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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 A61M
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61M
管理番号 1313886
審判番号 不服2014-25314  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-10 
確定日 2016-05-10 
事件の表示 特願2011-549155「生分解性の構成要素を有するペン針組立体」拒絶査定不服審判事件〔平成22年8月12日国際公開、WO2010/090734、平成24年8月2日国内公表、特表2012-517281、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、2010年2月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2009年2月6日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年11月20日付けで拒絶理由が通知され、平成26年2月14日付けで意見書が提出されると共に手続補正がされ、平成26年8月12日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という)がされ、これに対し、平成26年12月10日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ、その後、当審において平成27年10月30日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という)が通知され、平成28年2月4日付けで意見書が提出されると共に手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1-7に係る発明は、平成28年2月4日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「【請求項1】
薬剤投与針組立体であって、
第一端および第二端を有するハブ、
上記ハブに固定して結合された、第一端および第二端を有する針であって、上記針の第二端が薬剤カートリッジのセプタムの穿孔のために上記ハブの第二端内に配置されている針、
上記針の上記第一端を覆うための取り除かれるカバー部材、および、
上記針の上記第二端を覆うための取り除かれるキャップを含み、
上記カバー部材は、上記ハブに取り外し可能に結合され、上記キャップは、上記ハブに取り外し可能に結合され、
上記ハブ、上記カバー部材および上記キャップの少なくとも一つが、生分解性材料で製造されていることを特徴とする薬剤投与針組立体。」

第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
平成25年11月20日付けで通知した拒絶の理由には、以下の説示がなされている。
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項1ないし3,5,6及び12ないし16
引用文献1,2,3
引用文献1(特に、【0017】-【0023】、図1-図3参照。)に記載された「ハブ34」及び「スカート39」は本願発明の「ハブ」に相当し、以下同様に「ニードルカニューレ31」は「針」に、「外カバー10」は「カバー部材」に、「ラベルまたは無菌状態の包装材料」は「シール部材」に、ぞれぞれ相当する。
そして、「ハブ」または「カバー部材」を生分解性材料で製造することは、引用文献2(特に、【0014】-【0015】、図1参照。)に記載されており、引用文献1記載の発明に引用文献2記載の技術を適用して本願発明とすることは、当業者が適宜なし得ることである。

また、引用文献3(特に、【0037】-【0038】、図9-図11参照。)に記載された「ハブ部材」、「上部キャップ124」、「底部キャップ193」は、それぞれ本願発明の「ハブ」、「カバー部材」、「シール部材」に相当し、引用文献3には引用文献1記載の発明と同様の発明が記載されている。
よって、引用文献3記載の発明に引用文献2記載の技術を適用して本願発明とすることは、当業者が適宜なし得ることである。

なお、カバー部材の壁の厚みは、当業者が適宜選択し得ることである。

(中略)

引 用 文 献 等 一 覧

1.特開平11-137687号公報
2.特開2007-222246号公報
3.特表2005-516691号公報
4.実公昭39-24585号公報」

そして、これを受けて平成26年8月12日付けでした拒絶査定の備考欄には、
「平成26年2月14日付け手続補正書により本願発明の「ハブ」は、「第一端および第二端を有する」ものと補正され、また、本願発明の「針」は、「第一端および第二端を有する針であって、上記針の第二端が薬剤カートリッジのセプタムの穿孔のために上記ハブの第二端内に配置されている」ものと補正され、さらに、本願発明の「カバー部材」及び「シール部材」は、ともに「取り除かれる」ものと補正された。
これに対し、上記拒絶理由通知書中に提示した特表2005-516691号公報(以下、「引用文献3」という。)に記載された「ハブ部材140」は、明らかに第一端および第二端を有するものであり、本願発明の「ハブ」に相当する。
また、引用文献3記載の「針カニューレ134」は、「第2端部138」及び「第1端部136」を有し、当該「第1端部136」は「バイアル130の開口した端部において、ゴム隔膜のような閉鎖体を通して・・・穿刺」(【0042】)し、さらに図10及び図11の記載より、当該「第1端部136」は「ハブ部材140」第二端内に配置されていると看て取れる。ここで、上記引用文献3記載の「バイアル130」は本願発明の針の「薬剤カートリッジ」に相当し、以下同様に「ゴム隔膜」は「セプタム」に、「穿刺」は「穿孔」に、それぞれ相当し、よって、引用文献3記載の「針カニューレ134」、「第2端部138」、「第1端部136」は、それぞれ本願発明の「針」、針の「第一端」、針の「第二端」に相当する。
さらに、引用文献3の【0037】には、「取り外し可能なカップ形状の上部キャップ124」と記載されており、【0038】には、「取り外し可能なカップ形状の底部キャップ193」と記載されているので、当該「上部キャップ124」及び「底部キャップ193」は、それぞれ本願発明の「カバー部材」及び「シール部材」に相当する。
そして、上記拒絶理由通知書中に記載したとおり、特開2007-222246号公報記載の技術を引用文献1(当審注:「3」の明らか誤記である。)記載の発明に適用して本願の請求項1に係る発明とすることは、当業者が適宜なし得ることである。」
とされ、要するに引用文献3に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明できたとして拒絶の査定がなされたものである。

