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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21V 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F21V |
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管理番号 | 1314282 |
審判番号 | 不服2015-7225 |
総通号数 | 198 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-04-17 |
確定日 | 2016-05-02 |
事件の表示 | 特願2014- 29637号「照明器具」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月15日出願公開、特開2014- 89989号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成22年3月26日に出願した特願2010-71703号の一部を平成25年9月26日に新たな特許出願とした特願2013-199357号の一部を平成26年2月19日にさらに新たな出願としたものであって、平成26年4月11日付けで拒絶理由が通知され、同年6月16日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月5日付けで拒絶理由が通知され、同年11月6日に意見書及び手続補正書が提出され、平成27年1月15日付けで拒絶査定がされ、同年4月17日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出されたものである。 第2 平成27年4月17日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成27年4月17日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 平成27年4月17日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正を含むものであって、請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。 (補正前の請求項1) 「上壁部を有する長尺な金属製の本体ベースと; 長尺状、かつ平板状の回路基板、前記回路基板上に複数実装された発光素子を有し、前記上壁部に設けられた発光ユニットと; 長手方向の両端に設けられた端板部を有し、前記発光ユニットを覆い隠すように前記本体ベースに係合して設けられ、かつ、前記端板部を含めた全体が拡散透光性樹脂により形成されており、前記発光ユニットからの光を前記端板部及び断面が前記回路基板から遠ざかる方向に弧状となるように形成されている前記発光ユニットを覆い隠す部分から外部に拡散照射する中空の照明カバーと; を具備することを特徴とする照明器具。」 (補正後の請求項1) 「上壁部を有する長尺な金属製の本体ベースと; 長尺状、かつ平板状の回路基板、前記回路基板上に複数実装された発光素子を有し、前記上壁部に設けられた発光ユニットと; 断面が前記回路基板から遠ざかる方向に弧状に形成された弧状部と、前記本体ベースと固定される取付部と、前記弧状部分と前記取付部の間に形成された側壁状部と、長手方向の両端に設けられた端板部と、を有し、前記発光ユニットを覆い隠すように前記取付部が前記本体ベースに係合して設けられ、かつ、前記端板部を含めた全体が拡散透光性樹脂により形成されており、前記発光ユニットからの光を前記弧状部、前記側壁状部および前記端板部から外部に拡散照射する中空の照明カバーと; を具備することを特徴とする照明器具。」 2 補正の適否 (1)新規事項の追加の有無、シフト補正の有無、及び補正の目的の適否について 上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「照明カバー」の構成について、本願の願書に最初に添付された明細書の段落【0034】及び図4等の記載を根拠に、「断面が前記回路基板から遠ざかる方向に弧状に形成された弧状部と、前記本体ベースと固定される取付部と、前記弧状部分と前記取付部の間に形成された側壁状部と」を備えること、「前記取付部」が本体ベースに係合して設けられること、及び前記発光ユニットからの光を端板部とともに「前記弧状部、前記側壁状部」から外部に拡散照射することを限定するものであるから、発明特定事項を限定するものであって新規事項を追加するものではない。 