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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G01C 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 G01C |
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管理番号 | 1314329 |
異議申立番号 | 異議2016-700113 |
総通号数 | 198 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2016-06-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-02-12 |
確定日 | 2016-04-30 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5761556号「情報処理端末、情報処理方法、およびプログラム」の請求項1ないし12に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5761556号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5761556号の請求項1ないし12に係る特許(以下、「請求項1ないし12に係る特許」という。また、請求項毎に「請求項1に係る特許」などという。)についての出願(以下、「本件出願」という。)は、平成23年3月22日に特許出願され、平成27年6月19日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成28年2月12日に特許異議申立人 星野 裕司(以下、単に「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 請求項1ないし12に係る特許に係る発明(以下、順に「本件発明1」ないし「本件発明12」という。)は、それぞれ、本件出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「本件特許明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「 【請求項1】 経路の探索を行うユーザの複数の移動形態の通行履歴に基づいて、各道路の通行頻度を移動形態毎に計算する計算部と、 前記計算部により計算された移動形態毎の前記通行頻度のうち、前記ユーザの移動形態に応じた前記通行頻度に基づいて、前記通行頻度の低い道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定する探索部と を備える情報処理端末。 【請求項2】 前記探索部により決定された前記目的地までの経路を地図上に表示する表示部をさらに備える 請求項1に記載の情報処理端末。 【請求項3】 前記探索部により決定された前記目的地までの経路を音声によって出力する出力部をさらに備える 請求項1または2に記載の情報処理端末。 【請求項4】 通行した道路を検出する検出部と、 前記検出部により検出された道路の情報を前記通行履歴として記憶する記憶部と をさらに備え、 前記計算部は、前記記憶部に記憶された前記通行履歴に基づいて前記通行頻度を計算する 請求項1乃至3のいずれかに記載の情報処理端末。 【請求項5】 前記ユーザの移動形態を検出する移動形態検出部をさらに備え、 前記記憶部は、前記移動形態検出部により検出された移動形態毎の前記通行履歴を記憶する 請求項4に記載の情報処理端末。 【請求項6】 前記探索部は、現在地と前記目的地とを含む領域を設定し、設定した前記領域から外れる道路を含む経路を前記目的地までの経路として選択しない 請求項1乃至5のいずれかに記載の情報処理端末。 【請求項7】 前記探索部は、前記通行履歴の量が多くなることに応じて前記領域を広げて設定する 請求項6に記載の情報処理端末。 【請求項8】 前記計算部は、直近の所定の期間内の前記通行履歴に基づいて前記通行頻度を再度計算し、 前記探索部は、前記計算部により再度計算された前記通行頻度に基づいて前記目的地までの経路を選択する 請求項1乃至7のいずれかに記載の情報処理端末。 【請求項9】 前記探索部は、前記情報処理端末の前記ユーザにより指定された場所を通るように前記目的地までの経路を選択する 請求項1乃至8のいずれかに記載の情報処理端末。 【請求項10】 ネットワーク上のサーバから、前記サーバが管理するWebサイトに書き込まれたテキストデータを取得し、前記テキストデータから場所を表す情報を抽出する取得部をさらに備え、 前記探索部は、前記取得部により抽出された情報により表される場所を通るように前記目的地までの経路を選択する 請求項1乃至9のいずれかに記載の情報処理端末。 【請求項11】 経路の探索を行うユーザの複数の移動形態の通行履歴に基づいて、各道路の通行頻度を移動形態毎に計算し、 計算した移動形態毎の前記通行頻度のうち、前記ユーザの移動形態に応じた前記通行頻度に基づいて、前記通行頻度の低い道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定する ステップを含む情報処理方法。 【請求項12】 経路の探索を行うユーザの複数の移動形態の通行履歴に基づいて、各道路の通行頻度を移動形態毎に計算し、 計算した移動形態毎の前記通行頻度のうち、前記ユーザの移動形態に応じた前記通行頻度に基づいて、前記通行頻度の低い道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定する ステップを含む処理をコンピュータに実行させるプログラム。」 第3 特許異議申立ての理由 特許異議申立人は、証拠方法として、次に示す甲第1ないし7号証を提出し、概ね以下の理由を主張している。 1 証拠方法 (1)甲第1号証:特開2006-275934号公報 (2)甲第2号証:特開2009-150898号公報 (3)甲第3号証:特開2005-292024号公報 (4)甲第4号証:特開平8-94371号公報 (5)甲第5号証:特開2010-156601号公報 (6)甲第6号証:特開2001-141501号公報 (7)甲第7号証:特開2010-281727号公報 2 理由の概要 (1)特許法第29条第2項について ・理由1 本件発明1は、甲第1号証記載の甲1発明及び甲第2号証記載の事項に基づいて並びに甲第3号証記載の甲3発明及び甲第1号証記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項により特許を受けることができないものであり、請求項1に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきである(以下、「理由1」という。)。 ・理由2 本件発明2は、甲第1号証記載の甲1発明及び甲第2号証記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項により特許を受けることができないものであり、請求項2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきである(以下、「理由2」という。)。 ・理由3 本件発明3は、甲第1号証記載の甲1発明、甲第2号証記載の事項及び周知技術(甲第3号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項により特許を受けることができないものであり、請求項3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきである(以下、「理由3」という。)。 ・理由4 本件発明4は、甲第1号証記載の甲1発明及び甲第2号証記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項により特許を受けることができないものであり、請求項4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきである(以下、「理由4」という。)。 ・理由5 本件発明5は、甲第1号証記載の甲1発明、甲第2号証記載の事項及び甲第3号証記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項により特許を受けることができないものであり、請求項5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきである(以下、「理由5」という。)。 ・理由6 本件発明6は、甲第1号証記載の甲1発明、甲第2号証記載の事項及び甲第4号証記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項により特許を受けることができないものであり、請求項6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきである(以下、「理由6」という。)。 ・理由7 本件発明8は、甲第1号証記載の甲1発明、甲第2号証記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項により特許を受けることができないものであり、請求項8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきである(以下、「理由7」という。)。 ・理由8 本件発明9は、甲第1号証記載の甲1発明、甲第2号証記載の事項及び周知技術(甲第5号証及び甲第6号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項により特許を受けることができないものであり、請求項9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきである(以下、「理由8」という。)。 ・理由9 本件発明10は、甲第1号証記載の甲1発明、甲第2号証記載の事項及び周知技術(甲第6号証及び甲第7号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項により特許を受けることができないものであり、請求項10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきである(以下、「理由9」という。)。 ・理由10 本件発明11は、甲第1号証記載の甲1発明及び甲第2号証記載の事項ならびに甲第3号証記載の甲3発明及び甲第1号証記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項により特許を受けることができないものであり、請求項11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきである(以下、「理由10」という。)。 ・理由11 本件発明12は、甲第1号証記載の甲1発明及び甲第2号証記載の事項ならびに甲第3号証記載の甲3発明及び甲第1号証記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項により特許を受けることができないものであり、請求項12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきである(以下、「理由11」という。)。 (2)特許第36条第6項第2号について ・理由12 本件発明7は、「通行履歴の量」がどこの道路についての通行履歴の量であるかが明確でない。また、「通行履歴の量」が通行履歴として記憶されたデータの量を示すのか、あるいは各道路の通行回数を示すのかという点においても明確でない。従って、特許請求の範囲の請求項7の記載は、特許を受けようとする発明が明確ではないことから、本件出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、請求項7に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきである。(以下、「理由12」という。)。 (3)特許第36条第6項第1号について ・理由13 本件発明9は「ユーザにより指定された場所を通るように前記目的地までの経路を選択する」のであり、それに対応する事項が、本件特許明細書に記載も示唆もされていないことは明らかである。 従って、本件発明9は、本件特許明細書に記載されたものではなく、本件出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないので、請求項9に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきである(以下、「理由13」という。)。 ・理由14 本件発明10は「ネットワーク上のサーバから、前記サーバが管理するWebサイトに書き込まれたテキストデータを取得し、前記テキストデータから場所を表す情報を抽出する取得部をさらに備え、前記探索部は、前記取得部により抽出された情報により表される場所を通るように前記目的地までの経路を選択する」のであり、それに対応する事項が、本件特許明細書に記載も示唆もされていないことは明らかである。 従って、本件発明10は、本件特許明細書に記載されたものではなく、本件出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないので、請求項10に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきである(以下、「理由14」という。)。 第4 当審の判断 1 理由1について (1)甲第1号証 ア 甲第1号証の記載事項 本件出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には、「ナビゲーション装置、その制御方法及び制御プログラム」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。 a)「【0001】 本発明は、ナビゲーションの技術において、ユーザが過去に通ったことがないなど、走行履歴の少ない道路を優先的に含めた経路を提示することにより、同じ目的地に行くにも気分転換や新たな経路の発見を可能とするものである。」(段落【0001】) b)「【0005】 ところで、毎日あるいは毎週のように同じ場所に通うような場合、従来からの課題として、普段とは異なる経路を通って、気分を変えたり新たな経路を見つけたりすることが潜在的に要望されていた。しかし、このような課題は、よく使用する道路の優先といった上記の従来技術とは全く逆転の発想で、解決する技術は知られていなかった。画面表示などによる地図を参考に走行することも考えられるが、一方通行や時間規制等もあり、地図を参考に別な経路をユーザ自身が見つけるのも困難であった。走行履歴のある地域と無い地域を色分け表示する提案もあるが(例えば、特許文献1参照)、具体的な経路探索に関するものではなかった。 【0006】 本発明は、上記のような従来技術の課題を解決するもので、その目的は、ユーザが過去に通ったことがないなど、走行履歴の少ない道路を優先的に含めた経路を提示することにより、同じ目的地に行くにも気分転換や新たな経路の発見を可能とすることである。 【課題を解決するための手段】 【0007】 上記の課題を解決するため、本発明の一態様では(請求項1、4、7)、自車位置を含む自車の挙動を検出する検出部と、道路データを含む情報の記憶部と、情報の入出力部と、前記各部の制御を含む情報処理を行う制御部と、を備えたナビゲーション装置(その制御方法、制御プログラム)において、前記制御部により、自車が各道路を走行した走行履歴を履歴データとして前記記憶部に記録する走行履歴記録手段(処理)と、目的地の指定を受け付けるとともに、自車位置から前記目的地への経路を、前記履歴データを参照し前記走行履歴の少ない道路を優先して、前記記憶部に予め記録された所定の道路のデータに基づいて、経路計算する走行経路計算手段(処理)と、を実現することを特徴とする。 【0008】 このように、走行履歴の少ない道路を優先して含めた経路を提示することにより、同じ目的地に行くにも気分転換や新たな経路の発見が可能となる。 【0009】 本発明の他の態様では(請求項2、5、8)、上記各態様において、前記走行経路計算手段(処理)は、各道路について、前記走行履歴に記録されているか否かと、走行回数と、最後に走行した日時と、の一又は二以上に基づいた重み付けにより、前記経路計算を行うことを特徴とする。」(段落【0005】ないし【0009】) c)「【0014】 次に、本発明を実施するための最良の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、背景技術や課題での説明と共通の前提事項は繰り返さない。 【0015】 〔1.構成〕 図1に、本実施形態におけるナビゲーション装置(以下「本装置」と呼ぶ)の構成例を示すが、本発明はその制御方法、制御プログラムとしても把握可能である。まず、本装置は、自車位置を含む自車の挙動を検出する検出部として、GPSを用いる絶対位置方位検出部1と、ジャイロ等を用いる相対方位検出部2と、いわゆる車速パルスを処理する車速検出部3と、を備える。 【0016】 また、本装置は、システムが動作するのに必要なメモリ5?7と、CD-ROMなどの記録媒体に収納されている道路のデータなど各種のデータベース読み取りのためのディスク制御部12と、を備える。これら各メモリと、ディスク制御部12とが、情報の記憶部20を構成するが、各メモリとディスク制御部12における記録媒体との使い分けは自由であり、例えば、メモリのうちSRAM7に履歴データD1を蓄積してゆき、また、ディスク制御部12に、地図表示用の表示地図データベース(DB)や、経路探索用の道路データD2を格納しておくなどが考えられる。なお、表示地図データベースと道路データD2とは相互に密接に関連し、統合化や分離など構成変更は自由であるから、呼び名の区別に特段の限定的意味はない。 【0017】 また、本装置は、情報の入出力部として、地図やメニューのための表示部10と、ユーザによりさまざまな情報を入力するための入力部11と、表示部10や入力部11と制御部4とを結ぶユーザインタフェース部9と、を備える。なお、VRAM8は、表示部10への情報の表示に必要なメモリである。 【0018】 4は、前記各部の制御を含む情報処理を行う制御部で、具体的にはメインCPU及びその周辺回路である。この制御部4が所定の制御プログラムにより、後述のような機能作用を実現・実行するところの、走行履歴記録部42(走行履歴記録手段)と、走行経路計算部46(走行経路計算手段)と、選択受付部48(選択受付手段)としての役割を果たす。 【0019】 なお、自車位置検出、施設検索、目的地の指定受付、地図表示、誘導案内等は、本発明の特徴ではなく従来技術と同様でよいので、ナビゲーション部40としてまとめて示し説明は省略する。本件特有の作用は以下の通りである。 【0020】 〔2.作用〕 〔2-1.走行履歴の取得〕 すなわち、走行履歴記録部42は、自車が各道路を走行した走行履歴を履歴データとして記憶部20に記録する(走行履歴記録処理)。具体的処理手順としては、図2のフローチャートに示すように、従来技術のマップマッチング(ステップ11)で得られた走行道路の「道路ID、走行回数、走行回数アップ時の最終時刻」を保存し(ステップ13)、一度でも通っている道路IDに関しては(ステップ12)、走行回数を加算していく(ステップ15)。なお、道路IDは、地図データベースの交差点間の道路を任意に識別可能な番号である。 【0021】 そして、走行回数アップ(ステップ15)は、例えば、最終アップ時刻の1時間後にする(ステップ14)。ここで、表示地図データベースの例を図3に示す。道路データD2も、これに準じた構造としてもよい。また、図4は、走行履歴を表す履歴データD1において走行回数を加算していく保存構造を示す。 【0022】 〔2-2.経路計算手法の選択受付〕 経路計算の手法としては、選択受付部48が、よく通っている道を主に選択するなど従来と同様の経路計算(「通常探索」と呼ぶものとする)とあまり通らない道を主に選択する本発明による経路計算と、のユーザによる選択を入力部11から受け付ける(選択受付処理)。 【0023】 そして、経路計算のときは、図5のフローチャートに示すように、通常探索が選択されていれば(ステップ21)、よく通る道路を走行履歴に基づき優先するなど従来技術と同様の通常探索を行うが(ステップ22)、本発明による経路計算が選択されていれば(ス テップ21)、コスト計算に走行履歴を用いる以下のような経路探索を行う(ステップ23)。 【0024】 〔2-3.走行履歴の少ない道路の優先〕 すなわち、走行経路計算部46は、入力部11から目的地の指定を受け付けるとともに、自車位置から前記目的地への経路を、履歴データD1に基づいて前記走行履歴の少ない道路を優先して経路計算する(走行経路計算処理)。特に、走行経路計算部46は、各道路について、前記走行履歴に記録されているか否かと、走行回数と、最後に走行した日時である走行回数アップ最終時刻と、の一又は二以上に基づいた重み付けにより、前記経路計算を行う。このような重み付けの処理手順を図6のフローチャートに示す。 【0025】 具体的には、走行履歴でよく使用する道路を通り難くし経路探索を行うことで、走行履歴にない道路を優先的に経路に組み入れさせる。すなわち、経路探索は、より通りやすい道路(道路区間)同士を組み合わせて最適な経路を特定する処理であり、道路の通りやすさは、コストと呼ばれる変数の値の小ささで表し、通常も、「距離×道路属性によるパラメータ」として計算するが(図6のステップ31)、小さい数値ほどその道路は通りやすいということになり、経路に採用されやすい。ここで、図7に、道路属性によるパラメータの例を示す。 【0026】 そして、走行履歴にある道路については(図6のステップ32)、履歴データD1を参照すれば走行回数がわかるため、例えば図8のように、走行回数が多いほど大きくなるように、走行回数(走行履歴)による重み係数を決めておき、これをコストに乗じる計算を行う(図6のステップ33)。