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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1313675
審判番号 不服2015-375  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-01-07 
確定日 2016-04-22 
事件の表示 特願2012-528845「混合光を含む固体照明素子」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月17日国際公開、WO2011/031635、平成25年 2月 7日国内公表、特表2013-504876〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、2010年9月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年9月10日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年11月26日付けで拒絶理由通知がなされ、平成26年6月2日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年9月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成27年1月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、当審において、同年6月29日付けで拒絶理由通知がなされ、同年10月1日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成27年10月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下の事項により特定されるとおりのものと認める。

「複数の発光ダイオード(LED)を備えた固体照明装置であって、
前記複数のLEDの各々が、第1の主波長を有する光を発光するように構成されたLED素子と、該LED素子により発光された前記光の少なくとも一部を受光し、これに応答して第2の主波長を有する光を発光するように構成された蛍光体とを含み、
前記複数のLEDの各々は、前記複数のLED素子の各々が同じ目標色度を有するように、同じ蛍光体を含む、
前記LED素子と、前記複数のLEDのうちの第1のLEDの前記蛍光体とによって発光された結合光が第1の色点を有し、前記LED素子と、前記複数のLEDのうちの第2のLEDの前記蛍光体とによって発光された結合光が、前記第1の色点を中心とする7ステップマクアダム楕円から外れる第2の色点を有する、
ことを特徴とする固体照明装置。」

2.引用例
(1)引用例の記載
これに対して、当審における平成27年6月29日付けの拒絶理由通知に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2005-183986号公報(以下「引用例」という。)には、以下の記載がある(下線は、当審による。)。

ア 「【0001】
本発明は、オフホワイト発光ダイオード(LED)を用いて汚れのない白色光を生成する方法及び装置に関する。より詳しくは、本発明は相補(補色)発光ダイオードからの異なる色相の白色光を組み合わせて、より「純粋な」白色光を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白色発光ダイオードは、2つの発光材料を対にしてある。第1のものは、電流がその中を流れるときに放射線(すなわち、「初期放射線(initial radiation)」)を放出することのできる半導体材料で出来た青色発光ダイオードである。第2のものは、一部の初期放射線を吸収し、初期放射線とは異なる波長の光(すなわち、「第2の放射線」)を放出する黄色の蛍光体すなわち発光波長変換材である。得られる光は、初期放射線の非変換部分と第2の放射線との組み合わせとなる。白色発光ダイオードでは、ダイオードが初期放射線用の青色光を放出し、波長変換材が第2の放射線用の黄色光を放出する。」

イ 「【0004】
大半の白色発光ダイオードは、波長変換材としてセリウム活性イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG:Ce)等の通常の黄色蛍光体を使用している。この蛍光体を用いて汚れのない白色光を得るべく、青色初期放射線は通常465?470nm(ナノメートル)に含まれる波長を有する。初期放射線が過度の緑みの青色(すなわち、470nm超)である場合、得られる白色光は緑がかっている。初期放射線が過度の紫みの青色(すなわち、465nm未満)である場合、得られる白色光は紫がかっている。これらの汚れた色相の白色は共に人の目で知覚することができ、「不純な」白色として知られる。これらの汚れた色相は、図1の黒体曲線から遠位にある色座標を有する。これらの不純な白色光のどちらかを画像取込み装置用のフラッシュに用いた場合、得られる画像もまた汚れたものとなる。
【0005】
エピタキシャル半導体成長工程により製造される青色半導体が発する青色光の色は通常、制御された工程をもつにもかかわらず460?480nmの範囲にある。その結果、この工程で製造された利用可能な青色半導体材料の約25%だけを「純粋な」白色発光ダイオード用のダイオードに用いることができる。残りの75%は、過度に緑がかっているか又は過度に紫がかっている青色光を放出し、この目的に用いることはできない。それ故、「純粋な」白色発光ダイオードの製造コストは非常に高いものとなる。」