また、上記補正は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たすものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び同第4項の規定に適合するものであり、また、その補正前の請求項1に記載された発明とその補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下検討する。 (2)独立特許要件 ア 刊行物の記載事項 (ア)刊行物1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用文献1として示された登録実用新案第3152103号公報(以下「刊行物1」という。)の2?4頁には、以下の事項が記載されている。 (1a)「【0001】 この発明はLEDランプをDINレール6に直接パチンと嵌め込んで取付が出来るLEDランプの形状に関する。」(下線は当審で付与。以下同様。) (1b)「【0004】 以上の課題を解決するために、第一考案は、DINレール6にLEDランプを直接パチンと嵌め込んで取り付けが出来るLEDランプケースとするために、LEDランプケース部分をDINレール6に対応するDINレール対応アルミケース5の形状とする。このDINレール対応アルミケース5の内部にLED放熱板4をアルミの押し出し成型でヒートシンクの形状に形成して、DINレール対応アルミケース5に密着するように固定するとLEDランプから発する熱がLED取付板3、LED放熱板4、DINレール対応アルミケース5、DINレール6、制御盤等に順に熱伝導して放熱される形状を特徴とするLEDランプである。 ・・・」 (1c)「【0006】 この考案の一実施形態を 図1に示す。 チップ型(表面実装型)LED2はLEDランプ取付板3に取付けられており、そのLED取付板3はアルミ放熱材4に接着されている。アルミ放熱材4はDINレール対応アルミケース5に密着するように固定されている。」 (1d)「【0010】 1 半透明塩ビカバー 2 チップ型(表面実装型)LED 3 LED取付板 4 アルミ放熱板 5 DINレール対応アルミケース ・・・」 (1e)刊行物1の図1には以下の図が示されている。 (1f)刊行物1の図3には以下の図が示されている。 (イ)刊行物2の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用文献2として示された登録実用新案第3151288号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている。 (2a)「【0001】 本考案は、発光モジュールに関り、特に、ユーザのニーズに応じて放熱ベース、発光素子及びレンズを交換できるカスタマイズ可能な組み立て式発光モジュールに関するものである。」 (2b)「【0008】 (実施例1) 図1?図4に示すように、本考案の実施例1によるカスタマイズ可能な組み立て式発光モジュールは、ベースユニット1aと、発光ユニット2aと、複数のねじ素子3aと、レンズユニット4aと、2つのカバー部材5aとを含む。 【0009】 ベースユニット1aは、放熱ベース10aと、それぞれ放熱ベース10aの幅方向における両端から上へ延伸する2つの第1係止構造11aとを備え、かつ、各第1係止構造11aの外側に、凹み係止部110aを有する。・・・ 【0010】 また、発光ユニット2aは、基板20aと、基板20aに電気的に接続された複数の発光素子21aを備える。さらに、基板20aは、これらのねじ素子3aに対応する複数の貫通孔200aを有し、且つ、各ねじ素子3aは、それぞれ対応する貫通孔200aを通して基板20aを放熱ベース10a上に締め付けて固定する。・・・ 【0011】 また、レンズユニット4aは、レンズ40aと、それぞれレンズ40aの幅方向における両端に形成された2つの第2係止構造41aとを有し、且つ、前記2つの第2係止構造41aは、前記2つの第1係止構造11aに対応する。そのため、レンズユニット4aは、前記2つの第1係止構造11aと前記2つの第2係止構造41aとの嵌合により、発光ユニット2aの上方に着脱可能に設置される。実施例1では、前記2つの第1係止構造11aは、それぞれ内向きに開口する第1スライド溝構造であり、前記2つの第2係止構造41aは、それぞれ外向きに開口する第2スライド溝構造であり、且つ、前記2つの第1スライド溝構造と前記2つの第2スライド溝構造とは、互いに摺動可能に嵌合される。」 (2c)刊行物2の図1?4には、以下の図が示されている。 イ 刊行物1に記載された発明 刊行物1には、摘示(1a)のとおり「LEDランプ」に関する技術について開示されているところ、摘示(1b)によれば、LEDランプは、DINレール対応アルミケース5と、アルミの押し出し成型でヒートシンクの形状に形成されたLED放熱板4(審決注:「アルミ放熱材4」とも称されている(摘示(1c))。)と、LED取付板3と、を備えることが明らかである。 