これにより、道路の通りやすさを決定するときに、その道路が走行履歴にある場合、「距離×道路属性によるパラメータ×走行履歴による重み係数」により、通りやすさを決定することになる。 【0027】 これにより、走行履歴でよく使用する道路については、コストを増大させるパラメータが多くなって通り難くなり、走行履歴にない道路や少ない道路が優先的に経路に用いられることになる。なお、このようなコスト計算を除く経路探索自体の処理手順は、従来に準じ、ダイクストラ法などの一般的なアルゴリズムを用いればよい。以上のように、道路の通りやすさを決定する際にのみ、走行履歴に一致する道路かを判定し、走行履歴にある場合は、走行履歴重み係数を用いて通り難くする。 【0028】 〔3.効果〕 以上のように、本実施形態では、走行履歴の少ない道路を優先して含めた経路を提示することにより、同じ目的地に行くにも気分転換や新たな経路の発見が可能となる。 【0029】 また、本実施形態において、上記のように、走行履歴に応じた重み付けで、経路の構成要素としての選択のされやすさを変動させることは、必須ではないが、これにより、走行履歴の具体的内容を経路にきめ細かく忠実に反映することが可能となる。」(段落【0014】ないし【0029】) イ 甲第1号証の記載事項及び図面の記載から分かること a)上記アa)ないしc)(特に、段落【0015】)及び図1ないし8の記載によれば、甲第1号証には、ナビゲーション装置、ナビゲーション装置の制御方法又はナビゲーション装置の制御プログラムが記載されていることが分かる。 b)上記アa)ないしc)(特に、段落【0020】及び【0021】)及び図1ないし8の記載によれば、ナビゲーション装置、ナビゲーション装置の制御方法又はナビゲーション装置の制御プログラムにおいて、走行履歴記録部42により、経路の探索を行うユーザの自車の走行履歴に基づいて、各道路の走行回数を加算することが分かる。 c)上記アa)ないしc)(特に、段落【0006】ないし【0009】及び【0024】ないし【0027】)及び図1ないし8の記載によれば、ナビゲーション装置、ナビゲーション装置の制御方法又はナビゲーション装置の制御プログラムにおいて、走行経路計算部46により、走行履歴記録部42により加算された走行回数に基づいて、前記走行回数の少ない道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定することが分かる。 ウ 甲1-1発明 上記ア及び上記イを総合して、本件発明1の表現にならって整理すると、甲第1号証には、次の事項からなる発明(以下「甲1-1発明」という。)が記載されていると認める。 「経路の探索を行うユーザの自車の走行履歴に基づいて、各道路の走行回数を加算する走行履歴記録部42と、 前記走行履歴記録部42により加算された前記走行回数に基づいて、前記走行回数の少ない道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定する走行経路計算部46と を備えるナビゲーション装置。」 エ 甲1-2発明 上記ア及び上記イを総合して、本件発明11の表現にならって整理すると、甲第1号証には、次の事項からなる発明(以下「甲1-2発明」という。)が記載されていると認める。 「経路の探索を行うユーザの自車の走行履歴に基づいて、各道路の走行回数を加算し、 加算した前記走行回数に基づいて、前記走行回数の少ない道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定する ステップを含むナビゲーション装置の制御方法。」 オ 甲1-3発明 上記ア及び上記イを総合して、本件発明12の表現にならって整理すると、甲第1号証には、次の事項からなる発明(以下「甲1-3発明」という。)が記載されていると認める。 「経路の探索を行うユーザの自車の走行履歴に基づいて、各道路の走行回数を加算し、 加算した前記走行回数に基づいて、前記走行回数の少ない道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定する ステップを含む処理を制御部4に実行させるナビゲーション装置の制御プログラム。」 カ 甲1技術 上記ア及び上記イを総合して、本件発明1、11又は12の表現にならって整理すると、甲第1号証には、次の事項からなる技術(以下「甲1技術」という。)が記載されていると認める。 「ナビゲーション装置において、 経路の探索を行うユーザの自車の走行履歴に基づいて、各道路の走行回数を加算し、 加算した前記走行回数に基づいて、前記走行回数の少ない道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定する技術。」 (2)甲第2号証 ア 甲第2号証の記載事項 本件出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には、「ナビゲーション装置、情報呈示方法、およびナビゲーション用プログラム」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。 a)「【0005】 ところで、特許文献1に記載の技術では、例えば、最短距離または最短時間となる経路が選択されることから、毎回、同一の経路が選択されてしまう可能性が高い。このため、毎日の行動がパターン化してしまい、強盗犯、誘拐犯、または、テロリスト等に容易に行動を把握されてしまう。その結果、防犯上の問題が生じてしまう。 【0006】 本発明は、上記の事情に基づきなされたもので、その目的とするところは、防犯を考慮した経路選択が可能なナビゲーション装置、情報呈示方法、およびナビゲーション用プログラムを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 上述の目的を達成するため、本発明のナビゲーション装置は、過去に通行した経路に関する情報を記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶された過去に通行した経路を考慮し、所定の頻度以上で通行した経路を通行しないように、目的地までの経路を探索する探索手段と、探索手段によって得られた経路を呈示する呈示手段と、を有している。」(段落【0005】ないし【0007】) b)「【0046】 ステップS15:CPU11は、HDD14に格納されている履歴情報14bを取得する。ここで、履歴情報14bとは、過去一定期間内(例えば、過去8日間)に走行した経路を示す情報である。」(段落【0046】) c)「【0050】 ステップS18:CPU11は、ステップS17の比較結果を参照し、ステップS16において選択した経路にパターン性があるか否かを判定する。具体的には、ステップS16において選択した経路と、履歴情報14bに格納されている1日前、2日前、3日前の情報を比較し、「曜日」、「時間帯」、「出発地」、「目的地」、および、「通過リンク」が同一または略同一であるか否かを判定し、該当する場合にはパターン性があるとしてステップS19に進み、それ以外の場合にはステップS16に戻って同様の処理を繰り返す。 【0051】 ステップS19:CPU11は、ステップS14において得られたすべての経路をLCD18に表示するとともに、ステップS16?S18の処理において、パターン性が無いと判断された経路を案内する経路として表示する。なお、パターン性が無い経路が複数存在する場合には、例えば、乱数によって所定の経路を選択する。」(段落【0050】及び【0051】) d)「【0087】 図9は、本発明の第2の実施の形態に係るナビゲーション装置の構成例を示す図である。この図に示す例では、携帯型の電話機またはPDA(Personal Digital Assistance)等としての構成例を示している。 ・・・中略・・・ 【0096】 ステップS83:CPU91は、GPS装置101の出力から現在の日時情報を取得する。 【0097】 ステップS84:CPU91は、GPS装置101の出力を参照して現在位置を取得し、地図情報94aと比較することにより、現在通過中の道路リンクを特定する。 【0098】 ステップS85:CPU91は、EEPROM94から履歴情報94bを取得する。 【0099】 ステップS86:CPU91は、経路がパターン化しているか否かを判定する。具体的には、現在通行中の道路リンクを、略同一の時間帯に、過去所定の期間内に所定の回数以上通行しているか否かを判定し、通行している場合にはパターン化していると判定してステップS87に進み、それ以外の場合にはステップS89に進む。 【0100】 ステップS87:CPU91は、ビデオ回路95に所定の情報を供給して、LCD98に警告画面を表示する。 【0101】 ステップS88:CPU91は、地図情報を参照して別の経路を探索し、得られた経路をLCD98に表示する。図11は、このとき、LCD98に表示される画像の一例を示す図である。この例では、LCD98の表示部98aには、タイトル130として「警告!」が表示されている。その下には、メッセージ131として「通勤経路がパターン化しています。防犯上好ましくないので、本日は、以下の経路を通行されることを推奨します。」が表示されている。その下には、ステップS88において探索された他の経路に関する情報132が表示されている。 【0102】 ステップS89:CPU91は、GPS装置101の出力と、履歴情報94bとを参照して、目的地へ到着したか否かを判定し、到着した場合には処理を終了し、それ以外の場合にはステップS83に戻って同様の処理を繰り返す。なお、このとき、CPU91は、履歴情報を生成して、EEPROM94に格納する。 【0103】 以上の実施の形態によれば、所定の時間帯における移動開始をきっかけとして通行経路のチェックを開始し、略同一の時間帯に、過去の一定期間に所定の回数以上通行している道路を通行している場合には、警告を発するようにしたので、防犯を考慮した経路を選択することができる。 ・・・中略・・・ 【0107】 なお、以上の実施の形態では、ユーザが徒歩で出勤先まで通勤する場合の例を示したが、公共の交通機関を含めて経路探索を行う場合にも本発明を適用することができる。例えば、図13に示すように、現在地から最寄り駅(または、アクセス可能な駅)までは、パターン化しないように経路を設定する。また、最寄り駅から目的地最寄り駅(または、アクセス可能な駅)までは、パターン化は考慮せずに、最短時間での移動が可能となるように経路を設定する。そして、目的地最寄り駅から目的地までは、パターン化しないように経路を設定する。 【0108】 ここで、「アクセス可能な駅」とは、最寄り駅以外の駅であって、現在地から所定の時間内に到達可能な駅をいう。このように、最寄り駅以外の他の駅(すなわち、アクセス可能な駅)を選択肢に追加することにより、現在地から駅までの経路および駅から目的地までの経路がパターン化することを防止できる。具体的には、例えば、「新宿駅」が最寄り駅である場合に、「西新宿駅」に所定の時間内に到達することが可能であるときは、西新宿駅を選択肢に加えることにより、新宿駅のみを選択肢とする場合に比較して、経路のパターン化をより確実に防ぐことが可能になる。 