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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08G
管理番号 1314122
審判番号 不服2014-14830  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-30 
確定日 2016-05-06 
事件の表示 特願2006-524154「半芳香族ポリアミド樹脂」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月21日国際公開、WO2006/098434〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年3月17日(優先権主張 平成17年3月18日(2件))を国際出願日とする特許出願であって、平成23年10月20日付けで拒絶理由が通知され、同年12月20日に意見書が提出され、平成24年8月27日付けで拒絶理由が通知され、同年10月29日に意見書とともに手続補正書が提出され、平成25年6月18日付けで拒絶理由が通知され、同年7月30日に意見書とともに手続補正書が提出され、平成26年1月30日付けで拒絶理由が通知され、同年4月7日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年4月7日付け手続補正書でした補正について同年同月24日付けで補正の却下の決定がなされるとともに拒絶査定がなされ、同年7月30日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年9月26日付けで前置報告がなされたものである。



第2 平成26年7月30日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[結論]
平成26年7月30日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.手続補正の内容
平成26年7月30日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、審判請求と同時にされた補正であり、平成25年7月30日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲をさらに補正するものであって、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項2をさらに引用する請求項3の内容について、独立項形式で表現してなる、
「ジカルボン酸単位の50?100モル%が芳香族ジカルボン酸単位であるジカルボン酸単位と、ジアミン単位の60?100モル%が1,9-ノナンジアミン単位および/または2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位であるジアミン単位とからなる半芳香族ポリアミド樹脂であって、その分子鎖の末端基の少なくとも10%が末端封止剤によって封止されており、その分子鎖の末端アミノ基量が60μ当量/g以上120μ当量/g以下であり、かつ、末端アミノ基量を[NH_(2)](μ当量/g)と表し、末端カルボキシル基量を[COOH](μ当量/g)と表した場合に、以下の式(1)
【数1】

を満足する半芳香族ポリアミド樹脂と、該半芳香族ポリアミド樹脂以外の他の樹脂とを含有するポリアミド樹脂組成物であって、他の樹脂が、α,β-不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性された樹脂である、ポリアミド樹脂組成物。」
を、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1である、
「ジカルボン酸単位の50?100モル%が芳香族ジカルボン酸単位であるジカルボン酸単位と、ジアミン単位の60?100モル%が1,9-ノナンジアミン単位および/または2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位であるジアミン単位とからなる半芳香族ポリアミド樹脂であって、その分子鎖の末端基の少なくとも10%が末端封止剤によって封止されており、その分子鎖の末端アミノ基量が60μ当量/g以上120μ当量/g以下であり、かつ、末端アミノ基量を[NH_(2)](μ当量/g)と表し、末端カルボキシル基量を[COOH](μ当量/g)と表した場合に、以下の式(1)
【数1】

を満足する半芳香族ポリアミド樹脂と、該半芳香族ポリアミド樹脂以外の他の樹脂とを含有するポリアミド樹脂組成物であって、該他の樹脂が、マレイン酸および/またはその誘導体で変性された樹脂である、ポリアミド樹脂組成物。」
とする、補正事項を含むものである。

2.本件補正の目的について
上記した特許請求の範囲についての本件補正は、本件補正前の請求項3に記載した発明を特定するために必要な事項(以下、「発明特定事項」という。)である、他の樹脂について「α,β-不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性された」を「マレイン酸および/またはその誘導体で変性された」とする、すなわち「α,β-不飽和カルボン酸」を「マレイン酸」に限定する補正事項を含むものであり、本件補正後の請求項1についてする本件補正は、本件補正前の請求項3に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決すべき課題が同一であるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件について
そこで、本件補正により補正された特許請求の範囲及び明細書(以下、「本願明細書」という場合がある。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、以下に記載のとおりの請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明1」という。)を含むものである。

本願補正発明1
「ジカルボン酸単位の50?100モル%が芳香族ジカルボン酸単位であるジカルボン酸単位と、ジアミン単位の60?100モル%が1,9-ノナンジアミン単位および/または2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位であるジアミン単位とからなる半芳香族ポリアミド樹脂であって、その分子鎖の末端基の少なくとも10%が末端封止剤によって封止されており、その分子鎖の末端アミノ基量が60μ当量/g以上120μ当量/g以下であり、かつ、末端アミノ基量を[NH_(2)](μ当量/g)と表し、末端カルボキシル基量を[COOH](μ当量/g)と表した場合に、以下の式(1)
【数1】

を満足する半芳香族ポリアミド樹脂と、該半芳香族ポリアミド樹脂以外の他の樹脂とを含有するポリアミド樹脂組成物であって、該他の樹脂が、マレイン酸および/またはその誘導体で変性された樹脂である、ポリアミド樹脂組成物。」

