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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1314166
審判番号 不服2015-3976  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-02 
確定日 2016-05-06 
事件の表示 特願2013-548415「コンフォーマル・アンテナ・アレイ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月27日国際公開、WO2012/128809、平成26年 2月 6日国内公表、特表2014-503149〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年12月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年1月5日、米国)を国際出願日とする出願であって、原審において平成26年4月18日付けで拒絶理由が通知され、同年8月22日付けで手続補正されたが、同年10月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年3月2日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同日付で手続補正がされたものである。

第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年3月2日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下「本件補正」という。)は、本件補正前の平成26年 8月22日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された

「ワイヤレス通信システムのセルサイト(130)においてデータを伝達するための送受信機(200)であって、
複数のアンテナ要素(235)を含むコンフォーマル・アンテナ・アレイ(230)であって、前記複数のアンテナ要素は少なくとも2次元を占める非線形アンテナ構成を有し、前記非線形アンテナ構成は配置領域に適合する順応性のあるアンテナ構成であり、該複数のアンテナ要素の各々は任意の不規則な間隔を有するように構成される、コンフォーマル・アンテナ・アレイ(230)と、
前記複数のアンテナ要素(235)の少なくとも2つの同じアンテナ要素を使用して複数のビーム形成信号を伝送するように構成されたコントローラ(210)と、
を備える送受信機。」

という発明(以下「本願発明」という。)を、

「ワイヤレス通信システムのセルサイト(130)においてデータを伝達するための送受信機(200)であって、
複数のアンテナ要素(235)を含むコンフォーマル・アンテナ・アレイ(230)であって、前記複数のアンテナ要素は少なくとも2次元を占める非線形アンテナ構成を有し、前記非線形アンテナ構成は配置領域に適合する順応性のあるアンテナ構成であり、該配置領域は構造物であり、該コンフォーマル・アンテナ・アレイが配置される際に該コンフォーマル・アンテナ・アレイは該構造物の形状に適合し、該複数のアンテナ要素の各々は任意の不規則な間隔を有するように構成される、コンフォーマル・アンテナ・アレイ(230)と、
前記複数のアンテナ要素(235)の少なくとも2つの同じアンテナ要素を使用して複数のビーム形成信号を伝送するように構成されたコントローラ(210)と、
を備える送受信機。」

という発明(以下「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。

2.新規事項の有無、補正の目的要件、シフト補正について
本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「配置領域」について、「該配置領域は構造物であり、該コンフォーマル・アンテナ・アレイが配置される際に該コンフォーマル・アンテナ・アレイは該構造物の形状に適合し、」と限定して、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項及び第4項に規定に適合するとともに、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、特許法17条の2第4項(シフト補正)の規定に違反しないことも明らかである。

3.独立特許要件について
上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について以下に検討する

(1)補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で補正後の発明として認定したとおりである。

(2)引用発明
原審の拒絶理由に引用された、本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平3-46402号公報(平成3年2月27日公開、以下「引用例」という。)には、「ビーム走査制御方法とその装置」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「2.特許請求の範囲
(1)航空機、あるいは艦船の表面等の与えられた形状の構造体に沿って配列された複数の素子アンテナとモジュールから成る電子走査アンテナにおいて、・・・(略)」(1頁左欄)

ロ.「3.発明の詳細な説明
〔産業上の利用分野〕
この発明は電子走査アンテナのアンテナ素子を3次元的に配列することで構成されるコンフォーマルアレイアンテナのビーム走査制御方法、及びその装置に関するものである。
〔従来の技術〕
第4図は従来のコンフォーマルアンテナの構成図であり、図において(1)は素子アンテナ、(2)はモジュール、(3)は送信機、(4)は受信信号合成し目標検出処理を行なう受信信号処理装置、(5)は送受信ビーム走査を制御するビーム走査制御装置、(5a)は全てのモジュールの移相データを計算するための移相データ演算器、(5b)は移相データをモジュール(2)に転送するための移相データ転送器、(6)はアンテナビームの走査方向を指令するビーム指向角指令器である。
このコンフォーマルアンテナは送信時には送信機(3)からの送信信号をアンテナの各モジュール(2)に分配し、モジュール(2)内の移相器により送信位相を制御した後素子アンテナ(1)に供給することにより空間に電波を放射する。この時ビーム走査に必要な各モジュールの移相データをビーム走査制御装置(7)により計算し、モジュールに転送し 送信信号の位相をコントロールすることで電子走査アンテナのビーム方向を制御する。
受信時は、受信波が素子アンテナ(1)で受信され、そのままモジュールを経由して受信信号処理装置に送られて目標検出処理が行なわれる。」(2頁右上欄?左下欄)