【0109】 このような実施の形態によれば、パターン化を防止する必要がある現在地から駅までおよび駅から目的地までについては、履歴情報と比較してパターン化しないようにしたので、安全な経路を確保でき、また、パターン化を考慮する必要がない公共の交通機関については、最短時間での移動経路を選択することができる。」(段落【0087】ないし【0109】) イ 甲第2号証の記載事項及び図面の記載から分かること a)上記ア及び図9ないし13の記載によれば、甲第2号証には、ナビゲーション装置が記載されていることが分かる。 b)上記ア(特に、段落【0099】ないし【0103】及び【0107】)及び図9ないし13の記載によれば、ナビゲーション装置において、ユーザの徒歩及び公共の交通機関を利用した経路における徒歩区間の通行の履歴情報に基づいて、所定の時間帯における移動開始をきっかけとして現在通行中の道路リンクについて過去の一定期間における略同一の時間帯の通行回数を計算し、計算した前記通行回数に基づいて、パターン化しないように目的地までの経路を設定することが分かる。 ウ 甲2技術 上記ア及び上記イを総合して、本件発明1の表現にならって整理すると、甲第2号証には、次の事項からなる技術(以下「甲2技術」という。)が記載されていると認める。 「ナビゲーション装置において、ユーザの徒歩及び公共の交通機関を利用した経路における徒歩区間の通行の履歴情報に基づいて、所定の時間帯における移動開始をきっかけとして現在通行中の道路リンクについて過去の一定期間における略同一の時間帯の通行回数を計算し、計算した前記通行回数に基づいて、パターン化しないように目的地までの経路を設定する技術。」 (3)甲第3号証 ア 甲第3号証の記載事項 本件出願前に頒布された刊行物である甲第3号証には、「地図情報提供システム」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。 a)「【0001】 本発明は、車両用または歩行者用ナビゲーション装置に地図情報を配信する地図情報提供システムに関する。」(段落【0001】) b)「【0007】 そこで本発明の課題は、車両ナビゲーション装置または歩行者用ナビゲーション装置に対して、ユーザに必要な地図情報の通信量を低減し、迅速に提供する地図情報提供システムを提供することである。 【課題を解決するための手段および発明の効果】 【0008】 上記課題を解決するための本発明の地図情報提供手段は、 車両に設置され、または歩行者の携帯する、地図情報と車両または歩行者の現在位置データとに基づき目的地への経路を案内するナビゲーション装置と、 ナビゲーション装置に対し、地図情報を配信する地図情報配信手段と、 を含む地図情報提供システムにおいて、 ナビゲーション装置は、各々に固有の識別コードを有する識別コード記憶手段と、 地図情報配信手段に地図情報の送信を要求する送信部と、 地図情報配信手段からの地図情報を受信する受信部と、 地図情報配信手段から受信した地図情報を表示する表示部とを有し、 地図情報配信手段は、 識別コードとその識別コードを有するナビゲーション装置の使用形態に基づく種別とを記憶するユーザ情報記憶手段と、 種別ごとの地図情報を記憶する地図情報記憶手段と、 ナビゲーション装置からの地図情報の配信要求と識別コードとを受信する受信手段と、 識別コードに基づいて判断されるナビゲーション装置の種別に対応する地図情報をナビゲーション装置へ配信する送信手段と、 を有する。 【0009】 ナビゲーション装置は、識別コード記憶手段によって各々に固有の識別コードを有することから、各々のナビゲーション装置を識別することができる。送信部によって地図情報 配信手段へ地図情報の配信を識別コードを伴って要求し、受信部によって地図情報配信手段からの地図情報を受信することができる。そして受信した地図情報を表示部によって表示することができる。 【0010】 地図情報配信手段は、ユーザ情報記憶手段を有し、これにより各々のナビゲーション装置の識別コードとその識別コードを有するナビゲーション装置の使用形態に基づく種別とを記憶することができる。そしてナビゲーション装置からの要求を受信手段によって受信し、受信した識別コードからそのナビゲーション装置の使用形態に基づく種別を判断し、地図情報記憶手段に記憶されたナビゲーション装置の使用形態に基づく種別ごとの地図情報を選択して、送信手段によって送信することができる。ここでナビゲーション装置の使用形態に基づく種別とは、例えば、大型車、中型車、小型車などを意味する。なお歩行者用ナビゲーションの場合には、歩行者であることが種別である。受信した識別コードにより、地図情報の配信要求をした車両、または歩行者についての情報を得ることができ、これによって地図情報配信手段は、それぞれの車両または歩行者に適切な地図情報を配信することができる。 【0011】 本発明の地図情報提供システムのナビゲーション装置は、ナビゲーション装置を有する車両または歩行者が通行した軌跡を識別コードとともに地図情報配信手段に送信し、 地図情報記憶手段は、ナビゲーション装置から受信した軌跡と識別コードとに基づいて、軌跡の種別通行履歴を記憶する。 【0012】 ナビゲーション装置が、車両または歩行者が通行した軌跡を識別コードとともに地図情報配信手段に送信することにより、地図情報配信手段は、各々のナビゲーション装置の識別コードとその識別コードを有するナビゲーション装置の使用形態に基づく種別とを記憶しているため、この情報によって軌跡の種別通行履歴を記憶することができる。軌跡の種別通行履歴を蓄積することにより、種別ごとの地図情報をデータベース化することができる。 【0013】 そして本発明の地図情報配信手段は、過去の種別通行履歴に基づいて、ナビゲーション装置の使用形態に基づく種別としての推奨軌跡を含む地図情報を送信する。過去の種別通行履歴を蓄積することによって、地図情報の配信を要求に対し、最もよく通行された軌跡を推奨ルートとして、情報提供することができる。具体的には、例えば、大型車の場合、細い道は通行できないため、幹線道路などを通行した履歴が蓄積されることになる。そこで最も通行履歴の多い道路を推奨道路として、地図情報上に表示されるようにすれば、適切な経路で目的地まで行くことができる。」(段落【0007】ないし【0013】) c)「【0017】 以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例を参照しながら説明する。図1に本発明の全体構造を示す。本地図情報提供システムは、車両に搭載されたナビゲーション装置(車載ナビ)100と、携帯電話などの歩行者ナビゲーション(歩行者ナビ)101、および地図情報配信手段であるセンタ(地図配信センタ)14からなる。地図配信センタ14は、配信対象となるすべてのユーザの使用形態に基づく種別の情報を保持している。ユーザの種別とは、そのナビゲーション装置が設置されている車両の車種情報(大型車、中型車、小型車、ハイブリッド、燃料電池車や車両寸法など)である。センタ14側ではリアルタイムに車載ナビおよび歩行者ナビより現在の位置情報などを受信する。センタ14側では受信した情報に車種情報を付加し、地図情報データベースとして格納する。 【0018】 地図配信センタ14は、ユーザ端末(車載ナビ100、歩行者ナビ101)からの要求に応じて、このユーザ端末に地図を配信する。また、地図情報センタ14は、地図だけでなく、例えば店舗や施設等の地点情報も備えるようにして、ユーザ端末からの要求に応じて、地図情報を提供すると共に、例えば店舗や施設等の所在地や、その店舗や施設等に関する情報もユーザ端末に配信するようにしてもよい。 【0019】 そして地図配信センタ14は、ナビゲーション端末(車載ナビ100、歩行者ナビ101)から経路探索要求を受け取ると、車種情報が付加された地図情報データベースを用いて、指定された出発地と目的地の2地点間を結ぶ推奨経路を探索し、要求したナビゲーション端末に、その車種に適応した地図情報、推奨経路情報を送信する。 【0020】 図2は本発明の一実施例としての車両用ナビゲーション装置の全体構成を示すブロック図である。本ナビゲーション装置100は、位置検出器1、操作スイッチ群7、リモートコントロール(以下リモコンと称する)センサ11、音声案内などを行うスピーカ15、外部メモリ9、表示装置10、通信ユニット19、ETC車載器16、これらの接続された制御回路8、リモコン端末12を備えている。 ・・・中略・・・ 【0030】 図4は地図配信センタ14の情報サーバ25の一実施例の構成を示す図である。情報サーバ25は、CPU51,ROM52,RAM53および入出力インターフェース(I/O)54を有し、これらがバスライン55により送受信可能に接続されたコンピュータ本体50を備え、これに周辺機器として、キーボード56あるいはマウス57等の入力装置、CD-ROMドライブ58あるいはフロッピー(登録商標)ディスクドライブ(以下、FDDと記す)59等の記録媒体読取手段、HDD(ハードディスクドライブ)60,モニタ制御部61を介して接続されるモニタ62、プリンタ63、および送受信装置22等との通信を行なうネットワーク制御部64等が接続されたコンピュータシステムとして全体が構築されている。CD-ROMドライブ58の代わりにDVD-ROMドライブ等を用いてもよい。 【0031】 HDD60には、オペレーティングシステムプログラム(以下、OSという)60a及び情報サーバプログラム60bが格納されている。情報サーバプログラム60bは、情報サーバとしての機能を実現するため、OS60a上でRAM53に確保される情報サーバワークメモリ53bを作業領域とする形で作動するものである。これは、例えばCD-ROM65等にコンピュータ読み取り可能な状態で記憶され、HDD60上の所定の記憶領域にインストールされるものである。また、RAM53には、OS60aのワークメモリ53aも形成される。 【0032】 また、HDD60には、ユーザ情報データベース23a、地図情報データベース23bが構築されている。したがってHDD60がユーザ情報記憶手段、地図情報記憶手段である。ユーザ情報データベース23aは、図6のようなユーザのナビゲーション装置に割り当てられた識別コードと、その識別コードのナビゲーション装置が設置されている車両の車種情報が記録されている。車種情報とは、そのナビゲーション装置が設置されている車両が、大型車、中型車、小型車であるか、または、車両の寸法などである。或いは、ハイブリッド車、燃料電池車などの情報も含んでもよい。歩行者用ナビゲーションの場合は、車種の代わりに歩行者であることが記録されている。また、地図情報データベース23bには、地図データが記録されている。地図データとしての道路には、それぞれの道路に道路IDが定義されている。そして、定義された道路毎に車種別の通行履歴が記録される。そしてユーザの走行履歴により、車種別の地図情報データベースとして記録されている。 【0033】 このような構成を持つことにより、本情報サーバ25は、コンピュータ本体50のCPU51により情報サーバプログラム60bが起動されると、必要な初期化処理を実行した後に情報サーバとして機能する。