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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B65D
管理番号 1315161
審判番号 無効2013-800039  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-03-12 
確定日 2016-06-14 
事件の表示 上記当事者間の特許第4473333号発明「蓋体及びこの蓋体を備える容器」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
平成18年10月13日 基礎出願(特願2006-280237)
平成19年10月11日 原出願(優先権主張、特願2008-519 754)
平成20年12月19日 本件出願(分割出願)
平成22年 3月12日 設定登録(特許第4473333号)
平成25年 3月12日 無効審判請求
平成25年 6月 3日 答弁書
平成25年 6月14日付 通知書(審理事項通知書)
平成25年 6月14日 請求人・上申書
平成25年 7月11日 両者・口頭審理陳述要領書
平成25年 7月17日付 当日進行メモ(審判官から)
平成25年 7月23日 両者・口頭審理陳述要領書(2)
口頭審理

本審決において、記載箇所を行により特定する場合、行数は空行を含まない。
原文の丸囲み数字は、丸1のように置き換えた。

第2.本件発明
本件特許の請求項1ないし12に係る発明(以下「本件発明1ないし12」という。)は、以下のとおりである。
なお、独立請求項1における分説符号は、請求人が付したものであるが、争いがなく、妥当と認められるので、そのまま採用した。

「【請求項1】
A.食材を収容するとともに該食材を加熱可能な容器の胴体部の開口部を閉塞する蓋体であって、
B.前記蓋体の外周輪郭形状を定めるとともに、前記容器の前記開口部を形成する前記容器の縁部と嵌合する周縁領域と、
C.該周縁領域により囲まれる領域内部において、隆起する一の領域を備え、
D.前記一の領域は、前記容器内の流体を排出可能な穴部と、該穴部を閉塞可能な突起部を備えるフラップ部を備え、
E.該フラップ部は、前記一の領域に一体的に接続する基端部を備えるとともに、該基端部を軸に回動し、
F.前記フラップ部の先端部は、前記周縁領域の外縁に到達しておらず、
G.前記フラップ部の前記基端部が、前記フラップ部の前記先端部よりも前記蓋体の中心位置から近い位置に配され、
H.前記一の領域が、前記フラップ部の少なくとも一部を収容する凹領域を備え、
I.前記凹領域は前記一の領域上面の周縁部に接続していることを特徴とする
J.蓋体。

【請求項2】
前記周縁領域が隆起しており、この周縁領域の隆起は、前記一の領域の隆起よりも高いことを特徴とする請求項1記載の蓋体。
【請求項3】
前記一の領域は、前記周縁領域に隣接して配されることを特徴とする請求項1又は2記載の蓋体。
【請求項4】
前記蓋体の周縁領域が、前記蓋体の外周輪郭形状を多角形状に形成し、
前記穴部が、前記蓋体の角隅部近傍に位置することを特徴とする請求項3記載の蓋体。
【請求項5】
前記フラップ部が、前記凹領域に収容される第1位置にあるとき、前記フラップ部の前記突起部が前記穴部を閉塞することを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の蓋体。
【請求項6】
前記フラップ部の前記基端部が、前記突起部が形成される第1の面に弧状に湾曲した断面を有する凹溝と前記第1の面とは反対側の第2の面に平坦な面を備え、前記フラップ部の回動が、前記凹領域に対して直立した第2位置で制限されることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の蓋体。
【請求項7】
前記フラップ部が、前記第1位置にあるとき、前記フラップ部の上面が前記一の領域の上面から突出しないことを特徴とする請求項5記載の蓋体。
【請求項8】
前記蓋体が、少なくとも140℃以下の温度に曝されても変形しないことを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の蓋体。
【請求項9】
前記蓋体が、高結晶ポリプロピレンから成型されることを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の蓋体。
【請求項10】
前記穴部が複数個設けられることを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載の蓋体。
【請求項11】
前記蓋体外周縁から外方に突出する摘み部を更に備えることを特徴とする請求項1乃至10いずれかに記載の蓋体。

【請求項12】
食材を収容する一端有底筒状の容器胴体部と、該容器胴体部の開口部を閉塞する蓋体からなるとともに前記食材を加熱可能な容器であって、
前記蓋体が、該蓋体の外周輪郭形状を定めるとともに、前記容器の前記開口部を形成する前記容器の縁部と嵌合する周縁領域と、
該周縁領域により囲まれる領域内部において、隆起する一の領域を備え、
前記一の領域は、前記容器内の流体を排出可能な穴部と、該穴部を閉塞可能な突起部を備えるフラップ部を備え、
該フラップ部は、前記一の領域に一体的に接続する基端部を備えるとともに、該基端部を軸に回動し、
前記フラップ部の先端部は、前記周縁領域の外縁に到達しておらず、
前記フラップ部の前記基端部が、前記フラップ部の前記先端部よりも前記蓋体の中心位置から近い位置に配され、
前記一の領域が、前記フラップ部の少なくとも一部を収容する凹領域を備え、
前記凹領域は前記一の領域上面の周縁部に接続していることを特徴とする容器。」

第3.請求人の主張
1.条文
特許法第29条第2項(第123条第1項第2号)

2.証拠
請求人が提出した証拠は、以下のとおりである。

検甲第1号証 クレハ容器
甲第1号証 株式会社クレハのウェブページの2005年5月25日の ニュースリリース
甲第2号証 「快適料理マガジン3分クッキング」の2006年10 月号
甲第3号証 クレハ容器の「おかず一品保存容器」を上方向、横方向、 斜め方向から撮影した写真
甲第4号証 特開2004-113776号公報
甲第5号証 特開2002-362599号公報
甲第6号証 米国公開特許公報2005/0061812号
甲第7号証 特開2004-123143号公報
甲第8号証 米国特許4494679号明細書
甲第9号証 本件出願の公開公報(特開2009-143626号)
甲第10号証 写真撮影報告書(大阪地裁において被請求人提出の甲4)
甲第11号証 『プラスチック加工技術ハンドブック』(抜粋)
甲第12号証 写真撮影報告書(2)
甲第13号証 『プラスチック事典』(抜粋)
甲第14号証 蒸し器の写真
甲第15号証 欧州特許出願公開第0633196号明細書
甲第16号証 日本プラスチック工業連盟作成の一覧表
甲第17号証 被請求人の公式ウェブサイト
甲第18号証 『プラスチック加工技術便覧(新版)』(抜粋)

なお、検甲第1号証、甲第1ないし9号証は、審判請求書とともに、甲第10ないし18号証は、その後、提出された。

3.概要
請求人の主張の概要は、本件発明1ないし12に対し、理由1として「クレハ容器」に基づく進歩性欠如、理由2として甲第6号証に基づく進歩性欠如であり、以下のとおりである。

(1)理由1(クレハ容器)
(請求書第22ページ末行?第23ページ第10行)
「(1)クレハ容器の公然実施について
クレハは、本件特許に係る特許出願の優先日(平成18年10月13日)前に、プラスチック製食品保存容器「キチントさんレンジ容器シリーズ」(「クレハ容器」)の量産・販売を開始していた(甲第1号証、甲第2号証)。甲第1号証は、クレハのウェブページで2005年(平成17年)5月25日にニュースリリースされた記事であり、甲第2号証は、一般雑誌「快適料理マガジン3分クッキング」の2006年10月号(平成18年10月1日発行)の記事である。
したがって、クレハ容器は、本件特許に係る特許出願の優先日である平成18年10月13日より前に、日本国内において公然と知られ得る状態で実施(量産・販売)されていたことが明らかである。」

(請求書第27ページ第5行?第28ページ第8行)
「4 本件特許に係る優先日における技術常識
(1)・・・。
(2)優先日当時においてフタに設けるフラップの孔(開口部)の付け方についても、種々のバリエーションが知られていたこと
本件特許に係る出願の優先日前に、食品容器のフタに設けられる開閉部材(フラップ)には、内開きのものと外開きのものが知られていた。
例えば、・・・、本件特許に係る出願の優先日前に周知であった。
フタに設ける孔(開口部)の付け方についても、種々のバリエーションが知られていた。例えば、甲第4号証(図1?3)のものでは、フタの孔は中心付近に設けられ、甲第5号証(図1)のものでは、角部に設けられている。
以上によれば、本件特許に係る出願の優先日前において、食品容器のフタに設けるフラップを内開きとするものと、外開きとするものの双方が知られており、どちらのタイプのものを採用するかとか、孔(開口部)の付け方をどのようにするかとかいったことは、具体的な設計に当たって当業者が適宜選択する設計事項であったものと理解される。」

