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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A23K
管理番号 1314135
審判番号 不服2014-20271  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-07 
確定日 2016-05-06 
事件の表示 特願2012-513138「被覆キブル形態のペットフード」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月2日国際公開、WO2010/138372、平成24年11月12日国内公表、特表2012-527894〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年(平成22年)5月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年5月28日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年8月21日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年11月19日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年6月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。
そして、当審より平成27年7月1日付けで審尋したのに対して、同年10月6日に回答書が提出されたところである。

第2 平成26年10月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年10月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の記載を補正するものであり、本件補正前と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。

補正前(平成25年11月19日付け手続補正書):
「脂肪バンドを含む、ペットフードであって、前記脂肪バンドが3.900以上の値を有することを特徴とする、ペットフード。」

補正後(平成26年10月7日付け手続補正書):
「コアおよび前記コアを被覆するコーティング層を含んでなる、被覆キブル形態のペットフードであって、
前記コーティング層が、脂肪構成成分、タンパク質構成成分および結合剤構成成分を含んでなり、
前記脂肪構成成分が、前記コーティング層において、脂肪バンドを形成し、
前記脂肪バンドが3.900以上の値を有し、
前記脂肪バンドの値が、NIRスペクトルイメージングにより測定され、前記ペットフードの表面の相対的な脂肪分布を表すことを特徴とする、ペットフード。」(下線は補正箇所を示すものである。)

2 補正の目的及び新規事項の追加の有無
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ペットフード」の成分及び「脂肪バンド」の値を限定するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)明確性要件に係る拒絶の理由及び請求人の主張について
ア 拒絶査定
拒絶査定(原査定)は、理由1(明確性要件及び実施可能要件違反)及び理由2(進歩性欠如)を拒絶の理由とするものであって、拒絶査定には、理由1について、次のとおり記載されている。
「【請求項1】には「脂肪バンド」並びに「脂肪バンドが3.900以上の値を有する」と記載されている。
これらの事項について、拒絶理由通知書では、発明の詳細な説明の記載を参酌しても「脂肪バンド」なる語句並びに「値」の意味が、まったく不明であると指摘した。
それに対して、出願人は意見書中で、「明細書の段落[0003]、[0005]および[0111]」、並びに「明細書の段落[0116]など」から明らかである旨主張している。
しかしながら、当該箇所の記載をみても、「脂肪バンド」なる語句並びに「値」の意味するところは依然として不明であるので、拒絶理由通知書において指摘のとおり、請求項1?15に係る発明は明確でなく、またこの出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1?15に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。」

イ 審判請求書
請求人は、審判請求書において次のように主張している。
「本発明は、動物の嗜好性の向上という課題を解決するため、コアの周囲にコーティング層を設け、被覆キブル形態とし、このコーティング層に脂肪構成成分を含有させ、ペットフード表面に脂肪構成成分を多く存在させた状態、すなわち被覆キブル表面に脂肪レベルを増大させているのであります。そしてこのような、コアを被覆する脂肪構成成分を多く含有したコーティング層のことを「脂肪バンド」と表しているのであります。また、タンパク質構成成分をコーティング層に含有させることにより、脂肪構成成分が、コア方向に染み込み、逃れていってしまうのを防止し(段落[0111]参照)、このタンパク質構成成分のコア方向への逃れを結合剤構成成分が防止するよう働くのであります(段落[0039])。
そして、このコーティング層にどの程度の脂肪構成成分が含有され、ペットフード表面に存在するかは、NIRスペクトルイメージングにより測定され、その測定値を「脂肪バンド値」と表しているのであります(段落[0117]、図4?9参照)。
また、明細書中の実施例8においても、各ペットフードの平均脂肪バンド値は測定されております。
よって、本願明細書に接した当業者であれば、「脂肪バンド」およびその「値」が意味するところを明確に理解することができるものと思料いたします。
また、今回行いました補正により、本発明に係るペットフードは、コアおよび前記コアを被覆するコーティング層を含んでなる、被覆キブル形態のペットフードであって、前記コーティング層が、脂肪構成成分、タンパク質構成成分および結合剤構成成分を含んでなり、前記脂肪構成成分が、前記コーティング層において、脂肪バンドを形成し、前記脂肪バンドが3.900以上の値を有し、前記脂肪バンドの値が、NIRスペクトルイメージングにより測定され、前記ペットフードの表面の相対的な脂肪分布を表すことを特徴とする、ペットフードであることを明確にしました。」