この後、送受信装置22を経由してナビゲーション装置100からの接続要求あるいは検索要求が発生した場合、情報サーバプログラム60bに格納されている処理が実行され、必要なデータあるいはデータベース23の検索結果を送受信装置22を経由してナビゲーション装置100へ送る。 【0034】 また、ユーザ情報データベース23aや地図情報データベース23bの内容は随時更新される。これは走行中の車両から車両情報、現在地が送られてきた場合に、データベース23bの車両通行履歴を更新するものである。 【0035】 図5に地図情報配信システムの処理ステップの実施例を示す。ユーザの有するナビゲーション装置には、各々に識別コード(ID)が割り振られている。そしてサーバには、各識別コードのナビゲーション装置が設置されている車両についての車種情報がユーザ情報として記録されている。 【0036】 まず、車種別の走行情報を記録した地図データベースの作成ついて説明する。ユーザの車両は、走行中、位置検出器1により現在位置を検出し、地図配信センタ14へ、現在位置の情報または通行中の道路IDを、識別コードとともに送信する(S1)。現在位置の情報または通行中の道路IDの双方を送信するようにしてもよいし、どちらかでもよい。地図配信センタ14はその情報を受信し(S2)、地図データベース23bに、車種別の走行路の情報を蓄積する(S3)。具体的には、識別コードとともに現在位置の情報または通行中の道路IDを受信した地図配信センタ14は、識別コードから、予め記憶されているその識別コードの車種情報を付加し、どの車種の車両がどの道路を走行したかを地図情報データベースに記録していく。これにより大型車の通る道、小型車の通る道、また歩行者の通る道が分類されていく。数多くのユーザの走行情報をデータベース化することにより、それぞれの車種に最適な道、或いは走行不可な道を分類することができる。 【0037】 続いて、ユーザは、地図情報取得の要求として、識別コード(ID)を、地図配信センタ14に送信する(S11)。ユーザの要求を受け取ったサーバは、受信した識別コードの車種をユーザ情報データベースから調べる。そしてS13で、同一車種に関する情報をS3で作成された地図データベースから抽出する。そしてユーザの車種に適した地図情報を配信する(S14)。 【0038】 図6にナビゲーション装置と地図配信センタのデータの一例を示す。(a)に示すように車両91からは識別コード(ID)と現在位置との情報を地図配信センタに送信する。地図配信センタ14には、IDごとの車種情報と、地図データが記録されている。そして前述の順序でユーザ情報と地図データとをリンクさせる。(b)には、ユーザのナビゲーション装置100が発信するデータの例を示す。このデータには、ユーザのIDと現在位置の情報が含まれる。そしてセンタ14の有するユーザ情報としての車種情報の例を(c)に示す。センタには全ユーザのIDとその車種情報が蓄積されている。そして(d)に示すように、ユーザのナビゲーション装置100から送信されたIDに基づき、ユーザの送信情報と情報サーバに記憶されたユーザ情報とを、リンクする。このデータを用いてそれぞれの道路の走行車両の履歴を車種別に記録する。 【0039】 図7に地図配信サーバ内の車種情報を加えた地図情報の実施例を示す。まず図7に示すように、道路111は、道路IDが1、道路112は、道路IDが2、道路113は、道路IDが3、道路114は、道路IDが4として記憶されている。このように全ての道路に道路IDが割り振られている。ユーザのナビゲーション装置から走行情報が送信されると、それぞれの道路IDと走行した車種とがリンクされて記憶される。例えば、道路ID1の道路は、歩行者のみが通行していれば、その旨記録121される。そして歩行者用ナビゲーション装置から地図情報の提供要求があれば、歩行者用の道路として送信する。また道路ID2、3の道路は、大型車、中型車、小型車が走行した履歴が記録122,123されている。したがって、これらの車種のナビゲーション装置から、地図配信要求があれば、これらの道路情報を送信する。さらに道路ID4の道路114は、小型車と歩行者の通行履歴の記録124があるため、小型車、歩行者用の道路と判断される。 【0040】 図8に道路別の車種別通行履歴データの例を示す。図7で述べたように、道路の道路ID別に、車種ごとの通行履歴をデータベース化する。これは、地図配信センタ14の情報サーバ25に記録されている。図8には、各道路IDごとに、大型車、中型車、小型車、歩行者のそれぞれの通行回数が記録されている。道路ID1の道路は、歩行者の通行のみが記録されている。すなわち歩行者のみが通ることのできる道路である。道路ID2,3は、大型車、中型車、小型車の走行履歴が記録されている。すなわち大型車、中型車、小型車の走行することのできる道路である。さらに道路ID4の道路は、小型車、歩行者の通行が記録され、小型車または歩行者の通行できる道路と判断される。」(段落【0017】ないし【0040】) イ 甲第3号証の記載事項及び図面の記載から分かること a)上記ア及び図1ないし8の記載によれば、甲第3号証には、地図情報提供システム、地図情報提供方法、又は地図情報提供システムのオペレーティングシステムプログラム60a及び情報サーバプログラム60bが記載されていることが分かる。 b)上記ア(特に、段落【0007】ないし【0013】及び【0032】ないし【0040】)及び図1ないし8の記載によれば、地図情報提供システム、地図情報提供方法、又は地図情報提供システムのオペレーティングシステムプログラム60a及び情報サーバプログラム60bにおいて、地図配信センタ14における情報サーバ25が計算手段を有し、計算手段は、複数のナビゲーション装置から識別コードと現在位置又は通行中の道路IDを受信し、識別コードに基づきナビゲーション装置の使用形態に基づく種別をリンクして記憶された、道路別のナビゲーション装置の使用形態に基づく種別毎の通行履歴に基づいて、各道路の通行回数をナビゲーション装置の使用形態に基づく種別毎に計算することが分かる。 c)上記ア(特に、段落【0013】及び【0032】ないし【0040】)及び図1ないし8の記載によれば、地図情報提供システム、地図情報提供方法、又は地図情報提供システムのオペレーティングシステムプログラム60a及び情報サーバプログラム60bにおいて、地図配信センタ14における情報サーバ25が探索手段を有し、探索手段は、地図配信センタ14における情報サーバ25の計算手段により計算されたナビゲーション装置の使用形態に基づく種別毎の通行回数のうち、前記ナビゲーション装置の使用形態に基づく種別に応じた前記通行回数に基づいて、前記ナビゲーション装置からの地図情報の配信の要求に対し、最もよく通行された軌跡を推奨ルートとして目的地までの経路を決定することが分かる。 ウ 甲3-1発明 上記ア及び上記イを総合して、本件発明1の表現にならって整理すると、甲第3号証には、次の事項からなる発明(以下「甲3-1発明」という。)が記載されていると認める。 「複数のナビゲーション装置から識別コードと現在位置又は通行中の道路IDを受信し、識別コードに基づきナビゲーション装置の使用形態に基づく種別をリンクして記憶された、道路別のナビゲーション装置の使用形態に基づく種別毎の通行履歴に基づいて、各道路の通行回数をナビゲーション装置の使用形態に基づく種別毎に計算する地図配信センタ14における情報サーバ25の計算手段と、 前記地図配信センタ14における情報サーバ25の計算手段により計算されたナビゲーション装置の使用形態に基づく種別毎の前記通行回数のうち、前記ナビゲーション装置の使用形態に基づく種別に応じた前記通行回数に基づいて、前記ナビゲーション装置からの地図情報の配信の要求に対し、最もよく通行された軌跡を推奨ルートとして目的地までの経路を決定する地図配信センタ14における情報サーバ25の探索手段と を備える地図情報提供システム。」 エ 甲3-2発明 上記ア及び上記イを総合して、本件発明11の表現にならって整理すると、甲第3号証には、次の事項からなる発明(以下「甲3-2発明」という。)が記載されていると認める。 「複数のナビゲーション装置から識別コードと現在位置又は通行中の道路IDを受信し、識別コードに基づきナビゲーション装置の使用形態に基づく種別をリンクして記憶された、道路別のナビゲーション装置の使用形態に基づく種別毎の通行履歴に基づいて、各道路の通行回数をナビゲーション装置の使用形態に基づく種別毎に計算し、 計算したナビゲーション装置の使用形態に基づく種別毎の前記通行回数のうち、前記ナビゲケーション装置の使用形態に基づく種別に応じた前記通行回数に基づいて、前記ナビゲーション装置からの地図情報の配信の要求に対し、最もよく通行された軌跡を推奨ルートとして目的地までの経路を決定する ステップを含む地図情報提供方法。」 オ 甲3-3発明 上記ア及び上記イを総合して、本件発明12の表現にならって整理すると、甲第3号証には、次の事項からなる発明(以下「甲3-3発明」という。)が記載されていると認める。 「複数のナビゲーション装置から識別コードと現在位置又は通行中の道路IDを受信し、識別コードに基づきナビゲーション装置の使用形態に基づく種別をリンクして記憶された、道路別のナビゲーション装置の使用形態に基づく種別毎の通行履歴に基づいて、各道路の通行回数をナビゲーション装置の使用形態に基づく種別毎に計算し、 計算したナビゲーション装置の使用形態に基づく種別毎の前記通行回数のうち、前記ナビゲーション装置の使用形態に基づく種別に応じた前記通行回数に基づいて、前記ナビゲーション装置からの地図情報の配信の要求に対し、最もよく通行された軌跡を推奨ルートとして目的地までの経路を決定する ステップを含む処理を地図配信センタ14における情報サーバ25に実行させるオペレーティングシステムプログラム60a及び情報サーバプログラム60b。」 (4)甲1-1発明及び甲2技術に基づいた理由について ア 対比 本件発明1と甲1-1発明とを、その機能、構成または技術的意義を考慮して対比する。 ・甲1-1発明における「走行履歴」は、本件発明1における「通行履歴」に相当し、以下同様に、「走行回数」は「通行頻度」に、「加算する」は「計算する」に、「走行履歴記録部42」は「計算部」に、「走行回数の少ない道路」は「通行頻度の低い道路」に、「走行経路計算部46」は「探索部」に、「ナビゲーション装置」は「情報処理端末」に、それぞれ相当する。 ・甲1-1発明における「経路の探索を行うユーザの自車の走行履歴」は、本件発明1における「経路の探索を行うユーザの複数の移動形態の通行履歴」に、「経路の探索を行うユーザの所定の移動形態の通行履歴」という限りにおいて一致する。 また、甲1-1発明における「各道路の走行回数を加算する」は、本件発明1における「各道路の通行頻度を移動形態毎に計算する」に、「各道路の通行頻度を計算する」という限りにおいて一致する。 よって、甲1-1発明における「経路の探索を行うユーザの自車の走行履歴に基づいて、各道路の走行回数を加算する」は、本件発明1における「経路の探索を行うユーザの複数の移動形態の通行履歴に基づいて、各道路の通行頻度を移動形態毎に計算する」に、「経路の探索を行うユーザの所定の移動形態の通行履歴に基づいて、各道路の通行頻度を計算する」という限りにおいて一致する。 ・甲1-1発明における「前記走行履歴記録部42により加算された前記走行回数に基づいて、前記走行回数の少ない道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定する」は、本件発明1における「前記計算部により計算された移動形態毎の前記通行頻度のうち、前記ユーザの移動形態に応じた前記通行頻度に基づいて、前記通行頻度の低い道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定する」に、「計算部により計算された通行頻度に基づいて、通行頻度の低い道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定する」という限りにおいて一致する。 したがって、両者は、 「経路の探索を行うユーザの所定の移動形態の通行履歴に基づいて、各道路の通行頻度を計算する計算部と、 前記計算部により計算された前記通行頻度に基づいて、前記通行頻度の低い道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定する探索部と を備える情報処理端末。」の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 「計算部」が「経路の探索を行うユーザの所定の移動形態の通行履歴に基づいて、各道路の通行頻度を計算する」ことに関し、本件発明1においては、「経路の探索を行うユーザの複数の移動形態の通行履歴に基づいて、各道路の通行頻度を移動形態毎に計算する」のに対して、甲1-1発明においては、「経路の探索を行うユーザの自車の走行履歴に基づいて、各道路の走行回数を加算する」点(以下、「相違点1」という。)。 [相違点2] 「探索部」が「計算部により計算された通行頻度に基づいて、通行頻度の低い道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定する」ことに関し、本件発明1においては、「前記計算部により計算された移動形態毎の前記通行頻度のうち、前記ユーザの移動形態に応じた前記通行頻度に基づいて、前記通行頻度の低い道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定する」のに対して、甲1-1発明においては、「前記走行履歴記録部42により加算された前記走行回数に基づいて、前記走行回数の少ない道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定する」点(以下、「相違点2」という。)。 イ 判断 [相違点1及び2について] 上記相違点1及び2の判断に先立ち、本件発明1と同じナビゲーションの技術分野に関する甲2技術について、本件発明1の用語で表現するために本件発明1との対応関係を検討する。 ・甲2技術における「ナビゲーション装置」は本件発明1における「情報処理端末」に相当し、同様に、「通行の履歴情報」は「通行履歴」に相当する。 ・甲2技術における「ユーザの徒歩及び公共の交通機関を利用した経路における徒歩区間の通行の履歴情報」は、本件発明1における「経路の探索を行うユーザの複数の移動形態の通行履歴」に、「ユーザの所定の移動形態の通行履歴」という限りにおいて一致する。 また、甲2技術における「所定の時間帯における移動開始をきっかけとして現在通行中の道路リンクについて過去の一定期間における略同一の時間帯の通行回数を計算」するは、本件発明1における「各道路の通行頻度を移動形態毎に計算する」に、「所定の道路の通行頻度を計算する」という限りにおいて一致する。 よって、甲2技術における「ユーザの徒歩及び公共の交通機関を利用した経路における徒歩区間の通行の履歴情報に基づいて、所定の時間帯における移動開始をきっかけとして現在通行中の道路リンクについて過去の一定期間における略同一の時間帯の通行回数を計算」するは、本件発明1における「経路の探索を行うユーザの複数の移動形態の通行履歴に基づいて、各道路の通行頻度を移動形態毎に計算する」に、「ユーザの所定の移動形態の通行履歴に基づいて、所定の道路の通行頻度を計算」するという限りにおいて一致する。 ・甲2技術における「計算した前記通行回数に基づいて、パターン化しないように目的地までの経路を設定する」は、通行回数が低い道路を選択するとパターン化しないことは明らかであるから、本件発明1における「計算された移動形態毎の前記通行頻度のうち、前記ユーザの移動形態に応じた前記通行頻度に基づいて、前記通行頻度の低い道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定する」に、「計算した通行頻度に基づいて、前記通行頻度の低い道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定する」という限りにおいて一致する。 そうすると、甲2技術は、本件発明1の用語及び本件発明1の上位概念の用語で表現すると、「情報処理端末において、ユーザの所定の移動形態の通行履歴に基づいて、所定の道路の通行頻度を計算し、計算した前記通行頻度に基づいて、前記通行頻度の低い道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定する技術。」といえる。 そこで相違点1及び2について検討する。 甲2技術は、上記の本件発明1の用語及び本件発明1の上位概念の用語で表現したものを見て分かるように、ユーザの複数の移動形態の通行履歴を有しているものではない。 そのため、甲2技術は、各道路の通行頻度を移動形態毎に計算し、計算した移動形態毎の前記通行頻度のうち、ユーザの移動形態に応じた前記通行頻度に基づいて、前記通行頻度の低い道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定するものともいえない。 なお、特許異議申立人は、「甲第1号証および甲第2号は、いずれも、通行回数の少ない道路を優先して経路を提示することを目的とした発明である点で共通しており、甲第1号証において甲第2号証のように、自車以外の複数の移動形態でのルート設定を行うことは当業者において容易に想到しうる。この場合、複数の移動形態でのそれぞれの移動についても、自車の場合と同様に移動履歴を記録することは、設計的事項にすぎない。」(特許異議申立書30ページ8ないし14行)と主張するとともに、「甲第1号証において甲第2号証のように、自車以外の移動形態の区間についても、経路の設定をすることは、当業者において容易に想到しうる。この場合に、自車以外の移動形態の区間について、パターン化を考慮するか、否かは設計的事項に過ぎない。」(特許異議申立書32ページ3ないし7行)と主張する。 しかしながら、甲2技術は、甲第2号証の段落【0103】において、「以上の実施の形態によれば、所定の時間帯における移動開始をきっかけとして通行経路のチェックを開始し、略同一の時間帯に、過去の一定期間に所定の回数以上通行している道路を通行している場合には、警告を発するようにしたので、防犯を考慮した経路を選択することができる。」と記載されているように、防犯を考慮した経路を選択するためのものであり、防犯を考慮した場合、移動形態が異なっても、略同一の時間帯に、過去の一定期間に所定の回数以上通行している道路を通行している場合には、警告を発するようにするものと考えるのが、合理的かつ自然であるから、甲1-1発明において、甲2技術を適用したとしても、ユーザの通行履歴を複数の移動形態毎に分けることは想到し得ず、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 そうすると、甲1-1発明において、甲2技術を適用したとしても、上記相違点1及び2に係る本件発明1の発明特定事項とすることはできない。 ウ 小括 したがって、本件発明1は、甲1-1発明及び甲2技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)甲3-1発明及び甲1技術に基づいた理由について ア 対比 本件発明1と甲3-1発明とを、その機能、構成または技術的意義を考慮して対比する。 ・甲3-1発明における「ナビゲーション装置の使用形態に基づく種別」は、本件発明1における「移動形態」に相当し、以下同様に、「通行履歴」は「通行履歴」に、「通行回数」は「通行頻度」に、「地図配信センタ14における情報サーバ25の計算手段」は「計算部」に、「地図配信センタ14における情報サーバ25の探索手段」は「探索部」に、「地図情報提供システム」は「情報処理端末」に、それぞれ相当する。 ・甲3-1発明における「複数のナビゲーション装置から識別コードと現在位置又は通行中の道路IDを受信し、識別コードに基づきナビゲーション装置の使用形態に基づく種別をリンクして記憶された、道路別のナビゲーション装置の使用形態に基づく種別毎の通行履歴」は、ナビゲーション装置はユーザによって所定の移動形態で使用されるユーザ端末であるから、本件発明1における「経路の探索を行うユーザの複数の移動形態の通行履歴」に、「ユーザの所定の移動形態の通行履歴」という限りにおいて一致する。 よって、甲3-1発明における「複数のナビゲーション装置から識別コードと現在位置又は通行中の道路IDを受信し、識別コードに基づきナビゲーション装置の使用形態に基づく種別をリンクして記憶された、道路別のナビゲーション装置の使用形態に基づく種別毎の通行履歴に基づいて、各道路の通行回数をナビゲーション装置の使用形態に基づく種別毎に計算する」は、本件発明1における「経路の探索を行うユーザの複数の移動形態の通行履歴に基づいて、各道路の通行頻度を移動形態毎に計算する」に、「ユーザの所定の移動形態の通行履歴に基づいて、各道路の通行頻度を移動形態毎に計算する」という限りにおいて一致する。 ・甲3-1発明における「前記地図配信センタ14における情報サーバ25の計算手段により計算されたナビゲーション装置の使用形態に基づく種別毎の前記通行回数のうち、前記ナビゲーション装置の使用形態に基づく種別に応じた前記通行回数に基づいて、前記ナビゲーション装置からの地図情報の配信の要求に対し、最もよく通行された軌跡を推奨ルートとして目的地までの経路を決定する」は、本件発明1における「前記計算部により計算された移動形態毎の前記通行頻度のうち、前記ユーザの移動形態に応じた前記通行頻度に基づいて、前記通行頻度の低い道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定する」に、「計算部により計算された移動形態毎の通行頻度のうち、ユーザの移動形態に応じた前記通行頻度に基づいて、前記通行頻度が所定の頻度である道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定する」という限りにおいて一致する。 