚みが小さくなるように前記筐体の厚み方向に傾斜する傾斜面を、前記筐体の両端部にそれぞれ有することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記検出手段からの電気信号を読み取る読取回路部と、前記検出手段を駆動する駆動回路部と、前記読取回路部及び前記駆動回路部に電力を供給する電源と、を更に有し、
前記筐体は、前記検出手段、前記読取回路部、前記駆動回路部、及び、前記電源を内包し、
前記検出面は実質的に方形をなし、前記読取回路部は前記検出面の4辺のうち対向する第1辺及び第2辺のうちの少なくとも一方の側で前記筐体に内包され、前記駆動回路部は前記4辺のうち前記第1辺及び前記第2辺と異なる第3辺及び第4辺のうちの一方の側で前記筐体に内包され、前記電源は前記第3辺及び第4辺のうちの一方の側で前記読取回路部の方が前記駆動回路部よりも距離が長くなるように前記筐体に内包されることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記検出面は実質的に長方形をなし、前記読取回路部は前記検出面の長辺である前記第1辺及び前記第2辺の側で前記筐体に内包され、前記駆動回路部及び前記電源部は前記検出面の短辺である前記第3辺及び前記第4辺のうちの一方の側で前記筐体に内包されることを特徴とする請求項2記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記読取回路部は前記検出面の2つの短辺の各々に並ぶ領域に配置され、前記検出面をその長辺方向に実質的に2等分してできる各領域を、該各領域に隣接する読取回路部が読み取るように構成したことを特徴とする請求項2又は3記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記筐体は、前記第3辺及び前記第4辺のうちの他方の側に把手部を有し、
前記把手部は前記筐体に設けられた穴部から構成されることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記筐体の前記把手部側の一辺において、前記検出面の反対側に位置する前記筐体の底面が厚み方向に凹形状であることを特徴とする請求項5に記載の放射線画像撮影装置。」

2.新規事項の有無及び補正の目的要件
本件補正後の請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項1に係る発明の「筐体」について「前記検出手段の前記検出面に対して法線方向から見た外形が略方形であ」る点を特定するものであって、本願の願書に最初に添付した明細書の【0051】、図面の図5等の記載から、上記補正は、当初明細書に記載した事項の範囲内においてするものと認められる。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であって、本件補正のうち、補正後の請求項1に係る補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。

そこで、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項)を、進歩性(特許法第29条第2項)について検討する。

3.本件補正発明の進歩性について
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記「1.イ」の請求項1に記載されたとおりのものと認める。

