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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1314997
審判番号 不服2014-20361  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-08 
確定日 2016-05-18 
事件の表示 特願2011-536262「発光モジュール及びこれを備えたディスプレイ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 5月27日国際公開、WO2010/058960、平成24年 4月19日国内公表、特表2012-509574〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2009年11月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年11月18日、韓国)を国際出願日とする出願であって、平成25年11月27日付けで拒絶の理由が通知され、平成26年3月28日に手続補正がなされたが、同年7月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月8日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ、その後、当審において、平成27年7月24日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年10月27日に手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成27年10月27日付けの手続補正により補正された請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「配線パターンが設けられている基板(board)と、
前記基板の上に複数の発光素子と、
前記発光素子の間の領域に沿って延びて、前記基板及び前記発光素子をカバーする蛍光体フィルムと、
を含み、
前記蛍光体フィルムは、前記複数の発光素子のうちの第1発光素子の上部に配置された第1蛍光体領域と、前記複数の発光素子のうちの前記第1発光素子に隣接した第2発光素子の上に配置された第2蛍光体領域と、前記第1発光素子と前記第2発光素子との間において前記基板上に配置されて前記第1蛍光体領域と前記第2蛍光体領域とを連結する延長部と、を含み、
前記基板の底面から前記延長部の中心部の上面までの距離は、前記基板の底面から前記第1蛍光体領域の中心部の上面までの距離より小さく、
前記発光素子は、前記蛍光体フィルムの下の前記配線パターンと電気的に連結され、
前記第1発光素子及び前記第2発光素子は、UVLEDであり、
前記第1蛍光体領域は、青色蛍光体、緑色蛍光体、及び赤色蛍光体のうち、1種類の蛍光体を含み、前記第2蛍光体領域は、青色蛍光体、緑色蛍光体、及び赤色蛍光体のうち、前記第1蛍光体領域と異なる1種類の蛍光体を含み、
前記蛍光体フィルムは、前記発光素子の上に、ドーム形状を形成し、
前記第1蛍光体領域と前記第2蛍光体領域は、前記延長部によって直接連結されることを特徴とする発光モジュール。」(なお、下線は、請求人が手続補正書において付したものである。)

第3 刊行物の記載
(1)当審拒絶理由に引用した、本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である国際公開第2007/088501号(以下「引用文献」という。)には、図とともに以下の記載がある(なお、下線は当審で付した。以下同じ。)。

ア 「

……

……

」(第9ないし11頁のクレーム)
(日本語訳:なお、括弧と括弧内の数字は、省略した。
1.少なくとも1つの青色光源、
少なくとも1つの緑色光源、及び
少なくとも1つの赤色光源のアレイを有する白色光源であり、前記青色光源が、第1波長において光を放射することが可能な第1発光ダイオードと、前記第1波長の前記光の少なくとも一部を吸収するよう構成される第1波長変換材料とを有し、前記第1波長変換材料が、第2波長において光を放射することが可能である白色光源であって、前記第2波長が少なくとも500nmであることを特徴とする白色光源。
……
9.請求項1乃至8のいずれか一項に記載の白色光源であって、前記緑色光源が、第3波長において光を放射することが可能な第2発光ダイオードと、前記第3波長の前記光の少なくとも一部を吸収するよう構成される第2波長変換材料とを有し、前記第2波長変換材料が、第4波長において光を放射することが可能である白色光源。
……
16.請求項1乃至15のいずれか一項に記載の白色光源であって、前記赤色光源が、第5波長において光を放射することが可能な第3発光ダイオードと、前記第5波長の前記光の少なくとも一部を吸収するよう構成される第3波長変換材料とを有し、前記第3波長変換材料が、第6波長において光を放射することが可能である白色光源。)

イ 「

」(第5頁第21ないし26行)
(日本語訳:
本発明による白色光源における緑色光源及び赤色光源は、青色LED及び/若しくは紫外線LEDと波長変換器とを用いることによって、又は本質的に赤色及び/若しくは緑色のLEDを用いることによって、従来の方法で、構成され得る。しかしながら、このような従来の赤色及び/又は緑色のLEDと、上記の(部分的に変換される)青色LEDの組み合わせは、これまでに記載されていないことに注意されたい。)

