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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04R
管理番号 1314995
審判番号 不服2014-19818  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-02 
確定日 2016-05-18 
事件の表示 特願2013-249039「アナログ・フィルタリングを行う聴取装置およびそれに関連する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月19日出願公開、特開2014-112836〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成25年12月2日(パリ条約に基づく優先権主張 平成24年11月30日 デンマーク(DK) 欧州特許庁(EP))を出願日とする出願であって、平成26年1月31日付けで拒絶理由が通知され、同年5月7日付けで手続補正がなされ、同年5月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月2日付けで拒絶査定不服の審判が請求されるとともに手続補正がなされ、平成27年7月17日付けで当審による拒絶理由が通知され、同年10月21日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし11に係る発明は、平成27年10月21日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
音声を音声信号に変換するマイクロフォンと、
前記音声信号をアナログ処理する前処理ユニットであり、入力及び出力を有し、前記入力が前記マイクロフォンの出力に接続された前処理ユニットと、
前記処理済みのアナログ音声信号をデジタル音声信号に変換するA/D変換器であり、
入力および出力を有し、前記入力が前記前処理ユニットの前記出力に接続されたA/D変換器と、
前記A/D変換器の出力をデジタル処理する処理ユニットであり、前記前処理ユニットに接続された処理ユニットとを備え、
前記前処理ユニットは、前記処理ユニットからの制御信号に応じて、第1の動作モードでは前記音声信号に第1の伝達関数を適用し、第2の動作モードでは前記音声信号に第2の遮断周波数を有する第2の伝達関数を適用するように構成される、聴取装置。」

3.引用例
平成27年7月17日付け拒絶理由で引用した特開平2-113698号公報(以下「引用例1」という。)には、「補聴器」について、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

ア.「〔発明が解決しようとする課題〕
雑音識別を改善した補聴器を提供することが、本発明の目的である。他の目的は、雑音と音声との間の識別を向上させ、雑音よりも音声の増幅度を大きくした、さらにコンパクトな補聴器を提供することである。
雑音の存在をさらに簡単に検出し、それに応じて補聴器の周波数応答特性を調節する補聴器を提供することが本発明のさらに他の目的である。より少ない部品を用い、そして組立もより経済的な、雑音識別を改善した補聴器を提供することが、さらに別の目的である。補聴器電池をわずかしか消費しない、雑音識別特性を改善した補聴器を提供することがさらに別の目的である。」(第2ページ右下欄第13行-第3ページ左上欄第7行)

イ.「〔実施例〕
第1図を参照すると、本発明の望ましい実施例が補聴器10として示されている。この補聴器10はマイクロホン12、可変フィルター14、増幅器-トランジューサー16、およびセンサー組立体(アセンブリ)18を有している。マイクロホン12は(情報を含んだ)音声と(情報を含まない)雑音とを受け、それらに応答して電気的なマイクロホン信号を供給する。マイクロホン信号は周波数特性と振幅特性の両方を有している。可変フィルター14はマイクロホン信号を受け、そしてそれに応答して、増幅器-トランスジューサー16に、フィルターを通った信号を供給する。
望ましい実施例における可変フィルター14は、フィードバック制御入力側20を持つハイパスフィルターである。このハイパスフィルターのカットオフ周波数は制御入力側20を通して受け取られた制御信号によって変化する。可変フィルター14は、フィルターを通った信号として、マイクロホン信号のうちのハイパスフィルターを通した部分を供給する。」(第3ページ右下欄第11行-第4ページ左上欄第12行)

ウ.「センサー組立体18は、スレッショールド制御器25、バンドパスフィルター26、レベル検出器30、および平滑回路32とを有している。」(第4ページ右上欄第4-7行)