(請求書第47ページ下から6行?下から3行)
「したがって、本件発明2?11についても、周知技術に照らし、クレハ容器及び甲第6号証又は甲第7号証、甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。」

(陳述要領書第11ページ第2行?第13ページ第3行)
「ア クレハ容器を主引用例とした進歩性欠如の主張は成り立たないとする被請求人の主張は失当であること
・・・。
しかし、仮に、ほぼ平坦になっている部分(請求人のいう「中間領域」)の有無を相違点としたとしても、相違点に係る構成が容易想到であることに変わりはない。ある主引用例に基づいて発明の進歩性を否定できるか否かは、相違点の数の多寡によって決まるのではなく、進歩性が肯定できるほどの技術的意義が当該相違点に存在するかどうかによって決せられる。・・・、被請求人が相違点であると主張する上記の5点(構成要件D、E、G、H、I)は、いずれも本件発明の課題とは全く関係がなく、いわば単なるデザインの問題にすぎない。このような単なるデザインの問題にとどまる事項は、意匠として保護されることはあっても、発明の進歩性を何ら基礎付けるものではなく、特許による保護を受けることができないことは明らかである。・・・。
イ クレハ容器は、フタに設けるフラップが内開きか外開きかという点を除いて、基本的に本件発明に係る容器と同じであること
・・・。
また、仮に、平坦部分(被請求人のいう「中間領域」)の有無を相違点としたとしても、ほぼ平坦になっている部分の幅は1ミリ程度のものにすぎず、この部分の有無は、クレハ容器の容器としての機能とは関係がない。したがって、「クレハ容器が、フタに設けるフラップが内開きか外開きかという点を除いて、基本的に本件発明に係る容器と同じである」ことに変わりはない。
ウ フタに設けるフラップのバリエーションは、単なる設計事項にすぎないこと
・・・。
しかし、種々のバリエーションの中からその形態を採用し、具体的にどのような形状のものとするかは、容器の大きさ、材質・強度、使い易さ、意匠等を考慮して、当業者が適宜決定する設計事項であり、新たな技術的課題を解決したとか、顕著な技術的効果を奏するなどの事情がない限り、容易想到と評価されるべきものである。・・・。上記アで述べたとおり、フタに設けるフラップの向きや孔(開口部)の付け方は、本件発明の課題とは何ら関係がなく、単なるデザインの問題にすぎないから、まさに典型的な設計事項に該当するものである。」

(陳述要領書第14ページ第16行?第15ページ第10行)
「しかし、無効審判請求書で述べたように、甲6の段落【0027】には、「・・・」(・・・)と記載されているのであるから、甲6の容器が加熱に適したものであることは明白である。被請求人の主張は、甲6の記載に正面から反するものであって、明らかに失当である。
そもそも、段落【0027】の冒頭に、「圧力インジケータ(たとえば、圧力呈示突起)を備えていてよい。」と記載されていることからも分かるように、圧力インジケータは必要に応じて付加されるものである。
さらに、圧力インジケータの材料として、段落【0022】では「エストラマープラスチック材料」が例示されているところ、熱可塑性エストラマーには120度や140度の耐熱温度を有するものが存在するから(甲11:社団法人高分子学会『プラスチック加工技術ハンドブック』(平成7年発行)145頁)、たとえ熱可塑性エストラマーからなる圧力インジケータを付加した場合であっても、甲6の容器は電子レンジで加熱することができる。
以上のとおり、甲6の容器は電子レンジで加熱不可能であるとする被請求人の主張は、いかなる意味においても誤りである。」

(陳述要領書(2)第5ページ下から8行?第7ページ第17行)
「4 クレハ容器のフラップを外開きタイプのものにする場合には、隆起する領域に接続することが自然であること
クレハ容器において外開きタイプのフラップを付加する場所としては、丸1 隆起する領域、丸2 審理事項通知書にいう「中間領域」、丸3 審理事項通知書にいう「凹部」の3種類が理屈の上では考えられるものの、甲3の写真12を見れば明らかなとおり、「中間領域」や「凹部」は、いずれも限られたスペースしかない狭い場所であって、ここにフラップを付加することは窮屈かつ不自然であるといわざるを得ない。
また、請求人口頭審理陳述要領書(1)19?20頁で述べたとおり、「凹領域」に収納される開閉部材(フラップ)は、開閉可能な状態で蓋に接続されてさえすればよいのであるから、その全体を「凹領域」内などに設ける必然性は全くない。したがって、外開きのフラップは、「隆起する領域」と連続して設けるのが自然であり、合理的である。
5 甲6の蓋体は加熱可能なものであること
・・・
(2)蓋本体について
・・・。
また、上記のとおり、甲6の段落【0027】には、耐熱耐久性プラスチック材料としてポリプロピレンやポリアミドが例示されているところ、ポリプロピレンやポリアミドには、140℃の耐熱温度を有するものが存在する(甲第16号証:日本プラスチック工業連盟作成の一覧表)。」

(口頭審理調書の請求人欄)
「2 甲6号証の蓋体が電子レンジで加熱可能である点は、段落0027に明記されている。甲6号証に記載された材料は140°Cの熱耐性がある。
3 そもそも「電子レンジ」「140°C」なる点は、本件特許の請求の範囲に特定されておらず、100°Cの加熱であっても充分。 たとえば、蒸し器、湯煎が考えられる。
4 平成25年7月17日口頭審理当日進行メモの相違点3は容易である。理由は、周知であるフラップの向きを適用するにあたり、適した位置とすることは当然。
5 洗浄容易なる効果は明細書に記載がない。仮に構造上明らかであるなら格別な効果ではない。」

(2)理由2(甲6)
(請求書第50ページ第3?下から3行)
「4 容易想到性についての検討
(1)上に述べたように、本件発明1、12と甲第6号証の発明の相違点は、本件発明1、12では、「前記一の領域は、前記容器内の流体を排出可能な穴部と、該穴部を閉塞可能な突起部を備えるフラップ部を備え」るのに対し、甲第6号証の発明は、隆起する領域である外面33(本件発明の「一の領域」に相当)は、通気孔4(本件発明の「流体を排出可能な穴部」に相当)とカバー7(本件発明の「フラップ」に相当)を備えるものの、この穴部の閉塞が、突起部ではなくシール片3により可能とされている点である。
(2)上記相違点について検討すると、食品容器のフタ(蓋)に開閉部材(フラップ)が備えられたものにおいて、フラップに設けた突起部により、フタに設けられた孔(開口部)を閉塞可能とすることは、本件特許に係る出願の優先日前に周知であった。例えば、クレハ容器(甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証)、特開2004-113776号公報(公開日・2004年4月15日)(甲第4号証・図1?3)の食品容器、特開2002-362599号公報(公開日・平成14年12月18日)(甲第5号証・図1、2)の食品容器は、いずれも、フラップに設けた突起部により、フタに設けられた流体を排出可能な孔(開口部)を閉塞可能とするものである。
そして、甲第6号証に係る食品容器の「シール片3」も、「カバー7」(本件発明の「フラップ」に相当)が閉じ位置にあるときに「通気孔4」を閉塞可能とするためのものであるから、上記周知技術を適用し、「シール片3」に替えて「カバー7」に突起部を設け、これにより「通気孔4」を閉塞可能とすることは、当業者が容易になし得る設計変更にすぎない。」

(陳述要領書第38ページ第1行?第40ページ第4行)
「2 本件発明は、当業者が甲6発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであること
(1)阻害要因の不存在
・・・。
ア 甲6発明の「背景技術」と「シール片」の意義
甲6の段落【0003】、【0004】には、「背景技術」として、次の記載がある。
「・・・。」
これらの記載から、甲6発明は、容器を電子レンジで加熱する際に食品から生じる蒸気を逃がすために通気弁を設ける技術と、食品を容器内で真空に保つ技術を前提として、加熱時の蒸気の開放と真空状態の保持という2つの機能を兼ね備える容器を提供することを目的とするものであることが理解できる。シール片3は、これらの機能を同時に実現するために、甲6発明が採用したものである。
イ 「シール片」に替えて「突起部」を採用することに阻害要因はない
食品容器を電子レンジで加熱する際に食品から生じる蒸気を逃がすために、開閉部材(フラップ)に設けた突起とフタに設けた穴との組合せを用いることは、クレハ容器、甲4に係る容器、甲5に係る容器などで採用されており、本件特許出願の優先日前に周知であった。
また、上記アのとおり、電子レンジによる加熱時に食品から生じる蒸気を逃がすための通気弁は、甲6自体に従来技術として記載されており(段落【0004】)、甲6発明は、当該従来技術について、容器内部を真空に保持するという構成を加味することによって進歩性を主張するものである。したがって、容器内部の真空状態の保持が不要なのであれば、単に従来技術に回帰すればよく、その際に、通気穴をふさぐ部品として、シール片ではなく突起部を用いてもよいことは、甲6自体の記載から示唆されているということができる。それゆえ、真空状態の保持が不要なのであれば、甲6発明において、シールに替えて突起部を用いればよいことは、当業者にとって自明である。」

