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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B |
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管理番号 | 1314672 |
審判番号 | 不服2015-10235 |
総通号数 | 199 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-07-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-06-02 |
確定日 | 2016-05-31 |
事件の表示 | 特願2010-152175「表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 2月17日出願公開、特開2011- 34068、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成22年7月2日の出願(優先権主張 平成21年7月6日)であって、平成26年1月22日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年3月27日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月17日付けで最後の拒絶の理由が通知され、これに対して、同年11月25日に意見書及び手続補正書が提出され、平成27年2月25日付けで平成26年11月25日付けの手続補正が却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成27年6月2日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。 第2 平成27年6月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否 1 補正の内容 (1)請求項1について 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、平成26年3月27日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1の 「映像源、及び該映像源から入射した光を制御して観察者側に出射する複数の層を備える光学シートを具備する表示装置であって、 前記光学シートは光を透過可能に形成される光透過部、及び前記光透過部と同じ又は前記光透過部より低い屈折率を有して光を吸収可能に形成される光吸収部がシート面に沿って交互に並列される光学機能シート層を有し、前記光透過部と前記光吸収部との屈折率差は0以上0.06以下であるとともに、前記光学機能シート層の前記観察者側には1層のみ配置されていることを特徴とする表示装置。」 から、次のとおり補正(以下、「補正事項1」という。)された。(下線部は補正箇所である。) 「映像源、及び該映像源から入射した光を制御して観察者側に出射する複数の層を備える光学シートを具備する表示装置であって、 前記光学シートは光を透過可能に形成される光透過部、及び前記光透過部と同じ又は前記光透過部より低い屈折率を有して光を吸収可能に形成される光吸収部がシート面に沿って交互に並列される光学機能シート層を有し、前記光透過部と前記光吸収部との屈折率差は0以上0.06以下であるとともに、前記光学機能シート層の前記観察者側にはハードコート層のみが配置され、該ハードコート層には二次粒径が20μm以下の無機微粒子が分散されていることを特徴とする表示装置。」 (2)請求項2について 本件補正により、特許請求の範囲の請求項2は、平成26年3月27日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項2の 「映像源、及び該映像源から入射した光を制御して観察者側に出射する複数の層を備える光学シートを具備する表示装置であって、 前記光学シートは、光を透過可能に形成される光透過部、及び前記光透過部と同じ又は前記光透過部より低い屈折率を有して光を吸収可能に形成される光吸収部がシート面に沿って交互に並列される光学機能シート層を有し、前記光透過部と前記光吸収部との屈折率差は0以上0.06以下であるとともに、前記光学機能シート層の前記観察者側には少なくとも2層配置され、 前記光学機能シート層の前記観察者側に配置される層はいずれも屈折率が略同一であることを特徴とする表示装置。」 から、次のとおり補正(以下、「補正事項2」という。)された。(下線部は補正箇所である。) 