また、摘示(1c)によれば、チップ型(表面実装型)LED2がLED取付板3に取付けられること、LED取付板3はアルミ放熱材4に接着されること、及び、アルミ放熱材4はDINレール対応アルミケース5に密着するように固定されることが明らかである。 そして、刊行物の図1(摘示(1e))には、LEDランプの側面断面図が図示されているところ、かかる図面の図番「1」に示される構造部材は「半透明塩ビカバー」と説明されているから(摘示(1d))、LEDランプは、さらに半透明塩ビカバー1を備えて構成されることも明らかであり、加えて図1より、半透明塩ビカバー1は、断面がLED取付板3から遠ざかる方向に弧状に形成された弧状の部位を有するものであることも看取できる。 以上によれば、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものといえる。 「DINレール対応アルミケース5と、アルミの押し出し成型でヒートシンクの形状に形成されたアルミ放熱材4と、LED取付板3と、を備えるLEDランプであって、 チップ型(表面実装型)LED2が前記LED取付板3に取付けられ、 前記LED取付板3は前記アルミ放熱材4に接着され、 前記アルミ放熱材4は前記DINレール対応アルミケース5に密着するように固定され、 前記LEDランプは、さらに半透明塩ビカバー1を備え、 前記半透明塩ビカバー1は、断面が前記LED取付板3から遠ざかる方向に弧状に形成された弧状の部位を有する、LEDランプ。」 ウ 対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「DINレール対応アルミケース5」は、「アルミケース」とも称されていることから、かかる技術分野の技術常識に照らして金属製(アルミ製)の構造体をなすことが明らかであり、また、引用発明の「アルミ放熱材4」は、「アルミの押し出し成型でヒートシンクの形状に形成され」るものであるから、金属製(アルミ製)の構造体をなすことが明らかである。 ここで、本願明細書の「本体ベースは、軽量でかつ熱伝導性に優れる金属例えばアルミニウム合金製とすることが好ましく」(段落【0009】)等の記載によれば、本願補正発明の「金属製の本体ベース」は、少なくとも、軽量でかつ熱伝導性に優れる金属製にて構成される構成体をなすものと理解することができるところ、引用発明の上記「DINレール対応アルミケース5」と「アルミ放熱材4」は、LEDランプ構成上、「前記アルミ放熱材4は前記DINレール対応アルミケース5に密着するように固定され」るものであり、それらの構造体は密着するように固定されることで、全体として金属製(アルミ製)の熱伝導性に優れた構成体をなすことも技術的に明らかであるから、かかる構成体は、本願補正発明の「金属製の本体ベース」とその機能・構造において変わるものではない。 したがって、引用発明の「DINレール対応アルミケース5」と「アルミ放熱材4」とからなる構成体は、本願補正発明の「上壁部を有する長尺な金属製の本体ベース」と、「金属製の本体ベース」の限度で共通するものといえる。 (イ)引用発明の「LED取付板3」は、「取付板」とも称されているところ、図1(摘示(1e))の記載及びかかる技術分野の技術常識に照らして、上記LED取付板3は、「平板状」の「回路基板」をなすものと理解することができる。 したがって、引用発明の「LED取付板3」は、本願補正発明の「平板状の回路基板」に相当するものといえる。 (ウ)引用発明の「チップ型(表面実装型)LED2」は、「表面実装型」とも称されているところ、図1(摘示(1e))の記載及びかかる技術分野の技術常識に照らして、上記チップ型(表面実装型)LED2は、上記LED取付板3上に実装されるものと理解することができる。 したがって、引用発明の「前記LED取付板3に取付けられ」た「チップ型(表面実装型)LED2」と本願補正発明の「前記回路基板上に複数実装された発光素子」とは、「前記回路基板上に実装された発光素子」の限度で共通するものといえる。 (エ)引用発明のLEDランプは、上記(イ)(ウ)で述べたとおり「LED取付板3」及び「チップ型(表面実装型)LED2」を具備するところ、「チップ型(表面実装型)LED2が前記LED取付板3に取付けられ」ることで発光ユニットが構成されることは技術的に明らかであるから、かかる発光ユニットと本願補正発明の「長尺状、かつ平板状の回路基板、前記回路基板上に複数実装された発光素子を有し、前記上壁部に設けられた発光ユニット」とは、「平板状の回路基板、前記回路基板上に実装された発光素子を有する発光ユニット」の限度で共通するものといえる。 (オ)引用発明の「半透明塩ビカバー1」は、「カバー」とも称されているところ、図1(摘示(1e))の記載及びかかる技術分野の技術常識に照らして、本願補正発明の「照明カバー」に相当するものといえる。 