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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F24F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F24F
管理番号 1314343
異議申立番号 異議2015-700239  
総通号数 198 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-11-30 
確定日 2016-05-11 
異議申立件数
事件の表示 特許第5729426号「空気調和機」の請求項1乃至5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第5729426号の請求項1乃至5に係る特許を維持する。 
理由 1.特許第5729426号の請求項1乃至5に係る特許についての出願は、平成25年7月11日に特許出願され、平成27年4月17日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人谷脇 幸恵により特許異議申立がされ、当審において平成28年1月29日付けで取消理由を通知し、平成28年4月1日に意見書が提出されたものである。

2.本件発明
特許第5729426号の請求項1乃至5に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
蒸発器(64)における冷媒の蒸発潜熱を利用した運転モードとして、除湿モードおよび衣類乾燥モードを含む空気調和機であって、
前記蒸発器(64)に風を与える送風機(50)と、
前記運転モードの中から必要なモードを選択するためのモード選択部(20)と、
前記モード選択部(20)で選択された前記モードに応じて、前記送風機(50)を介して前記蒸発器(64)を通る風量を制御する制御部(90)と、
を備え、
前記除湿モードでは、前記蒸発器(64)を通る風量の異なる大きさへの切換が、除湿能力が最大となる基準風量を含めて複数段階に分けて許容されており、
前記衣類乾燥モードでは、前記蒸発器(64)を通る風量は前記除湿モードにおける前記基準風量よりも大きい風量に設定される、
空気調和機(100)。
【請求項2】
前記衣類乾燥モードでは、前記蒸発器(64)を通る風量は前記除湿モードにおける最大許容風量よりも大きい風量に設定される、
請求項1に記載の空気調和機(100)。
【請求項3】
前記蒸発器(64)を通る風量は、大きい方から順に少なくとも第1風量、第2風量、第3風量および第4風量が予め設定されており、
前記前記衣類乾燥モードが選択されたとき、前記第1風量が自動的に選択される、
請求項1に記載の空気調和機(100)。
【請求項4】
前記第2風量は、前記除湿モードにおける最大許容風量であって、
前記第2風量における除湿能力は、前記第1風量における除湿能力よりも大きい、
請求項3に記載の空気調和機(100)。
【請求項5】
空気清浄フィルタ(35)をさらに備え、
前記空気清浄フィルタ(35)を通過した空気のうち前記蒸発器(64)を通過できない空気は、前記蒸発器(64)をバイパスして前記送風機(50)に吸い込まれる、
請求項3に記載の空気調和機(100)。」

3.取消理由の概要
当審において、請求項1乃至5に係る特許に対して通知した取消理由は、要旨次のとおりである。
(1)請求項1に係る発明は、甲第1号証(国際公開第2011/111515号)記載の発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるか、又は甲第1号証及び甲第2号証(特開2001-272088号公報)記載の発明に基いて当業者が容易に想到することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)請求項2に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証記載の発明に基いて当業者が容易に想到することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)請求項3に係る発明は、甲第1号証乃至甲第3号証(特開2012-57887号公報)記載の発明に基いて当業者が容易に想到することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(4)請求項4に係る発明は、甲第1号証乃至甲第3号証記載の発明に基いて当業者が容易に想到することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(5)請求項5に係る発明は、甲第1号証乃至甲第4号証(特開2007-262266号公報)記載の発明に基いて当業者が容易に想到することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

