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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 H02M 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H02M |
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管理番号 | 1313860 |
審判番号 | 不服2015-15662 |
総通号数 | 198 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-08-24 |
確定日 | 2016-05-10 |
事件の表示 | 特願2013-527969「スイッチング電源装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月14日国際公開、WO2013/021857、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年7月31日(国内優先権主張、平成23年8月11日)の出願であって、平成26年9月17日付けの拒絶理由通知に対し、平成26年11月21日付けで手続補正がされたが、平成27年5月20日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成27年8月24日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。 第2 平成27年8月24日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否 1.補正の内容 本件補正は特許請求の範囲についてするものであって、補正前の請求項1を補正後の請求項1とする補正(以下、「補正事項1」という)を含んでおり、その補正前の請求項1及び補正後の請求項1の記載は次のとおりである(下線部は補正により変更された箇所を示す)。 (1)補正前の請求項1 「入力電源電圧が入力される電源電圧入力部と、 直流電圧が出力される直流電圧出力部と、 1次巻線、および2次巻線を備えたトランスと、 前記1次巻線に直列接続されて、オンにより前記電源電圧入力部の電圧を前記1次巻線に印加するローサイドスイッチング素子と、 前記ローサイドスイッチング素子を制御するスイッチング制御回路と、 前記2次巻線から出力される電圧を整流平滑して前記直流電圧出力部へ出力電圧を出力する整流平滑回路と、を備え、 前記スイッチング制御回路は、 電流検出端子、フィードバック端子、ゼロ電圧タイミング検出端子、スイッチング素子制御信号出力端子、および、前記電流検出端子に印加される電圧が前記フィードバック端子に印加される電圧に達することにより、前記ローサイドスイッチング素子をターンオフする駆動信号を前記スイッチング素子制御信号出力端子から出力する手段を備えた電流モード制御用スイッチング制御ICを有し、 前記出力電圧に基づく帰還電圧信号を発生し、前記フィードバック端子へ印加する帰還電圧信号発生回路と、 前記トランスの電圧極性の反転を検出したときに、前記ゼロ電圧タイミング検出端子に入力された信号を受けて前記ローサイドスイッチング素子をターンオンさせる駆動電圧信号を出力する駆動電圧信号出力手段と、 前記駆動電圧信号が出力されてからの時間経過にともなって電圧が変化する基準電圧を発生させ、前記基準電圧を前記電流検出端子へ入力することで、電圧-時間変換回路として作用する基準電圧発生回路と、 を備え、 電流波形が時間に比例しない電力変換動作において、前記電流モード制御用スイッチング制御ICを利用した、スイッチング電源装置。」 (2)補正後の請求項1 「入力電源電圧が入力される電源電圧入力部と、 直流電圧が出力される直流電圧出力部と、 1次巻線、および2次巻線を備えたトランスと、 前記1次巻線に直列接続されて、オンにより前記電源電圧入力部の電圧を前記1次巻線に印加するローサイドスイッチング素子と、 前記ローサイドスイッチング素子を制御するスイッチング制御回路と、 前記2次巻線から出力される電圧を整流平滑して前記直流電圧出力部へ出力電圧を出力する整流平滑回路と、を備え、 前記スイッチング制御回路は、 本来、電力変換回路におけるスイッチング素子のオン期間に前記電力変換回路を流れる電流が電圧信号として検出されて入力される電流検出端子、フィードバック端子、ゼロ電圧タイミング検出端子、スイッチング素子制御信号出力端子、および、前記電流検出端子に印加される電圧が前記フィードバック端子に印加される電圧に達することにより、前記ローサイドスイッチング素子をターンオフする駆動信号を前記スイッチング素子制御信号出力端子から出力する手段を備えた電流モード制御用スイッチング制御ICを有し、 