(2)引用例1、2の記載
ア 引用例1について
原査定の拒絶理由に引用され、親出願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-131500号公報(以下、「引用例1」という。)には、「カセッテ型放射線画像読取装置」(発明の名称)について、次の記載がある(下線は当審が付与した。以下、同じ。)。
(引1ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、カセッテ型放射線画像読取装置に関する。」
(引1イ)「【0012】
【課題を解決するための手段】この発明に係るカセッテ型放射線画像読取装置は、照射された放射線の強度に応じて2次元的に配列された複数の検出素子で画像データを生成して放射線画像の読み取りを行う撮像パネルと、撮像パネルから読み取られた画像データを記憶する着脱可能な記憶手段と、撮像パネルでの放射線画像の読み取りと記憶手段での画像データの記憶処理を制御する制御手段と、撮像パネルと記憶手段と制御手段を駆動するための電力を供給する電源手段とを有するものである。また、警告を発する報知手段を設け、制御手段では、記憶手段に所定量の画像データが記憶されたことを検出したとき、報知手段を制御して警告を発するものである。」
(引1ウ)「【0014】
【発明の実施の形態】次に、この発明の実施の一形態について図を用いて詳細に説明する。図1は、放射線画像撮像システムの構成を示す図である。図1において、放射線発生装置10から放射された放射線は、被写体5を通してカセッテ型放射線画像読取装置(以下「放射線画像読取装置」という)20の撮像パネルに照射される。放射線画像読取装置20では、照射された放射線の強度に基づいて画像データが生成される。コントローラ60では、放射線画像読取装置20から供給された画像データを用いて画質の良好な放射線画像の表示や出力等が行われる。
【0015】図2は放射線画像読取装置20の構造を示す図である。照射された放射線の強度に応じて画像データを生成して出力する撮像パネル21は、炭素繊維等を用いて構成された筐体40に収納されている。この撮像パネル21は、照射された放射線の強度に応じて蓄積された電荷を読み出す走査駆動回路24や蓄積された電荷に基づき画像データを生成して出力する信号選択回路26を有している。また、放射線画像読取装置20には、放射線画像読取装置20の動作を制御する制御回路28、書き換え可能な読み出し専用メモリ(例えばフラッシュメモリ)等を用いることにより撮像パネル21から出力された画像データを記憶すると共に着脱可能とされたメモリ29、放射線画像読取装置20の動作を切り換えるための操作部30、放射線の照射を検出するセンサ31、放射線画像の撮影準備の完了やメモリ29に所定量の画像データが書き込まれたことを示す表示等を表示するための表示部32、撮像パネル21を駆動して画像データを得るために必要とされる電力を供給する電源部33、放射線発生装置10と放射線画像読取装置20の動作を同期させるための通信用のコネクタ34が設けられている。また、撮像パネル21の放射線照射面側には、放射線の散乱成分を吸収するためのグリッド35が必要に応じて配設されている。さらに、放射線画像読取装置20の持ち運びや放射線画像の撮影時の位置調整を容易とするため把手42が筐体40に設けられている。」
(引1エ)「【0070】なお、撮像パネルは、照射された放射線の強度に応じた電荷を光導電層で生成し、この電荷を2次元状に配列された多数の電荷蓄積コンデンサで蓄積し、この蓄積された電荷を読み出して画像データを生成するものに限られるものではなく、検出用デバイスを他のものに変えて構成することで、様々な放射線画像読取装置とすることができる。例えば照射された放射線をシンチレータ等の蛍光体によって光エネルギーに変換し、この光エネルギーをフォトダイオードで読み取って画像データを生成する放射線画像読取装置であっても良い。」
(引1オ)「【0071】
【発明の効果】この発明によれば、照射された放射線の強度に応じて2次元的に配列された複数の検出素子で画像データが生成されて着脱可能とされた記憶手段に記憶される。このため、撮影終了後にカセッテ型放射線画像読取装置から記憶手段を取り外して放射線画像の表示や出力を行うコントローラに装着することにより画像データの供給を容易に行うことができ、カセッテ型放射線画像読取装置と放射線画像の表示や出力を行うコントローラを接続しなくとも簡単に良好な放射線画像を得ることができる。」
(引1カ)図2