(2)刊行物及びその記載事項
刊行物:特開2002-114906号公報

ア 刊行物の記載事項
本願の優先日前に頒布された上記刊行物(平成26年1月30日付け拒絶理由通知で引用した刊行物2に同じ。)には、以下の事項が記載されている。下線は当審で付した。

(ア)「[その他の成分]
本発明の電気・電子部品形成材料には、必要に応じて、カルボン酸および/またはその誘導体で変性された、変性ポリオレフィン類を配合することもできる。変性ポリオレフィン類を添加することで、さらに燃焼時のドリップを防止する事ができる。本発明で任意に用いることができる変性ポリオレフィン類の例としては、変性ポリエチレンなどの変性ポリオレフィン、変性SEBSなどの変性芳香族ビニル化合物・共役ジエン共重合体またはその水素化物、変性エチレン・プロピレン共重合体などの変性ポリオレフィンエラストマー等を挙げることができる。これらは、電気・電子部品形成材料中に、例えば0.1?10重量%、好ましくは0.1?8重量%の量で任意に添加することができる。」(段落0073)

(イ)「【参考例1?5】
テレフタル酸;46.5kg(280.1モル)、後述のノナンジアミン成分;45.0kg(284.3モル)、安息香酸;0.4kg(3.5モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.06kg(0.6モル)および蒸留水27.5kgをオートクレーブに入れ、反応釜内部を充分に窒素置換した。なお、上記ノナンジアミン成分は、1,9-ジアミノノナンと、2-メチル-1,8-ジアミノオクタンのモル比が、81:19の組成であるジアミン成分の混合物である。上記原料を攪拌しながら、内部温度を4時間かけて250℃に昇温した。そのまま1時間反応を続け、ポリアミド低次縮合物を得た。このポリアミド低次縮合物を高減圧下190℃で、参考例1では36時間…固相重合した。その後、二軸押出機にてポリアミドの融点より20?40℃高い温度で、参考例1では10kg/時間…の樹脂供給速度で溶融重合して、ポリアミド樹脂を得た。参考例1?5のポリアミド樹脂の極限粘度[η]、融点、および末端アミノ基濃度について表1に示した。


【実施例1?9、比較例1?6】
下記表2に記載したような参考例のポリアミド樹脂40重量部に対して、ガラス繊維30重量部、有機系難燃剤(ポリジブロモポリスチレン;商品名;PDBS-80、グレートレイクスケミカル社製)25重量部、および無機系難燃剤(アンチモン酸ソーダ;商品名;サンエポックNA-1070L、日産化学(株)製) 5重量部を加え、二軸押出機にてポリアミド樹脂の融点より10?30℃高い温度にて溶融混練してポリアミド樹脂組成物を得た。このポリアミド樹脂組成物について、リフロー後のガラス繊維の浮き出しを測定した。その結果を表2に示す。
なお、実施例および比較例では、ガラス繊維A、BおよびCを使用した。これらのガラス繊維は、アミノシラン系の表面処理剤(N-β-(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン)および集束剤を用いてその表面が処理されている。即ち、ガラス繊維A、B、およびCの処理剤として集束剤は、それぞれ、ウレタン/マレイン酸系化合物、ウレタン系化合物およびエポキシ系化合物を使用した。こうして処理したガラス繊維の625±20℃で10分間加熱した時の強熱減量は0.5%とした。

」(段落0089?0095)

(3)刊行物に記載された発明
刊行物には、特に、実施例1の記載(摘示(イ))から、以下の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されているといえる。

「テレフタル酸;46.5kg(280.1モル)、ノナンジアミン成分(1,9-ジアミノノナンと、2-メチル-1,8-ジアミノオクタンのモル比が、81:19の組成であるジアミン成分の混合物);45.0kg(284.3モル)、安息香酸;0.4kg(3.5モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.06kg(0.6モル)および蒸留水27.5kgをオートクレーブに入れ、反応釜内部を充分に窒素置換し、上記原料を攪拌しながら、内部温度を4時間かけて250℃に昇温し、そのまま1時間反応を続け、ポリアミド低次縮合物を得、このポリアミド低次縮合物を高減圧下190℃で、36時間固相重合し、その後、二軸押出機にてポリアミドの融点より20?40℃高い温度で、10kg/時間の樹脂供給速度で溶融重合して、極限粘度[η]が0.9dl/g、融点が300℃、および末端アミノ基濃度が80mmol/kgであるポリアミド樹脂を得、当該ポリアミド樹脂40重量部に対して、ガラス繊維30重量部、有機系難燃剤(ポリジブロモポリスチレン;商品名;PDBS-80、グレートレイクスケミカル社製)25重量部、および無機系難燃剤(アンチモン酸ソーダ;商品名;サンエポックNA-1070L、日産化学(株)製) 5重量部を加え、二軸押出機にてポリアミド樹脂の融点より10?30℃高い温度にて溶融混練して得られたポリアミド樹脂組成物。」