2.原査定の理由の判断
(1)刊行物の記載事項
引用文献3には、「ペン針及び安全シールドシステム」と題し、図10、11と共に、ペン型の薬物送出用皮下注射器の針カニューレ及びハブ組立体を、取り外し可能なカップ形状の底部キャップ193と、上部キャップ124との相互係合により包囲した組立体が記載されている(段落【0002】、段落【0038】?【0043】)。
この組立体の構造は、上部キャップ124と底部キャップ193とが、第2内側タブ183と環状のノッチ194との相互係合によりその中に針カニューレ及びハブ組立体及びシールド122を収容するように構成され、内部に収納される針カニューレ134及びハブ部材140は、該針カニューレ134の両端部136、138が穿刺可能とされているというものである。

そうすると、引用文献3には、
「薬物送出用ペン型注射器の組立体であって、
開口した端部と閉じた端部を有するハブ部材140と、
上記ハブ部材140に取り付けられ、穿刺可能な端部136、138を有する針カニューレ134であって、上記穿刺可能な端部136は上記ハブ部材140の開口部内にあり、
上記針カニューレ134の穿刺可能な端部138側を覆い、ペン型注射器の針カニューレ及びハブ組立体から取り除かれる上部キャップ124、および、
上記針カニューレ134の穿刺可能な端部136を覆う、底部キャップ193を含み、
上記上部キャップ124及び上記底部キャップ193は相互係合してその内部に針カニューレ及びハブ組立体を収納するものである、
薬物送出用ペン型注射器の組立体。」
の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

(2)対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、薬剤を投与する際に使用する針の組立体を形成している点、手元側の端部がセプタム/シリンジを穿孔できるよう鋭利とされている関係上、両端が共に鋭利とされた針が、ハブ様の対象物に固定結合されている点、針がハブ様の物と一体となった状態に対して、ハブから露出した端部側は、取り外せるカバー部材(≒上部キャップ124)で覆われ、ハブの開口端側に収納されたもう1つの端部側は、キャップ(≒底部キャップ193)にて取り外せるよう覆われている点で一致している。
他方、本願発明と引用発明1は、以下の2点で相違する。
(相違点1)
「カバー部材」及び「キャップ」に関して、本願発明では「上記ハブに取り外し可能に結合され」と特定されているのに対して、引用発明1の「上部キャップ124」及び「底部キャップ193」は、針カニューレ及びハブ組立体には結合されておらず、相互係合してその内部に針カニューレ及びハブ組立体を収納している点。
(相違点2)
針組立体を構成するハブ、カバー部材、キャップの材料に関して、本願発明では「生分解性材料で製造されている」との特定がなされているのに対して、引用発明1ではどのような材料で製造されるか不明である点。

(3)判断
上記相違点1、2について検討する。
上記相違点1については、原審で看過された相違点であり、この点について、原審では容易想到性について証拠を挙げることなく査定されており、また引用文献3にも「上部キャップ124」及び「底部キャップ193」の変更についての示唆も見当たらないことから、かかる容易想到性についてはこれを是とする余地がない。そうすると、相違点2を検討するまでもなく、本願発明を容易想到とすることはできない。

(4)小括
したがって、本願発明は、当業者が引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
本願の請求項2-7に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は以下に示すとおりである。なお、使用した引用文献は、上記「第3 原査定の理由について」の「1.原査定の理由の概要」に記載された文献と一部重複するため、改めて文献番号をA?Eと振り直している。

「(委任省令違反)この出願は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(進歩性)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


(委任省令違反)について
(1)
・該当する発明の詳細な説明等の箇所
【0030】-【0032】及び図5
・不備とされる理由の詳細
解決しようとする課題に対して、発明の詳細な説明で把握できる、解決手段とされる要件を欠いている。
(2)
・該当する発明の詳細な説明等の箇所
【0033】-【0036】及び図6
・不備とされる理由の詳細
特許請求の範囲の記載と照合した場合、明らかに請求対象に課された特定事項を充足していない非発明であるにも拘わらず、(発明の)「例示的具体例」とされており、矛盾した記載になっている。

