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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04M
管理番号 1314890
審判番号 不服2015-21766  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-08 
確定日 2016-06-07 
事件の表示 特願2014-120849「携帯電話」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月 4日出願公開、特開2014-161129、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年6月28日に出願した特願2006-178600号の一部を、平成22年12月24日に新たな出願とした特願2010-288743号の一部を平成26年6月11日に新たな特許出願としたものであって、平成27年2月6日付けで拒絶理由(以下、「原査定の拒絶理由」という。)が通知され、同年4月9日付けで手続補正がされ、同年8月31日付けで拒絶査定(以下、「拒絶査定」という。)がなされ、これに対し、同年12月8日に拒絶査定不服の審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1-3に係る発明は、平成27年4月9日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定されるものと認められる。

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
着信が発生すると、
該着信を含む過去所定時間内における当該着信に係る発信者からの着信回数が、着信時に動作しているアプリケーション毎に対応して設定されている所定の着信回数未満である場合には着信通知の実施を制限し、
該着信を含む過去所定時間内における当該着信に係る発信者からの着信回数が、前記所定の着信回数以上である場合には前記着信通知を実施し、当該着信以降の前記発信者以外からの着信は前記所定の着信回数まで着信通知の実施を制限する
携帯電話。」

第3 原査定の理由について

1.原査定の理由の概要

原査定の拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

「『理由1』
・・・(省略)・・・

『理由2』
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項1-3
・引用文献1-3
・備考

[請求項1について]
所定時間中の同一発信者からの着信回数が所定回数未満の場合は、消音待受モードとして着信に対する報知自体を停止すること、所定時間中の同一発信者の着信回数が所定回数以上の場合、所定回数目の着信の際にその旨を報知することは周知技術にすぎず、引用文献1の段落【0004】、【0013】、【0027】-【0043】などに記載されている。

[請求項2について]
・・・(省略)・・・

[請求項3について]
・・・(省略)・・・

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2002-199063号公報
・・・(省略)・・・ 」

また、拒絶査定の備考として、以下の記載がある。

「●理由2(特許法第29条第2項)について
・請求項 1-3
・引用文献等 1-4
[請求項1について]
先に通知した引用文献1には、着信が発生すると、該着信を含む過去所定期間中に当該着信にかかる発信者からの着信回数が、所定回数未満である場合には報知の実施を制限し、該着信を含む過去所定期間中の当該着信にかかる発信者からの着信回数が、前記所定回数以上である場合には、その旨報知し、当該着信以降の前記発信者以外からの着信は前記所定回数まで報知の実施を制限する通信端末装置、が記載されている(特に、段落[0004]、[0013]、[0027]-[0043]参照されたい)。

平成27年4月9日付け手続補正書による補正後の請求項1に係る発明と、引用文献1に記載された発明とを対比すると、前者は、着信通知の実施判定に利用される所定の着信回数が着信時に動作しているアプリケーション毎に対応して設定されている特徴を有するが、後者は、当該特徴を有しない点で、相違する。

上記相違点について検討する。引用文献4に記載されているように、着信通知の実施判定を行う携帯端末装置において、着信時に起動中のアプリケーション毎に設定された判定基準を利用して着信通知の実施判定を行う技術的手段(特に、段落[0014]、[0042]-[0052]を参照されたい)は、当業者にとって周知の技術である。
してみれば、引用文献1記載の発明において、報知の実施判定に利用する所定回数を、アプリケーション毎に設定し、着信時に起動中のアプリケーション毎に対応して設定されている当該所定回数に基づいて、報知の実施判定を行うよう構成することに、格別の困難性を見いだすことはできない。

・・・(省略)・・・

よって、補正後の請求項1-3に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2-4に記載された周知技術に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2002-199063号公報
・・・(省略)・・・
4.国際公開第2006/040794号(周知技術を示す文献;新たに引用された文献) 」

2.当審の判断
(1)引用文献1の記載事項

引用文献1には、「通信端末装置」(発明の名称)として、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、着信報知についての制御が可能な通信端末装置に関する。特に携帯型の通信端末装置に関する。」(2頁左欄)

