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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B29C
管理番号 1314325
異議申立番号 異議2016-700067  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-01-27 
確定日 2016-04-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第5767674号「ラッピング化粧板の製造方法及び製造装置」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第5767674号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 1 主な手続の経緯等

特許第5767674号(請求項の数は9。以下「本件特許」という。)は、平成25年7月17日に特許出願され、平成27年6月26日にその特許権が設定登録されたものである。
特許異議申立人 本藤武史(以下、単に「異議申立人」という。)は、平成28年1月27日、本件特許の請求項1ないし5に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てをした。

2 本件発明

本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、請求項の番号に応じて各発明を「本件発明1」などといい、これらを併せて「本件発明」という場合がある。なお、請求項1又は2を直接又は間接的に引用する請求項3ないし5の記載は、これを省略する。)。

「【請求項1】
板状の基材と、該基材の表面ないし周囲側面に接着一体化されたシートからなる化粧シート層とを備えたラッピング化粧板の製造方法であって、
シートの裏面又は基材に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
上記シートを基材の表面に接着するシート表面接着工程と、
上記シートの周縁部のうち、基材において互いに対向する一方の2辺に対応する縁部を折り曲げて基材の側面に加圧しかつ接着剤を固化させて接着する第1シート接着工程と、
上記シートの周縁部のうち、基材において互いに対向する他方の2辺に対応する縁部を切断するシート切断工程と、
上記シートの周縁部のうち、基材において互いに対向する他方の2辺に対応する縁部を折り曲げて基材の側面に加圧しかつ接着剤を固化させて接着する第2シート接着工程と、
基材の隣接する2辺の隅角部に、該2辺のシートの両折曲げ部の基材から食み出した余剰部分を同時に切断して除去して切除部を形成する余剰部切除工程と
を有することを特徴とするラッピング化粧板の製造方法。
【請求項2】
周囲側面の各辺に雌実及び雄実が形成された板状の基材と、該基材の表面及び周囲側面に接着一体化されたシートからなる化粧シート層とを備えたラッピング化粧板の製造方法であって、
上記基材の雌実は、基材の裏側又は厚み方向中間部に位置する雌実凹部と、該雌実凹部の表側に隣接する雌実側面とを有する一方、上記雄実は、基材の裏側又は厚み方向中間部に位置する雄実凸部と、該雄実凸部の表側に隣接する雄実側面とを有しており、
基材の周囲側面に雌実及び雄実を加工する実加工工程と、
シートの裏面又は基材に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
上記シートを基材の表面に接着するシート表面接着工程と、
上記シートの周縁部のうち、基材において互いに対向する一方の2辺に対応する縁部を折り曲げて基材の雌実側面及び雄実側面に加圧しかつ接着剤を固化させて接着する第1シート接着工程と、
上記シートの周縁部のうち、基材において互いに対向する他方の2辺に対応する縁部を切断するシート切断工程と、
上記シートの周縁部のうち、基材において互いに対向する他方の2辺に対応する縁部を折り曲げて基材の雌実側面及び雄実側面に加圧しかつ接着剤を固化させて接着する第2シート接着工程と、
基材の隣接する2辺の隅角部に、該2辺のシートの両折曲げ部の基材から食み出した余剰部分を同時に切断して除去して切除部を形成する余剰部切除工程と
を有することを特徴とするラッピング化粧板の製造方法。」

3 申立理由の概要

異議申立人の主張は、概略、次のとおりである。

(1) 本件発明1ないし5は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない発明である。すなわち、本件発明1ないし5は、後記する甲1に記載された発明を主たる引用発明とし、後記する甲2を参照したとき、この主たる引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件発明1ないし5についての特許は、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。

(2) また、証拠方法として書証を申出、以下の文書(甲1?2)を提出する。

・甲1: 特開2008-142976号公報
・甲2: 特開2000-120256号公報

4 当合議体の判断

当合議体は、以下述べるように、異議申立人の主張には理由はないと判断する。

(1) 甲1に記載された発明

本件特許に係る出願の出願前に頒布された刊行物である甲1には、特にその特許請求の範囲の請求項9及び明細書段落【0037】?【0041】に係る記載からみて、次のとおりの発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

