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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1314145
審判番号 不服2014-23335  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-11-17 
確定日 2016-05-06 
事件の表示 特願2010-148366「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月19日出願公開、特開2012- 10809〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年6月29日に特許出願したものであって、平成26年1月8日付けで拒絶の理由が通知され、平成26年3月7日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成26年8月21日付け(発送日:平成26年8月26日)で拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、手続補正がなされたものである。

第2 平成26年11月17日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年11月17日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、平成26年3月7日付けの手続補正の特許請求の範囲の請求項1の記載を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
外部から触れられないように複数の遊技球が内部空間に封入され、入賞に対する賞球が払い出されることなく電気的に記憶可能な遊技機であって、
予め定められた規定位置にある遊技球を遊技盤に向けて打ち出す打出手段と、
遊技球が整列した供給通路の最下流部にある遊技球を前記規定位置まで供給する供給手段と、
遊技者が前記遊技盤に向けて打ち出すことが可能な遊技球の数を超える遊技球が前記規定位置に供給される前に遊技球の供給を停止するように前記供給手段を制御する制御手段と、
前記供給手段により前記規定位置に遊技球が供給されたことを検知する検知手段と、を備え、
前記制御手段は、前記打出手段が駆動している場合にも、遊技者が前記遊技盤に向けて打ち出すことが可能な最後の遊技球であることを把握した後、遊技球が前記規定位置に供給されたことを前記検知手段が検知したら、前記供給手段の駆動を停止することを特徴とする遊技機。」
から、
平成26年11月17日付けの手続補正の特許請求の範囲の請求項1の
「【請求項1】
外部から触れられないように複数の遊技球が内部空間に封入され、入賞に対する賞球が払い出されることなく電気的に記憶可能な遊技機であって、
予め定められた規定位置にある遊技球を遊技盤に向けて打ち出す打出手段と、
遊技球が整列した供給通路の最下流部にある遊技球を前記規定位置まで供給する供給手段と、
遊技者が前記遊技盤に向けて打ち出すことが可能な遊技球の数を超える遊技球が前記規定位置に供給される前に遊技球の供給を停止するように前記供給手段を制御する制御手段と、
前記供給手段により前記規定位置に遊技球が供給されたことを検知する検知手段と、を備え、
前記制御手段は、前記打出手段が駆動している場合にも、遊技者が前記遊技盤に向けて打ち出すことが可能な最後の遊技球であることを把握した後、遊技球が前記規定位置に供給されたことを前記検知手段が検知したら、前記打出手段の駆動を停止させずに前記供給手段の駆動を停止することを特徴とする遊技機。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審で付した。)。

2 補正の適否
本件補正の補正事項は、
「前記供給手段の駆動を停止する」という記載を、
「前記打出手段の駆動を停止させずに前記供給手段の駆動を停止する」という記載にする補正であり、「制御手段」による「前記供給手段の駆動を停止する」処理が、さらに「前記打出手段の駆動を停止させずに」行う処理であることを限定するものであるから、「制御手段」という発明特定事項の内容を限定するものである。

そうすると、本件補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する限定的減縮を目的とするものに該当する。
また、補正事項による補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
よって、補正事項による本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する限定的減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)刊行物1に記載された発明
本願の出願日前に頒布された特開2005-312762号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。
(a)「【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、発射位置に供給した遊技球を発射装置が遊技領域に向けて発射するように制御するとともに、該遊技領域を経た遊技球を回収し、再び該発射位置に供給して遊技球を循環利用する一方、該遊技領域に配置した役物装置の動作に応じて特別遊技条件が成立した場合に、特別遊技状態の発生が可能な遊技機を含む遊技装置において、
前記遊技機で遊技球を発射する期間を特定可能な発射条件を設定する発射条件設定手段と、
遊技球の発射開始指示の検出に基づいて、前記発射条件を充足するまでの期間、前記発射位置へ遊技球を供給するとともに前記発射装置が該遊技球を発射するように自動制御する自動発射制御手段を備えたことを特徴としている。
【0011】
ここで、遊技機とは、遊技球を循環使用する封入球式のパチンコ遊技機、アレンジボール遊技機、雀球遊技機等の弾球遊技機である。
また、遊技装置とは、前記遊技機単独で構成されるものであっても良いし、遊技機に接続された管理装置等の機能を含んでいても良い。すなわち、本発明の遊技装置の構成要素が、全て遊技機に含まれていても良いし、遊技機の外部にあっても機能する構成要素が、遊技機外部に有って、遊技機外部の構成要素と遊技機の構成要素とから本発明の遊技装置が構成されていても良い。
また、遊技球の発射開始指示は、例えば、発射条件設定手段から発射条件に基づいて出力されるものとしても良いし、オペレータ等により操作される入力手段から入力に基づいて出力されるものとしても良いし、遊技機の外部の管理装置から遊技機に出力されるものとしても良い。また、遊技装置に発射開始指示を出力する発射開始指示出力手段を備えても良いし、遊技装置の構成に含まれない外部の発射開始指示出力手段から遊技装置に入力されるものとしても良い。」

(b)「【0036】
以下、この発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施の形態においては、本発明の遊技装置の少なくとも一部である遊技機として封入球式遊技機を用いている。
この封入球式遊技機はパチンコ遊技機であって、例えば、遊技内容等は、従来のパチンコ遊技機と同様とすることが可能となっているとともに、外形等のサイズも同様となっており、パチンコ遊技店の現状の島設備に設置可能となっているが、島設備の球供給機構や球排出機構を用いることがないものとなっている。すなわち、封入球式遊技機は、予め封入された遊技球を用いる。また、封入球式遊技機は、例えば、球貸機等への現金の投入等により発生する遊技価値情報(例えば、金額情報)を入力し、遊技価値情報を遊技に使用可能な遊技球数(遊技媒体数)である持球数のデータに変換し、このデータに対応して封入された遊技球を遊技領域に発射可能とし、遊技球を発射すると発射された遊技球数に対応して持球数のデータを減算するようになっている。また、発射された遊技球が各種入賞口や変動入賞装置等の入賞具に入賞して賞球(遊技球)が発生した場合は、実際の遊技球を払い出すことなく、前記持球数のデータに賞球数が加算されるようになっている。また、持球数のデータが0となると、遊技球の発射ができない状態となる。この状態で遊技価値情報としての金額情報や貯球された遊技媒体数の情報等を遊技媒体数のデータに変換すると、持球数のデータに変換された遊技媒体数のデータが加算され、再び遊技球の発射が可能となる。」

