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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H03K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H03K
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H03K
管理番号 1314893
審判番号 不服2014-12070  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-25 
確定日 2016-06-08 
事件の表示 特願2010-543619「組み込まれた近接センサを備えるOLED照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 8月 6日国際公開、WO2009/095848、平成23年 5月 6日国内公表、特表2011-514700、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2009年1月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年1月29日,欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって,平成26年2月24日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がされ,これに対し,同年6月25日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,手続補正書が提出され,その後,当審において平成27年4月20日付けで拒絶理由が通知され,同年6月25日付けで意見書が提出されるとともに手続補正され,同年8月7日付けで拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という)が通知され,これに対して平成28年1月27日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1-8に係る発明は,平成28年1月27日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定されるものと認められる。
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「 【請求項1】
陰極,陽極及び活性スタックを備えるOLED装置であり,前記陽極は,各々OLEDセグメントを規定している複数の陽極セグメントに分割されており,前記OLED装置は更に,基準点に対する各陽極セグメントの有効静電容量値を決定する静電容量測定ユニットを有するOLED装置であって,前記静電容量測定ユニットは更に,前記OLED装置に近づく誘電体の相対位置に応じた前記複数の陽極セグメントの間の前記有効静電容量値の変化を検出するように構成された,OLED装置。」


第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
平成25年2月26日付け拒絶理由には,以下の拒絶理由が記載されている。
「 この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


請求項:1-9
引用文献:1.欧州特許出願公開第1589407号明細書
備考:
引用文献1には,陰極(104;第7欄第23行),陽極(401,402;第7欄第23行)及び活性スタック(ポリマーレイヤー103)を備えるOLED装置であって,前記陽極は,各々OLEDセグメントを規定している複数の陽極セグメントに分割されており(第4図,第7欄第23,24,51-54行。複数のPLEDセグメントは,陽極,共通ポリマーレイヤー,共通カソードからなるサンドイッチ構造により,各々定義されている。),少なくとも2つの陽極セグメント間及び/又は少なくとも1つ陽極セグメントと基準点との間の複数の静電容量係数をそれぞれ測定する静電容量測定ユニット(第7欄第21,22行。第4図のデバイスは第2図のデバイスと同じ回路を使用する。構成201は,検知レイヤーを構成する陽極においてキャパシタンスの変化を検出するために使用されている。センサー回路はそれ故静電容量を測定しているといえる。)が設けられている,OLED装置(段落29,第4図のコントロールインタフェースのPLED)の発明が開示されている。
そして,この発明と本願の請求項1-9に係る発明との間の相違は当業者にとって補完し得る程度のものである。
したがって,本願の請求項1-9に係る発明は引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものである。」

また,平成26年2月24日付け拒絶査定の備考欄には以下の事項が記載されている。
「 出願人は意見書にて「これに対し,引用文献1には,本願の静電容量測定ユニットに相当する構成,即ち複数の静電容量係数を測定できるユニットは,一切開示されていない。」ことを理由として本願の請求項1-9に係る発明は引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものではない旨を主張する。
しかしながら先の拒絶理由通知書にて引用した引用文献1(欧州特許出願公開第1589407号明細書)の段落38には第4図の構成によって入力エリアを峻別する旨が示されているから,引用文献1第4図に基づくユニットは「複数の静電容量係数を測定」するものと認められる。
したがって,出願人の主張はあたらず,本願の請求項1-9に係る発明は引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものである。」


2.原査定の理由の判断
(1)刊行物の記載事項
欧州特許出願公開第1589407号明細書(以下,「刊行物」という。)には,以下の事項が記載されている。

ア「[0009]According to a first aspect, this object is fulfilled by an input interface for an electronic device, comprising a touch-sensitive input detection layer, and an input sensor connected to said layer for detecting touch-generated capacitance variations in said detection layer. According to the invention, said detection layer is transparent, and in that a polymer layer of a polymer light emitting diode is disposed under said detection layer and devised to emit light through said detection layer.」
(仮訳(仮訳は上記刊行物に対応する日本語の公表公報である特表2007-534070号の記載を援用した。以下同様。):【0009】第1の側面によれば,本発明の目的は,タッチセンシティブ入力検出層と,前記タッチセンシティブ入力検出層内でタッチにより生じたキャパシタンスの変化を検出するために前記タッチセンシティブ入力検出層に接続された入力センサと,を備えた,電子機器のための入力インタフェース装置によって達成される。本発明によれば,前記タッチセンシティブ入力検出層は,透明であり,前記タッチセンシティブ入力検出層の下方に高分子発光ダイオードの高分子層が配置され,前記タッチセンシティブ入力検出層を通して光を放出するように構成されている。)(下線は当審で付した。以下同様。)

