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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1313748
審判番号 不服2015-16730  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-11 
確定日 2016-05-10 
事件の表示 特願2011- 87175「表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月24日出願公開、特開2011-238214、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成23年4月11日(優先権主張平成22年4月16日)の出願であって、平成27年1月30日付けで拒絶理由が通知され、同年7月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明

本願の請求項1-3に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】
表示部と、センサ部と、を有し、
前記表示部は、高分子分散型液晶を有する第1の液晶素子を有し、
前記センサ部は、受光素子と、前記受光素子上に設けられ、前記高分子分散型液晶を有する第2の液晶素子と、を有し、
前記第1の液晶素子と前記第2の液晶素子とを、独立に駆動させ、
前記受光素子は、前記第2の液晶素子を透過した光を受光することを特徴とする表示装置。」


第3 原査定の理由の概要

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1-3
・引用文献 1-3
・備考
引用文献1(段落1,28ないし36,58ないし60等参照。)には、画素部が画素電極を備え、画素電極に挟まれた液晶素子を備え、画素部に接続され、光センサ部と光量調整部とからなる光検出回路部とを備えた液晶表示装置において、液晶の配向状態を制御して、光センサ部に入射する光量を調節する技術が記載されており、液晶が高分子分散型液晶であるか否かが明確ではない点で本願発明とは相違するが、液晶の材料としてどのようなものを採用するかは当業者が必要に応じて適宜選択し得る事項である。また、高分子分散型液晶は周知(引用文献2要約、光量調節部材としてのポリマーネットワーク型液晶、引用文献3段落1,14,17等参照。)であり、引用文献1に当該周知技術を適用して、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得ることである。

出願人が意見書の中で主張しているとおり、引用文献1は、画素部の液晶素子と光検出回路部の液晶素子が独立に駆動するものではない点でも、本願発明と相違する。
しかしながら、画素部の液晶素子と光検出回路部の液晶素子を独立に駆動することは周知技術(先に示した引用文献3の段落21ないし24,図2等参照。)であるから、引用文献1において、そのように構成することは当業者が容易になし得ることである。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2009-36946号公報
2.特開2004-317908号公報
3.特開2008-83322号公報


第4 当審の判断
1.刊行物の記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された特開2009-36946号公報公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の記載がある。(下線は当審において付加した。)

ア.「【技術分野】
【0001】
本発明は、外光を検出することにより指等の指示物体の位置特定、領域検出を行なう光検出機能付き液晶装置、およびそのような液晶装置を具備してなる電子機器の技術分野に関する。」(4頁5-9行)