(陳述要領書(2)第10ページ下から2行?第13ページ第7行)
「1 クレハ容器と甲6の圧力調整メカニズムは同一であること
・・・。
しかしながら、被請求人が甲6発明の圧力調整メカニズムとして上記で主張しているのは、容器内部を真空ポンプで真空にする場合の操作(圧力調整メカニズム)であって、甲6の容器を電子レンジで使用する場合の操作(圧力調整メカニズム)ではない。
・・・。
以上のように、本件発明1の圧力調整メカニズムは、加熱時にフラップを開くことにより開口部を開放させ、開口部を通じて容器内の水蒸気や空気を容器外に排出させるというものであるのに対し、甲6発明の圧力調整メカニズムは、加熱時にカバーを上げることにより通気孔を開放させ、通気孔を通じて水蒸気や空気を容器外に排出させるというものであるから、本件発明1と甲6発明は、同一の圧力調整メカニズムを採用するものである(・・・)。
・・・。
2 突起部の機能について
・・・。
しかしながら、仮にフラップや突起部がなく、単に穴部しかない場合には、そもそも容器が密閉されないから、食品の保存容器としての機能を果たせないことは明らかである。すなわち、突起部は、「容器の密閉を確保した上での蒸気の開放」という機能を果たすために具備されるものである(・・・)。これに対し、シール片は、「容器の密閉を確保した上での蒸気の開放」と「真空状態の保持」という2つの機能を同時に実現するものである。したがって、「真空状態の保持」が不要なのであれば、甲6発明において、シール片に替えて突起部を用いればよいことは、当業者にとって自明である。クレハ容器においては、フラップが穴部を閉塞する突起部を有するものであるから、これと組み合わせることは、容易に想到される。」

(口頭審理調書の請求人欄)
「6 甲6号証のシール片は、突起部に置換可能である。理由は、容器には貯蔵、加熱という2つの機能があり、加熱機能のみに着目すれば「真空」は必須ではない。」

第4.被請求人の主張
1.要点
これに対し、被請求人は、本件審判請求は成り立たないとの審決を求めている。

2.証拠
被請求人が提出した証拠は、以下のとおりである。

乙第1号証 日本工業規格(JIS2029:2002(プラスチック製食器類))
乙第2号証 「プラスチックハンドブック」(朝倉書店 1981年12月10 日第11刷発行)332?333頁
乙第3号証 エンプラ技術連合会のHP

3.概要
その主張の概要は、以下のとおりである。

(1)理由1(クレハ容器)
(答弁書第5ページ下から8行?第9ページ第4行)
「4.本件特許に係る優先日における「技術常識」について
(1)優先日当時における販売品について
・・・。
しかしながら、上述したとおり、クレハ容器は、構成要件H(前記一の領域が、前記フラップ部の少なくとも一部を収容する凹領域を備え、)及び構成要件I(前記凹領域は前記一の領域の周縁部に接続している)を備えていない。そして、これら構成要件H及びIに係る相違点は、フタに設けるフラップが内開きか外開きかということとは関係しない相違点である。
つまり、クレハ容器は、フタに設けるフラップが内開きか外開きかということとは無関係である明確な相違点を少なくとも2つも有しているのであるから、「クレハ容器が、フタに設けるフラップが内開きか外開きかという点を除いて、基本的に本件発明に係る容器と同じである」と言えないことは明らかであり、・・・。
(2)優先日当時におけるフタに設けるフラップのバリエーションについて
ア.フラップの形態の選択が設計事項でないこと
・・・。
しかしながら、仮に請求人が述べるように、食品容器において、フタに設けるフラップの向きや孔(開口部)の付け方に種々のバリエーションが知られていたとしても、種々のバリエーションの中から、どの形態とどの形態とを選択し、選択された形態を他の構成要素(例えば一の領域や凹領域)の形態とどのように組み合わせるかという点が一元的に知られていた事実がないことに加え、認識されていたわけでもなく、本件発明においてはかかる選択や組み合わせ、具体的な構成にこそ、まさに発明の創作性が存するのである。
・・・。
イ.クレハ容器の技術分野について
請求人は、クレハ容器は粉粒体を含めた薬味を収容することも予定されているのであるから、クレハ容器と甲第7号証及び甲第8号証の容器は、薬味を含めた食材の容器という点で、同一の技術分野に属するものである、と主張している(・・・)。
しかしながら、請求人がこの主張の根拠とする甲第2号証には、「薬味」が何であるかは記載されていない。一方、甲第3号証の写真2を参照すると、クレハ容器の外箱には薬味としてねぎを収容した写真が表示されている。ねぎは薬味であるが粉粒体ではない。従って、クレハ容器が粉粒体を収容することを予定した容器とは言えない。
また、クレハ容器は加熱可能な容器であり、穴部は蒸気を排出するためのものであるのに対し、甲第8号証は加熱不能な容器の発明であり、穴部は収容物を外に振り出すための穴であり、かかる点から見ても、両者の用途、機能、技術分野は完全に相違する。
したがって、クレハ容器と甲第7号証及び甲第8号証の容器は異なる技術分野に属するものであり、ねぎを薬味としたうえで、クレハ容器が粉粒体の収容を予定するなどとこじつける請求人の主張は全くの暴論である。
・・・。
(1)クレハ容器と甲第6号証の技術分野の相違
・・・。
甲第6号証の開示する蓋体は圧力インジケータ6を備えているが、圧力インジケータ6は、容器内部が十分な真空状態になると容器内部に向けて空洞26内に引き込まれて折り畳み状態となり(図2参照)、容器内部の真空度が減少すると容器外方へと膨出した状態となる(図1参照)。このように、圧力インジケータ6は、折り畳み状態と膨出状態とに変化しなければならないため、高い柔軟性が要求されるが、高耐熱性の樹脂は、高い結晶性を有するために硬度が高く柔軟性が低い。そのため、高耐熱性の樹脂は、高い柔軟性が要求される圧力インジケータ6の材料として使用することはできない。
すなわち、甲第6号証の開示する蓋体は、その構造に鑑み、加熱に適したものではありえない。」

(口頭審理陳述要領書第2ページ下から7行?第4ページ第5行)
「(2)甲6発明の蓋体が加熱可能なものでないことについての説明
・・・。
電子レンジに使用できる食器類の耐熱温度は、日本工業規格(JIS2029:2002(プラスチック製食器類))において140℃以上と定められている(乙第1号証第2頁)。
従って、100℃までしか対応できないポリプロピレンからなる甲6発明の容器は、電子レンジで加熱可能な容器ではない。
また、高耐熱性の樹脂は、高い結晶性を有し硬度が高い(柔軟性が低い)ことが当業者の技術常識として知られている(乙第2号証、乙第3号証)。従って、この技術的観点からも高い柔軟性が要求される甲6発明の圧力インジケータ6の材料として、高耐熱性の樹脂を使用することはできない。」

(口頭審理陳述要領書(2)第5ページ第2?6行)
「(イ)本件発明において、フラップ部の基端部の位置(フラップ部の向き)に係る構成とフラップ部の先端部の位置に係る構成は有機的に結合することにより、上述した洗浄時における優れた効果(フラップ部の破損と凹領域の汚れの溜まりの両方を防ぐことができる)を導くのであるから、両構成を分離して論じるべきではない。」

(口頭審理調書の被請求人欄)
「2 本件特許は詳細な説明全体をみれば電子レンジ用であることは明らか。電子レンジで使用できないものは含まない。電子レンジ用であれば140°Cは規格化されている。
3 甲6号証の蓋体は「電子レンジ」なる文言があるが、100°Cで変形してしまうため、現実には不可能。
4 平成25年7月17日口頭審理当日進行メモの相違点3は容易ではない。理由はフラップの向きを代えただけでは相違点3にならず、更なる工夫が必要。
5 洗浄容易という効果は構造上当然」