ウ 「【0009】
本発明は、添付図面の図において限定ではなく例示をもって説明し、図中の同様の参照符号は同様の要素を指す。発光ダイオード内での初期放射線と2次放射線の合成結果は、色度図(図1)に示すことができる。初期放射線と2次放射線の色、この場合それぞれ青色と黄色を表わす点の間に線を引く。得られた光は、この線に沿って置かれた色座標点を有する。点「B」は、青色光である。点「Y」は、黄色光である。「純粋な」白色光の色座標点は、黒体曲線近傍の線B-Y沿いにある。点「GB」は、緑みの青色光である。点「GW」すなわち緑白色光は、GB-Y線沿いにある。点「PB」は、紫みの青色光である。点「PW」すなわち紫白色光は、線PB-Y沿いにある。
【0010】
本発明の一実施形態では、黒体曲線の一方の側に色座標を有する発光ダイオードを黒体曲線の他方の側にある色座標を有する別の発光ダイオードに近接配置するよう発光ダイオードを選択する。得られる色は、これらの色座標を結ぶ直線の軌跡に沿うものであり、かくして黒体曲線により近接する。緑白色を有する白色発光ダイオードと紫白色を有する白色発光ダイオードとは、目にほぼ白色に見える放射線をもたらすよう適切に配置することができる。
【0011】
本発明の一実施形態では、緑白色発光ダイオードは480nmの色を有する青色ダイオードを用いて製作し、紫白色発光ダイオードは460nmの色を有する青色ダイオードを用いて製作する。代替実施形態では、緑白色発光ダイオードは475nmの色を有する青色ダイオードを用いて製作し、紫白色発光ダイオードは465nmの色を有する青色ダイオードを用いて製作する。
【0012】
このように、使用できる青色ダイオードの範囲は5nmよりも広いものとなる。その結果、青色ダイオードの利用率は増大し、製造コストは低減される。
【0013】
図1を用いるに、色度図上の任意の2点の組み合わせの色座標はこれらの2点を接続する線沿いにある。それ故に、点100は黒体曲線近くの線GW-PW上にあり、ほぼ「純粋な」白色光となる。緑白色光と紫白色光の割合は、黒体曲線又はその近くにある点100に白色光を生じるように適切に選択される。
【0014】
図2Aは、ダイオードが放出する光の波長により青色ダイオードを分類する手順を示す。白色発光ダイオードは、分割した青色ダイオードを用いて組み立てたものそのものである。該発光ダイオードはそこで、それらの合成光が汚れのない白色となるよう装置上に配置される。それ故、白色発光ダイオードは従来の工程で生成した青色半導体材料の100%を用いて製作することができる。青色ダイオードは、それぞれの青色光の波長に応じて3つの群PB,B,GBに分割される。PB群は、460?465nm範囲の光を放出する紫みの青色ダイオードからなる。B群は、465?470nm範囲の光を放出する青色ダイオードからなる。GB群は、470?480nm範囲の光を放出する緑みの青色ダイオードからなる。
【0015】
図2Bは、「純粋な」白色光を生成するのに用いるオフホワイト及び白色発光ダイオードを分類する代替手順を示す。こうして、白色発光ダイオードは従来の工程で製造される青色半導体材料の100%を用いて製作することができる。白色発光ダイオードは、各発光ダイオードの白色生成光の色座標に応じて3つの群PW,W,GWに分割される。PW群は、460?465nm範囲の光を放出するダイオードを用いて製作した紫白色ダイオードからなる。W群は、465?470nm範囲の光を放出するダイオードを用いて製作した「純粋な」白色ダイオードからなる。GW群は、470?480nm範囲の光を放出するダイオードを用いて製作した緑白色発光ダイオードからなる。」

エ 「【0016】
図3は、各群から1個ずつの、3個の白色発光ダイオードの可能な配置を示す。配列300は、1行3列のマトリックスである。好適な実施形態では、発光ダイオード310はGW群から、発光ダイオード320はPW群から、発光ダイオード330はW群からのものである(図2参照のこと)。これら3個の発光ダイオードの光の組み合わせは、色度図に示す如く、純粋な白色光である。実験によれば、発光ダイオード310,320,330の実際の配置は問題ではなく、どんな配置の生成光も純粋な白色となることが示された。
【0017】
図3中、導電性配線路(図示せず)を有する基板302がダイオードに結合してある。結合導線304が、発光ダイオード端子の一端から前記基板上の導電性配線路まで形成されている。封入体と蛍光体の混合物の層306が、ダイオードを覆っている。」