ウ 審尋
当審より平成27年7月1日付けで審尋した内容は次のとおりである。
「1 特許請求の範囲の請求項1において、「脂肪バンド」(原文では、fat band)と記載されているが、本願明細書の記載を参酌しても、審査時の拒絶理由で指摘されていたように、「脂肪バンド」なる用語で意味されるものが不明である。
特許請求の範囲で用いる技術用語は学術用語を用いることとされています(特許法施行規則第24条の4、様式第29の2の備考8,9を参照。)。
「脂肪バンド」が技術用語(学術用語)であるならば、その意味が明らかとなる文献を示してください。
また、「脂肪バンド」なる用語が、ペットフードや食品の分野において一般的に用いられているのあれば、それを明らかにする文献を示してください。

2 特許請求の範囲の請求項1において、「脂肪バンドが3.900以上の値を有し」、及び「脂肪バンドの値が、NIRスペクトルイメージングにより測定され、前記ペットフードの表面の相対的な脂肪分布を表すこと」と記載されているが、本願明細書の記載を参酌しても、審査時の拒絶理由で指摘されていたように、「脂肪バンドの値」(原文では、fat band value)が「脂肪バンド」の何を示すどのような数値であるのか不明である。
すなわち、「NIRスペクトルイメージング」による測定手段が公知(周知)であり、また、「脂肪バンドの値」が「ペットフードの表面の相対的な脂肪分布を表すこと」であるとしても、「値」には「%」等の単位がないこともあり、「脂肪バンドの値」が具体的に何を示すどのような数値であるのか不明である。
「脂肪バンドの値」について記載されている文献を示して、「脂肪バンドの値」がどのようなものであるのかを明らかにしてください。例えば、「脂肪バンド」の「値」を導くための具体的な測定装置と測定方法を明らかにしてください。
また、「脂肪バンドの値」が、ペットフードや食品の分野において一般的に用いられているとともに、本願明細書及び図面に記載されているような「3.900」等と表現されることが通常であるというのであれば、それを明らかにする文献を示してください。」

エ 回答書
請求人は、当審からの審尋に対して、平成27年10月6日付け回答書で次のとおり回答している。
「特許請求の範囲の請求項1において、「脂肪バンド」と記載されているが、本願明細書の記載を参酌しても、「脂肪バンド」なる用語で意味されるものが不明である、とのご指摘を受けております。また、特許請求の範囲の請求項1において、「脂肪バンドが3.900以上の値を有し」、及び「脂肪バンドの値が、NIRスペクトルイメージングにより測定され、前記ペットフードの表面の相対的な脂肪分布を表すこと」と記載されているが、本願明細書の記載を参酌しても、「脂肪バンドの値」が「脂肪バンド」の何を示すどのような数値であるのか不明である、とのご指摘を受けております。
本発明は、コアおよびコアを被覆するコーティング層を含んでなる、被覆キブル形態のペットフードに関するものであり、このコーティング層に含まれる脂肪構成成分が「脂肪バンド」なる層を形成するものであります。本願明細書の段落[0165]には、「無傷キブルの収集物(一般に全部で70?100)を、拡散された、ファイバー結合レーザー出力に暴露し、InGaAs FPAを一時的にゲートして、個々の各パルスから反射レーザー光を捕捉した。画像を900?1650nmにておよそ2nmの間隔で記録し、各波長にて5つの反復画像を取得し、平均した。機器ソフトウェアは、各画像の暗電流、照明均一性、及びレンズ/検出器のスペクトル応答を自動的に修正する。視界に亘る照度の変動に関する補償は、スペクトル領域に亘り99%の反射率を用いたSpectralonプレートイメージングにより実行し、Spectralonデータを使用して試料データセットを正規化した。検出器の非線形応答と、レーザー光源のパルス間の強度の変動は、視野の4つの角部付近に位置する4つのSpectralonディスク(公称反射率2%、40%、60%及び99%)により対処した。各試料に関して3つの全体のハイパースペクトル画像スタックを収集し、試料はデータ収集間で移動せず、全てのデータは即時連続にて収集した。これらの3つのデータセットを平均して、「脂肪バンド」値の決定に使用する最終的なデータセットを得た。」ことが記載され、段落[0166]には、「分析のために、反射率値の逆数の対数を取ることにより、反射率画像スタックを擬似吸収スペクトル画像スタックに変換した。炭素-水素伸長振動の第2の倍音に対応するピークを捕捉して、1155nm?1242nmにおける各画素にてハイパースペクトルデータを(波長軸に沿って)統合することにより、そのコントラストが脂肪分布に関連する単一画像を形成した。詳細には、スペクトル曲線下面積と、1155nm及び1242nmにおける擬似吸収値を接続する直線の上方との面積を統合することにより、各画素の「脂肪バンド」値を決定した。」ことが記載されており、「脂肪バンド」の「値」を導くための具体的な測定装置と測定方法が説明されています。
したがって、「脂肪バンド」なる用語の意味、および「脂肪バンドの値」が何を示すかが明確になったものと考えます。」