イ 「【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面に従って本発明の各実施形態に係る通信端末装置について説明する。通信端末装置としては、携帯電話機、PHS(Personal Handy Phone)、PDA(Personal Digital Assistants)等の端末装置が考えられるが、ここでは、PHSを例にとって説明する。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。」(3頁左欄)

ウ 「【0027】図3は、第1実施形態に係るPHSにおいて、音楽再生中に着信があった際の動作を説明するフローチャートである。第1実施形態に係るPHS1は、音楽再生中に同一発信者から所定回数(X回)以上の着信があった場合、所定回数目の着信の際にその旨を報知する。
【0028】このフローチャートを実現する着信報知制御手段は、着信に対して着信音を発生させる通常待受モード、着信に対して着信音を発生させない消音待受モード、の何れかにPHS1を設定する待受モード切替手段と、音楽再生手段による音楽の再生中はPHS1を消音待受モードに自動的に設定する消音待受モード設定手段と、音楽再生手段による音楽の再生中に同一発信者から所定回数以上の着信があった場合、所定回数目の着信の際にその旨を報知する現着信報知手段と、上記した所定回数について設定することが可能な着信回数設定手段と、を含んでいる。因みに、ここで述べる手段とはソフトウエアプログラム及びソフトウエアプログラムを実現するためのハードウエアのことを示すものとする。
【0029】ステップ100で音楽再生手段により音楽を再生すると、ステップ101では、消音待受モード設定手段により待受モード切替手段に指示され、PHS1は消音待受モードに切り替えられる。次に進んだステップ102では着信があったかどうかについて監視される。着信が検出されるとステップ103へ進み、この着信が発信者番号情報を含むものであるかどうかについて判断される。発信者番号情報を含むものであった場合にはステップ104へ進み、ステップ104ではステップ103で得た発信者の発信者番号情報を記憶する。
【0030】ステップ105では、ステップ102で受けた着信が音楽再生中における1回目の着信であるかどうかについて判断される。その着信が音楽再生中における1回目の着信であった場合(即ち、この時点での着信回数を表すカウンタの値が0であった場合)、ステップ106へと進む。ステップ106では、この着信が終了したかどうかを監視される。着信が終了している場合にはステップ107へ進み、ここでは更に音楽再生が終了したかどうかについて監視している。音楽再生が終了するとステップ108へ進み、カウンタがリセットされ、更にステップ109へ進みPHS1は通常待受モードへと設定が戻される。ステップ107で音楽再生が終了していなかった場合には、ステップ110へ進みここで着信回数が+1カウントアップされた後ステップ102へと戻る。」(4頁右欄?5頁左欄)

エ 「【0033】また、上記したステップ105で、その着信が音楽再生中2回目以降の着信であった場合、ステップ112へと進み、更にその着信が同じ発信者からの着信であったかどうかについて判断される。異なる発信者からの着信であった場合にはステップ106へ進み、同じ発信者からの着信であった場合にはステップ113へ進む。ステップ113では、更にその着信回数がユーザーが着信回数設定手段により予め設定してあった回数Xを超えたかどうかについて判断される。回数Xを超えていない場合には、ステップ106へ進み、超えている場合にはステップ114へ進む。ステップ114から先の処理については前記した通りである。」(5頁右欄)

上記引用文献1のア?エの各記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、

a 上記摘記事項ウの【0027】の「図3は、第1実施形態に係るPHSにおいて、音楽再生中に着信があった際の動作を説明するフローチャートである。第1実施形態に係るPHS1は、音楽再生中に同一発信者から所定回数(X回)以上の着信があった場合、所定回数目の着信の際にその旨を報知する。」と、上記摘記事項ウの【0029】の「ステップ100で音楽再生手段により音楽を再生すると、ステップ101では、消音待受モード設定手段により待受モード切替手段に指示され、PHS1は消音待受モードに切り替えられる。」と、同エの【0033】の「同じ発信者からの着信であった場合にはステップ113へ進む。ステップ113では、更にその着信回数がユーザーが着信回数設定手段により予め設定してあった回数Xを超えたかどうかについて判断される。・・(中略)・・超えている場合にはステップ114へ進む。」の各記載とそれを示す図3から、ステップ113の「着信回数」が「消音待受けモードに設定されてから当該着信までの間に同じ発信者からの着信回数」であることは明らかである。
そしてステップ115の「着信の通知」は「消音待受けモードに設定されてから当該着信までの間に同じ発信者からの着信回数が所定回数以上であった場合」であるから、「消音待受けモードに設定されてから当該着信までの間に同じ発信者からの着信回数が、予め設定してあった回数以上であった場合着信を報知し」といえる。
逆に、ステップ113で「No」の場合、ステップ115の「着信の報知」がなされないことは明らかであるから、「消音待受けモードに設定されてから当該着信までの間に同じ発信者からの着信回数が予め設定してあった回数より少ない場合着信を報知せず、」といえる。