オ「【図1】




カ「【図3】



(2)引用発明
上記記載によれば、引用例の図3には、
「基板302上に発光ダイオード310、発光ダイオード320、発光ダイオード330が配置された白色光を生成する装置であって、
上記各発光ダイオードは、封入体と蛍光体の混合物の層306が、ダイオードを覆っているものであり、
上記蛍光体は、黄色(Y)蛍光体であり、上記発光ダイオード310は、470?480nm範囲の光を放出する緑みの青色(GB)ダイオードと黄色(Y)蛍光体を用いて製作した緑白色(GW)発光ダイオードであり、上記発光ダイオード320は、460?465nm範囲の光を放出する紫みの青色(PB)ダイオードと黄色(Y)蛍光体を用いて製作した紫白色(PW)ダイオードであり、上記発光ダイオード330は、465?470nm範囲の光を放出する青色(B)ダイオードと黄色(Y)蛍光体を用いて製作した白色(W)ダイオードである白色光を生成する装置。」
の発明(以下「引用発明という。」)が記載されているものと認められる。

3.対比・判断
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明は、「発光ダイオード310」、「発光ダイオード320」及び「発光ダイオード330」の複数の発光ダイオードを含むものであって、「白色光を生成する装置」であるから、本願発明と同様に「複数の発光ダイオード(LED)を備えた固体照明装置」であるといえる。
(2)引用発明の各発光ダイオードが有するダイオードが発する光の波長が本願発明の「第1の主波長」に、また、引用発明の黄色(Y)蛍光体が発する黄色光の波長が本願発明の「第2の主波長」に相当するから、引用発明の「発光ダイオード310」、「発光ダイオード320」及び「発光ダイオード330」がそれぞれ有する「緑みの青色(GB)ダイオード」、「紫みの青色(PB)ダイオード」及び「青色(B)ダイオード」が本願発明の「第1の主波長を有する光を発光するように構成されたLED素子」に相当し、また、引用発明の「黄色(Y)蛍光体」は、引用例の【0002】の記載からみて、「LED素子により発光された前記光の少なくとも一部を受光し、これに応答して第2の主波長を有する光を発光するように構成された蛍光体」といえるから、引用発明は、本願発明と同様に「前記複数のLEDの各々が、第1の主波長を有する光を発光するように構成されたLED素子と、該LED素子により発光された前記光の少なくとも一部を受光し、これに応答して第2の主波長を有する光を発光するように構成された蛍光体とを含」むものといえる。
(3)引用発明において、「発光ダイオード310」、「発光ダイオード320」及び「発光ダイオード330」のそれぞれに用いられる蛍光体は、いずれも同じ「黄色(Y)蛍光体」であり、引用発明の各発光ダイオードは、ダイオードが放出する初期放射線用の青色光と波長変換材である蛍光体が放出する第2の放射線用の黄色光を組み合わせて目標色度である白色を実現しようとするものであると認められるから、引用発明は、本願発明と同様に「前記複数のLEDの各々は、前記複数のLED素子の各々が同じ目標色度を有するように、同じ蛍光体を含む」ものといえる。
(4)ここで、引用発明の「発光ダイオード310」及び「発光ダイオード320」をそれぞれ、本願発明の「前記複数のLEDのうちの第1のLED」及び「前記複数のLEDのうちの第2のLED」に対応させれば、引用発明の「470?480nm範囲の光を放出する緑みの青色(GB)ダイオードと黄色(Y)蛍光体を用いて製作した緑白色(GW)発光ダイオード」の発光色である「緑白色(GW)」の色点が本願発明の「(前記LED素子と、前記複数のLEDのうちの第1のLEDの前記蛍光体とによって発光された結合光が有する)第1の色点」に相当し、また、引用発明の「460?465nm範囲の光を放出する紫みの青色(PB)ダイオードと黄色(Y)蛍光体を用いて製作した紫白色(PW)ダイオード」の発光色である「紫白色(PW)」の色点が本願発明の「(前記LED素子と、前記複数のLEDのうちの第2のLEDの前記蛍光体とによって発光された結合光が有する)第2の色点」に相当する。
そして、本願明細書の【0043】に記載されるように、「マクアダム楕円は、中心点と視覚的に区別できない全ての点を含む、1931CIE色度図などの2次元色度空間内の中心点を中心とする閉領域」のことであり、「7ステップ マクアダム楕円は、通常の観察者が区別できない7標準偏差内の点を捕捉」するものであるところ、引用発明の「緑白色(GW)」と「紫白色(PW)」は、引用例の【0004】の記載からみて通常の観察者が区別できるものと認められるから、引用発明の「紫白色(PW)」の色点が「緑白色(GW)」の色点を中心とする7ステップマクアダム楕円から外れることは明らかであって、引用発明も本願発明と同様に「前記LED素子と、前記複数のLEDのうちの第1のLEDの前記蛍光体とによって発光された結合光が第1の色点を有し、前記LED素子と、前記複数のLEDのうちの第2のLEDの前記蛍光体とによって発光された結合光が、前記第1の色点を中心とする7ステップマクアダム楕円から外れる第2の色点を有する」ものといえる。
(5)以上のことから、本願発明と引用発明は、
「複数の発光ダイオード(LED)を備えた固体照明装置であって、
前記複数のLEDの各々が、第1の主波長を有する光を発光するように構成されたLED素子と、該LED素子により発光された前記光の少なくとも一部を受光し、これに応答して第2の主波長を有する光を発光するように構成された蛍光体とを含み、
前記複数のLEDの各々は、前記複数のLED素子の各々が同じ目標色度を有するように、同じ蛍光体を含む、
前記LED素子と、前記複数のLEDのうちの第1のLEDの前記蛍光体とによって発光された結合光が第1の色点を有し、前記LED素子と、前記複数のLEDのうちの第2のLEDの前記蛍光体とによって発光された結合光が、前記第1の色点を中心とする7ステップマクアダム楕円から外れる第2の色点を有する、
ことを特徴とする固体照明装置。」
である点で一致し、両者に相違点は認められない。