ウ 「

」(第6頁第1ないし31行)
(日本語訳:
図1を参照すると、本発明による好ましい白色光源(1)は、少なくとも1つの青色光源(2)、少なくとも1つの緑色光源(3)及び少なくとも1つの赤色光源(4)のアレイを有する。各光源は、別々にアドレス指定可能なエンティティであり、即ち、各光源は、他の光源と関係なく制御され得る。
青色光源(2)は、青色LED(2')と、LED(2')の上に配置される蛍光体層(2'')とを有する。蛍光体層(2'')は、LED(2')と直接接触し得る、又はLED(2')と、蛍光体層(2'')との間にはエアギャップがあり得る。蛍光体層(2'')は、LED(2')の接触可能な面全体の上に配置され得る、又は LED(2')の前記面の一部の上に配置され得る。好ましくは、ダイの半分が厚い蛍光体層で覆われる代わりに、ダイ全体が、半分の厚さの蛍光体層で覆われる。色混合のためにも、後者が好ましい。
青色LED(2')は、青色光を放射し、蛍光体層(2'')は、放射される青色光の総量の約50%を吸収し、赤色光に変換する。従って、青色光源(2)から放射される光は、青色光と赤色光とを混合したものである。
緑色光源(3)は、青色LED(3')と、青色光を緑色光に変換する緑色蛍光体(3'')とを有してもよい。他の例においては、緑色光源(3)は、本質的に緑色のLED(図示せず)を有してもよい。
……
赤色光源(4)は、赤色LED(4')と、青色光を赤色光に変換する赤色蛍光体(4'')とを有してもよい。他の例においては、赤色光源(4)は、本質的に赤色のLED(図示せず)を有してもよい。)

エ 「

」(第8頁4ないし9行)
(日本語訳
赤色チャネルの青色ダイスは、(例えば20vol%分散度の蛍光体を使用し、45μmの厚い蛍光体/マトリックス層を塗布する)?9μmの蛍光体層厚を用いて赤色に変換される。モジュールの青色チャネルは、同じ分散度でコーティングされ得るが、厚さは、?20μmに限られるべきである(4μmの蛍光体)。これは、青色出力の50パーセントが薄い蛍光体層を用いて赤色に変換される、図3に表示されている色域を持つLEDモジュールをもたらす。)

オ 上記ウで引用する図1は、以下のものである。


(2)引用文献に記載された発明
ア 上記(1)アの記載によれば、引用文献には、
「少なくとも1つの青色光源、
少なくとも1つの緑色光源、及び
少なくとも1つの赤色光源のアレイを有する白色光源であって、
前記青色光源が、
第1波長において光を放射することが可能な第1発光ダイオードと、前記第1波長の前記光の少なくとも一部を吸収するよう構成される第1波長変換材料とを有し、前記第1波長変換材料が、第2波長において光を放射することが可能で、前記第2波長が少なくとも500nmであり、
前記緑色光源が、
第3波長において光を放射することが可能な第2発光ダイオードと、前記第3波長の前記光の少なくとも一部を吸収するよう構成される第2波長変換材料とを有し、前記第2波長変換材料が、第4波長において光を放射することが可能であり、
前記赤色光源が、
第5波長において光を放射することが可能な第3発光ダイオードと、前記第5波長の前記光の少なくとも一部を吸収するよう構成される第3波長変換材料とを有し、前記第3波長変換材料が、第6波長において光を放射することが可能である、白色光源。」
が記載されているものと認められる。

イ 上記(1)イないしエの記載に照らせば、
上記アの「緑色光源」は、紫外線LED(以下「第1紫外線LED」という。)と、紫外線の少なくとも一部を吸収して緑色光に変換する第2波長変換材料を有するものであってもよいものと認められる。
また、上記アの「赤色光源」は、紫外線LED(以下「第2紫外線LED」という。)と、紫外線の少なくとも一部を吸収して赤色光に変換する第3波長変換材料を有するものであってもよいものと認められる。