「映像源、及び該映像源から入射した光を制御して観察者側に出射する複数の層を備える光学シートを具備する表示装置であって、 前記光学シートは、光を透過可能に形成される光透過部、及び前記光透過部と同じ又は前記光透過部より低い屈折率を有して光を吸収可能に形成される光吸収部がシート面に沿って交互に並列される光学機能シート層を有し、前記光透過部と前記光吸収部との屈折率差は0以上0.06以下であるとともに、前記光学機能シート層の前記観察者側には少なくとも2層配置され、該2層のうちの1層はハードコート層であり、該ハードコート層には二次粒径が20μm以下の無機微粒子が分散されており、 前記光学機能シート層の前記観察者側に配置される層はいずれも屈折率が略同一であることを特徴とする表示装置。」 2 補正の適否 (1)請求項1について 補正事項1は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である光学機能シート層の観察者側に「1層のみ配置され」る層について、「ハードコート層」であり、「該ハードコート層には二次粒径が20μm以下の無機微粒子が分散」されているとの限定を付加するものである。 したがって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明1」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。 ア 刊行物の記載事項 本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-189867号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付した。) (ア)「【請求項1】 フィルターベースと、 前記フィルターベースの一面に形成され、透明樹脂材質の基盤と前記基盤の一面に平行に配列された多数の楔形ブラックストライプとを有する外光遮蔽層と、 を備えることを特徴とするディスプレイ装置用フィルター。 ・・・(中略)・・・ 【請求項14】 前記楔形ブラックストライプは、前記基盤より屈折率が低く、前記基盤と前記楔形ブラックストライプの屈折率の差異は、0.05以下であることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置用フィルター。 ・・・(中略)・・・ 【請求項16】 前記ディスプレイ装置用フィルターは、明室で250:1以上の明暗対比比を有することを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置用フィルター。 ・・・(中略)・・・ 【請求項20】 互いに対向配置されるように結合する透明な前面基板及び背面基板と、前記前面基板と前記背面基板との間に多数のセルと、を含むパネルアセンブリーと、 前記前面基板と対向するように配置された請求項1乃至請求項19のうちのいずれか一項に記載のディスプレイ装置用フィルターと、 を含むことを特徴とするディスプレイ装置。」 (イ)「【0001】 本発明は、ディスプレイ装置用フィルター及びこれを含んだディスプレイ装置に係り、より詳しくは、楔形ブラックストライプが備えられた外光遮蔽部を用いて可視光線の透過率及び明室でのコントラストが向上できるディスプレイ装置用フィルター及びこれを含んだディスプレイ装置に関するものである。 【背景技術】 ・・・(中略)・・・ 【0003】 一般に、PDP装置は、既存のディスプレイ装置を代表するCRTに比べて大型化及び薄型化を同時に満足できて次世代ディスプレイ装置として脚光を浴びている。こうしたPDP装置は、ガス放電現象を用いて画像を表示することであって、表示容量、輝度、コントラスト、残像、視野角などの各種表示能力に優れる。 【0004】 PDP装置は、電極に印加される直流電圧又は交流電圧によって電極の間のガスで放電が発生し、ここで随伴される紫外線の放射によって蛍光体を励起させて発光する。 【0005】 しかしながら、PDP装置は、その駆動特性上電磁波及び近赤外線の放出量が多く、蛍光体の表面反射が高いだけではなく、ネオン(Ne)、封入ガスのヘリウム(He)やキセノン(Xe)から放出されるオレンジ光によって色純度が陰極線管に及ぶことができない短所がある。 【0006】 従って、PDP装置から発生される電磁波及び近赤外線によって人体に有害な影響を及ぼし、無線電話機やリモコンなどの精密機器の誤動作を誘発することもある。こうしたPDP装置を使用するためには、PDP装置から放出される電磁波と近赤外線の放出を所定値以下に抑制することが要求されている。このため、電磁波及び近赤外線を遮蔽すると同時に反射光を減少させ、色純度を向上させるため電磁波遮蔽、近赤外線遮蔽、光表面反射防止、色純度改善などの機能を有するPDPフィルターを採用している。 