(進歩性)について
引用文献A:特開平11-137687号公報
B:特表2002-514940号公報
C:特開2007-222246号公報
D:特開2007-185499号公報
E:特表2005-516691号公報

・請求項 1
・引用文献等 A-D
・備考
引用文献Aの図3及び【0017】には、配送のための最初の組立て時とされるペンニードルアッセンブリであって、その「ペンニードル30」は、本願発明の「ハブ」と当該ハブに結合された「針」に相当する。
同様に、引用文献Aの「外カバー10」及び「シールド20」は、本願発明の「カバー部材」に、【0017】に記載の「図示せず」とされた「ラベルまたは無菌状態の包装材料」は、「針の第二端を覆う」点で、「シール部材」に一部相当する関係にある。
両者は以下の点で相違している。
(相違点1)
「シール部材」に関して、本願発明では「上記ハブに取り外し可能に結合され」と特定されているのに対して、引用文献Aの「ラベルまたは無菌状態の包装材料」は、ペンニードル30には結合されておらず、外カバー10のフランジに取り付けられている点。
(相違点2)
針組立体を構成するハブ、カバー部材、シール部材の材料に関して、本願発明では「生分解性材料で製造されている」との特定がなされているのに対して、引用文献Aに記載の発明ではどのような材料で製造されるか不明である点。

そこで、上記相違点1、2について検討する。
相違点1に関しては、カバー及びシールドとされた何らかのカバー部材と、ラベル又は無菌状態の包装材料とされた何らかのシール部材により針両端を保護する点で、引用文献Aも本願発明も達成しようとする状況においては変わりは無く、単に保護対象である針付きハブに対してどのように結合されているかの具体的態様においてのみ相違するものである。
そして、本願発明が採用した、針の第二端を覆うに当たって、ハブに直接ラベルやキャップ等を用いるとした態様は、引用文献Bの注射針収容部20と結合したバレル部20の開放端を、直接ラベルで塞ぐ図3の態様や、カバーで塞ぐ図4の態様のように、従来から知られており、引用文献Aに記載の発明において、上記相違点1に係る構成をなすことは、適宜選択する程度の事項に過ぎない。
また、相違点2に関しては、注射用の針組立体(アセンブリ)に用いる、ハブやプロテクタ等の材料として、生分解性の材料を用いることにより、廃棄を容易とすることが、引用文献Cの【0014】、【0015】、引用文献Dの【0039】に記載されているように周知である。そして、生分解性の材料を用いることは、生分解性の材料そのものが有する作用効果以上の格別な点は無く、当該技術分野において、そのような材料を選択することは、必要に応じて適宜なしうる程度の事項に過ぎない。」

2.当審拒絶理由の判断
(1)委任省令違反について
(1-1)請求人による手続補正の概要
平成28年3月9日付け手続補正書の【手続補正2】ないし【手続補正6】により、本件明細書で【図5】、【図6】を示しつつ記載された2つの態様について、本発明の例示的具体例との記載が、一参考例へと補正された。
(1-2)委任省令についての判断
平成28年3月9日付けでした手続補正により、特許請求の範囲の記載で特定される発明が有する特徴を必ずしも有するものではない図5及び図6の例示に対して、これらを本発明の例示ではなく参考例であるように変更されたため、特許請求の範囲の記載と、明細書ないし図面の記載内容とが整合することとなり、当審で指摘した委任省令違反は解消された。
(1-3)委任省令違反についての小括
そうすると、もはや、当審で通知した委任省令違反に係る拒絶の理由によって本願を拒絶することはできない。

