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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04Q
管理番号 1313787
審判番号 不服2015-15928  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-28 
確定日 2016-05-10 
事件の表示 特願2014-125240「遠隔操作システム及び遠隔操作方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月17日出願公開,特開2014-217073,請求項の数(2)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成25年4月26日に出願された特願2013-94500号の一部を平成26年6月18日に新たな特許出願としたものであって,平成27年6月2日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年8月28日に拒絶査定不服審判が請求され,同時に手続補正がされ,同年11月6日付けで前置報告がされたものである。

第2 平成27年8月28日付けの手続補正の適否
1 補正の内容
平成27年8月28日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は,特許請求の範囲の請求項1を,
「電気機器を制御するコントローラと,該コントローラに広域ネットワークを介して接続されるサーバと,前記広域ネットワークに接続される操作端末と,を備える遠隔操作システムであって,
前記操作端末は,
前記電気機器を操作するための情報を表示する表示手段と,
前記電気機器に対する操作の内容をユーザから取得する取得手段と,
前記取得手段によって取得された前記操作の内容を前記サーバへ送信する操作内容送信手段と,
前記電気機器の状態を示す状態信号を前記サーバから受信する状態受信手段とを有し,
前記表示手段は,前記状態信号によって示される前記電気機器の状態と,前記操作端末から前記サーバ及び前記コントローラを介して前記電気機器へ至る通信経路について,通信障害を含む通信状況と,現在の通信状況に基づいてユーザを支援するためのアドバイスと,通信品質と,を表示し,
前記サーバは,
前記操作端末の前記操作内容送信手段によって送信された前記操作の内容を前記コントローラへ伝送する操作内容伝送手段と,
前記状態信号を前記コントローラから前記操作端末へ伝送する状態伝送手段とを有し,
前記コントローラは,
前記サーバの前記操作内容伝送手段によって伝送された前記操作の内容に基づいて前記電気機器を制御する制御手段と,
前記電気機器から該電気機器の状態を取得して前記状態信号を生成し,前記サーバへ送信する状態送信手段とを有し,
前記コントローラは,前記操作の内容の送信を前記サーバに要求し,
前記サーバの前記操作内容伝送手段は,前記操作端末の前記操作内容送信手段によって前記操作の内容が送信されていない場合に,前記コントローラからの前記要求に対する応答を保留して,該応答を保留している間は前記コントローラとのセッションを維持するための応答を前記コントローラに送信することにより前記コントローラとのセッションを維持し,前記操作内容送信手段によって前記操作の内容が送信された場合に,前記コントローラからの前記要求に応答して,前記操作の内容を前記コントローラへ伝送する遠隔操作システム。」
とする補正(以下「補正事項1」という。)を含んでいる。

2 補正の適否
本件補正の補正事項1は,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「表示手段」について,「前記操作端末から前記サーバ及び前記コントローラを介して前記電気機器へ至る通信経路について,通信障害を含む通信状況と,現在の通信状況に基づいてユーザを支援するためのアドバイスと,通信品質と,」を表示する点の限定を付加するものであって,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また,特許法第17条の2第3項,第4項に違反するところはない。
そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(1)引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2009/118877号(以下「引用例」という。)には,図面ともに以下の事項が記載されている。
なお,下線は,特に参照する箇所として当審において付した。
イ.「技術分野
[0001] 本発明は,空調機器の動作を制御する空調管理装置,およびネットワークを介して空調機器の管理を行う空調管理システムに関するものである。」(1頁)