【0007】 こうしたPDP装置は、ガス放電現象が起こる放電セルを含むパネルアセンブリーと、電磁波及び近赤外線を遮蔽するPDPフィルターと、から構成される。PDPフィルターは、パネルアセンブリーの前面部に装着されるので透明性も同時に満足しなければならない。 【0008】 このような従来技術によるPDP装置で、外部が明るい条件すなわち、明室条件では、外部環境光がPDPフィルターを通過してパネルアセンブリー内に流入できる。こうした場合、パネルアセンブリー内の放電セルから発生された入射光と外部からPDPフィルターを通過して流入された外部環境光の重畳が発生する。その結果、明室条件でコントラストが低下されてPDP装置の画面表示能力が劣悪になる。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本発明の技術的課題は、PDPフィルターの構造を改善して輝度及び明室条件でのコントラストを向上させることができるディスプレイ装置用フィルターを提供するところにある。」 (ウ)「【発明の効果】 【0016】 前述したように本発明のディスプレイ装置用フィルター及びこれを含むディスプレイ装置によれば、次の通りの効果が一つ或いは二以上ある。 【0017】 第1の効果は、PDPフィルターに楔形ブラックストライプを形成し、楔形ブラックストライプの傾斜面での全反射を用いて各放電セルから発生した可視光線を集束して射出させることによって光の透過率を高め、その結果PDP装置の輝度を向上させることである。 【0018】 第2の効果は、PDPフィルターに楔形ブラックストライプを形成し、楔形ブラックストライプを光吸収物質を使用して形成することによって、外部環境光がパネルアセンブリーの内部に流入されることを防止する明室条件でPDP装置の明暗対比比を向上させることが可能なことである。」 (エ)「【0022】 図1は、本発明の一実施形態に係るPDP装置を示す分解斜視図である。 図1に示すように、PDP装置100は、ケース110と、ケース110の上部を覆うカバー150と、駆動回路基板120と、ガス放電現象が起こる放電セルを含むパネルアセンブリー130と、PDPフィルター140と、を備える。PDPフィルター140は、透明基板上に導電性に優れた材料で形成された導電層が備えられ、この導電層はカバー150を通じてケース110に接地される。すなわち、パネルアセンブリー130から発生された電磁波が視聴者に到達する前に、これをPDPフィルター140の導電層を通じてカバー150とケース110に接地させる。」 (オ)「【0024】 図2は、本発明の一実施形態に係るPDPフィルターを示す断面図である。 図2に示すように、PDPフィルター200は、フィルターベース270及び外光遮蔽層230を含む。 【0025】 フィルターベース270は、透明基板210、電磁波遮蔽層220及び反射防止層250が順序に関係なく積層されて形成される。以下、本発明の実施形態では、電磁波遮蔽機能、反射防止機能に対応する層がそれぞれ別個のこととして分離して説明するが、本発明はこれに限定されることではない。すなわち、本発明の一実施形態によるフィルターベース270は、一つ又はその以上の層から構成でき、各層は電磁波遮蔽機能、反射防止機能又はこれらを組み合わせた機能を有することができる。また、フィルターベース270は、前述した電磁波遮蔽機能、反射防止機能又はこれらを組み合わせた機能を全て有しても良く、このうちのいずれか一つのみを有しても良い。 【0026】 PDPフィルター200は、フィルターベース270の一面に外光遮蔽層230を備えることができる。図2に示す外光遮蔽層230は、フィルターベース270のパネルアセンブリー側の面、すなわちPDPフィルター200がPDP装置に装着されたときに視聴者側と反対側面に配置されているが、本発明はこれに限定されなく、フィルターベース270の他面に外光遮蔽層230が配置される場合にも同一な作用及び効果を得ることができる。 【0027】 外光遮蔽層230は、支持体232、支持体232の一面に形成された基盤(matrix)234及び基盤234内に形成されて外部からパネルアセンブリーへ流入される外部環境光を遮断する多数の楔形ブラックストライプ236を含む。 【0028】 ここで、楔形ブラックストライプ236が形成された基盤234は、直接フィルターベース270に形成しても良いが、図2に示すように支持体232に基盤234を形成した後、フィルターベース270と結合できる。支持体232は、楔形ブラックストライプ236が形成された基盤234を支持する役割を果たす。図2に示す実施形態では、基盤234とフィルターベース270の一面が支持体232を媒介に結合しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、支持体232は、基盤234を支持する役割を目的とするので、外光遮蔽層230がフィルターベース270の他面に配置される場合、基盤234とフィルターベース270が直接結合しても良い。 