イ 引用例2について
親出願の優先日前に頒布された刊行物である米国特許第5594774号明細書(以下、「引用例2」という。)には、「HOLDER FOR RECEIVING A SHEET-LIKE MEDIUM FOR X-RAY IMAGES(X線画像用シート状媒体を収容するホルダ)」(発明の名称)について、次の記載がある(英文の後の括弧内の日本語は当審による仮訳。)。
(引2ア)「BACKGROUND OF THE INVENTION(発明の背景)
The present invention concerns a holder for retaining a sheet-like, X-ray sensitive medium of the type used in making X-ray pictures.(この発明は、X線写真を作成するために用いられる、シート状の、X線に感受性のある媒体を保持するためのホルダに関する。)」(1欄4?8行)
(引2イ)「X-rays are employed in many fields, in non-destructive materials testing for example and especially for medical diagnoses. Medical X-ray pictures must be produced rapidly, especially in emergencies. Mobile X-ray apparatus is usually employed for bedridden or wounded patients. Such apparatus is positioned over the patient being radiographed and the loaded cassette is positioned beneath the patient. A bedridden patient accordingly has to be lifted in order to slide the cassette in under him or her. The cassette must then be positioned correctly in relation to the regions being imaged. Experience demonstrates that conventional cassettes are difficult to slide in under a patient and, once there, to position correctly for exposure. The cassette is of course also difficult to remove once the exposure has been made. Cassettes are sometimes severely stressed mechanically by heavy patients, and can even break as a result.(X線は多くの分野、例えば、非破壊的な材料検査、特に医療診断に用いられている。医療用のX線写真は、速やかに作成されなければならず、特に緊急時には速やかに作成されなければならない。可搬のX線装置は、たいてい、寝たきり又はケガをした患者に対して用いられる。そのような装置は、X線撮影される患者の上方に配置され、フィルムが充填されたカセッテが患者の下に置かれる。したがって、寝たきりの患者は、彼又は彼女の下にカセッテを滑り込ませるために、持ち上げられなければならない。カセッテは、その後、画像化かる領域に応じて正確に位置決めされなければならない。経験的には、従来のカセッテは、患者の下に滑り込ませるのが難しく、患者の下に入ると、撮影のために正しく位置決めすることが難しい。もちろん、カセッテは、撮影された後に、取り除くことも難しい。カセッテには、時々、体重の大きい患者によって強い圧力がかかり、その結果壊れることもありえる。)」(1欄26?42行)
(引2ウ)「A principal object of the present invention is to provide a mechanically robust holder for receiving a sheet-like medium which will allow the production of very high-quality X-ray images of subjects that move very little, if at all.(この発明の基本的な目的は、動くとしてもほとんど動かない被写体の高品質のX線画像を作成することを可能にする、機械的に安定したホルダを提供することである。)
This object, as well as other objects which will become apparent from the discussion that follows, are achieved, in accordance with the present invention, by providing a holder which comprises:
a) an inner cassette that can be opened to receive the sheet-like medium and thereafter closed, the inner cassette being lightproof when closed; and
b) an outer cassette having a low-friction shape and surface and having a compartment for holding the inner cassette.(この目的は、以後の議論から明らかになる目的とともに、この発明によって、以下を含むホルダによって、達成される。
a)シート状の媒体を収容するために開かれ、その後、閉じられる内部カセッテであって、閉じられると光を通さない内部カセッテ、及び、
b)摩擦の少ない形状及び表面を有し、内部カセッテを保持するための区画を有する外部カセッテ。)
The holder in accordance with the present invention thus comprises two cassettes, one fitting inside the other. The inner cassette can be a conventional X-ray cassette and the outer cassette more or less a cover that protects it. The outer cassette protects the inner cassette mechanically from damage and visually from contamination. Visual protection is particularly important in relation to X-ray pictures needed in medical emergencies because victims are often brought to the hospital covered in blood. The protective outer cassette keeps the sensitive inner cassette clean. Again, since the surface of the outer cassette is very smooth, it is easier to slide in under the subject and to position correctly with respect to the region of interest.(したがって、この発明に関するホルダは、2つのカセッテを有し、1つは、もう一つの内部に収まるような寸法になっている。内部カセッテは、従来からあるX線カセッテであり、外部カセッテは、それを守る、事実上のカバーである。外部カセッテは、内部カセッテを衝撃から機械的に保護し、汚染から視覚的に保護する。視覚的な保護は、医学的な緊急事態に必要となるX線写真において特に重要となる。なぜかというと、被害者は、しばしば血まみれになって病院に運ばれてくるからである。この保護用の外部カセッテは、敏感な内部カセッテを清潔に保つ。繰り返すと、外部カセッテの表面はとても滑らかなので、被写体の下に滑り込ませ、興味がある対象に応じて、正確に位置決めすることが比較的易しい。)
Another advantage of the present invention is that the outer surface of the outer cassette has no sharp edges. It also has finger grips that help to position it beneath the patient. (この発明の、他の有利な点は、外部カセッテの外部表面には、とがった縁がないことである。患者の下に、外部カセッテを位置決めするのに役立つ、把手もある。)」(1欄45行?2欄9行)
(引2エ)「FIG. 6 illustrates another embodiment of the present invention. The finger grips 9 on the outer cassette 5 are in the form of recesses in the top 6 and bottom 8. The convex edge 17 of the outer cassette 5 slopes slightly out. Such an outer cassette 5 has even fewer sharp edges. A label 18 on the outside of the outer cassette 5 identifies the bottom 8. The scatter grid 14 in this embodiment is cemented into a recess 32 in the outer surface of bottom 8. It could just as well be accommodated in recesses in the inner surface of bottom 8 or top 6.(図6には、この発明の他の実施例が示されている。外部カセッテ5の把手9は上面6と底面8に、孔の形で設けられている。外部カセッテ5の凸形状の縁17は、端までわずかに傾斜している。そのような外部カセッテ5は、鋭い縁は、ほとんど有していない。外部カセッテ5の外側のラベル18は、底面8を示すものである。この実施例では、散乱グリッド14は、外部カセッテ5の凹部32の中に接着されている。底面8又は上面6の内側の表面の凹部にも適宜設けることができる。)」(3欄40?49行)
(引2オ)図6