(2)明確性要件についての検討・判断
ア 「脂肪バンド」について
(ア)当審の判断
補正後の請求項1には、「脂肪構成成分が、前記コーティング層において、脂肪バンドを形成し」と記載されているが、拒絶査定及び当審からの審尋でも指摘したように、「脂肪バンド」なる用語で意味されるものが不明である。
すなわち、本願明細書には、「脂肪バンド」なる用語について定義されておらず、また、具体的なものも示されていない。
また、「脂肪バンド」が技術用語(学術用語)や、ペットフードや食品の分野において一般的に用いられている用語であるともいえない(請求人の回答書からは確認できない。)。
したがって、本願補正発明は明確ではない。
(イ)請求人の主張について
a 請求人は、回答書において、「本発明は、コアおよびコアを被覆するコーティング層を含んでなる、被覆キブル形態のペットフードに関するものであり、このコーティング層に含まれる脂肪構成成分が「脂肪バンド」なる層を形成するものであります。」と主張している。
b しかしながら、請求人の主張は以下のとおり採用できない。
脂肪構成成分が「脂肪バンド」なる層を形成するとしても、「脂肪バンド」なる用語が不明であるから、何を形成するのか不明である。
また、「脂肪バンド」が、コーティング層に含まれる脂肪構成成分からなる層(層状の部分)であると解釈できるとしても、「脂肪バンド」といえる層(層状の部分)が、コーティング層に脂肪構成成分がどのように含まれた状態をいうのか不明である。言い換えると、「脂肪構成成分が、前記コーティング層において、脂肪バンドを形成し」ている構成(「脂肪バンド」なる用語を用いて特定した構成)と、コーティング層に脂肪構成成分が含まれている構成との違いが不明である。