(2)理由2(甲6)
(答弁書第22ページ第11行?第24ページ第9行)
「1.甲第6号証の記載内容について
・・・。
しかしながら、甲第6号証に係る食品収容容器は、前記「第1 5(1)」においても説明した通り、その蓋の具体的構造からみて加熱に適したものではない・・・。
・・・
3.想到容易性について
・・・。
甲第6号証発明は、容器内部を真空とすることを目的とする発明であって、当該目的を達成するために、突起部の代わりにシール片3を備えているのである。つまり、シール片3は、甲第6号証の「次に、真空ポンプを作動させて、バルブ装置1の通気孔4を自動開放させる。通気孔4は、真空ポンプの吸気効果によってシール片3が通気孔4から持ち上げられ、収容容器15内の空気が真空ポンプで排出されて開放する。」との記載(段落[0076]参照)から明らかなように、容器内を真空とするための弁の機能をするものであって、甲第6号証発明にとって必要不可欠なものである。
一方、構成要件Dの突起部はフラップ部と一体であるから、シール片のように弁の機構を果たすことは不可能である。
つまり、シール片と突起部は、その構造及び機能において明確に異なっているため、甲第6号証発明において、シール片に代えて突起部を設けた場合は甲第6号証発明の目的(容器内部を真空とする)を達成することが不可能となるのである。
そうすると、甲第6号証発明においてシール片に代えて突起部を設けることには明確な阻害要因がある・・・。」

(口頭審理陳述要領書第4ページ下から11行?第9ページ下から6行)
「(2)圧力調整メカニズムについて、甲6発明と請求項1発明との異同
・・・。
(2-3)甲6発明と請求項1発明との異同
上記した通り、甲6発明と請求項1発明の圧力調整メカニズムは、前者が容器内を真空状態と非真空状態に切り換えるための逆止弁機能をもつシール片からなるメカニズムであるのに対して、後者は容器内の圧力が上昇した時に常圧に戻すために開放される逆止弁機能をもたないフラップ部からなるメカニズムであり、両者は目的・機能・構成のいずれにおいても全く異なる。
(3)甲6発明の「シール片」を「突起部」に置換することの阻害要因性について
・・・。
(ハ)まとめ
上記(イ)、(ロ)で説明したように、甲6発明において「シール片」の代わりに「突起部」を設けた場合、容器内を真空状態とすることができないばかりか、仮に容器内が真空状態となったとしても容器内を真空に保つことができない。
そうすると、甲6発明において「シール片」を「突起部」に置換した場合、甲6発明の目的(容器内部を真空状態として食品の長期保存を可能とする)を達成することが不可能となるのであるから、甲6発明に接した当業者が当該置換を想起すること能わず、当該置換に阻害要因があることは明らかである。」

(口頭審理陳述要領書(2)第6ページ第13行?第7ページ第9行)
「(1)甲6の「シール片」は、蒸気の開放と真空状態の保持という2つの機能であり、真空状態の保持が不要であれば、「突起部」に置換可能であるという、請求人主張についての見解
・・・。
(ア)本件発明は、明細書の段落【0050】に「・・・。」と記載されている通り、フラップ部が穴部を閉塞する突起部を有することにより、食材を容器内に収容して電子レンジで加熱調理する際に、容器内の圧力が上昇した状態(つまり穴部が閉塞された状態)を一定時間維持することができるため、食材を加圧しながら加熱調理することができ、短時間での調理が可能となるものである。
これに対し、甲6の「シール片」の場合、容器内の圧力が上昇するとシール片は直ちに上昇して穴部を開放するから、穴部から蒸気が逃げてしまい、容器内の圧力が上昇した状態を維持することが全くできない。そのため、食材を加圧しながら加熱調理することはできず、短時間で食材を調理することは不可能である。
このように「シール片」と「突起部」とは技術的意義が明確に異なることから、「シール片」を「突起部」に置換することはできない。」

(口頭審理調書の被請求人欄)
「6 甲6号証のシール片は、突起部に置換不可能である。理由は、甲6号証の段落0003、0005、0016、0017、0076、請求項1、請求項22等によれば、甲6号証が真空を前提としていることは明らか。シール片と突起部は作用効果が異なるので置き換える動機がない。」

第5.当審の判断
1.本件発明
本件発明1ないし12は、上記第2.のとおりである。

2.証拠記載事項
(1)クレハ容器
検甲第1号証、甲第3号証を、技術常識を踏まえ、本件発明1に照らして整理すると、「クレハ容器」は以下のとおりである。

「a.食材を収容するとともに該食材を加熱可能な容器の胴体部の開口部を閉塞するフタであって、
b.前記フタの外周輪郭形状を定めるとともに、前記容器の前記開口部を形成する前記容器の縁部と嵌合する周縁領域と、
c.該周縁領域により囲まれる領域内部において、隆起する一の領域及び凹領域を備え、
d.前記凹領域は、前記容器内の流体を排出可能な穴部及び凹部を備え、該穴部を閉塞可能な突起部を備える開閉部材と係合可能であり、
e.該開閉部材は、前記フタの周縁領域から外方に突出する摘み部に一体的に接続する、細くかつ薄く形成された部分を備えるとともに、該細くかつ薄く形成された部分を軸に回動し、
f.前記開閉部材の先端部は、前記凹部の外縁に到達しておらず、
g.前記開閉部材の前記細くかつ薄く形成された部分が、前記開閉部材の前記先端部よりも前記フタの中心位置から遠い位置に配され、
h.前記周縁領域により囲まれる領域内部が、前記フラップ部の少なくとも一部を収容する凹領域を備え、
i.前記凹領域は前記一の領域上面の周縁部に中間領域を介して接続している
j.蓋体。」

「クレハ容器」の認定について、当事者間に争いはない(調書の両当事者欄 1)。

(2)甲第6号証
甲第6号証には、以下の記載がある。原文は英語であり、訳文により示した。

(段落0002?0004)
「[0002]本発明は密封可能な食品収容容器に関する。
背景技術
[0003]食品貯蔵は、食品を容器内で真空に保つことで向上する。・・・。しかし、このタイプのシステムでは、容器内部の真空が容器蓋を吸気するために収容容器を開け難くなる場合が多い。加えて、多くの場合、ユーザは収容容器内にまだ望ましい真空が存在しているかどうかを認知することができない。さらに、収容容器内に適度の真空を、特に長期間にわたって維持することが困難となることもある。
[0004]電子レンジでの加熱中に均圧する通気弁またはエアレーションバルブを設けた食品収容容器の蓋が知られている。たとえば、欧州特許出願EP 0 633 196 A2 号はこのタイプの機構を説明している。通気弁またはエアレーションバルブを使用することで、加熱時における食品収容容器内部での過圧力の増大を防ぐことができる。・・・。この容器では、真空下での食品貯蔵の向上や食品収容容器内の圧力レベルの表示を達成することは意図されていない。」

(段落0016?0020)
「発明の概要
[0016]本発明は1つの態様において、食品収容容器のための蓋を特徴とする。この蓋は、蓋本体を貫通して延びる真空感知開口部と通気孔とを有する蓋本体を備えている。さらに、この蓋は通気孔の上に配置される取り外し可能なカバーを備えている。・・・。
[0017]別の態様において、本発明は食品収容容器のための蓋を特徴とする。この蓋は通気孔を設けた蓋本体と、通気口の上に配置された取り外し可能なカバーとを備える。・・・。この取り外し可能なカバーは脱気開口部を備えている。蓋はさらに、カバーを取り外すまで通気孔を覆う膜を含んでいる。さらに、一端が膜に連結され、他端が脱気開口部内に配置される駆動要素を設けている。
[0018]・・・。
[0019]圧力呈示突起はドームであってよい・・・。圧力呈示突起は膜を設けていてよい。膜はプラスチック樹脂(たとえば、エラストマープラスチック)で形成することができる。プラスチック樹脂は、約-40℃?100℃の温度範囲で膜の寸法安定性を維持するように選択できる。この実施形態に伴う利点は、収容容器およびその内容物を冷凍庫に保存し、その後、電子レンジで解凍できる点である。膜は、容器内の負圧に反応して、真空感知開口部の方向へしぼむ、および/または折り畳まれる。・・・。
[0020]蓋はさらに、膜と接触する弾性層を有してもよい。この弾性層はバネシートおよび/またはエラストマー重合体を含むことができる。弾性層は、たとえば、圧力呈示突起の膜に適した弾性プラスチック材料を選択するか、・・・。」