したがって、両者は、 「ユーザの所定の移動形態の通行履歴に基づいて、各道路の通行頻度を移動形態毎に計算する計算部と、 前記計算部により計算された移動形態毎の前記通行頻度のうち、前記ユーザの移動形態に応じた前記通行頻度に基づいて、前記通行頻度が所定の頻度である道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定する探索部と を備える情報処理端末。」の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1A] 「計算部」が「ユーザの所定の移動形態の通行履歴に基づいて、各道路の通行頻度を移動形態毎に計算する」ことに関し、本件発明1においては、「経路の探索を行うユーザの複数の移動形態の通行履歴に基づいて、各道路の通行頻度を移動形態毎に計算する」のに対して、甲3-1発明においては、「複数のナビゲーション装置から識別コードと現在位置又は通行中の道路IDを受信し、識別コードに基づきナビゲーション装置の使用形態に基づく種別をリンクして記憶された、道路別のナビゲーション装置の使用形態に基づく種別毎の通行履歴に基づいて、各道路の通行回数をナビゲーション装置の使用形態に基づく種別毎に計算する」点(以下、「相違点1A」という。)。 [相違点2A] 「探索部」が「計算部により計算された移動形態毎の通行頻度のうち、ユーザの移動形態に応じた前記通行頻度に基づいて、前記通行頻度が所定の頻度である道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定する」ことに関し、本件発明1においては、「前記計算部により計算された移動形態毎の前記通行頻度のうち、前記ユーザの移動形態に応じた前記通行頻度に基づいて、前記通行頻度の低い道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定する」のに対して、甲3-1発明においては、「前記地図配信センタ14における情報サーバ25の計算手段により計算されたナビゲーション装置の使用形態に基づく種別毎の前記通行回数のうち、前記ナビゲーション装置の使用形態に基づく種別に応じた前記通行回数に基づいて、前記ナビゲーション装置からの地図情報の配信の要求に対し、最もよく通行された軌跡を推奨ルートとして目的地までの経路を決定する」点(以下、「相違点2A」という。)。 イ 判断 [相違点1A及び2Aについて] 上記相違点1A及び2Aの判断に先立ち、本件発明1と同じナビゲーションの技術分野に関する甲1技術について、本件発明1の用語で表現するために本件発明1との対応関係を検討する。 ・甲1技術における「ナビゲーション装置」は本件発明1における「情報処理端末」に相当し、以下同様に、「走行履歴」は「通行履歴」に、「走行回数」は「通行頻度」に、「加算する」は「計算する」に、「走行回数の少ない道路」は「通行頻度の低い道路」に、それぞれ相当する。 ・甲1技術における「経路の探索を行うユーザの自車の走行履歴」は、本件発明1における「経路の探索を行うユーザの複数の移動形態の通行履歴」に、「経路の探索を行うユーザの所定の移動形態の通行履歴」という限りにおいて一致する。 また、甲1技術における「各道路の走行回数を加算する」は、本件発明1における「各道路の通行頻度を移動形態毎に計算する」に、「各道路の通行頻度を計算する」という限りにおいて一致する。 よって、甲1技術における「経路の探索を行うユーザの自車の走行履歴に基づいて、各道路の走行回数を加算」するは、本件発明1における「経路の探索を行うユーザの複数の移動形態の通行履歴に基づいて、各道路の通行頻度を移動形態毎に計算する」に、「経路の探索を行うユーザの所定の移動形態の通行履歴に基づいて、各道路の通行頻度を計算」するという限りにおいて一致する。 ・甲1技術における「加算した前記走行回数に基づいて、前記走行回数の少ない道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定する」は、本件発明1における「前記計算部により計算された移動形態毎の前記通行頻度のうち、前記ユーザの移動形態に応じた前記通行頻度に基づいて、前記通行頻度の低い道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定する」に、「計算した通行頻度に基づいて、通行頻度の低い道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定する」という限りにおいて一致する。 そうすると、甲1技術は、本件発明1の用語及び本件発明1の上位概念の用語で表現すると、「情報処理端末において、経路の探索を行うユーザの所定の移動形態の通行履歴に基づいて、各道路の通行頻度を計算し、計算した前記通行頻度に基づいて、前記通行頻度の低い道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定する技術。」といえる。 そこで相違点1A及び2Aについて検討する。 甲1技術は、上記の本件発明1の用語及び本件発明1の上位概念の用語で表現したものを見て分かるように、ユーザの複数の移動形態の通行履歴を有しているものではない。 そのため、甲1技術は、各道路の通行頻度を移動形態毎に計算し、計算した移動形態毎の前記通行頻度のうち、ユーザの移動形態に応じた前記通行頻度に基づいて、前記通行頻度の低い道路を優先的に選択し、目的地までの経路を決定するものともいえない。 一方、甲3-1発明において、「道路別のナビゲーション装置の使用形態に基づく種別毎の通行履歴」については、複数のナビゲーション装置から送信される情報に基づくところ、複数のナビゲーション装置から送信される情報は、複数のユーザから送信される情報であることが通常であるから、特定のユーザの通行履歴とはいえず、ユーザの複数の移動形態の通行履歴ということはできない。 そうすると、甲3-1発明において、甲1技術を適用したとしても、上記相違点1A及び2Aに係る本件発明1の発明特定事項とすることはできない。 また、そもそも、甲3-1発明における「道路別のナビゲーション装置の使用形態に基づく種別毎の通行履歴」については、上述のとおり特定のユーザの通行履歴ではないから、甲3-1発明において、特定のユーザの通行履歴を前提とする甲1技術を適用する動機付けはないというべきである。 ウ 小括 したがって、本件発明1は、甲3-1発明及び甲1技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)まとめ 上記(4)及び(5)のとおりであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当するものではない。 2 理由2について 請求項2は、請求項1を引用するものであって、請求項1に記載された発明特定事項にさらに「前記探索部により決定された前記目的地までの経路を地図上に表示する表示部をさらに備える」という事項(以下、「請求項2記載の事項」という。)を付加するものであるので、本件発明2は、本件発明1をさらに限定したものである。 そうすると、甲1-1発明において、請求項2記載の事項に相当する事項を含むものであるとしても、上記1(4)の検討を踏まえると、本件発明2は、甲1-1発明及び甲2技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当するものではない。 3 理由3について 請求項3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1に記載された発明特定事項にさらに「前記探索部により決定された前記目的地までの経路を音声によって出力する出力部をさらに備える」という事項(以下、「請求項3記載の事項」という。)を付加するものであるので、本件発明3は、本件発明1をさらに限定したものである。 そうすると、甲第3号証(特に、段落【0020】)に記載されているような周知技術(以下、「甲3に係る周知技術」という。)が、請求項3記載の事項に相当するものであるとしても、上記1(4)の検討を踏まえると、本件発明3は、甲1-1発明、甲2技術及び甲3に係る周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当するものではない。 4 理由4について 請求項4は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1に記載された発明特定事項にさらに「通行した道路を検出する検出部と、前記検出部により検出された道路の情報を前記通行履歴として記憶する記憶部とをさらに備え、前記計算部は、前記記憶部に記憶された前記通行履歴に基づいて前記通行頻度を計算する」という事項(以下、「請求項4記載の事項」という。)を付加するものであるので、本件発明4は、本件発明1をさらに限定したものである。 そうすると、甲1-1発明において、請求項4記載の事項に相当する事項を含むものであるとしても、上記1(4)の検討を踏まえると、本件発明4は、甲1-1発明及び甲2技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当するものではない。 5 理由5について 請求項5は、請求項1を間接的に引用するものであって、請求項1に記載された発明特定事項にさらに「前記ユーザの移動形態を検出する移動形態検出部をさらに備え、前記記憶部は、前記移動形態検出部により検出された移動形態毎の前記通行履歴を記憶する」という事項(以下、「請求項5記載の事項」という。)を付加するものであるので、本件発明5は、本件発明1をさらに限定したものである。 そうすると、甲第3号証(特に、段落【0011】)において、請求項5記載の事項に相当する事項(以下、「甲3記載の事項」という。)が記載されているとしても、上記1(4)の検討を踏まえると、本件発明5は、甲1-1発明、甲2技術及び甲3記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当するものではない。 6 理由6について 請求項6は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1に記載された発明特定事項にさらに「前記探索部は、現在地と前記目的地とを含む領域を設定し、設定した前記領域から外れる道路を含む経路を前記目的地までの経路として選択しない」という事項(以下、「請求項6記載の事項」という。)を付加するものであるので、本件発明6は、本件発明1をさらに限定したものである。 そうすると、甲第4号証(特に、段落【0020】並びに図4及び5)において、請求項6記載の事項に相当する事項(以下、「甲4記載の事項」という。)が記載されているとしても、上記1(4)の検討を踏まえると、本件発明6は、甲1-1発明、甲2技術及び甲4記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当するものではない。 7 理由7について 請求項8は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1に記載された発明特定事項にさらに「前記計算部は、直近の所定の期間内の前記通行履歴に基づいて前記通行頻度を再度計算し、前記探索部は、前記計算部により再度計算された前記通行頻度に基づいて前記目的地までの経路を選択する」という事項(以下、「請求項8記載の事項」という。)