イ「[0029]Fig. 1 illustrates a polymer film light emitting diode 100, the technology of which is used in the present invention. Such a type of device is generally referred to as a Polymer Light Emitting Diode PLED, or an Organic Light Emitting Diode OLED. PLED is a backlighting, illumination and display technology which has had an enormous development during recent years, and the basic function is described with reference to Fig. 1. A PLED comprises a thin layer 103 of polymer, preferably an undoped conjugated polymer, which is sandwiched between an anode 102 and a cathode 104. Examples of polymers which have been used in different applications include poly-p-phenylene vinylene (PPV), poly-p-phenylenebenzobisthiazole (PBT) and poly-p-phenylenebenzobis- oxazole (PBO). The polymer of layer 103 emits light when exposed to electricity. When electrons e- and holes h+ are injected respectively from cathode 104 and anode 102 into the molecular polymer layer or layers 103 by means of a bias voltage supplied by a DC driver unit 105, these two types of carriers migrate towards each other and a fraction of them recombine to form light emission.
[0030]・・・・略・・・・
[0031]Fig. 2 illustrates an embodiment of an input interface according to the invention. The input interface involves a touch-sensitive detection input layer 102, which is connected to an input sensor 201. In a preferred embodiment, detection layer 102 is a conductive electrode and input sensor 201 is devised to apply an alternating current AC to the detection layer 102, which forms part of a tuned circuit with a certain resonance frequency. When a user touches or places e.g. a finger near the outer surface of the input interface, which outer surface is defined by detection layer 102 or in a preferred embodiment by a protection layer 101, the capacitance of detection layer 102 is affected. The change in the capacitance will in turn affect the tuned circuit, and by monitoring the frequency or the frequency shift of the AC current, input sensor 201 may detect input by touch-sensing.」
(仮訳:【0029】図1は,高分子膜発光ダイオード100を示す図であり,その技術は本発明で使用される。本発明に用いられるこのタイプのデバイスは,一般的に,高分子発光ダイオード(PLED)又はまたは有機発光ダイオード(OLED)と呼ばれる。PLEDは,近年の間に急速に発展しているバックライティング,照明及びディスプレイ技術であり,その基本機能は,図1を参照して説明されうる。PLEDは,高分子,好適には,ノンドープ共役高分子(conjugated polymer)の薄層103を含み,この薄層103はアノード102とカソード104との間に挟まれる。様々なアプリケーションで用いられる高分子の例としては,ポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV),ポリ(p-フェニレンベンゾビスチアゾール)(PBT)及びポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)(PBO)が挙げられる。層103の高分子は,電気にさらされると光を放出する。DC駆動部105によって供給されるバイアス電圧によって,電子e-及びホールh+がカソード104及びアノード102から1つ又は複数の分子高分子層(molecular polymer layer or layers)にそれぞれ注入される。これらの2種類のキャリアは,互いに移動し,それらの一部は再結合して光を放出する。
【0030】・・・・略・・・・
【0031】図2は,本発明に係る入力インタフェース装置の実施形態を示す図である。この入力インタフェース装置は,入力センサ201に接続されたタッチセンシティブな検出入力層102を含む。好適な実施形態では,検出層102は導電性電極であり,入力センサ201は交流電流ACを検出層102に印加するように構成され,ある共振周波数を持つ同調回路の一部を形成する。ユーザが,入力インタフェース装置の外側表面を触るか又はその近くに指を置くと,検出層102のキャパシタンスが影響を受ける。ここで,この外側表面は,検出層102又は好適な実施の形態では保護層101によって定められる。キャパシタンスの変化は次に同調回路に影響を与え,交流電流の周波数又は周波数偏移をモニターすることによって,入力センサ201は,タッチセンシングによる入力を検出しうる。)