(段落0027)
「[0027]蓋本体はさらに、圧力インジケータ(たとえば、圧力呈示突起)を備えていてよい。蓋本体は、プラスチック樹脂(たとえば、ポリプロピレン、ポリアミド、および/または他の耐熱耐久性プラスチック材料)で形成され、プラスチック樹脂は-40℃?100℃の温度範囲で膜が寸法安定性を維持できるものが選択される。このような実施形態では、収容容器やその中身を強冷凍庫に保存でき、そして電子レンジで解凍できる。電子レンジで加熱するために、カバーを操作して通気孔を開放することができる。使用できる材料には、ポリプロピレン、ポリアミド、ならびにその他の耐熱耐久性プラスチック材料がある。」

(段落0061?0077)
「発明を実施するための形態
[0061]図1?図3において、食品収容容器15と係合可能なバルブ装置1は、圧力インジケータ6(圧力を示す突起)を備える。
[0062]図1?図6において、バルブ装置1は容器蓋2の上に搭載されている。カバー7は、フィルムヒンジ32によって容器蓋2に一体的に連結されている。カバー7と容器蓋2は、耐熱性プラスチック材料から成る射出成形品である。カバー7(平面図では楕円形の皿の形に見える)は連結装置9を備えている。連結装置9は、容器蓋2を真空ポンプに着脱可能に連結することを可能にする。つまり、連結装置9は真空ポンプ用の吸気口を提供する。連結装置9は、カバー7の外面210の滑らかな環状面18と、環状面18に設けられた1つ以上の開口部17とによって形成されている。・・・。
[0063]シール片3(たとえばエラストマープラスチック)は、カバー7の下面の接続装置9の下側に配置されている。図1?図3に示されるバルブ装置1では、シール片3は、円環形状のリブ19によってカバー7に固定された、ディスク形状の独立した部品である。リブ19は通気路30を備えている。
[0064]図1?6に示すように、カバー7は容器蓋2の凹部20に挿入されている。凹部20は略長方形状をなしていてカバー7に合致するようになっている。容器蓋2は、カバー7の連結装置9の下側で、かつシール片3の下側にある通気孔4を有する。開放時、通気孔4は収容容器15の内部22と大気とを連通する。閉止時、通気孔4はシール片3によって気密に閉じられる。通気孔4とシール片3は収容容器15に向かって閉じる逆止弁40を構成する。
[0065]容器蓋2の真空感知開口部5が通気孔4に隣接して配置されている。圧力インジケータ6は、真空感知開口部5を気密に覆うプラスチック膜220を備える。圧力インジケータ6は、容器蓋2の平面に対して実質垂直方向の上向きに延びている。容器内の真空が不十分である時には、圧力インジケータ全体が容器蓋2の平面に対して上方に突出する。・・・。図2に示すように、圧力インジケータ6の側壁23は、真空に晒されると圧力インジケータの空洞26(図1)内に折りこまれる。
[0066]図1?図6を参照すると、カバー7は、圧力インジケータ6の位置にインジケータ開口部8を備えている。収容容器15の内部22内の圧力が大気圧を十分に下まわっていない時には、圧力インジケータ6がインジケータ開口部8から出て垂直に、カバー7の外面33を超えて延びる。圧力インジケータ6はエラストマープラスチックから成っていてよい。・・・。
[0067]図1?6に示すように、収容容器15の端に近接しているカバー部分には、把持面10が設けられている。たとえば、図1?6に示すように、カバー7の一端部は特定点35からやや上向きに傾斜し、把持面10を形成している。容器蓋2には、底部37を有する凹部20が形成されている。カバー7はリブ29、36によって凹部20の底部37から分離されている。したがって、ユーザは、カバー7の把持面10を親指(図示せず)と他の指で快適に摘み、上方に引き開けることができる。
[0068]・・・。
[0069]図4?図6において、バルブ装置1の第2例も、食品収容容器15用の圧力インジケータ6を備えている。図4?図6のバルブ装置1では、カバー7はやはり容器蓋2にフィルムヒンジ32によって一体的に連結されている。カバー7の連結装置9の下面にはシール片3が配置されている。シール片3は、駆動要素13によってカバー7に連結されている。シール片3、駆動要素13、ベース部25、圧力インジケータ6は全て、容器蓋2の凹部20のビード21への挿入部として固定された1つのエラストマープラスチック部分から出来ている。・・・。
[0070]したがって、図1?図3のバルブ装置と図4?図6のバルブ装置との間にはいくつかの違いがある。図1?図3では、シール片3は圧力インジケータ6とは独立したシール部品を形成している。他方、図4?図6のバルブ装置1では、シール片3及び圧力インジケータ6が1つのエラストマー構成部品により構成され、シール片3がベース部25から部分的に切除されることにより間隙28を形成している。・・・。
[0071]図4?図6に戻り、バルブ装置1が閉止すると、円周リブ29がベース部25を凹部20の底部37に押付けて密封を有効にする。図1?図3では、ベース部25が保持クリップ11により容器蓋2に押付けられ、保持クリップ11はラッチにより蓋2に嵌着されている。図4、図5では、カバー7が図1?図3での保持クリップ11と同じ機能を実行するので、保持クリップを個別に設ける必要がない。
[0072]・・・。
[0073]図1、図3?図6では、収容容器15の内部22の圧力は大気圧と等しい。圧力インジケータ6は、そのバネ付勢力により、インジケータ開口部8を通じてカバー7から上向きに突出する。
[0074]図2では、収容容器15の内部22が十分な真空状態にある。そのため、圧力インジケータ6が容器内部22に向かって空洞26内に引き込まれる。圧力インジケータは折り畳み状態または嵌った状態にある。・・・。容器内部22の真空が減少すると、真空が不十分になった時点で、圧力インジケータ6が突然外方へ移動し、図1、図3?図6に示す位置へと素早く戻る。・・・。
[0075]・・・。
[0076]図1、図3、図6では、収容容器15は脱気されている。容器を脱気するには、真空ポンプの円周シールリップ部を設けた吸気口(図示せず)をバルブ装置1の連結装置9上に配置する。次に、真空ポンプを作動させて、バルブ装置1の通気孔4を自動開放させる。通気孔4は、真空ポンプの吸気効果によってシール片3が通気孔4から持ち上げられ、収容容器15内の空気が真空ポンプで排出されて開放する。図1では、空気は通気孔4からシール片3のシール台座38の側部、シール片3の外部周囲を抜け、通気路30を通り、さらに連結装置9を通って真空ポンプヘと引き上げられる。図2に示すように、収容容器15の内部22に十分な真空が得られると圧力インジケータ6が突然内方に嵌り、これによって、脱気操作を終了できることをユーザに知らせる。真空ポンプを連結装置9から外した後は、シール片3が通気孔4の縁に押圧されてこれを自動的に気密閉止する。この動作は、内部22に真空が蓄積できるように、真空ポンプの各戻りストロークでも生じる。酸素の不存在が食品の酸化を防ぐため、内部22の真空は封入された食品を長期間新鮮に保つ。
[0077]収容容器15から食品を取り出すには、ユーザは、把持面10の下のカバー7を2本の指で摘み、(図5に示すように)少しの力でカバー7を反時計方向へ旋回させればよい。」

(段落0079)
「[0079]図6において、熱可塑性プラスチックからなる食品収容容器15は、図4のバルブ装置1を備えている。収容容器15は、直方体形状をした容器本体16と周辺リム27を備えた平面略直方体の容器蓋2とを有する。弁装置1は、容器蓋2の両短辺部の一方に形成された凹部20内に配置されている。カバー7の把持面10は、容器蓋2の外面33でほぼ終わっている。」