【0029】 本発明の一実施形態において、支持体232は紫外線透過性を有する透明な樹脂フィルムが好ましい。支持体232の材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PolyEthylene Terephthalate;PET)、ポリカーボネート(PolyCarbonate;PC)、ポリ塩化ビニール(PVC)などが使用できる。勿論、支持体232の代わりにフィルターの固有機能を有した膜、例えば、反射防止層250又は電磁波遮蔽層220などを使用できる。 【0030】 そして、楔形ブラックストライプ236は、断面が楔形状であり、パネルアセンブリー(図示せず)に対向する基盤234の一面に並列に形成されて外部環境光がパネルアセンブリーの内部に流入されることを防止する役割を果たす。 【0031】 基盤234は、紫外線硬化性樹脂で形成され、楔形ブラックストライプ236は光を吸収できる黒色無機物、黒色有機物及び黒色金属のうち少なくとも1つから形成できる。また、基盤234は、透明樹脂材質からなる。」 (カ)「【図2】 ![]() 」 (キ)「【0035】 図3は、図2の外光遮蔽層を拡大した断面図である。図3に示すように、外光遮蔽層230は、支持体232、支持体232の一面に形成された基盤234及び基盤234の一面に平行に配列された多数の楔形ブラックストライプ236を含む。ここで、楔形ブラックストライプ236は、基盤234の外部に露出された底面236aと底面236aから基盤234内に楔形溝を成す傾斜面236bとを含み、傾斜面236bは外部環境光320を吸収するか、或いはパネルアセンブリーからの入射光310を視聴者側に全反射する役割を果たす。 【0036】 詳細に後述するが、図3に示す楔形ブラックストライプ236の断面で底面236aに比べて傾斜面236bが非常に長いので楔形ブラックストライプ236の底面236aがパネルアセンブリー方向に向くか、或いは視聴者方向に向くかに関係なく、楔形ブラックストライプ236の形状と構成物質によって本発明のPDPフィルター200は、従来のPDPフィルターに比べて可視光線についての高い透過率と高い明暗対比比(contrast ratio)とを有することができる。」 (ク)「【図3】 ![]() 」 (ケ)「【0039】 楔形ブラックストライプ236は、光を吸収する物質より成っているので、図3に示されたように、外部環境光320は外光遮蔽層230に垂直に入射されない以上殆ど大部分楔形ブラックストライプ236の傾斜面236bに吸収される。」 (コ)「【0045】 図2及び図3を参照すれば、前述したように、楔形ブラックストライプ236は、基盤234の外部に露出された底面236aと底面236aから基盤234内に楔形溝を成す傾斜面236bを含み、底面236aはパネルアセンブリーから放出される入射光316を吸収する役割を果たし、傾斜面236bは、パネルアセンブリーから放出される入射光314を視聴者側に全反射するか、或いは外部環境光320を吸収する役割を果たす。 【0046】 先ず、楔形ブラックストライプ236の底面236aが担う役割を調べれば、パネルアセンブリーの放電セルから放出される入射光310は、外光遮蔽層230について殆ど垂直方向に入射され、一部の入射光316は楔形ブラックストライプ236の底面236aに吸収される。 【0047】 一般に、PDP装置は、可視光線についての高い透過率と高い明暗対比比を有することが好ましい。ここで、明暗対比比は次の式1のように示すことができる。 【0048】 明暗対比比=(白色光の輝度+反射光の輝度)/(黒色光の輝度+反射光の輝度)」 (サ)「【0051】 全反射は、光が光学的に密の媒質(屈折率が大きい物質)から疎の媒質(屈折率が小さい物質)に入射するとき、入射角がいずれか特定角度(臨界角)以上であれば、その境界面で光が全部反射されることをいう。したがって、楔形ブラックストライプ236は、光を吸収する物質から構成されるが、基盤234より屈折率が低い楔形ブラックストライプ236を使用して入射光310を全反射させることによってPDP装置の光透過率を高めることができる。 【0052】 本発明の一実施形態において、基盤234と楔形ブラックストライプ236の屈折率の差異は、0.05以下であることが好ましい。例えば、基盤234の屈折率が1.56であり、楔形ブラックストライプ236の屈折率が1.55である場合、全反射が起こる臨界角は、約83.51°(=arcsin(1.55/1.56))であり、基盤234の屈折率が1.56であり、楔形ブラックストライプ236の屈折率が1.51である場合、臨界角は約75.45°(=arcsin(1.51/1.56))である。