ウ 上記(1)ウの記載に照らして、図1を見ると、
上記イの「第2紫外線LED」は、「第1紫外線LED」に隣接したものであってもよいものと認められる。
また、「第1発光ダイオード」、「第1紫外線LED」及び「第2紫外線LED」は、支持部材上に搭載(実装)されることが理解できる。

エ 上記(1)エの記載によれば、
上記アの「第1波長変換材料」、「第2波長変換材料」及び「第3波長変換材料」は、それぞれ、「第1発光ダイオード」、「第1紫外線LED」及び「第2紫外線LED」上に塗布された「蛍光体/マトリックス層」であってもよいものと認められる。

オ 上記アないしエより、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「支持部材と、
支持部材上に搭載された第1波長において光を放射することが可能な第1発光ダイオードと、前記第1発光ダイオード上に塗布された、前記第1波長の前記光の少なくとも一部を吸収するよう構成される蛍光体/マトリックス層とを有し、前記蛍光体/マトリックス層が、第2波長において光を放射することが可能で、前記第2波長が少なくとも500nmである青色光源と、
支持部材上に搭載された第1紫外線LEDと、前記第1紫外線LED上に塗布された、紫外線の少なくとも一部を吸収して緑色光に変換する蛍光体/マトリックス層とを有する緑色光源と、
前記第1紫外線LEDに隣接する支持部材上に搭載された第2紫外線LEDと、前記第2紫外線LED上に塗布された、紫外線の少なくとも一部を吸収して赤色光に変換する蛍光体/マトリックス層とを有する赤色光源と、
を有する白色光源。」

第4 対比・判断
1 本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「第1紫外線LED」及び「第2紫外線LED」は、それぞれ、本願発明の「第1発光素子」及び「第2発光素子」に相当し、以下、同様に、
「第1紫外線LED」及び「第2紫外線LED」は、何れも「UVLED」に、
「白色光源」は、「発光モジュール」に、それぞれ、相当する。

(2)引用発明の「支持部材」と本願発明の「配線パターンが設けられている基板(board)」とは、「支持部材」である点で一致する。

(3)引用発明の「蛍光体/マトリックス層」は、「第1紫外線LED」及び「第2紫外線LED」上に塗布されたものであるから、発光素子をカバーするものであるといえる。
また、引用発明の「蛍光体/マトリックス層」と本願発明の「蛍光体フィルム」は、何れも、発光素子から放射される光の一部を他の波長に変換するものである。
してみると、引用発明と本願発明とは、
「発光素子をカバーする波長変換部材を含む」
点で一致する。

(4)引用発明の「蛍光体/マトリックス層」は、LED上に、所定形状で形成されていることは、当業者にとって明らかである。

(5)引用発明の「緑色光源」及び「赤色光源」における「蛍光体/マトリックス層」は、それぞれ、「緑色蛍光体」及び「緑色蛍光体」を含むことが当業者にとって明らかであることに照らせば、
引用発明と本願発明とは、
「前記波長変換部材は、前記複数の発光素子のうちの第1発光素子の上部に配置された第1領域と、前記複数の発光素子のうちの前記第1発光素子に隣接した第2発光素子の上に配置された第2領域と、を含み、
前記第1領域は、緑色蛍光体を含み、
前記第2領域は、赤色蛍光体を含む」
点で一致する。

(6)上記(1)ないし(5)から、引用発明と本願発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「支持部材と、
前記支持部材の上に複数の発光素子と、
前記発光素子をカバーする波長変換部材と、
を含み、
前記波長変換部材は、前記複数の発光素子のうちの第1発光素子の上部に配置された第1領域と、前記複数の発光素子のうちの前記第1発光素子に隣接した第2発光素子の上に配置された第2領域と、を含み、
前記第1発光素子及び前記第2発光素子は、UVLEDであり、
前記第1領域は、緑色蛍光体を含み、
前記第2領域は、赤色蛍光体を含み、
前記波長変換部材は、前記発光素子の上に、所定形状を形成している、発光モジュール。」