(4)本願補正発明1と刊行物発明との対比・判断
刊行物発明における「テレフタル酸」は、芳香族ジカルボン酸であるから、本願補正発明1における「芳香族ジカルボン酸単位」に相当し、それらのジカルボン酸単位に占める量も100モル%で重複一致している。
刊行物発明における「ノナンジアミン成分」は、「1,9-ジアミノノナンと、2-メチル-1,8-ジアミノオクタンのモル比が、81:19の組成であるジアミン成分の混合物」であるから、本願補正発明1における「1,9-ノナンジアミン単位および/または2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位であるジアミン単位」に相当し、それらのジアミン単位に占める量も100モル%で重複一致している。
そして、刊行物発明における「ポリアミド樹脂」は、本願補正発明1における「半芳香族ポリアミド樹脂」に相当し、前者の「末端アミノ基濃度が80mmol/kg」と後者の「分子鎖の末端アミノ基量が60μ当量/g以上120μ当量/g以下」は重複一致している。

以上をまとめると、本願補正発明1と刊行物発明との一致点及び相違点は次のとおりである。

〔一致点〕
ジカルボン酸単位の50?100モル%が芳香族ジカルボン酸単位であるジカルボン酸単位と、ジアミン単位の60?100モル%が1,9-ノナンジアミン単位および/または2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位であるジアミン単位とからなる半芳香族ポリアミド樹脂であって、その分子鎖の末端アミノ基量が60μ当量/g以上120μ当量/g以下である半芳香族ポリアミド樹脂を含有するポリアミド樹脂組成物。

〔相違点1〕
半芳香族ポリアミド樹脂について、本願補正発明1において、「その分子鎖の末端基の少なくとも10%が末端封止剤によって封止されており」と特定しているのに対し、刊行物発明においてそのような特定がない点。

〔相違点2〕
半芳香族ポリアミド樹脂について、本願補正発明1において、「末端アミノ基量を[NH_(2)](μ当量/g)と表し、末端カルボキシル基量を[COOH](μ当量/g)と表した場合に、以下の式(1)
【数1】

を満足する」と特定しているのに対し、刊行物発明においてそのような特定がない点。

〔相違点3〕
ポリアミド樹脂組成物について、本願補正発明1において、「該半芳香族ポリアミド樹脂以外の他の樹脂とを含有」し、「該他の樹脂が、マレイン酸および/またはその誘導体で変性された樹脂である」と特定しているのに対し、刊行物発明においてそのような特定がない点。

上記相違点1?3について以下に検討する。

〔相違点1〕について
刊行物発明では、ポリアミド樹脂の分子鎖の末端基のどの程度のものが封止されているのかについて明記されていないものの、重合反応時に、テレフタル酸;46.5kg(280.1モル)、ノナンジアミン成分;45.0kg(284.3モル)とともに、末端封鎖剤である「安息香酸」を「0.4kg(3.5モル)」仕込んで反応させ、ポリアミド樹脂を得たものであるから、安息香酸のテレフタル酸に対するモル比率は1.2%と計算される。
一方、本願の明細書では、実施例3として、テレフタル酸27.2モルに対して安息香酸0.63モル仕込んで反応させた場合に末端封止率78%のポリアミド樹脂を得たことが記載され、それから安息香酸のテレフタル酸に対するモル比率は2.3%と計算される。
そうすると、刊行物発明におけるポリアミド樹脂は、本願の明細書の実施例3の末端封止率78%のポリアミド樹脂と比較して、末端封鎖剤である「安息香酸」を半分強の量で仕込んで反応させたものであると認められ、そして末端封止率は末端封止剤と末端基の割合が関係することは技術常識であるといえることから、この場合、その分子鎖の末端基の末端封止率は少なくとも10%以上である蓋然性が高いといえる。
したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。