したがって、入射光314は、傾斜面236bについての入射角αが約75.45°以上である場合、入射光314は傾斜面236bで全反射されて視聴者側に向いてPDPフィルター200の透過率を高める。 【0053】 また、基盤234と楔形ブラックストライプ236の屈折率の差異が0.05より大きければ、全反射が起こる臨界角が小さくなり、外部環境光320も傾斜面236bで全反射されてパネルアセンブリーに流入されるので明暗対比比が低まれることができる。すなわち、図3に示すように、蛍光灯、日光などのような外部環境光320の光源は一般にPDP装置より上方になる。したがって、外部環境光320の傾斜面236bについての入射角βは90°より相当に小さい値を有する。 【0054】 基盤234と楔形ブラックストライプ236の屈折率の差異が0.05より大きくなれば、臨界角が小さくなり、したがって小さい入射角βを有する外部環境光320が楔形ブラックストライプ236に吸収されず全反射されてパネルアセンブリーに流入される確率が高くなる。式(1)によれば、明暗対比比は反射光の輝度についての関数であるが、反射光とは、外部環境光320がパネルアセンブリーに流入された後反射された光を含む。したがって、外部環境光320が楔形ブラックストライプ236に吸収されず全反射されてパネルアセンブリーに流入されて反射が起こる場合反射光の輝度が増加され、黒色光と白色光について同一な反射光が生成されても分母に位置する‘反射光の輝度’によって明暗対比比は急激に低くなる。」 (シ)「【0082】 このように形成された本発明のPDPフィルター200は、可視光線波長帯で50%以上の透過率を有しながら、明室で250:1以上の明暗対比比を有することができる。」 (ス)「【0092】 こうしたパネルアセンブリー600の駆動は、広くアドレス放電のための駆動と維持放電のための駆動に分けられる。アドレス放電は、アドレス電極640と一つの維持電極615との間で起こり、この際壁電荷が形成される。維持放電は、壁電荷が形成された放電セル660に位置する二つの維持電極615の間の電位差によって起こる。この維持放電時に放電ガスから発生される紫外線によって放電セル660の蛍光体層655が励起されて可視光が発散され、この可視光が前面基板610を通じて射出されながら視聴者が認識できる画像を形成する。」 (セ)「【0094】 図6A及び図6Bに示すように、PDPフィルター200は、パネルアセンブリー600の前面基板610の上面(図6A、Bでは右側)に配置される。PDPフィルター200は、図6Aに示すようにパネルアセンブリー600の前面基板610と離隔されて配置されても良く、接触して配置されても良く、またパネルアセンブリー600とPDPフィルター200との間に異物質が流入されることなどのような副作用を防止するか、或いはPDPフィルター200の自体の強度を補強するため図6Bに示すように前面基板610と接着剤又は粘着剤690に結合できる。 【0095】 PDPフィルター200には、外部環境光がパネルアセンブリー600内に流入されることを防止するため外光遮蔽層230が形成されている。外部環境光は、主に外光遮蔽層230によって吸収されるので、外部環境光が前面基板610を通過して再反射されることを防止できる。したがって、明室条件でPDP装置の明暗対比比を向上させることが可能である。 【0096】 また、楔形ブラックストライプ236の傾斜面236b(図3参照)で起こる全反射を用いて放電セル660から発生した可視光線を集束させて外部に射出させることによって、光の損失減らすことができ、その結果PDP装置の輝度を向上させることが可能である。 【0097】 図6Bに示すように、楔形ブラックストライプ236のピッチP2は、パネル一つの放電セル660に多数の楔形ブラックストライプ236を配置することによって、入射光を均一に分散させることができ、効率的に外部環境光を吸収できる。」 そうすると、刊行物には、【0022】段落以降に一実施形態が記載されており、基盤、楔形ブラックストライプの屈折率を所定の値(【0052】段落)とした以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。(段落番号を併記する。) 