b 上記摘記事項エの【0033】の「また、上記したステップ105で、その着信が音楽再生中2回目以降の着信であった場合、ステップ112へと進み、更にその着信が同じ発信者からの着信であったかどうかについて判断される。異なる発信者からの着信であった場合にはステップ106へ進み、」の記載と図3(特に、ステップ112)、並びに上記aの検討の結果も踏まえると、「異なる発信者からの着信は、予め設定してあった回数まで着信を報知しない」といえる。

以上より、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認める。

(引用発明1)
「着信があった場合、
消音待受けモードに設定されてから当該着信までの間に同じ発信者からの着信回数が、予め設定してあった回数より少ない場合着信を報知せず、消音待受けモードに設定されてから当該着信までの間に同じ発信者からの着信回数が、予め設定してあった回数以上であった場合着信を報知し、
異なる発信者からの着信は、予め設定してあった回数まで着信を報知しない、
PHS。」

(2)引用文献4の記載事項
引用文献4には、「着信通知プログラム、着信方法及び携帯端末装置」(発明の名称)として、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「[0001] 本発明はメール等のネットワークからの情報が着信した際に画面上に着信通知を表示する着信通知プログラム、着信通知方法及び携帯端末装置装置に関し、特に、起動中のアプリケーションの画像表示に対し適切に着信通知を表示する着信通知プログラム、着信通知方法及び携帯端末装置装置に関する。」(「装置装置」は「装置」の誤記と認める。)(1頁)

イ 「[0006] しかしながら、このような従来の着信通知の表示方法にあっては、図1(A)の場合、画面隅に表示するピクト102が小さくユーザがメール着信に気づきにくいという難点がある。また図1(B)の場合には、ユーザがメールを書いている最中やゲームを行っている最中にメールが着信すると、アプリケーション画面100の前面に着信通知メッセージ104が表示されて一時的に見えなくなり、ユーザ操作が中断されるという問題がある。」(1?2頁)

ウ 「[0009] 本発明は、アプリケーション起動中の着信通知の画面表示を、アプリケーションの使い方に応じて最適な表示状態に動的に変化させる着信通知プログラム、着信通知方法及び携帯端末装置を提供することを目的とする。」(2頁)

エ 「[0013] 判定ステップは、キー入力状態の判定基準を予め設定し、検出されたキー入力状態と判定基準を比較してアプリケーション画面を優先表示させるか着信通知を優先表示させるかを判定する。
[0014] また判定ステップは、判定基準をアプリケーション毎に設定し、起動中のアプリケーシヨンに対応した判定基準を取得してキー入力状態を判定するようにしても良い。」(3頁)

オ 「[0025] 図2は本発明による着信通知機能を備えた携帯電話のブロック図である。図2において、携帯電話10は制御ボード12、複数のキー15を備えたキー入力部14、カラー表示可能な液晶ディスプレイユニット16で構成される。」(5頁)

