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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1315005
審判番号 不服2014-26667  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-26 
確定日 2016-05-18 
事件の表示 特願2011-510681「異なる種類の撮像装置を有するモノリシックカメラアレイを用いた画像の撮像および処理」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月17日国際公開、WO2009/151903、平成23年 8月11日国内公表、特表2011-523538〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2009年5月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年5月20日、米国)を国際出願日として出願したものであって、平成23年1月12日付けで手続補正がなされ、平成25年7月11日付けで拒絶理由の通知がなされ、これに対し、平成26年1月16日付けで手続補正がなされたが、平成26年8月27日付けで拒絶査定がなされたものである。
本件は、上記拒絶査定を不服として平成26年12月26日付けで請求された拒絶査定不服審判である。

2.本願発明
本願の請求項1ないし25に係る発明は、平成26年1月16日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし25に記載されたとおりのものであり、そのうち、請求項14に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
なお、(A)?(H)については、説明のために当審で付したものである。(以下、「構成A」、・・・、「構成H」という。)

「(A)複数のセンサ素子が形成された半導体基板と、複数のレンズ素子を含むウェハレベルオプティクスと、を含むモノリシック集積モジュールを備え、
(B)前記ウェハレベルオプティクスおよび前記センサ素子は、複数のカメラを形成し、
(C)前記半導体基板は、各カメラを独立して動作可能にするように構成された制御回路を含み、
(D)前記各カメラは、分離された光学系および複数のセンサ素子を含み、かつシーンの画像を撮像するように構成され、
(E)前記各カメラの光学系は、各カメラが、他のカメラの視野に対してシフトされた視野を有するように構成され、かつ各シフトがシーンの視野でシフトされた固有のサブピクセルを含んで構成され、
(F)前記各カメラは、少なくとも3つの異なるカラーフィルタのうちの1つを含み、
(G)同一の型のフィルタを有するカメラは、前記複数のカメラの幾何学的中心の周囲に均一に分布する、
(H)カメラアレイ。」

3.刊行物1発明
原審の拒絶理由に引用された、特開2006-33493号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「撮像装置」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0002】
近年市場規模が大きくなりつつあるデジタルスチルカメラの市場においては、より携帯性に優れた小型・薄型のカメラに対するニーズが高まってきている。信号処理を担うLSI等の回路部品は、配線パターンの微細化などにより高機能で小型化が進んでいる。また、記録メディアも小型・大容量のものが廉価にて入手できるようになってきている。しかしながら、レンズとCCDやCMOSなどの固体撮像素子とで構成される撮像系の小型化は未だ十分とは言えず、より携帯性に優れたカメラを実現するためにも小型の撮像系の開発が要望されている。
【0003】
撮像系の小型化を実現するための構成として、平面上に複数の微小レンズを配列したレンズアレイ光学系を用いた撮像装置が知られている。従来の光軸上に複数のレンズを並べた光学系は、光軸方向に長くなるため体積が増大し、またレンズ径が大きいため収差が大きくなるという問題を有していた。これに対して、レンズアレイ光学系は、光軸方向に薄くでき、かつ個々の微小レンズ径が小さいため収差を比較的小さく抑えることが可能である。
【0004】
このようなレンズアレイを用いた撮像装置が特許文献1に開示されている。この撮像装置は、図6に示すように、被写体側から順に、複数の微小レンズ111aが同一平面内に配列された微小レンズアレイ111と、各微小レンズ111aからの光信号が互いに混信しないように分離するための格子枠状の隔壁112aからなる隔壁層112と、多数の光電変換素子113aが同一平面内に配置された受光素子アレイ113とを備える。1つの微小レンズ111aと、これに対応する、隔壁112aによって分離された1つの空間と、複数の光電変換素子113aとが、1つの結像ユニット115を構成する。個々の結像ユニット115において、微小レンズ111aが、対応する複数の光電変換素子113a上に被写体像を結像する。これにより、結像ユニット115ごとに撮影画像が得られる。この撮影画像の解像度は1つの結像ユニット115を構成する光電変換素子113aの数(画素数)に依存する。被写体に対する個々の微小レンズ111aの相対的位置が異なることにより、複数の光電変換素子113a上に形成される被写体像の結像位置が結像ユニット115ごとに異なる。その結果、得られる撮影画像は結像ユニット115ごとに異なる。この互いに異なる複数の撮影画像を信号処理することにより、一つの画像を得ることができる。
【0005】
この撮像装置では、個々の結像ユニット115を構成する画素数は少ないため、個々の結像ユニット115から得られる撮影画像の画質は低いが、複数の結像ユニット115においてそれぞれ得られる少しずつずれた撮影画像を用いて信号処理して画像を再構築することにより、多数の光電変換素子で撮影した場合と同様の画質の映像を得ることができる。
【0006】
図6の撮像装置では、微小レンズ111aからの光がこの微小レンズ111aと対応しない隣の結像ユニット115の光電変換素子113aに入射する(この現象を「クロストーク」と呼ぶ)と、高画質の画像を再構築できなかったり、迷光が発生して画質が劣化したり、光損失を生じたりする。従って、クロストークを防止するために、隔壁層112が用いられている。特許文献1では、これと同様の効果は、隔壁層112に代えて、結像ユニット115ごとに偏向方向が直交するように偏向透過フィルタを配置した偏向フィルタアレイを微小レンズアレイ111面及び受光素子アレイ113面にそれぞれ配置しても得られると記載されている。
【特許文献1】特開2001-61109号公報」

