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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01B
管理番号 1314011
審判番号 不服2015-15659  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-24 
確定日 2016-05-17 
事件の表示 特願2014-509171「導電パターンの形成方法及び導電パターン基板」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月10日国際公開、WO2013/151052、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う2013年4月2日を国際出願日(優先日:平成24年4月4日、出願番号:特願2012-085523号)とする出願であって、平成27年2月3日付けで拒絶理由が通知され、平成27年4月13日付けで手続補正がされ、平成27年5月18日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という)がされ、これに対し、平成27年8月24日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、当審において平成28年3月4日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という)が通知され、平成28年3月18日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1-7に係る発明は、平成28年3月18日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定されるものと認められる。
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「【請求項1】
支持フィルムと、導電性繊維を含有する導電層と、感光性樹脂を含有する感光性樹脂層と、をこの順に備える感光性導電フィルムを用意し、前記支持フィルムを剥離後、基材上に前記導電層が密着するように前記導電層及び前記感光性樹脂層をラミネートするラミネート工程と、
前記基材上の前記感光性樹脂層を露光及び現像することにより導電パターンを形成するパターニング工程と、
を備え、
前記導電層及び前記感光性樹脂層の積層体は、450?650nmの波長域における最小光透過率が80%以上である、導電パターンの形成方法。」

第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1
・引用文献等 1-2
[拒絶理由の詳細]
引用文献1の図1-2および段落【0001】,【0024】-【0125】の記載によれば、同文献には、
(1)保護フィルム4(本願発明の支持フィルム)と、感光性樹脂を含有する感光性樹脂層3と、導電性繊維を含有する導電層2と、をこの順に備える感光性導電フィルム10を用意し、保護フィルムを剥離後、基板20(本願発明の基材)上に感光性樹脂層が密着するように感光性樹脂層及び導電層をラミネートするラミネート工程と、基板上の感光性樹脂層を露光及び現像することにより導電パターンを形成するパターニング工程と、を備える、導電パターンの形成方法、の発明が記載されている。
引用文献2(特に、図2、段落【0056】-【0068】の記載を参照)にあるように、パターン(本願発明の導電パターン)の形成方法において、第1フィルム2(本願発明の支持フィルム)と、第1層11(本願発明の導電層)と、感光性樹脂を含有する第2層12(本願発明の感光性樹脂層)と、をこの順に備える電極形成用シート(本願発明の感光性導電フィルム)を用意し、第1フィルムを剥離後、基板S(本願発明の基材)上に第1層が密着するように第1層及び第2層をラミネートするラミネート工程、を備えることは周知技術である。
そして、引用文献1の感光性導電フィルムに上記周知技術を採用し本願構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

・請求項 2-8
・引用文献等 1-2
[拒絶理由の詳細]
引用文献1の図1-2および段落【0030】,【0039】,【0046】,【0086】,【0018】,【0097】,【0118】-【0119】の記載によれば、同文献には、
(2)感光性樹脂層が、バインダーポリマー、エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物及び光重合開始剤を含有する、導電パターンの形成方法、
(3)バインダーポリマーがカルボキシル基を有する、導電パターンの形成方法、
(4)導電層及び感光性樹脂層の積層体は、450?650nmの波長域における最小光透過率が80%以上である、導電パターンの形成方法、
(5)導電性繊維が銀繊維である、導電パターンの形成方法、
(6)導電性繊維がカーボンナノチューブである、導電パターンの形成方法、
(7)基板と、基板上に形成された導電パターンと、を備える、導電膜付き基板(本願発明の導電パターン基板)、
(8)導電パターンの表面抵抗率が2000Ω/□以下である、導電膜付き基板、
の発明が記載されている。

その余の点は、表現上の差異あるいは周知技術の採用であって、いずれも格別なものでない。

引用文献等一覧
1.特開2011-198736号公報
2.特開2001-203436号公報

出願人は、平成27年4月13日付け意見書において、同日付けの手続補正書により補正された本願の請求項1に係る発明(本願発明)と引用文献1-2に記載の発明との相違に関して、
「本願発明においては、基材上に導電層が密着するように導電層及び感光性樹脂層をラミネートするラミネート工程を備えるのに対して、引用文献1記載の発明においては、基材上に感光性樹脂層が密着するようにラミネートするラミネート工程を備える点(得られる導電パターン基板における基材、導電層、感光性樹脂層の順序が異なる)。」
「引用文献1記載の発明における導電層及び感光性樹脂層と、引用文献2における第1層及び第2層とをそれぞれ同一視することはできず、仮に引用文献2を参照することができたとしても、引用文献2の開示する第1層及び第2層のラミネートの態様をそのまま引用文献1記載の発明における導電層と感光性樹脂相のラミネートに適用することが容易であったということはできない」
と主張している。

