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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1315133
審判番号 不服2015-17091  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-17 
確定日 2016-06-14 
事件の表示 特願2012-141295「静電容量検出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月16日出願公開、特開2014- 6662、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年6月22日の出願であって、平成27年2月19日付けで拒絶理由が通知され、同年7月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月17日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?3に係る各発明は、特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】
複数の静電容量検出用の電極と、
前記電極のうち1の電極を選択して検出電極とすると共に、前記検出電極以外の電極を第1の電位状態とし、又は前記第1の電位状態と異なる第2の電位状態として、前記第1の電位状態のときの前記検出電極の電圧、及び前記第2の電位状態のときの前記検出電極の電圧を測定する静電測定部と、
前記第1及び第2の電位状態のときのそれぞれの検出電極の電圧に基づく測定値を比較することにより、前記電極間のショート状態を判定する判定部と、
を有することを特徴とする静電容量検出装置。」

第3 原査定の理由の概要
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧を参照下さい。)

文献1には、静電容量式タッチパネルの検査で(段落12)、被測定電極2以外の電極を全て接地させ、被測定電極2にパルス電圧を印加し、接地時の静電容量の両端間の電圧の充電特性の変化に基づいて、電極が短絡しているか否かを検出する(段落65,図6)ものが記載されている。
ここで、被測定電極2以外の電極は接地のみで検出しているが、入力パルス電圧に応じた静電容量性の検出電位を観測する際、静電容量の端点を解放とするか特定の電位に固定とするかは、システムのノイズ特性などに応じて、複数の電位で測定するなど適宜選択される選択事項に過ぎない。
本願においても段落42-43や図4に示すように、短絡時には、Hi、オープン、Loの設定に応じた出力特性となることを示しているに過ぎない。
そのため、文献1から本願とすることは当業者であれば容易に想到される。

引 用 文 献 等 一 覧
1.国際公開第2011/121862号


先の引用文献1には、複数の静電容量検出用の電極を有し(段落[0039],[図1])、被測定電極2以外の電極を全て接地させ(段落[0065])、被測定電極2を放電状態から電圧を印加するサイクルを繰り返すことで、充電する際の充電過渡応答から、短絡を判断する(段落[0051]-[0052],[図3-4])ものが記載されている。
本願と引用文献1の相違点は、引用文献1では被測定電極2と被測定電極2の電位を逆電位にして、同一の短絡の判断処理を行なわない点である。

出願人は、先の意見書で、「検出電極以外の電極の電位を変更すれば、検出値は異なる」旨主張している。
たしかに、容量性結合しているので、検出値が異なることは明らかである。
しかし、回路基板などの配線の短絡試験において、測定後に、測定端子間で電位極性を逆にして再度測定することは周知の技術(例えば、下記の引用文献2-3など)であり、引用文献1において、逆電位にして再度測定することは、検出精度の仕様などに応じて適宜選択される設計事項に過ぎない。

引用文献2には、接触不良を検出する際、充電電圧の極性を変えて2度印加し、両過渡期間の応答から判定を行う(段落[0023])ものが記載されている。
引用文献3には、プリント配線板の絶縁不良の検査で、プローブ間に印加する電圧の極性を変えて再度検査する(段落[0012]-[0013])ものが記載されている。

<引用文献等一覧>
1.国際公開第2011/121862号
2.特開平7-218573号公報(周知技術を示す文献:新たに引用された文献)
3.特開2008-203077号公報(周知技術を示す文献:新たに引用された文献)