(イ)「【0025】
図1から図3において、10は第1平面内に縦横方向に配列された多数の画素11を備える固体撮像素子(例えば、CCDやCMOS)、20は、第1平面と平行で且つ離間した第2平面内に縦横方向に配列された複数の微小レンズ21を備える微小レンズアレイである。
【0026】
31は、第1平面と平行で、且つ第1平面よりも被写体側の第3平面内に縦横方向に配列された複数のカラーフィルタを備える第1カラーフィルタアレイである。32は、第1平面と平行で、且つ第3平面と第1平面との間に位置する第4平面内に縦横方向に配列された複数のカラーフィルタを備える第2カラーフィルタアレイである。本実施の形態では、第1及び第2カラーフィルタアレイ31,32は、赤色光を選択的に透過するカラーフィルタRと、緑色光を選択的に透過するカラーフィルタGと、青色光を選択的に透過するカラーフィルタBとを備え、これらが格子枠状に区分された各領域内に市松模様状に配置されている。第1カラーフィルタアレイ31と第2カラーフィルタアレイ32とは、カラーフィルタR,G,Bの配置に関して同一である。
【0027】
1つの微小レンズ21に対して、第1カラーフィルタアレイ31を構成する赤・緑・青のうちの何れか一色のカラーフィルタ、第2カラーフィルタアレイ32を構成する赤・緑・青のうちの何れか一色のカラーフィルタ、及び複数の画素11が対応し、これらによって1つの結像ユニット40が構成される。同じ結像ユニット40を構成する第1カラーフィルタアレイ31のカラーフィルタの色と第2カラーフィルタアレイ32のカラーフィルタの色とは一致する。」

(ウ)「【0032】
このように、本発明の撮像装置は、各結像ユニット40が同一色のカラーフィルタを光軸方向に2層備えている。更に、第1及び第2カラーフィルタアレイ31,32では色の異なるカラーフィルタR,G,Bが市松模様を構成するように配置されている。即ち、任意の1つのカラーフィルタの色と、このカラーフィルタの4つの辺を挟んで縦横方向に隣り合う4つのカラーフィルタの色とが異なるように、カラーフィルタR,G,Bが配置されている。この結果、上記光線R2のように、第1カラーフィルタアレイ31を通過後、第2カラーフィルタアレイ32に入射するまでの間に縦横方向に隣り合う結像ユニット40間の境界を越える光線は第2カラーフィルタアレイ32を通過することができない。従って、クロストークの発生を防止することができる。これにより、画質劣化を少なくでき、また、迷光の発生を抑えることができる。この結果、高画質画像を撮影することができる。」

