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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23G
管理番号 1313853
審判番号 不服2014-6270  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-04 
確定日 2016-04-20 
事件の表示 特願2010-186027「圧縮チューインガムタブレット」拒絶査定不服審判事件〔平成22年11月11日出願公開、特開2010-252816〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2003年2月4日を国際出願日とする特願2004-567728号の一部を平成22年8月23日に新たな特許出願としたものであって、平成24年2月8日付けで拒絶理由が通知され、同年8月15日付け(受付日)で意見書及び手続補正書が提出され、同年9月6日付け(受付日)で上申書が提出され、平成25年4月19日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年10月23日付け(受付日)で意見書及び手続補正書が提出され、平成25年12月2日付けで上記平成25年10月23日付け手続補正書による補正が却下され、同日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成26年4月4日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。

第2 平成26年4月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容の概要
本件補正は、特許請求の範囲について補正をするものであって、請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。
(補正前の請求項1)
「少なくとも2つのそれぞれが合着したチューインガムモジュール(11、12;21、22、23;31、32;41、42;51、52)を有するチューインガムタブレット(10、20、30、40、50)であって、該各チューインガムモジュールの少なくとも1つがガムベースを含有する圧縮チューインガム顆粒を含んでおり、かつ該チューインガムタブレットが該タブレットの少なくとも5重量%のガムベース含有量を有しており、該ガムベースが、ポリイソブチレン、イソブチレン-イソプレンコポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリビニルアセテート、ポリイソプレン、ポリエチレン、およびビニルアセテート-ビニルラウレートコポリマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の合成エラストマーを含有しており、さらに該チューインガムタブレットが高度甘味料を含有しており、該チューインガムモジュールの全てが圧縮により作製されたものであることを特徴とするチューインガムタブレット。」

(補正後の請求項1)
「少なくとも2つのそれぞれが合着したチューインガムモジュール(11、12;21、22、23;31、32;41、42;51、52)を有するチューインガムタブレット(10、20、30、40、50)であって、該チューインガムモジュールの少なくとも1つがガムベースを含有する圧縮チューインガム顆粒を含んでおり、かつ該チューインガムタブレットが該タブレットの少なくとも5重量%のガムベース含有量を有しており、
該ガムベースが、ポリイソブチレン、イソブチレン-イソプレンコポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリビニルアセテート、ポリイソプレン、ポリエチレン、およびビニルアセテート-ビニルラウレートコポリマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の合成エラストマーを含有しており、
該チューインガムタブレットが、アスパルテーム及びアセスルファム塩からなる群より選ばれた高度甘味料を含有しており、
該チューインガムモジュールの全てが圧縮により作製されたものであることを特徴とするチューインガムタブレット。」

2 補正の適否
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「高度甘味料」について、「アスパルテーム及びアセスルファム塩からなる群より選ばれた」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭51-110016号公報(以下「引用文献」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(「・・・」は記載の省略を意味し、下線は当審で付した。以下同じ。)

(1a)「2.特許請求の範囲
1.少なくとも1つの領域を硬化性とすると共に非塑性錠錬剤で構成し、かつ少なくとも他の1つの領域を塑性とすると共に塑性チューインガム錬剤で構成し、これら錬剤の少なくとも一方に製剤有効成分を含有せしめたことを特徴とする多重領域製剤錠。
2.特許請求の範囲1記載の多重領域製剤錠を製造するに当り、少なくとも一方に製剤有効成分を含有せしめた非塑性錠錬剤および塑性チューインガム錬剤を錠剤の型内に入れて適当な杵ダイにより圧縮して接合錠剤を形成し、該錠剤に、非塑性錠錬剤を具える少なくとも1つの硬化領域と塑性チューインガム錬剤を具える少なくとも1つの塑性領域とを有せしめるようにしたことを特徴とする多重領域製剤錠の製造方法。」(1ページ左下欄4行?末行)