(c)「【0039】
また、前面枠本体130には、該前面枠本体130に取り付けられた遊技盤1の遊技領域1aを視認可能な開口窓部144(図2に図示)を有し、この開口窓部144を覆う透明部材としての二重のガラス板141を保持する透明部材保持枠としてのガラス枠140が設けられている。
前面枠本体130は、前面枠120の各部材の取付ベースとなるものであって、上述のように、矩形枠状の機枠110内にちょうど収まるように、概略矩形板状に構成されるとともに、その中央から上端部に渡る部分に遊技盤1を嵌め込んで収容するための方形状の開口部121が形成されている。また、前面枠本体130の遊技盤1が嵌め込まれた開口部121、すなわち、前面枠本体130の中央より少し下側から上端部に渡る部分を覆って前記ガラス枠140が配置されており、遊技盤1の前面と前記ガラス枠140に嵌め込まれた後側のガラス板141裏面との間で、遊技盤1の前面に設けられたガイドレール2に囲まれた部分が遊技球が発射されて流下する遊技領域1aとされている。
【0040】
また、ガラス枠140の一方の側部(左側部)は、前面枠本体130の一方の側部(左側部)に回動可能に軸支されて、扉状に開閉自在とされ、ガラス枠140を開くことにより、遊技盤1の前面側の遊技領域1aの前側を開放可能となっている。
また、前面枠本体130及びガラス枠140はそれぞれ周知のパチンコ遊技機等の弾球遊技機と同様に鍵穴159にキーを差して回転させることで閉じた状態にロック可能となっている。また、ガラス枠140が開放されるとガラス枠開放検出センサ142(図8に図示)に検出されるようになっている。
【0041】
また、ガラス枠140の前面側には、遊技領域1aの視認を妨げない位置に、複数の外部アピール装飾ランプ11,…、サイドランプ12,12、スピーカ13,13、エラー表示器14,14(装飾ランプを兼ねる)等が設けられている。外部アピール装飾ランプ11,…は、ガラス枠140の上部に、主に獲得遊技球数が大量となった場合に、これを周囲に報知するためのものである。例えば、入球数(遊技者が遊技機に打ち込んだ球数)と出球数(遊技球の入賞により出てきた賞球数)との差である差球数や差球数に対応する持球数に基づき、例えば、持球数(差球数)が高くなった場合に、持球数に対応する数の外部アピール装飾ランプ11,…が点灯するようになっている。
なお、上述のように封入球式遊技機100では、賞球の払い出しは行われず、上述の出球数、入球数、差球数、持球数等は、実際の遊技球の個数ではなく、データ上の数値となる。すなわち、実際に使用される遊技球は、循環使用される限られた所定数(例えば、25個)しかなく、例えば、遊技領域1aに発射される遊技球を検知してカウントした発射球数、発射されたが戻ってしまった遊技球を検知してカウントしたファール球数、遊技領域1aに発射されて回収された遊技球を検知してカウントした回収球数、入賞した場合の賞球数、遊技店から借りた貸球数等の数値から上述の入球数、出球数、差球数、持球数が得られる。
【0042】
なお、ガラス枠140を開放して遊技球が外に出てしまう等のトラブルがない限り、発射球数=ファール球数+回収球数(回収球数がファール球数を含まない場合)となる。そして、入球数=回収球数=発射球数-ファール球数となり、出球数=賞球数=入球数-貸球数(再プレイ球数)+持球数となり、持球数=貸球数(もしくは再プレイ球数)+出球数-入球数、入球数-出球数=差球数、持球数=貸球数(もしくは再プレイ球数)-差球数となる。以上のように封入球式遊技機100による遊技は、完全にデータ上の数値として行われることになり、遊技球をこぼしたり、遊技球を下皿や上皿に残したりすることによる誤差が生じることがなく、整数単位で確実に管理可能となる。しかし、多数の遊技球を得て、これを遊技球箱に溜めることとそれを周囲の人に見られることとにより遊技者が得られる満足感や優越感といったものが、持球数という数値の増加では得難い。そこで、外部アピール装飾ランプ11,…は、点灯や発光色の変更により、遊技機の周囲に対して持球数が多いことをアピールすることで遊技者が満足感や優越感を得られるように用いられる。」