(エ)「【0037】
図3(A)に示すように、結像ユニット40ごとに、微小レンズアレイ20の微小レンズ21は、被写体90の像91を固体撮像素子10上に結像する。固体撮像素子10の各受光部(画素)11は入射した光束を光電変換する。ここで、固体撮像素子10の水平軸をx軸、垂直軸をy軸とし、位置(x,y)にある受光部11からの信号をI(x,y)とすると、固体撮像素子10に含まれる全ての受光部11についての信号I(x,y)が読み出される(ステップ101)。
【0038】
次に、この各受光部11からの信号I(x,y)を結像ユニット40ごとに分割する。即ち、図3(B)に示すように、受光部11がm列×n行に配置された結像ユニット40内の第i列、第k行の位置にある受光部11の位置を(i,k)(m,n)とし、この受光部11からの信号をI(i,k)(m,n)とすると、上記各信号I(x,y)を結像ユニット40内における信号I(i,k)(m,n)として取り扱う。この結果、結像ユニット40ごとにm列×n行の画素からなる画像が再構成される(ステップ103)。
【0039】
その後、異なる結像ユニット40間において、信号I(i,k)(m,n)を処理して1枚の画像を再構築する(ステップ105)。この信号処理としては、上記特許文献1に記載された方法を用いることができ、その詳細説明を省略する。結像ユニット40内における被写体像91の形成位置が結像ユニット40ごとに異なるために、位置(i,k)が同じ受光部11からの信号I(i,k)(m,n)は結像ユニット40ごとに異なる。従って、1つの結像ユニット40に含まれる受光部11の数(m×n個)を遙かに超えた高解像度の画像が得られる。」

このような事項を踏まえ、上記(ア)?(エ)の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、

(1)上記(イ)の段落【0025】?【0027】、上記(エ)の段落【0038】、図1?図3の記載から、刊行物1には、縦横方向に配列された複数の微小レンズを備える微小レンズアレイのうちの1つの微小レンズ、カラーフィルタアレイを構成するカラーフィルタR,G,Bのうちの何れか一色のカラーフィルタ、縦横方向に配列された多数の画素を備える固体撮像素子のうちのm列×n行に配置された複数の画素により構成される結像ユニットが、縦横方向に複数配置されている撮像装置が記載されており、また、結像ユニットごとにm列×n行の画素からなる画像が再構成されるものである。
ここで、特に、図1の記載によれば、
縦横方向に配列された複数の微小レンズを備える微小レンズアレイは、5×5のマトリクス配置された微小レンズを備える微小レンズアレイといえ、
カラーフィルタアレイは、5×5のマトリクス配置されたカラーフィルタより構成されるカラーフィルタアレイといえ、
結像ユニットが、縦横方向に複数配置されているとは、結像ユニットが、5×5のマトリクス配置されているといえる。
また、結像ユニットが、m列×n行の画素からなることは、m×nのマトリクス配置された画素を含んでいるといえる。
そして、結像ユニットが、5×5のマトリクス配置されていることから、縦横方向に配列された多数の画素を備える固体撮像素子は、(m×5)×(n×5)のマトリクス配置されているといえる。

すなわち、刊行物1の撮像装置は、(m×5)×(n×5)のマトリクス配置された画素を有する固体撮像素子と、5×5のマトリクス配置された微小レンズを備える微小レンズアレイと、を含み、
5×5のマトリクス配置された微小レンズを備える微小レンズアレイおよび(m×5)×(n×5)のマトリクス配置された画素は、5×5のマトリクス配置されている結像ユニットを構成し、
各結像ユニットは、1つの微小レンズおよびm×nのマトリクス配置された画素を含み、結像ユニットごとにm×nのマトリクス配置された画素からなる画像が再構成され、
各結像ユニットは、5×5のマトリクス配置されたカラーフィルタより構成されるカラーフィルタアレイを構成するカラーフィルタR,G,Bのうちの何れか一色のカラーフィルタを含むものといえる。