を付加するものであるので、本件発明8は、本件発明1をさらに限定したものである。 そうすると、甲第2号証(特に、段落【0046】、【0050】及び【0051】)において、請求項8記載の事項に相当する事項(以下、「甲2記載の事項」という。)が記載されているとしても、上記1(4)の検討を踏まえると、本件発明8は、甲1-1発明、甲2技術及び甲2記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当するものではない。 8 理由8について 請求項9は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1に記載された発明特定事項にさらに「前記探索部は、前記情報処理端末の前記ユーザにより指定された場所を通るように前記目的地までの経路を選択する」という事項(以下、「請求項9記載の事項」という。)を付加するものであるので、本件発明9は、本件発明1をさらに限定したものである。 そうすると、甲第5号証(特に、段落【0042】)及び甲第6号証(特に、段落【0059】)に記載されているような周知技術(以下、「甲5及び甲6に係る周知技術」という。)が、請求項9記載の事項に相当するものであるとしても、上記1(4)の検討を踏まえると、本件発明9は、甲1-1発明、甲2技術並びに甲5及び甲6に係る周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当するものではない。 9 理由9について 請求項10は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1に記載された発明特定事項にさらに「ネットワーク上のサーバから、前記サーバが管理するWebサイトに書き込まれたテキストデータを取得し、前記テキストデータから場所を表す情報を抽出する取得部をさらに備え、前記探索部は、前記取得部により抽出された情報により表される場所を通るように前記目的地までの経路を選択する」という事項(以下、「請求項10記載の事項」という。)を付加するものであるので、本件発明10は、本件発明1をさらに限定したものである。 そうすると、甲第6号証(特に、段落【0033】ないし【0037】及び【0059】)及び甲第7号証(特に、段落【0023】及び【0024】)に記載されているような周知技術(以下、「甲6及び甲7に係る周知技術」という。)が、請求項10記載の事項に相当するものであるとしても、上記1(4)の検討を踏まえると、本件発明10は、甲1-1発明、甲2技術並びに甲6及び甲7に係る周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当するものではない。 10 理由10について 本件発明11は、本件発明1とはカテゴリが異なるものであり、本件発明1と実質的に同じ発明特定事項を有するものである。 一方、甲1-2発明は、甲1-1と実質的に同じ発明特定事項を有するものであり、また、甲3-2発明は、甲3-1発明と実質的に同じ発明特定事項を有するものである。 そうすると、本件発明11は、上記1(4)及び(5)の検討を踏まえると、甲1-2発明及び甲2技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲3-2発明及び甲1技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当するものではない。 11 理由11について 本件発明12は、本件発明1とはカテゴリが異なるものであり、本件発明1と実質的に同じ発明特定事項を有するものである。 一方、甲1-3発明は、甲1-1と実質的に同じ発明特定事項を有するものであり、また、甲3-3発明は、甲3-1発明と実質的に同じ発明特定事項を有するものである。 そうすると、本件発明12は、上記1(4)及び(5)の検討を踏まえると、甲1-3発明及び甲2技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲3-3発明及び甲1技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当するものではない。 12 理由12について 本件特許明細書における段落【0118】の「通行履歴の情報量が多くなり、通行頻度の学習が進むにつれ、例外条件の判定の基準となる楕円の領域を大きく設定することにより、いつもと違う道路を含むルートの範囲を広げることが可能になる。」という記載及び図13の記載によれば、本件発明7における「通行履歴の量」は、通行履歴の情報量であることは明らかである。 そうすると、本件特許明細書における請求項7に記載された事項により特定される本件発明7は明確であるから、請求項7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、特許法第113条第4号に該当するものではない。 13 理由13について 本件特許明細書における段落【0065】、【0068】及び【0110】には、ユーザにより特定されたお気に入りの場所が登録されることが記載されているところ、このお気に入りの場所は本件発明9における「ユーザーにより指定された場所」ということができる。 そして、本件特許明細書における段落【0068】ないし【0078】及び【0090】ないし【0102】の記載並びに図5、6及び9ないし11の記載によれば、現在地から目的までの各ルートのコストを求め、コストの低いルートを選択するにあたり、各ノード間のコスト計算にお気に入りの場所のパラメータに係数w32を乗じたコストが含まれており、ユーザにより指定された場所に応じて目的地までの経路を選択するものといえるところ、ユーザにとってお気に入りの場所が、ユーザが通りたい場所であることは当然であるから、本件特許明細書には、本件発明9における「ユーザにより指定された場所を通るように前記目的地までの経路を選択する」ことに対応する事項が記載されているものと認められる。 なお、特許異議申立人は、「本件特許明細書の記載によれば、お気に入りの場所に関する重みw32は、お気に入りの場所が基準の場所に対して近いほど、または、お気に入りの程度が大きいほど大きな値が設定されるため、そのノート間のコストが高くなり、結果として、探索される経路に含まれにくくなる。」(特許異議申立書40ページ2ないし6行)と主張するが、お気に入りの場所のパラメータに乗算される重みw32が負の係数であることは明らかであり、特許異議申立人の当該主張は採用できない。 そうすると、本件発明9は、本件特許明細書における発明の詳細な説明に記載されたものであるから、請求項9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、特許法第113条第4号に該当するものではない。 14 理由14について、 本件特許明細書における段落【0066】ないし【0067】及び【0111】には、Webサーバから、前記Webサーバが管理する掲示板サイトに書き込まれたテキストデータを登録情報/注目情報取得部75で取得し、取得したテキストデータから書き込みを行った人達の間で注目されている場所を特定することが記載されているところ、このWebサーバが管理する掲示板サイトに書き込みを行った人達の間で注目されている場所(以下、「注目場所」という。)は、本件発明10における「ネットワーク上のサーバから、前記サーバが管理するWebサイトに書き込まれたテキストデータを取得し、前記テキストデータから場所を表す情報を抽出する取得部をさらに備え」、「前記取得部により抽出された情報により表される場所」ということができる。 そして、本件特許明細書における段落【0068】ないし【0078】及び【0090】ないし【0102】の記載並びに図5、6及び9ないし11の記載によれば、現在地から目的までの各ルートのコストを求め、コストの低いルートを選択するにあたり、各ノード間のコスト計算に注目場所のパラメータに係数w33を乗じたコストが含まれており、注目場所に応じて目的地までの経路を選択するものといえるところ、ユーザにとって注目場所が、ユーザが通りたい場所であることは当然であるから、本件特許明細書には、本件発明10における「前記探索部は、前記取得部により抽出された情報により表される場所を通るように前記目的地までの経路を選択する」ことに対応する事項が記載されているものと認められる。 なお、特許異議申立人は、「本件特許明細書の記載によれば、注目場所に関する重みw33は、注目場所が基準の場所に対して近いほど、または、注目度が大きいほど大きな値が設定されるため、そのノート間のコストが高くなり、結果として、探索される経路に含まれにくくなる。」(特許異議申立書40ページ26行ないし41ページ1行)と主張するが、注目場所のパラメータに乗算される重みw33が負の係数であることは明らかであり、特許異議申立人の当該主張は採用できない。 そうすると、本件発明10は、本件特許明細書における発明の詳細な説明に記載されたものであるから、請求項10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、特許法第113条第4号に該当するものではない。 15 むすび 以上のとおりであるから、請求項1ないし6及び8ないし12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、特許法第113条第2号に該当するものではない。 また、請求項7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号及び同項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、特許法第113条第4号に該当するものではない。 さらに、請求項9及び10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、特許法第113条第4号に該当するものではない。 第5 結語 上記第4のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし12に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2016-04-18 |
出願番号 | 特願2011-62730(P2011-62730) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(G01C)
P 1 651・ 537- Y (G01C) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 前原 義明 |
特許庁審判長 |
加藤 友也 |
特許庁審判官 |
梶本 直樹 槙原 進 |
登録日 | 2015-06-19 |
登録番号 | 特許第5761556号(P5761556) |
権利者 | ソニー株式会社 |
発明の名称 | 情報処理端末、情報処理方法、およびプログラム |
代理人 | 西川 孝 |
代理人 | 稲本 義雄 |