エ.「一般的に、補聴器ユーザーは、音声のような情報を含んだ音が周囲雑音よりも補聴器において増幅されることを望んでいる。そのような周囲雑音には例えば「さざめき」が含まれており、これは同時に会話している人達で一杯になっている広い部屋に入った時に受けるような累算的効果による雑音である。さざめきは異なる音声を含んでいるとは言っても、同時に話される総ての音声の合成効果として、雑音を生じさせる。そのような雑音が、補聴器ユーザーの近くに立って、その人と話している人の音声と同じ量だけ増幅されたとすれば補聴器ユーザーは雑音(同時に話している総ての音声の累算音)と、補聴器ユーザーが理解しようとしている特定の音声とを区別することが困難となる。
そのような状況では補聴器の低い周波数の応答を減少させることが結局、補聴器ユーザーのために発生される信号の了解度を改善するということに、注目すべきである。望ましい実施例においては、そのようなさざめきのうなりによって混交された、望みの音声信号は、雑音のない音声に関連したマイクロホン信号に比べて、低周波応答性を低減させて増幅される。
出願人は、そのような周囲雑音は、大きな(大振幅)、実質的に定常状態(実質的に一定レベルの振幅エンベロープを有する)の、低い周波数(500Hz未満)の、マイクロホン信号によって特徴づけられることに着目した。補聴器10が周囲雑音の存在する場所にある時、マイクロホン12によって発生される仮想信号の単なる一例が第2図の上部における第1のグラフとして図示されている。補聴器10が情報を含む音または音声の存在する場所にある時、マイクロホン12によって発生される仮想信号の一例が第3図の上部における第1のグラフとして図示されている。信号の振幅のエンベロープ(連続する信号ピーク値が相互的に連続された時の結果としての波形)が垂直軸に沿って示され、時間は水平軸によって表現されている。
第2図と第3図の例によって示されるように、第2図の雑音信号も第3図の音声信号も、共に同じピーク振幅を有している。例として、第2図および第3図に関連したマイクロホン信号が、ほとんど同じ周波数・・・500Hz未満・・・を持つと仮定する。
第2図の上部に示したマイクロホン信号に関しては、センサー組立体18が可変フィルター制御入力部20にフィードバック制御信号を与えて、可変フィルター14のカットオフ周波数を、実質的にマイクロホン信号の低周波成分を阻止するよう、上方に移動させるということを出願人は発見した。しかし第3図の上部に示した信号に関しては、可変フィルター14の制御入力20に与えられるフィードバック制御信号は可変フィルターを実質的に低いカットオフ周波数を保つようにさせ、このことはほとんどの低い周波数信号が実質的に増幅器-トランスジューサー16へと通過し、そして補聴器ユーザーのために増幅されて、可聴音として発生される。」(第4ページ左下欄第11行-第5ページ右上欄第10行)

・上記アによれば、雑音の存在を簡単に検出し補聴器の周波数応答特性を調節することを目的とした補聴器について記載されている。

・上記イ、ウ、図1及び図4によれば、補聴器10はマイクロホン12、可変フィルター14、センサー組立体18を備えており、前記センサー組立体18はスレッショールド制御器25,バンドパスフィルター26、レベル検出器30及び平滑回路32を有しており、マイクロホン12の出力は可変フィルター14の入力に接続され、可変フィルター14の出力は、センサー組立体18の入力に接続され、センサー組立体18の出力は可変フィルター14のフィードバック制御入力側20に接続される。

・上記イによれば、マイクロホン12は、音声に応答してマイクロホン信号を供給する。

・上記エによれば、可変フィルター14はハイパスフィルターであり、センサー組立体18からのフィードバック制御信号に応じて、雑音信号が小さいときには実質的に低いカットオフ周波数を保ち、雑音信号が大きいときにはカットオフ周波数を上方に移動する。

・上記イ及び図4によれば、可変フィルター14はアナログ回路で構成されるからマイクロホン信号をアナログ処理しており、アナログ処理した信号をセンサー組立体18に供給している。

したがって、引用例1には、雑音の存在を簡単に検出し補聴器の周波数応答特性を調節することを目的とした以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「音声に応答してマイクロホン信号を供給するマイクロホン12と、
前記マイクロホン信号をアナログ処理する可変フィルター14であり、入力及び出力を有し、前記入力が前記マイクロホン12の出力に接続された可変フィルター14と、
入力が前記可変フィルター14の出力に接続され、出力が前記可変フィルター14のフィードバック制御入力側20に接続されたセンサー組立体18とを備え、
前記可変フィルター14はハイパスフィルターであり、前記センサー組立体18からのフィードバック制御信号に応じて、雑音信号が小さいときには実質的に低いカットオフ周波数を保ち、雑音信号が大きいときにはカットオフ周波数を上方に移動する、補聴器10。」

また、平成27年7月17日付け拒絶理由で引用した特開2012-169782号公報(以下「引用例2」という。)には、「音声処理装置及び方法並びに撮像装置」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