(2)上記(エ)の段落【0039】の記載から、刊行物1の撮像装置は、異なる結像ユニット間において、特許文献1(特開2001-61109号公報)に記載された方法により、1つの結像ユニットに含まれる受光部11の数(m×n個)を遙かに超えた高解像度の画像を再構築するものである。
ここで、上記(ア)の段落【0004】?【0006】の記載から、特許文献1(特開2001-61109号公報)に記載された方法は、被写体に対する個々の微小レンズの相対的位置が異なることにより、複数の結像ユニットにおいてそれぞれ得られる少しずつずれた撮影画像を用いて画像を再構築することにより得られるものである。

そうすると、刊行物1の撮像装置は、異なる結像ユニット間において、被写体に対する個々の微小レンズの相対的位置が異なることにより、複数の結像ユニットにおいてそれぞれ得られる少しずつずれた撮影画像を用いて、1つの結像ユニットに含まれる受光部の数(m×n個)を遙かに超えた高解像度の画像を再構築するものである。

(3)上記(ウ)の段落【0032】、図1の記載から、刊行物1の撮像装置は、5×5のマトリクスのマトリクス配置されたカラーフィルタより構成されるカラーフィルタアレイの各カラーフィルタR,G,Bが図1のような市松模様状に配置されているものを含むものであり、5×5のマトリクス配置されたカラーフィルタより構成されるカラーフィルタアレイの中心に存在するカラーフィルタRが(0,0)に位置するとした場合に、カラーフィルタRは、(2,-2)、(2,0)、(2,2)、(0,-2)、(0,0)、(0,2)、(-2,-2)、(-2,0)、(-2,2)に位置し、カラーフィルタGは、(2,-1)、(2,1)、(1,-2)、(1,0)、(1,2)、(0,-1)、(0,1)、(-1,-2)、(-1,0)、(-1,2)、(-2,-1)、(-2,1)に位置し、カラーフィルタBは、(1,-1)、(1,1)、(-1,-1)、(-1,1)に位置している。


そうすると、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が開示されている。
なお、(a)?(g)については、説明のために当審にて付したものである。(以下、「構成a」、・・・、「構成g」という。)

「(a)(m×5)×(n×5)のマトリクス配置された画素を有する固体撮像素子と、5×5のマトリクス配置された微小レンズを備える微小レンズアレイと、を含み、
(b)5×5のマトリクス配置された微小レンズを備える微小レンズアレイおよび(m×5)×(n×5)のマトリクス配置された画素は、5×5のマトリクス配置されている結像ユニットを構成し、
(c)各結像ユニットは、1つの微小レンズおよびm×nのマトリクス配置された画素を含み、結像ユニットごとにm×nのマトリクス配置された画素からなる画像が再構成され、
(d)異なる結像ユニット間において、被写体に対する個々の微小レンズの相対的位置が異なることにより、複数の結像ユニットにおいてそれぞれ得られる少しずつずれた撮影画像を用いて、1つの結像ユニットに含まれる受光部の数(m×n個)を遙かに超えた高解像度の画像を再構築し、
(e)各結像ユニットは、5×5のマトリクス配置されたカラーフィルタより構成されるカラーフィルタアレイを構成するカラーフィルタR,G,Bのうちの何れか一色のカラーフィルタを含み、
(f)5×5のマトリクス配置されたカラーフィルタより構成されるカラーフィルタアレイの各カラーフィルタR,G,Bが、5×5のマトリクス配置されたカラーフィルタより構成されるカラーフィルタアレイの中心に存在するカラーフィルタRを(0,0)に位置するとした場合に、カラーフィルタRは、(2,-2)、(2,0)、(2,2)、(0,-2)、(0,0)、(0,2)、(-2,-2)、(-2,0)、(-2,2)に位置し、カラーフィルタGは、(2,-1)、(2,1)、(1,-2)、(1,0)、(1,2)、(0,-1)、(0,1)、(-1,-2)、(-1,0)、(-1,2)、(-2,-1)、(-2,1)に位置し、カラーフィルタBは、(1,-1)、(1,1)、(-1,-1)、(-1,1)に位置するように配置されている、
(g)撮像装置。」