第4 当審の判断
1.引用例の記載事項
原査定で引用された、国際公開第2011/121862号(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
a)「[0039]〔静電容量式タッチパネルの検査装置〕 図1は、本発明に係る実施形態の静電容量式タッチパネル1の検査装置100を概略的に示した平面図である。本実施形態において、検査対象となる静電容量式タッチパネル1は、9個の水平電極X0?X8と、7個の垂直電極Y0?Y6とを備えている。そして、各水平電極X0?X8から図中下方に9本のリード線a0?a8が夫々延伸し、各垂直電極Y0?Y6から図中側方に7本のリード線b0?b6が夫々延伸する。なお、静電容量式タッチパネル1において、リード線a0?a8の夫々は、水平電極X0?X8の夫々の一部を構成し、リード線b0?b6の夫々は、垂直電極Y0?Y6の夫々の一部を構成する。更に、リード線a0?a8の各々はリード線b0?b6の各々と平面視で交差しているが、断面視では所定の距離をおいて離間している。すなわち、両者は平面視における交差部で互いに接近した状態となっている。この接近部がコンデンサとして機能し、静電容量が発生し得る。
[0040] 検査装置100は、主要な構成要素として、静電容量検出回路(監視手段)10、状態判定部(判定手段)20を備えている。静電容量検出回路10は、検査対象となる被測定電極2と被測定電極2に対抗する対抗電極3のうちの測定対象となる対抗電極(特定対抗電極4)との間(前述の接近部)における静電容量の両端間の電圧を監視する。静電容量検出回路10は、プログラマブルロジックデバイス(FPGA)を含むように構成される。静電容量検出回路10がFPGAの機能を備えることにより、水平電極X0?X8及び垂直電極Y0?Y6を、夫々個別にスイッチングすることが容易となる。また、静電容量検出回路10は、複数の電極に対して信号を個別に入力する信号入力手段として、更に、被測定電極2に対して検査パターン信号を入力するとともに、被測定電極2及び特定対抗電極4以外の電極に対して検査パターン信号と同期したパルス信号を入力する信号入力手段として機能する。更にまた、静電容量検出回路10は、複数の電極を個別に接地させる接地手段として機能する。
[0041] 被測定電極2は、水平電極X0?X8及び垂直電極Y0?Y6のうち検査対象となる任意の電極である。対抗電極3は、被測定電極2に対抗して配置されている。例えば、被測定電極2が垂直電極Y0?Y6のうちの一つの場合、対抗電極3は水平電極X0?X8の全てである。また、被測定電極2が水平電極X0?X8のうちの一つの場合、対抗電極3は垂直電極Y0?Y6の全てである。ここで、例えば、Y6を被測定電極2とする場合、対抗電極X0?X8の中から測定対象の対抗電極を特定対抗電極4として選択する。
[0042] 状態判定部20は、静電容量検出回路10の監視結果に基づいて被測定電極2の状態を判定する。状態判定部20は、被測定電極2の導通状態を判定する導通判定部30と被測定電極2と被測定電極2以外の電極との短絡を判定する短絡判定部40とを備える。」([0039]?[0042]の記載。下線は当審で付与。以下、同様。)

