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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1314149 |
審判番号 | 不服2014-24246 |
総通号数 | 198 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-11-28 |
確定日 | 2016-05-06 |
事件の表示 | 特願2012-518101「歯科用X線装置のための移動機構」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 1月 6日国際公開、WO2011/001025、平成24年12月10日国内公表、特表2012-531287〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成22年6月23日(パリ条約による優先権主張2009年7月1日,フィンランド(FI))を国際出願日とする出願であって,平成25年11月1日付けで拒絶理由が通知され,平成26年1月23日に手続補正がなされ,同年7月22日付けで拒絶査定がなされ,同年11月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,同時に手続補正(以下,「本件補正」という。)がなされたものである。 第2 本件補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 補正後の本願発明(下線は補正箇所を示す。) 本件補正により,補正前の特許請求の範囲の請求項1は, 「 【請求項1】 口腔外歯科用X線装置のための移動機構(100)であり、X線源(102)及びX線検出器ユニット(101)を結合し、撮像の被検者(103)の周りに回転するようになっており、互いに対して転回可能な少なくとも2つの部品(100a,100b)を備え、前記X線源及び前記X線検出器ユニットは該移動機構の異なる部品に位置する、移動機構であって、該移動機構において、前記X線源及び前記X線検出器ユニット又はX線検出器(101a)の位置は、前記X線源によって出射されたX線ビームが、前記X線検出器ユニット又は前記X線検出器に当たるように、前記少なくとも2つの部品が、対称CT撮像位置と少なくとも1つのオフセット撮像位置との間、又は異なるオフセット撮像位置間で互いに対して転回されると、変化するようになっているか、又は、前記X線検出器ユニットに接続された該移動機構の部品が前記対称CT撮像位置又はオフセット撮像位置からパノラマ撮像位置に転回すると、前記X線検出器ユニットは、前記X線源のビームに沿って前記X線源に近づくようになっている、ことを特徴とする、口腔外歯科用X線装置のための移動機構。」 と補正された。 本件補正は,補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記X線検出器ユニットに接続された該移動機構の部品がパノラマ撮像位置に転回すると、前記X線検出器ユニットは、前記X線源のビームに沿って前記X線源に近づくようになっている」を「前記X線検出器ユニットに接続された該移動機構の部品が前記対称CT撮像位置又はオフセット撮像位置からパノラマ撮像位置に転回すると、前記X線検出器ユニットは、前記X線源のビームに沿って前記X線源に近づくようになっている」と「前記X線検出器ユニットに接続された該移動機構の部品がパノラマ撮像位置に転回する」前の位置を限定した補正を含むものである。 したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含む。 そこで,本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2 引用刊行物およびその記載事項(下線は当審で付与した。) (1)本願の優先権主張日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特表2001-518341号公報(以下,「刊行物1」という。)には,「頭部X線撮影装置」について,図面とともに次の事項が記載されている。 (1-ア) 「 【0001】 (技術分野) 本発明は、頭部X線撮影装置に関し、特に歯科用X線撮影に使用されるものに関し、該装置は第2の本体部に接続される第1の本体部と、第3の本体部に接続された他の端を含み、該他の端はその一端に取付けられたX線源及びその他の端に取付けられたX線検出器を有する第4の本体部を有し、該装置において前記第2の本体部及び前記第3の本体部は第1のピボットシャフトを介して互いに接続され、さらに、前記第3の本体部及び前記第4の本体部は第2のピボットシャフトを介して互いに接続され、両方のピボットシャフトは実質的に互いに対して平行である装置に関する。 