また、引用発明の「半透明塩ビカバー1」は、「断面が前記LED取付板3から遠ざかる方向に弧状に形成された弧状の部位を有する」ものであり、さらに、「塩ビ」とも称され塩化ビニル樹脂(合成樹脂)により構成されたものと理解することができ、加えて上記チップ型(表面実装型)LED2からの光を外部に照射するカバーをなすことは技術的に明らかであるから、本願補正発明の「断面が前記回路基板から遠ざかる方向に弧状に形成された弧状部と、前記本体ベースと固定される取付部と、前記弧状部分と前記取付部の間に形成された側壁状部と、長手方向の両端に設けられた端板部と、を有し、前記発光ユニットを覆い隠すように前記取付部が前記本体ベースに係合して設けられ、かつ、前記端板部を含めた全体が拡散透光性樹脂により形成されており、前記発光ユニットからの光を前記弧状部、前記側壁状部および前記端板部から外部に拡散照射する中空の照明カバー」とは、「断面が前記回路基板から遠ざかる方向に弧状に形成された弧状部を有し、樹脂により形成されており、前記発光ユニットからの光を外部に照射する照明カバー」の限度で共通するものといえる。 (カ)引用発明の「LEDランプ」は、その技術的意義において本願補正発明の「照明器具」に相当する。 以上によれば、本願補正発明と引用発明とは、 「金属製の本体ベースと; 平板状の回路基板、前記回路基板上に実装された発光素子を有する発光ユニットと; 断面が前記回路基板から遠ざかる方向に弧状に形成された弧状部を有し、 樹脂により形成されており、前記発光ユニットからの光を外部に照射する照明カバーと; を具備する照明器具。」の点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点1> 「金属製の本体ベース」について、本願補正発明は、「上壁部を有する長尺」なものとして構成されているのに対し、引用発明は、「DINレール対応アルミケース5」と「アルミ放熱材4」とから構成されている点。 <相違点2> 「発光ユニット」について、本願補正発明は、「長尺状」の回路基板と、前記回路基板上に「複数」実装された発光素子を有するものであって、本体ベースの「前記上壁部に設けられた」構成であるのに対し、引用発明は、アルミ放熱材4に接着される「LED取付板3」と、「チップ型(表面実装型)LED2」を有するものであって、「チップ型(表面実装型)LED2が前記LED取付板3に取付けられ」て構成されている点。 <相違点3> 「照明カバー」について、本願補正発明は、「断面が前記回路基板から遠ざかる方向に弧状に形成された弧状部と、前記本体ベースと固定される取付部と、前記弧状部分と前記取付部の間に形成された側壁状部と、長手方向の両端に設けられた端板部と、を有し、前記発光ユニットを覆い隠すように前記取付部が前記本体ベースに係合して設けられ、かつ、前記端板部を含めた全体が拡散透光性樹脂により形成されており、前記発光ユニットからの光を前記弧状部、前記側壁状部および前記端板部から外部に拡散照射する中空の照明カバー」であるのに対し、引用発明は、「断面がLED取付板3から遠ざかる方向に弧状に形成された弧状の部位」を有する「半透明塩ビカバー1」である点。 エ 判断 <相違点1> について (ア)上記「ウ(ア)」で述べたとおり、引用発明の「DINレール対応アルミケース5」と「アルミ放熱材4」とは、密着するように固定されることで、全体として金属製(アルミ製)の熱伝導性に優れた構成体をなすことが技術的に明らかであるから、かかる構成体は、本願補正発明の「金属製の本体ベース」とその機能・構造において変わるものではない。 さらに、かかる構成体は、刊行物1の図3(摘示(1f))に示されたLEDランプの上面図からみて、長尺に形成されたものとも解し得るし、加えて、上記アルミ放熱材4がLED取付板3を設置するための壁部として機能することも明らかである。 してみると、引用発明の「DINレール対応アルミケース5」と「アルミ放熱材4」とからなる構成体を、「上壁部を有する長尺」なものとして構成することは、当業者が容易になし得るものといえる。 (イ)また、刊行物1の図3(摘示(1f))に示されたLEDランプの上面図より、上記構成体が長尺に形成されたものと解し得えないとしても、刊行物2には、発光モジュールを構成するベースユニット1aについて、複数の発光素子21aを一列状に備える基板20aをベースユニット1aの放熱ベース10aに設置すること(摘示(2a)?(2c))、言い換えれば、照明器具(発光モジュール)を構成する本体ベース(ベースユニット1a)を、壁部(放熱ベース10a)を有する長尺(複数の発光素子21aを一列状に備える基板20aを設置するに足りる長さ)に構成することが記載されていること、また、そのように本体ベースを構成することは、かかる技術分野の周知技術ということもできること(さらに必要ならば、米国特許第7303310号明細書に記載されたベースホルダー14:1欄31?38行、図1など参照。)、さらに、本体ベースをそのような壁部を有する長尺に形成することは、照明器具の設置環境や照明範囲などを考慮して、当業者が適宜設定する設計事項にすぎないものといこともできること、以上を併せ考慮すれば、引用発明の「DINレール対応アルミケース5」と「アルミ放熱材4」とからなる構成体を、「上壁部を有する長尺」なものとして構成することは、当業者にとって格別困難なことではない。 (ウ)したがって、上記相違点1に係る本願補正発明の構成は、引用発明に基いて、あるいは引用発明及び上記刊行物2に記載された技術事項(周知技術といえる。)に基いて当業者が容易に想到し得るものといえる。 <相違点2> について 刊行物1の図3(摘示(1f))に示されたLEDランプの上面図からみて、引用発明のLEDランプは長尺に形成されたものとも解し得る。 ここで、LEDランプを長尺に形成する場合に、それに対応して回路基板を「長尺状」のものとし、かかる回路基板上に発光素子を「複数」実装することは、上記刊行物2に記載された「発光ユニット2a」(摘示(2b)(2c))の例にも見られるように、かかる技術分野の周知技術にすぎないものというべきであるから、引用発明の回路基板(LED取付板3)を「長尺状」のものとし、かかる回路基板上に発光素子(チップ型(表面実装型)LED2)を「複数」実装することは、当業者にとって格別困難なことではない。 そして、引用発明は、「前記LED取付板3は前記アルミ放熱材4に接着され」て構成されるものであるところ、上記「<相違点1> について」で述べたとおり、引用発明の「DINレール対応アルミケース5」と「アルミ放熱材4」とからなる構成体は、「上壁部を有する長尺」なものとして構成し得るのであるから、発光ユニットを本体ベースの上壁部に設けることも当業者にとって格別困難なことではない。 したがって、上記相違点2に係る本願補正発明の構成は、引用発明、上記刊行物2に記載された技術事項(周知技術といえる。)に基いて当業者が容易に想到し得るものといえる。 <相違点3> について (ア)照明カバーの形状・構造について 引用発明の「半透明塩ビカバー1」は、「断面がLED取付板3から遠ざかる方向に弧状に形成された弧状の部位を有する」ものであって、さらに「カバー」とも称されていることから、発光ユニットを覆い隠すように配設されたものであることは技術常識に照らして明らかである。 そして、そのように発光ユニットを覆い隠すように配設される照明カバーとして、照明カバーの長手方向に延びる側壁部とともに、その両端に端板部を設けて構成される中空の照明カバーを用いることは周知技術といえるし(必要ならば、特開2009-87649号公報に示される外本体15:段落【0017】?段落【0020】、図1(a)(b)、特開2007-114366号公報に示される剛性ケース体10:段落【0008】?段落【0009】、図1、米国特許出願公開2009/46457号公報に示されるディフーザー160:段落【0037】、図3など参照。)、さらに、その具体的な形状として、例えば上記周知例として示される剛性ケース体10の例にも見られるように、断面が回路基板から遠ざかる方向に弧状に形成された弧状部と、本体ベースと固定される取付部と、弧状部分と取付部の間に形成された側壁状部と、長手方向の両端に設けられた端板部とを備える形状のものも通常に想定される範囲のものとも理解することができ、そのような形状に形成することは、当業者が適宜設定する設計事項にすぎないものというべきである。 さらに、引用発明の「半透明塩ビカバー1」は、上述したとおり「断面がLED取付板3から遠ざかる方向に弧状に形成された弧状の部位を有する」ものであり、その配設態様は刊行物1の図1(摘示(1e))にも示されているとおり、半透明塩ビカバー1の縁部がDINレール対応アルミケース5に近接して配置されることが明らかであるから、引用発明の「半透明塩ビカバー1」を配設するには、かかる半透明塩ビカバー1の縁部を取付部として用いることが合理的であることはその配設態様から明らかであるし、そのような取付部の固定手段として、「係合」による固定手段を用いることもかかる技術分野の慣用技術ということができる(必要ならば、刊行物2に開示されるレンズユニット4aの第2係止構造41aとベースユニット1aの第1係止構造11aとの係合:摘示(2b)(2c)、特開2009-87649号公報に開示される外本体15の取付部15cと内本体11の係止部11cとの係合:段落【0020】、図1(b)、特開平11-134909号公報に示される透光性カバー3の縁部と照明器具1の係止突起1dとの係合:段落【0009】、段落【0011】、図1、2、米国特許第7303310号明細書に記載されたライトシェード11の縁部とベースホルダー14の縁部との係合:1欄31?38行、図1など参照など参照。)。 してみると、引用発明の半透明塩ビカバー1の形状・構造について、かかる技術分野の周知・慣用技術をも参考すれば、断面が回路基板から遠ざかる方向に弧状に形成された弧状部を有するとともに、さらに本体ベースと固定される取付部と、前記弧状部分と前記取付部の間に形成された側壁状部と、長手方向の両端に設けられた端板部と、を有し、発光ユニットを覆い隠すように前記取付部が前記本体ベースに係合して設けられるように構成することは、当業者にとって格別困難なことではない。 (イ)照明カバーの材質について 引用発明の「半透明塩ビカバー1」は、上記(ア)で述べたとおり、発光ユニットを覆い隠すように配設されたものと解されるところ、発光ユニットは、その光源として発光素子(チップ型(表面実装型)LED2)を用いるものであるから、上記半透明塩ビカバー1は、発光素子(チップ型(表面実装型)LED2)からの光を外部に照射するように構成されていることは明らかである。 ここで、LEDのような発光素子を光源として用いる照明器具において、発光素子からの光を外部に均一に照射することは、照明器具構成上の基本的な技術課題ということができるから(必要ならば、特開2009-87649号公報の段落【0028】、特開2007-114366号公報の段落【0009】)、引用発明の半透明塩ビカバー1を設けるに際して、そのような基本的な技術課題を考慮することは、当業者にとって自明のことというべきものである。 そして、上記基本的な技術課題を解決するために、拡散剤を含む樹脂材料にて照明カバーを形成し、発光素子からの光を外部に拡散照射することは、かかる技術分野における周知技術ということができるから(必要ならば、特開2009-87649号公報の段落【0028】など参照。)、引用発明の照明カバー(半透明塩ビカバー1)を、その全体を拡散透光性樹脂により形成されるものとし、発光ユニットからの光を照明カバー全体から外部に拡散照射させるように構成することは、当業者にとって格別困難なことではない。 (ウ)以上によれば、引用発明の照明カバー(半透明塩ビカバー1)の形状・構造として、弧状部、取付部、側壁状部及び端板部を有するものであって、発光ユニットを覆い隠すように前記取付部が前記本体ベースに係合して設けられるように構成し(上記(ア))、その材質として光を拡散照射する拡散透光性の合成樹脂により形成すること(上記(イ))、すなわち、上記相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、引用発明、上記刊行物2に記載された技術事項及び上記周知・慣用技術に基いて当業者が容易に想到し得るものといえる。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明、上記刊行物2に記載された技術事項及び上記周知・慣用技術から当業者が予測し得る範囲のものといえる。 オ まとめ したがって、本願補正発明は、引用発明、上記刊行物2に記載された技術事項及び上記周知・慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?3に係る発明は、平成26年11月6日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 1(補正前の請求項1)」に記載されたとおりのものである。 第4 引用刊行物とその記載事項等 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、上記「第2 2(2)ア」に記載したとおりであり、刊行物1に記載された発明は、上記「第2 2(2)イ」に記載したとおりである。 第5 当審の判断 本願発明は、本願補正発明から、上記「第2 2(1)」で述べたとおりの限定事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を含み、さらに他の限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 2(2)エ、オ」で述べたとおり、引用発明、上記刊行物2に記載された技術事項及び上記周知・慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明、上記刊行物2に記載された技術事項及び上記周知・慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、上記刊行物2に記載された技術事項及び上記周知・慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-02-25 |
結審通知日 | 2016-03-03 |
審決日 | 2016-03-16 |
出願番号 | 特願2014-29637(P2014-29637) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(F21V)
P 1 8・ 121- Z (F21V) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 柿崎 拓、林 政道 |
特許庁審判長 |
島田 信一 |
特許庁審判官 |
和田 雄二 氏原 康宏 |
発明の名称 | 照明器具 |
代理人 | 熊谷 昌俊 |
代理人 | 河野 仁志 |