オ.「【0001】
本発明は、音声処理装置及び方法並びに撮像装置に関する。」

カ.「【0012】
図1を用いて、音声処理装置51の構成を説明する。52はカットオフ周波数を変更可能に構成されたアナログの高域通過フィルタ(HPF)である。53は残響抑圧器(reverberation suppressor)であり、ここには例えば残響抑圧適応フィルタが用いられる。54a,54bは、マイクロホンの出力信号をデジタル化する第1のA/Dコンバータ(ADC)、55は第1の遅延器(DL)、56a,56bはDC成分カット用のHPFである。」

キ.「【0014】
音声処理装置51は、第1のマイクロホン7aからの信号をHPF52で処理した後、ADC54aでアナログ/デジタル変換(A/D変換)を行う。さらにADC54aの出力は第1の遅延器55によって適当な量遅延される。一方、音声処理装置51は、第2のマイクロホン7bからの信号をADC54bでA/D変換した後、残響抑圧器53で残響の抑圧を行う。残響抑圧器53の動作及び第1の遅延器55における遅延の与え方などについては後述する。」

ク.「【0018】
第1のマイクロホン7aの出力及び残響抑圧器53の出力はそれぞれ、風検出器81のBPF82a,82bに入力される。BPF82a,82bは第2のマイクロホン7bにおいて被写体音を忠実に取得できる範囲を通過させることを目的としている。そのため通過帯域は例えば30Hz?1kHz程度に設定される。ただし上限の周波数は音響抵抗体41の構造などによって設定値を変えることができる。詳細については第2のマイクロホン7bの周波数特性と共に後述する。
【0019】
BPF82aの出力は第2のADC84でA/D変換された後、第2の遅延器85に送られる。第2の遅延器85における遅延の与え方などについては残響抑圧器53の動作と共に後述する。
【0020】
差分器83で、第2の遅延器85の出力とBPF82bの出力との差が計算され、この結果がレベル検出器86に送られる。レベル検出器86の動作については後述する。レベル検出器86によって風の強さを判断して、スイッチ87を制御して残響抑圧器53へのフィードバックを切り替える。また、レベル検出器86の検出結果は、合成器71を制御するスイッチ88の制御にも用いられる。モード切替操作部89がユーザによってOFFに設定されている場合には、スイッチ88は、後述する風が無い場合の処理を常に選択するように動作する。一方、モード切替操作部89がユーザによってAutoに設定されている場合には、スイッチ88は、レベル検出器86によって判断される風の強さに応じて、HPF52、HPF73のカットオフ周波数及び可変ゲイン74を変更するように動作する。この処理の詳細は後述する。」

ケ.「【0031】
残響抑圧器53の具体的構成を図5に示した。残響抑圧器53は適応フィルタで構成されている。この適応フィルタは、以下で具体的に説明するように、風雑音の大きさを表す差分器83の出力、すなわち、第1のマイクロホン7aの出力信号と第2のマイクロホン7bの出力信号との差が最小になるようフィルタ係数を推定学習する。これにより、第2のマイクロホン7bの出力信号に含まれる、音響抵抗体41と第2のマイクロホン7bとの間の閉空間で発生する残響成分を抑圧する。このような適応フィルタを用いることで、ユーザによるカメラの把持状態の変化や温度変化に伴う残響発生状態の変化に対しても適切に処理を行うことが可能となる。」

コ.「【0073】
HPF52におけるカットオフ周波数の制御シーケンスの例を図8を用いて説明する。図8(a)はスイッチ87の動作シーケンス、図8(b)はHPF52の動作シーケンスである。図8(c)は可変ゲイン74の動作シーケンス、図8(d)はALC61の出力信号の高周波成分のみを通過させる第1の高域通過フィルタであるHPF73の動作シーケンスを示している。また、図8(a)から(d)において横軸は共通しており風雑音の大きさを示している。Wn1,Wn2,Wn3は風雑音の大きさを示すしきい値でこの順に風雑音が強いことを示している。図8(c)、(d)の動作は図7(b)と同様であり説明を省略する。
【0074】
風雑音のレベルが第1のしきい値Wn1より小さい場合は風処理が必要ないとして、スイッチ87をON状態にして前述した残響抑圧器53の適応動作を行う。また、HPF52のカットオフ周波数は0Hz(=HPF動作せずにスルー)に設定される。音響抵抗体41を設けた第2のマイクロホン7bの信号を用いずに済むことから、忠実に被写体の音声を得られていると考えられる。
【0075】
風雑音のレベルが第1のしきい値Wn1以上になると、風雑音の発生があるとして、スイッチ87をOFF状態にして前述した残響抑圧器53における適応フィルタの適応動作を停止させる。このような制御を行うことで不適切な適応動作を抑制することができる。
【0076】
風雑音のレベルが第1のしきい値Wn1以上で第2のしきい値Wn2未満の範囲内にあるときを説明する。このとき、HPF52のカットオフ周波数は、HPF73のカットオフ周波数よりも低い値において、風雑音のレベルが高くなるにつれて段階的に高くなる。この制御を行うことで、第1のマイクロホン7aに発生した風雑音を低減することが可能となる。また、HPF73のカットオフ周波数を超えないように制御することで、HPF73出力に対してHPF52のカットオフ周波数は大きな影響を与えることがない。」