ロ.「[0010] 実施の形態1.
図1は,本発明の実施の形態1に係る空調管理システムの構成図である。
本実施の形態1に係る空調管理システムは,一つ以上の建物を持つ施設内に,空調機器100a?100b,空調管理装置200a?200c,ローカル監視端末300を有する。また,インターネット30を介してWebサーバ400が接続され,遠隔地には同様にインターネット30に接続された遠隔監視端末500を有する。
[0011] 空調機器100a?100b,空調管理装置200a?200cは,それぞれ同様の構成を備える。以下,これらを総称するときは,空調機器100,空調管理装置200,などと称する。
[0012] 空調機器100と空調管理装置200は,専用通信線10で互いに接続され,通信によりデータを送受信することができる。
空調管理装置200a?200c,ローカル監視端末300は,LAN20を介して互いに接続され,通信によりデータを送受信することができる。また,LAN20は,インターネット接続用ルータ600を介してインターネット30に接続されている。
[0013] 空調機器100は,本実施の形態1における「空調機器」に相当する。
空調管理装置200は,複数の空調機器100を統合的に監視,制御する装置である。
ローカル監視端末300は,Webブラウザが動作する汎用パソコンで構成される。ユーザは,ローカル監視端末300のWebブラウザ上で,空調機器の運転状態,異常情報,各種運転データの監視や設定を行うことができる。
[0014] Webサーバ400は,インターネット上にWebページを公開するためのサーバであり,後述の運転状態ファイルや制御命令ファイルを格納する,HDD(Hard Disk Drive)等の記憶手段を備える。
遠隔監視端末500は,Webブラウザが動作する汎用パソコンで構成することができる。ユーザは,遠隔監視端末500のWebブラウザを用いてインターネット30に接続し,空調機器100の監視,制御を行う。具体的な手法は後述する。
[0015] インターネット接続用ルータ600配下のLAN20に接続される各機器は,プライベートIPアドレスの割り当てを受ける。
インターネット接続用ルータ600は,配下のLAN20からインターネット30に向けたパケットを中継する際に,NAT(Network Address Translation)を実行する。
これにより,LAN20に接続される各機器は,インターネット接続用ルータ600を介してインターネット30に接続することができる。
[0016] 上述のネットワーク構成により,空調管理装置200とローカル監視端末300は,インターネット接続用ルータ600?インターネット30を介して,Webサーバ400に接続し,Webサーバ400が格納しているファイルを取得することができる。
一方,インターネット30の側からは,インターネット接続用ルータ600配下のLAN20に接続することはできない。
[0017] 本実施の形態1に係る空調管理システムでは,ネットワークセキュリティの観点から上述のようなネットワーク構成を採用しているため,遠隔監視端末500は,空調機器100の運転状態等を直接取得することはできない。
そこで,本実施の形態1に係る空調管理システムでは,遠隔監視端末500から空調機器100の監視,制御を行うため,次の図2で説明するような手法を用いる。
[0018] 図2は,遠隔監視端末500から空調機器100の監視,制御を行う手法を説明する図である。以下,図2の各手順について説明する。なお,図2において,図1の一部の構成や符号の記載を省略したことを付言しておく。
[0019] (a)空調機器100の運転状態の監視
(a.1)空調管理装置200は,空調機器100の運転状態を定期的に取得する。なお,空調機器100の運転状態が変化した際に,空調機器100より空調管理装置200に自動的にその内容を通知するようにしてもよい。
(a.2)空調管理装置200は,空調機器100の運転状態を,運転状態ファイルとしてWebサーバ400に送信する。定期的に送信するようにしてもよいし,空調機器100の運転状態が変化したときのみ送信してもよい。Webサーバ400は,その運転状態ファイルを記憶手段に格納する。
(a.3)ユーザは,遠隔監視端末500のWebブラウザを用いてWebサーバ400にアクセスし,上述の運転状態ファイルの送信を要求する。ユーザは,取得した運転状態ファイルをWebブラウザ上で閲覧することで,空調機器100の運転状態を監視する。
[0020] (b)空調機器100の制御
(b.1)ユーザは,遠隔監視端末500のWebブラウザを用いて,空調機器100に対する制御命令を入力する。遠隔監視端末500は,その入力に基づき制御命令ファイルを生成し,Webサーバ400に送信する。Webサーバ400は,その制御命令ファイルを記憶手段に格納する。
(b.2)空調管理装置200は,Webサーバ400が格納している上述の制御命令ファイルを送信するよう,Webサーバ400へ定期的に要求する。
(b.3)空調管理装置200は,取得した制御命令ファイル中で指示されている制御命令を実行し,空調機器100の制御を行う。
[0021] 遠隔監視端末500から行う制御内容は,任意に構成することができる。
例えば,空調機器100に対する操作でもよいし,空調管理装置200に対するスケジュールや省エネなどの設定でもよく,空調管理装置200に対し空調機器100の運転状態を定期的に取得するよう指示するものでもよい。
[0022] 図2で説明した遠隔監視,制御の手法によれば,インターネット30の側から空調機器100や空調管理装置200に向けたアクセスを許可する必要がなく,空調管理装置200からWebサーバに向けたアクセスのみを許可するのみで,遠隔監視端末500から空調機器100の監視,制御を行うことができる。
[0023] 本実施の形態1では,遠隔監視端末500から空調機器100の監視・制御を行う例を説明したが,空調管理装置200の監視・制御についても,同様の手順により行うことができる。以下の実施の形態でも同様である。
[0024] 以上のように,本実施の形態1に係る空調管理システムでは,LAN20に接続された各機器にプライベートIPアドレスを割り当てておき,インターネット30からLAN20にアクセスすることができないように,建物内のネットワークを構成した。
これにより,LAN20に接続された空調機器100や空調管理装置200をインターネット30から直接アクセスできるようにするネットワーク構成と比較して,これらの機器のネットワークセキュリティを高めることができる。
[0025] また,本実施の形態1に係る空調管理システムにおいて,空調管理装置200は,空調機器100の運転状態を表す運転状態データを定期的に取得してWebサーバ400に送信し,遠隔監視端末500は,Webサーバ400に格納された運転状態ファイルを取得して,空調機器100の運転状態を取得する。
これにより,遠隔監視端末500は,LAN20に直接アクセスすることなく,空調機器100の運転状態を監視することができるので,LAN20に接続された各機器のネットワークセキュリティを維持しつつ,空調機器100に対する遠隔監視を実現することができる。
[0026] また,本実施の形態1に係る空調管理システムにおいて,遠隔監視端末500は,空調機器100に対する制御命令を記載した制御命令ファイルをWebサーバ400に送信し,空調管理装置200は,Webサーバ400に格納された制御命令ファイルを定期的に取得して空調機器100の制御を行う。
これにより,遠隔監視端末500は,LAN20に直接アクセスすることなく,空調機器100の制御を行うことができるので,LAN20に接続された各機器のネットワークセキュリティを維持しつつ,空調機器100に対する遠隔制御を実現することができる。
[0027] 実施の形態2.
実施の形態1では,本発明に係る空調管理システムのネットワーク構成と,遠隔監視および制御の手法について説明した。
本発明の実施の形態2では,空調管理システムを構成する各機器の詳細構成および動作について,1例を説明する。
[0028] 図3は,空調機器100の機能ブロック図である。図3では,空調機器100aの機能ブロック図を示したが,空調機器100bも同様の構成を備える。
空調機器100は,制御部110,センサ120,記憶部130,通信管理部140を備える。
制御部110は,空調機器100の通常動作の制御を行うとともに,センサ120の検出結果を反映して運転状態を制御する。また,センサ120の検出結果を用いて,空調機器100の運転状態を表す運転状態データ131を作成し,記憶部130に格納する。
運転状態データ131の作成は,運転状態が変化した際や,所定時間間隔など,適宜定められたタイミングで実行する。
センサ120は,空調機器100の各部の温度や圧力などを検出する。
記憶部130は,運転状態データ131と,空調機器100の機種情報132とを格納する。機種情報132は,あらかじめ記憶部130に格納しておいてもよいし,ユーザが入力するなどして設定してもよい。
通信管理部140は,空調管理装置200と通信を行う。
[0029] 制御部110は,その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することもできるし,マイコンやCPU(Central Processing Unit)のような演算装置と,その動作を規定するソフトウェアとで構成することもできる。
記憶部130は,HDDやフラッシュROM(Read Only Memory)のような記憶装置で構成することができる。
通信管理部140は,空調管理装置200と接続するために必要な通信インターフェースを備える。
[0030] 図4は,空調管理装置200の機能ブロック図である。図4では,空調管理装置200aの機能ブロック図を示したが,その他の空調管理装置も同様の構成を備える。
空調管理装置200は,一つ以上の建物を持つ施設に配備された空調機器100を統合的に監視,制御する装置であり,表示装置210,入力装置220,設備機器インタフェース230,遠隔インタフェース240,制御部250,記憶部260を備える。