(d)「【0051】
前面枠本体130下部の取付盤131の裏面側には、図3に示すように、発射ユニット60が設けられるとともに、発射装置61を制御する発射制御装置63aとなる発射制御基板63(ボックス631内に配置)、発射装置61により遊技領域1aに発射された遊技球を回収して再び発射装置61に供給する封入球循環ユニット200(封入球循環装置)、封入球式遊技機100内の各装置に電力を供給する電源基板70(ボックス71a内に配置)、遊技盤1以外の前面枠120に備えられた装置の制御を行う第1枠制御基板81(ボックス81a内に配置)及び第2枠制御基板90(ボックス90a内に配置)が取り付けられている。これら第1枠制御基板81及び第2枠制御基板90が枠制御装置として機能し、遊技盤1に取り付けられた装置を除く、前面枠120の例えば、外部アピール装飾ランプ11,…、タッチパネル表示ユニット151、仮想遊技球表示器154、封入球循環ユニット200、外部とのデータの通信装置等を制御する枠制御装置となる。なお、第1枠制御基板81は、遊技制御基板20及び演出制御基板50からの制御に基づいて第2枠制御基板90及び発射制御基板63を制御するようになっている。
【0052】
また、遊技内容に係わる制御を統括的に行う遊技制御基板20(ボックス22内に配置)及びその制御下で遊技の演出に係わる制御を行う演出制御基板50(ボックス52内に配置)は、遊技盤1の裏面側に設けられている。従って、遊技内容の制御に関する制御装置は遊技盤1に設けられており、遊技盤1を交換することにより、遊技内容に係わらない装置をそのまま流用して遊技内容だけを変更することが可能である。なお、封入球式遊技機100の各種制御装置については後に説明する。
【0053】
図4に示すように、発射ユニット60は、取付盤131に取り付けられる取付プレート64と、取付プレート64に取り付けられる発射レール62と、発射レール62上の遊技球を打撃して遊技球を発射させる発射杵66等を備えた発射装置61とを備える。
発射装置61は、発射モータ(ステッピングモータ)68(図8に図示)と、この発射モータ68に接続されて回転駆動されることにより、遊技球を打撃して遊技球を発射する発射杵66と、発射杵66の回転角度を規制するストッパ部材67と、発射レール62上に後述するように封入球循環ユニット200から供給された遊技球を、発射レール62の下端部上の発射杵66により打撃可能な所定位置に停止させる球位置決め部材69とを備える。 そして、発射レール62の後端部(傾斜下端部)上の球位置決め部材により遊技球が保持される位置が遊技球を遊技領域1aに発射する発射位置となる。
【0054】
また、図1に示すように、ガラス枠140の後方側のガラス板141の裏面と、遊技盤1の前面との間の遊技領域1aの下部を閉塞する底壁部134が形成され、前面枠本体130の底壁部134に遊技領域1aの下側から発射された遊技球が通過する発射球通過口135が設けられている。なお、発射球通過口135を通過した遊技球は、遊技盤1の内外二重にガイドレール2,2が配置された誘導路から遊技領域1aに至る。
また、誘導路から遊技領域1aに至らずに戻ったファール球も発射球通過口135を通過するようになっている。なお、発射レール62の先端面は、発射球通過口135の直下より手前に配置され、発射球通過口135に戻るファール球は、発射レール62上に戻らずに、発射レール62の前に流下し、後述する封入球循環ユニット200のファール球回収部257上に至るようになっている。
【0055】
前記封入球循環ユニット200は、図4から図7に示すように、遊技領域1aに発射された遊技球(アウト球、セーフ球を含み、ファール球を除く)を回収する回収口211を有する回収部材210と、回収口211から発射装置61の遊技球の発射位置まで遊技球を導いて遊技球を循環使用する循環流路220と、この循環流路220の上流側の一部として、回収口211から後述の待機流路221まで遊技球を流下させる回収球流路280と、この回収球流路280を流下する遊技球を検出する回収球検出手段としての回収球センサ212と、循環流路220の下流側の一部分であり、発射位置に送られる前の遊技球を待機させる待機流路221と、待機流路221に待機する遊技球の不足状態を検出する球不足状態検出手段としての球不足検出センサ264と、待機流路221の下流側の端部に設けられ、発射装置61の発射レール62の下端部(遊技球の発射位置)に供給導出口247を介して遊技球の発射のタイミングに応じて順次遊技球を一個宛送球する球送り装置240とを備える。
【0056】
従って、封入球式遊技機100は、遊技機本体内に所定数封入した遊技球を、発射位置から遊技領域1aに発射して遊技を行う一方、遊技を終えた遊技球を回収して発射位置に導いて遊技球を循環使用する循環流路220を備え、前記循環流路220には、前記発射位置へ遊技球を一個宛送球する球送り装置240と、前記球送り装置240により発射位置に送られる遊技球を待機させる待機流路221とを備えたものである。」

(e)「【0078】
球送り装置240は、待機流路221の下流側に設けられ、待機流路221の傾斜により待機流路221上に一列に並んで待機する遊技球の荷重による遊技球の傾斜下側への移動を規制する規制壁241を備え、上述のように並んだ遊技球の最も傾斜下側の遊技球を一個だけ受ける球受け部242と、球受け部242で保持された遊技球を規制壁241の上部にあって、供給流路245の入口である供給導入口249に移送する移送供給部材243と、移送供給部材243を昇降駆動する球送りソレノイド244とを備える。
また、球送り装置240は、規制壁241の球受け部242の反対側に形成され、規制壁241を乗り越え、供給導入口249から流入した遊技球を発射装置61(発射レール62上)に導出するための供給流路245と、球送り検出手段として供給流路245を通過して発射位置に送られる遊技球を検知する球送りセンサ246(供給球センサ)と、供給流路245(封入球循環ユニット200)の遊技球の発射装置61への導出口となる供給導出口247とを備える。」

(f)「【0084】
球送りセンサ246は、回収球センサ212と同様に周知のパチンコ球通過センサスイッチであり、供給流路245に関して球送り装置240の反対側となる前壁部材310の位置に設けられた供給センサ取付部312に後端部が取り付けられ、前端部が規制壁241に当接もしくは近接して配置され、規制壁241を乗り越えて供給導入口249から流入して供給流路245を真下に流下する遊技球が通過する孔246aが形成され、供給流路245を流下して孔246aを通過する遊技球を検出するようになっている。
なお、球送りセンサ246も回収球センサ212と同様に遊技球を検出して信号を出力する。球送りセンサ246に検出された遊技球は、検出直後に発射装置61に供給されて発射されるので、球送りセンサ246は、発射装置61の前側であるが、遊技球の発射を検出する発射球センサも兼ねるものとなっている。」

(g)「【0114】
次に、以上のような封入球式遊技機100の制御系について図8の制御ブロック図を参照して説明する。
封入球式遊技機100の制御系としては、遊技の進行を制御する遊技制御装置21(主基板:遊技制御基板20)と、この遊技制御装置21の制御下で各種の演出に関する制御を行う演出制御装置51(演出基板:演出制御基板50)と、遊技制御装置21及び演出制御装置51の制御下で、仮想遊技球表示器154及び外部アピール装飾ランプ11(外部アピール装飾基板11a)、封入球循環ユニット200等の制御を行う第1枠制御装置83(第1制御基板:第1枠制御基板81)と、第1枠制御装置83の制御下で、持球数(遊技球数)の演算等を行うとともにタッチパネル表示ユニット151の制御と、外部との通信の制御等を行う第2枠制御装置91(第2制御基板:第2枠制御基板90)と、第1枠制御装置83の制御下で発射装置61の制御等を行う発射制御装置63a(発射制御基板63)とを備える。」

(h)「【0127】
また、第1枠制御装置83は、第2枠制御装置91で管理される持球数が1以上の場合に発射球の発射を許可し、持球数が0の場合に発射を禁止する制御信号を発射制御装置63aに出力する。また、第1枠制御装置83は、後述するように遊技球を自動発射するための球送り許可信号と発射補助信号とを発射制御装置63aに出力する。」