前記出力電圧に基づく帰還電圧信号を発生し、前記フィードバック端子へ印加する帰還電圧信号発生回路と、 前記トランスの電圧極性の反転を検出したときに、前記ゼロ電圧タイミング検出端子に入力された信号を受けて前記ローサイドスイッチング素子をターンオンさせる駆動電圧信号を出力する駆動電圧信号出力手段と、 前記駆動電圧信号が出力されてからの時間経過にともなって電圧が単調増加する基準電圧を発生させ、前記基準電圧を前記電流検出端子へ入力することで、電圧-時間変換回路として作用する基準電圧発生回路と、 を備え、 前記ローサイドスイッチング素子のオン期間に前記ローサイドスイッチング素子を流れる電流が時間経過にともなって単調増加しない電力変換動作において、前記電流モード制御用スイッチング制御ICを利用した、スイッチング電源装置。」 2.補正の適否 補正前の請求項1に記載した「電流モード制御用スイッチング制御IC」が備える「電流検出端子」、「基準電圧発生回路」が発生する「変化する基準電圧」を、「本来、電力変換回路におけるスイッチング素子のオン期間に前記電力変換回路を流れる電流が電圧信号として検出されて入力される電流検出端子」、「単調増加する基準電圧」とする補正は、発明を特定するために必要な事項に限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、補正前の請求項1に記載した「電流波形が時間に比例しない電力変換動作において、前記電流モード制御用スイッチング制御ICを利用した」を、「前記ローサイドスイッチング素子のオン期間に前記ローサイドスイッチング素子を流れる電流が時間経過にともなって単調増加しない電力変換動作において、前記電流モード制御用スイッチング制御ICを利用した」とする補正は、拒絶査定における「電流波形が時間に比例しない電力変換動作とは、どのようなことを示しているのか不明である(特に、どの電流波形のことを示しているのか不明である)」との指摘事項に対応するものであり、特許法第17条の2第5項第4号の明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 さらに、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。 (1)補正発明 補正発明は、上記「第2 1.(2)補正後の請求項1」に記載した、特許請求の範囲の請求項1に記載した事項により特定されるとおりのものである。 (2)刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開2008-289336号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の技術事項が記載されている。 「【0001】 この発明は、トランスの1次側に交互にオン/オフする第1・第2のスイッチング素子を備えた共振型のスイッチング電源装置に関するものである。」 「【0042】 《第1の実施形態》 図3は第1の実施形態に係るスイッチング電源装置の回路図である。 図3に示すように、このスイッチング電源装置は、電源入力部とインダクタLrとトランスTの1次巻線npと少なくとも1つのキャパシタCrと第1のスイッチ回路S1とからなる直列回路を備えるとともに、前記インダクタLrと前記トランスTの1次巻線npと少なくとも1つのキャパシタCrとからなる直列回路に対して第2のスイッチ回路S2を並列に接続している。 【0043】 前記第1のスイッチ回路S1は、第1のスイッチング素子Q1、第1のダイオードD1、および第1のキャパシタC1の並列接続回路で構成していて、前記第2のスイッチ回路S2は、第2のスイッチング素子Q2、第2のダイオードD2、および第2のキャパシタC2の並列接続回路で構成している。 【0044】 この第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子をMOSFET等の電界効果型トランジスタで構成することによって、その寄生ダイオードをD1、D2、寄生キャパシタをC1、C2として利用することが可能である。このことによってこれらのダイオードD1、D2およびキャパシタC1、C2を個別部品としての実装を省略することができる。このようにすると、部品点数が削減できる。 【0045】 前記トランスTには1次巻線npの電圧に略比例した電圧を発生する第1の駆動巻線nb1および第2の駆動巻線nb2を備えている。そして、第1の駆動巻線nb1の一端を電源入力部の一端(入力電圧Viのマイナス端)に接続し、他端を第2の整流平滑回路RS2を介して第1のスイッチング素子Q1の制御電圧(ゲート入力電圧)を制御する第1の制御回路SC1に接続することによって、第1の制御回路SC1が第2の整流平滑回路RS2から供給される直流電圧によって駆動されるように構成している。 