【0002】 (背景技術) ヒト頭骨の頭部撮像に関してX線撮影の最も重要なタスクとして、歯列弓のパノラマ断層撮影、正面の歯列弓のX線撮影、顎関節のX線撮影及び頭骨全体の頭型測定用X線撮影が挙げられる。これらの撮像タスクは各種類のX線撮影法、例えば、ナロービーム断層撮影法、リニア断層撮影法、全地場X線透視法、スリットX線透視法、断層合成X線撮影法及びコンピュータ断層撮影法を用いて行うことができる。一部のX線撮影装置構成では、これらの異なる撮像モードはX線撮影操作を開始する前に装置のいくつかの配置を行い、撮像操作用の適切な制御プログラムを選択することにより同一の装置において行うことができる。X線撮影装置の使用における最も重要であり、最も要求度の大きいX線撮影像モードはその基本を次に詳細に述べるパノラマ断層撮影法である。」 (1-イ) 「 【0011】 (発明の開示) 本発明の目的は、従来の構造のものよりもさらに妥当な装備コストで正確な軌道ジオメトリを提供することが可能なやり方で回転移動を達成し、同時に必要に最も適切なX線撮影法(例えば、ナロービーム断層撮影法、リニア断層撮影法、全地場X線透視法、スリットX線透視法、断層合成X線撮影法及びコンピュータ断層撮影法)を常時用いて異なる頭部撮像モード(例えば、歯列弓のパノラマ断層撮影、横断X線撮影として一般に周知の横断投射における歯列弓のX線撮影、顎関節のX線撮影及び頭骨全体の頭型測定用X線撮影を含む)間の自在切換えを促進する軌道ジオメトリの選択を得る方法を提供することである。 」 (1-ウ) 「 【0015】 本発明では、パノラマ照射において要求される回転移動は作動本体の主要面で起こる回転移動によって実現される。本体部の数は3つまたは4つであることが可能であり、これにより第1の本体部は垂直支柱、最も有利には伸縮支柱、または、壁または天井への取付けに適した本体やブラケットなど固定部材である。軌道移動は2つまたは3つの本体部の組合せ回転移動として有利に実行することができる。明らかに、多数の回転可能な本体部のアームの組合せを使用することができる。そして、X線源及びX線検出器の移動は互いから独立して操作する分離アームの組合せを用いて実現される。回転移動の組合せとして実行されるこの種類の軌道移動は一般にSCARA(Selective Compliance Assembly Robot Arm:選択的コンプライアンス・アセンブリ・ロボット・アーム)機構として周知である。移動を実行するこの方法により、妥当な装備コストで従来技術で周知の他の方法や装備よりも明らかに正確な位置制御の軌道移動が得られる。さらに、SCARA機構により、異なる種類のX線検出器のロボットによる変更の可能性が得られる。」 (1-エ) 「 【0022】 以下、本発明による機構について、上述した軌道ジオメトリが実現可能であることを説明する。 図2には本発明による装置の基本構成要素として、台座11、第1の本体部12、第2の本体部13、第3の本体部14、第4の本体部15及び患者位置決め支持16が示されている。第1の本体部12は台座11、または、壁もしくは天井に固定されている。第1の本体部12は高さが調節可能な伸縮垂直アームを含むことが最も有利である。または、第1の本体部12は固定直立ブラケットまたは壁もしくは天井に取付けるために適した同様の本体部を含むことができる。」 (1-オ) 「 【0036】 図23には2つの分離Lアーム54、55に代えた第4の本体部15を有する本発明による装置の別の実施例が示されている。この中でX線源10はLアーム54に接続され、他のLアーム55はX線検出器20を保持する。他の本体部は重ね合わせた配列で操作する2つのアーム52、53によって代えられる。この配置は異なるX線撮像モードで必要なさまざまな軌道ジオメトリのすべてを単純構造の助けを借りて実行することを可能にする。図23に示した実施例では本発明による装置のSCARAアームを構成する別の配置が示されている。この構成では、例えば頭型測定用の照射のために、アームが互いから十分に離隔できる限りは、分離アームと共に配列する。この中で、本体部52及び53は垂直に普通の整列したピボットシャフトによって第1の本体部12に接続され、本体部52はそれに接続された本体部54を保持し、本体部53はそれに接続された本体部55を保持する。X線源10は本体部52及び54によって軌道移動し、X線検出器は本体部53及び55によって軌道移動する。さらに、X線源10を適合し、Lアーム54に対して垂直軸の周囲を自由に回転させ、またLアーム55に対してX線検出器20もそれぞれ回転させる。X線源10及びX線検出器20の回転移動は能動アクチュエータの助けを借りて実行することができ、パルスモータまたは同様のパルス制御アクチュエータを用いることが有利である。