[0031] 表示装置210は,空調機器100の運転状態を画面表示する。
入力装置220は,ユーザが監視画面切り換えや空調機器100の操作入力を行うための装置である。
設備機器インタフェース230は,空調機器100と接続して通信を行うための通信インタフェースである。
遠隔インタフェース240は,LAN20に接続され,ローカル監視端末300やWebサーバ400と通信を行うための通信インタフェースである。
制御部250は,通常動作用の画面表示や入力受付,空調機器100の運転制御を行う。また,空調機器100,ローカル監視端末300,Webサーバ400との通信制御を行う。
記憶部260は,後述の各データを格納する。
[0032] 制御部250は,設備機器通信管理部251,ローカル通信管理部252,遠隔通信管理部253を備える。
設備機器通信管理部251は,設備機器インタフェース230を介して空調機器100と通信し,空調機器100の動作を制御し,また,運転状態データを取得して記憶部260に格納する。
ローカル通信管理部252は,遠隔インタフェース240を介して,同一建物内に設置されたローカル管理端末300との通信を行う。
遠隔通信管理部253は,Webサーバ400への運転状態データの送信,制御命令ファイルの受信・解析を行う。
[0033] 遠隔通信管理部253は,FTP通信管理部254,運転データ送信部255,制御命令ファイル受信部256を備える。
FTP通信管理部254は,Webサーバ400との間のFTP通信制御を行う。
運転データ送信部255は,空調機器100から取得した運転状態データ261を,FTP通信管理部254を介してWebサーバ400に定期的に送信する。
制御命令ファイル受信部256は,空調機器100に対する制御命令を記載した制御命令ファイルを,FTP通信管理部254を介してWebサーバ400から受信し,その内容を解析する。
[0034] 記憶部260は,運転状態データ261,Webサーバ設定262,データ更新設定263,製造番号264を格納する。
運転状態データ261は,空調機器100の運転状態を表すデータである。
Webサーバ設定262は,Webサーバ400のIPアドレスやURL等が記録されたデータファイルである。
データ更新設定263は,各データの収集項目や収集周期,Webサーバ400へ運転状態データ261を送信するタイミング等の更新設定を記録したデータファイルである。
製造番号264は,空調管理装置200の固有製造番号を記録したデータファイルである。製造番号以外の固有番号,例えばMACアドレスやシリアルナンバーを用いてもよい。
[0035] 設備機器通信管理部251は,空調機器100の新たな運転状態を取得する毎に,運転状態データ261を更新する。
Webサーバ設定262,データ更新設定263,製造番号264は,あらかじめ記憶部260に格納しておいてもよいし,ユーザが入力するなどして設定してもよい。
[0036] 制御部250,および制御部250が備える各構成部は,その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することもできるし,マイコンやCPUのような演算装置と,その動作を規定するソフトウェアとで構成することもできる。
記憶部260は,HDDやフラッシュROMのような記憶装置で構成することができる。
[0037] 図5は,Webサーバ400の機能ブロック図である。
Webサーバ400は,インターネット上にホームページを公開するためのサーバであり,遠隔インタフェース410,制御部420,記憶部430を備える。
[0038] 遠隔インタフェース410は,HTTP(Hyper Text Transfer Protocol)やFTP(File Transfer Protocol)を用いて,空調管理装置200や遠隔監視端末500と通信する。
制御部420は,HTTPやFTPを用いた通信を制御する。
記憶部430は,後述の各データを格納する。
[0039] 制御部420は,HTTP通信管理部421,FTP通信管理部422を備える。
HTTP通信管理部421は,遠隔インタフェース410を介して,遠隔監視端末500に対し後述のWeb画面表示ファイル431,監視制御プログラム423を送信する。
FTP通信管理部422は,遠隔インタフェース410を介して,空調管理装置200および遠隔監視端末500との間で,後述の運転状態ファイル433と制御命令ファイル434を送受信する。
[0040] 記憶部430は,Web画面表示ファイル431,監視制御プログラム432,運転状態ファイル433,制御命令ファイル434を格納する。
Web画面表示ファイル431は,遠隔監視端末500が備えるWebブラウザ上で表示する各種HTMLファイル,画像ファイル,音データ等の,Webページを構成する各データである。
監視制御プログラム432は,遠隔監視端末500が備えるWebブラウザ上で実行され,ユーザが空調機器100の監視や制御を行うためのアプリケーションである。
運転状態ファイル433は,空調管理装置200がWebサーバ400に対しFTPを用いて送信する運転状態ファイルの内容を記録したデータファイルである。
制御命令ファイル434は,遠隔監視端末500がWebサーバ400に対しFTPを用いて送信する制御命令ファイルの内容を記録したデータファイルである。
なお,記憶部430内の具体的なフォルダ構成例は,後述の図8で説明する。
[0041] 制御部420,および制御部420が備える各構成部は,その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することもできるし,マイコンやCPUのような演算装置と,その動作を規定するソフトウェアとで構成することもできる。
記憶部430は,HDDやフラッシュROMのような記憶装置で構成することができる。
[0042] 図6は,遠隔監視端末500の機能ブロック図である。
遠隔監視端末500は,ユーザがWebブラウザを用いてWebサーバ400に接続し,空調機器100の監視,制御を行うための端末である。遠隔監視端末500は,Webブラウザが動作する汎用パソコンで構成することができる。
遠隔監視端末500は,表示装置510,入力装置520,遠隔インタフェース530,制御部540,監視制御プログラム550を備える。
[0043] 表示装置510は,制御部540が実行するWebブラウザが生成する,空調機器100を監視・制御するための画面を画面表示する。
入力装置520は,ユーザが空調機器100の監視内容の切り換えや制御内容を入力するための装置である。
遠隔インタフェース530は,HTTPやFTPを用いて,Webサーバ400と通信するための通信インタフェースである。
制御部540は,HTTPやFTPを用いた通信を制御する。また,Webブラウザを実行し,空調機器100を監視・制御するための画面を表示装置510に画面表示させる。さらには,Webブラウザ上で,監視制御プログラム550を実行する。
監視制御プログラム550は,例えばJava(登録商標)アプレットやFlashなどのWebブラウザ上で実行されるプログラムで構成され,Webブラウザ上で,空調機器100を監視・制御するための画面を生成する。詳細は後述する。
[0044] 制御部540は,HTTP通信管理部541,FTP通信管理部542,表示制御部543,監視制御プログラム制御部544を備える。
[0045] HTTP通信管理部541は,遠隔インタフェース530を介して,Webサーバ400よりWeb画面表示ファイル431,監視制御プログラム423を取得する。制御部540は,取得した監視制御プログラム423をメモリ上に展開し,監視制御プログラム550としてWebブラウザ上で実行する。
FTP通信管理部542は,遠隔インタフェース410を介して,Webサーバ400より運転状態ファイル433を受信し,Webサーバ400へ制御命令ファイル434を送信する。
表示制御部543は,Webブラウザや監視制御プログラム550の画面表示処理を制御する。
監視制御プログラム制御部544は,監視制御プログラム550の起動,動作制御,終了管理等の制御を行う。
[0046] 監視制御プログラム550は,Webブラウザ上で実行されるプログラムであり,運転データ受信部551,制御命令データ送信部552,表示制御部553を備える。これら各機能部は,Webブラウザ上で実行されるプログラムの1モジュールとして構成されている。
運転データ受信部551は,Webサーバ400から,空調機器100の運転状態を表す運転状態ファイルを受信して解析する。
制御命令データ送信部552は,Webサーバ400に,空調機器100に対する制御命令を記載した制御命令ファイルを送信する。
表示制御部553は,運転状態ファイル等の画面表示処理を行う。
[0047] 制御部540は,および制御部540が備える各構成部は,その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することもできるし,マイコンやCPUのような演算装置と,その動作を規定するソフトウェアとで構成することもできる。
[0048] 以上,空調管理システムを構成する各機器の詳細構成について説明した。
次に,空調機器100を遠隔から監視・制御する際の各機器の動作を説明する。
[0049] 図7は,遠隔監視端末500から空調機器100の運転状態を監視するための,各機器の動作手順を説明する図である。以下,図7の各ステップについて説明する。
[0050] (S701)
空調機器100の制御部110は,空調機器100の運転状態が変化した際,または所定時間間隔などのタイミングで,センサ120の検出結果等に基づき運転状態を取得し,運転状態データ131を記憶部130に格納する。
(S702)
制御部110は,運転状態データ131を作成したタイミング,または空調管理装置200から要求を受けたタイミングなどで,空調管理装置200に対し,通信管理部140を介して運転状態データ131を送信する。