b)「[0045] 図3は、静電容量検出回路10の説明図である。(a)は、静電容量検出回路10の回路図であり、(b)は被測定電極2と特定対抗電極4との間における静電容量の両端間の電圧の経時変化を示すグラフの一例である。静電容量検出回路10は、被測定電極2と特定対抗電極4との間における静電容量の両端間の電圧を監視する。静電容量検出回路10は、リード線a0#a8のライン電位(すなわち、各水平電極X0#X8とグラウンドとの間における静電容量の両端間の電圧)と、リード線b0#b6のライン電位(すなわち、各垂直電極Y0#Y6とグラウンドとの間における静電容量の両端間の電圧)とを同時に監視可能とするために、回路構成を集積化するか、あるいは回路自体を複数個設けることも可能である。
[0046] 被測定電極2(例えばリード線b6)と特定対抗電極4(例えばリード線a0)とはオペアンプ11の一方の入力に接続され、被測定電極2と特定対抗電極4との間における静電容量の両端間の電圧に相当する被測定電位(Vm)と基準電位(Vref)との電位差が常時監視される。なお、図3(a)中のVccは静電容量検出回路10の電源電位である。
[0047] 検査を行う前に、先ずスイッチ12をONにしてグラウンドに接続し、被測定電極2と特定対抗電極4との被測定電位(Vm)が夫々略ゼロとなるように完全に放電させる(放電状態)。このとき、基準電位(Vref)が被測定電位(Vm)を上回るため、図3(b)の上段に示したように、オペアンプ11から出力される信号はLowからHighに切り替わる。
[0048] 次に、被測定電極2に電位を加える。被測定電極2に電位が加わると、被測定電極2の被測定電位(Vm)(静電容量の両端間の電圧)が時間の経過とともに徐々に上昇する。このとき、電源電位(Vcc)とグラウンドとの間に設けた第1可変抵抗13の抵抗値と第2可変抵抗14の抵抗値との比率を適宜変更することにより、静電容量の両端間の電圧を完全な充電状態にしたり、あるいは任意の電圧にプリセットしたりすることができる。
[0049] 被測定電位(Vm)が基準電位(Vref)を超えると、オペアンプ11から出力される信号はHighからLowに切り替わる。従って、オペアンプ11からHigh信号が出力されている時間tが、被測定電極2と特定対抗電極4とにおける静電容量の両端間の電圧が放電状態から基準電位(Vref)に達するのに要した時間tとなる。被測定電極2のリード線が正常(すなわち、良品)であれば、この時間tは一定の範囲内に収まる。一方、被測定電極2のリード線が切れかかっていたり、断線していたり、あるいは他のリード線と短絡していたりすると、時間tが異常に長くなるか、あるいは静電容量の両端間の電圧が基準電位(Vref)に達しないため時間tを測定できなくなる。従って、時間tを測定することにより、静電容量式タッチパネル1の正常又は異常を判定が可能となる。
[0050] 本発明では、静電容量式タッチパネル1の正常又は異常を、状態判定部20で判定する。状態判定部20は、例えば、汎用のパーソナルコンピュータで構成することができる。
[0051] 状態判定部20は、被測定電極2へ電位を加え、被測定電極2と特定対抗電極4との間における静電容量の両端間の電圧を放電状態から充電する際、静電容量の両端間の電圧が所定時間範囲内で基準電位(Vref)に達したか否かに基づいて判断を行う。例えば、静電容量の両端間の電圧が基準電圧に達する時間が所定時間範囲より長い場合は、被測定電極2は導通状態にないと判定する。従って、被測定電極2のリード線が切れかかっていたり、あるいは断線していたりすることが判明する。
[0052] また、静電容量検出回路10が、被測定電極2以外の電極を全て接地させておいた場合には、接地時の静電容量の両端間の電圧の変化に基づいて、状態判定部20は、被測定電極2と被測定電極2以外の電極とが短絡しているか否かを判定する。例えば、被測定電極2が被測定電極2以外の電極と短絡している場合は被測定電極2と被測定電極2以外の電極との間における静電容量に電荷が充電されない。一方、被測定電極2が被測定電極2以外の電極と短絡していない場合は被測定電極2と被測定電極2以外の電極との間における静電容量に電荷が充電される。」([0045]?[0052]の記載。)

c)「[0065] 工程1:静電容量検出回路10は、被測定電極2以外の電極を全て接地させる。被測定電極2がリード線a1と短絡している場合、接地時の静電容量には充電されず、被測定電極2の電位は基準電位(Vref)まで充電されない。従って、短絡判定部40は被測定電極2と被測定電極2以外の電極とが短絡しているか否かを判定し得る。」([0065]の記載。)

d)「[0068] このように、本発明の静電容量式タッチパネルの検査方法を実行すれば、被測定電極2以外の電極を全て接地させる。従って、被測定電極2が被測定電極2以外の電極と短絡している場合は被測定電極2と被測定電極2以外の電極との間における静電容量に電荷が充電されず、被測定電極2が被測定電極2以外の電極と短絡していない場合は被測定電極2と被測定電極2以外の電極との間における静電容量に電荷が充電される。その結果、被測定電極2が被測定電極2以外の電極と短絡しているか否かを判定することができる。更に、被測定電極2と被測定電極2以外の電極とが短絡していると判定した場合、電極の接地を1つずつ解除し、被測定電極2と被測定電極2以外の電極との間に静電容量が発生するまで繰り返すため、被測定電極2と短絡状態にある電極を特定できる。その結果、被測定電極2と短絡している電極を特定することが出来る。」([0068]の記載。)