イ.「【0027】
<1-2:画素部の構成>
次に、液晶装置1の画素部の構成を詳細に説明する。図2は、液晶装置1の画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路である。本図では、TFTアレイ基板上にマトリクス状に配置された複数の画素部のうち実質的に画像の表示に寄与する部分の回路構成と共に光検出回路部250を示している。図3は、画素部の模式的平面図である。図4は、図3のVII-VII´断面図である。図5は、図3のVIII-VIII´断面図である。図6は、図3のIX-IX´断面図である。図7は、図6に示した断面を詳細に示した断面図である。図4?図7では、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該各層・各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。
【0028】
図2において、液晶装置1の画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素部72のそれぞれは、赤色を表示するサブ画素部72R、緑色を表示するサブ画素部72G、および青色を表示するサブ画素部72Bを含んで構成されている。したがって、液晶装置1は、カラー画像を表示可能な表示装置である。画素部72は、画像表示領域10aに形成された光検出回路部250に電気的に接続されている。電気的接続態様については後に詳述する。光検出回路部250は、光センサ部150と光量調節部82とを備えている。サブ画素部72R、72Gおよび72Bのそれぞれは、画素電極9a、TFT30、蓄積容量70、および画素電極9aに挟まれた液晶素子50aを備えている。
【0029】
TFT30は、画素電極9aに電気的に接続されており、液晶装置1の動作時に画素電極9aをスイッチング制御する。画像信号が供給される表示信号線6aは、TFT30のソースに電気的に接続されている。表示信号線6aに書き込む画像信号S1、S2、…は、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数の表示信号線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
【0030】
TFT30のゲートに表示行選択信号線3aが電気的に接続されており、液晶装置1は、所定のタイミングで、表示行選択信号線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…を、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、表示信号線6aから供給される画像信号S1、S2、…が所定のタイミングで書き込まれる。画素電極9aを介して液晶素子50aに書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…は、対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。
【0031】
画素電極9aに挟まれた液晶素子50aは、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各サブ画素部の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各サブ画素部の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として液晶装置1からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射される。蓄積容量70は、画像信号がリークすることを防ぐために、画素電極9aと対向電極との間に形成される液晶素子50aと並列に付加されている。容量電位線300は、蓄積容量70が有する一対の電極のうち固定電位側の電極である。
【0032】
図3に示すように、画素部72は、X方向に沿って配列された3つのサブ画素部72R、72Gおよび72B、ならびに光検出回路部250を有している。サブ画素部72R、72Gおよび72Bサブ画素部のそれぞれは、開口部73R、73Gおよび73Bを有している。液晶装置1の動作時において、開口部73R、73Gおよび73Bのそれぞれから赤色光、緑色光、および青色光のそれぞれが出射されることによって液晶装置1によるカラー画像の表示が可能になる。加えて、サブ画素部72R、72Gおよび72Bのそれぞれは、各サブ画素部をスイッチングするTFT30を有している。
【0033】
光検出回路部250は、調整制御用TFT130、開口部83、およびTFT回路部80を有している。光検出回路部250は、表示面に入射する入射光を検出する。TFT回路部80は、後述するようにリセット用TFT163、電圧増幅用TFT154、および出力制御用TFT155を含んで構成されており、開口部83に臨む受光素子151の動作を制御すると共に、受光素子151が生成する光電流に応じた電圧の変化を読出信号線6a2に供給する。
【0034】
図4?図7において、液晶装置1は、遮光膜11および153、平坦化膜20aに埋め込まれた3種類のカラーフィルタ154R、154Gおよび154B、液晶素子50b、受光素子151、バックライト206、ならびに、第1偏光板301、第2偏光板302、および第3偏光板を備えている。
バックライト206は、導光板206a、および表示用光源206bを備えて構成されており、図中TFTアレイ基板10の下側に配置されている。
【0035】
表示用光源206bは、画像表示領域10aに画像を表示するための表示用光L1を生成する。表示用光L1は、可視光であり、各サブ画素部の駆動に応じて液晶層50によって変調される。
導光板206aは、例えば、表示用光L1を透過可能なアクリル樹脂で構成されており、表示用光L1を画像表示領域10aに導く。液晶装置1は、画像を表示するために表示用光L1を利用すると共に、指示物体Fを検知するために表示用光L1および外光を利用する。
【0036】
第1偏光板301および第2偏光層302のそれぞれは、光量調節部82の一部を構成しており、図中上下方向に沿って液晶素子50bの両側のそれぞれの側に配置されている。第1偏光層301および第2偏光層302のそれぞれは、各々の光軸が互いに交差するようにクロスニコル配置されている。液晶素子50bは、液晶層50のうち受光素子151に重なる液晶部分と、当該液晶部分を挟持する第1電極159aおよび第2電極21aを有している。」(8頁17行-9頁48行)