【0046】 また、第2の駆動巻線nb2の一端を、第1のスイッチ回路S1と第2のスイッチ回路S2の接続点に接続し、他端を第2のスイッチング素子Q2の制御電圧(ゲート入力電圧)を制御する第2の制御回路SC2に接続している。 【0047】 第2の制御回路SC2には、第2の駆動巻線nb2の一端と第2のスイッチング素子Q2のゲートとの間を接続する、抵抗R13およびコンデンサC13からなる直列回路を接続している。これにより、第2のスイッチング素子Q2は第2の駆動巻線nb2に発生する電圧によりターンオンする。また、第2の制御回路SC2には、抵抗R12、コンデンサC12、およびトランジスタTr1からなるターンオフ回路TCを設け、第2のスイッチング素子Q2がターンオンした後、ターンオフ回路TCにより設定された所定の時間後に第2のスイッチング素子Q2が強制的にターンオフされるように構成している。 【0048】 このような構成により、第1のスイッチング素子Q1のオン期間にトランスTの1次巻線npおよびコンデンサCrにエネルギーを蓄え、第1のスイッチング素子Q1のオフ期間にトランスTの2次巻線nsから出力を得て、第1のスイッチング素子Q1のオン時間を制御することにより出力電圧Voを制御するフライバック型コンバータとして作用する。 【0049】 なお、上記インダクタLrはトランスTの漏れインダクタンスで構成する。これにより、外付け部品としてのインダクタを特に設ける必要はなく、トランスTの漏れインダクタによるエネルギー損失が低減できる。 【0050】 この第1の実施形態に係るスイッチング電源装置の構成および作用上の特徴は次のとおりである。 (1)第1のスイッチング素子Q1は、直流電圧で動作するロジック回路(IC)からなる第1の制御回路SC1により動作する。具体的には、第1の制御回路SC1は第1の駆動巻線nb1に発生する交流電圧の極性が反転するタイミングを検出して、これに基づいたタイミングで第1のスイッチング素子Q1をターンオンする。 【0051】 (2)第1の制御回路SC1は第1のスイッチング素子Q1に流れる電流を検出して、これに基づいて第1のスイッチング素子Q1をターンオフする。 【0052】 (3)第2の制御回路SC1は、第2の駆動巻線nb2に発生する交流電圧により第2のスイッチング素子Q2をターンオンする。 【0053】 (4)第2の制御回路は第2の駆動巻線nb2に発生する交流電圧によって動作し、第2のスイッチング素子Q2をターンオフする。 【0054】 (5)第1の制御回路SC1は、第1のスイッチング素子Q1に流れる電流に基づく信号と出力電圧Voに基づく信号とを比較してスイッチング素子Q1をターンオフすべきタイミングを決定し、それにより出力電圧Voを制御する。 【0055】 図4は図3に示したスイッチング電源装置の回路各部の波形図である。以下、図3および図4を参照して回路動作を説明する。図4において、vgs1、vgs2はスイッチング素子Q1、Q2のオン・オフを表す波形、vds1、vds2はそれぞれキャパシタC1、C2の両端電圧波形、id1、id2、isはそれぞれスイッチ回路S1、S2、2次巻線nsの電流波形である。 【0056】 このスイッチング電源装置の定格動作における動作は、1スイッチング周期Tsにおいて時刻t1?t6の5つの動作状態に分けることができる。以下に各状態に分けて回路動作について説明する。 【0057】 (1)状態1 state1 [t1?t2] 初めにダイオードD1が導通していて、第1の駆動巻線nb1に発生する交流電圧の極性が反転したことを検出した第1の制御回路SC1は、ダイオードD1が導通している期間に第1のスイッチング素子Q1をターンオンして第1のスイッチング素子Q1のゼロ電圧スイッチング動作を行う。 【0058】 入力電圧ViからコンデンサCrの電圧を引いた電圧が1次巻線npに印加され、励磁電流imはほぼ直線的に増加してトランスTは励磁エネルギーを蓄え、同時にコンデンサCrは充電されて静電エネルギーを蓄える。 【0059】 第1の制御回路SC1は、電流検出抵抗R11の両端電圧(第1のスイッチング素子Q1に流れる電流を検出した信号電圧)と出力電圧Voに応じた信号電圧とを比較して、出力電圧Voを一定に制御するように第1のスイッチング素子Q1のターンオフタイミングを決め、時刻t2で第1のスイッチング素子Q1をターンオフする。これによりトランス電圧は反転する。 【0060】 (2)状態2 state2 [t2?t3] 1次巻線npを流れていた電流によりキャパシタC1を充電されるとともにキャパシタC2が放電される。2次側のキャパシタCsは放電される。時刻t3で電圧vds2が0となるとダイオードD2が導通し、2次側のダイオードDsが導通する。 【0061】 (3)状態3 state3 [t3?t4] ダイオードD2が導通している期間中に第2の駆動巻線nb2の電圧により第2のスイッチング素子Q2をターンオンしてゼロ電圧スイッチングを行う。