(2)進歩性について
(2-1)刊行物の記載事項
引用文献Aには、以下の事項が記載されている(段落【0001】、段落【0014】、段落【0017】?【0021】、図1?5)。
引用文献Aで言う「発明」は、カートリッジアッセンブリおよびペンボディアッセンブリを有する薬物送出ペンにおいて使用するための安全な使い捨て式ペンニードルに関する。
また、解決しようとする課題として、本発明の目的は、ペンニードルが固定されかつ外カバーにより覆われることにより、ペンニードルが再利用されることを防止することである。加えて、本発明は、使用者に、彼ら本人のペンニードルの持ち運びおよび廃棄のために便利な手段をもたらす。
また、外カバー10は、末端部11で外カバー10内で基端方向に延びる内面16を形成する中央の窪み12を有する末端部11を含んでいる。外カバー10は、また、開口基端部13内の保持リング15および横方向に延びる多数のスプライン14を含んでいる。外カバー10は、末端部11の方の狭小部17および基端部13の方の拡張部18を含む二つの部分に分割されている。棚19は、拡張部18が狭小部17に出会うところの外カバー10内に設けられている。外カバー10は、また、図3に示されるように、ペンニードル30およびシールド20が外カバー10内に組みつけられた後、ラベルまたは無菌状態の包装材料(図示せず)が取り付けられる基端部13から延在するフランジ8を含んでいる。
そうすると、引用文献Aには、
「薬物送出用ペンニードルであって、
開口した基端部41と末端部42を有するハブ34と、
上記ハブ34に取り付けられ、鋭利な末端32と鋭利な基端33を有するニードルカニューレ31であって、上記鋭利な基端33は上記ハブ34のスカート39内にあり、
上記ニードルカニューレ31の鋭利な末端32側を覆い、ペンニードル30が薬物送出ペンに取り付けられた後にペンニードル30から取り除かれるシールド20、および、
上記ニードルカニューレ31の鋭利な基端33を覆う、外カバー10と該外カバー10のフランジ8に取り付けられるラベルを含み、
上記シールド20は、ハブ34から延在し、シールド20の開口した基端部22内への収納を図るべく寸法合わせされた複数のタブ45を介し、外カバー10内に、ペンニードル30とともに移動可能とされるよう、ペンニードル30へ取り付けられるものである、
薬物送出用ペンニードル。」
の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されている。

(2-2)対比
本願発明と引用発明Aとを対比すると、薬剤を投与する際に使用する針の組立体を形成している点、手元側の端部がセプタムを穿孔できるよう鋭利とされている関係上、両端が共に鋭利とされた針が、ハブ様の対象物に固定結合されている点、針がハブ様の物と一体となった状態に対して、ハブから露出した端部側は、取り外せるカバー部材(=シールド20)で覆われ、ハブの開口端側に収納されたもう1つの端部側は、キャップ(≒外カバー10およびラベル)にて取り外せるよう覆われている点で一致している。
他方、本願発明と引用発明Aは、以下の2点で相違する。
(相違点1)
「キャップ」に関して、本願発明では「上記ハブに取り外し可能に結合され」と特定されているのに対して、引用発明Aの「ラベルまたは無菌状態の包装材料」は、ペンニードル30には結合されておらず、外カバー10のフランジに取り付けられている点。
(相違点2)
針組立体を構成するハブ、カバー部材、キャップの材料に関して、本願発明では「生分解性材料で製造されている」との特定がなされているのに対して、引用発明Aではどのような材料で製造されるか不明である点。

(2-3)判断
上記相違点1、2について検討する。
上記相違点1について、引用発明Aがペンニードル30の基端側を封止する手段として採用した、「外カバー10」および「ラベル」を、当審が通知した拒絶理由で引用した公知の引用文献Bのキャップ様のカバーヘと置換できるか否かを検討する。
この点について、審判請求人は平成28年2月4日付け提出の意見書のカ.ないしケ.等で、その容易想到性について複数の理由を示しつつ、容易想到でない旨主張しているところ、引用発明Aが使用後の廃棄を安全にすることを課題とし、その解決手段の一部に図5で図示する外カバー10とシールド20との挟み合わせ構造への組合せが示されている点を考慮すると、当業者が公知の引用文献Bに記載されたキャップへの置換を試みた際に、置換後の組立体はもはや引用文献Aの図5図示の形態を採り得なくなることは明らかであり、引用発明Aの課題が解決されないこととなるから、かかる容易想到性についてはこれを是とする余地がない。そうすると、相違点2を検討するまでもなく、本願発明を容易想到とすることはできない。

(2-4)進歩性についての小括
したがって、本願発明は、当業者が引用発明Aに基づいて容易に発明をすることができたものとはいえなくなった。
本願の請求項2-7に係る発明についても、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、当業者が引用発明Aに基づいて容易に発明をすることができたものとはいえなくなった。
そうすると、もはや、当審で通知した進歩性に係る拒絶の理由によって本願を拒絶することはできない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由および当審で通知した拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-04-25 
出願番号 特願2011-549155(P2011-549155)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (A61M)
P 1 8・ 121- WY (A61M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 倉橋 紀夫  
特許庁審判長 平岩 正一
特許庁審判官 刈間 宏信
西村 泰英
発明の名称 生分解性の構成要素を有するペン針組立体  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
復代理人 伊藤 勝久  
復代理人 梅田 幸秀  

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