出願人の上記主張について検討する。
本願発明も引用文献1(図1-2、段落[0001]、[0024]-[0125]参照)に記載の発明も、支持フィルム上に導電層と感光性樹脂層とをこの順に備える感光性導電フィルムを用いる点は共通するものの、ラミネート工程に関して、本願発明では、基材上に前記導電層が密着するようにラミネートするものであるのに対して、引用文献1に記載の発明では、基材状に前記感光性樹脂層が密着するようにラミネートする点、即ち、基材に密着させるのが、本願発明では導電層であるのに対して、引用文献1に記載の発明では感光性樹脂層である点で相違している。

一方、引用文献2(図2、段落[0056]-[0068]参照)には、パターン(本願発明の「導電パターン」に相当する)の形成方法において、第1フィルム2(同「支持フィルム」に相当)と、第1層11(同「導電層」に相当)と、感光性樹脂を含有する第2層12(同「感光性樹脂層」に相当)と、をこの順に備える電極形成用シート(同「感光性導電フィルム」に相当)を用意し、第1フィルムを剥離後、基板S(同「基材」に相当)上に第1層が密着するように第1層及び第2層をラミネートするラミネート工程、即ち、
支持フィルム上に導電層と感光性樹脂層とをこの順に備える感光性導電フィルムを用いた導電パターンの形成方法であって、本願発明と同様に、支持フィルムを剥離後、基材に導電層を密着させるラミネート工程が記載されている。

引用文献1、2に記載の発明は、ともに、支持フィルム上に導電層と感光性樹脂層とをこの順に備える感光性導電フィルムを用いた導電パターンの形成方法という同一の技術分野に属するものであって、さらに、かかる感光性導電フィルムを基材にラミネートして露光しパターニングするというパターニング手法においても共通するものである。

してみると、引用文献1に記載の発明において、基材に感光性樹脂層ではなく導電層を密着させることは、感光性導電フィルムを用いたパターニング手法という点で技術分野やパターニング手法が共通する引用文献2に記載の前記ラミネートに基づいて、当業者であれば容易に想到し得るものと認められ、出願人の意見書における前記主張は採用できない。

なお、補正によって特定された「前記導電層及び前記感光性樹脂層の積層体は、450?650nmの波長域における最小光透過率が80%以上である」という点についても、引用文献1の段落[0118]-[0119]に開示されている。

よって、本願発明は引用文献1-2に記載の発明に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定に基づいて特許を受けることができない。
また、本願のその他の請求項に係る発明についても、先の拒絶理由通知書に示した理由により、引用文献1-2に記載の発明に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定に基づいて特許を受けることができない。