漏れインダクタンス(インダクタLr)とコンデンサCrは共振し、オン期間に蓄えられたトランスTの励磁エネルギーとコンデンサCrの静電エネルギーは2次巻線nsから放出される。電流isは、直線的に減少する励磁電流imから電流id2の共振電流を引いた波形と相似な曲線波形となる。時刻t4で励磁電流imと上記共振電流が等しくなると電流isは0となり、コンデンサCrとインダクタLrの共振は終了する。 【0062】 (4)状態4 state4 [t4?t5] コンデンサCrの両端電圧vcにより励磁電流imは直線的に減少して負となり、時刻t5で第2のスイッチング素子Q2がターンオフしてトランス電圧は反転する。 【0063】 (5)状態5 state5 [t5?t6] 1次側では、1次巻線npに流れる電流によりキャパシタC1が放電されるとともに、キャパシタC2が充電されて、2次側ではキャパシタCsが充電される。時刻t6で電圧vds1は0となり、ダイオードD1が導通する。第1の制御回路SC1は、第1の駆動巻線nb1に発生する交流電圧の極性が反転したことを検出する。 【0064】 定常状態において1スイッチング周期あたり上記(1)?(5)の動作を行い、次のスイッチング周期以降、同様の動作を繰り返す。」 以上の記載(特に、図3に関する記載)により、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「入力電源電圧が入力される電源電圧入力部と、 直流電圧が出力される直流電圧出力部と、 1次巻線、および2次巻線を備えたトランスと、 前記1次巻線に直列接続されて、オンにより前記電源電圧入力部の電圧を前記1次巻線に印加する第1のスイッチング素子Q1と、 前記第1のスイッチング素子Q1を制御するスイッチング制御回路と、 前記2次巻線から出力される電圧を整流平滑して前記直流電圧出力部へ出力電圧を出力する整流平滑回路と、を備え、 前記スイッチング制御回路は、 電流検出端子、フィードバック端子、ゼロ電圧タイミング検出端子、スイッチング素子制御信号出力端子、および、前記電流検出端子に印加される電圧が前記フィードバック端子に印加される電圧に達することにより、前記第1のスイッチング素子Q1をターンオフする駆動信号を前記スイッチング素子制御信号出力端子から出力する手段を備えた第1の制御回路SC1を有し、 前記出力電圧に基づく帰還電圧信号を発生し、前記フィードバック端子へ印加する帰還電圧信号発生回路と、 前記トランスの電圧極性の反転を検出したときに、前記ゼロ電圧タイミング検出端子に入力された信号を受けて前記第1のスイッチング素子Q1をターンオンさせる駆動電圧信号を出力する駆動電圧信号出力手段と、 前記第1のスイッチング素子Q1を流れる電流を検出した信号電圧を前記電流検出端子へ入力する回路と、 を備えた、スイッチング電源装置。」 (3)対比 補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「第1のスイッチング素子Q1」、「第1の制御回路SC1」は、それぞれ、補正発明の「ローサイドスイッチング素子」、「電流モード制御用スイッチング制御IC」に相当する。 また、引用発明の第1の制御回路SC1の電流検出端子は、「本来、電力変換回路におけるスイッチング素子のオン期間に前記電力変換回路を流れる電流が電圧信号として検出されて入力される」ものであるといえる。 引用発明の「前記第1のスイッチング素子Q1を流れる電流を検出した信号電圧を前記電流検出端子へ入力する回路」は、図4をみると、駆動電圧信号が出力されてからの時間経過にともなって電圧が単調増加する電圧を検出する回路とはいえるが、補正発明のような、「前記ローサイドスイッチング素子のオン期間に前記ローサイドスイッチング素子を流れる電流が時間経過にともなって単調増加しない電力変換動作において、前記電流モード制御用スイッチング制御ICを利用」するための「電圧-時間変換回路として作用する基準電圧発生回路」といえるものではない。 したがって、両者の一致点、相違点は次のとおりである。 [一致点] 入力電源電圧が入力される電源電圧入力部と、 直流電圧が出力される直流電圧出力部と、 1次巻線、および2次巻線を備えたトランスと、 前記1次巻線に直列接続されて、オンにより前記電源電圧入力部の電圧を前記1次巻線に印加するローサイドスイッチング素子と、 前記ローサイドスイッチング素子を制御するスイッチング制御回路と、 前記2次巻線から出力される電圧を整流平滑して前記直流電圧出力部へ出力電圧を出力する整流平滑回路と、を備え、 前記スイッチング制御回路は、 本来、電力変換回路におけるスイッチング素子のオン期間に前記電力変換回路を流れる電流が電圧信号として検出されて入力される電流検出端子、フィードバック端子、ゼロ電圧タイミング検出端子、スイッチング素子制御信号出力端子、および、前記電流検出端子に印加される電圧が前記フィードバック端子に印加される電圧に達することにより、前記ローサイドスイッチング素子をターンオフする駆動信号を前記スイッチング素子制御信号出力端子から出力する手段を備えた電流モード制御用スイッチング制御ICを有し、 前記出力電圧に基づく帰還電圧信号を発生し、前記フィードバック端子へ印加する帰還電圧信号発生回路と、 前記トランスの電圧極性の反転を検出したときに、前記ゼロ電圧タイミング検出端子に入力された信号を受けて前記ローサイドスイッチング素子をターンオンさせる駆動電圧信号を出力する駆動電圧信号出力手段と、 を備えた、スイッチング電源装置。 [相違点] 補正発明は、「前記駆動電圧信号が出力されてからの時間経過にともなって電圧が単調増加する基準電圧を発生させ、前記基準電圧を前記電流検出端子へ入力することで、電圧-時間変換回路として作用する基準電圧発生回路と、を備え、前記ローサイドスイッチング素子のオン期間に前記ローサイドスイッチング素子を流れる電流が時間経過にともなって単調増加しない電力変換動作において、前記電流モード制御用スイッチング制御ICを利用した」ものであるのに対し、引用発明はそうではない点。 (4)判断 上記相違点について検討する。 引用発明は、第1のスイッチング素子Q1を流れる電流を検出した信号電圧を第1の制御回路SC1の電流検出端子へ入力し、それにより第1のスイッチング素子Q1のターンオフを制御するものであり、この第1のスイッチング素子Q1を流れる電流を検出した信号電圧に代えて、駆動電圧信号が出力されてからの時間経過にともなって電圧が単調増加する基準電圧を発生させ、前記基準電圧を電流検出端子へ入力するようにすることは、刊行物1には記載乃至示唆はない。 また、拒絶査定で周知例として引用された特開2005-278376号公報には、段落0005、図7を参照すると、駆動電圧信号が出力されてからの時間経過にともなって電圧が単調増加する基準電圧を発生させるコンデンサと定電流回路で構成された基準電圧発生回路が記載されているが、引用発明において、電流検出端子への入力を、第1のスイッチング素子Q1を流れる電流を検出した信号電圧に代えて、この基準電圧発生回路の電圧を採用する動機付けはない。 ほかに、引用発明において、電流検出端子への入力を、第1のスイッチング素子Q1を流れる電流を検出した信号電圧に代えて、駆動電圧信号が出力されてからの時間経過にともなって電圧が単調増加する基準電圧を発生させ、前記基準電圧を電流検出端子へ入力するようにする(すなわち、「前記駆動電圧信号が出力されてからの時間経過にともなって電圧が単調増加する基準電圧を発生させ、前記基準電圧を前記電流検出端子へ入力することで、電圧-時間変換回路として作用する基準電圧発生回路と、を備え、前記ローサイドスイッチング素子のオン期間に前記ローサイドスイッチング素子を流れる電流が時間経過にともなって単調増加しない電力変換動作において、前記電流モード制御用スイッチング制御ICを利用した」ものとする)動機付けがあったことを示す証拠はない。 したがって、補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 ほかに、補正発明を特許出願の際独立して特許を受けることができないものというべき理由はない。 よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 本件補正のその余の補正事項についても、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。 3.むすび 本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。 第3 本願発明 本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1-7に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものである。 そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-04-18 |
出願番号 | 特願2013-527969(P2013-527969) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H02M)
P 1 8・ 575- WY (H02M) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 尾家 英樹、中里 翔平 |
特許庁審判長 |
高瀬 勤 |
特許庁審判官 |
稲葉 和生 千葉 輝久 |
発明の名称 | スイッチング電源装置 |
代理人 | 特許業務法人 楓国際特許事務所 |