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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61F
管理番号 1314336
異議申立番号 異議2015-700164  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-11-10 
確定日 2016-04-28 
異議申立件数
事件の表示 特許第5717686号「吸収性物品」の請求項1ないし15に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第5717686号の請求項1ないし15に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5717686号の請求項1ないし15に係る特許についての出願は、平成24年4月2日に特許出願され、平成27年3月27日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人荒井夏代により特許異議の申立てがされ、当審において平成28年1月13日付けで取消理由を通知し、平成28年3月18日付けで意見書が提出され、平成28年4月7日付けで特許異議申立人より上申書が提出されたものである。

2.本件発明
本件請求項1ないし15に係る発明は、以下のとおりである。

【請求項1】
不織布又は織布から形成された、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及びバックシートの間の吸収体とを有する吸収性物品であって、
前記吸収性物品が、その厚さ方向に前記吸収体と重複する範囲において、着用者の排泄口に接する排泄口当接域と、当該排泄口当接域を囲むように連続的又は非連続的に配置されている第1エンボス部と、第1エンボス部より外側の外縁領域と、前記排泄口当接域の長手方向外側に位置する外縁領域に配置されている第2エンボス部とを有し、
第1エンボス部及び第2エンボス部が、前記トップシート及び吸収体を含む層をエンボスすることにより形成され、そして
前記排泄口当接域内のトップシートと、第2エンボス部とが、それぞれ、40℃における0.01?80mm^(2)/sの動粘度と、0.01?4.0質量%の抱水率と、1,000未満の重量平均分子量とを有する血液滑性付与剤を含む、
ことを特徴とする、前記吸収性物品。
【請求項2】
前記血液滑性付与剤が、0.00?0.60のIOBをさらに有する、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
第2エンボス部が、前記排泄口当接域の長手方向端部を囲むように湾曲して配置されている、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記トップシートが、前記排泄口当接域と、第2エンボス部との間に、前記血液滑性付与剤を含まない領域を有する、請求項1?3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
第1エンボス部が、前記血液滑性付与剤をさらに含む、請求項1?4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
第1エンボス部が、前記排泄口当接域を囲むように非連続的に配置されており、第1エンボス部の外側に、第3エンボス部がさらに配置されている、請求項1?5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
第3エンボス部が、第1エンボス部の非連続部分の外側に配置されている、請求項6に記載の吸収性物品。
【請求項8】
第3エンボス部が、前記血液滑性付与剤を含む、請求項6又は7に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記吸収性物品が、前記トップシートと吸収体との間にセカンドシートをさらに有し、第1エンボス部が、前記トップシート、セカンドシート及び吸収体を含む層をエンボスすることにより形成された、請求項1?8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
第2エンボス部が、前記トップシート、セカンドシート及び吸収体を含む層をエンボスすることにより形成された、請求項9に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記血液滑性付与剤が、次の(i)?(iii)、
(i)炭化水素、
(ii) (ii-1)炭化水素部分と、(ii-2)前記炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、カルボニル基(-CO-)及びオキシ基(-O-)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物、及び
(iii) (iii-1)炭化水素部分と、(iii-2)前記炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、カルボニル基(-CO-)及びオキシ基(-O-)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基と、(iii-3)前記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(-COOH)及びヒドロキシル基(-OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物、
並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択され、
ここで、(ii)又は(iii)の化合物において、オキシ基が2つ以上挿入されている場合には、各オキシ基は隣接していない、
請求項1?10のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記血液滑性付与剤が、次の(i’)?(iii’)、
(i’)炭化水素、
(ii’) (ii’-1)炭化水素部分と、(ii’-2)前記炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、カルボニル結合(-CO-)、エステル結合(-COO-)、カーボネート結合(-OCOO-)、及びエーテル結合(-O-)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合とを有する化合物、及び
(iii’) (iii’-1)炭化水素部分と、(iii’-2)前記炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、カルボニル結合(-CO-)、エステル結合(-COO-)、カーボネート結合(-OCOO-)、及びエーテル結合(-O-)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合と、(iii’-3)前記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(-COOH)及びヒドロキシル基(-OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物、
並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択され、
ここで、(ii’)又は(iii’)の化合物において、2以上の同一又は異なる結合が挿入されている場合には、各結合は隣接していない、
請求項1?11のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記血液滑性付与剤が、次の(A)?(F)、
(A) (A1)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2?4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(A2)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のカルボキシル基とを有する化合物とのエステル、
(B) (B1)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2?4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(B2)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエーテル、
(C) (C1)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する、2?4個のカルボキシル基とを含むカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、(C2)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエステル、
(D)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分のC-C単結合間に挿入された、エーテル結合(-O-)、カルボニル結合(-CO-)、エステル結合(-COO-)、及びカーボネート結合(-OCOO-)から成る群から選択されるいずれか1つの結合とを有する化合物、
(E)ポリオキシC_(3)?C_(6)アルキレングリコール、又はそのアルキルエステル若しくはアルキルエーテル、及び
(F)鎖状炭化水素、
並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、請求項1?12のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記血液滑性付与剤が、(a_(1))鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(a_(2))鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(a_(3))鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(b_(1))鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(b_(2))鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(b_(3))鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(c_(1))4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素テトラカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、(c_(2))3個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素トリカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、(c_(3))2個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ジカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、(d_(1))脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、(d_(2))ジアルキルケトン、(d_(3))脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステル、(d_(4))ジアルキルカーボネート、(e_(1))ポリオキシC_(3)?C_(6)アルキレングリコール、(e_(2))ポリオキシC_(3)?C_(6)アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(e_(3))ポリオキシC_(3)?C_(6)アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、及び(f_(1))鎖状アルカン、並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、請求項1?13のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項15】
前記血液滑性付与剤が、1気圧及び40℃において、0.00?0.01Paの蒸気圧を有する、請求項1?14のいずれか一項に記載の吸収性物品。