〔相違点2〕について
刊行物発明と技術分野を同じくするものであるポリアミド樹脂においては、末端アミノ基量及び末端カルボキシル基量が共に基本的な物性値であって、しかも末端カルボキシル基の数が少ないと熱安定性に優れることが周知の事項であるといえる(例えば、特開平2-113026号公報の特許請求の範囲、1頁右欄、4頁右上欄、実施例、特開平10-162653号公報の特許請求の範囲、段落【0008】、【0009】、実施例を参照のこと。)。
また、同じくポリアミド樹脂において、末端カルボキシル基量と末端アミノ基量の比についても、基本的な物性値であるといえ(例えば、特開平10-162653号公報の段落【0008】、実施例、特開2002-69296号公報の特許請求の範囲、段落【0022】を参照のこと。)、例えば、その値(「NH_(2)/COOH」)が、「6.5(=91/14)」(特開平11-1555号公報の実施例8)、「6.1(=110/18)」(特開平2-113026号公報の実施例2)であるものも公知である。
そうすると、刊行物発明において、要求される熱安定性を改良することを目的として、ポリアミド樹脂の末端カルボキシル基量を出来るだけ少なくし、かつ、「末端アミノ基量」と「末端カルボキシル基量」との比、すなわち「NH_(2)/COOH」を6以上と特定することは、当業者であれば容易になし得ることである。また、その効果も格段優れたものとはいえない。

〔相違点3〕について
刊行物には、「必要に応じて、カルボン酸および/またはその誘導体で変性された、変性ポリオレフィン類を配合することもできる」と記載されており、「変性ポリオレフィン類を添加することで、さらに燃焼時のドリップを防止する事ができる」とも記載されている(摘示(ア))。
そして、刊行物発明と技術分野を同じくするものであるポリアミド樹脂に対して、耐衝撃性の改良などを目的として、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを添加することは、周知の事項であるといえる(例えば、特開2004-204105号公報の特許請求の範囲、段落【0018】、特開2004-107440号公報の特許請求の範囲、実施例、特開2003-213124号公報の特許請求の範囲、実施例、特開2002-69296号公報の特許請求の範囲、実施例を参照のこと。)。
そうすると、刊行物発明において、刊行物の上記示唆に従って、「カルボン酸および/またはその誘導体で変性された変性ポリオレフィン類」を添加することに想到し、その際、上記のとおり、「カルボン酸および/またはその誘導体で変性された変性ポリオレフィン類」として代表的なものとして知られており、かつポリアミド樹脂に対して周知の添加成分である「無水マレイン酸変性ポリオレフィン」を添加することは、当業者であれば容易になし得ることである。また、その効果も格段優れたものとはいえない。

よって、本願補正発明1は、刊行物発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(5)まとめ
したがって、本願補正発明1は、刊行物発明に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は特許法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?12に係る発明は、平成25年7月30日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項3に係る発明(以下、「本願発明3」という。)は、独立項形式で表現すると、次のとおりのものである。

本願発明3
「ジカルボン酸単位の50?100モル%が芳香族ジカルボン酸単位であるジカルボン酸単位と、ジアミン単位の60?100モル%が1,9-ノナンジアミン単位および/または2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位であるジアミン単位とからなる半芳香族ポリアミド樹脂であって、その分子鎖の末端基の少なくとも10%が末端封止剤によって封止されており、その分子鎖の末端アミノ基量が60μ当量/g以上120μ当量/g以下であり、かつ、末端アミノ基量を[NH_(2)](μ当量/g)と表し、末端カルボキシル基量を[COOH](μ当量/g)と表した場合に、以下の式(1)
【数1】

を満足する半芳香族ポリアミド樹脂と、該半芳香族ポリアミド樹脂以外の他の樹脂とを含有するポリアミド樹脂組成物であって、他の樹脂が、α,β-不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性された樹脂である、ポリアミド樹脂組成物。」

2.原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、
「本願発明3は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記刊行物に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
刊行物2:特開2002-114906号公報」
というものを含むものである。

3.当審の判断
(1)刊行物の記載事項
刊行物は、前記第2 3(2)の刊行物と同じであるから、刊行物には、前記第2 3(2)ア及びイに記載した事項が記載されている。

(2)刊行物に記載された発明
刊行物には、前記第2 3(3)に記載の刊行物発明が記載されているといえる。

(3)本願発明3と刊行物発明との対比・判断
本願補正発明1は、本願発明3において、他の樹脂に関して「α,β-不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性された」なる事項を「マレイン酸および/またはその誘導体で変性された」と限定したものである。
そうすると、第2 3.で述べたとおり、本願補正発明1が、刊行物発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明3もまた刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。



第4 むすび
以上のとおり、本願発明3、すなわち、平成25年7月30日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項3に係る発明は、刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について更に検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-25 
結審通知日 2016-03-01 
審決日 2016-03-23 
出願番号 特願2006-524154(P2006-524154)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C08G)
P 1 8・ 121- Z (C08G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡辺 陽子  
特許庁審判長 田口 昌浩
特許庁審判官 小野寺 務
大島 祥吾
発明の名称 半芳香族ポリアミド樹脂  
代理人 特許業務法人田治米国際特許事務所  

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