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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1314670
審判番号 不服2015-7681  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-24 
確定日 2016-05-11 
事件の表示 特願2013-168698「基板コア構造及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年1月9日出願公開、特開2014-3316〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2008年6月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:2007年6月28日、米国(US))を国際出願日とする特願2010-515054号の一部を、平成25年8月14日に新たな特許出願としたものであって、平成26年5月13日付けの拒絶理由通知に対して、同年7月28日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月16日付け(発送日:12月24日)で拒絶査定がなされ、これに対して、平成27年4月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成26年7月28日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。
「開始絶縁層と、
前記開始絶縁層の一の面に設けられる第1のパターニング導電層および前記開始絶縁層の別の面に設けられる第2のパターニング導電層と、
前記第1のパターニング導電層に設けられる第1の補完的絶縁層と、
前記第2のパターニング導電層に設けられる第2の補完的絶縁層と、
前記第1の補完的絶縁層に設けられる第1の補完的パターニング導電層と、
前記第2の補完的絶縁層に設けられる第2の補完的パターニング導電層と、
前記第2の補完的パターニング導電層から、前記第1の補完的パターニング導電層まで延伸する導電ビア群と
を備え、
前記導電ビア群は、前記第1のパターニング導電層から最も遠い前記第1の補完的絶縁層の表面において底面を有し、前記導電ビア群の前記底面において前記第1の補完的パターニング導電層に接し、前記導電ビア群の前記底面と反対側の表面において、前記第2の補完的パターニング導電層に接し、さらに、前記第1のパターニング導電層および前記第2のパターニング導電層を貫通し、
前記導電ビア群に含まれる各導電ビアは、円錐状の構造である
多層基板コア構造。」

3.刊行物に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された特開2001-196743号公報(以下「刊行物」という。)には、「接着フィルムを用いた多層プリント配線板の製造法」に関し、図面(図3参照)とともに、次の事項が記載されている。
以下、下線は当審で付与するものである。

ア.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、導体回路層と絶縁層とを交互に積み上げたビルドアップ方式の多層プリント配線板の製造法において、接着フィルムを用いて歩留まり良く、簡便に表面平滑性に優れた多層プリント配線板の製造する方法に関するものである。」

イ.「【0005】
【発明の実施の形態】本発明における常温固形の熱硬化性樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂及び/又は高分子を主成分としてなり、加熱により軟化し、かつフィルム形成能のある樹脂組成物であって、さらに熱硬化により耐熱性、電気特性など層間絶縁材に要求される特性を満足するものであれば特に限定されるものではない。例えば、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ポリイミド樹脂系、ポリアミドイミド樹脂系、ポリシアネート樹脂系、ポリエステル樹脂系、熱硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂系等が挙げられ、これらを2種以上組み合わせて使用したり、多層構造を有する接着フィルムとすることも可能である。中でも、層間絶縁材として信頼性とコスト的に優れたエポキシ樹脂系においては、特開平11-87927記載のエポキシ樹脂組成物が挙げられる。」

ウ.「【0007】次に、本発明の工程について図3を使って具体的に説明する。先ず、パターン加工された回路基板上の片面又は両面上の少なくとも該パターン加工部分に、接着フィルムの樹脂組成物層を直接覆い重ねた状態で、真空条件下、加熱、加圧し積層するには、ニチゴー・モートン(株)製バキュームアップリケーター、(株)名機製作所製真空加圧式ラミネーター、日立テクノエンジニアリング(株)製真空ロール式ドライコータ等市販の真空積層機を使用する。上記接着フィルムに保護フィルムが存在している場合には保護フィルムを除去後、真空条件下、樹脂組成物層を支持ベースフィルム側より加圧、加熱しながら貼り合わせる。ラミネート時の樹脂流れが内層回路の導体厚以上である条件でラミネートすることにより、内層回路パターンの被覆が良好に行われる。具体的には、フィルム及び内層回路基板を必要によりプレヒートし、圧着温度が70?130℃、圧着圧力が1?11kgf/cm2であって、10ミリバール以下の減圧下で積層するのが好ましい。ラミネートはバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。」

エ.「【0008】次に、支持ベースフィルムの付いた状態で該樹脂組成物を熱硬化する。これにより硬化中樹脂表面にほこりや異物が付着する事がなく、従来の異物付着の問題が解消された上に、クリーンオーブン等の高価な設備が不要となった。その後、支持ベースフィルム付きで、あるいは無しでレーザー及び/又はドリルにより穴開けを行う。熱硬化の条件は樹脂によって異なるが100?200℃で10?90分の範囲で選択される。中でもやや低温から高温へのステップキュアが仕上がりの面から好ましい。熱硬化は次の穴開け工程での穴形状の均一性と、導電性ペースト使用の場合には、ペースト中に含まれる有機溶剤等への耐性のために必須である。穴開けには、市販の炭酸ガス、UV-YAG、エキシマ等のレーザー穴開け機及び/又はドリル穴開け機を使用して、公知慣用の方法で所定の位置に行える。穴開け後ジェットスクラブの如き機械的処理や、ソフトエッチング等の化学的処理により穴内を洗浄しても良い。本発明の接着フィルムは支持ベースフィルムに離型層を有していることにより、熱硬化性樹脂組成物の熱硬化後に容易に剥離できる。」