(S703)
空調機器100の処理は,以上で終了する。
[0051] (S711)
空調管理装置200の制御部250は,運転状態データ261の更新処理を開始する。
(S712)
設備機器通信管理部251は,ステップS702で空調機器100が送信した運転状態データを受信し,記憶部260に運転状態データ261として格納する。
(S713)
制御部250は,データ更新設定263に設定されている値を取得し,運転状態データ261をWebサーバ400に送信して更新するタイミングであるか否かを判定する。
更新するタイミングであればステップS714へ進み,更新するタイミングでなければステップS712に戻る。
[0052] (S714)
運転データ送信部255は,運転状態データ261を,後述の図9で説明するファイル形式に変換する。
(S715)
運転データ送信部255は,Webサーバ設定262に設定されている値を取得し,Webサーバ400のIPアドレス等を取得する。次に,運転データ送信部255は,ステップS714で変換したファイルを,FTP通信管理部254および遠隔インタフェース240を介して,Webサーバ400にFTPを用いて送信する。
[0053] (S721)
遠隔監視端末500のユーザは,入力装置520を操作して,Webブラウザを起動するよう指示する。制御部540は,Webブラウザを起動し,その画面を表示装置510に画面表示させる。
次にユーザは,入力装置520を操作して,WebブラウザのURL欄に,Webサーバ400が公開しているWebページのURL(Uniform Resource Locator)を入力する。
[0054] (S722)
HTTP通信管理部541は,ステップS721でユーザが入力したURLに対し,遠隔インタフェース530を介して,HTTPのWebページ取得要求を発行する。
HTTP通信管理部541は,そのWebページを構成するWeb画面表示ファイル431と監視制御プログラム432を,Webサーバ400より受信する。
[0055] (S723)
表示制御部543は,ステップS722でWebサーバ400から受信したWeb画面表示ファイル431を,Webブラウザに画面表示させる。
監視制御プログラム制御部544は,ステップS722でWebサーバ400から受信した監視制御プログラム432をメモリ上に展開し,監視制御プログラム550として,Webブラウザ上で実行する。
次に,監視制御プログラム制御部544は,監視制御プログラム550の表示制御部553が規定する動作に従い,空調機器100の監視・制御を行うための画面を,Webブラウザに画面表示させる。
[0056] (S724)
監視制御プログラム制御部544は,監視制御プログラム550の運転データ受信部551が規定する動作に従い,FTP通信管理部542,遠隔インタフェース530を介して,Webサーバ400より運転状態ファイル433をFTPで取得する。
(S725)
監視制御プログラム制御部544は,監視制御プログラム550の運転データ受信部551が規定する動作に従い,ステップS724で受信した運転状態ファイル433を解析する。
次に,監視制御プログラム制御部544は,表示制御部553が規定する動作に従い,その運転状態をWebブラウザに画面表示させる。
(S726)
運転状態の画面表示処理を終了する。
[0057] (S731)
Webサーバ400の制御部420は,HTTPやFTPを用いてWebサーバ400宛てに発行されるリクエストを待機している。
(S732)
FTP通信管理部422は,遠隔インタフェース410を介して,空調管理装置200が送信した運転状態ファイルをFTPで受信する。
(S733)
HTTP通信管理部421は,遠隔インタフェース410を介して,遠隔監視端末500にWeb画面表示ファイル431を送信する。
(S734)
FTP通信管理部422は,遠隔インタフェース410を介して,遠隔監視端末500に運転状態ファイル433を送信する。
[0058] 図8は,Webサーバ400の記憶部430内のフォルダ構成例を示す図である。
データ格納用ルートフォルダは,各データファイルを配下に格納するための最上位フォルダである。
データ格納用ルートフォルダは,空調管理装置200の固有番号と同一の名称が付された固有番号フォルダで区分けされている。
固有番号フォルダは,その固有番号に対応する空調管理装置200に対し空調機器100の監視・制御を指示するためのWebページを構成するHTMLファイルを格納している。本HTMLファイルは,Web画面表示ファイル431の一部を構成する。
また,固有番号フォルダは,画像フォルダ,運転状態ファイルフォルダ,制御命令ファイルフォルダを有する。
[0059] 画像フォルダは,当該空調管理装置200に対し空調機器100の監視・制御を指示するためのWebページを構成する画像ファイル,その他のマルチメディアファイル等を格納する。
運転状態ファイルフォルダは,当該空調管理装置200が監視を行う空調機器100に対応した運転状態ファイル433を格納する。
制御命令ファイルフォルダは,当該空調管理装置200が制御を行う空調機器100に対応した制御命令ファイル434を格納する。
[0060] 図9は,運転状態ファイル433の構成例を示す図である。
運転状態ファイル433はCSV(Comma Separated Value)形式で記載されている。1行目は各列の名称,2行目以降が空調機器100の運転状態を表すデータ行である。
[0061] 図9の例では,1列目は当該空調管理装置200が監視を行う空調機器100のアドレス,2列目はその空調機器100の電源ON/OFF,3列目は運転モード,4列目は設定温度,5列目は吸気温度,6列目はファン速度,の各運転状態を表す現在値が記録されている。
[0062] 図9の例では,空調機器100の運転状態の現在値を取得した例を示したが,センサ120の取得値や異常状態等の運転データを取得して運転状態ファイル433に記録するようにしてもよい。
また,ファイル形式はCSVに限らず,空白区切りやその他の区切り文字を使ったファイル形式で構成してもよいし,区切り文字を無くしてデータのみを詰めたバイナリ形式としてもよく,さらにはデータを圧縮して作成したファイルとしてもよい。
[0063] 以上,遠隔監視端末500から空調機器100の運転状態を監視するための,各機器の動作手順を説明した。
次に,遠隔監視端末500から空調機器100の動作を制御するための,各機器の動作手順を説明する。
[0064] 図10は,遠隔監視端末500から空調機器100の動作を制御するための,各機器の動作手順を説明する図である。以下,図10の各ステップについて説明する。
[0065] (S1011)
遠隔監視端末500のユーザは,入力装置520を操作して,Webブラウザに空調機器100の制御画面を画面表示させる。
(S1012)
ユーザは,入力装置520を操作して,Webブラウザ上で実行されている監視制御プログラムの画面上で,空調機器100に対する制御命令を入力する。ここで入力される制御命令は,例えば「電源をOFFにする」といった動作指令である。
[0066] (S1013)
遠隔監視端末500の監視制御プログラム制御部544は,ステップS1012でユーザが入力した制御命令の内容に基づき,後述の図11で説明するような形式の制御命令ファイルを生成する。
(S1014)
監視制御プログラム制御部544は,制御命令データ送信部552が規定する動作に従い,FTP通信管理部542,遠隔インタフェース530を介して,ステップS1013で生成した制御命令ファイルをFTPでWebサーバ400に送信する。
(S1015)
遠隔監視端末500の動作を終了する。
[0067] (S1021)
空調管理装置200の制御部250は,制御命令の実行処理を開始する。
(S1022)
制御部250は,例えば所定時間間隔などで,以下の制御命令を実行するステップに進む。制御命令を実行するタイミングであれば次のステップS1023へ進み,実行するタイミングでなければ例えば所定時間待機して本ステップを再実行する。
[0068] (S1023)
制御命令ファイル受信部256は,FTP通信管理部254,遠隔インタフェース240を介して,Webサーバ400より制御命令ファイル434をFTPで受信する。
(S1024)
制御命令ファイル受信部256は,受信した制御命令ファイル434を解析する。
制御命令ファイル受信部256は,設備機器通信管理部251,設備機器インタフェース230を介して,制御命令ファイル434で指示されている,空調機器100に対する制御命令を実行する。
[0069] (S1031)
Webサーバ400の制御部420は,HTTPやFTPを用いてWebサーバ400宛てに発行されるリクエストを待機している。
(S1032)
FTP通信管理部422は,遠隔インタフェース410を介して,遠隔監視端末500が送信した制御命令ファイルをFTPで受信する。
(S1033)
FTP通信管理部422は,遠隔インタフェース410を介して,空調管理装置200に制御命令ファイル434を送信する。
[0070] (S1041)
空調機器100の制御部110は,制御処理を開始する。
(S1042)
制御部110は,通信管理部140を介して空調管理装置200が発行した制御命令を受け取り,その制御動作を実行する。
(S1043)
制御処理を終了する。
[0071] 図11は,制御命令ファイル434の構成例を示す図である。
この例では,操作とスケジュール設定を行う例を示したが,省エネ制御や定時通信等の制御データも利用される。
制御命令ファイル434は,CSV形式のテキストファイルである。各列は,「制御対象項目=制御値」の形式で記載されている。
ファイル形式はCSVに限らず,空白区切りやその他の区切り文字を使ったファイル形式で構成してもよいし,区切り文字を無くしてデータのみを詰めたバイナリ形式としてもよく,さらにはデータを圧縮して作成したファイルとしてもよい。」(3?18頁)