(i)「【0131】
また、第2枠制御装置91のCPU91aでは、持球数の管理を行っている。
上述のように、第2枠制御装置91には、球送りセンサ246、ファール球センサ253、回収球センサ212からの遊技球の検出信号が第1枠制御装置83を介して入力される。そして、CPU91aは、球送りセンサ246が遊技球が球送り位置に送られたのを検出した際(発射球を検出した際)に、遊技球が遊技領域1aに発射されたものとして、持球数を1減算し、ファール球センサ253がファール球(戻り球)を検出した場合に遊技球を1加算することにより持球数を算出する。なお、最終的に、球送りセンサ246の検出回数からファール球センサ253の検出回数を引いたものが、回収球センサ212の検出回数と等しくなり、これが入球数となる。」

上記の記載事項(a)?(i)を総合すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明1」という。)。
「発射された遊技球が各種入賞口や変動入賞装置等の入賞具に入賞して賞球(遊技球)が発生した場合は、実際の遊技球を払い出すことなく、前記持球数のデータに賞球数が加算され、持球数等は、実際の遊技球の個数ではなく、データ上の数値となり、遊技は、完全にデータ上の数値として行われることとなる、遊技球を循環使用する封入球式のパチンコ遊技機あって、
発射レール62の後端部(傾斜下端部)上の球位置決め部材により遊技球が保持される位置を発射位置として、遊技球を遊技盤1の前面の遊技領域1aに発射する発射装置61と、
循環流路220の下流側の一部分であり、発射位置に送られる前の一列に並んだ遊技球を待機させる待機流路221の下流側の端部に設けられ、発射装置61の発射レール62の下端部(遊技球の発射位置)に遊技球の発射のタイミングに応じて順次遊技球を一個宛送球する球送り装置240と、
発射装置61の前側にあるパチンコ球通過センサスイッチであり、球送り検出手段として、発射位置に送られる遊技球を検知する球送装置240の球送りセンサ246(供給球センサ)と、
第2枠制御装置91及び発射装置61の制御等を行う発射制御装置63aを制御する第1枠制御装置83と、
球送りセンサ246が遊技球が球送り位置に送られたのを検出した際(発射球を検出した際)に、遊技球が遊技領域1aに発射されたものとして、持球数を1減算することにより持球数を算出し、持球数の管理を行っている第2枠制御装置91と、
を備え、
第1枠制御装置83は、第2枠制御装置91で管理される持球数が1以上の場合に発射球の発射を許可し、持球数が0の場合に発射を禁止する制御信号を発射制御装置63aに出力するパチンコ遊技機。」

(2)刊行物2に記載された発明
本願の出願日前に頒布された特開平1-207089号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。

(a)「【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は、パチンコ遊技機等で代表される弾球遊技機に関し、詳しくは、遊技者の持玉数が特定できる持玉数特定情報が記録された記録媒体により遊技可能な弾球遊技機に関する。」(第2頁右上欄第16?19行)

(b)「前記操作ハンドル22の操作に応答して、前記打球発射装置54の打球杆58が間欠揺動されることにより、その打球杆58によってパチンコ玉が遊技領域36に向けて弾発される。図中、56は打玉供給機構であり、打玉待機樋78内にあるパチンコ玉を打球杆58による打球発射位置にまで供給するためのものである。また、前記打球杵58によって弾発発射されたパチンコ玉は、発射玉検出器64によって検出され、後述するように遊技制御に用いられる。」(第4頁右下欄下から6行?第5頁左上欄第4行)

(c)「制御回路は、制御中枢としての演算部(マイクロコンピュータ)95を含む。演算部(マイクロコンピュータ)95は、以下に述べるようなパチンコ遊技機10の動作を制御する機能を有する。」(第7頁右下欄第10行?13行)

(d)「また、発射玉検出器64からの発射玉検出信号が発射玉検出回路176を介して演算部95に与えられる。この発射玉検出器64と発射玉検出回路176とにより、遊技領域に向けて発射される打玉を検出する発射玉検出手段が構成されている。」(第8頁右下欄第12行?16行)

(e)「第5図は、第4図に示した制御回路の動作を説明するためのフローチャートである。」(第9頁左下欄第1行?2行)

(f)「前記ステップS8,ステップSllおよびステップS14により、発射玉検出手段64、176、(第4図参照)の出力に基づいて、持ち玉数特定情報から導き出される遊技者の持ち玉数データに対し1を減算するとともに、ファール玉検出手段68,178(第4図参照)の出力に基づいて前記持ち玉数データに対し1を加算し、前記通過玉検出手段112,114,116,118a?118c、180 (第4図参照)の出力に基づいて前記持ち玉数データに対し一定数n(たとえば13)を加算する持ち玉数演算手段が構成されている。」(第10頁右上欄第4?17行)

(g)「また、前記ステップS28およびステップS24により、前記持ち玉数演算手段の演算値が0になったことに基づいて打込玉の発射を不能にするとともに、前記判定手段の出力がある前に前記持ち玉数演算手段の演算値が0でなくなったことに基づいて打込玉の発射不能状態を解除する打込玉発射制御手段が構成されている。なお、前記ステップS28およびステップS24では、打玉の発射を不能とする手段として発射装置をロックする方法を採用したが、この発射装置のロックの方法としては、たとえば、打球モータを停止したりパチンコ玉の打球位置への供給を停止したり、さらには、遮閉板等を発射玉が遊技領域に至るまでの通路途中に出現させて、発射玉が遊技領域に進入できないようにする(発射玉すべてを強制的にファール玉にする)等、種々の方法が含まれる。なお、パチンコ玉の打球供給位置への停止を行なうに際しては、打球発射位置にパチンコ玉を送り出す手前に発射玉検出手段としての検出器を設けるのがよい。なぜならば、この場合には打球モータは停止されないため、第1図の64に示した位置に発射玉検出器を設けると、たとえば、持ち玉数データにおける最終のパチンコ玉が発射玉検出器64により検出されてそれに基づいて打球供給を停止したとしても、既に打球発射位置に供給されているパチンコ玉が打球杆により発射されることとなる等の不都合が生ずるのであり、このような不都合を防止するためである。要するに、本発明における打玉発射不能の方法としては、各検出器の構成や配設場所に応じて上記した種々の方法の中から最も適した方法をとればよく、ひとつの方法に限定されるものではない。」(第12頁右上欄第2行?左下欄第13行)