4.甲各号証の記載
甲第1号証([0010]?[0019]、[0021]?[0023]、[0025])には、
「ヒートポンプ回路を構成し蒸発器において空気中の水分を凝縮させる方式の除湿手段5を有し、除湿手段5を駆動する除湿モードおよび乾燥モードを含む除湿機であって、
吸込口101から室内空気Aを吸い込んで排気口103から乾燥空気Bを排出するという気流を発生させる送風ファン2と、
制御手段を有する制御回路7と、
操作部のスイッチ操作から除湿モードが選択されたことを検知した場合には、室内の湿度が最適湿度となるように、風向可変手段1を駆動して排気口103から送風可能にし、ファンモーター2aを駆動して送風ファン2を回転させ、除湿手段5を駆動し、
制御回路7は、被乾燥物である洗濯物の乾燥モードの運転開始を検知したとき、湿度センサー4によって検出された室内湿度が所定湿度より高いと判定したときには、除湿手段5の除湿能力が最大となるように、(この場合、送風ファン2の運転の弱・中・強のうち中のときの送風量が得られるように)ファンモーター2aを制御し、その後、再び湿度センサー4を介して室内湿度を読み込んで、所定湿度と比較し、室内湿度が所定湿度より高いときには前述した制御を維持し、室内湿度が所定湿度まで低下したときには、赤外線センサー6を介して洗濯物の表面温度を検知すると、送風ファンによる送風量が多くなるようにファンモーター2aを制御し、
被乾燥物である洗濯物の乾燥モードの運転開始を検知したとき、湿度センサー4によって検出された室内湿度が所定湿度以下と判定したときには、赤外線センサー6を介して洗濯物の表面温度を検知すると、送風ファンによる送風量が多くなるようにファンモーター2aを制御する除湿機。」(以下「引用発明」という。)が記載されている。
甲第2号証(【0016】、【0022】、【0023】)には、
「弱モード、中モード及び強モードの3段階に切り換わるファンのモータを備えた空気調和機において、『ランドリー乾燥』スイッチ32を押すと送風部14を強モードで運転する除湿運転と、送風部14を中モードの駆動により除湿運転させる『連続』運転と、送風部14を弱モードで除湿運転させる『静風』運転と、室温に応じて送風部14を強または中モードで除湿運転させる『低温モード』運転を有する点。」が記載されている。

5.判断
(1)請求項1に係る発明について
(ア)特許法第29条第1項第3号について
請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)と引用発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明では、「前記除湿モードでは、前記蒸発器(64)を通る風量の異なる大きさへの切換が、除湿能力が最大となる基準風量を含めて複数段階に分けて許容されて」いるのに対して、引用発明では、「室内の湿度が最適湿度となるように、風向可変手段1を駆動して排気口103から送風可能にし、ファンモーター2aを駆動して送風ファン2を回転させ、除湿手段5を駆動」する点。
<相違点2>
本件発明では、「前記衣類乾燥モードでは、前記蒸発器(64)を通る風量は前記除湿モードにおける前記基準風量よりも大きい風量に設定される」のに対して、引用発明では、「被乾燥物である洗濯物の乾燥モードの運転開始を検知したとき、湿度センサー4によって検出された室内湿度が所定湿度より高いと判定したときには、除湿手段5の除湿能力が最大となるように、(この場合、送風ファン2の運転の弱・中・強のうち中のときの送風量が得られるように)ファンモーター2aを制御し、その後、再び湿度センサー4を介して室内湿度を読み込んで、所定湿度と比較し、室内湿度が所定湿度より高いときには前述した制御を維持し、室内湿度が所定湿度まで低下したときには、赤外線センサー6を介して洗濯物の表面温度を検知すると、送風ファンによる送風量が多くなるようにファンモーター2aを制御し、被乾燥物である洗濯物の乾燥モードの運転開始を検知したとき、湿度センサー4によって検出された室内湿度が所定湿度以下と判定したときには、赤外線センサー6を介して洗濯物の表面温度を検知すると、送風ファンによる送風量が多くなるようにファンモーター2aを制御する」点。

<相違点1について>
相違点1に係る本件発明の特定事項は、除湿モード時の風量が除湿能力が最大となる基準風量とその他の風量とで段階的に制御されることを特定するものである。
そして、相違点1に係る引用発明の特定事項は、室内の湿度が最適湿度となるように、風量を制御することが特定されているのみであり、風量の制御には無段階のフィードバック制御等、種々の制御が考えられるところ、必ず段階的に制御するものであるとはいえない。
したがって、相違点1に係る本件発明の特定事項が、実質的に引用発明に特定されているとはいえないから、相違点1は、実質的な相違点である。
<相違点2について>
本件発明の「前記衣類乾燥モードでは、前記蒸発器(64)を通る風量は前記除湿モードにおける前記基準風量よりも大きい風量に設定される」ことは、明細書の段落【0087】?【0092】、【0109】?【0113】、【0116】を参照すると、衣類乾燥モード中は、蒸発器(64)を通る風量が除湿能力が最大となる基準風量よりも大きい風量とすることであると解される。
したがって、本件発明の衣類乾燥モードの風量と引用発明の乾燥モードの風量とは異なるから、相違点2は、実質的な相違点である。