イ 「脂肪バンドの値」について
(ア)当審の判断
補正後の請求項1には、「脂肪バンドが3.900以上の値を有し」、及び「脂肪バンドの値が、NIRスペクトルイメージングにより測定され、前記ペットフードの表面の相対的な脂肪分布を表すこと」と記載されているが、拒絶査定及び当審からの審尋でも指摘したように、「脂肪バンドの値」が「脂肪バンド」の何を示すどのような数値であるのか不明である。
すなわち、上記アで述べたように「脂肪バンド」なる用語で意味されるものが不明である。
また、本願明細書には、NIRスペクトルイメージングによる測定装置と測定方法が記載されているが、「脂肪バンド」の「値」を導くための具体的な方法は記載されていない。
さらに、「脂肪バンドの値」が、ペットフードや食品の分野において一般的に用いられているとともに、本願明細書及び図面に記載されているような「3.900」等と表現されることが通常であるともいえない(請求人の回答書からは確認できない。)。
よって、「脂肪バンドの値」が「脂肪バンド」の何を示すどのような数値であるのか不明であって、本願補正発明は明確ではない。
(イ)請求人の主張について
a 請求人は、回答書において、本願明細書の段落[0165]及び[0166]に記載の事項から、「脂肪バンド」の「値」を導くための具体的な測定装置と測定方法が説明されていると主張している。
b しかしながら、請求人の主張は以下のとおり採用できない。
(a)本願明細書には、NIRスペクトルイメージングによる測定装置と測定方法について、
「【0164】
方法
NIRイメージング
OPOTEK HySPEC(商標)近赤外(NIR)イメージングシステムを使用して、ドッグフードの調製品を分析した。ハイパースペクトルNIR反射率画像スタックを収集し、一連の画像を得、前記画像は、セットとして撮った際に各画素にてNIRスペクトルデータを提供する。HySPEC(商標)は、パルス状の、狭いバンド幅のレーザー光源及び熱電的に冷却された、拡張レンジInGaAsフォーカルプレーンアレイ(FPA)検出器を使用する。レーザーは、10Hz反復率で持続時間5nsのパルスを生成する。検出器は、30μm×30μmのサイズの320×256個のエレメントからなる。組み合わせイメージングシステムは、430?690nmの可視波長領域と、900?1650nm(11,000?6,000cm^(-1))のNIR波長領域とを走査することができる。帯域幅は、可視にて0.5nm未満であり、1650nmにて1.5nm未満である。空間分解能は、およそ660×660μm^(2)/画素であり、視野はおよそ21cm×17cmである。
【0165】
無傷キブルの収集物(一般に全部で70?100)を、拡散された、ファイバー結合レーザー出力に暴露し、InGaAs FPAを一時的にゲートして、個々の各パルスから反射レーザー光を捕捉した。画像を900?1650nmにておよそ2nmの間隔で記録し、各波長にて5つの反復画像を取得し、平均した。機器ソフトウェアは、各画像の暗電流、照明均一性、及びレンズ/検出器のスペクトル応答を自動的に修正する。視界に亘る照度の変動に関する補償は、スペクトル領域に亘り99%の反射率を用いたSpectralonプレートイメージングにより実行し、Spectralonデータを使用して試料データセットを正規化した。検出器の非線形応答と、レーザー光源のパルス間の強度の変動は、視野の4つの角部付近に位置する4つのSpectralonディスク(公称反射率2%、40%、60%及び99%)により対処した。各試料に関して3つの全体のハイパースペクトル画像スタックを収集し、試料はデータ収集間で移動せず、全てのデータは即時連続にて収集した。これらの3つのデータセットを平均して、「脂肪バンド」値の決定に使用する最終的なデータセットを得た。
【0166】
分析のために、反射率値の逆数の対数を取ることにより、反射率画像スタックを擬似吸収スペクトル画像スタックに変換した。炭素-水素伸長振動の第2の倍音に対応するピークを捕捉して、1155nm?1242nmにおける各画素にてハイパースペクトルデータを(波長軸に沿って)統合することにより、そのコントラストが脂肪分布に関連する単一画像を形成した。詳細には、スペクトル曲線下面積と、1155nm及び1242nmにおける擬似吸収値を接続する直線の上方との面積を統合することにより、各画素の「脂肪バンド」値を決定した。イメージングマスクを使用して、FOV中のキブルに対応する画素のみが、「脂肪バンド」に関する統計に含まれることを確実にした。統合された面積の値は、絶対脂肪レベルに較正されていないが、統合面積の増大は、脂肪の存在の増大を示している。公称1%脂肪コーティング及び13%脂肪コーティングを有する固定セットのキブルを調製し、「脂肪バンド」計算におけるラン・ツー・ラン(run-to-run)一貫性の更なる確認物として全ての記録画像内に存在した。」
と記載されている。