2.原査定の理由の判断
(1)引用文献の記載事項
原査定で引用された、特開2011-198736号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(a)「【0010】
上記課題を解決するために本発明は、支持体、導電性繊維と有機導電材料とを含有する導電層、及び感光性樹脂層がこの順に積層された構造を有する感光性導電フィルムを提供する。」(下線は当審で付与。以下、同様。)
(b)「【0016】
本発明の感光性導電フィルムは、製造から使用までの期間における異物付着や傷を防止できる点で、上記感光性樹脂層の導電層側とは反対側に保護フィルムが更に積層されていることが好ましい。この保護フィルムは感光性導電フィルムを使用するときに除去することができる。
【0017】
本発明はまた、上記本発明の感光性導電フィルムの感光性樹脂層を基材に貼り付けて基材上に少なくとも感光性樹脂層及び導電層をこの順に積層し、積層された感光性樹脂層を露光することを特徴とする導電膜の形成方法を提供する。
【0018】
本発明の導電膜の形成方法によれば、基材に感光性樹脂層を貼り付けることにより基材上に感光性樹脂層及び導電層をこの順に設け、これを露光するという簡便な工程で、基材上に上記導電層からなる導電膜を容易に形成することができる。この導電膜は、上記感光性樹脂層が露光により硬化することで、基材上に十分接着される。
【0019】
本発明はまた、上記本発明の感光性導電フィルムの感光性樹脂層を基材に貼り付けて基材上に少なくとも感光性樹脂層及び導電層をこの順に積層し、積層された感光性樹脂層を露光、現像することを特徴とする導電パターンの形成方法を提供する。
【0020】
本発明の導電パターンの形成方法によれば、基材に感光性樹脂層を貼り付けることにより基材上に感光性樹脂層及び導電層をこの順に設け、これを露光、現像するという簡便な工程で、基材上に上記導電層がパターンニングされてなる導電パターンを容易に形成することができる。この導電パターンは、上記感光性樹脂層が露光により硬化することで、基材上に十分接着される。」
(c)「【0072】
本発明の導電膜の形成方法の一実施形態としては、上記の本発明の感光性導電フィルムを、基材上に感光性樹脂層が密着するようにラミネートするラミネート工程と、基材上の感光性樹脂層に活性光線を照射する露光工程とを備える方法が挙げられる。感光性導電フィルムが保護フィルムを有している場合は、保護フィルムを剥離した感光性導電フィルムを、基材上に感光性樹脂層側からラミネートする。上記ラミネート工程により、基材上に、感光性樹脂層、導電層及び支持体がこの順に積層される。」
(d)「【0118】
<導電膜の形成>
0.7mm厚のソーダガラス板を80℃に加温し、その表面上に実施例1、2及び比較例1、2で得られた感光性導電フィルムを、保護フィルムを剥離しながら感光性樹脂層を基板に対向させて、120℃、0.4MPaの条件でラミネートした。ラミネート後、基板を冷却し基板の温度が23℃になった時点でPETフィルム面に高圧水銀灯ランプを有する露光機(オーク(株)製、商品名「HMW-201B」)を用いて、1000mJ/cm2の露光量で導電層及び感光性樹脂層を露光した。露光後、室温(25℃)で15分間放置し、続いて、支持体であるPETフィルムを剥離することで、実施例ならびに比較例で作製した導電膜をソーダガラス板上に形成した。実施例1、2及び比較例1、2のフィルムを用い形成したものの表面抵抗は、2000Ω/□、500Ω/□、500Ω/□、2000Ω/□であり、透過率は80%、85%、85%、80%であった。
【0119】
なお、上記の表面抵抗は、低抵抗率計(三菱化学社製、ロレスタGP)を用い、4探針法によりJIS K 7194に準拠して測定した表面抵抗率である。また、上記の透過率は、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、商品名「U-3310」)を用いて測定した、450nm、550nm及び650nmにおける光透過率、及び、450?650nmの波長域における最小光透過率である。」

上記下線部及び関連個所の記載によれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
「支持体と、導電性繊維と有機導電材料とを含有する導電層と、感光性樹脂層と、保護フィルムとをこの順に積層された構造を有する感光性導電フィルムを用意し、前記保護フィルムを剥離後、基材に感光性樹脂層及び導電層をこの順に基材上に感光性樹脂層が密着するようにラミネートするラミネート工程と、
前記積層された感光性樹脂層を露光、現像することにより導電パターンを形成するパターニング工程と、
前記導電層及び感光性樹脂層の積層体は、450?650nmの波長域における最小透過率が80%、85%である、導電パターンの形成方法。」