ウ.「【0057】
次に図8を参照しながら、光検出回路部250の詳細な回路構成を説明する。まず、簡単のため、光検出回路部250用の信号線・電源線(光センサリセット信号線350、光センサ第1電源線351、光センサ第2電源線352、光センサ行選択信号線353)を設けて、光検出回路部250を画素部72と独立に制御可能な場合を説明する。ただし、表示行選択信号線3aおよび容量電位線300は、画素部72と共用している。
【0058】
図8において、光検出回路部250は、光量調節部82および光センサ部150を備えている。光量調節部82は、液晶素子50b、調整制御TFT130、および蓄積容量170を備えて構成されている。光量調節部82は、複数の光検出回路部250のそれぞれに含まれており、センサ感度調整回路部205の制御下において、画像表示領域10aにおいて互いに独立してその動作が制御される。
液晶素子50bは、調整制御TFT130および蓄積容量170のそれぞれに電気的に接続されており、液晶素子50bが有する液晶部分の配向状態が調整制御TFT130によって制御され、光センサ部150に入射する入射光の光量を調節する。蓄積容量170が有する一対の容量電極の一方は、容量電位線300に電気的に接続されている。
【0059】
調整制御TFT130のゲートおよびソースのそれぞれは、表示行選択信号線3aおよび光量調節信号線6a1のそれぞれに電気的に接続されている。調節制御TFT130は、表示行選択信号線3aを介して供給された選択信号が供給されることによってそのオンオフが切り換え可能に構成されている。調整制御TFT130は、そのオンオフに応じて光量調節信号線6a1を介して供給された調節信号を液晶素子50bに供給する。液晶素子50bは、調節信号に応じて液晶部分の配向状態が制御されることによって光センサ部150に入射する入射光の光量を調節する。
【0060】
光センサ部150は、フォトダイオード等の受光素子151、蓄積容量152、リセットTFT163、信号増幅用TFT154、および出力制御用TFT155を備えて構成されている。
受光素子151は、画像表示領域10aにおいて液晶装置1の表示面302sから入射する入射光L2のうち光量調節部82によって光量が調節された入射光L2´(図4?図6参照。)を受光する。リセット用TFT163のソース、ゲートおよびドレインのそれぞれは、受光素子151、光センサリセット信号線350、および信号増幅用TFT154のそれぞれに電気的に接続されている。信号増幅用TFT154のソース、ゲートおよびドレインのそれぞれは、光センサ第1電源線351、受光素子151、および出力制御用TFT155のそれぞれに電気的に接続されている。出力制御用TFT155のソース、ゲートおよびドレインのそれぞれは、信号増幅用TFT154、光センサ行選択信号線353、および読出信号線6a2のそれぞれに電気的に接続されている。
【0061】
受光素子151が入射光を受光した際には、受光素子151に光電流が生じ、リセット用TFT163、電圧増幅用TFT154、および出力制御用TFT155のそれぞれの動作に応じて、受光素子151に電気的に接続された光センサ第2電源線352およびノードa間の電圧Vに対応した信号が読出信号線6a2に読み出される。
このように、光検出回路部250を備えた液晶装置1は、光量調節部82が光センサ部150の感度調整を行なっているため、位置検出時の誤動作を防ぐことができ、精度を高めることができる。
【0062】
しかしながら、光検出回路部250を備えることにより、信号線の数が増えるという問題がある。すなわち、従来、画素部72の制御に必要であった表示行選択信号線3aと容量電位線300とに加え、図8に示すように、1走査線毎に光センサリセット信号線350、光センサ第1電源線351、光センサ第2電源線352、光センサ行選択信号線353を新たに設ける必要がある。これらの配線のための領域を確保すると、液晶装置1の画素部72の開口率が低下することになる。開口率の低下をカバーするためにバックライトの光量を増やすと消費電力が増加したり、光センサ部150における迷光が増加し、位置検出の際のノイズ成分となり好ましくない。
そこで、本実施形態では、光検出回路部250と画素部72とで信号線を共有することにより、信号線の本数を減らし、開口率の低下を防ぐようにする。以下、具体的な実施例について説明する。」(13頁11行-14頁17行)


以上総合すると、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

〈引用発明〉

「外光を検出することにより指等の指示物体の位置特定、領域検出を行なう光検出機能付き液晶装置1において、
該液晶装置1の画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素部72のそれぞれは、X方向に沿って配列された3つのサブ画素部72R、72Gおよび72B、ならびに光検出回路部250を有しており、
前記画素部72は、画像表示領域10aに形成された光検出回路部250に電気的に接続され、該光検出回路部250は、光センサ部150と光量調節部82とを備え、
前記サブ画素部72R、72Gおよび72Bのそれぞれは、画素電極9a、TFT30、蓄積容量70、および画素電極9aに挟まれた液晶素子50aを備え、
前記TFT30は、前記画素電極9aに電気的に接続されており、液晶装置1の動作時に前記画素電極9aをスイッチング制御し、画像信号が供給される表示信号線6aは、前記TFT30のソースに電気的に接続され、さらに、前記TFT30のゲートに表示行選択信号線3aが電気的に接続されており、液晶装置1は、所定のタイミングで、表示行選択信号線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…を、この順に線順次で印加するように構成され、前記画素電極9aは、前記TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子である前記TFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、表示信号線6aから供給される画像信号S1、S2、…が所定のタイミングで書き込まれ、前記画素電極9aを介して前記液晶素子50aに書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…は、対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持され、
前記光量調節部82は、液晶素子50b、調整制御TFT130、および蓄積容量170を備えて構成され、前記光量調節部82は、複数の光検出回路部250のそれぞれに含まれており、センサ感度調整回路部205の制御下において、画像表示領域10aにおいて互いに独立してその動作が制御され、
前記液晶素子50bは、調整制御TFT130および蓄積容量170のそれぞれに電気的に接続されており、液晶素子50bが有する液晶部分の配向状態が調整制御TFT130によって制御され、光センサ部150に入射する入射光の光量を調節し、蓄積容量170が有する一対の容量電極の一方は、容量電位線300に電気的に接続されており、前記調整制御TFT130のゲートおよびソースのそれぞれは、表示行選択信号線3aおよび光量調節信号線6a1のそれぞれに電気的に接続されて、前記調節制御TFT130は、表示行選択信号線3aを介して供給された選択信号が供給されることによってそのオンオフが切り換え可能に構成され、前記調整制御TFT130は、そのオンオフに応じて光量調節信号線6a1を介して供給された調節信号を液晶素子50bに供給し、前記液晶素子50bは、調節信号に応じて液晶部分の配向状態が制御されることによって光センサ部150に入射する入射光の光量を調節し、
前記光センサ部150は、フォトダイオード等の受光素子151、蓄積容量152、リセットTFT163、信号増幅用TFT154、および出力制御用TFT155を備えて構成されており、受光素子151は、画像表示領域10aにおいて液晶装置1の表示面302sから入射する入射光L2のうち光量調節部82によって光量が調節された入射光L2´を受光する、
液晶装置1。」