(3)引用例に記載された事項
ア 引用例1
「撮像パネル21」は、(引1エ)の【0070】に記載されるように、「照射された放射線の強度に応じた電荷を光導電層で生成し、この電荷を2次元状に配列された多数の電荷蓄積コンデンサで蓄積し、この蓄積された電荷を読み出して画像データを生成するもの」であって、(引1オ)の【0071】に記載されるように、「照射された放射線の強度に応じて2次元的に配列された複数の検出素子で画像データが生成され」るものであるから、「撮像パネル21」は、「照射された放射線の強度に応じた電荷を」「生成する」「光導電層」と「この電荷を」「蓄積」する「電荷蓄積コンデンサ」とで、「照射された放射線」を検出する「検出素子」を構成し、この検出素子を2次元状に配列することで、「照射された放射線の強度に応じた」「画像データを生成するもの」と解することができる。
そして、(引1ウ)の【0014】に記載されるように、「放射線発生装置10から放射された放射線は、被写体5を通してカセッテ型放射線画像読取装置(…)20の撮像パネルに照射され」ることから、(引1カ)の図2の記載も考慮すれば、「撮像パネル21」は、光導電層と電荷蓄積コンデンサとで被写体を透過した放射線を検出する検出素子を2次元状に配列して実質的に方形をなす検出面を有するものということができる。

また、(引1カ)の図2から、カセッテ型放射線画像読取装置20の筐体40は、撮像パネル21に対して法線方向からみた外形が略方形であることが看取される。

そうすると、引用例1には、
「カセッテ型放射線画像読取装置20において、
筐体40と、
光導電層と電荷蓄積コンデンサとで被写体を透過した放射線を検出する検出素子を2次元状に配列して実質的に方形をなす検出面を有し、電荷蓄積コンデンサで蓄積された電荷を読み出す走査駆動回路24、及び、蓄積された電荷に基づき画像データを生成して出力する信号選択回路26を有する撮像パネル21と、
カセッテ型放射線画像読取装置20の動作を制御する制御回路28と、
書き換え可能な読み出し専用メモリを用いることにより撮像パネル21から出力された画像データを記憶すると共に着脱可能とされたメモリ29と、
カセッテ型放射線画像読取装置20の動作を切り換えるための操作部30と、
放射線の照射を検出するセンサ31と、
放射線画像の撮影準備の完了やメモリ29に所定量の画像データが書き込まれたことを示す表示等を表示するための表示部32と、
撮像パネル21を駆動して画像データを得るために必要とされる電力を供給する電源部33と、
放射線発生装置10と放射線画像読取装置20の動作を同期させるための通信用のコネクタ34と、
放射線画像読取装置20の持ち運びや放射線画像の撮影時の位置調整を容易とするため把手42とを備え、
筐体40は、撮像パネル21を収容し、撮像パネル21に対して法線方向からみた外形が略方形であり、
筐体40に、把手42が設けられたカセッテ型放射線画像読取装置20。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