4.本願発明と刊行物1発明との対比と一致点・相違点の認定

ア.対比

(ア-1)構成Aについて
刊行物1発明の構成aの「(m×5)×(n×5)のマトリクス配置された画素を有する固体撮像素子」、「5×5のマトリクス配置された微小レンズ」は、本願発明の構成Aの「複数のセンサ素子が形成された半導体基板」、「複数のレンズ素子」に相当する。
ここで、刊行物1発明の構成aの「5×5のマトリクス配置された微小レンズ」は、「微小レンズアレイ」であるが、本願発明の構成Aのように、「複数のレンズ素子(5×5のマトリクス配置された微小レンズ)」が「ウェハレベルオプティクス」を構成するものでない点で相違するものの、「複数のレンズ素子を含む構成」である点で共通する。
また、刊行物1の構成aは、「固体撮像素子」と「微小レンズアレイ」がどのように組み立てられているのか、具体的な構成の記載がないのに対し、本願発明の構成Aは、「半導体基板と、」「ウェハレベルオプティクス」が、「モノリシック集積モジュール」を構成する点で相違する。
したがって、刊行物1発明の構成aと本願発明の構成Aは、「複数のセンサ素子が形成された半導体基板と、複数のレンズ素子を含む構成と、を含む」点で共通する。

(ア-2)構成Bについて
刊行物1発明の構成bの「5×5のマトリクス配置された微小レンズを備える微小レンズアレイ」は、複数の微小レンズを含む構成であり、本願発明の構成Bの「前記ウェハレベルオプティクス」のウェハレベルオプティクスは、構成Aのような「複数のレンズ素子を含むウェハレベルオプティクス」であり、上記(ア-1)で論じたように、刊行物1発明の「5×5のマトリクス配置された微小レンズ」は、「ウェハレベルオプティクス」を構成するものでない点で相違するものの、本願発明の「複数のレンズ素子」に相当するので、刊行物1発明の構成bの「5×5のマトリクス配置された微小レンズを備える微小レンズアレイ」と、本願発明の構成Bの「前記ウェハレベルオプティクス」は、「複数のレンズ素子を含む構成」である点で共通する。
刊行物1発明の構成bの「(m×5)×(n×5)のマトリクス配置された画素」は、本願発明の構成Bの「前記センサ素子」に相当する。
刊行物1発明の構成bの「5×5のマトリクス配置されている結像ユニット」とは、複数の結像ユニットが配置されていることであり、構成dより、各結像ユニットは、同じ被写体について少しずつずらした撮影画像を得ているものである。そうすると、刊行物1発明の構成bの「結像ユニット」は、撮影をするものといえ、本願発明の構成Bの「カメラ」に相当する。
よって、刊行物1発明の構成bの「5×5のマトリクス配置されている結像ユニットを構成」は、本願発明の構成Bの「複数のカメラを形成」に相当する。
したがって、刊行物1発明の構成bと本願発明の構成Bは、「前記複数のレンズ素子を含む構成および前記センサ素子は、複数のカメラを形成」する点で共通する。

(ア-3)構成Cについて
刊行物1発明には、半導体基板が、各カメラを独立して動作可能にするように構成された制御回路を含むことに関する記載がなく、本願発明の構成Cに対応する構成を備えていない。

(ア-4)構成Dについて
刊行物1発明の構成cの「各結像ユニット」、「m×nのマトリクス配置された画素」は、本願発明の構成Dの「前記各カメラ」、「複数のセンサ素子」に相当する。
刊行物1発明の構成cの「1つの微小レンズ」は、複数の微小レンズを含む微小レンズアレイのうちの1つの微小レンズを指し、他の微小レンズとは分離されているといえる。また、微小レンズは、光学系であるといえるので、刊行物1発明の構成cの「1つの微小レンズ」は、本願発明の構成Dの「分離された光学系」に相当する。
刊行物1発明の構成cの「m×nのマトリクス配置された画素からなる画像が再構成」とは、各結像ユニットが、被写体を撮像することによるものであるから、各結像ユニットは、被写体を撮像するように構成されているといえ、本願発明の構成Dの「前記各カメラは、」「シーンの画像を撮像するように構成」に相当する。
したがって、刊行物1発明の構成cは、本願発明の構成Dに相当する。