(h)前記(f)より、前記(g)の「持ち玉数演算手段の演算値が0になったこと」とは、持ち球数が1の状態から、発射玉検出手段64、176の出力に基づいて、遊技者の持ち玉数データに対し1を減算することで、持ち球数が0の状態になったことだといえる。

(i)前記(d)、(f)及び(g)より、 制御回路は、持ち玉数演算手段の演算値が0になったことに基づいて打込玉の発射を不能にする方法として、打球発射位置にパチンコ玉を送り出す手前に発射玉検出手段64、176を構成する発射玉検出器64を設け、持ち玉数データにおける最終のパチンコ玉を発射玉検出器64により検出してそれに基づいて打球発射位置へのパチンコ玉の供給を停止することで、打球モータが停止されないために既に打球発射位置に供給されているパチンコ玉が打球杆により発射されることとなる不都合を防止することができるものといえる。

上記の記載事項(a)?(g)及び検討事項(h)?(i)を総合すると、刊行物2には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明2」という。)。

「打球杆58によってパチンコ玉が遊技領域36に向けて弾発される球発射装置54と、
パチンコ玉を打球杆58による打球発射位置にまで供給するための打玉供給機構56と、
遊技制御に用いられるようにパチンコ玉を検出する発射玉検出器64と、
パチンコ遊技機10の動作を制御する制御回路と、
を備えたパチンコ遊技機であって、
制御回路は、発射玉検出手段64、176の出力に基づいて遊技者の持ち玉数データに対し1を減算するとともに、ファール玉検出手段68,178の出力に基づいて前記持ち玉数データに対し1を加算し、前記通過玉検出手段112,114,116,118a?118c、180の出力に基づいて前記持ち玉数データに対し一定数n(たとえば13)を加算する持ち玉数演算手段を構成し、
持ち球数が1の状態から、発射玉検出手段64、176の出力に基づいて、遊技者の持ち玉数データに対し1を減算することで、持ち球数が0の状態になったことに基づいて打込玉の発射を不能にする方法として、打球発射位置にパチンコ玉を送り出す手前に発射玉検出手段64、176を構成する発射玉検出器64を設け、持ち玉数データにおける最終のパチンコ玉を発射玉検出器64により検出してそれに基づいて打球発射位置へのパチンコ玉の供給を停止することで、打球モータが停止されないために既に打球発射位置に供給されているパチンコ玉が打球杆により発射されることとなる不都合を防止することができるパチンコ遊技機。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。

ア 引用発明1の「発射された遊技球が各種入賞口や変動入賞装置等の入賞具に入賞して賞球(遊技球)が発生した場合は、実際の遊技球を払い出すこと」がないことは、本願補正発明の「入賞に対する賞球が払い出されること」のないことに相当する。
また、引用発明1の「前記持球数のデータに賞球数が加算され、持球数等は、実際の遊技球の個数ではなく、データ上の数値とな」ることは、このデータ上の数値を管理するうえで何らかの記憶手段を備えることは明らかであるから、本願補正発明の賞球が「電気的に記憶可能」なことに相当する。
そして、引用発明1の「遊技球を循環使用する封入球式」であることは、「発射された遊技球が各種入賞口や変動入賞装置等の入賞具に入賞して賞球(遊技球)が発生した場合は、実際の遊技球を払い出すことなく」、「遊技は、完全にデータ上の数値として行われる」ものであり、遊技者が遊技球を触れられないように遊技球がパチンコ遊技機の内部に封入されたものを示すことは明らかであるから、本願補正発明の「外部から触れられないように複数の遊技球が内部空間に封入され」たことに相当する。
以上のことから、引用発明1の「発射された遊技球が各種入賞口や変動入賞装置等の入賞具に入賞して賞球(遊技球)が発生した場合は、実際の遊技球を払い出すことなく、前記持球数のデータに賞球数が加算され、持球数等は、実際の遊技球の個数ではなく、データ上の数値となり、遊技は、完全にデータ上の数値として行われることとなる、遊技球を循環使用する封入球式のパチンコ遊技機」は、本願補正発明の「外部から触れられないように複数の遊技球が内部空間に封入され、入賞に対する賞球が払い出されることなく電気的に記憶可能な遊技機」に相当する。

イ 引用発明1の「発射レール62の後端部(傾斜下端部)上の球位置決め部材により遊技球が保持される位置」である「発射位置」は、本願補正発明の「予め定められた規定位置」に相当するから、引用発明1の「発射レール62の後端部(傾斜下端部)上の球位置決め部材により遊技球が保持される位置を発射位置として、遊技球を遊技盤1の前面の遊技領域1aに発射する発射装置61」は、本願補正発明の「予め定められた規定位置にある遊技球を遊技盤に向けて打ち出す打出手段」に相当する。

ウ 引用発明1の「循環流路220の下流側の一部分であり、発射位置に送られる前の一列に並んだ遊技球を待機させる待機流路221」は、本願補正発明の「遊技球が整列した供給通路」に相当する。
そうすると、引用発明1の「待機流路221の下流側の端部」は、本願補正発明の「供給通路の最下流部」に相当する。
また、前記イで述べたように、引用発明1の「発射位置」は、本願補正発明の「規定位置」に相当する。
以上のことから、引用発明1の「循環流路220の下流側の一部分であり、発射位置に送られる前の一列に並んだ遊技球を待機させる待機流路221の下流側の端部に設けられ、発射装置61の発射レール62の下端部(遊技球の発射位置)に遊技球の発射のタイミングに応じて順次遊技球を一個宛送球する球送り装置240」は、本願補正発明の「遊技球が整列した供給通路の最下流部にある遊技球を前記規定位置まで供給する供給手段」に相当する。

エ 引用発明1の「発射装置61の前側にあるパチンコ球通過センサスイッチであり、球送り検出手段として、発射位置に送られる遊技球を検知する球送装置240の球送りセンサ246(供給球センサ)」と本願補正発明の「前記供給手段により前記規定位置に遊技球が供給されたことを検知する検知手段」とは、「遊技球を検知する検知手段」である点で共通するといえる。