イ 引用例2
引用例2には、外部カセッテを、患者の下に滑り込ませ、興味がある対象に応じて、正確に位置決めすることを容易とするために、外部カセッテの表面を滑らかにし、孔の形で把手を設け、その上面6及び底面8の全ての縁に、端まで傾斜する傾斜面を設け、その傾斜面は、外部カセッテの厚みが、端に向かって小さくなるような傾斜面とすることが記載されていると認められる。

(4)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「カセッテ型放射線画像読取装置20」、「光導電層と電荷蓄積コンデンサとで被写体を透過した放射線を検出する検出素子を2次元状に配列して実質的に方形をなす検出面を有」する「撮像パネル21」及び「撮像パネル21を収容」する「筐体」は、本件補正発明の「カセッテ型の放射線画像撮影装置」、「被写体を透過した放射線を検出する光電変換素子を二次元状に配列して実質的に方形をなす検出面を有する検出手段」及び「検出手段を内包する筐体」にそれぞれ相当する。

そうすると、本件補正発明と引用発明とは、
「被写体を透過した放射線を検出する光電変換素子を二次元状に配列して実質的に方形をなす検出面を有する検出手段と、
前記検出手段を内包する筐体と、
を有するカセッテ型の放射線画像撮影装置。」点で一致し、次の相違点1で相違する。
(相違点1)
「筐体」について、本件補正発明は、「前記検出手段の前記検出面の反対側に位置する前記筐体の面は、前記筐体の端に向かって前記筐体の厚みが小さくなるように前記筐体の厚み方向に傾斜する傾斜面を、前記筐体の両端部にそれぞれ有する」のに対し、引用発明は、「筐体40」に傾斜面を有することは規定されていない点。

(5)判断
相違点1について検討する。
(相違点1について)
引用発明の「カセッテ型放射線画像読取装置20」は、患者の下に滑り込ませ、興味がある対象に応じて、正確に位置決めする必要があるものであることは明らかである。
そうすると、引用例2に接した当業者は、引用発明に、引用例2に開示された、筐体の上面及び底面の全ての縁に、端まで傾斜する傾斜面を設け、その傾斜面は、筐体の厚みが、端に向かって小さくなるような傾斜面を設ける技術を採用する動機付けがあるということができることから、上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項は、当業者が容易に想到し得たことである。

(6)むすび
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び引用例2に開示された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。

4.本件補正発明についてのむすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成27年6月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年9月8日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記「第2 1.ア」の請求項1に記載されたとおりのものと認める。

2.引用例
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1の記載は、前記「第2 3.(2)ア」に摘示したとおりであり、引用発明は、前記「第2 3.(3)ア」に記載したとおりである。
(2)引用例3
原査定の拒絶理由に引用され、親出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-282598号公報(以下、「引用例3」という。)には、「放射線用カセッテキャリア」(発明の名称)について、次の記載がある。
(引3ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、移動型X線撮影装置にてX線撮影を行う際に好適な放射線用カセッテキャリアに関する。」
(引3イ)「【0004】そこで本発明は、周辺に対してX線被爆を低減することができる放射線用カセッテキャリアを提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成するため、本発明の放射線用カセッテキャリアは、グリッドホルダーを装着した放射線用カセッテの収納部を中央部に形成するとともに、該収納部の両側に被撮影者の幅よりも突出する側辺部を形成し、両側辺部の端部にそれぞれ把手部を設け、両側辺部及び収納部の裏面全体に放射線を遮蔽吸収する材料からなる遮蔽部材を設けたことを特徴としている。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明を、図面に示す実施形態例に基づいて、さらに詳細に説明する。放射線用カセッテキャリア1は、軟質合成樹脂製で、グリッドホルダー2を装着した放射線用カセッテ3を厚さ方向から挿入して収納する収納部4を中央部に形成するとともに、該収納部4の両側に、被撮影者である患者Kの身体の幅より突出する側辺部5,5を形成し、該側辺部5,5の端部にそれぞれ把手部6を設け、収納部4及び側辺部5,5の裏面全体に放射線を遮蔽吸収する鉛、タングステン合金、重金属合金等の材料からなる膜状の遮蔽部材7を設けている。」
(引3ウ)図1