(ア-5)構成Eについて
刊行物1発明の構成dの「少しずつずれた撮影画像を用いて、1つの結像ユニットに含まれる受光部の数(m×n個)を遙かに超えた高解像度の画像」とは、画素単位よりも細かい大きさで画素ずらしをすることにより生成される高解像度の画像のことであり、構成dは、『各結像ユニットの微小レンズは、各結像ユニットが、他の結像ユニットにおいて得られる撮影範囲に対して少しずつずらした撮影範囲となるようにし、少しずつずらすことは、画素単位よりも細かいずれによって定まるずれを有する画素を含むようにするものである』といえる。
そうすると、刊行物1発明の構成dの『各結像ユニット』、『微小レンズ』、『他の結像ユニットにおいて得られる撮影範囲』、『少しずつずらした撮影範囲』、『少しずつずらすことは、画素単位よりも細かいずれによって定まるずれを有する画素を含む』は、本願発明の構成Eの「前記各カメラ」、「光学系」、「他のカメラの視野」、「シフトされた視野」、「各シフトがシーンの視野でシフトされた固有のサブピクセルを含んで」に相当する。
したがって、刊行物1発明の構成dは、本願発明の構成Eに相当する。

(ア-6)構成Fについて
刊行物1発明の構成eの「各結像ユニット」、「5×5のマトリクス配置されたカラーフィルタより構成されるカラーフィルタアレイを構成するカラーフィルタR,G,Bのうちの何れか一色のカラーフィルタ」は、本願発明の構成Fの「前記各カメラ」、「少なくとも3つの異なるカラーフィルタのうちの1つ」に相当するので、刊行物1発明の構成eは、本願発明の構成Fに相当する。

(ア-7)構成Gについて
刊行物1発明の構成fについて、カラーフィルタRは、(2,-2)、(2,0)、(2,2)、(0,-2)、(0,0)、(0,2)、(-2,-2)、(-2,0)、(-2,2)に位置しているので、マトリクスの中心(0,0)に対して、周囲に均一に分布しているものといえる。また、カラーフィルタGやカラーフィルタBについても同様に、マトリクスの中心(0,0)に対して、周囲に均一に分布しているものといえる。
したがって、カラーフィルタR,G,Bいずれにおいても、カラーフィルタアレイの中心に対して、周囲に均一に分布している構成を含むものであるから、刊行物1発明の構成fは、本願発明の構成Gに相当する。

(ア-8)構成Hについて
刊行物1発明の構成gの「撮像装置」は、5×5のマトリクス配置されている結像ユニットで構成されているので、結像ユニットがアレイ状に配置されているといえる。
そして、結像ユニットは、本願発明の「カメラ」に相当するので、刊行物1発明の構成gは、本願発明の構成Hに相当する。

イ.一致点・相違点

したがって、刊行物1発明と本願発明は、以下の点で一致ないし相違する。

[一致点]
「複数のセンサ素子が形成された半導体基板と、複数のレンズ素子を含む構成と、を含み、
前記複数のレンズ素子を含む構成および前記センサ素子は、複数のカメラを形成し、
前記各カメラは、分離された光学系および複数のセンサ素子を含み、かつシーンの画像を撮像するように構成され、
前記各カメラの光学系は、各カメラが、他のカメラの視野に対してシフトされた視野を有するように構成され、かつ各シフトがシーンの視野でシフトされた固有のサブピクセルを含んで構成され、
前記各カメラは、少なくとも3つの異なるカラーフィルタのうちの1つを含み、
同一の型のフィルタを有するカメラは、前記複数のカメラの幾何学的中心の周囲に均一に分布する、
カメラアレイ。」

[相違点]