上記引用例1の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると,上記ロ.の[0010]における「図1は,本発明の実施の形態1に係る空調管理システムの構成図である。本実施の形態1に係る空調管理システムは,一つ以上の建物を持つ施設内に,空調機器100a?100b,空調管理装置200a?200c,ローカル監視端末300を有する。また,インターネット30を介してWebサーバ400が接続され,遠隔地には同様にインターネット30に接続された遠隔監視端末500を有する。」との記載,同ロ.の[0013]における「空調管理装置200は,複数の空調機器100を統合的に監視,制御する装置である。」との記載,及び図1によれば,引用例1の空調管理システムは,建物内に有する空調機器(100)を制御する空調管理装置(200)と,空調管理装置(200)にインターネット(30)を介して接続されるWebサーバ(400)と,インターネット(30)に接続される遠隔監視端末(500)と,を備えている。
また,上記ロ.の[0042]における「図6は,遠隔監視端末500の機能ブロック図である。」との記載,同ロ.の[0043]における「表示装置510は,制御部540が実行するWebブラウザが生成する,空調機器100を監視・制御するための画面を画面表示する。入力装置520は,ユーザが空調機器100の監視内容の切り換えや制御内容を入力するための装置である。」との記載,及び図6によれば,前述の遠隔監視端末(500)は,空調機器(100)を監視・制御するための画面を表示する表示装置(510)と,空調機器(100)に対する制御内容を入力する入力装置(520)と,を備えている。
また,上記ロ.の[0045]における「FTP通信管理部542は,遠隔インタフェース410を介して,・・・Webサーバ400へ制御命令ファイル434を送信する。」との記載,及び図6によれば,前述の遠隔監視端末(500)は,Webサーバ(400)へ制御命令ファイル(434)を送信するFTP通信管理部(542)を備えており,このFTP通信管理部(542)の機能を制御命令ファイル(434)をWebサーバ(400)へ送信する制御命令ファイル送信手段と称することは任意である。ここで,同ロ.の[0071]における「図11は,制御命令ファイル434の構成例を示す図である。この例では,操作とスケジュール設定を行う例を示した」との記載によれば,前述の制御命令ファイル(434)は,前述の入力装置(520)によって入力されたものである。
また,上記ロ.の[0045]における「FTP通信管理部542は,遠隔インタフェース410を介して,Webサーバ400より運転状態ファイル433を受信し」との記載,及び図6によれば,前述の遠隔監視端末(500)は,Webサーバ(400)より運転状態ファイル(433)を受信するFTP通信管理部(542)を備えており,このFTP通信管理部(542)の機能を運転状態ファイル(433)をWebサーバ(400)から受信する運転状態ファイル受信手段と称することは任意である。ここで,同ロ.の[0060]における「図9は,運転状態ファイル433の構成例を示す図である。運転状態ファイル433はCSV(Comma Separated Value)形式で記載されている。1行目は各列の名称,2行目以降が空調機器100の運転状態を表すデータ行である。」との記載によれば,前述の運転状態ファイル(433)は,空調機器(100)の運転状態を示すものである。
また,上記ロ.の[0019]における「ユーザは,遠隔監視端末500のWebブラウザを用いてWebサーバ400にアクセスし,上述の運転状態ファイルの送信を要求する。ユーザは,取得した運転状態ファイルをWebブラウザ上で閲覧することで,空調機器100の運転状態を監視する。」との記載によれば,ユーザが,遠隔監視端末(500)のWebブラウザ上で運転状態ファイル(433)を閲覧することで,空調機器(100)の運転状態を監視できる以上,前述の表示装置(510)は,前述の運転状態ファイル(433)によって示される空調機器(100)の運転状態を表示していることは明らかである。
また,上記ロ.の[0037]における「図5は,Webサーバ400の機能ブロック図である。」との記載,同ロ.の[0039]における「FTP通信管理部422は,遠隔インタフェース410を介して,空調管理装置200および遠隔監視端末500との間で,後述の運転状態ファイル433と制御命令ファイル434を送受信する。」との記載,及び図5によれば,前述のWebサーバ(400)は,制御命令ファイル(434)を空調管理装置(200)へ送信するFTP通信管理部(422)を備えており,このFTP通信管理部(422)の機能を,遠隔監視端末(500)の前述の制御命令ファイル送信手段によって送信された制御命令ファイル(434)を空調管理装置(200)へ送信する制御命令ファイル伝送手段と称することは任意である。
また,前述のWebサーバ(400)は,運転状態ファイル(433)を空調管理装置(200)から受信し,遠隔監視端末(500)へ送信するFTP通信管理部(422)を備えており,このFTP通信管理部(422)の機能を,運転状態ファイル(433)を空調管理装置(200)から遠隔監視端末(500)へ送信する運転状態ファイル伝送手段と称することは任意である。
また,上記ロ.の[0030]における「図4は,空調管理装置200の機能ブロック図である。」との記載,同ロ.の[0033]における「制御命令ファイル受信部256は,空調機器100に対する制御命令を記載した制御命令ファイルを,FTP通信管理部254を介してWebサーバ400から受信し,その内容を解析する。」との記載,同ロ.の[0032]における「設備機器通信管理部251は,設備機器インタフェース230を介して空調機器100と通信し,空調機器100の動作を制御し」との記載,及び図4によれば,前述の空調管理装置(200)は,制御命令ファイル受信部(256)が,Webサーバ(400)から制御命令ファイル(434)を受信し,設備機器通信管理部(251)が,制御命令ファイル(434)に基づいて空調機器(100)を制御するから,Webサーバ(400)の前述の制御命令ファイル伝送手段によって送信された制御命令ファイル(434)に基づいて空調機器(100)を制御する設備機器通信管理部(251)を備えているということができる。
また,上記ロ.の[0033]における「運転データ送信部255は,空調機器100から取得した運転状態データ261を,FTP通信管理部254を介してWebサーバ400に定期的に送信する。」との記載,同ロ.の[0052]における「運転データ送信部255は,運転状態データ261を,後述の図9で説明するファイル形式に変換する。」との記載,及び図4によれば,前述の空調管理装置(200)は,空調機器(100)から空調機器(100)の運転状態データ(261)を取得して運転状態ファイル(433)に変換し,Webサーバ(400)へ送信する運転データ送信部(255)を備えている。
また,上記ロ.の[0020]における「(b.2)空調管理装置200は,Webサーバ400が格納している上述の制御命令ファイルを送信するよう,Webサーバ400へ定期的に要求する。(b.3)空調管理装置200は,取得した制御命令ファイル中で指示されている制御命令を実行し,空調機器100の制御を行う。」との記載,及び図2によれば,前述の空調管理装置(200)は,制御命令ファイル(434)の送信をWebサーバ(400)に要求し,空調管理装置(200)は,制御命令ファイル(434)に基づいて空調機器(100)を制御しているから,前述の空調管理装置(200)は,制御命令ファイル(434)の送信をWebサーバ(400)に要求し,Webサーバ(400)の前述の制御命令ファイル伝送手段が,遠隔監視端末(500)の前述の制御命令ファイル送信手段によって制御命令ファイル(434)が送信された場合に,空調管理装置(200)からの前述の要求に応答して,制御命令ファイル(434)を空調管理装置(200)へ送信していることは明らかである。