「矩形状の板状の基材であって、長辺側の1側面若しくはその1側面と短辺側の1側面とに雄サネを有し、他の側面に雌サネを有する基材と、その基材の天面全域と4側面の各々の少なくとも天面に隣接した領域に貼り付けられた1枚のシートを備えたシートラッピング製品を製造する方法であって、
一定間隔で搬送される基材の天面に、シート供給部から引き出された、前記天面よりも幅の広い連続したシートに接着剤を塗布後、前記天面の平行な一対の辺が前記連続したシートの長手方向に平行となる関係で且つ前記連続したシートの両側縁が前記基材天面の両側に延び出した状態となるように貼り付けてゆくシート貼り付け工程と、
前記シートを、前記基材と基材の中間位置において切断して切り離す切断工程と、
前記基材の天面に貼り付けたシートの前記天面よりも外側の領域を、前記基材の4側面に貼り付けるための互いに分離した側面貼付片とするように、前記シートに、天面の4つの角をそれぞれ頂点とする4つの切り欠きを形成する打ち抜き工程であって、少なくとも前記基材の雄サネが存在する角部には、天面と同一表面を持った受け板を前記シートの下側となるように装着し、前記シート上方から刃を前記受け板に押し当てて打ち抜きを行う打ち抜き工程と、
前記基材を、前記基材天面の一対の辺に平行方向に搬送しながら、進行方向に関して両側に位置する側面に前記シートの側面貼付片を巻き込んで貼り付けてゆく第一ラッピング工程と、
前記基材を、前記第一ラッピング工程における搬送方向とは直角方向に搬送しながら、進行方向に関して両側に位置する側面に前記シートの側面貼付片を巻き込んで貼り付けてゆく第二ラッピング工程を有するシートラッピング製品の製造方法。」

(2) 本件発明1と甲1発明との対比・判断

ア 一致点及び相違点

本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「シートラッピング製品」、「シート貼り付け工程」は、本件発明1の「ラッピング化粧板」、「シート表面接着工程」に相当する。
甲1発明は、シート貼り付け工程において、シートに接着剤を塗布しているから、本件発明1の接着剤塗布工程を有しているといえる。
甲1発明の「第一ラッピング工程」における「両側に位置する側面に前記シートの側面貼付片を巻き込んで貼り付けてゆく」は、当該巻き込みによりシートが折り曲げられ、基材に加圧されて接着されているということができるので、本願発明1の「2辺に対応する縁部を折り曲げて基材の側面に加圧しかつ接着剤を固化させて接着する」ことに相当する。そうすると、甲1発明の「第一ラッピング工程」は、本件発明1の「第1シート接着工程」に相当する。
甲1発明の「第二ラッピング工程」における「両側に位置する側面に前記シートの側面貼付片を巻き込んで貼り付けてゆく」も同様であるので、甲1発明の「第二ラッピング工程」は、本件発明1の「第2シート接着工程」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。

・ 一致点

板状の基材と、該基材の表面ないし周囲側面に接着一体化されたシートからなる化粧シート層とを備えたラッピング化粧板の製造方法であって、
シートの裏面又は基材に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
上記シートを基材の表面に接着するシート表面接着工程と、
上記シートの周縁部のうち、基材において互いに対向する一方の2辺に対応する縁部を折り曲げて基材の側面に加圧しかつ接着剤を固化させて接着する第1シート接着工程と、
上記シートの周縁部のうち、基材において互いに対向する他方の2辺に対応する縁部を折り曲げて基材の側面に加圧しかつ接着剤を固化させて接着する第2シート接着工程と、
シート切断工程と、
を有するラッピング化粧板の製造方法。

・ 相違点1

シート切断工程に関し、本件発明1は「シートの周縁部のうち、基材において互いに対向する他方の2辺に対応する縁部を切断する」と特定し、第一シート接着工程後にシート切断工程があるのに対し、甲1発明は、長手方向に連続するシートを切断するものであって、基材へのシート貼り付け工程後に切断工程が設けられている点。

