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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W |
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管理番号 | 1315173 |
審判番号 | 不服2015-14485 |
総通号数 | 199 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-07-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-07-31 |
確定日 | 2016-06-14 |
事件の表示 | 特願2013-558075「マシン間ネットワーク内でバースト性のあるネットワークへの参加および再参加を処理する方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月20日国際公開、WO2012/125478、平成26年 5月15日国内公表、特表2014-511659、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許出願は、平成24年3月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 平成23年3月11日 米国)を国際出願日としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成25年11月 7日 :手続補正書の提出 平成26年 8月22日付け:拒絶理由の通知 平成27年 2月26日 :意見書、手続補正書の提出 平成27年 3月27日付け:拒絶査定 平成27年 7月31日 :審判請求書、手続補正書の提出 平成27年 9月 3日 :前置報告 第2 平成27年7月31日付けの手続補正の適否 1.本件補正の内容 平成27年7月31日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正前の(すなわち、平成27年2月26日提出の手続補正書によって補正された)特許請求の範囲の下記(ア)の記載を、本件補正後の特許請求の範囲の下記(イ)の記載へと補正するものである。 (ア)本件補正前の特許請求の範囲 「【請求項1】 基地局(BS)で用いる方法であって、前記方法は、 前記BSと通信している複数の装置の少なくとも第1の装置からイベントインジケーションメッセージを受信することであって、前記イベントインジケーションメッセージは、第1のイベントの検出に基づいて生成される、ことと、 前記イベントインジケーションメッセージに基づいて、広範囲に及ぶ例外イベントが差し迫っているかどうかを判定することであって、広範囲に及ぶ例外イベントは、前記BSと通信している前記複数の装置が結果として前記BSとの通信を失うイベントである、ことと、 広範囲に及ぶ例外イベントが差し迫っていると判定されるという条件で、第1のシステムインジケーションメッセージを前記複数の装置の少なくとも別の装置に送信することであって、前記システムインジケーションメッセージは、前記BSと通信している前記複数の装置が前記BSへ前記第1のイベントに関するイベントインジケーションメッセージを送信することを中止すべきであることを示す、ことと を備える方法。 【請求項2】 前記BSが前記広範囲に及ぶ例外イベントから回復したかどうかを判定することと、 前記BSが前記広範囲に及ぶ例外イベントから回復しなかったという条件で、前記複数の装置の少なくとも1つに第2のシステムインジケーションメッセージを送信することと をさらに備える、請求項1の方法。 【請求項3】 前記システムインジケーションメッセージは周期的に送信される、請求項1の方法。 【請求項4】 前記イベントインジケーションメッセージは例外報告である、請求項1の方法。 【請求項5】 前記第1のシステムインジケーションメッセージは、前記BSがあらかじめ定められた時間期間内に複数の装置から複数の例外報告を受信することに基づいて、前記BSによって送信される、請求項1の方法。 【請求項6】 前記第1のシステムインジケーションメッセージは、前記BSがあらかじめ定められた時間期間内に特定タイプの複数のメッセージを受信することに基づいて、前記BSによって送信される、請求項1の方法。 【請求項7】 基地局(BS)であって、 前記BSと通信している複数の装置の少なくとも1つの装置からイベントインジケーションメッセージを受信するように構成された受信機であって、前記イベントインジケーションメッセージは、前記装置による第1のイベントの検出に基づいて生成される、受信機と、 前記イベントインジケーションメッセージに基づいて、広範囲に及ぶ例外イベントが差し迫っているかどうかを判定するように構成されたプロセッサであって、広範囲に及ぶ例外イベントは、前記BSと通信している前記複数の装置が結果として前記BSとの通信を失うイベントである、プロセッサと、 広範囲に及ぶ例外イベントが差し迫っているという条件で、第1のシステムインジケーションメッセージを前記複数の装置の少なくとも別の装置に送信するように構成された送信機であって、前記システムインジケーションメッセージは、前記BSと通信している前記複数の装置が前記BSへ前記第1のイベントに関するイベントインジケーションメッセージを送信することを中止すべきであることを示す、送信機と を備えたBS。 