したがって,上記引用例1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「空調機器(100)を制御する空調管理装置(200)と,該空調管理装置(200)にインターネット(30)を介して接続されるWebサーバ(400)と,前記インターネット(30)に接続される遠隔監視端末(500)と,を備える空調管理システムであって,
前記遠隔監視端末(500)は,
前記空調機器(100)を監視・制御するための画面を表示する表示装置(510)と,
前記空調機器(100)に対する制御内容を入力する入力装置(520)と,
前記入力装置(520)によって入力された制御命令ファイル(434)を前記Webサーバ(400)へ送信する制御命令ファイル送信手段と,
前記空調機器(100)の運転状態を示す運転状態ファイル(433)を前記Webサーバ(400)から受信する運転状態ファイル受信手段と,
を有し,
前記表示装置(510)は,前記運転状態ファイル(433)によって示される前記空調機器(100)の運転状態を表示し,
前記Webサーバ(400)は,
前記遠隔監視端末(500)の前記制御命令ファイル送信手段によって送信された前記制御命令ファイル(434)を前記空調管理装置(200)へ送信する制御命令ファイル伝送手段と,
前記運転状態ファイル(433)を前記空調管理装置(200)から前記遠隔監視端末(500)へ送信する運転状態ファイル伝送手段と,
を有し,
前記空調管理装置(200)は,
前記Webサーバ(400)の前記制御命令ファイル伝送手段によって送信された前記制御命令ファイル(434)に基づいて前記空調機器(100)を制御する設備機器通信管理部(251)と,
前記空調機器(100)から該空調機器(100)の運転状態データ(261)を取得して運転状態ファイル(433)に変換し,前記Webサーバ(400)へ送信する運転データ送信部(255)と,
を有し,
前記空調管理装置(200)は,前記制御命令ファイル(434)の送信を前記Webサーバ(400)に要求し,
前記Webサーバ(400)の前記制御命令ファイル伝送手段は,前記制御命令ファイル送信手段によって前記制御命令ファイル(434)が送信された場合に,前記空調管理装置(200)からの前記要求に応答して,前記制御命令ファイル(434)を前記空調管理装置(200)へ送信する,空調管理システム。」