(特許請求の範囲)
「1.食品収容容器用の蓋であって、前記蓋は、
蓋本体を貫通して延びる真空感知開口部と通気孔とを画定する蓋本体と、
取り外し可能なカバーであって、その取り外しまで、前記通気孔を介した前記容器内への空気の流入を阻止するべく、前記通気孔の上に配置されるカバーと、
前記真空感知開口部を介して前記容器と連通し、前記真空感知開口部内に空洞を画定する圧力呈示突起とを備え、前記圧力呈示突起は容器内の負圧に反応して真空感知開口部の方向へ収縮する。
2.・・・。
14.クレーム3の蓋であって、前記膜はプラスチック樹脂で形成されている。
15.クレーム14の蓋であって、前記プラスチック樹脂は、前記膜の-40℃?100℃の温度範囲で寸法安定性を維持するように選択されている。
16.・・・。
22. 食品収容容器用の蓋であって、前記蓋は、
蓋本体であってこれを貫通する通気孔を画定するものと、
取り外し可能なカバーであって、その取り外しまで、空気が前記通気孔を通って前記容器内に流入しないよう、前記通気孔の上に配置される脱気開口部を画定するカバーと、
前記カバーを取り外すまで前記通気孔を覆う膜と、
一端が前記膜に連結しており、他端が前記脱気開口部内に配置されている駆動要素と、を備える。
23.・・・。
28.クレーム22の蓋であって、前記蓋本体は、-40℃?100℃の温度範囲で前記膜の寸法安定性を維持するように選択されたプラスチック樹脂を備える。」

これらを、図面、特に図1?6を参照し、技術常識を踏まえ整理すると、甲第6号証には、以下の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されている。

「a.食材を収容する容器15の胴体部の開口部を閉塞する容器蓋2であって、
b.前記容器蓋2の外周輪郭形状を定めるとともに、前記容器15の前記開口部を形成する前記容器15の縁部と嵌合する周辺リム27と、
c.該周辺リム27により囲まれる領域内部において、隆起する領域である外面33を備え、
d.前記外面33は、真空ポンプ用の吸気口に連通し前記容器内の空気を排出可能な通気孔4と、該通気孔4を閉塞可能な逆止弁40を構成するシール片3を備えるカバー7を備え、
e.該カバー7は、前記外面33に一体的に接続するフィルムヒンジ32を備えるとともに、該フィルムヒンジ32を軸に回動し、
f.前記カバー7の先端部は、前記周辺リム27の外縁に到達しておらず、
g.前記カバー7の前記フィルムヒンジ32が、前記カバー7の前記先端部よりも前記容器蓋2の中心位置から近い位置に配され、
h.前記外面33が、前記カバー7の少なくとも一部を収容する凹部20を備え、
i.前記凹部20は前記外面33上面の周縁部に接続している
j.容器蓋2。」

甲6発明の認定について、当事者間に争いはない(調書の両当事者欄 1)。

(3)甲第4号証
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
内容物を収容する容器本体(10)の蓋(20)に形成されて上下へ貫通する通気孔(23)と、蓋(20)に回動可能に装着されるレバー(50)の下部へ突出し通気孔(23)内に嵌められる突棒(51)を備える密閉容器。

(4)甲第5号証
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
密封容器1の蓋2に開口部5を設け、この開口部5を、前記蓋2の周縁部4からヒンジ部7を介して延設された栓体6で閉じ、密封容器の加熱使用時に、容器内に発生する蒸気圧により上記栓体6を自動的に外して開口させるようにした密封容器。

(5)甲第7号証
甲第7号証には、以下の事項が記載されている。
蓋体2にヒンジ3bを介してヒンジ蓋3が開閉自在に連結され、ヒンジ蓋3の基端は蓋体2の中心側、先端は蓋体2の周辺側とされ、該ヒンジ蓋の下には天板2aに設けられた注出口4aが形成された粉体容器。

(6)甲第8号証
甲第8号証には、以下の事項が記載されている。
容器蓋1の上面に隆起した台部13を有し、台部13は第1隆起平坦面15を有し、第1隆起平坦面15には孔aが形成され、第1隆起平坦面15の段部25にヒンジ29により蓋フラップ27が結合し、蓋フラップ27の突出部35が孔aを塞ぐことを可能とした、粉体材料を収容する容器。

3.本件発明1についての理由1(クレハ容器)
(1)公然実施
検甲第1号証、甲第3号証は、「クレハ容器」の実物とその写真であり、地色が「赤」である包装箱の上面部に「KUREHA おかず一品保存容器 蒸気弁付き 3個 140ml」なる表記があり、包装箱の上面左下の切り欠きから、容器の一部が見えている。
甲第1号証は、株式会社クレハの2005年5月25日のニュースリリースであり、「キチントさん レンジ容器シリーズ「蒸気弁付き」が新発売」、「6月1日より全国にて新発売いたします。」との記載とともに、商品写真が掲載されている。
甲第2号証は、日本テレビ放送網株式会社が発行した「快適料理マガジン3分クッキング」の2006年10月号であり、その「ごはんに合う手軽で美味しいこの逸品」なる記事(ページ表記なし)中に「ごはんやおかずを蒸気弁付容器で保存・冷凍。食べる前にレンジでチン!」なる見出しとともに、商品写真が掲載されている。
甲第1号証、甲第2号証の商品写真「おかず一品保存容器 蒸気弁付き」は、検甲第1号証、甲第3号証のものと、同一である。
したがって、検甲第1号証、甲第3号証の「クレハ容器」は、2006年10月頃には、販売されていたと認められる。
かかる公然実施性については、平成25年7月17日付け「当日進行メモ」の「第1の1.」のとおり、当事者間に争いはない。

(2)対比
クレハ容器における「フタ」は本件発明1における「蓋体」に相当し、同様に「開閉部材」は「フラップ部」に、「細くかつ薄く形成された部分」は「基端部」に、それぞれ相当する。
クレハ容器のd.「凹領域は、前記容器内の流体を排出可能な穴部を備え、該穴部を閉塞可能な突起部を備える開閉部材と係合可能」であることと、本件発明1の「一の領域は、前記容器内の流体を排出可能な穴部と、該穴部を閉塞可能な突起部を備えるフラップ部を備え」ることとは、「領域内部は、前記容器内の流体を排出可能な穴部を備え、該穴部を閉塞可能な突起部を備えるフラップ部と係合可能」である限りにおいて、一致する。
クレハ容器のf.「開閉部材の先端部は、前記凹部の外縁に到達しておらず」と、本件発明1の「フラップ部の先端部は、前記周縁領域の外縁に到達しておらず」とは、「フラップ部の先端部は、前記周縁領域の外縁に到達しておらず」である限りにおいて、一致する。

したがって、両者は次の点で一致する。
「A.食材を収容するとともに該食材を加熱可能な容器の胴体部の開口部を閉塞する蓋体であって、
B.前記蓋体の外周輪郭形状を定めるとともに、前記容器の前記開口部を形成する前記容器の縁部と嵌合する周縁領域と、
C.該周縁領域により囲まれる領域内部において、隆起する一の領域を備え、
D.前記領域内部は、前記容器内の流体を排出可能な穴部を備え、該穴部を閉塞可能な突起部を備えるフラップ部と係合可能であり、
E.該フラップ部は、基端部を備えるとともに、該基端部を軸に回動し、
F.前記フラップ部の先端部は、前記周縁領域の外縁に到達していない、
J.蓋体。」

本件発明1とクレハ容器は、次の3点で相違する。
相違点1:一の領域、凹領域について、本件発明1では「一の領域が、フラップ部の少なくとも一部を収容する凹領域を備え、凹領域は一の領域上面の周縁部に接続している」が、クレハ容器では「凹領域は一の領域上面の周縁部に中間領域を介して接続し」、凹領域に「凹部」を備えるものである点。
相違点2:穴部について、本件発明1では「一の領域」が「穴部」を備えるのに対し、クレハ容器では「凹領域」が「穴部」を備える点。
相違点3:フラップ部について、本件発明1では、「一の領域」に備えられ、その「基端部」が「一の領域に一体的に接続」され、「基端部」が「フラップ部の前記先端部よりも前記蓋体の中心位置から近い位置に配され」、「先端部」が「周縁領域の外縁に到達していない」ものであるのに対し、クレハ容器では、その「基端部」が「フタの周縁領域から外方に突出する摘み部に一体的に接続」され、「基端部」が「フラップ部の前記先端部よりも前記蓋体の中心位置から遠い位置に配され」、「先端部」が「凹部の外縁に到達していない」ものである点。

かかる一致点、相違点については、平成25年7月17日付け「当日進行メモ」のとおりであり、当事者間に争いはない(調書の両当事者欄 1)。

(3)判断
ア.相違点3
事案に鑑み、まず相違点3について検討する。
容器においては、フラップの「基端部」を中心側とし「先端部」を周辺側としたもの(例えば、甲第6号証、甲第7号証)、「基端部」を周辺側とし「先端部」を中心側としたもの(例えば、甲第4号証、甲第5号証)、いずれも周知であり、適宜選択されている。したがって、フラップの開閉方向それ自体については、格別なものではない。

