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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09F
管理番号 1313969
審判番号 不服2015-19800  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-04 
確定日 2016-05-17 
事件の表示 特願2014-239461「画像表示装置支持具」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月 9日出願公開、特開2015-127811、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年11月27日(優先権主張 平成25年11月29日)の出願であって、平成27年2月24日付けで拒絶理由が通知され、同年3月26日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされ、同年5月8日付けで拒絶理由が通知され、同年6月4日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされたが、同年7月29日付けで拒絶査定(以下「原査定」という)がなされ、これに対し、同年11月4日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、当審において平成28年2月19日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という)が通知され、同年3月21日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1?5に係る発明は、平成28年3月21日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「【請求項1】
使用者が寝た姿勢でその頭部を載せることができ、該使用者の顔面を露出させた状態で該使用者の頭部を収容する頭部収容部を有する基台と、
前記基台の少なくとも前記頭部収容部の両側から上方へ延びる支持部材と、
前記支持部材に対して取り付けられ、画像表示装置を着脱可能な態様で固定可能な固定具と、
を備える画像表示装置支持具であって、
前記使用者の顔面が露出する方向とは反対側にある前記基台の底面が、該使用者の頭部を前記頭部収容部に収容した状態で左右のみに動かすことができる曲面状となっている画像表示装置支持具。」


第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用文献1:実願昭58-117975号(実開昭60-022069号)のマイクロフィルム

引用文献1記載の発明の「使用者の顔面が露出する方向とは反対側の」「基台の表面」の「曲面状」が「使用者が頭部を」「頭部収容部に収容した状態で頭部を左右に動かして」「基台を左右に揺動させることができる」形状ではないとしても、引用文献1には、横向きでも仰向けでもテレビを見られることが記載されていることからすれば、使いやすいように適宜形状を変更して、「使用者が頭部を」「頭部収容部に収容した状態で頭部を左右に動かして」「基台を左右に揺動させることができる」ようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。


2.原査定の理由の判断
(1)引用文献の記載事項、引用発明
原査定の拒絶の理由に用いられた実願昭58-117975号(実開昭60-022069号)のマイクロフィルム「以下「引用文献1」という。)には、
「この考案は、原実用新案登録請求の枕ホンに、ポケットテレビ(7)をセットするセット版(8),ボルト(9),つなぎ板(18),棒(10)から成るものをヒンジ(11)で回転させ波形バネ(12)で固定する装置を取り付けたものである。」(第1頁第19行?第2頁第3行)、
「横向きでも仰向けでも従来のヘッドホンの様に音楽などを楽しめ、テレビを見られる等である。」(第5頁第1行?第3行)
が記載されている。

また、第7図から、ポケットテレビ(7)をセットするセット版(8)、ボルト(9)、つなぎ板(18)、棒(10)から成るものをヒンジ(11)で回転させ波形バネ(12)で固定する装置を、枕(1)に取り付けたことが、看取できる。

そうすると、引用文献1には、「枕(1)に装置を取り付け、前記装置は、ポケットテレビ(7)をセットするセット版(8)、ボルト(9)、つなぎ板(18)、棒(10)から成るものをヒンジ(11)で回転させ波形バネ(12)で固定し、横向きでも仰向けでも前記ポケットテレビ(7)を見られる、枕ホン。」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

(2)対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、「使用者が寝た姿勢でその頭部を載せることができ、該使用者の顔面を露出させた状態で該使用者の頭部を収容する頭部収容部を有する基台と、前記基台の少なくとも前記頭部収容部の両側から上方へ延びる支持部材と、前記支持部材に対して取り付けられ、画像表示装置を固定可能な固定具と、を備える画像表示装置支持具」の点で一致している。
他方、本願発明と引用発明1は、「前記使用者の顔面が露出する方向とは反対側にある前記基台の底面」が、本願発明では、「該使用者の頭部を前記頭部収容部に収容した状態で左右のみに動かすことができる曲面状となっている」のに対して、引用発明1では、「横向きでも仰向けでも前記ポケットテレビ(7)を見られる」ことにとどまり、「枕(1)」の底面の形状は不明である点で少なくとも相違する。

(3)判断
上記相違点について検討する。
上記相違点について、引用文献1には、支持具を使用した状態のまま支持具を左右に容易に傾けることができるという課題が記載されておらず、引用発明1の「枕(1)」の底面を、使用者の頭部を前記頭部収容部に収容した状態で左右のみに動かすことができる曲面状とする動機付けがない。
してみると、引用発明1の「枕(1)」の底面を、「該使用者の頭部を前記頭部収容部に収容した状態で左右のみに動かすことができる曲面状」とすることは、当業者といえども、容易に想到し得たものとすることはできない。

(4)小括
したがって、本願発明は、当業者が引用発明1に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
本願の請求項2?5に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、当業者が引用発明1に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、原査定の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。


第4 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用文献A:特開2009-265352号公報

引用文献A記載の発明の「半球状のヘルメット73」は、「装着者Pの顔面が露出する方向とは反対側の前記半球状のヘルメット73が半球状となっている」ことから、引用文献A記載の発明の「画像表示装置支持具」が、「装着者P」が頭部を頭部収容部に収容した状態で頭部を左右に動かして前記「半球状のヘルメット73」を左右に揺動させることができることは、明らかである。
したがって、上記相違点4は、実質的な差異ではない。

以上のとおり、本願発明1ないし6は、引用文献A記載の発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。