上記下線部及び関連箇所の記載によれば、引用例には以下の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されている。
「検査装置100は、静電容量検出回路(監視手段)10、状態判定部(判定手段)20を備え、
静電容量検出回路10は、検査対象となる被測定電極2と被測定電極2に対抗する対抗電極3のうちの測定対象となる対抗電極(特定対抗電極4)との間における静電容量の両端間の電圧を監視し、
被測定電極2は、水平電極X0?X8及び垂直電極Y0?Y6のうち検査対象となる任意の電極であり、対抗電極3は、被測定電極2に対抗して配置されており、例えば、Y6を被測定電極2とする場合、対抗電極X0?X8の中から測定対象の対抗電極を特定対抗電極4として選択され、
状態判定部20は、静電容量検出回路10の監視結果に基づいて被測定電極2の状態を判定し、状態判定部20は、被測定電極2の導通状態を判定する導通判定部30と被測定電極2と被測定電極2以外の電極との短絡を判定する短絡判定部40とを備えるものであり、
静電容量検出回路10は、被測定電極2と特定対抗電極4との間における静電容量の両端間の電圧を監視し、被測定電極2と特定対抗電極4とはオペアンプ11の一方の入力に接続され、被測定電極2と特定対抗電極4との間における静電容量の両端間の電圧に相当する被測定電位(Vm)と基準電位(Vref)との電位差が常時監視されるものであり、
状態判定部20は、被測定電極2へ電位を加え、被測定電極2と特定対抗電極4との間における静電容量の両端間の電圧を放電状態から充電する際、静電容量の両端間の電圧が所定時間範囲内で基準電位(Vref)に達したか否かに基づいて判断を行うものであり、
静電容量検出回路10が、被測定電極2以外の電極を全て接地させておいた場合には、被測定電極2が被測定電極2以外の電極と短絡している場合は被測定電極2と被測定電極2以外の電極との間における静電容量に電荷が充電されず、被測定電極2の電位は基準電位(Vref)まで充電されない、
検査装置100。」

2.対比
本願発明と引用例記載の発明とを対比する。

ア.引用例記載の発明は、「水平電極X0?X8及び垂直電極Y0?Y6のうち検査対象となる任意の電極」が「被測定電極2」とされ、「例えば、Y6を被測定電極2とする場合、対抗電極X0?X8の中から測定対象の対抗電極を特定対抗電極4として選択され」、「被測定電極2と特定対抗電極4との間における静電容量の両端間の電圧を監視」するものであるから、引用例記載の発明の「水平電極X0?X8及び垂直電極Y0?Y6」は、本願発明の「複数の静電容量検出用の電極」に相当し、引用例記載の発明の「任意の電極」を「被測定電極2」とすることは、本願発明の「複数の静電容量検出用の電極」「のうち1の電極を選択して検出電極とする」ことに相当する。

イ.引用例記載の発明の「静電容量検出回路10」が、「被測定電極2以外の電極を全て接地」させ、「被測定電極2と特定対抗電極4との間における静電容量の両端間の電圧を監視」するものであることは、本願発明の「静電測定部」が「前記検出電極以外の電極を第1の電位状態とし、又は前記第1の電位状態と異なる第2の電位状態として、前記第1の電位状態のときの前記検出電極の電圧、及び前記第2の電位状態のときの前記検出電極の電圧を測定」することと、「前記検出電極以外の電極を第1の電位状態として、前記第1の電位状態のときの前記検出電極の電圧を測定」する点で共通する。

ウ.引用例記載の発明の「状態判定部20」は、「被測定電極2へ電位を加え、被測定電極2と特定対抗電極4との間における静電容量の両端間の電圧を放電状態から充電する際、静電容量の両端間の電圧が所定時間範囲内で基準電位(Vref)に達したか否かに基づいて判断を行うものであり、」「静電容量検出回路10が、被測定電極2以外の電極を全て接地させておいた場合には、被測定電極2が被測定電極2以外の電極と短絡している場合は被測定電極2と被測定電極2以外の電極との間における静電容量に電荷が充電されず、被測定電極2の電位は基準電位(Vref)まで充電されない、」ことにより、「被測定電極2」の短絡を検出するものであり、「被測定電極2以外の全ての電極が接地電位のときの被測定電極2の電圧が基準電圧まで充電されないことを測定し、被測定電極2と被測定電極2以外の電極との間の短絡を判定する」といい得るものであることは、本願発明の「判定部」が「前記第1及び第2の電位状態のときのそれぞれの検出電極の電圧に基づく測定値を比較することにより、前記電極間のショート状態を判定」することと、「前記第1の電位状態のときの検出電極の電圧に基づく測定値により、前記電極間のショート状態を判定」する点で共通する。