被請求人は、甲第6号証は、加熱可能な容器でなく、甲第7号証は、フラップがふさぐ穴の機能が異なるから、周知例として適切でない旨、主張する。
しかし、甲第6号証が加熱可能か否かの点、甲第7号証の穴の機能の点と、フラップの開閉方向とは直接の関係がないから、被請求人の主張は根拠がない。

そこで、クレハ容器のフラップの開閉方向を逆にすることについて検討する。
クレハ容器のフラップの「基端部」は、「フタの周縁領域から外方に突出する摘み部」に接続されている。また、これに伴い、フラップの断面形状は、周縁領域を乗り越えるため、板状でなくΩ形状とされている。
これは、甲第4号証、甲第5号証にみられる周知の形状(断面板状)、取付形態(周縁領域に接続)とは異なり、特徴的な取付形態である。そして、「外方に突出する摘み部」に接続することにより、穴部と基端部との距離が大きくなるから、空けやすくなることは技術的に明らかである。
すなわち、クレハ容器のフラップの開閉方向を逆にする場合、かかる技術的利点が失われることになる。

請求人は、デザイン上の観点から、設計変更がありうる旨、主張する。しかし、設計変更によって、技術的利点が同等か、他の技術的利点が生じるのであればともかく、技術的利点を失うだけの設計変更を行うとは、通常想定できない。
よって、クレハ容器において、フラップの開閉方向を逆にする動機を見出すことはできない。

仮に、動機があったとしても、クレハ容器のフラップを、そのまま位置関係を逆とした場合、「基端部」は凹領域の凹部に接続、「先端部」は摘み部上に配置され、相違点3に係る「基端部」、「先端部」位置とはならない。そして、かかる形態においても、フラップの開閉という機能は実現しうる。すなわち、相違点3に係るものとする必然性がない。
そして、本件発明1は、相違点3に係る構成を採用することで、フラップ部の破損と洗浄時における汚れの溜まりの両方を防ぐという効果を奏することは、構造上明らかである。

請求人は、開閉方向を逆にすることに伴い、適した位置とすることは当然と主張する。
しかし、「基端部」位置として、凹領域の凹部、中間領域、隆起する一の領域の少なくとも3とおりがあり、「先端部」位置として、凹領域、周縁領域、摘み部、摘み部外方の少なくとも4とおりがある。両者を乗じると、少なくとも12とおりがありうることから、開閉方向を逆にすることにより、直ちに相違点3に係る構成となるものではない。
よって、請求人の主張は採用できない。

相違点3に係る構成が容易想到とは言えないことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1がクレハ容器に基づき容易に発明をすることができたとは認められない。

イ.相違点1
相違点1について検討する。
中間領域の有無については、これにより、格別な技術的意義が生じるものではないから、この点のみをとれば、設計的事項にすぎない。しかし、相違点3の検討のとおり、フラップ部の位置との関係が生じることから、相違点3との関連において、容易想到とすることはできない。
クレハ容器の凹領域の「凹部」は、これにより、指先が入りやすく、操作が容易という効果を奏することが明らかであり、あえてこれを廃する必然性を見いだせない。
よって、相違点1に係る構成を、容易想到とすることはできない。

ウ.相違点2
相違点2について検討する。
「穴部」の位置が「凹領域」であるものは、甲第6号証に記載されている。
「穴部」の技術的意義は、本件発明1では「水蒸気や膨張した空気を容器外へ排出」(段落0022)であり、クレハ容器では蒸気を逃がすものであり、その機能は共通している。
かかる機能は、「穴部」の位置が、クレハ容器の「凹領域」であるか、本件発明1の「一の領域」であるかにより、格別の差違が生じるものではないから、相違点2については、甲第6号証を踏まえ、適宜なしうる設計的事項にすぎない。

エ.小括
以上、相違点1及び3に係る構成が、容易想到とは言えないことから、本件発明1が、クレハ容器に基づき、容易に発明をすることができたとすることはできない。

4.本件発明1についての理由2(甲6)
(1)対比
甲6発明における「容器蓋2」は本件発明1における「蓋体」に相当し、同様に「周辺リム27」は「周縁領域」に、「外面33」は「一の領域」に、「空気」は「流体」に、「通気孔4」は「穴部」に、「カバー7」は「フラップ部」に、「フィルムヒンジ32」は「基端部」に、「凹部20」は「凹領域」に、それぞれ相当する。
甲6発明のd.「逆止弁40を構成するシール片3」と、本件発明1の「突起部」とは、「閉塞部材」である限りにおいて、一致する。

したがって、両者は次の点で一致する。
「A.食材を収容する容器の胴体部の開口部を閉塞する蓋体であって、
B.前記蓋体の外周輪郭形状を定めるとともに、前記容器の前記開口部を形成する前記容器の縁部と嵌合する周縁領域と、
C.該周縁領域により囲まれる領域内部において、隆起する一の領域を備え、
D.前記一の領域は、前記容器内の流体を排出可能な穴部と、該穴部を閉塞可能な閉塞部材を備えるフラップ部を備え、
E.該フラップ部は、前記一の領域に一体的に接続する基端部を備えるとともに、該基端部を軸に回動し、
F.前記フラップ部の先端部は、前記周縁領域の外縁に到達しておらず、
G.前記フラップ部の前記基端部が、前記フラップ部の前記先端部よりも前記蓋体の中心位置から近い位置に配され、
H.前記一の領域が、前記フラップ部の少なくとも一部を収容する凹領域を備え、
I.前記凹領域は前記一の領域上面の周縁部に接続している
J.蓋体。」

本件発明1と甲6発明は、次の点で相違する。
相違点4:容器について、本件発明1では「食材を加熱可能」なものであるが、甲6発明では明らかでない点。
相違点5:閉塞部材について、本件発明1では「突起部」であるが、甲6発明では「真空ポンプ用の吸気口に連通」する「逆止弁40を構成するシール片3」である点。

かかる一致点、相違点については、平成25年7月17日付け「当日進行メモ」のとおりであり、当事者間に争いはない(調書の両当事者欄 1)。

(2)判断
ア.相違点5
事案に鑑み、まず相違点5について検討する。
甲第6号証には、以下の記載がある。
「背景技術
[0003]食品貯蔵は、食品を容器内で真空に保つことで向上する。」
「発明の概要
[0016]本発明は1つの態様において、食品収容容器のための蓋を特徴とする。この蓋は、蓋本体を貫通して延びる真空感知開口部と通気孔とを有する蓋本体を備えている。・・・。
[0017]別の態様において、本発明は食品収容容器のための蓋を特徴とする。この蓋は通気孔を設けた蓋本体と、通気口の上に配置された取り外し可能なカバーとを備える。・・・。この取り外し可能なカバーは脱気開口部を備えている。」
「[0062]図1?図6において、バルブ装置1は容器蓋2の上に搭載されている。・・・。連結装置9は、容器蓋2を真空ポンプに着脱可能に連結することを可能にする。つまり、連結装置9は真空ポンプ用の吸気口を提供する。」
「[0064]図1?6に示すように、・・・。容器蓋2は、カバー7の連結装置9の下側で、かつシール片3の下側にある通気孔4を有する。開放時、通気孔4は収容容器15の内部22と大気とを連通する。閉止時、通気孔4はシール片3によって気密に閉じられる。通気孔4とシール片3は収容容器15に向かって閉じる逆止弁40を構成する。」
「[0076]図1、図3、図6では、収容容器15は脱気されている。容器を脱気するには、真空ポンプの円周シールリップ部を設けた吸気口(図示せず)をバルブ装置1の連結装置9上に配置する。次に、真空ポンプを作動させて、バルブ装置1の通気孔4を自動開放させる。通気孔4は、真空ポンプの吸気効果によってシール片3が通気孔4から持ち上げられ、収容容器15内の空気が真空ポンプで排出されて開放する。・・・。真空ポンプを連結装置9から外した後は、シール片3が通気孔4の縁に押圧されてこれを自動的に気密閉止する。・・・。酸素の不存在が食品の酸化を防ぐため、内部22の真空は封入された食品を長期間新鮮に保つ。」