(1b)「第1図において1は非塑性錠錬剤から圧縮した第1層を示し、2は塑性錬剤の予め形成した円板より成る層を示し、3は非塑性錠錬剤から圧縮した第2層を示す。第1層1には一方の製剤組成を混合し、第2層3には他方の製剤組成を混合する。これら両製剤組成は互に接触すると分解する化学的に両立し難い組成とする。錠剤の断面全体にわたつて延在する層2は分離層としても作用しこれにより2種類の製剤組成が接触し従つて分解するのを防止する。」(3ページ右上欄2行?11行)

(1c)「第10図に示す所では第1図の多層錠を製造するために層1に対する充分な量の錠錬剤80を型81内に導入し(第10A図)次いでポンチダイ82により圧縮して層1を形成する(第10B図)。次いで充分な量の顆粒塑性錬剤83を導入して層2を形成する。この顆粒塑性錬剤を混合器84で混合して冷却装置85に導入し・・・(中略)・・・かように冷却された塑性錬剤を粉砕装置86に導入して顆粒にする。・・・(中略)・・・
粉砕装置86からの錬剤を加熱混合装置107に導入しここから新たな製剤用塑性錬剤を流動顆粒状にして型81内に導入し(第10C図)、ここで圧縮を行つて層2を形成すると同時に加圧により層2と接合する(第10D図)。次いで層3の錠錬剤89を導入する(第10E図)と共にこれを圧縮して(第10F図)層3を形成すると同時に層2に接着する。かくして最後に第10G図に示す3層錠を取出す。」(5ページ右上欄2行?左下欄3行)

(1d)「本発明による多層錠の化学組成を示す具体的な数例を以下に示す。これらの例の全部に対し錠剤製造中の圧力を1000kg/cm^(2)とし、完成した最終錠剤の重量を1.5gとする。以下の例の3層錠において各層の重量を0.5gとする。
・・・
例 2
第1図の3層錠のうち塑性錬剤の中間層は、チクルガム1.70重量部、蔗糖0.5重量部、パラフインワツクス0.5重量部、トルバルサム0.06重量部、吐根末0.03重量部、ユーカリ0.03重量部を含有する。
錠錬剤の一方の外側硬化層1はぶどう糖50.0重量部、ソルビツト48.0重量部および有効成分の茴香油1.0重量部を含有する。
錠錬剤の他方の外側層3はぶどう糖50.0重量部、ソルビツト48.0重量部、有効成分のユーカリ油1.0重量部および有効成分の茴香油1.0重量部を含有する。
この多層錠を鎮咳剤とし、これにより塑性層を口中で長時間にわたりチユーインガムとしてそしやくし得るようにする。この際、既知のように吐根末およびユーカリによつて咳をしずめるようにする。」(6ページ左上欄19行?左下欄19行)

(1e)「4.図面の簡単な説明
第1図は本発明多層錠の一例を示す側面図、・・・(略)・・・第10?12図は本発明多層錠の製造方法の他の変形例の諸工程を示す断面図である。」(7ページ右上欄7行?19行)

(1f)第10図は、次のとおりである。


よって、引用文献には、特に第10図に関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「錠錬剤80を型81内に導入し次いでポンチダイ82により圧縮して層1を形成し、製剤用塑性錬剤を流動顆粒状にして型81内に導入し、ここで圧縮を行つて層2を形成し、層3の錠錬剤89を導入すると共にこれを圧縮して層3を形成して製造された3層錠。」