3.取消理由の概要
当審において、請求項1ないし15に係る特許に対して通知した取消理由は、要旨次のとおりである。

本件特許の請求項1ないし15に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


甲1.特表2011-530340号公報
甲2.特開2003-192563号公報
甲3.特表2008-541943号公報
甲4.特開2009-5860号公報
甲5.特開2011-110122号公報
甲6.特表2010-533535号公報
甲7.特表2009-531121号公報

取消理由1:請求項1?15に対し、甲1に、甲2?5を適用し容易。
取消理由2:請求項1?10に対し、甲1に、甲6?7、3?5を適用し容易。

4.甲1の記載
甲1には、本件請求項1に照らすと、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「不織布又は織布から形成された、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及びバックシートの間の吸収体とを有する吸収性物品であって、
前記吸収性物品が、その厚さ方向に前記吸収体と重複する範囲において、着用者の排泄口に接する排泄口当接域と、当該排泄口当接域を囲むように連続的又は非連続的に配置されている第1エンボス部と、第1エンボス部より外側の外縁領域と、前記排泄口当接域の長手方向外側に位置する外縁領域に配置されている第2エンボス部とを有し、
第1エンボス部及び第2エンボス部が、前記トップシート及び吸収体を含む層をエンボスすることにより形成され、そして
前記排泄口当接域内のトップシートと、第2エンボス部とが、ローションを含む、
前記吸収性物品。」

5.判断
(1)総論
請求項1に係る発明と甲1発明とを対比すると、排泄口当接域内のトップシートと、第2エンボス部とに含まれるものが、請求項1に係る発明は、「40℃における0.01?80mm^(2)/sの動粘度と、0.01?4.0質量%の抱水率と、1,000未満の重量平均分子量とを有する血液滑性付与剤」であるが、甲1発明は、「ローション」である点で相違する。

相違点について検討する。
請求項1に係る発明の「血液滑性付与剤」は、本件明細書の段落0030?0034の記載からみて、経血との親和性を有し経血とともに吸収体へ迅速に移行するためのものである。そのため、その適用部位も、トップシートの「排泄口当接域」に特定されている。
甲1発明の「ローション」は、甲1の段落0060等の記載をみても、その技術的意義は明らかでない。そこで、技術常識(甲1の出願人による特開2004-298643号公報の段落0018、0059、同じく特表2008-522772号公報の段落0058等)によれば、かかる「ローション」は、エモリエント剤(皮膚軟化剤)を成分として含み、スキンケア、皮膚の快適性のためのものと解される。
すなわち、甲1発明の「ローション」と、請求項1に係る発明の「血液滑性付与剤」とは、技術的意義が異なる。
そして、請求項1に係る特許に対して通知した取消理由1ないし2は、甲1発明に、それぞれ、甲2、甲6?7を適用し容易というものであったから、以下、検討する。

(2)取消理由1:甲2の適用について
甲2には、「ローション(油成分)」として、甲2の段落0009に示されるごとく、多くの例示がある。
甲1発明の「ローション」を、甲2記載の「パールリーム6」、「ジ-2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール」、又は「トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル」に置き換え、請求項1に係る発明とするには、特別な動機が必要と解されるところ、そのような動機を見出すことはできない。

(3)取消理由2:甲6?7の適用について
甲6には、「ローション」として、甲6の段落0148に「香料、香り、及び薬剤を含むその他の構成成分」を用いることができる旨の記載がある。
甲7には、段落0046に「揮発性の高い成分」として、「シトロネロール」が例示されている。そして、「シトロネロール」は香料とも解される。
甲1発明の「ローション」を、甲6の記載を踏まえて「香料」を用い、さらに「香料」として、多くの香料の中から「シトロネロール」を選択して、請求項1に係る発明とするには、特別な動機が必要と解されるところ、そのような動機を見出すことはできない。

(4)小括
よって、取消理由1ないし2のいずれによっても、請求項1に係る発明について、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

(5)請求項2ないし15に係る発明について
請求項2ないし15に係る発明は、いずれも請求項1を引用しており、請求項1に係る発明の構成を全て含む。
よって、同様の理由により、請求項2ないし15に係る発明について、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

6.むすび
したがって、上記取消理由1ないし2によっては、請求項1ないし15に係る特許を取り消すことができない。
また、他に請求項1ないし15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-04-13 
出願番号 特願2012-84321(P2012-84321)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A61F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 笹木 俊男  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 山田 由希子
千葉 成就
登録日 2015-03-27 
登録番号 特許第5717686号(P5717686)
権利者 ユニ・チャーム株式会社
発明の名称 吸収性物品  
代理人 藤本 健治  
代理人 鈴木 啓靖  
代理人 古賀 哲次  
代理人 出野 知  
代理人 石田 敬  
代理人 上野 美紀  
代理人 小野田 浩之  
代理人 蛯谷 厚志  
代理人 奥野 剛規  
代理人 鈴木 康義  
代理人 青木 篤  
代理人 胡田 尚則  

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