甲6発明における閉塞部材は、上記のとおり「真空ポンプ用の吸気口に連通」する「逆止弁40を構成するシール片3」である。すなわち、真空を発生させるための「吸引」、真空発生後の「真空維持」の両機能に、自律的に適応するために、「逆止弁」が採用されている。
孔を突起部により塞ぐ構造それ自体は、クレハ容器、甲第4号証の突棒51、甲第5号証の栓体6にみられるごとく周知である。
かかる「孔を突起部により塞ぐ構造」においては、真空を発生させるための「吸引」の際には、孔を開口し、「真空維持」の際には、孔を塞ぐ必要があり、外部からの特別な操作が必要となる。
よって、甲6発明における自律的に適応する「逆止弁」を、外部からの特別な操作が必要な「孔を突起部により塞ぐ構造」に置き換える動機は生じないと言うべきであるから、相違点5に係る構成を、容易想到とすることはできない。

請求人は、甲6発明の容器には、「貯蔵、加熱」の2つの機能があり、加熱機能のみに着目すれば、「真空状態の保持」に係る機能は必須でなく、このことは特許請求の範囲に「真空」の特定がないことからも明らかである旨、主張する。
しかし、請求人は、甲6発明を、甲第6号証の特許請求の範囲の記載ではなく、フラップ部の向き、位置等、図1?6に記載された具体的構造に基づく主張をしているところ、かかる具体的構造は、「貯蔵」、すなわち「真空状態の保持」を前提としたものであるから、「真空状態の保持」に係る機能を不要とすることは想定できない。

イ.相違点4
相違点4について検討する。
本件発明1では「食材を加熱可能」とされているが、加熱の程度は特定されていない。
本件特許明細書には、以下の記載がある。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、食品等を収容する容器並びにこの容器に用いられる蓋体に関する。より詳しくは、電子レンジなどの加熱装置により、収容された食材等を加熱することに適した容器及びこの容器に用いられる蓋体に関する。」
「【0003】
・・・。容器を電子レンジなどの加熱装置に収容し、容器内に収容された食材を加熱しようとする場合、蓋体は容器胴体部から取り外される必要がある。なぜなら、蓋体は、高い密閉性をもたらすため、蓋体を容器胴体部に取り付けた状態で加熱すると、容器の内圧が高まり、蓋体が吹き飛び、或いは、容器胴体部が破損する可能性を生ずるからである。」
「【0022】
本発明の蓋体は、例えば、容器内の食材を加熱するときに、フラップ部を上方に回動させ、開口部を通じて、容器内の水蒸気や膨張した空気を容器外へ排出可能である。したがって、加熱時において、蓋体は容器の胴体部から取り外される必要はない。」
「【0023】
・・・。
蓋体本体部中央領域に開口部を形成し、フラップ部の突起部でこの開口部を閉塞した場合には、効率的に容器内部の水蒸気や膨張した空気を排出可能となる。蓋体本体部の周縁
領域近傍に開口部を形成し、・・・フラップ部を配した場合には、加熱調理後、容器内の水分を、開口部を通じて、排出可能である。この結果、本発明の容器は、パスタ等の調理に好適に使用可能となる。」
「【0029】
本発明の蓋体及び容器は、少なくとも140℃以下の温度に曝されても変形しない樹脂から成型される。より好ましくは、本発明の蓋体及び容器は、高結晶ポリプロピレンから成型される。
このような樹脂により成型されることで、市販される電子レンジを利用した加熱調理で用いられる樹脂フィルムと同等の耐熱性を有することとなる。また、自動食器乾燥機の熱に耐えることができるようになるので、自動食器乾燥機で容器を乾燥することが可能となる。」

すなわち、本件発明1における「加熱」とは、加熱により、「容器内の水蒸気や膨張した空気」を容器外へ排出することが必要とされる程度の「加熱」であると解される。

甲第6号証には、以下の記載がある。
「[0019]圧力呈示突起はドームであってよい(ドーム型であってよい)。・・・。圧力呈示突起は膜を設けていてよい。膜はプラスチック樹脂(たとえば、エラストマープラスチック)で形成することができる。プラスチック樹脂は、約-40℃?100℃の温度範囲で膜の寸法安定性を維持するように選択できる。この実施形態に伴う利点は、収容容器およびその内容物を冷凍庫に保存し、その後、電子レンジで解凍できる点である。」
「[0027]・・・。蓋本体は、プラスチック樹脂(たとえば、ポリプロピレン、ポリアミド、および/または他の耐熱耐久性プラスチック材料)で形成され、プラスチック樹脂は-40℃?100℃の温度範囲で膜が寸法安定性を維持できるものが選択される。このような実施形態では、収容容器やその中身を強冷凍庫に保存でき、そして電子レンジで解凍できる。電子レンジで加熱するために、カバーを操作して通気孔を開放することができる。使用できる材料には、ポリプロピレン、ポリアミド、ならびにその他の耐熱耐久性プラスチック材料がある。」

これらによれば、甲6発明は、「-40℃?100℃の温度範囲」に対応可能であり、「電子レンジで解凍」でき、「電子レンジで加熱」するために「通気孔を開放」し、「ポリプロピレン、ポリアミド、ならびにその他の耐熱耐久性プラスチック材料」からなるものを含むものである。

本件発明1における、「加熱」は、上記のとおり「容器内の水蒸気や膨張した空気」を容器外へ排出することが必要とされる程度の「加熱」であると解されるところ、甲6発明も、「加熱」により「通気孔を開放」しているから、「食材を加熱可能」なものであることは、明らかである。
よって、相違点4は、実質的相違点ではない。

被請求人は、「加熱」とは、電子レンジ対応が可能、すなわち140℃に耐える(乙第1号証の4.2)ものであり、甲6発明は100℃が上限であるから、甲6発明は「食材を加熱可能」ではない旨、主張する。
かかる主張について検討する。
本件発明1は「電子レンジ対応が可能」、あるいは「140℃に耐える」旨、特定されていない。本件特許明細書には、確かに「電子レンジ」での使用が可能である旨の記載がある。しかし、電子レンジでの使用は一例にすぎないことから、「加熱」を限定的に解すべきとする被請求人の主張は根拠がない。
仮に、本件発明1における「加熱」が「140℃に耐える」ものを意味するとして、一応、検討する。
上記のとおり甲6発明の材質は「ポリプロピレン、ポリアミド、ならびにその他の耐熱耐久性プラスチック材料」を含むものであり、140℃に耐えるものも存在する(甲第16号証の「PP」、「PA」の「常用耐熱温度」の欄)。
よって、甲6発明は、140℃に耐えるものであるか、少なくともこの点が示唆されている。

ウ.小括
以上、相違点5に係る構成が、容易想到は言えないことから、本件発明1が、甲6発明に基づき、容易に発明をすることができたとすることはできない。

5.本件発明1についてのまとめ
理由1、理由2のいずれによっても、提出された証拠により、本件発明1が容易に発明をすることができたとすることはできない。

6.本件発明2ないし11
本件発明2ないし11は、本件発明1に従属し、本件発明1をさらに限定するものである。
上記5.のとおり、本件発明1は、容易に発明をすることができたとすることはできない。
よって、同様の理由により、提出された証拠によっては、本件発明2ないし11が容易に発明をすることができたとすることはできない。

7.本件発明12
本件発明12は、本件発明1の「蓋体」を、蓋体からなる「容器」とし、胴体部を「一端有底筒状」とするものであり、本件発明1の構成要件を全て含むものである。
上記5.のとおり、本件発明1は、容易に発明をすることができたとすることはできない。
よって、同様の理由により、提出された証拠によっては、本件発明12が容易に発明をすることができたとすることはできない。

第6.むすび
以上、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明1ないし12に係る特許を無効とすることはできない。
また、他に本件発明1ないし12に係る特許を無効とすべき理由を発見しない。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-07-29 
結審通知日 2013-07-31 
審決日 2013-08-20 
出願番号 特願2008-324756(P2008-324756)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 楠永 吉孝  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 栗林 敏彦
二ッ谷 裕子
登録日 2010-03-12 
登録番号 特許第4473333号(P4473333)
発明の名称 蓋体及びこの蓋体を備える容器  
代理人 渡邉 瑞  
代理人 加藤 幸江  
代理人 相田 義明  
代理人 中島 慧  
代理人 中務 尚子  
代理人 三村 量一  
代理人 山田 威一郎  
代理人 坂戸 敦  
代理人 清原 義博  
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