カ 「[0031] キー入力状態判定部42は、キー検出部40から得られたキー入力状態につきアプリケーシヨン画面を優先表示させるか、着信通知を優先表示させるかを判定する。キ一入力状態の判定は、キー判定基準設定部44により設定された判定基準に基づいて行なわれる。
[0032] 例えばキー検出部40からキー入力状態としてキー入力の時間間隔が与えられた場合、キー判定基準設定部44は判定基準時間として、例えば5秒を設定しており、キー入力の時間間隔が5秒以内であればキー入力頻度は高いものと判断し、アプリケーシヨン画面の優先表示を判定する。
[0033] これに対し、キー入力の時間間隔がキー判定基準間隔5秒を超えていた場合にはキー入力の頻度は低いもの判断し、着信通知の優先表示を判定する。ここでキー判定基準設定部44による判定基準はアプリケーション実行環境20に設けているアプリケーション毎に定めている。」(6頁)

キ 「[0034] 図3(A)はキー判定基準設定部44で使用する判定基準テーブル52の説明図である。判定基準テーブルはアプリケーション名54とアプリケーション優先のキー入力判定基準56を設定している。例えば、アプリケーション名54としては例えばゲーム、メモ帳、ブラウザが設定され、着信表示優先のキー入力判定基準としては、ゲームについては5秒、間キー入力、メモ帳については10秒間キー入力、ブラウザについては15秒間キー入力を設定している。」(6頁)

ク 「[0039] 図4は図2の携帯電話10におけるアプリケーション起動中の着信表示の説明図である。図4(A)はキー入力状態判定部42でアプリケーション画面の優先表示を判別した場合であり、液晶ディスプレイユニット16の画面全体にわたり起動中のアプリケーシヨンに対応したアプリケーション画面66を表示しており、この状態でメール着信が行なわれ、キー入力状態としてアプリケーション画面の優先表示が判別されるため、アプリケーション画面66の右上隅に小さく着信通知を示す小さなアイコンであるピクト68を表示している。
[0040] 図4(B)はキー入力状態判定部42で着信通知の優先表示が判定された場合であり、アプリケーション画面66の中央の前面に着信通知メッセージ70を大きく目立つように表示している。
[0041] すなわち本発明によればアプリケーション起動中にキー入力を頻繁に行なっていると図4(A)のようにアプリケーション画面66を妨げないように画面隅に小さく着信通知としてピクト68が表示され、一方、アプリケーション起動中にキー入力を行なうことなく例えばブラウザを起動してコンテンツを眺めているようなキー入力がほとんどない場合には、図4(B)のようにアプリケーション画面66の中央に大きく着信通知メッセージ70が表示される。」(7頁)

上記引用文献4の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、

a 上記摘記事項オの[0025]の「図2は本発明による着信通知機能を備えた携帯電話のブロック図である。」の記載と、図2から、引用文献4に記載された発明は、「着信した際に、着信通知すること」に関するものであると認められる。

b 上記摘記事項エの[0014]の「判定基準をアプリケーション毎に設定し、起動中のアプリケーシヨンに対応した判定基準を取得してキー入力状態を判定する」の記載から、「判定基準」は、「アプリケーション毎に定めている」ので、「アプリケーションに対応して設定されている判定基準」といえる。

c 上記摘記事項カの[0031]の「キー入力状態判定部42は、キー検出部40から得られたキー入力状態につきアプリケーシヨン画面を優先表示させるか、着信通知を優先表示させるかを判定する。キ一入力状態の判定は、キー判定基準設定部44により設定された判定基準に基づいて行なわれる。 」と、上記摘記事項クの[0041]の「本発明によればアプリケーション起動中にキー入力を頻繁に行なっていると図4(A)のようにアプリケーション画面66を妨げないように画面隅に小さく着信通知としてピクト68が表示され、一方、アプリケーション起動中にキー入力を行なうことなく例えばブラウザを起動してコンテンツを眺めているようなキー入力がほとんどない場合には、図4(B)のようにアプリケーション画面66の中央に大きく着信通知メッセージ70が表示される。」の各記載から、「判定基準に基づいて着信通知の表示状態(表示の大きさ)を変更する」といえる。

以上より、引用文献4には、以下の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明4)
「着信した際に、起動中のアプリケーションに対応して設定されている判定基準に基づいて着信通知の表示状態(表示の大きさ)を変更すること。」