(7)一方で、本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
「支持部材」と「『前記支持部材の上』の『発光素子』」に関し、
本願発明は、「支持部材」が「配線パターンが設けられた基板(board)」であり、「発光素子」が「前記配線パターンと電気的に連結され」たものであるのに対して、
引用発明は、そのようなものではない点。

<相違点2>
波長変換部材に関して、
本願発明は、
a 「前記発光素子の間の領域に沿って延びて、前記基板及び前記発光素子をカバー」し、その下に配線パターンが設けられた「蛍光体フィルム」であって、
b 蛍光体フィルムは、
(a)「前記第1発光素子と前記第2発光素子との間において前記基板上に配置されて前記第1蛍光体領域と前記第2蛍光体領域とを連結する延長部を含み」、
(b)「前記基板の底面から前記延長部の中心部の上面までの距離は、前記基板の底面から前記第1蛍光体領域の中心部の上面までの距離より小さく」、
(c)「前記発光素子の上に、ドーム形状を形成し、前記第1蛍光体領域と前記第2蛍光体領域は、前記延長部によって直接連結される」のに対して、
引用発明は、塗布によって形成され、延長部を備えていない点。

2 判断
(1)上記<相違点1>について検討する。
ア 引用発明の「第1紫外線LED」及び「第2紫外線LED」を搭載する手段及び電流を供給する手段として、どのような手段を採用するかは、当業者が当該引用発明を実施する際に、適宜定める事項である。
ここで、基板に設けた配線パターンにLEDを電気的に接続して搭載する手段は、例示するまでもなく、本願の優先日時点で周知であることを踏まえると、引用発明において、「第1紫外線LED」及び「第2紫外線LED」を搭載する手段及び電流を供給する手段として、上記周知の手段を採用し、上記<相違点1>に係る本願発明の発明特定事項となすことは、当業者が適宜なし得たことである。

イ してみると、引用発明において、上記<相違点1>に係る本願発明の発明特定事項を備えることは、当業者が周知技術に基づいて容易になし得たことである。

(2)上記<相違点2>について検討する。
ア LEDを利用した発光モジュールの技術分野において、複数のLED上に蛍光体層を形成する手段として「蛍光体フィルム」を利用することは、当審拒絶理由で引用した特開2008-117879号公報( 【0019】及び図8)、特開2008-28100号公報(【0016】及び図2)、及び特開2007-123915号公報(【0024】、【0025】及び図4)に記載されているように、本願の優先日時点で周知である(以下「周知技術1」という。)。
また、基板上に搭載するLEDの形状として、ドーム状のものが、当審拒絶理由で引用した特開2008-166782号公報(図1)、特開2007-227680号公報(図1)、及び特開2008-227119号公報(図2)に記載されているように、本願の優先日時点で周知である(以下「周知技術2」という。)。

イ 上記周知技術1及び2を踏まえて検討する。
引用発明は、支持部材上に「第1紫外線LED」及び「第2紫外線LED」を搭載し、前記各LED上に「蛍光体/マトリックス層」を有しているところ、前記各LEDの形状として、上記周知技術2のドーム形状のものを採用するとともに、「蛍光体/マトリックス層」を形成する手段として、上記周知技術1の蛍光体フィルムを利用する手段を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

ウ 上記イのようにした引用発明は、上記<相違点2>に係る本願発明の発明特定事項を備えることになる。

エ 以上の検討によれば、引用発明において、上記<相違点2>に係る本願発明の発明特定事項を備えることは、当業者が上記周知技術1及び周知技術2に基づいて容易になし得たことである。

(3)効果
本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び周知技術の奏する効果から予測し得る範囲内のものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2号の規定により、特許を受けることができないものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-17 
結審通知日 2015-12-22 
審決日 2016-01-05 
出願番号 特願2011-536262(P2011-536262)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉野 三寛門 良成芝沼 隆太  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 星野 浩一
近藤 幸浩
発明の名称 発光モジュール及びこれを備えたディスプレイ装置  
代理人 岩瀬 吉和  
代理人 小野 誠  
代理人 金山 賢教  
代理人 重森 一輝  
代理人 市川 英彦  

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