(2)刊行物に記載された事項
(刊行物1)
原査定の拒絶の理由に引用された特開2008-131386号公報(以下「刊行物1」という。)には,段落【0039】-【0052】を参照すると,図面(特に,図5)ともに以下の事項が記載されていると認められる。

「情報処理装置は,通信先の情報処理装置との間でTCPセッションを確立すると,該TCPセッションが切断されないように,TCP KeepAlive用(TCPセッション維持用)パケットを通信先に送信し通信先からACKを受信することを繰り返すこと。」

(刊行物2)
原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-151060号公報(以下「刊行物2」という。)には,段落【0029】と図5を参照すると,以下の事項が記載されていると認められる。

「ガスメータからアクセスを受けたサーバは,前記ガスメータに関する指令が存在するか否かを検出し,存在する場合はその指令を前記ガスメータに送信し,存在しない場合は前記検出を繰り返すこと。」

(刊行物3)
前置報告において新たに引用された特開2002-300160号公報(以下「刊行物3」という。)には,段落【0031】-【0038】と図3を参照すると,以下の事項が記載されていると認められる。

「メインGUIにおいて,サイトを意味する矩形図形オブジェクトと,関連するサイト同士の間に引かれサイト間の通信経路を表す直線オブジェクトを表示し,前記直線オブジェクトに特殊図形を重畳することで,前記特殊図形が重畳された通信経路に障害が発生していることを明示的に表すこと。」

(刊行物4)
前置報告において新たに引用された特開2011-9961号公報(以下「刊行物4」という。)には,段落【0088】を参照すると,以下の事項が記載されていると認められる。

「通信障害が発生していると特定された場合に,『通信先デバイスの状態を確認した後に,再操作してください。』というメッセージを表示すること。」

(刊行物5)
前置報告において新たに引用された特開2012-244208号公報(以下「刊行物5」という。)には,段落【0052】-【0056】と図6-図8を参照すると,以下の事項が記載されていると認められる。

「ディスプレイ上に,選択された親機に関連している各機器の通信状態が表示され,前記通信状態は,各機器間の無線通信の電界強度もしくは無線通信成功率に基づく色のラインで表示されること。」

