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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J |
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管理番号 | 1314099 |
審判番号 | 不服2013-24182 |
総通号数 | 198 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-12-06 |
確定日 | 2016-05-06 |
事件の表示 | 特願2011-521254「寄生共振タンクを備える電子デバイスに対するワイヤレス電力送信」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 2月 4日国際公開、WO2010/014634、平成24年 2月 9日国内公表、特表2012-503959〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2009年7月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年7月28日、米国、2009年7月27日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年11月16日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成24年11月20日)、これに対し、平成25年5月20日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年7月31日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成25年8月6日)、これに対し、平成25年12月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出され、当審により平成26年7月23日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成26年7月29日)、これに対し、平成26年10月28日付で誤訳訂正書、平成26年10月29日付で意見書及び手続補正書が提出され、当審により平成27年2月27日付で最後の拒絶の理由が通知され(発送日:平成27年3月3日)、これに対し、平成27年6月3日付で意見書が提出されたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年10月29日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「ワイヤレス電力受信機において、 磁界からワイヤレス電力を受信するように構成されている受信アンテナを具備し、 前記受信アンテナは、 共振タンクと、ここで、前記共振タンクは、第1のインダクタに接続された第1のキャパシタを備える、 前記共振タンクにワイヤレスに結合されているパラシティック共振タンクと、 を備え、 前記パラシティック共振タンクは、第2のインダクタに接続された第2のキャパシタを備え、前記パラシティック共振タンクは、前記共振タンクより大きいQ値を有する、 ワイヤレス電力受信機。」 なお、「パラシティック共振タンク」は、平成27年6月3日付意見書の記載に基づき、「所望の放射パターンになるような位相関係で、到来放射エネルギーを再放射または反射する共振タンク」の意味であると解する。 3.引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された、特開2000-50534号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 a「【請求項1】 外来電波に共振する1次コイルと、該1次コイルに電磁的に結合し、ICモジュールに接続する2次コイルとを備えてなり、該2次コイルは、前記1次コイルよりターン数を多くすることを特徴とするICカードの電力供給装置。 【請求項2】 前記1次コイル、2次コイルは、同電位に保持することを特徴とする請求項1記載のICカードの電力供給装置。 【請求項3】 前記1次コイル、2次コイルには、それぞれコンデンサを接続することを特徴とする請求項1または請求項2記載のICカードの電力供給装置。 【請求項4】 前記コンデンサは、少なくとも一方を容量設定可能に形成することを特徴とする請求項3記載のICカードの電力供給装置。」 b「この発明は、無接触形のICカードを安定に作動させることができるICカードの電力供給装置に関する。」(【0001】) c「無接触のICカードには、電磁誘導方式の電力供給装置が組み込まれている。 このものは、外来電波に共振するコイルアンテナを使用しており、コイルアンテナは、ICカード内のICモジュールに接続されている。そこで、このものは、外来電波によりコイルアンテナに電圧を誘起させてICモジュールに給電することができる。なお、ICモジュールは、コイルアンテナからの誘起電圧を利用して作動し、外来電波を介して伝送されるデータを読み取り、必要なデータを外部に発信することができる。」(【0002】-【0003】) d「かかる従来技術によるときは、コイルアンテナは、外来電波によって誘起される電圧をそのままICモジュールに給電するため、外来電波が微弱であると、ICモジュールを安定に作動させることが難しく、ICカードによるデータ通信距離を十分大きくすることができないという問題があった。 そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、1次コイルと、1次コイルに電磁的に結合する2次コイルとを組み合わせることによって、外来電波が微弱であっても、ICモジュールを安定に作動させ、ICカードによるデータ通信距離の拡大を図ることができるICカードの電力供給装置を提供することにある。」(【0004】-【0005】) 上記記載事項及び図面を参照すると、1次コイルと2次コイルはコイルアンテナを形成している。 上記記載事項及び図面を参照すると、LC回路は共振回路であり、1次コイルに接続されたコンデンサC1を備える第1の共振回路と、2次コイルに接続されたコンデンサC2を備える第2の共振回路を形成し、第1及び第2の共振回路はそれぞれQ値を有している。 上記記載事項からみて、引用例1には、 「電磁誘導方式のICカードの電力供給装置において、 外来電波により電圧を誘起させるコイルアンテナを具備し、 前記コイルアンテナは、 第2の共振回路と、ここで、前記第2の共振回路は、2次コイルに接続されたコンデンサC2を備える、 前記第2の共振回路に結合されている第1の共振回路と、 を備え、 前記第1の共振回路は、1次コイルに接続されたコンデンサC1を備え、前記第1の共振回路は、Q値を有する、 電磁誘導方式のICカードの電力供給装置。」 との発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。 4.対比 そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「電磁誘導方式のICカードの電力供給装置」、「外来電波により電圧を誘起させる」、「コイルアンテナ」、「第2の共振回路」、「2次コイル」、「コンデンサC2」は、それぞれ本願発明の「ワイヤレス電力受信機」、「磁界からワイヤレス電力を受信するように構成されている」、「受信アンテナ」、「共振タンク」、「第1のインダクタ」、「第1のキャパシタ」に相当する。 パラシティック共振タンクは、所望の放射パターンになるような位相関係で、到来放射エネルギーを再放射または反射する共振タンクであるから、引用発明の「第1の共振回路」は、本願発明の「パラシティック共振タンク」に相当し、引用発明の「1次コイル」、「コンデンサC1」は、それぞれ本願発明の「第2のインダクタ」、「第2のキャパシタ」に相当する。 引用発明の「前記第1の共振回路は、Q値を有する」と、本願発明の「前記パラシティック共振タンクは、前記共振タンクより大きいQ値を有する」は、「前記パラシティック共振タンクは、所定のQ値を有する」との概念で一致する。 したがって、両者は、 「ワイヤレス電力受信機において、 磁界からワイヤレス電力を受信するように構成されている受信アンテナを具備し、 前記受信アンテナは、 共振タンクと、ここで、前記共振タンクは、第1のインダクタに接続された第1のキャパシタを備える、 前記共振タンクにワイヤレスに結合されているパラシティック共振タンクと、 を備え、 前記パラシティック共振タンクは、第2のインダクタに接続された第2のキャパシタを備え、前記パラシティック共振タンクは、所定のQ値を有する、 ワイヤレス電力受信機。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 〔相違点〕 所定のQ値に関し、本願発明は、共振タンクより大きいQ値であるのに対し、引用発明は、Q値はあるがこの様な特定がない点。 5.判断 共振回路はQ値を有していて、その大きさは、パラシティック共振タンク(第1の共振回路)のQ値が共振タンク(第2の共振回路)のQ値より大きいか、両者が等しいか、パラシティック共振タンク(第1の共振回路)のQ値が共振タンク(第2の共振回路)のQ値より小さいかの、3つの内の何れかである。 また、引用発明の電力供給装置は、上記dに記載されるように、外来電波が微弱なときも、ICモジュールを安定的に動作させ、データ通信距離の拡大を図るものであるので、損失が少なくなるようにQ値がより大きなものが好ましいから、第1の共振回路のQ値を第2の共振回路のQ値より大きいものとすることは一般的なことである。 そうすると、両者の相違点は実質的に存在せず差異は認められない。 したがって、本願発明は、引用発明と同一と認められる。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明と同一と認められるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-11-25 |
結審通知日 | 2015-12-01 |
審決日 | 2015-12-18 |
出願番号 | 特願2011-521254(P2011-521254) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WZ
(H02J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 坂東 博司 |
特許庁審判長 |
中川 真一 |
特許庁審判官 |
矢島 伸一 堀川 一郎 |
発明の名称 | 寄生共振タンクを備える電子デバイスに対するワイヤレス電力送信 |
代理人 | 堀内 美保子 |
代理人 | 佐藤 立志 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 岡田 貴志 |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 河野 直樹 |
代理人 | 井関 守三 |
代理人 | 赤穂 隆雄 |
代理人 | 砂川 克 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 井上 正 |
代理人 | 野河 信久 |