オ.「【0009】当該発明請求項1及び3の工程では上記工程の後、特開平11-87927記載の従来工法や、図2と同じ工程に従って多層プリント配線板が製造される。一方、導電性ペーストを使用して層間接続を行う当該発明請求項2の工程では、穴内に導電性ペーストを充填する。導電性ペーストとしては市販の銀ペースト、銅ペースト等の金属紛ペーストの他、導電性粒子含有ペーストなどが使用できる。充填するには現在市販の導電性ペーストの特性上、スクリーン印刷が一般的であるが、これに限定されるものではない。印刷が内層回路基板両面に必要な場合は、両面同時印刷又は、片面印刷後熱硬化し裏面を印刷する方法が選択される。印刷においては、樹脂組成物層と同時に穴開けされた支持ベースフィルムが、高精度なコンタクトマスクの役割を果たすため、穴部分以外の樹脂組成物表面への導電性ペーストの付着が全く無いという優れた特徴がある。これにより、従来困難であった導電性ペーストによる選択的電気接続を可能にした。また、小径ビアへの埋めこみ性向上のため、印刷後に減圧処理工程を入れるのも好ましい。」

カ.「【0010】次に、支持ベースフィルム剥離後、導電性ペーストを熱硬化する工程、又は導電性ペーストを熱硬化した後、支持ベースフィルム剥離し、樹脂組成物層を露出する。本発明の接着フィルムは支持ベースフィルムに離型層を有していることにより、熱硬化性樹脂組成物及び/又は導電性ペーストの熱硬化後に容易に剥離できる。熱硬化の条件は樹脂及び導電性ペーストによって異なるが100?200℃で10?90分の範囲で選択される。その後、従来工法では穴内部に穴埋めインキ又は導電性ペーストを充填した時に、穴表面付近にはみ出した部分を研磨して取り除く工程が必須であったが、本発明の工法では前述のように穴部分以外の樹脂組成物表面への導電性ペーストの付着が無いので、研磨工程を省くことが可能である。支持ベースフィルムを剥離する際離型層も同時に剥れるが、場合によっては剥離層の一部が樹脂組成物層表面に残る場合がある。この場合であっても次の粗化工程で付着していた剥離層を除去することができる。」

キ.「【0011】その後、該樹脂組成物表面を粗化処理し、次いでその上層に導体層をメッキにより形成する。粗化法としては過マンガン酸塩、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等の酸化剤など化学薬品処理の他、バフ、サンドブラスト等の機械的研磨やプラズマエッチング等が挙げられる。このように樹脂組成物表面に凸凹のアンカーを形成した後、無電解、電解メッキ等のメッキにより導体層を形成する。その後、公知慣用のサブトラクティブ法やセミアディティブ法に従って、ビアやスルーホール上にも制約を受けることなく回路を形成することが可能である。また、粗化処理後導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層回路を形成してもよい。以上の工程を必須とした工法により、従来法で必要であったビア及び/又はスルーホールのパターン毎の穴埋め用スクリーン版や、印刷後表面付近にはみだした穴埋めインキや導電性ペーストを表面研磨して取り除くという工程が不要となり、工程短縮、コスト削減が可能となった。」

ク.「【図面の簡単な説明】
【図1】は従来のビルドアップ基板断面である。
【図2】は従来の平滑化工程を上から下に順次示した。
【図3】は本発明の支持ベースフィルム剥離による平滑化とその後メッキ層及び回路形成を含む多層プリント配線板の製造方法の流れを上から下に順次説明した。」

ケ.記載事項クのとおり、図3は「多層プリント配線板の製造方法の流れを上から下に順次説明」するものであり、図3の「パターン形成」と注釈された最下段の図(以下「図3最下図」という。)は、上記製造方法で製造された「多層プリント配線板」を示すものである。
コ.記載事項ウ及び図3によれば、刊行物においては、回路基板(コア基板)の両面に設けられる導体層を「内層回路パターン」と称しているので、当該事項および記載事項キからみて、多層プリント配線板の最外層にパターン形成される回路を「外層回路パターン」と称する。
サ.図3における「コア基板」と「導体層」は、明細書においては「回路基板」と「パターン加工部分」と記載されている(記載事項ウ等参照)ので、以下、同部材については、「回路基板」と「パターン加工部分」と称し、また、図面の上下方向を、多層プリント配線板の上下方向とする。
さらに、回路基板の上下に設けられるパターン加工部分を、「上内層回路パターン」と「下内層回路パターン」、上下内層回路パターンの上下の樹脂層を、「上絶縁層」と「下絶縁層」、さらに、上下絶縁層の上下にパターン形成される回路を、上記サのとおり、「上外層回路パターン」と「下外層回路パターン」と称する。
シ.小径ビアが、上外層回路パターンから下外層回路パターンまでレーザー穴開けにより延伸していることは図3から看取される。また、図3最下図において、図面上下方向をビアの上下方向とした場合、ビアの下側の面は底面と、上側の面は表面といえ、該底面は下外層回路パターンに、同じく表面は上外層回路パターンに、それぞれ接しているといえる。さらに、小径ビアは、上下の内層回路パターンを貫通している。