・上記オ、キ、ク(段落【0019】)及びケによれば、マイクロフォン7aからの信号をADC84でアナログ/デジタル変換して出力し、マイクロフォン7bからの信号をADC54bでアナログ/デジタル変換して出力し、これらの出力に基づいて風雑音の大きさを判定する音声処理装置について記載されている。

・上記カ、ク(段落【0020】)、コ及び図8によれば、アナログの高域通過フィルタ52のカットオフ周波数を風雑音の大きさに基づいて変更している。

したがって、引用例2には、「マイクロフォンからの信号をアナログ/デジタル変換した信号に基づいて風雑音の大きさを判断し、当該風雑音の大きさに基づいてアナログの高域通過フィルタのカットオフ周波数を変更する」ことが記載されている。

4.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。

a.引用発明の「マイクロホン信号」は、本願発明の「音声信号」に相当し、引用発明の「音声に応答してマイクロホン信号を供給」することは、本願発明の「音声を音声信号に変換」することに相当する。よって、引用発明の「音声に応答してマイクロホン信号を供給するマイクロホン12」は、本願発明の「音声を音声信号に変換するマイクロフォン」に相当する。

b.引用発明の「前記マイクロホン信号をアナログ処理する可変フィルター14」は、本願発明の「前記音声信号をアナログ処理する前処理ユニット」に相当する。よって、引用発明の「前記マイクロホン信号をアナログ処理する可変フィルター14であり、入力及び出力を有し、前記入力が前記マイクロホン12の出力に接続された可変フィルター14」は、本願発明の「前記音声信号をアナログ処理する前処理ユニットであり、入力及び出力を有し、前記入力が前記マイクロフォンの出力に接続された前処理ユニット」に相当する。

c.本願発明は、「前記処理済みのアナログ音声信号をデジタル音声信号に変換するA/D変換器であり、入力および出力を有し、前記入力が前記前処理ユニットの前記出力に接続されたA/D変換器」を有するのに対し、引用発明はこのようなA/D変換器を有しない点で相違する。

d.引用発明の「センサー組立体18」は、可変フィルター14の出力を処理して、可変フィルター14に対してフィードバック制御信号を送出するものであるから、本願発明の「処理ユニット」に対応すると言える。よって、引用発明の「前記可変フィルター14に接続されたセンサー組立体18」は、本願発明の「前記前処理ユニットに接続された処理ユニット」に対応する。
しかしながら、本願発明の処理ユニットは「前記A/D変換器の出力をデジタル処理する」のに対し、引用発明のセンサー組立体18はデジタル処理するものではない点で相違する。

e.本願発明の「第1の動作モード」は、段落【0020】を参照すると、風雑音が全く又はほどんどない場合であるから、引用発明の「雑音信号が小さいとき」に対応し、本願発明の「第2の動作モード」は、段落【0020】を参照すると、風雑音がある場合であるから、引用発明の「雑音信号が大きいとき」に対応する。また、本願発明の「第1の伝達関数」「第2の伝達関数」は、段落【0025】,【0026】,【0038】を参照すると、互いに異なる遮断周波数を有するハイパスフィルタである。よって、引用発明の「雑音信号が小さいときには実質的に低いカットオフ周波数を保ち」は、本願発明の「第1の動作モードでは前記音声信号に第1の伝達関数を適用」に相当し、引用発明の「雑音信号が大きいときにはカットオフ周波数を上方に移動する」は、本願発明の「第2の動作モードでは前記音声信号に第2の遮断周波数を有する第2の伝達関数を適用する」に相当する。したがって、引用発明の「前記可変フィルター14はハイパスフィルターであり、前記センサー組立体18からのフィードバック制御信号に応じて、雑音信号が小さいときには実質的に低いカットオフ周波数を保ち、雑音信号が大きいときにはカットオフ周波数を上方に移動する」は、本願発明の「前記前処理ユニットは、前記処理ユニットからの制御信号に応じて、第1の動作モードでは前記音声信号に第1の伝達関数を適用し、第2の動作モードでは前記音声信号に第2の遮断周波数を有する第2の伝達関数を適用するように構成される」に相当する。