(相違点1)
複数のセンサ素子と複数のレンズ素子に関し、本願発明は、
「複数のレンズ素子」が、「ウェハレベルオプティクス」を構成し、
「複数のセンサ素子が形成された半導体基板」とともに、「モノリシック集積モジュール」を構成し、
「ウェハレベルオプティクスおよび前記センサ素子」により複数のカメラが形成されるのに対し、
刊行物1発明は、
「5×5のマトリクス配置された微小レンズ(複数のレンズ素子)」は「微小レンズアレイ」であるが、「ウェハレベルオプティクス」を構成しているか不明であり、
「複数のセンサ素子が形成された半導体基板」とともに、「モノリシック集積モジュール」を構成するものであるか不明であり、
「微小レンズアレイおよび(m×5)×(n×5)のマトリクス配置された画素(前記センサ素子)」により複数のカメラが形成されるが、「ウェハレベルオプティクス」を構成しているか不明であるため、「ウェハレベルオプティクスおよび前記センサ素子」により複数のカメラが形成されるか不明である点。

(相違点2)
本願発明は、前記半導体基板は、各カメラを独立して動作可能にするように構成された制御回路を含む構成であるのに対し、刊行物1発明は、そのような構成を備えていない点。

ウ.当審の判断
上記相違点について検討する。

(ウ-1)相違点1について
半導体基板に形成されたセンサ素子が、複数のレンズ素子とともに一体化され集積されているモジュールとなっている構成は、撮像装置として、出願時に周知の構成(例えば、特開2008-10535号公報の段落【0002】、【0010】?【0012】、特開2006-345233号公報の段落【0002】、【0003】、【0011】?【0015】、特開2002-368235号公報の段落【0006】?【0009】等を参照。)である。
また、レンズ素子が、ウェハレベルオプティクスを構成することについても、出願時において周知の構成(例えば、米国特許第6049430号明細書の1欄8行以降のwafer level opticsの製造に関する記載、国際公開第2008/020899号の段落[0462]等のwafer-level opticsに関する記載を参照。)である。

刊行物1発明のような「複数の画素を有する固体撮像素子と、複数の微小レンズを含む微小レンズアレイと、を含」む撮像装置において、画素(センサ素子)と微小レンズ(レンズ素子)を含む構成として、具体的な構成を考えた場合に、上述したような、撮像装置として周知の構成である、半導体基板に形成されたセンサ素子が、複数のレンズ素子とともに一体化され集積されているモジュールを採用することは、当業者が容易に想到し得るものであり、その際に、上記周知の構成である、レンズ素子がウェハレベルオプティクスを構成するという構成を勘案することにより、本願発明の「複数のセンサ素子が形成された半導体基板と、複数のレンズ素子を含むウェハレベルオプティクスと、を含むモノリシック集積モジュールを備え」る構成とすることは、当業者が、適宜なし得るものである。
そして、複数の微小レンズ(レンズ素子)を含むウェハレベルオプティクスという構成とした場合には、ウェハレベルオプティクスは、複数のカメラを形成するものとなる。

(ウ-2)相違点2について
光センサの各領域が、独立して動作可能にするような制御回路を設けることは、例えば、原審の拒絶理由に引用された、特表2007-520107号公報の段落【0028】等に記載されているように周知の技術(なお、各領域を独立して動作可能にする構成は、特開2006-135823号公報の段落【0032】等も参照。また、基板に制御回路を設けることは、普通に行われていることである。)のである。
刊行物1発明において、各結像ユニットは、少しずつずれた撮影画像を用いるものであるから、撮影に際して、各結像ユニットで得られる撮影画像を調整するために、独立に制御できるようにすることは当然に考えることであり、その場合に、上記周知の構成を採用して、本願発明の「前記半導体基板は、各カメラを独立して動作可能にするように構成された制御回路を含」むような構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

よって、各相違点については、格別のものではなく、本願発明に関する作用・効果も、その容易想到である構成から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、刊行物1発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項14に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-12-08 
結審通知日 2015-12-15 
審決日 2016-01-04 
出願番号 特願2011-510681(P2011-510681)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 勝久  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 渡辺 努
小池 正彦
発明の名称 異なる種類の撮像装置を有するモノリシックカメラアレイを用いた画像の撮像および処理  
代理人 正林 真之  

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