(2)対比
引用文献の第10図は、「本発明多層錠の製造方法の他の変形例の諸工程を示す」ものである(1e)。そして、本発明多層錠とは、「2.特許請求の範囲」(1a)に記載された多重領域製剤錠のことであって、少なくとも1つの領域を塑性チューインガム錬剤で構成したものである。
そうすると、引用発明の「3層錠」は、少なくとも1つの領域が塑性チューインガム錬剤で構成したものであり、より詳細には、層2を形成する「製剤用塑性錬剤」が「塑性チューインガム錬剤」である。よって、「錠」と「タブレット」が同義であることもふまえると、引用発明の「3層錠」は、本願補正発明の「チューインガムタブレット」に相当する。
引用発明の「層1」、「層2」、「層3」は、これらの層がくっついて一体となり、3層錠すなわちチューインガムタブレットを構成しているから、本願補正発明の「少なくとも2つのそれぞれが合着したチューインガムモジュール」に相当する。
また、引用発明の「圧縮して層1を形成し」、「圧縮を行つて層2を形成し」、「圧縮して層3を形成し」は「塑性チューインガム錬剤」、本願補正発明の「チューインガムモジュールの全てが圧縮により作製されたものである」に相当する。
引用発明の「製剤用塑性錬剤を流動顆粒状」としたものは、上記のとおり「製剤用塑性錬剤」が「塑性チューインガム錬剤」であること、これを型81内で圧縮して層2を形成すること、に照らせば、本願補正発明の「圧縮チューインガム顆粒」に相当する。そして、チューインガムがガムベースを含むことは技術常識であり、また、引用文献にも、3層錠の例として、塑性錬剤の中間層にガムベースであるチクルガムを含む例が記載されている(1d)ことをふまえると、結局、上記引用発明の「製剤用塑性錬剤を流動顆粒状」としたものは、本願補正発明の「ガムベースを含有する圧縮チューインガム顆粒」に相当する。
そして、引用発明の「層2」は、「製剤用塑性錬剤を流動顆粒状」としたものを含んでいることになるから、このことは、本願補正発明の「チューインガムモジュールの少なくとも1つがガムベースを含有する圧縮チューインガム顆粒を含んでおり」に相当する。

よって、本願補正発明と引用発明との一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
少なくとも2つのそれぞれが合着したチューインガムモジュールを有するチューインガムタブレットであって、該チューインガムモジュールの少なくとも1つがガムベースを含有する圧縮チューインガム顆粒を含んでおり、
該チューインガムモジュールの全てが圧縮により作製されたものであるチューインガムタブレット。

[相違点1]
本願補正発明は、「該チューインガムタブレットが該タブレットの少なくとも5重量%のガムベース含有量を有しており」、「該ガムベースが、ポリイソブチレン、イソブチレン-イソプレンコポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリビニルアセテート、ポリイソプレン、ポリエチレン、およびビニルアセテート-ビニルラウレートコポリマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の合成エラストマーを含有しており」と特定されているのに対し、引用発明は、ガムベースについて、このように特定されていない点。

[相違点2]
本願補正発明は、「該チューインガムタブレットが、アスパルテーム及びアセスルファム塩からなる群より選ばれた高度甘味料を含有しており」と特定されているのに対し、引用発明は、このような特定がなされていない点。

(3)判断
ア 相違点1について
(ア)原査定の拒絶の理由に周知例として引用された特開昭60-164438号公報(以下「周知例1」という。)には、「錠剤形チユ-インガム組成物およびその製法」の発明に関して、以下の事項が記載されている。
「当該技術では周知のように、ガムベースは天然または合成ゴムまたはエラストマーを包含している。エラストマーは勿論加硫されてはいない。ガムベースとして有用なガムまたはエラストマーとして非限定ではあるがそれらの例としては天然ゴム、チクル、レチカスピ、ジエルトン、ポリイソブチレン、インブチレン-イソプレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体およびそれらの混合物である。ガムベースは全チューインガム組成物基準で約14?約50重量%そして好ましくは約20?約30重量%を溝成しうる。」(9ページ右上欄2行?13行)

(イ)原査定の拒絶の理由に周知例として引用された特開昭62-179349号公報(以下「周知例2」という。)には、「錠剤形成されたチユーインガム」の発明に関して、以下の事項が記載されている。
「3)ガムベースが、チクル、ジエルトン、グツタペルカ、クラウンガム、ブタジエン-スチレン共重合体、イソブチレン-イソプレン共重合体、ポリエチレン、ポリイソブチレン、ポリ酢酸ビニル及びそれらの混合物よりなる群から選択される重合体より成る前記特許請求の範囲第1項記載の組成物。」(1ページ右下欄1行?7行)
「ガムベースは、全組成物の約20乃至30重量%よりなる。」(11ページ左下欄2行?3行)