オ 引用発明1の「第2枠制御装置91で管理される持球数が1以上の場合」及び「持球数が0の場合」は、遊技において、持球数のデータが0となると、遊技球の発射ができない状態となるものであるから、それぞれ、本願補正発明の「遊技者」が「遊技球」を「前記遊技盤に向けて打ち出すことが可能」な場合及び「遊技者」が「遊技球」を「前記遊技盤に向けて打ち出すことが可能な遊技球の数を超える」場合に相当する。
また、引用発明1の「発射を禁止する制御信号を発射制御装置63aに出力する」ことと、本願補正発明の「遊技球が前記規定位置に供給される前に遊技球の供給を停止する」こととは、少なくとも「遊技球の発射を不能にする」点で共通する。
そうすると、引用発明1の「第2枠制御装置91で管理される持球数が1以上の場合に発射球の発射を許可し、持球数が0の場合に発射を禁止する制御信号を発射制御装置63aに出力する」「第1枠制御装置83」は、本願補正発明の「遊技者が前記遊技盤に向けて打ち出すことが可能な遊技球の数を超える遊技球が前記規定位置に供給される前に遊技球の供給を停止するように前記供給手段を制御する制御手段」と、「遊技者が前記遊技盤に向けて打ち出すことが可能な遊技球の数を超える遊技球の発射を不能にする制御手段」である点で共通する。

上記ア?オより、本願補正発明と引用発明1とは、
[一致点]
「外部から触れられないように複数の遊技球が内部空間に封入され、入賞に対する賞球が払い出されることなく電気的に記憶可能な遊技機であって、
予め定められた規定位置にある遊技球を遊技盤に向けて打ち出す打出手段と、
遊技球が整列した供給通路の最下流部にある遊技球を前記規定位置まで供給する供給手段と、
遊技者が前記遊技盤に向けて打ち出すことが可能な遊技球の数を超える遊技球の発射を不能にする制御手段と、
遊技球を検知する検知手段と、を備える遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
「検知手段」について、本願補正発明では、「前記供給手段により前記規定位置に遊技球が供給されたことを検知する」のに対し、引用発明1では、球送り装置240により発射位置に送られる遊技球を検知する点。

[相違点2]
「遊技者が前記遊技盤に向けて打ち出すことが可能な遊技球の数を超える遊技球の発射を不能にする制御手段」について、本願補正発明では、「遊技者が前記遊技盤に向けて打ち出すことが可能な最後の遊技球であることを把握した後、遊技球が前記規定位置に供給されたことを前記検知手段が検知したら、前記打出手段の駆動を停止させずに前記供給手段の駆動を停止する」のに対し、引用発明1では、遊技球を検知手段が検知し、算出した持球数が0の場合に発射を禁止する制御信号を発射制御装置63aに出力する点。

(4)判断
ア 相違点1について
パチンコ機において、発射のために発射位置で待機しているパチンコ玉を検出するセンサを設けることは、本願の出願日前に周知の技術(例えば、特開2004-8353号公報(以下「刊行物3」という。)の段落【0030】には、遊技領域へパチンコ球を発射する球発射装置17又はその上流側に設けた、発射位置に受け止められたパチンコ球を検出する発射待機球検出センサ55について記載されている。特開平09-19551号公報(以下「刊行物4」という。)の段落【0146】には、パチンコ玉が打球発射手段における打球発射位置に供給されたことを検出する発射玉検出器23について記載されている。以下「周知技術」という。)である。
そうすると、引用発明1の発射位置に送られる遊技球を検知する球送りセンサ246(供給球センサ)に対し、前記周知技術を適用し、発射位置に送られる遊技球であって、発射のために発射位置で待機しているパチンコ玉を検出するようにし、前記相違点1に係る構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について
「遊技球が前記規定位置に供給されたこと」を検知する「検知手段」については、前記アで検討したとおりである。
また、既に示したように、引用発明2の「パチンコ遊技機」は、「持ち球数が1の状態から、発射玉検出手段64、176の出力に基づいて、遊技者の持ち玉数データに対し1を減算することで、持ち球数が0の状態になったことに基づいて打込玉の発射を不能にする方法として、打球発射位置にパチンコ玉を送り出す手前に発射玉検出手段64、176を構成する発射玉検出器64を設け、持ち玉数データにおける最終のパチンコ玉を発射玉検出器64により検出してそれに基づいて打球発射位置へのパチンコ玉の供給を停止することで、打球モータが停止されないために既に打球発射位置に供給されているパチンコ玉が打球杆により発射されることとなる不都合を防止することができる」ものである。
したがって、引用発明2は、前記相違点2のうち、「遊技者が前記遊技盤に向けて打ち出すことが可能な最後の遊技球であることを把握した後」、「遊技球」を「前記検知手段が検知したら、前記打出手段の駆動を停止させずに前記供給手段の駆動を停止する」という構成を備えるものといえる。
そして、引用発明1と引用発明2とは、持球数が演算によって求まるデータ上の数値として管理されるパチンコ遊技機として共通の技術分野に属し、遊技球の発射装置、供給装置、遊技球を検知するセンサという主要な構成が共通している。また、引用発明1は「遊技店においてパチンコ遊技機等の遊技機の釘調整後に行う試し打ちの作業を簡略化すること」を目的とするものであるが、試し打ちの作業を簡略化することは、パチンコ遊技機の技術分野において普通に考慮されるべき技術的課題であり、引用発明2においても考慮されるべきものであることは、当業者にとって明らかであるから、引用発明1に引用発明2を適用する動機付けはあるといえる。
さらに、刊行物2((2)の(f))には、「パチンコ玉の打球供給位置への停止を行なうに際しては、打球発射位置にパチンコ玉を送り出す手前に発射玉検出手段としての検出器を設けるのがよい。なぜならば、この場合には打球モータは停止されないため、第1図の64に示した位置に発射玉検出器を設けると、たとえば、持ち玉数データにおける最終のパチンコ玉が発射玉検出器64により検出されてそれに基づいて打球供給を停止したとしても、既に打球発射位置に供給されているパチンコ玉が打球杆により発射されることとなる等の不都合が生ずるのであり、このような不都合を防止するためである。」と記載されており、さらに「本発明における打玉発射不能の方法としては、各検出器の構成や配設場所に応じて上記した種々の方法の中から最も適した方法をとればよく、ひとつの方法に限定されるものではない。」と記載されている。
すなわち、引用発明2において、「パチンコ玉の打球供給位置への停止を行なうに際しては、打球発射位置にパチンコ玉を送り出す手前に発射玉検出手段としての検出器を設けるのがよい」ことの理由は、「第1図の64に示した位置」(すなわち、発射された後のパチンコ玉を検知する位置)で「持ち玉数データにおける最終のパチンコ玉が発射玉検出器64により検出されてそれに基づいて打球供給を停止したとしても」、パチンコ玉の発射時点で遊技者が遊技盤に向けて打ち出すことが可能な遊技球の数を超える遊技球が打球発射位置に供給されてしまい、「既に打球発射位置に供給されているパチンコ玉が打球杆により発射されることとなる等の不都合が生ずるのであり、このような不都合を防止するため」であるから、「発射玉検出手段としての検出器」の配設場所は、このような不都合が生じない位置であればよいことは明らかである。
そして、「発射玉検出手段としての検出器」を、周知技術のように、「発射のために待機しているパチンコ玉を検出するセンサ」として、「持ち玉数データにおける最終のパチンコ玉が発射玉検出器64により検出されてそれに基づいて打球供給を停止」すれば、その検出された最終のパチンコ玉が打球杵によって発射されるだけで、遊技者が遊技盤に向けて打ち出すことが可能な遊技球の数を超える遊技球が打球発射位置に供給されることはなく、その「打球発射位置に供給されているパチンコ玉が打球杆により発射されることとなる等の不都合が生ずる」ことはないから、引用発明2が、引用発明1に周知技術を適用する阻害要因となることもない。
そうすると、引用発明1の「制御手段」に対し、引用発明2を適用するにあたり、引用発明1の「検知手段」に対し、前記周知技術を適用し、遊技者が前記遊技盤に向けて打ち出すことが可能な最後の遊技球であることを把握した後、遊技球が前記規定位置に供給されたことを検知手段が検知したら、打出手段の駆動を停止させずに供給手段の駆動を停止するようにして、前記相違点2に係る構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