2.当審拒絶理由の判断
(1)引用文献の記載事項、引用発明
当審の拒絶の理由に用いられた特開2009-265352号公報(以下「引用文献A」という。)には、
「<第二の実施形態>
図6は、本発明の一実施形態であるヘッドマウンテッドディスプレイ(表示措置)の一例を示す概略構成図である。本実施形態では、上述したヘッドアップディスプレイ1と異なり、ヘッドマウンテッドディスプレイ71の一例を示す。すなわち、ヘッドマウンテッドディスプレイ71は、装着者Pの頭部に装着される半球形状のヘルメット73と、カラー画像表示光Lを出射する表示器10と、赤色の外界輝度ARを検出する赤色外界輝度検出センサ3と、緑色の外界輝度AGを検出する緑色外界輝度検出センサ4と、青色の外界輝度ABを検出する青色外界輝度検出センサ5と、コンピュータにより構成される制御部60とを備える。なお、ヘッドアップディスプレイ1と同様のものについては、同じ符号を付している。(段落【0028】)、
「バイザ(光学系)72は、ヘルメット73の前方に設置されており、装着者Pの眼の前方に配置されことになる。これにより、表示器10から出射されたカラー画像表示光Lは、バイザ2の反射面で反射されることで、装着者Pの眼に導かれる。つまり、バイザ2の前方位置Cに、図2に示すような虚像を形成することができるようになっている。また、装着者Pは、バイザ72を透過する光により、外界景色も視認できる。したがって、装着者Pは、視線を移すことなく、外界景色と虚像とを同時に視認することができる。
赤色外界輝度検出センサ3は、バイザの上方となるヘルメット73に配置されている。また、緑色外界輝度検出センサ4は、バイザの上方となるヘルメット73に配置されている。さらに、青色外界輝度検出センサ5は、バイザの上方となるヘルメット73に配置されている。
以上のように、第二の実施形態のヘッドマウンテッドディスプレイ71によれば、カラー画像の虚像を形成しても、外界景色の状況にかかわらず、虚像の良好な視認性を得ることができる。」(段落【0029】)
が記載されている。

また、第6図から、
「半球状のヘルメット73」が「装着者P」の顔面を露出した状態で前記「装着者P」の頭部を収容する収容部を有すること、
「半球状のヘルメット73」において、「装着者P」の顔面が露出する方向とは反対側の前記「半球状のヘルメット73」の表面の全体が半球状となっていること、
「半球形状のヘルメット73」と「表示器10」とを備える「ヘッドマウンテッドディスプレイ71」が、「半球形状のヘルメット73」から延びる支持部材、及び支持部材に対して取り付けられ、「表示器10」を固定可能な固定具を備えること、
が看取できる。

また、引用文献Aの「ヘッドマウンテッドディスプレイ71」は、「半球形状のヘルメット73」と「表示器10」とを備えるものであるから、画像表示装置支持具として機能することは、当業者にとって自明のことである

そうすると、引用文献Aには、
「装着者Pの頭部に装着される半球形状のヘルメット73と、カラー画像表示光Lを出射する表示器10と、赤色の外界輝度ARを検出する赤色外界輝度検出センサ3と、緑色の外界輝度AGを検出する緑色外界輝度検出センサ4と、青色の外界輝度ABを検出する青色外界輝度検出センサ5と、コンピュータにより構成される制御部60とを備え、
前記装着者Pの顔面を露出した状態で前記装着者Pの頭部を収容する収容部を有する前記半球状のヘルメット73と、
前記半球形状のヘルメット73から延びる支持部材と、
前記支持部材に対して取り付けられ前記表示器10を固定可能な固定具と、を備える画像表示装置支持具であって、
前記半球状のヘルメット73において前記装着者Pの顔面が露出する方向とは反対側の前記半球状のヘルメット73の表面の全体が半球状となっている、画像表示装置支持具。」の発明(以下「引用発明A」という。)が記載されている。

(2)対比
本願発明と引用発明Aとを対比すると、「使用者が寝た姿勢でその頭部を載せることができ、該使用者の顔面を露出させた状態で該使用者の頭部を収容する頭部収容部を有する基台と、前記基台の少なくとも前記頭部収容部の両側から上方へ延びる支持部材と、前記支持部材に対して取り付けられ、画像表示装置を固定可能な固定具と、を備える画像表示装置支持具」の点で一致している。
他方、本願発明と引用発明Aは、「前記使用者の顔面が露出する方向とは反対側にある前記基台」について、本願発明では、「基台の底面が」「該使用者の頭部を前記頭部収容部に収容した状態で左右のみに動かすことができる曲面状となっている」のに対して、引用発明Aでは、「ヘルメット73の表面の全体が半球状となっている」点で少なくとも相違する。

(3)判断
上記相違点について検討する。
上記相違点について、引用文献Aには、支持具を使用した状態のまま支持具を左右に容易に傾けることができるという課題が記載されておらず、引用発明2の「ヘルメット73」の表面の一部を、使用者の頭部を前記頭部収容部に収容した状態で左右のみに動かすことができる曲面状とする動機付けがない。
してみると、引用発明Aの「ヘルメット73」の表面の一部を、「該使用者の頭部を前記頭部収容部に収容した状態で左右のみに動かすことができる曲面状」とすることは、当業者といえども、容易に想到し得たものとすることはできない。

(4)小括
したがって、本願発明は、当業者が引用発明Aに基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
本願の請求項2?5に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、当業者が引用発明Aに基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。


第5 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶理由及び当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-04-27 
出願番号 特願2014-239461(P2014-239461)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G09F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 請園 信博  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 井口 猶二
土屋 知久
発明の名称 画像表示装置支持具  
代理人 特許業務法人SANSUI国際特許事務所  
代理人 森岡 正往  

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