2.対比

本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア.引用発明の「液晶装置1」は、本願発明の「表示装置」に相当する。

イ.引用発明の「画素部72」は、「サブ画素部72R、72Gおよび72B」を有し、「前記サブ画素部72R、72Gおよび72Bのそれぞれは、画素電極9a、TFT30、蓄積容量70、および画素電極9aに挟まれた液晶素子50aを備え」ていることから、引用発明の「液晶素子50a」は、本願発明の「第1の液晶素子」に相当し、さらに、引用発明の「画素部」と、引用発明の「表示部」とは、「表示部は、液晶を有する第1の液晶素子を有」する点で共通する。

ウ.引用発明の「光検出回路部250」は、「光センサ部150と光量調節部82とを備え」、「光センサ部150」は「受光素子151」を有し、「光量調節部82」は、「液晶素子50b」を備えており、引用発明の「受光素子151」、「液晶素子50b」は、本願発明の「受光素子」、及び「第2の液晶素子」に相当し、さらに、本願発明では、「受光素子151は、画像表示領域10aにおいて液晶装置1の表示面302sから入射する入射光L2のうち光量調節部82によって光量が調節された入射光L2´を受光する」ものであり、「受光素子151」の上に「光量調節部82」が配置されるものと認められることから、引用発明の「光検出回路部250」と、本願発明の「センサ部」は、「センサ部は、受光素子と、前記受光素子上に設けられ、前記液晶を有する第2の液晶素子と、を有」する点で共通する。
また、引用発明の「受光素子151は、画像表示領域10aにおいて液晶装置1の表示面302sから入射する入射光L2のうち光量調節部82によって光量が調節された入射光L2´を受光する」は、本願発明の「受光素子は、前記第2の液晶素子を透過した光を受光する」に相当する。

よって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致、ないし相違している。

(一致点)

「表示部と、センサ部と、を有し、
前記表示部は、液晶を有する第1の液晶素子を有し、
前記センサ部は、受光素子と、前記受光素子上に設けられ、前記液晶を有する第2の液晶素子と、を有し、
前記受光素子は、前記第2の液晶素子を透過した光を受光する、表示装置。」


(相違点1)液晶が、本願発明では、高分子分散型液晶であるのに対して、引用発明では、そのような液晶には特定されていない点。

(相違点2)本願発明では、「前記第1の液晶素子と前記第2の液晶素子とを、独立に駆動」されるのに対して、引用発明では、「画素部72」の「液晶素子50a」と、「光検出回路部250」の「液晶素子50b」は独立には駆動されない点。

この点、引用発明では、「画素部72」の「液晶素子50a」を駆動する「TFT30」と、「光検出回路部250」の「液晶素子50b」を駆動する「調整制御TFT130」には、同じ「表示行選択信号線3a」が接続され同じタイミングで制御されることから、「前記第1の液晶素子と前記第2の液晶素子とを、独立に駆動」については一致ではなく、相違点である。


3.判断

当審は次のとおり判断する。

下のア.?ウ.に示す理由で、引用発明において上記相違点2に係る本願発明の構成を採用することは、当業者といえども容易に推考し得たこととはいえない。

したがって、その他の点について判断するまでもなく、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

ア.引用発明を開示する刊行物1には、引用発明において上記相違点2に係る本願発明の構成を採用することについての記載も、それを示唆する記載もない。

イ.原査定の拒絶理由で引用文献3として引用された特開2008-83322号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「表示用画素回路100b」と「入力位置検出用画素回路100c」を独立に駆動できることは記載されているが、そこに示される「入力位置検出用画素回路100c」は独立した液晶素子を有するものではなく、異なる液晶素子を独立に駆動させることは刊行物2には記載されていない。

したがって、上記刊行物2に記載される技術の存在をもっては、引用発明において上記相違点2に係る本願発明の構成を採用することが当業者にとって容易であったとはいえない。

ウ.ほかに引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の構成を採用することが当業者にとって容易であったといえる根拠は見当たらない。

したがって、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
本願の請求項2-3に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。



第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1-3に係る発明は、いずれも、当業者が引用発明に基づいて容易に発明することができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-04-20 
出願番号 特願2011-87175(P2011-87175)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 匡  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 山澤 宏
千葉 輝久
発明の名称 表示装置  

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