ウ「[0040]Fig. 6 illustrates yet another embodiment similar to that of Fig. 5, with separate polymer layers 501 and 502 used under separate electrodes 401 and 402. In the embodiment of Fig. 6, separate cathodes 601 and 602, respectively, are also used.
[0041]Anodes 401 and 402 are, in the embodiments of Figs 4-6, connected to separate input sensors, optionally to different ports of a common input sensor. In the same manner, anodes 401 and 402 are connected to different DC drivers or different ports of a common DC driver. Furthermore, separate connections according to the embodiment of Fig. 2 may be used, or connections through switches according to the embodiment of Fig. 3 may be used. The rib 403 in Fig. 4 may of course also be used in the embodiments of Figs 5 and 6. The embodiments of Figs 4-6 illustrate simple ways of including two or more input areas, defined by the coverage area of the respective anodes 401 and 402, which different areas may function as different keys.」
(仮訳:【0040】図6は,図5と同様の更に他の実施形態を示す図であり,別々の高分子層501と502が別々の電極401と402の下で使用されている状態を示している。図6の実施形態では,別々のカソード601と602がそれぞれ更に使用される。
【0041】図4?6の実施形態では,アノード401と402が入力センサを分離するために接続され,随意的に共通の入力センサの異なるポートに接続される。同様にして,アノード401と402が異なるDCドライバ又は共通のDCドライバーの異なるポートに接続される。さらに,図2の実施形態に係る別々の接続が用いられるか,又は,図3の実施形態に係るスイッチを通した接続が用いられる。図4の突出部(rib)403は,図5及び6の実施形態にも当然用いられうる。図4?6の実施形態は,個別のアノード401と402の適用範囲によって定められた,2つ以上の入力領域を含む簡単な方法を示す図であり,異なる領域が異なるキー(keys)として機能しうる。)

上記摘記事項の記載及び図面,並びにこの分野における技術常識を考慮すると,刊行物には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)
「カソード(601,602),アノード(401,402),及び高分子層(501,502)を備える,OLEDを用いた電子機器のための制御インタフェース装置であり,アノード(401,402)は,2つのOLEDを形成する2つの別々のアノード(401,402)に分かれており,前記OLEDはアノードのキャパシタンスの変化を検出する入力センサを有する電子機器のための入力インタフェース装置。」


(2)対比
本願発明と引用発明とを対比すると,
a.引用発明における「カソード(601)」と「カソード(602)」を合わせた構成が,本願発明の「陰極」に相当する。そして,引用発明における「高分子層(501)」と「高分子層(502)」を合わせた構成が,本願発明の「活性スタック」に相当する。
また,引用発明における「アノード(401)」と「アノード(402)」は,それぞれ本願発明の「陽極セグメント」に相当し,引用発明の「アノード(401)」と「アノード(402)」を合わせた構成が,本願発明の「陽極」に相当する。

b.引用発明の「OLED」は本願発明の「OLEDセグメント」に相当し,引用発明の「電子機器のための入力インタフェース装置」は,OLEDを有しているから本願発明の「OLED装置」に対応する。

c.引用発明の「アノードのキャパシタンス」は,アノードの静電容量のことであるから本願発明の「陽極セグメントの有効静電容量値」に相当する。
そして,引用発明の「入力センサ」は,「アノードのキャパシタンス」そのものを測定するのではなく,その「変化」を検出するものであり,また複数のアノード間のキャパシタンスの変化を検出してはいないが,「アノードのキャパシタンス」に基づいた測定を行う測定手段といえる点では,本願発明の「静電容量測定ユニット」と共通する。

したがって,本願発明と引用発明とは以下の点で一致ないし相違すると認められる。

(一致点)
「陰極,陽極及び活性スタックを備えるOLED装置であり,前記陽極は,各々OLEDセグメントを規定している複数の陽極セグメントに分割されており,前記OLED装置は更に,各陽極セグメントの静電容量値に基づく測定をおこなう測定手段を有するOLED装置。」

(相違点1)
共通点とした「測定手段」に関して,本願発明では「基準点に対する各陽極セグメントの有効静電容量値を決定する静電容量測定ユニット」であるのに対して,引用発明では「アノードのキャパシタンスの変化を検出する入力センサ」である点。

(相違点2)
共通点とした「測定手段」に関して,さらに,本願発明では,「静電容量測定ユニット」は,「前記OLED装置に近づく誘電体の相対位置に応じた前記複数の陽極セグメントの間の前記有効静電容量値の変化を検出するように構成され」ているのに対して,引用発明の「入力センサ」はそのような構成を有していない点。