ウ 引用例3
図1から、放射線カセッテキャリア1の放射線用カセッテ3のフィルム8が設けられた面の、反対側の面の側辺部5を、端に向かって側辺部5の厚みが小さくなるように厚み方向に傾斜する傾斜面を設けたことが看取される
そして、放射線カセッテキャリア1の放射線用カセッテ3のフィルム8が設けられた面は、放射線を検出する検出面ということができる。

そうすると、引用例3には、周辺に対してX線被爆を低減することができる放射線用カセッテキャリアを提供することを目的として、グリッドホルダーを装着した放射線用カセッテの収納部を中央部に形成するとともに、該収納部の両側に被撮影者の幅よりも突出する、放射線を検出する検出面の反対側に位置する面の側辺部を、端に向かって側辺部の厚みが小さくなるように厚み方向に傾斜する傾斜面を設けた側辺部を形成し、両側辺部の端部にそれぞれ把手部を設け、両側辺部及び収納部の裏面全体に放射線を遮蔽吸収する材料からなる遮蔽部材を設けた放射線カセッテキャリアが開示されている。

3.対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「カセッテ型放射線画像読取装置20」、「光導電層と電荷蓄積コンデンサとで被写体を透過した放射線を検出する検出素子を2次元状に配列して実質的に方形をなす検出面を有」する「撮像パネル21」及び「撮像パネル21を収容」する「筐体」は、本願発明の「カセッテ型の放射線画像撮影装置」、「被写体を透過した放射線を検出する光電変換素子を二次元状に配列して実質的に方形をなす検出面を有する検出手段」及び「検出手段を内包する筐体」にそれぞれ相当する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、
「被写体を透過した放射線を検出する光電変換素子を二次元状に配列して実質的に方形をなす検出面を有する検出手段と、
前記検出手段を内包する筐体と、
を有するカセッテ型の放射線画像撮影装置。」点で一致し、次の相違点2で相違する。
(相違点2)
「筐体」について、本願発明は、「前記検出手段の前記検出面の反対側に位置する前記筐体の面は、前記筐体の端に向かって前記筐体の厚みが小さくなるように前記筐体の厚み方向に傾斜する傾斜面を、前記筐体の両端部にそれぞれ有する」のに対し、引用発明1は、「筐体40」に傾斜面を有することは規定されていない点。

(2)判断
相違点2について検討する。
(相違点2について)
引用発明は、X線が照射されるものである以上、周辺に対してX線被爆を低減する必要があるものであることは明らかである。
そうすると、引用例3に接した当業者は、引用発明に、引用例3に開示された、放射線を検出する検出面の反対側に位置する面の側辺部を、端に向かって側辺部の厚みが小さくなるように厚み方向に傾斜する傾斜面を設けた側辺部を形成し、両側辺部の端部にそれぞれ把手部を設け、両側辺部及び収納部の裏面全体に放射線を遮蔽吸収する材料からなる遮蔽部材を設けた放射線用カセッテキャリアを採用する動機付けがあるということができ、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、当業者が容易に想到し得たことである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例3に開示された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-10 
結審通知日 2016-02-16 
審決日 2016-03-08 
出願番号 特願2013-223732(P2013-223732)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01T)
P 1 8・ 575- Z (G01T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 洋平  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 土屋 知久
川端 修
発明の名称 放射線画像撮影装置  
代理人 黒岩 創吾  
代理人 阿部 琢磨  

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