この種類の構造を用いて、本発明による装置は、例えば頭部X線規格撮影用の別のアクセサリを必要とすることなく、上記のX線撮像モードのすべてを実行することができる。 【0037】 図24には頭型測定用の照射時のアームの位置が示されている。本体部52及び54はほぼその極限位置で回転し、本体部53及び55はそれぞれ、ほぼその極限位置の反対方向に回転する。このようにして、X線源10及びX線検出器20は互いに最大に離隔することができる。患者17はX線検出器20に接近して立っていることが示されている。 【0038】 図25A及び25BにはSCARAアームの位置がパノラマ照射の2つの異なる位置を例示するやり方で示されている。照射の両方の位相時、本体部52及び53は互いに対して平行に固定のままにしておくことができ、本体部54及び55はパノラマ撮像モードに必要に応じてX線源10及びX線検出器20の相互軌道移動を生成する。図25Aには、アームシステムの本体部のすべてが互いに対して平行に駆動されることが示されている。図25Bには、本体部54及び55が本体部52及び53に対してほぼ直交位置に回転されることが示されている。X線投射の他の位置はこれらの極位置間の中間位置により形成される。または、X線投射の対応する軌道ジオメトリは、本体部52及び53を重ね合わせた位置に進めるのではなく、むしろ、それらの位置を予め規定された軌道上に制御することによって実現することができる。同時に、X線源10及びX線検出器20の位置は、伝導X線ビームの記録を促進するために、常時それらの位置を互いに対面させるように回転しなければならない。」 (1-カ) 図23 ![]() (1-キ) 図24 ![]() (1-ク) 図25A ![]() (1-ケ) 図25B ![]() [刊行物1記載の発明] 上記(1-オ)の記載及び(1-カ)?(1-ケ)は一つの装置の実施例であり、アーム52及びLアーム54と、アーム53及び他のLアーム55をアームが互いから十分に離隔した頭型測定を実行する図24に記載された頭型測定用モードと、アーム52とアーム53を重ね、Lアーム54とLアーム55を互いから十分に離隔した歯列弓のパノラマ撮像を実行する図25Aおよび図25Bに記載されたパノラマ撮像モードとに変換できることが理解される。 この理解を踏まえて、上記(1-ア)?(1-オ)の下線部の記載を整理すると,上記刊行物1には,次の発明が記載されていると認められる。 「X線源10はLアーム54に接続され、他のLアーム55はX線検出器20を保持し、 アーム52はそれに接続されたLアーム54を保持し、他のアーム53はそれに接続された他のLアーム55を保持し、 アーム52及び他のアーム53は垂直に普通の整列したピボットシャフトによって第1の本体部12に接続され、 アーム52及びLアーム54と、アーム53及び他のLアーム55をアームが互いから十分に離隔した頭型測定を実行する図24に記載された頭型測定用モードと、アーム52とアーム53を重ね、Lアーム54とLアーム55を互いから十分に離隔した歯列弓のパノラマ撮像を実行する図25Aおよび図25Bに記載されたパノラマ撮像モードとに変換可能であり、 SCARA(Selective Compliance Assembly Robot Arm:選択的コンプライアンス・アセンブリ・ロボット・アーム)機構により、X線源10はアーム52及びLアーム54によって軌道移動し、X線検出器20は他のアーム53及び他のLアーム55によって軌道移動することができ、 頭型測定モードと歯列弓のパノラマ撮像モードを実行することができる 歯科用X線撮影に使用される頭部X線撮影装置。」(以下,「引用発明」という。) 3 対比・判断 補正発明のうち、次の下線を引いた選択肢に注目して引用発明を整理すると、 「口腔外歯科用X線装置のための移動機構(100)であり、X線源(102)及びX線検出器ユニット(101)を結合し、撮像の被検者(103)の周りに回転するようになっており、互いに対して転回可能な少なくとも2つの部品(100a,100b)を備え、前記X線源及び前記X線検出器ユニットは該移動機構の異なる部品に位置する、移動機構であって、該移動機構において、前記X線源及び前記X線検出器ユニット又はX線検出器(101a)の位置は、前記X線源によって出射されたX線ビームが、前記X線検出器ユニット又は前記X線検出器に当たるように、前記少なくとも2つの部品が、対称CT撮像位置と少なくとも1つのオフセット撮像位置との間、又は異なるオフセット撮像位置間で互いに対して転回されると、変化するようになっているか、又は、前記X線検出器ユニットに接続された該移動機構の部品が前記対称CT撮像位置又はオフセット撮像位置からパノラマ撮像位置に転回すると、前記X線検出器ユニットは、前記X線源のビームに沿って前記X線源に近づくようになっている、ことを特徴とする、口腔外歯科用X線装置のための移動機構。」 