ハ.「〔実施例〕
以下、この発明の一実施例について説明する。
第1図はこの発明を実施したビーム走査制御装置の一構成例であり、第2図はアンテナ座標系を示しビーム指向ベクトルを(x、y、z)、モジュールの位置ベクトルを(xm、ym、zm)とする。また第3図はアンテナの放射パターンを示す。
第1図において(1)?(4)及び(6)は前記従来装置と同-又は相当部分を示しており、(5)は本発明におけるビーム走査制御器であり、(5a)、(5b)は従来技術と同一又は相当品を示す。(5d)はビーム指向ベクトルとモジュールの位置ベクトルの内積を計算し、送受信を止めるモジュールを検出するベクトル内積演算器、(5c)は(5d)で検出されたモジュールに対して送受信をOFFにするための制御データを作成する送受信ON/OFF制御器、(5e)はアンテナ形状の変化に対応して内積結果と比較する値を外部から変更制御するための内積比較値変更制御器である。」
(3頁右下欄?4頁左上欄)

上記引用例の記載イ?ハ及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、

a.上記ハ.の「第1図はこの発明を実施したビーム走査制御装置の一構成例であり、」の記載より、第1図において、ビーム走査制御装置は、コンフォーマルアレイアンテナの素子アンテナ1、モジュール2、送信機3、受信信号処理装置4、ビーム走査制御器5、ビーム指向角指令器6を備えると認められる。

b.上記イ.の「航空機、あるいは艦船の表面等の与えられた形状の構造体に沿って配列された複数の素子アンテナとモジュールから成る電子走査アンテナにおいて、」の記載と第1図より、引用例に記載されたアンテナは、「複数の素子アンテナを配列する」アンテナであり、また、航空機、あるいは艦船の表面等の与えられた形状の構造体に沿って配列されたアンテナであるので、該アンテナは、「コンフォーマルアレイアンテナ」と認められる。
また、航空機、あるいは艦船の表面等の与えられた形状の構造体は、3次元を占めるアンテナ構成であると認められるので、「少なくとも2次元を占めるアンテナ構成」と言える。また、「表面等の与えられた形状の構造体に沿って配列され」ているから、構造体の表面を、素子アンテナの「配置領域」としていることは明らかであり、該素子アンテナの「アンテナ構成」は、「配置領域に適合する順応性のあるアンテナ構成」といえる。
また、「航空機、あるいは艦船の表面等の与えられた形状の構造体」は、「構造物」といえ、該「コンフォーマルアレイアンテナ」は、「該構造物の形状に適合され」て「配置される」と認められる。

c.上記ロ.の「このコンフォーマルアンテナは送信時には送信機(3)からの送信信号をアンテナの各モジュール(2)に分配し、モジュール(2)内の移相器により送信位相を制御した後素子アンテナ(1)に供給することにより空間に電波を放射する。この時ビーム走査に必要な各モジュールの移相データをビーム走査制御装置(7)により計算し、モジュールに転送し 送信信号の位相をコントロールすることで電子走査アンテナのビーム方向を制御する。」の記載(ただし、ビーム走査制御装置(7)は、ビーム走査制御器(5)の誤記と認める。)より、引用例の「ビーム走査制御器(5)」は、「送信信号を」、「分配し」、「送信位相を制御し」、各「素子アンテナ(1)」に供給することにより空間に電波を放射して「ビーム走査制御」をすることで、複数の方向にビームを向けることから、「少なくとも2つの同じアンテナ要素を使用して複数のビーム形成信号を伝送する」といえる。

上記引用例には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が、記載されているものと認められる。

(引用発明)
「データを伝達するためのビーム走査制御装置であって、
複数の素子アンテナを配列するコンフォーマルアレイアンテナであって、
前記複数の素子アンテナは少なくとも2次元を占めるアンテナ構成を有し、前記アンテナ構成は配置領域に適合する順応性のあるアンテナ構成であり、該配置領域は構造物であり、該コンフォーマルアレイアンテナが配置される際に、該コンフォーマルアレイアンテナは該構造物の形状に適合される、コンフォーマルアレイアンテナと、
前記複数のアンテナ素子の少なくとも2つの同じアンテナ素子を使用して複数のビーム形成信号を伝送するように構成されたビーム走査制御器と、
を備えるビーム走査制御装置。」