上記記載事項、認定事項および図示内容を総合して、図3の多層プリント配線板を本願発明に則って整理すると、刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「回路基板と、
回路基板の上面に設けられる上内層回路パターンと下面に設けられる下内層回路パターンと
前記上内層回路パターンに設けられる上絶縁層と、
前記下内層回路パターンに設けられる下絶縁層と、
前記上絶縁層に設けられる上外層回路パターンと、
前記下絶縁層に設けられる下外層回路パターンと、
前記上外層回路パターンから、下外層回路パターンまでレーザー穴開けにより延伸する小径ビアとを備え、
小径ビアは、前記下内層回路パターンから最も遠い前記下絶縁層の表面において底面を有し、前記小径ビアの前記底面において前記下外層回路パターンに接し、前記小径ビアの前記底面と反対側の表面において、前記上外層回路パターンに接し、さらに、前記上内層回路パターンおよび前記下内層回路パターンを貫通する、
多層プリント配線板。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
本願の図9Fと刊行物の図3最下図を参酌しつつ、本願発明と引用発明の各層を対比すると、引用発明の「回路基板」は、その機能・構造からみて、本願発明の「開始絶縁層」に相当し、以下同様に、「下内層回路パターン」は「第1のパターニング導電層」に、「上内層回路パターン」は「第2のパターニング導電層」に、「下絶縁層」は「第1の補完的絶縁層」に、「上絶縁層」は「第2の補完的絶縁層」に、「下外層回路パターン」は「第1の補完的パターニング導電層」に、「上外層回路パターン」は「第2の補完的パターニング導電層」に、「小径ビア」は「導電ビア」に、「多層プリント配線板」は「多層基板コア構造」に、それぞれ相当する。
以上の点からみて、本願発明と引用発明とは、
[一致点]
「開始絶縁層と、
前記開始絶縁層の一の面に設けられる第1のパターニング導電層および前記開始絶縁層の別の面に設けられる第2のパターニング導電層と、
前記第1のパターニング導電層に設けられる第1の補完的絶縁層と、
前記第2のパターニング導電層に設けられる第2の補完的絶縁層と、
前記第1の補完的絶縁層に設けられる第1の補完的パターニング導電層と、
前記第2の補完的絶縁層に設けられる第2の補完的パターニング導電層と、
前記第2の補完的パターニング導電層から、前記第1の補完的パターニング導電層まで延伸する導電ビアと
を備え、
前記導電ビアは、前記第1のパターニング導電層から最も遠い前記第1の補完的絶縁層の表面において底面を有し、前記導電ビア群の前記底面において前記第1の補完的パターニング導電層に接し、前記導電ビアの前記底面と反対側の表面において、前記第2の補完的パターニング導電層に接し、さらに、前記第1のパターニング導電層および前記第2のパターニング導電層を貫通する、
多層基板コア構造。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
導電ビアが、本願発明では、「導電ビア群」であるのに対して、引用発明では、群であるか明らかでない点。
[相違点2]
導電ビアの構造が、本願発明では、「円錐状の構造である」のに対して、引用発明では、構造が明らかでない点。

5.判断
(1)相違点1について
多層プリント配線基板において、ビアを複数設けた配線基板は、引用例を挙げるまでもなく周知の技術事項であるから、引用発明において、小径ビアを複数設けたものとして群とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
引用発明は小径ビアがレーザー穴開けにより形成されるものであるところ、レーザー穴開けによりビアを円錐状の構造とすることは、例えば、特開2006-114741号公報(段落【0036】、図1、8等参照)、国際公開第2007/043683(段落【0027】、図7等参照)に記載されるように、周知の技術事項であるから、引用発明の小径ビアを円錐状とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)作用効果について
本願発明による効果も、引用発明及び周知の技術事項から、当業者が予測し得た程度のものである。

(4)まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6.むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-14 
結審通知日 2015-12-15 
審決日 2015-12-28 
出願番号 特願2013-168698(P2013-168698)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉澤 秀明  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 小関 峰夫
森川 元嗣
発明の名称 基板コア構造及びシステム  
代理人 龍華国際特許業務法人  

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