(3)対比
補正発明と引用発明とを対比する。
a.引用発明の「空調機器(100)」,「空調管理装置(200)」,「インターネット(30)」,「Webサーバ(400)」,「遠隔監視端末(500)」,「表示装置(510)」,「制御命令ファイル送信手段」,「運転状態ファイル受信手段」,「制御命令ファイル伝送手段」,「運転状態ファイル伝送手段」,「設備機器通信管理部(251)」及び「運転データ送信部(255)」は,後述する相違点を除いて,補正発明の「電気機器」,「コントローラ」,「広域ネットワーク」,「サーバ」,「操作端末」,「表示手段」,「操作内容送信手段」,「状態受信手段」,「操作内容伝送手段」,「状態伝送手段」,「制御手段」及び「状態送信手段」にそれぞれ相当する。
b.引用発明の「監視・制御するための画面」は,ユーザが操作するための情報を提供するから,「操作するための情報」ということができる。
c.引用発明の「制御内容」は,ユーザが操作して空調機器(100)を制御する内容であるから,「操作の内容」ということができる。
d.引用発明の「入力する入力装置(520)」は,ユーザが入力して制御内容を取得するから,「ユーザから取得する取得手段」ということができる。
e.引用発明の「制御命令ファイル(434)」は,上記引用例1の上記ロ.の[0071]における「図11は,制御命令ファイル434の構成例を示す図である。この例では,操作とスケジュール設定を行う例を示した」との記載によれば,「操作の内容」ということができる。
f.引用発明の「制御命令ファイル送信手段」は,上記e.の対比を考慮すれば,「操作内容送信手段」ということができる。
g.引用発明の「運転状態」は,補正発明の「状態」に含まれる。
h.ファイルが送受信されるときには信号として送受信されることは出願時の技術常識であるところ,「状態」を含む「運転状態ファイル」を送受信することが,補正発明の「状態信号」を送受信することに対応するから,引用発明の「運転状態ファイル(433)」は,「状態信号」ということができる。
i.引用発明の「運転状態ファイル受信手段」は,上記h.の対比を考慮すれば,「状態受信手段」ということができる。
j.引用発明の「制御命令ファイル伝送手段」は,上記f.の対比を考慮すれば,「操作内容伝送手段」ということができる。
k.引用発明の「送信する」は,「伝送する」ということができる。
l.引用発明の「運転状態ファイル伝送手段」は,上記h.の対比を考慮すれば,「状態伝送手段」ということができる。
m.引用発明の「空調機器(100)の運転状態データ(261)」は,空調機器(100)の運転状態を表しているから,「電気機器の状態」ということができる。
n.引用発明の「運転状態ファイル(433)に変換し」は,運転状態データ(261)を運転状態ファイル(433)形式に変換して運転状態ファイル(433)を生成しており,また,上記h.の対比を考慮すれば,「状態信号を生成し」ということができる。
o.引用発明の「空調管理システム」は,遠隔監視端末(500)から,インターネット(30)を介して,Webサーバ(400)及び空調管理装置(200)を用いて,空調機器(100)を遠隔操作するから,「遠隔操作システム」ということができる。

したがって,補正発明と引用発明は,以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「電気機器を制御するコントローラと,該コントローラに広域ネットワークを介して接続されるサーバと,前記広域ネットワークに接続される操作端末と,を備える遠隔操作システムであって,
前記操作端末は,
前記電気機器を操作するための情報を表示する表示手段と,
前記電気機器に対する操作の内容をユーザから取得する取得手段と,
前記取得手段によって取得された前記操作の内容を前記サーバへ送信する操作内容送信手段と,
前記電気機器の状態を示す状態信号を前記サーバから受信する状態受信手段と,
を有し,
前記表示手段は,前記状態信号によって示される前記電気機器の状態を表示し,
前記サーバは,
前記操作端末の前記操作内容送信手段によって送信された前記操作の内容を前記コントローラへ伝送する操作内容伝送手段と,
前記状態信号を前記コントローラから前記操作端末へ伝送する状態伝送手段と,
を有し,
前記コントローラは,
前記サーバの前記操作内容伝送手段によって伝送された前記操作の内容に基づいて前記電気機器を制御する制御手段と,
前記電気機器から該電気機器の状態を取得して前記状態信号を生成し,前記サーバへ送信する状態送信手段と,
前記コントローラは,前記操作の内容の送信を前記サーバに要求し,
前記サーバの前記操作内容伝送手段は,前記操作内容送信手段によって前記操作の内容が送信された場合に,前記コントローラからの前記要求に応答して,前記操作の内容を前記コントローラへ伝送する,遠隔操作システム。」

(相違点1)
前記「表示手段」が表示する事項について,補正発明では,「前記操作端末から前記サーバ及び前記コントローラを介して前記電気機器へ至る通信経路について,通信障害を含む通信状況と,現在の通信状況に基づいてユーザを支援するためのアドバイスと,通信品質と,」を表示するのに対して,引用発明では,これらの事項を表示することが記載されていない点。

(相違点2)
「前記操作端末の前記操作内容送信手段によって前記操作の内容が送信されていない場合」の「前記サーバの前記操作内容伝送手段」の動作について,補正発明では,「前記コントローラからの前記要求に対する応答を保留して,該応答を保留している間は前記コントローラとのセッションを維持するための応答を前記コントローラに送信することにより前記コントローラとのセッションを維持」するのに対し,引用発明では,前記場合のことが記載されていない点。

(4)判断
前記相違点1について検討する。

補正発明では,「前記操作端末の前記操作内容送信手段によって前記操作の内容が送信されていない場合に,前記コントローラからの前記要求に対する応答を保留して,該応答を保留している間は前記コントローラとのセッションを維持するための応答を前記コントローラに送信することにより前記コントローラとのセッションを維持し,前記操作内容送信手段によって前記操作の内容が送信された場合に,前記コントローラからの前記要求に応答して,前記操作の内容を前記コントローラへ伝送する」ことにより,電気機器を制御するコントローラとサーバとのセッションが常に維持されていることは明らかである。そうすると,補正発明は操作端末から常にセッションが維持されているサーバとコントローラを介して電気機器へ至る通信経路を前提として現在の通信状況に関する事項を表示するものと解される。
一方,引用発明は,「Webサーバ」及び「空調管理装置」間の通信に関して,空調管理装置は,Webサーバに空調機器の運転状態データをFTPを用いて送信すること(引用例の段落[0052]),及び,Webサーバより空調機器を制御するための制御ファイルをFTPで受信すること(引用例の段落[0068])等の記載からみて,両者の間で常にセッションが維持されていると解することはできない。そうすると,両者間で常にセッションが維持されていることを前提として現在の通信状況に関する事項を遠隔監視端末で表示することは,引用発明では想定されていない事項といえるから,当該事項を含む相違点1に係る事項は,引用発明と前述の「(2)刊行物に記載された事項」の項に記載した刊行物1ないし5に記載の事項を勘案しても,容易に想到することはできないものと解するのが相当である。

したがって,補正発明は,前記相違点2について検討するまでもなく,引用発明及び刊行物1ないし5に記載の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって,本件補正の補正事項1は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

本件補正のその余の補正事項についても,特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。

3 むすび
本件補正は,特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり,特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから,本願の請求項1-2に係る発明は,本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして,本願については,原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-04-22 
出願番号 特願2014-125240(P2014-125240)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 安井 雅史  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 中野 浩昌
山本 章裕
発明の名称 遠隔操作システム及び遠隔操作方法  
代理人 木村 満  
代理人 八島 耕司  
代理人 美恵 英樹  

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