ウ 本願補正発明の奏する効果について
本願補正発明が奏する作用効果は、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が予測できる範囲内のものである。

エ まとめ
以上のことから、本願補正発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

オ 審判請求人の主張について
審判請求書において、請求人は、「引用文献4(刊行物2)には、発射装置のロックの方法として、パチンコ玉の打球位置への供給を停止する方法が含まれると記載されているが、パチンコ玉の打球供給位置への停止を行うに際しては、打球発射位置にパチンコ玉を送り出す手前に発射玉検出手段としての検出器を設けるのがよい、と記載されている。なぜなら、引用文献4に記載されているように、「第1図の64に示した位置に発射玉検出器を設けると、たとえば、持ち球数データにおける最終のパチンコ玉が発射玉検出器により検出されてそれに基づいて打球供給を停止したとしても、既に打球発射位置に供給されているパチンコ玉が打球杆により発射されることとなる等の不都合が生ずるのであり、このような不都合を防止するためである」。
つまり、引用文献4(刊行物2)には、「打球発射位置にパチンコ玉を送り出す手前に発射玉検出手段としての検出器を設け、この検出器により検出されてそれに基づいてパチンコ玉の打球位置への供給を停止する」ことが記載されているのである。すなわち、引用文献4には、「パチンコ玉の打球位置への供給を停止する」ことと、「打球発射位置にパチンコ玉を送り出す手前に発射玉検出手段としての検出器を設け、この検出器の検出に基づいて供給を停止する」こととは一体不可分の関係にあると記載されている。それゆえ、引用文献4の記載から、「パチンコ玉の打球位置への供給を停止する」点のみを抽出して、引用文献4には「パチンコ玉の打球位置への供給を停止する」ことが記載されていると捉えるべきではない。
この引用文献4の記載は、本願発明のように、「打出手段の駆動を停止させずに供給手段の駆動を停止する」には、「規定位置に遊技球を供給する手前に検出器を設け、この検出器が遊技球を検出したら供給手段の駆動を停止する」のがよいと述べているのである。
このことは、本願発明の特徴点の一部である、「供給手段により規定位置に遊技球が供給されたことを検知する検知手段を備え、遊技球が規定位置に供給されたことを当該検知手段が検知したら、打出手段の駆動を停止させずに供給手段の駆動を停止する」のとは明らかに異なる。
また、引用文献1?3に、上記本願発明の特徴点の一部について開示されていないのは明らかである。
それゆえ、引用文献1?4に記載された発明を組み合わせたとしても、上記本願発明の構成には至らない。」と主張しているので、以下検討する。

前記イで検討したように、引用発明2において「パチンコ玉の打球供給位置への停止を行なうに際しては、打球発射位置にパチンコ玉を送り出す手前に発射玉検出手段としての検出器を設けるのがよい」ことの理由は、「第1図の64に示した位置」(すなわち、発射された後のパチンコ玉を検知する位置)で「持ち玉数データにおける最終のパチンコ玉が発射玉検出器64により検出されてそれに基づいて打球供給を停止したとしても」、パチンコ玉の発射時点で遊技者が遊技盤に向けて打ち出すことが可能な遊技球の数を超える遊技球が打球発射位置に供給されてしまい、「既に打球発射位置に供給されているパチンコ玉が打球杆により発射されることとなる等の不都合が生ずるのであり、このような不都合を防止するため」であるから、「発射玉検出手段としての検出器」の配設場所は、このような不都合が生じない位置であればよく、「打球発射位置にパチンコ玉を送り出す手前」はその一例であって、出願人が主張するように「パチンコ玉の打球位置への供給を停止する」ことと、「打球発射位置にパチンコ玉を送り出す手前に発射玉検出手段としての検出器を設け、この検出器の検出に基づいて供給を停止する」こととは一体不可分の関係にあるものとは認められない。
加えて、「発射玉検出手段としての検出器」を、「発射のために待機しているパチンコ玉を検出するセンサ」として、「持ち玉数データにおける最終のパチンコ玉が発射玉検出器64により検出されてそれに基づいて打球供給を停止」すれば、その検出された最終のパチンコ玉が打球杵によって発射されるだけで、遊技者が遊技盤に向けて打ち出すことが可能な遊技球の数を超える遊技球が打球発射位置に供給されることはなく、その「打球発射位置に供給されているパチンコ玉が打球杆により発射されることとなる等の不都合が生ずる」ことはないから、当該刊行物2の記載が、引用発明1に周知技術を適用する阻害要因となることもない。
よって、請求人の主張を採用することはできない。