「【0022】ガス放電現象が起こる放電セルを含むパネルアセンブリーと、PDPフィルターと、を備えるPDP装置であって、 【0092】放電セルの蛍光体層が励起されて可視光が発散され、この可視光が前面基板を通じて射出されながら視聴者が認識できる画像を形成し、 【0046】、【0051】PDP装置は楔形ブラックストライプを使用して放電セルから放出される入射光を全反射させることによって光透過率を高め 【0024】PDPフィルターは、フィルターベース及び外光遮蔽層を含み、 【0026】PDPフィルターは、フィルターベースの一面に外光遮蔽層を備え、 【0027】外光遮蔽層は、支持体、支持体の一面に形成された基盤及び基盤内に形成される多数の楔形ブラックストライプを含み、 【0030】楔形ブラックストライプは、基盤の一面に並列に形成され 【0031】楔形ブラックストライプは光を吸収できる黒色無機物、黒色有機物及び黒色金属のうち少なくとも1つから形成でき、基盤は透明樹脂材質からなり 【0046】、【0051】楔形ブラックストライプは、放電セルから放出される入射光を全反射させることによってPDP装置の光透過率を高め 【0027】楔形ブラックストライプは、外部からパネルアセンブリーへ流入される外部環境光を遮断し 【0051】前記楔形ブラックストライプは、基盤より屈折率が低く、 【0052】基盤の屈折率が1.56であり、楔形ブラックストライプの屈折率が1.55であり、 【0025】フィルターベースは、透明基板、電磁波遮蔽層及び反射防止層を含む、 【0022】PDP装置。」が記載されている。 イ 対比 (ア)映像源 引用発明の「パネルアセンブリー」は、「ガス放電現象が起こる放電セルを含」み、「放電セルの蛍光体層が励起されて可視光が発散され、この可視光が前面基板を通じて射出されながら視聴者が認識できる画像を形成」する。したがって、引用発明の「パネルアセンブリー」は、補正発明1の「映像源」に相当する。 (イ)光学機能シート層 引用発明の「外光遮蔽層」は、「支持体、支持体の一面に形成された基盤及び基盤内に形成される多数の楔形ブラックストライプを含」み、「楔形ブラックストライプ」は「光を吸収できる黒色無機物、黒色有機物及び黒色金属のうち少なくとも1つから形成」され、「基盤」は「透明樹脂材質からな」る。引用発明の「楔形ブラックストライプは、放電セルから放出される入射光を全反射させることによってPDP装置の光透過率を高め」、「外部からパネルアセンブリーへ流入される外部環境光を遮断し」、「前記楔形ブラックストライプは、基盤より屈折率が低く」、「基盤の屈折率が1.56であり、楔形ブラックストライプの屈折率が1.55」である。 引用発明の「基盤」は透明樹脂材質からなり、「楔形ブラックストライプ」は、光を吸収する物質から構成され、引用発明の「基盤」及び「楔形ブラックストライプ」は、それぞれ補正発明1の「光透過部」及び「光吸収部」に相当する。 引用発明の「基盤内に形成される多数の楔形ブラックストライプ」は、「基盤の一面に並列に形成され」たものである。ここで、引用発明の「基盤の一面」は、補正発明1の「シート面」に相当するから、引用発明の「基盤」及び「楔形ブラックストライプ」は、「シート面に沿って交互に並列される」ものといえる。 引用発明の「楔形ブラックストライプ」は、「基盤より屈折率が低く」、引用発明の「基盤の屈折率が1.56であり、楔形ブラックストライプの屈折率が1.55」であるから、補正発明1の「光透過部と同じ又は光透過部より低い屈折率」を有する「光吸収部」であり、光透過部と光吸収部との「屈折率差は0以上0.06以下」とする各部の屈折率の要件を満たす。 したがって、引用発明の「外光遮蔽層」は、補正発明1の「光学機能シート層」に相当するとともに、「光を透過可能に形成される光透過部、及び前記光透過部と同じ又は前記光透過部より低い屈折率を有して光を吸収可能に形成される光吸収部がシート面に沿って交互に並列される」ものといえる。 (ウ)光学シート 引用発明の「PDPフィルター」は、「フィルターベース及び外光遮蔽層」を具備している。 上記(イ)の通り、引用発明の「外光遮蔽層」は、補正発明1の「光学機能シート層」に相当する。 引用発明の「楔形ブラックストライプは、放電セルから放出される入射光を全反射させることによってPDP装置の光透過率を高め」ているから、引用発明の「楔形ブラックストライプ」を含む「外光遮蔽層」を備える「PDPフィルター」は、「映像源から入射した光を制御して観察者側に出射している」。また、引用発明の「PDPフィルターは、フィルターベース及び外光遮蔽層を含」んでいるから、「複数の層を備える」ものである。 したがって、引用発明の「PDPフィルター」と、補正発明1の「光学シート」は、「映像源から入射した光を制御して観察者側に出射する複数の層を備え」、「光学機能シート層を有」する点で共通する。 (エ)表示装置 引用発明の「PDP装置」は、「ガス放電現象が起こる放電セルを含むパネルアセンブリーと、PDPフィルター」を備えている。 上記(ア)及び(イ)の通り、引用発明の「パネルアセンブリー」及び「外光遮蔽層」は、補正発明1の「映像源」及び「光学機能シート層」に相当する。 したがって、引用発明の「PDP装置」は、補正発明1の「表示装置」のうち、「映像源」及び上記(ウ)に記載の共通点を有する「光学シート」を具備する点で共通する。 