となる。 そこで、補正発明の上記下線を引いた選択肢の発明を分節して整理した次の発明と、引用発明を対比することとする。 「口腔外歯科用X線装置のための移動機構(100)であり、 X線源(102)及びX線検出器ユニット(101)を結合し、撮像の被検者(103)の周りに回転するようになっており、 互いに対して転回可能な少なくとも2つの部品(100a,100b)を備え、 前記X線源及び前記X線検出器ユニットは該移動機構の異なる部品に位置する、移動機構であって、 該移動機構において、前記X線源及び前記X線検出器ユニットの位置は、前記X線源によって出射されたX線ビームが、前記X線検出器ユニットに当たるように、前記少なくとも2つの部品が、前記X線検出器ユニットに接続された該移動機構の部品が対称CT撮像位置からパノラマ撮像位置に転回すると、前記X線検出器ユニットは、前記X線源のビームに沿って前記X線源に近づくようになっている、 ことを特徴とする、口腔外歯科用X線装置のための移動機構。」 ア 補正発明の「X線検出器ユニット(101)」は、本願明細書の「【0021】 一実施の形態によれば、X線検出器ユニットは、1つのX線検出器を備えるだけであり、種々のタイプのCT撮像、例えば対称CT撮像及び/又はオフセット撮像で用いられるようになっている。・・・」との記載に照らせば、1つのX線検出器を備えるだけでもよいとされている。 そうすると、引用発明の「X線源10」、「X線検出器20」、及び、「歯科用X線撮影に使用される頭部X線撮影装置」は、それぞれ補正発明の「X線源(102)」、「X線検出器ユニット(101)」、及び、「口腔外歯科用X線装置」に相当することは明らかである。 引用発明の「Lアーム54に接続され」た「X線源10」及び「X線検出器20」を「保持」する「他のLアーム55」は、補正発明の「前記X線源及び前記X線検出器ユニットは該移動機構の異なる部品に位置する」ことに相当する。 また、引用発明は「アーム52及び他のアーム53は垂直に普通の整列したピボットシャフトによって第1の本体部12に接続され」ており、「アーム52はそれに接続されたLアーム54を保持し、他のアーム53はそれに接続された他のLアーム55を保持し」、「X線源10はLアーム54に接続され、他のLアーム55はX線検出器20を保持し」ているのであるから、 「X線源10」は、「Lアーム54」、「アーム52」を介してピボットシャフトによって第1の本体部12に接続され、 「X線検出器20」は、「他のLアーム55」、「他のアーム53」を介してピボットシャフトによって第1の本体部12に接続されているといえる。 そして、引用発明の「X線源10」と「X線検出器20」は被検者の撮影に用いるのであるから、「ピボットシャフトによって第1の本体部12に接続され」た「X線源10、Lアーム54、アーム52」、および、「X線検出器20、他のLアーム55、他のアーム53」は、互いに対して転回可能であり、特に「パノラマ撮影」の場合には、転回しながら撮影を行うことは技術常識であるから、被検者の周りに回転可能に構成されていることは明白ある。 引用発明の「X線源10はアーム52及びLアーム54によって軌道移動し、X線検出器20は他のアーム53及び他のLアーム55によって軌道移動することができ」る「SCARA(Selective Compliance Assembly Robot Arm:選択的コンプライアンス・アセンブリ・ロボット・アーム)機構」は、補正発明の「移動機構」を内在することは明らかである。 そうすると、引用発明の「X線源10はLアーム54に接続され、他のLアーム55はX線検出器20を保持し、 アーム52はそれに接続されたLアーム54を保持し、他のアーム53はそれに接続された他のLアーム55を保持し、 アーム52及び他のアーム53は垂直に普通の整列したピボットシャフトによって第1の本体部12に接続され、 ・・・ SCARA(Selective Compliance Assembly Robot Arm:選択的コンプライアンス・アセンブリ・ロボット・アーム)機構により、X線源10はアーム52及びLアーム54によって軌道移動し、X線検出器20は他のアーム53及び他のLアーム55によって軌道移動することができ」る移動機構は、補正発明の「口腔外歯科用X線装置のための移動機構(100)であり、X線源(102)及びX線検出器ユニット(101)を結合し、撮像の被検者(103)の周りに回転するようになっており、互いに対して転回可能な少なくとも2つの部品(100a,100b)を備え、前記X線源及び前記X線検出器ユニットは該移動機構の異なる部品に位置する、移動機構」に相当するといえる。 