・ 相違点2

本件発明1は、「基材の隣接する2辺の隅角部に、該2辺のシートの両折曲げ部の基材から食み出した余剰部分を同時に切断して除去して切除部を形成する余剰部切除工程」を有するのに対し、甲1発明は、打ち抜き工程を有し、基材の隣接する2辺の隅角部に、該2辺のシートの両折曲げ部の基材から食み出した余剰部分を同時に切断して除去して切除部を形成する余剰部切除工程は有していない点。

イ 相違点2について検討する。

(ア) 甲1発明は、シートに天面の4つの角をそれぞれ頂点とする4つの切り欠きを形成する打ち抜き工程を有するものである。

(イ) そうすると、甲1発明は、シートを基材の側面に貼り付ける時に、シートの両折曲げ部の基材から食み出した余剰部分は存在しないものといえるから、そもそも余剰部分の重なり合いによる接着不良等の課題は生じない。したがって、当該課題に対応した上記余剰部分を切断して除去して切除部を形成する余剰部切除工程を備えようとする動機は存在しない。

(ウ) 甲2には、プラスチック製模造イグサを織った畳表を縁なし畳とするための隅造り加工法であって、「畳床の4隅で、縦、横に折った畳表が畳床の裏面又は横面で重なる部分を切除すると同時に熱融着する」(段落【0008】)との記載があるものの、当該畳表は畳床(基材)の表面及び側面に対して接着剤を介して貼着されるものではないから、甲1発明のような建材などに用いられる板状の基材にシートを接着剤を介して基材の表面及び側面に貼り付けるシートラッピング製品とはいえない。
したがって、甲1発明と甲2とは技術分野を同じくするものではない。

(エ) また仮に、甲1発明に従たる甲2記載の技術事項を適用する動機があるといえたとしても、本件発明1は、相違点2に係る構成をとることで、「切欠きを基材に合わせて正確に形成する必要があり、その精度が低いと、シートが基材に対しずれて、そのラッピングが不正確になるという難がある。また、不正確になるだけでなく、シートがずれた場合にシートの余剰部分が生じ、余剰部分の重なり合いによる接着不良等により、様々な不具合を生じ」(段落【0004】)ないようにするために、「シートを基材に対しずれることなく正確にラッピングすることができる」(段落【0030】)といった有利な効果を奏するものであって、当該相違点2に係る有利な効果については、甲1、甲2には全く記載されておらず、当業者といえども予期し得ないものと認められる。

ウ 本件発明1についての小括

そうすると、本件発明1は、相違点1について検討するまでもなく、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3) 本件発明2と甲1発明との対比・判断

本件発明2は、本件発明1における発明特定事項を全て有すると共に、本件発明1における「板状の基材」について、「周囲側面の各辺に雌実及び雄実が形成された」と特定すると共に、「上記基材の雌実は、基材の裏側又は厚み方向中間部に位置する雌実凹部と、該雌実凹部の表側に隣接する雌実側面とを有する一方、上記雄実は、基材の裏側又は厚み方向中間部に位置する雄実凸部と、該雄実凸部の表側に隣接する雄実側面とを有しており」と特定し、さらに「基材の周囲側面に雌実及び雄実を加工する実加工工程」を有するものである。
そこで、本件発明2と甲1発明とを対比すると、本件発明2においても、本件発明1についての相違点2が存在するから、本件発明1での検討のとおり、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4) 本件発明3ないし5について

請求項3ないし5の記載は、請求項1又は2を直接又は間接的に引用するものである。そして、請求項1及び2に係る本件発明1及び2が甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえないのは上述のとおりであるから、請求項3ないし5に係る本件発明3ないし5についても同様に、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5) まとめ

以上のとおりであるから、異議申立人の主張には理由がない。

5 むすび

したがって、異議申立人の主張する申立ての理由及び証拠によっては、特許異議の申立てに係る特許を取り消すことはできない。また、他に当該特許が特許法113条各号のいずれかに該当すると認めうる理由もない。

よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2016-04-14 
出願番号 特願2013-148841(P2013-148841)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (B29C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 越本 秀幸  
特許庁審判長 小野寺 務
特許庁審判官 小柳 健悟
大島 祥吾
登録日 2015-06-26 
登録番号 特許第5767674号(P5767674)
権利者 大建工業株式会社
発明の名称 ラッピング化粧板の製造方法及び製造装置  
代理人 特許業務法人前田特許事務所  

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