なお、請求人は、平成27年10月1日に提出した意見書において、『色点「GW」及び「PW」によって表されるLEDは、異なる主波長を有するLEDによって生成されていますので、本願請求項1に係る発明は引用文献1(当審注:本審決の引用例のことである。)に記載の発明とは異なるものであります。』、「本願請求項1に係る発明において、第1及び第2のLED素子の各々は、同じ主波長及び同じ蛍光体を有するLEDを用いているので、同じ目標色度を有しています。しかしながら、先に説明したとおり、製造誤差のために、第1及び第2のLED素子によって発光される光は、第2の色点が第1の色点を中心とする7ステップマクアダム楕円から外れるために、知覚できるほどに異なるものであります。したがって、本願請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明と異なるものであり、新規性を有するものであります。」と主張するが、引用例の【0005】に「エピタキシャル半導体成長工程により製造される青色半導体が発する青色光の色は通常、制御された工程をもつにもかかわらず460?480nmの範囲にある。」と記載されているように、引用発明の「470?480nm範囲の光を放出する緑みの青色(GB)ダイオード」及び「460?465nm範囲の光を放出する紫みの青色(PB)ダイオード」は、青色ダイオードの製造における製造誤差によるばらつきとして得られるものであるから、引用発明の「発光ダイオード310」に用いられる「470?480nm範囲の光を放出する緑みの青色(GB)ダイオード」と本願発明の「第1のLED」に用いられる「LED素子」、また、引用発明の「発光ダイオード320」に用いられる「460?465nm範囲の光を放出する紫みの青色(PB)ダイオード」と本願発明の「第2のLED」に用いられる「LED素子」に格別の相違は認められないのであって、結局、本願発明が引用発明と異なるものであるとは認められない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例に記載された発明と認められ、特許法第29条第1項第3号の発明に該当し、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-26 
結審通知日 2015-11-30 
審決日 2015-12-11 
出願番号 特願2012-528845(P2012-528845)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 秀樹  
特許庁審判長 河原 英雄
特許庁審判官 ▲高▼ 芳徳
近藤 幸浩
発明の名称 混合光を含む固体照明素子  
代理人 大塚 文昭  
代理人 西島 孝喜  
代理人 上杉 浩  
代理人 辻居 幸一  
代理人 近藤 直樹  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 須田 洋之  

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