(3)対比・判断
補正後の発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「ビーム走査制御装置」は、引用例の第1図を参酌するに、送信機3、受信信号処理装置4を用いてデータ送受信を行うことは明らかであって、「送受信機」であるといえる。

引用発明の「素子アンテナ」は、補正後の発明の「アンテナ要素」に相当する。

引用発明の「コンフォーマルアレイアンテナ」は、補正後の発明の「コンフォーマル・アンテナ・アレイ」に相当する。

引用発明の「ビーム走査制御器」は、補正後発明の「コントローラ」に相当する。

したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「データを伝達するための送受信機であって、
複数のアンテナ要素を含むコンフォーマル・アンテナ・アレイであって、前記複数のアンテナ要素は少なくとも2次元を占めるアンテナ構成を有し、前記アンテナ構成は配置領域に適合する順応性のあるアンテナ構成であり、該配置領域は構造物であり、該コンフォーマル・アンテナ・アレイが配置される際に該コンフォーマル・アンテナ・アレイは該構造物の形状に適合される、コンフォーマル・アンテナ・アレイと、
前記複数のアンテナ要素の少なくとも2つの同じアンテナ要素を使用して複数のビーム形成信号を伝送するように構成されたコントローラと、
を備える送受信機。」

(相違点1)「送受信機」に関し、補正後の発明が「ワイヤレス通信システムのセルサイト(130)において」データを伝達するためのものであるのに対し、引用発明は、「ワイヤレス通信システムのセルサイト(130)において」データを伝達するためのものであるか明確でない点。

(相違点2)「複数のアンテナ要素」に関し、補正後の発明では「該複数のアンテナ要素の各々は任意の不規則な間隔を有するように構成され」、「非線形アンテナ構成」を有するのに対し、引用発明では、素子アンテナの間隔や、アンテナ構成が非線形であるか否かが明らかでない点。

そこで、まず上記相違点1について検討する。
アレイアンテナを用いてビーム形成する送受信機を「ワイヤレス通信システムのセルサイト(130)において」データを伝達するために用いることは、例えば、特開平11-4191号公報(特に、【0010】?【0013】、図1、図2、【0041】?【0044】等参照。)に記載されているように、本願出願前に周知の技術であり、該周知の技術を、アンテナ・アレイとコントローラを用いてビーム形成する引用発明に単に適用することにより、補正後の発明のように「ワイヤレス通信システムのセルサイト(130)において」データを伝達するための送受信機とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

次に上記相違点2について検討する。
アレイアンテナで、サイドグローブを低減するために、複数のアンテナ要素を互いに不規則な間隔で配置することは、例えば、特開2009-290294号公報(特に、【0016】)、特開平10-93335号公報(特に、【0003】)に記載されているように本願出願前に周知技術である。
また、補正後の発明における「非線形アンテナ構成」は、円形構成、円筒の表面、半球形構成を含む(段落【0030】?【0033】)ものであるところ、引用例にも、半球形状に配列された「複数の素子アンテナ」を有するもの(図2)や、航空機あるいは艦船の表面等の与えられた形状の構造体に沿って配列された「複数の素子アンテナ」を有するもの、(摘記事項イ.)が記載されており、これらのアンテナ構成は、「非線形アンテナ構成」といえる。
そうすると、引用発明の「複数の素子アンテナ」について、「各々は任意の不規則な間隔を有するように構成し」、また、該構成を「非線形アンテナ構成」とすることは、周知技術及び引用例の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

そして、補正後の発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

以上のとおり、補正後の発明は引用発明及び周知技術に基づいて容易に発
明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.結語
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成27年3月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2 補正却下の決定 1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3,独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記補正後の発明から本件補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願はその余の請求項に論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-09-24 
結審通知日 2015-09-29 
審決日 2015-12-24 
出願番号 特願2013-548415(P2013-548415)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01Q)
P 1 8・ 575- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 米倉 秀明富澤 哲生  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 高野 美帆子
山中 実
発明の名称 コンフォーマル・アンテナ・アレイ  
代理人 岡部 讓  
代理人 吉澤 弘司  

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