(3)判断
事情に鑑み,まず上記相違点2について検討する。
引用発明における入力センサは,単にアノードのキャパシタンスの変化を検出するだけであり,本願発明のように「OLED装置に近づく誘電体の相対位置に応じた前記複数の陽極セグメントの間の前記有効静電容量値の変化を検出」していない。そして,このような相違点2に係る構成について刊行物に記載も示唆もされていないし,周知技術であるということもできない。
一方,本願の明細書【0004】?【0005】段落に,
「【0004】
しかしながら,上述の原理によって動作されているタッチセンサ装置は,特に厳しい環境条件において,故障しやすいことが知られている。このことは,予め規定されている閾値を超えた場合(例えば,容量性センサ内の誘導電流が閾値を超えた場合)に,検出信号が生成されるという事実によるものである。しかしながら,この絶対値は,当該センサ装置の温度及び/又は表面の状態によって変化し得る。従って,前記タッチセンサ装置は,十分に信頼できない可能性がある。
【0005】
本発明の目的は,信頼できる近接場イメージング機能を提供する照明装置を提供することにある。」
と記載されていることを踏まえると,本願発明は上記相違点2に係る構成を有することによって,故障しにくい(「誤検出しにくい」の意味と解される。),信頼できる近接場イメージング機能を提供できるという効果を奏するものと考えられる。
そうしてみると,特有の上記効果を奏する上記相違点2に係る構成を,引用例から当業者が容易に想到することができたということはできない。

(4)小括
したがって,本願発明は,当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
また,本願の請求項2?8に係る発明は,本願発明をさらに限定したものであるから,本願発明と同様に,当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
よって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。


第4 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
平成27年8月7日付け拒絶理由通知書に記載された拒絶理由の概要は以下のとおりである。
「本件出願は,明細書,特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため,特許法第36条第6項第1号,第2号,及び第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

a.請求項1の「基準点に対する各陽極セグメントの有効静電容量値」という記載において,「基準点」とはどのような点を指すのか不明瞭である。
b.発明の詳細な説明の【0002】?【0005】段落の記載,及び平成27年6月25日に提出された意見書(特に,「(2)本発明が特許されるべき理由」の「理由(1)について」,及び「理由(2)について」を参照。)によれば,本願発明は,従来のタッチセンサが,特に厳しい環境条件において,故障しやすいという課題を解決するためになされたものであり,従来に比べてより信頼性の高い接近の検出を可能にし,また,物体の接近方向に対して垂直な少なくとも1つの方向における物体の位置も検出できるようにする(イメージング機能)ことを目的としたものである。
そして,当該目的を達成するため,接近する誘導性の物体により近い陽極セグメントの基準点に対する有効静電容量値の変化量は,接近する誘導性の物体からより遠い陽極セグメントの基準点に対する有効静電容量値の変化量と比べて,より大きいことを利用して,信頼性の高い接近の検出を実現している。
これに対して,請求項1の記載では,「前記複数の陽極セグメントの間の前記有効静電容量値の変化を検出する」にとどまり,検出した結果からどのように物体の接近を検出し,さらに,どのようにして物体の位置を検出するのかについては特定されていない。したがって,請求項1に記載された発明は,発明の詳細な説明に記載された課題解決手段が反映されていないため,発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することとなっているから,請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載されたものではない。
c.請求項1の「前記複数の陽極セグメントの間の前記有効静電容量値の変化を検出する」という記載では,何の変化を検出しているのか不明瞭である。
d.請求項9の末尾は「OLED装置の使用。」となっており,請求項9はOLED装置の使用方法を特定した発明であると認められるものの,当該記載では,使用方法を構成する各工程が特定されていないから,使用方法としての構成が不明である。」


2.当審拒絶理由の判断
(1)平成28年1月27日付け意見書における請求人の主張を参酌すると,「基準点」は「アース」を含み,各陽極セグメントの有効静電容量値を決定する基準となる点であって,本願の出願当時の技術常識などから当業者が理解できるものであることが明らかとなった。
よって,当審拒絶理由aは解消した。

(2)平成28年1月27日付け意見書における請求人の主張を参酌すると,本願発明の「前記OLED装置に近づく誘電体の相対位置に応じた前記複数の陽極セグメントの間の前記有効静電容量値の変化を検出する」とは,誘電体がOLED装置に近づくことによる複数の陽極セグメントの前記有効静電容量値の変化は,陽極セグメント間で,OLED装置と誘電体の相対位置に応じて変化することと理解できる。そして,これにより,物体の接近方向に対して垂直な少なくとも1つの方向における物体の位置も検出できるものと解される。
よって,当審拒絶理由b,cは解消した。

(3)平成28年1月27日付け手続補正書によって,本願の請求項9は削除された。
よって,当審拒絶理由dは解消した。

第5 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-05-24 
出願番号 特願2010-543619(P2010-543619)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H03K)
P 1 8・ 537- WY (H03K)
P 1 8・ 536- WY (H03K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柳下 勝幸  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 山本 章裕
山中 実
発明の名称 組み込まれた近接センサを備えるOLED照明装置  
代理人 笛田 秀仙  
代理人 津軽 進  
代理人 柴田 沙希子  
代理人 特許業務法人M&Sパートナーズ  

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