(b)しかしながら、「画像を900?1650nmにておよそ2nmの間隔で記録し、各波長にて5つの反復画像を取得」すること(以下「画像取得工程」という。)と、「脂肪バンド」及びその「値」との関連が不明である。言い換えると、上記画像取得工程がなぜ「脂肪バンドの値」を求めるための工程といえるのか不明である。
(c)また、「分析のために、反射率値の逆数の対数を取ることにより、反射率画像スタックを擬似吸収スペクトル画像スタックに変換した。炭素-水素伸長振動の第2の倍音に対応するピークを捕捉して、1155nm?1242nmにおける各画素にてハイパースペクトルデータを(波長軸に沿って)統合することにより、そのコントラストが脂肪分布に関連する単一画像を形成した。詳細には、スペクトル曲線下面積と、1155nm及び1242nmにおける擬似吸収値を接続する直線の上方との面積を統合すること」(以下「面積取得工程」という。)と、「脂肪バンド」及びその「値」との関連が不明である。言い換えると、上記面積取得工程がなぜ「脂肪バンドの値」を決定することといえるのか不明である。
(d)さらに、「統合された面積の値は、絶対脂肪レベルに較正されていないが、統合面積の増大は、脂肪の存在の増大を示している。」との記載からは、脂肪成分の含有量について言及しているとも解釈できるが、そうすると、脂肪成分の含有量と「脂肪バンドの値」との違い、延いては、その違いによるコーティング層の構成上の違いが不明である。
(e)以上のとおりであるから、本願明細書には、「脂肪バンド」の「値」を導くための具体的な方法が記載されているとはいえない。また、「1155nm」及び「1242nm」に関して、発明特定事項ではなく、波長の選択によって「脂肪バンドの値」も当然変わると考えられるから、本願補正発明は不明確である。
(f)加えて言うと、「脂肪バンド」が、コーティング層に含まれる脂肪構成成分からなる層(層状の部分)であると解釈できるとしても、先にも述べたように、「脂肪バンド」なる用語を用いて「脂肪構成成分が、前記コーティング層において、脂肪バンドを形成し」ている構成と、コーティング層に脂肪構成成分が含まれている構成との違いが不明であり、さらには、コーティング層における脂肪構成成分の含有量が同じ場合に、「脂肪バンドが3.900以上の値を有し」ているか否かによる構成上の違いが不明である。言い換えると、脂肪構成成分の含有量を変えずに「脂肪バンドの値」を変える(又は異なるようにした)構成が不明である。よって、「脂肪バンドが3.900以上の値を有し」ていることで特定されるコーティング層の構成が不明である。
c 請求人は、審判請求書において、「本発明は、動物の嗜好性の向上という課題を解決する」と主張している。
d しかしながら、「脂肪バンドが3.900以上の値を有し」ていることは、動物の嗜好性の向上に寄与しているのか不明であり、とくに「3.900以上」の値を有することが3.900未満の値に比べて格別の効果があるのか不明であるから、その技術的意義が不明である。よって、請求人の主張は採用できず、また、この点からも本願補正発明は不明確であるといえる。

(3)むすび
以上のとおり、本願補正発明は明確でないから、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし15に係る発明は、拒絶査定時の平成25年11月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。

「脂肪バンドを含む、ペットフードであって、前記脂肪バンドが3.900以上の値を有することを特徴とする、ペットフード。」

第4 判断
本願発明も、「脂肪バンド」なる用語を用いて、「脂肪バンドが3.900以上の値を有すること」を発明特定事項とするものであるが、原査定の拒絶の理由で指摘され、上記第2の3で説示したように、「脂肪バンド」なる用語で意味されるものが不明であり、また、「脂肪バンドの値」が「脂肪バンド」の何を示すどのような数値であるのか不明であるから、本願発明も明確でない。

第5 むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-26 
結審通知日 2015-12-01 
審決日 2015-12-14 
出願番号 特願2012-513138(P2012-513138)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (A23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂田 誠  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 小野 忠悦
中田 誠
発明の名称 被覆キブル形態のペットフード  
代理人 柳田 征史  
代理人 佐久間 剛  

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