3.対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、

a 引用発明1の「PHS」は、無線基地局装置を介して無線で通話する端末であるから、本願発明の「携帯電話」に含まれる。
b 引用発明1の「着信があった場合、」は、本願発明の「着信が発生すると、」に相当する。
c 引用発明1の「消音待受けモードに設定されてから当該着信までの間に」と、本願発明の「該着信を含む過去所定時間内における」とは、後述する相違点を除いて、「該着信を含む所定の期間内における」という点では、共通する。
d 引用発明1の「同じ発信者からの着信回数」は、本願発明の「当該着信に係る発信者からの着信回数」に相当する。
e 引用発明1の「予め設定してあった着信回数」と本願発明の「着信時に動作しているアプリケーション毎に対応して設定されている所定の着信回数」とは、下記の相違点を除き、「所定着信回数」である点で共通する。
f 引用発明1の「着信を報知し」、「着信を報知せず」(あるいは、「着信を報知しない」)は、それぞれ、本願発明の「着信通知の実施」、「着信通知の実施を制限し」(あるいは、「着信通知の実施を制限する」)に、相当する。
g 上記fの検討の結果を踏まえると、引用発明1の「同じ発信者からの着信回数が予め設定してあった回数より少ない場合着信を報知せず」、「予め設定してあった所定回数以上であった場合着信を報知し」は、本願発明の「所定の着信回数未満である場合には着信通知の実施を制限し」、「前記所定の着信回数以上である場合には前記着信通知を実施し」に、相当する。
h 引用発明1の「異なる発信者からの着信」は、「前記発信者以外の発信者からの着信」といえるので、本願発明の「前記発信者以外からの着信」に相当する。
i 上記c,e,f,hの検討の結果を踏まえると、引用発明1の「異なる発信者からの着信は、予め設定してあった回数まで着信の旨を報知しない」と、本願発明の「当該着信以降の前記発信者以外からの着信は前記所定の着信回数まで着信通知の実施を制限する」とは、下記の相違点を除き、「当該着信以降の前記発信者以外からの着信は所定着信回数まで着信通知の実施を制限する」点で共通する。

したがって、本願発明と引用発明1とは、以下の点で一致し、相違する。

(一致点)
「着信が発生すると、
該着信を含む所定の期間内における当該着信に係る発信者からの着信回数が、所定着信回数未満である場合には着信通知の実施を制限し、
該着信を含む所定の期間内における当該着信に係る発信者からの着信回数が、前記所定着信回数以上である場合には前記着信通知を実施し、当該着信以降の前記発信者以外からの着信は前記所定着信回数まで着信通知の実施を制限する
携帯電話。」

(相違点1)
一致点の「所定着信回数」に関して、本願発明が、「着信時に動作しているアプリケーション毎に対応して設定されている」のに対して、引用発明1は、そのような構成を有さない点。

(相違点2)
一致点の「該着信を含む所定の期間内における」が、本願発明では、「該着信を含む過去所定時間内における」であるのに対して、引用発明では、「消音待受けモードが設定されてから当該着信までの間に」である点。

3.判断
前記(相違点1)について検討する。
上記「第3 原査定の理由」の項の「(2)引用文献4の記載事項」の項に記載したとおり、引用発明4は、「着信した際に、起動中のアプリケーションに対応して設定されている判定基準に基づいて着信通知の表示状態(表示の大きさ)を変更すること。」と認められる。
しかしながら、引用発明4は、アプリケーションに対応して着信通知の表示状態(表示の大きさ)を変更するに留まり、アプリケーションに対応して、着信通知の実施を制限するものではないので、仮に、引用発明1に、引用発明4を適用しても、上記相違点1に係る本願発明の構成(「所定の着信回数」が、「着信時に動作しているアプリケーション毎に対応して設定されている」点)を当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

したがって、本願発明は、相違点2を検討するまでもなく、当業者が引用発明1、引用発明4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとすることはできない。

また、本願の請求項2-3に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、当業者が引用発明1、引用発明4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとすることはできない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1-3に係る発明は、引用文献1、引用発明4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-05-24 
出願番号 特願2014-120849(P2014-120849)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 相澤 祐介齋藤 正貴  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 山中 実
林 毅
発明の名称 携帯電話  
代理人 特許業務法人はるか国際特許事務所  

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