(ウ)原査定の拒絶の理由に周知例として引用された特表2002-541123号公報(以下「周知例3」という。)には、「オーバーコートしたチューインガム配合物」の発明に関して、以下の事項が記載されている。
「チューインガムは一般に、ガム基剤、水溶性部分、及び香味剤からなる。
・・・
典型的には、ガム基剤は、ガム製品の約20?約40%を構成している。
・・・
【0047】
ある実施態様において、本発明のチューインガム基剤は、合成エラストマー約20%?約60質量%、・・・などを含んでいる。
【0048】
合成エラストマーは、GPC質量平均分子量約10,000?約95,000であるポリイソブチレン、イソブチレン-イソプレンコポリマー(ブチルエラストマー)、スチレン-ブタジエン比約1:3?約3:1を有するスチレン-ブタジエンコポリマー、GPC質量平均分子量が約2,000?約90,000であるポリ酢酸ビニル、ポリイソプレン、ポリエチレン、ラウリン酸ビニル含量がコポリマーの約5%?約50質量%である酢酸ビニル-ラウリン酸ビニルコポリマー、及びそれらの組合せを含むが、これらに限定されるものではない。」(23ページ下から3行?24ページ下から5行)

(エ)上記周知例1?3によれば、チューインガムは、約20%以上のガムベースを含有することが周知であり、また、ガムベースとして、ポリイソブチレン、イソブチレン-イソプレンコポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリビニルアセテート(ポリ酢酸ビニル)、ポリイソプレン、ポリエチレン、ビニルアセテート-ビニルラウレートコポリマー(酢酸ビニル-ラウリン酸ビニルコポリマー)のいずれもが周知であると認められる。

(オ)引用発明の3層錠において、ガムベースを含有する「層2」について、約20%以上のガムベースを含有するものとすることは、上記周知技術の範囲内である。そして、引用文献には、「3層錠において各層の重量を0.5gとする」ものが例示されている(1d)から、引用発明の3層錠の各層の重量を同程度とすることも、当業者が普通に想定し得ることである。
してみれば、引用発明の3層錠におけるガムベースの含有量を、3層錠の少なくとも5重量%とすることは、上記周知技術に基いて当業者が容易に設定できた範囲内のことにすぎない。

(カ)そして、引用発明の「層2」が含有するガムベースとして、引用文献にはチクルガムが例示されている(1d)ものの、これはあくまでも例示にすぎない。その他、引用文献には、ガムベースに格別の制限がある旨は記載されていないから、当業者が適宜のものを選択し得ると解される。よって、引用発明の「層2」が含有するガムベースとして、ポリイソブチレン、イソブチレン-イソプレンコポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリビニルアセテート(ポリ酢酸ビニル)、ポリイソプレン、ポリエチレン、ビニルアセテート-ビニルラウレートコポリマー(酢酸ビニル-ラウリン酸ビニルコポリマー)のいずれかを選択することは、単に周知のガムベースを選択した程度の設計的事項にすぎない。

(キ)請求人は、引用文献の実施例6の組成を用いて第10図に記載のタブレットを製造したところ、機械的に安定なタブレットを作製することができなかった旨の実験報告書を提出し、当業者が引用文献の第10図に従ってタブレットを製作しようと動機付けられることはない旨を主張する(平成26年5月19日受付の手続補正書(方式))。
しかし、引用文献には、第10図に従って製造した3層錠が記載されている以上、当該3層錠が製造できる組成や製造条件を定めることは、当業者が通常なすべき設計事項である。引用発明の組成が、実施例6のようなチクルガムを用いるものに限定されないことは上述のとおりであるから、仮に、実施例6の組成により製造できなかったとしても、上記周知のガムベースを用いて製造することができるのであるから、引用文献に第10図に従って製造した3層錠が開示されていないとはいえない。
よって、上記請求人の主張は採用できない。