エ.引用例記載の発明の「検査装置100」は、「静電容量検出回路10」、「状態判定部20」を有し、「静電容量検出回路10の監視結果に基づいて被測定電極2の状態を判定し、」「状態判定部20は、被測定電極2の導通状態を判定する導通判定部30と被測定電極2と被測定電極2以外の電極との短絡を判定する短絡判定部40とを備えるもの」であるから、「静電容量検出装置」ともいい得るものである。

したがって、両者は以下の一致点と相違点とを有する。

〈一致点〉
「複数の静電容量検出用の電極と、
前記電極のうち1の電極を選択して検出電極とすると共に、前記検出電極以外の電極を第1の電位状態として、前記第1の電位状態のときの前記検出電極の電圧を測定する静電測定部と、
前記第1の電位状態のときの検出電極の電圧に基づく測定値により、前記電極間のショート状態を判定する判定部と、
を有する静電容量検出装置。」

〈相違点〉
本願発明は、「静電測定部」が「前記検出電極以外の電極を第1の電位状態とし、又は前記第1の電位状態と異なる第2の電位状態として、前記第1の電位状態のときの前記検出電極の電圧、及び前記第2の電位状態のときの前記検出電極の電圧を測定」し、「判定部」が「前記第1及び第2の電位状態のときのそれぞれの検出電極の電圧に基づく測定値を比較することにより、前記電極間のショート状態を判定」するものであるのに対し、引用例記載の発明は、「被測定電極2以外の全ての電極が接地電位のときの被測定電極2の電圧が基準電圧まで充電されないことを測定し、被測定電極2と被測定電極2以外の電極との間の短絡を判定する」ものであり、「検出電極以外の電極」を「第1の電位状態」としたときの「検出電極の電圧」に加え、「検出電極以外の電極」を「第2の電位状態」としたときの「検出電極の電圧」を測定するものではなく、また、「前記第1及び第2の電位状態のときのそれぞれの検出電極の電圧に基づく測定値を比較する」ものでもない点。

3.判断
〈相違点についての判断〉
原査定で提示された、特開平7-218573号公報(以下、「周知例1」という。)の段落【0023】、【0027】等には、基板の2つの独立パターンに対し、その間に存在する浮遊容量を充電するために、直流の定電圧(定電流)を極性を変えて2度印加し、両過渡期間内における充電開始後の同一の所定時間が経過したときの電流値(電圧値)をそれぞれ測定し、両電流値(両電圧値)を比べることにより、浮き足の有無の判定を行う技術が、原査定で提示された、特開2008-203077号公報(以下、「周知例2」という。)の段落【0012】?【0013】には、各検査点に接触させた一対のプローブ間に第1の直流電圧を印加して電流を測定し、次いで、前記電圧より高い第2の電圧を印加して電流を測定し、続いて、前記第2の電圧と同一の電圧でかつ極性を変えた電圧を印加することにより、不純物による半導体挙動等に起因する絶縁不良があった場合でも、絶縁不良を発見する技術が記載されており、2つの測定端子間に所定電圧を印加し測定した後、印加する電圧の極性を逆にし再度測定する技術は、本願出願前周知技術であるものと認められる。
しかしながら、周知例1および周知例2には、「前記検出電極以外の電極を第1の電位状態とし、又は前記第1の電位状態と異なる第2の電位状態として、前記第1の電位状態のときの前記検出電極の電圧、及び前記第2の電位状態のときの前記検出電極の電圧を測定」する構成は記載されておらず、周知例1、周知例2の記載によっては、当該構成が本願出願前周知の技術であったということはできない。
したがって、上記周知技術を考慮しても、引用例記載の発明において上記相違点に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
ほかに、引用例記載の発明において、上記相違点に係る本願発明の構成を採用することが、当業者が容易に想到し得たことというべき理由は見当たらない。
本願の請求項2?3に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1?3に係る発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶するべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-05-30 
出願番号 特願2012-141295(P2012-141295)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 若林 治男  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 山田 正文
千葉 輝久
発明の名称 静電容量検出装置  
代理人 野見山 孝  
代理人 平田 忠雄  

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