4 補正却下の決定についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成26年3月7日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
外部から触れられないように複数の遊技球が内部空間に封入され、入賞に対する賞球が払い出されることなく電気的に記憶可能な遊技機であって、
予め定められた規定位置にある遊技球を遊技盤に向けて打ち出す打出手段と、
遊技球が整列した供給通路の最下流部にある遊技球を前記規定位置まで供給する供給手段と、
遊技者が前記遊技盤に向けて打ち出すことが可能な遊技球の数を超える遊技球が前記規定位置に供給される前に遊技球の供給を停止するように前記供給手段を制御する制御手段と、
前記供給手段により前記規定位置に遊技球が供給されたことを検知する検知手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記打出手段が駆動している場合にも、遊技者が前記遊技盤に向けて打ち出すことが可能な最後の遊技球であることを把握した後、遊技球が前記規定位置に供給されたことを前記検知手段が検知したら、前記供給手段の駆動を停止することを特徴とする遊技機。」

2 刊行物に記載された発明
刊行物1及び刊行物2の記載事項並びに引用発明1及び引用発明2は、上記「第2 3(1)」及び「第2 3(2)」に記載したとおりである。

3 対比
本願発明は、上記「第2 2」で検討した本願補正発明の「前記打出手段の駆動を停止させずに前記供給手段の駆動を停止する」という処理について、「前記打出手段の駆動を停止させずに」という限定を除いたものである。 よって、本願発明と引用発明1とを比較すると、両者は、前記「第2 3(3)」で挙げた相違点1及び下記相違点3で相違しているので、以下検討する。

[相違点3]
「遊技者が前記遊技盤に向けて打ち出すことが可能な遊技球の数を超える遊技球の発射を不能にする制御手段」について、本願発明では、「遊技者が前記遊技盤に向けて打ち出すことが可能な最後の遊技球であることを把握した後、遊技球が前記規定位置に供給されたことを前記検知手段が検知したら、前記供給手段の駆動を停止する」のに対し、引用発明1では、遊技球を検知手段が検知し、算出した持球数が0の場合に発射を禁止する制御信号を発射制御装置63aに出力する点。

4 判断
ア 相違点1について
刊行物3には、発射のために発射位置で待機しているパチンコ玉を検出するセンサを設けたパチンコ機(以下「引用発明3」という。)が記載されている。そして、引用発明1と引用発明3とは、パチンコ遊技機として共通の技術分野に属し、引用発明1の「遊技店においてパチンコ遊技機等の遊技機の釘調整後に行う試し打ちの作業を簡略化すること」という課題は、パチンコ遊技機の技術分野において普通に考慮されるべき技術的課題であり、引用発明3においても考慮されるべきものであることは、当業者にとって明らかであるから、引用発明1に引用発明3を適用する動機付けはあるといえる。
そうすると、引用発明1の発射位置に送られる遊技球を検知する球送りセンサ246(供給球センサ)に対し、前記引用発明3を適用し、発射位置に送られる遊技球であって、発射のために発射位置で待機しているパチンコ玉を検出するようにし、前記相違点1に係る構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
なお、「第2 3(4)ア」で検討したように、パチンコ機において、発射のために発射位置で待機しているパチンコ玉を検出するセンサを設けることは、本願の出願日前に周知の技術であるから、引用発明1に周知技術を適用し、前記相違点1に係る本願発明の構成とすることも、当業者であれば容易に想到し得たことといえる。

イ 相違点3について
「遊技球が前記規定位置に供給されたこと」を検知する「検知手段」については、前記アで検討したとおりである。
また、前記「第2 3(4)イ」により、引用発明2は、前記相違点3のうち、「遊技者が前記遊技盤に向けて打ち出すことが可能な最後の遊技球であることを把握した後」、「遊技球」を「前記検知手段が検知したら、前記供給手段の駆動を停止する」という構成を備えるものといえるうえに、引用発明1に引用発明2を適用する動機付けはあるといえる。
さらに、「第2 3(4)イ」で検討したとおり、引用発明2において、「パチンコ玉の打球供給位置への停止を行なうに際しては、打球発射位置にパチンコ玉を送り出す手前に発射玉検出手段としての検出器を設けるのがよい」ことの理由は、「第1図の64に示した位置」(すなわち、発射された後のパチンコ玉を検知する位置)で「持ち玉数データにおける最終のパチンコ玉が発射玉検出器64により検出されてそれに基づいて打球供給を停止したとしても」、パチンコ玉の発射時点で遊技者が遊技盤に向けて打ち出すことが可能な遊技球の数を超える遊技球が打球発射位置に供給されてしまい、「既に打球発射位置に供給されているパチンコ玉が打球杆により発射されることとなる等の不都合が生ずるのであり、このような不都合を防止するため」であるから、「発射玉検出手段としての検出器」の配設場所は、このような不都合が生じない位置であればよいことは明らかである。
そして、「発射玉検出手段としての検出器」を、前記引用発明3のように、「発射のために待機しているパチンコ玉を検出するセンサ」として、「持ち玉数データにおける最終のパチンコ玉が発射玉検出器64により検出されてそれに基づいて打球供給を停止」すれば、その検出された最終のパチンコ玉が打球杵によって発射されるだけで、遊技者が遊技盤に向けて打ち出すことが可能な遊技球の数を超える遊技球が打球発射位置に供給されることはなく、その「打球発射位置に供給されているパチンコ玉が打球杆により発射されることとなる等の不都合が生ずる」ことはないから、当該引用発明2が、引用発明1に引用発明3を適用する阻害要因となることもない。
そうすると、引用発明1の「制御手段」に対し、引用発明2を適用するにあたり、引用発明1の「検知手段」に対し、前記引用発明3を適用し、遊技者が前記遊技盤に向けて打ち出すことが可能な最後の遊技球であることを把握した後、遊技球が前記規定位置に供給されたことを検知手段が検知したら、供給手段の駆動を停止するようにして、前記相違点3に係る構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

よって、本願発明は、引用発明1?3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-02-24 
結審通知日 2016-03-01 
審決日 2016-03-18 
出願番号 特願2010-148366(P2010-148366)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤脇 沙絵  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 関 博文
長崎 洋一
発明の名称 遊技機  
代理人 尾形 文雄  
代理人 古部 次郎  
代理人 伊與田 幸穂  

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