(ク)したがって、相違点1に係る本願補正発明の構成は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。

イ 相違点2について
(ア)上記周知例1には、
「本発明のチユーインガム組成物は一般に甘味剤を包含している。甘味剤は広範な物質例えば水溶性甘味剤、水溶性人工甘味剤およびジペプチドに基づく甘味剤およびそれらの混合物を含むものから選ぶことができる。特定の甘味剤に限定されるわけではないが代表的例としては以下のものを包含する。
・・・
B.水溶性人工甘味剤、例えば可溶性サツカリン塩、すなわちサツカリンのナトリウム塩またはカルシウム塩、シクラメート塩、アセスルフアムKその他およびサツカリンの遊離酸形
C.ジペプチドベース甘味剤例えばL-アスパルチル-L-フエニルアラニンメチルエステルおよび米国特許第3,492,131号明細書その他に記載の物質」(9ページ右下欄12行?10ページ右上欄1行)
と記載され、上記周知例2には、
「ガム組成物は、一般に、主要なる割合の甘味剤を含有する。・・・特定の甘味剤に限定されるものでないが、代表的な例には次のものが包含される。
・・・
C.L-アスパルチル-L-フェニルアラニンメチルエステルおよび米国特許第3,492,131号に記載されている物質などを包含するジペプチドを基にした甘味料。」(10ページ左下欄6行?右下欄13行)
と記載され、上記周知例3には、
「【0053】
水不溶性ガム基剤部分に加えて、典型的チューインガム組成物は、水溶性バルク部分及び1種以上の香味物質を含有する。水溶性部分は、バルク甘味剤、高甘味度甘味剤、香味物質、軟化剤、乳化剤、色素(colors)、酸味剤、充填剤、酸化防止剤、及び望ましい特質をもたらす他の成分を含むことができる。
・・・
【0054】
バルク甘味剤は、糖質及び無糖の成分を両方含む。
・・・
【0055】
高甘味度人工甘味剤も、単独又は前述のものと組合せて使用することができる。好ましい甘味剤は、スクラロース、アスパルテーム、アセスルフェーム塩、アルチターム(altitame)、サッカリン及びその塩、シクラミン酸及びその塩、グリセルヒジネート、ジヒドロカルコン、タウマチン、モネリンなどの、単独又は組合せがあるが、これらに限定されるものではない。」(26ページ10行?27ページ8行)
と記載されている。

(イ)上記周知例1?3の記載によれば、チューインガム組成物に、甘味剤として、L-アスパルチル-L-フェニルアラニンメチルエステル(アスパルテーム)やアセスルフアムK(アセスルファム塩)のような高度甘味料を含有させることは周知であると認められる。

(ウ)引用文献には、ぶどう糖やソルビットを3層錠に含有させることが記載されている(1d)。ここで、ぶどう糖やソルビットは甘味剤として周知のものであって、一般に、甘味剤は、甘味を付与するために添加するものである。そうすると、引用発明は、甘味剤を含有するものとは特定されていないものの、甘味剤を添加して甘味を付与することも想定されたものといえる。
そして、上記のとおり、チューインガム組成物に添加する甘味剤として、アスパルテームやアセスルファム塩は周知であるから、引用発明に適宜の甘味剤として、該周知のアスパルテームやアセスルファム塩を添加することは、当業者が容易になし得たことである。

(エ)したがって、相違点2に係る本願補正発明の構成は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。

ウ まとめ
本願補正発明が、引用発明及び周知技術から予測できない格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年8月15日付け(受付日)の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(第2[理由]1 補正の内容の概要 (補正前の請求項1)参照。)。

第4 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記「第2[理由]2 補正の適否 (1)引用文献」に記載したとおりである。

第5 対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明から「高度甘味料」についての「アスパルテーム及びアセスルファム塩からなる群より選ばれた」との限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の限定を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 2 (3)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-19 
結審通知日 2015-11-24 
審決日 2015-12-08 
出願番号 特願2010-186027(P2010-186027)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 戸来 幸男高堀 栄二  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 紀本 孝
佐々木 正章
発明の名称 圧縮チューインガムタブレット  
代理人 岡部 讓  
代理人 小林 恒夫  
代理人 臼井 伸一  
代理人 高梨 憲通  

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