したがって、補正発明1と引用発明とは 「映像源、及び該映像源から入射した光を制御して観察者側に出射する複数の層を備える光学シートを具備する表示装置であって、 前記光学シートは光を透過可能に形成される光透過部、及び前記光透過部と同じ又は前記光透過部より低い屈折率を有して光を吸収可能に形成される光吸収部がシート面に沿って交互に並列される光学機能シート層を有し、前記光透過部と前記光吸収部との屈折率差は0以上0.06以下である、表示装置」 の点で一致している。 他方、補正発明1と引用発明は、以下の点で相違する。 相違点:補正発明1において、「光学シート」は、「光学機能シート層の前記観察者側にはハードコート層のみが配置され」、「ハードコート層には二次粒径が20μm以下の無機微粒子が分散されている」のに対し、引用発明には、光学シートにハードコート層を設けること、及び光学機能シート層の観察者側にはハードコート層のみ設けることなどは明記されておらず、ハードコート層の組成についても明記されていない点 ウ 判断 上記相違点について検討する。 引用発明において、光学機能シート層の観察者側にハードコート層のみ設けることは記載されておらず、光学機能シート層の観察者側にハードコート層のみ設けることが、映像光のコントラストをさらに向上するために特に適していることの示唆もない。さらに、その他の文献を参照しても、それらの事項が開示されていない。 したがって、光学機能シートには様々な機能層が設けられるが、引用発明において光学機能シートの層構成を、光学機能シート層の観察者側にハードコート層のみ設けるようにすることについて動機づけがない。また、その結果として、補正発明1は、「観察者に提供される映像光のコントラストをさらに向上させることが可能な光学シートを備える表示装置とすることができる。」(段落【0013】)という効果を奏しており、この効果は当業者といえども、技術常識や刊行物の記載全体を勘案しても、容易に想到し得たものともいえない。 したがって、補正発明1は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 (2)請求項2について 補正事項2は、請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である光学機能シート層の観察者側に「少なくとも2層配置され」る層について、「該2層のうちの1層はハードコート層」であり、「該ハードコート層には二次粒径が20μm以下の無機微粒子が分散」されているとの限定を付加するものである。 したがって、補正前の請求項2に記載された発明と補正後の請求項2に記載された発明(以下、「補正発明2」という。)の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 補正発明2も、補正発明1と同様に光学機能シート層の観察者側に所定の「ハードコート層」を設けると共に、「前記光学機能シート層の前記観察者側に配置される層はいずれも屈折率が略同一である」という構成を具備し、上記補正発明1と同様に引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。 よって、本件補正の補正事項2は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 (3)その余の補正事項について 本件補正のその余の補正事項(請求項3並びに【0008】、【0009】、【0011】及び【0012】)についても、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。 3 むすび 本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。 第3 本願発明 本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1-3に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものである。 そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-05-18 |
出願番号 | 特願2010-152175(P2010-152175) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G02B)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 居島 一仁、大森 伸一 |
特許庁審判長 |
樋口 信宏 |
特許庁審判官 |
鉄 豊郎 多田 達也 |
発明の名称 | 表示装置 |
代理人 | 山本 典輝 |