原査定で引用された、特開2001-203436号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(e)「【0018】
この第2層(12)における樹脂として特に好ましいものは感光性樹脂である。この感光性樹脂は、典型的には、ベースポリマー、エチレン性不飽和化合物、光重合開始剤からなる。」
(f)「【0026】
〈第1層(11)〉
樹脂積層体(1) のうち第1層(11)は、平均粒子径が1μm 以上の導電性粉体と平均粒子径が 0.3μm 以下の導電性粉体とが配合された樹脂の層からなる。・・(以下、略)」
(g)「【0045】
すなわち、まずその積層シートの第1フィルム(2) を剥離除去した残余の層を、第1層(11)側の面が基板(S) 側となるように該基板(S) 面に貼着する。ついで基板(S) 面に貼着された第1層(11)/第2層(12)につき、任意の手段によりパターニングを行う。その後に焼成を行って電極(E) を形成する。これにより、基板(S) への電極(E) の形成が達成される。
【0046】
ここで、第2層(12)の樹脂が感光性樹脂である場合について、電極の形成方法をより具体的に説明する。
【0047】
まず、その積層シートの第1フィルム(2) を剥離除去した残余の層を、第1層(11)側の面が基板(S) 側となるように該基板(S) 面に貼着する。
【0048】
ついで、貼着した層の第2フィルム(3) 上からマスク(M) を介して露光を行う。この場合、第2層(12)が過度のタックを有しないときは、第2フィルム(3) を剥離除去して、露出した第2層(12)上からマスク(M) を介して露光を行うこともできる。ただし、第2フィルム(3) 上からマスク(M) を介して露光を行う方法の方が、酸素障害による第2層(12)の硬化遅延を防ぐことができるので、はるかに有利である。
【0049】
露光は、通常紫外線照射により行い、その際の光源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライドランプ、ケミカルランプなどが用いられる。紫外線照射後は、必要に応じて加熱を行い、硬化の完全を図ることもできる。
【0050】
露光終了後は、マスク(M) を外し、第2フィルム(3) があるときはそれを除去してから、第2層(12)の未露光部を現像液により除去する。このとき、第2層(12)の未露光部に対応する第1層(11)部分も同時に除去され、パターニングが達成される。なお第2フィルム(3) の除去は機械的な剥離により行うが、第2フィルム(3) がポリビニルアルコールフィルムのように水溶性であるときは、水の吹き付けによって除去したり、あるいは現像工程での現像液との接触により除去したりすることができることもある。
【0051】
上記の現像は、たとえば、炭酸ソーダ、炭酸カリウムなどのアルカリの 0.1?2重量%程度の稀薄水溶液を用いて行うのが通常である。
【0052】
最後に焼成を行って、パターニングされた第2層(12)の露光部の硬化レジストおよびそれに対応する直下の第1層(11)部分の有機物を除去し、電極(E) を形成する。焼成温度は、350?850℃、好ましくは450?700℃、さらに好ましくは500?700℃とすることが望ましい。」

したがって、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「導電性粉体とが配合された樹脂からなる第1層(11)と感光性樹脂からなる第2層(12)と第1フィルム(2)とからなる電極形成用積層シートを用意し、
電極形成用積層シートの第1フィルム(2) を剥離除去した残余の層を、第1層(11)側の面が基板(S) 側となるように該基板(S) 面に貼着し、
貼着した層の第2フィルム(3) 上からマスク(M) を介して露光を行い、
露光終了後は、マスク(M) を外し、第2層(12)の未露光部を現像液により除去し、パターニングを形成し、
焼成を行い、パターニングされた第2層(12)の露光部の硬化レジストおよびそれに対応する直下の第1層(11)部分の有機物を除去し、電極(E) を形成する方法。」