f.引用発明の「補聴器10」は、本願発明の「聴取装置」に相当する。

よって、本願発明と引用発明とは、
(一致点)
「音声を音声信号に変換するマイクロフォンと、
前記音声信号をアナログ処理する前処理ユニットであり、入力及び出力を有し、前記入力が前記マイクロフォンの出力に接続された前処理ユニットと、
前記前処理ユニットに接続された処理ユニットとを備え、
前記前処理ユニットは、前記処理ユニットからの制御信号に応じて、第1の動作モードでは前記音声信号に第1の伝達関数を適用し、第2の動作モードでは前記音声信号に第2の遮断周波数を有する第2の伝達関数を適用するように構成される、聴取装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本願発明は「前記処理済みのアナログ音声信号をデジタル音声信号に変換するA/D変換器であり、入力および出力を有し、前記入力が前記前処理ユニットの前記出力に接続されたA/D変換器」を有するのに対し、引用発明はこのようなA/D変換器を有しない点。

(相違点2)
本願発明の処理ユニットは「前記A/D変換器の出力をデジタル処理する」のに対し、引用発明のセンサー組立体18はデジタル処理するものではない点。

そこで、上記相違点1及び2について検討する。
補聴器において、マイクロホンの出力をアナログフィルタ処理した後、AD変換してDSPでデジタル処理することは、例えば、特開平8-79897号公報(段落【0005】-【0006】,図10)、特表平11-511598号公報(第9ページ第7-22行、図2)に記載されているように周知技術であり、引用発明においても、アナログ構成に代えてデジタル構成とすることは当業者が容易になし得ることであるところ、引用例2には、「マイクロフォンからの信号をアナログ/デジタル変換した信号に基づいて風雑音の大きさを判断し、当該風雑音の大きさに基づいてアナログの高域通過フィルタのカットオフ周波数を変更する」こと、つまり、引用例2には風雑音の大きさを判断する処理をデジタル変換した信号に基づいて行うことが記載されており、かかる処理をデジタル処理のための専用集積回路である周知のDSPで行うことにより、相違点1及び2の構成とすることは当業者にとって適宜なし得る設計的な事項にすぎない。

なお、請求人は平成27年10月21日付けの意見書において下記の点を主張している。
「上記した引用文献1の記載に関して、引用文献2に記載された音声処理装置は、ビデオカメラやICレコーダを対象とするものです(引用文献2の段落0002、0010等参照)。通常、ビデオカメラやICレコーダは、補聴器と比較して、物理的に大きく、かつ、大電力で動作するものと考えられます。そのことから、引用文献1に記載された技術的思想に立脚すれば、引用文献2に記載された音声処理装置は、「物理的に大きいか、または多くの電力を消費する」ものであって、「補聴器に用いるには適していない」ものと理解されます。
従って、『引用文献2(段落[0012][0020][図1])には、音声処理装置について、マイクロホンからの信号をADC54b、ADC84でA/D変換した後の信号に基づいて雑音レベルの検出処理をすることが記載されて』いるとしても、『引用文献1におけるセンサー組立体18として、引用文献2に記載された音声処理装置に係る上記構成を採用すること』は、補聴器の大型化、部品点数の増加、消費電力の増大等を招くことが予想され、この点において引用文献1に記載された技術的思想に反することから、当業者が容易に想到できたものではないと思料します。」
しかしながら、ビデオカメラやICレコーダが補聴器と比較して物理的に大きく、大電力で動作するのは、撮像光学系や録音部等の構成を備えることに起因しており、必ずしもビデオカメラやICレコーダの音声処理系が大型で、大電力動作することを意味していない。そして、引用発明に対して引用例2に記載された発明を適用する際に、撮像光学系や録音部等を追加する必要はなく、音声処理系の構成の適用のみを考慮すれば良いことは当業者にとって明らかである。
よって、意見書における上記請求人の主張を採用することはできない。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-18 
結審通知日 2015-12-22 
審決日 2016-01-05 
出願番号 特願2013-249039(P2013-249039)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大野 弘  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 ゆずりは 広行
井上 信一
発明の名称 アナログ・フィルタリングを行う聴取装置およびそれに関連する方法  
代理人 特許業務法人快友国際特許事務所  
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