イ 引用発明の「X線源10はアーム52及びLアーム54によって軌道移動し、X線検出器20は他のアーム53及び他のLアーム55によって軌道移動することができ」る「SCARA(Selective Compliance Assembly Robot Arm:選択的コンプライアンス・アセンブリ・ロボット・アーム)機構」は、撮像を行うためのものであるから、X線源10からのX線がX線検出器20に当たることは自明な事項である。 したがって、引用発明の「X線源10はアーム52及びLアーム54によって軌道移動し、X線検出器20は他のアーム53及び他のLアーム55によって軌道移動することができ」る「SCARA(Selective Compliance Assembly Robot Arm:選択的コンプライアンス・アセンブリ・ロボット・アーム)機構」による移動時の、X線源10からのX線とX線検出器20との関係は、補正発明の「該移動機構において、前記X線源及び前記X線検出器ユニットの位置は、前記X線源によって出射されたX線ビームが、前記X線検出器ユニットに当たるよう」になっていることと一致する。 しかし、引用発明においては「前記少なくとも2つの部品が、前記X線検出器ユニットに接続された該移動機構の部品が対称CT撮像位置からパノラマ撮像位置に転回すると、前記X線検出器ユニットは、前記X線源のビームに沿って前記X線源に近づくようになって」はいない。 そうすると,両者は, (一致点) 「口腔外歯科用X線装置のための移動機構(100)であり、 X線源(102)及びX線検出器ユニット(101)を結合し、撮像の被検者(103)の周りに回転するようになっており、 互いに対して転回可能な少なくとも2つの部品(100a,100b)を備え、 前記X線源及び前記X線検出器ユニットは該移動機構の異なる部品に位置する、移動機構であって、 該移動機構において、前記X線源及び前記X線検出器ユニットの位置は、前記X線源によって出射されたX線ビームが、前記X線検出器ユニットに当たるようなっている、 口腔外歯科用X線装置のための移動機構。」である点で一致し,以下の点で相違するといえる。 (相違点) 移動機構が、補正発明では、「前記X線源及び前記X線検出器ユニットの位置は、前記X線源によって出射されたX線ビームが、前記X線検出器ユニットに当たるように、前記少なくとも2つの部品が、前記X線検出器ユニットに接続された該移動機構の部品が対称CT撮像位置からパノラマ撮像位置に転回すると、前記X線検出器ユニットは、前記X線源のビームに沿って前記X線源に近づくようになっている」のに対して、引用発明ではそのように構成されていない点。 (1)相違点についての検討 ア 本願明細書には「【0021】 一実施の形態によれば、X線検出器ユニットは、1つのX線検出器を備えるだけであり、種々のタイプのCT撮像、例えば対称CT撮像及び/又はオフセット撮像で用いられるようになっている。」と記載されており、「対称CT撮像」の「対称」とは、「オフセット撮像」の「オフセット」との対比で用いられているものと読み取れるので、「対称CT撮像」とは、X線源からX線検出器へのX線光軸に対して左右が対称である、通常の「CT撮像」のことと解される。 そして、刊行物1に「本発明の目的は、従来の構造のものよりもさらに妥当な装備コストで正確な軌道ジオメトリを提供することが可能なやり方で回転移動を達成し、同時に必要に最も適切なX線撮影法(例えば、・・・コンピュータ断層撮影法)を常時用いて異なる頭部撮像モード(例えば、歯列弓のパノラマ断層撮影・・・及び頭骨全体の頭型測定用X線撮影を含む)間の自在切換えを促進する軌道ジオメトリの選択を得る方法を提供することである。」(1-イ)と記載されている。 そうすると、刊行物1には、引用発明のパノラマ断層撮影に加えて、コンピューター断層撮影法、すなわち、CT撮影を行う示唆がある。 イ 他方、パノラマ撮影は、歯だけを撮影すれば良いため、頭部全体を撮像する撮影モードと比較して、X線検出器とX線源の距離を短くすることは技術常識であって、これを裏付けるように例えば,周知例1:特表2007-526103号公報(段落【0079】、図12、図13等),周知例2:国際公開第2008/044861号(図1等)、周知例3:国際公開第2008/028988号(図2等)参照)に、CT撮影とパノラマ撮影が可能な口腔外歯科用X線装置において、CT撮影モードからパノラマ撮影モードにすると、X線検出器ユニットの位置が、X線源のビームに沿ってX線源に近づくことの記載もされている。 以上のことを総合すると、引用発明は、「アーム52及びLアーム54と、アーム53及び他のLアーム55をアームが互いから十分に離隔した頭型測定を実行する図24に記載された頭型測定用モードと、アーム52とアーム53を重ね、Lアーム54とLアーム55を互いから十分に離隔した歯列弓のパノラマ撮像を実行する図25Aおよび図25Bに記載されたパノラマ撮像モードとに変換可能であ」る複数のモードを有する発明であるところ、前記示唆に従い、引用発明において、CT撮影を行うべく撮影モードを加えて構成するとともに、パノラマ撮影ではCT撮像等の頭部全体を撮像する撮影モードと比較して、X線検出器とX線源の距離を短くするという技術常識に従い、X線検出器20をX線源に近づけることで、補正発明のごとく構成することは当業者が容易になし得たことといえる。 (2)そして,補正発明の作用効果は,刊行物1記載の事項,および周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず,格別顕著なものともいえない。 (3)したがって,補正発明は,引用発明,および周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)なお、審理の終結後に上申書で提出の補正案の請求項1は、審理対象となった補正発明を拡張している発明であると理解される。 したがって、仮に補正案どおりの発明に補正されたとしても、上記と同じ理由で進歩性が認められない。 4 まとめ 以上のとおりであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により,却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?18に係る発明は,平成26年1月23日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定されたものであって,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりであると認める。 「 【請求項1】 口腔外歯科用X線装置のための移動機構(100)であり、X線源(102)及びX線検出器ユニット(101)を結合し、撮像の被検者(103)の周りに回転するようになっており、互いに対して転回可能な少なくとも2つの部品(100a,100b)を備え、前記X線源及び前記X線検出器ユニットは該移動機構の異なる部品に位置する、移動機構であって、該移動機構において、前記X線源及び前記X線検出器ユニット又はX線検出器(101a)の位置は、前記X線源によって出射されたX線ビームが、前記X線検出器ユニット又は前記X線検出器に当たるように、前記少なくとも2つの部品が、対称CT撮像位置と少なくとも1つのオフセット撮像位置との間、又は異なるオフセット撮像位置間で互いに対して転回されると、変化するようになっているか、又は、前記X線検出器ユニットに接続された該移動機構の部品がパノラマ撮像位置に転回すると、前記X線検出器ユニットは、前記X線源のビームに沿って前記X線源に近づくようになっている、ことを特徴とする、口腔外歯科用X線装置のための移動機構。」 2 引用刊行物およびその記載事項 本願出願前に頒布された刊行物1およびその記載事項は,上記「第2 2」に記載したとおりである。 3 当審の判断 本願発明は,補正発明の「前記X線検出器ユニットに接続された該移動機構の部品が前記対称CT撮像位置又はオフセット撮像位置からパノラマ撮像位置に転回すると、前記X線検出器ユニットは、前記X線源のビームに沿って前記X線源に近づくようになっている」について,「前記X線検出器ユニットに接続された該移動機構の部品がパノラマ撮像位置に転回すると、前記X線検出器ユニットは、前記X線源のビームに沿って前記X線源に近づくようになっている」と,「前記X線検出器ユニットに接続された該移動機構の部品がパノラマ撮像位置に転回する」前の位置を限定する補正を省いたものに相当する。 そうすると,本願発明の構成要件を全て含む補正発明が,上記「第2 3」において検討したとおり,引用発明,および周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明および周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。 第4 まとめ 以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その他の請求項について言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-10-02 |
結審通知日 | 2015-10-06 |
審決日 | 2015-12-11 |
出願番号 | 特願2012-518101(P2012-518101) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 九鬼 一慶 |
特許庁審判長 |
郡山 順 |
特許庁審判官 |
信田 昌男 ▲高▼見 重雄 |
発明の名称 | 歯科用X線装置のための移動機構 |
代理人 | 岡部 讓 |
代理人 | 越智 隆夫 |
代理人 | 高橋 誠一郎 |
代理人 | 松井 孝夫 |
代理人 | 川内 英主 |