(2)対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「導電性繊維と有機導電材料とを含有する導電層」、「感光性樹脂層」は、それぞれ、本願発明の「導電性繊維を含有する導電層」、「感光性樹脂を含有する感光性樹脂層」に相当する。
また、引用発明1の「保護フィルム」と本願発明の「支持フィルム」とは、いずれも「フィルム」である点で共通する。
よって、引用発明1の「支持体と、導電性繊維と有機導電材料とを含有する導電層と、感光性樹脂層と、保護フィルムとをこの順に積層された構造を有する感光性導電フィルム」と、本願発明の「支持フィルムと、導電性繊維を含有する導電層と、感光性樹脂を含有する感光性樹脂層と、をこの順に備える感光性導電フィルム」とは、「導電性繊維を含有する導電層と、感光性樹脂層を含有する感光性樹脂層と、フィルムとが積層された構造を有する感光性導電フィルム」である点で一致する。
また、引用発明1の「前記保護フィルムを剥離後、基材に感光性樹脂層及び導電層をこの順に基材上に感光性樹脂層が密着するようにラミネートするラミネート工程」と本願発明の「前記支持フィルムを剥離後、基材上に前記導電層が密着するように前記導電層及び前記感光性樹脂層をラミネートするラミネート工程」とは、「前記フィルムを剥離後、基材上に前記導電層及び前記感光性樹脂層をラミネートするラミネート工程」である点で一致する。
また、引用発明1の「前記積層された感光性樹脂層を露光、現像することにより導電パターンを形成するパターニング工程」は、本願発明の「前記基材上の前記感光性樹脂層を露光及び現像することにより導電パターンを形成するパターニング工程」に相当する。
また、引用発明1の「前記導電層及び感光性樹脂層の積層体は、450?650nmの波長域における最小透過率が80%、85%である」は、本願発明の「前記導電層及び前記感光性樹脂層の積層体は、450?650nmの波長域における最小光透過率が80%以上である」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明1とは、以下の一致点と相違点とを有する。
[一致点]
「フィルムと、導電性繊維を含有する導電層と、感光性樹脂を含有する感光性樹脂層とを備える感光性導電フィルムを用意し、前記フィルムを剥離後、基材上に前記導電層及び前記感光性樹脂層をラミネートするラミネート工程と、
前記基材上の前記感光性樹脂層を露光及び現像することにより導電パターンを形成するパターニング工程と、
を備え、
前記導電層及び前記感光性樹脂層の積層体は、450?650nmの波長域における最小光透過率が80%以上である、導電パターンの形成方法。」
[相違点1]
フィルムが、本願発明では支持フィルムであるのに対し、引用発明1では保護フィルムである点。
[相違点2]
感光性導電フィルムが、本願発明では、支持フィルムと、導電層と、感光性樹脂層とをこの順に積層したものであるのに対し、引用発明1では、保護フィルムと、感光性樹脂層と、導電層とをこの順に積層したものである点。
[相違点3]
導電層及び感光性樹脂層の基材へのラミネートが、本願発明では導電層が密着するようになされるのに対し、引用発明1では感光性樹脂層が密着するようになされる点。

(3)判断
上記相違点2,3について
電極形成層と感光性樹脂層とを備えた電極形成用積層シートの電極形成層側を基材に積層して露光する技術は引用文献2に記載されているものの、引用発明2は、パターン形成後に焼成を行い、パターニングされた感光性樹脂層の露光部の硬化レジストを除去するものである。
それに対し、引用発明1は、基材上に感光性樹脂層及び導電層をこの順に設け、露光することにより、導電層からなる導電膜が、感光性樹脂層が露光により硬化することで、基材上に十分接着されるもの(段落【0018】,【0020】参照)であり、パターン形成後に露光により硬化した感光性樹脂層を除去するものではない。
したがって、引用発明1において、上記引用文献2に記載された技術を採用することは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。そして、引用発明1において、導電層と感光性樹脂層との積層の順序を入れ替えて導電層を密着する構成とする他の理由も見当たらない。

(4)小括
したがって、本願発明は、当業者が引用発明1,2に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願の請求項2-6に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであり、請求項7に係る発明は本願発明の構成を含んでいるので、同様に、当業者が引用発明1,2に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



請求項7,8に係る発明は、「導電パターン基板」(物の発明)であるが、当該請求項には、「請求項1?6のいずれか一項に記載の導電パターンの形成方法により基板上に形成された」という、その物の製造方法が記載されているものと認められる。
ここで、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合において、当該請求項の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(「不可能・非実際的事情」)が存在するときに限られると解するのが相当である(最判平成27年6月5日 平成24年(受)第1204号、同2658号)。
しかしながら、不可能・非実際的事情が存在することについて、明細書等に記載がなく、また、出願人から主張・立証がされていないため、その存在を認める理由は見いだせない。
したがって、請求項7,8に係る発明は明確でない。

2.当審拒絶理由の判断
平成28年3月18日付け手続補正書によって、本願の請求項8は削除され、請求項7は「基板と、前記基板上に形成された導電パターンと、を備える、導電パターン基板の製造方法であって、
基板上に、請求項1?6のいずれか一項に記載の方法により導電パターンを形成して前記導電パターン基板を得る工程を備える、導電パターン基板の製造方法。」と補正された。このことにより、請求項7に係る発明は明確となった。
よって、当審拒絶理由は解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-04-26 
出願番号 特願2014-509171(P2014-509171)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01B)
P 1 8・ 537- WY (H01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 南 正樹月野 洋一郎  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 千葉 輝久
高瀬 勤
発明の名称 導電パターンの形成方法及び導電パターン基板  
代理人 城戸 博兒  
代理人 池田 正人  
代理人 清水 義憲  
代理人 古下 智也  
代理人 長谷川 芳樹  
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