よって、上記相違点1及び2は、いずれも実質的な相違点であるから、本件発明は、引用発明であるとはいえない。

(イ)特許法第29条第2項について
以下、上記各相違点についてさらに検討する。
<相違点1について>
除湿器において、除湿を行う際に蒸発器を通る風量を異なる大きさの複数段階に分けて許容することは、周知(例えば、甲第2号証の【0022】、甲第3号証の【0158】参照。)である。
そして、引用発明の除湿モードにおいて、除湿を行う際に蒸発器を通る風量を異なる大きさの複数段階に分けて許容することは、当業者が容易に想到し得たことであり、当該周知技術を適用するに際して、除湿モードの目的はそもそも除湿を行うことであるから、除湿能力が最大となる風量を用いるようにすることは、設計上、適宜なし得たことである。
<相違点2について>
引用発明は、「前述した従来の除湿機においては、室内の湿度が高い状態のとき、顕熱低下量が小さいため被乾燥物の配置範囲を特定するのが難しいという課題があった。」([0004])ことを解決するために、洗濯物の乾燥モードにおいて、室内湿度が所定湿度より高いときには、送風ファン2を除湿能力が最大となる中となるよう制御し、室内湿度が所定湿度まで低下した後に、送風ファンによる送風量が多くなるように、すなわち強となるようにファンモーター2aを制御するものであり、当該構成は引用発明の本質的部分である。
そうすると、引用発明の被乾燥物である洗濯物の乾燥モードにおいて、単に、除湿能力が最大となる風量よりも大きい風量とすることは、引用発明の課題を解決できないものとすることとなるから、引用発明において相違点2に係る請求項1に係る発明の特定事項を適用することは、当業者が容易に想到し得たとすることはできない。
また、甲第2号証には、除湿能力が最大となる風量について記載がなく、仮に引用発明の乾燥モードとして、甲第2号証の「ランドリー乾燥」を適用しても、本件発明の相違点2に係る事項とはならない。
そして、本件発明は、上記相違点2に係る特定事項を有することにより、衣類乾燥モード時の風量が増大することによって衣類乾燥時間が短くなるという効果を有するものである(【0014】)。

したがって、本件発明は、甲第1及び2号証に記載の発明に基いて当業者が容易に想到することができたものでない。

(2)請求項2乃至5に係る発明について
請求項2乃至5に係る発明は、いずれも請求項1を引用する発明であるから、請求項2乃至5に係る発明と引用発明とは、少なくとも前記(1)ア(ア)の相違点1及び相違点2の点で相違する。
そして、相違点2は、前記(1)ア(イ)で検討したとおり、甲第1及び2号証に記載の発明に基いて当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
また、甲第3号証及び甲第4号証によっても、容易に想到することができたものとはいえない。
したがって、請求項2乃至5に係る発明は、甲第1号証乃至甲第4号証に記載の発明に基いて当業者が容易に想到することができたものない。

6.むすび
したがって、上記取消理由によっては、請求項1乃至5に係る特許を取り消すことができない。
また、他に請求項1乃至5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2016-04-25 
出願番号 特願2013-145730(P2013-145730)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (F24F)
P 1 651・ 113- Y (F24F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 河野 俊二  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 山崎 勝司
佐々木 正章
登録日 2015-04-17 
登録番号 特許第5729426号(P5729426)
権利者 ダイキン工業株式会社
発明の名称 空気調和機  
代理人 新樹グローバル・アイピー特許業務法人  
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