【請求項8】 前記プロセッサは、前記BSが前記広範囲に及ぶ例外イベントから回復したかどうかを判定するようにさらに構成され、前記送信機は、前記BSが回復しなかったという条件で、前記複数の装置の少なくとも1つに第2のシステムインジケーションメッセージを送信するようにさらに構成される、請求項7のBS。 【請求項9】 前記システムインジケーションメッセージは周期的に送信される、請求項7のBS。 【請求項10】 前記イベントインジケーションメッセージは例外報告である、請求項7のBS。 【請求項11】 前記送信機は、前記BSがあらかじめ定められた時間期間内に複数の装置から複数の例外報告を受信することに基づいて、前記第1のシステムインジケーションメッセージを送信するようにさらに構成される、請求項7のBS。 【請求項12】 前記送信機は、前記BSがあらかじめ定められた時間期間内に特定タイプの複数のメッセージを受信することに基づいて、前記第1のシステムインジケーションメッセージを送信するようにさらに構成される、請求項7のBS。」 (イ)本件補正後の特許請求の範囲 「【請求項1】 基地局(BS)で用いる方法であって、前記方法は、 前記BSと通信している複数の装置の少なくとも第1の装置からイベントインジケーションメッセージを受信することであって、前記イベントインジケーションメッセージは、第1のイベントの検出に基づいて生成される、ことと、 前記イベントインジケーションメッセージに基づいて、広範囲に及ぶ例外イベントが差し迫っているかどうかを判定することであって、広範囲に及ぶ例外イベントは、前記BSと通信している前記複数の装置が結果として前記BSとの通信を失うイベントである、ことと、 広範囲に及ぶ例外イベントが差し迫っていると判定されるという条件で、第1のシステムインジケーションメッセージを前記複数の装置の少なくとも別の装置に送信することであって、前記システムインジケーションメッセージは、前記BSと通信している前記複数の装置が前記BSへ前記第1のイベントに関するイベントインジケーションメッセージを送信することを中止すべきであることを示す、ことと、 システムが回復したことを示すメッセージをネットワーク側のサーバから受信することに基づいて、前記BSが前記広範囲に及ぶ例外イベントから回復したかどうかを判定することと を備える方法。 【請求項2】 前記BSが前記広範囲に及ぶ例外イベントから回復しなかったという条件で、前記複数の装置の少なくとも1つに第2のシステムインジケーションメッセージを送信することをさらに備える、請求項1の方法。 【請求項3】 前記システムインジケーションメッセージは周期的に送信される、請求項1の方法。 【請求項4】 前記イベントインジケーションメッセージは例外報告である、請求項1の方法。 【請求項5】 前記第1のシステムインジケーションメッセージは、前記BSがあらかじめ定められた時間期間内に複数の装置から複数の例外報告を受信することに基づいて、前記BSによって送信される、請求項1の方法。 【請求項6】 前記第1のシステムインジケーションメッセージは、前記BSがあらかじめ定められた時間期間内に特定タイプの複数のメッセージを受信することに基づいて、前記BSによって送信される、請求項1の方法。 【請求項7】 基地局(BS)であって、 前記BSと通信している複数の装置の少なくとも1つの装置からイベントインジケーションメッセージを受信するように構成された受信機であって、前記イベントインジケーションメッセージは、前記装置による第1のイベントの検出に基づいて生成される、受信機と、 前記イベントインジケーションメッセージに基づいて、広範囲に及ぶ例外イベントが差し迫っているかどうかを判定するように構成されたプロセッサであって、広範囲に及ぶ例外イベントは、前記BSと通信している前記複数の装置が結果として前記BSとの通信を失うイベントである、プロセッサと、 広範囲に及ぶ例外イベントが差し迫っているという条件で、第1のシステムインジケーションメッセージを前記複数の装置の少なくとも別の装置に送信するように構成された送信機であって、前記システムインジケーションメッセージは、前記BSと通信している前記複数の装置が前記BSへ前記第1のイベントに関するイベントインジケーションメッセージを送信することを中止すべきであることを示す、送信機と を備え、 前記プロセッサは、システムが回復したことを示すメッセージをネットワーク側のサーバから受信することに基づいて、前記BSが前記広範囲に及ぶ例外イベントから回復したかどうかを判定するようにさらに構成される、BS。 【請求項8】 前記送信機は、前記BSが回復しなかったという条件で、前記複数の装置の少なくとも1つに第2のシステムインジケーションメッセージを送信するようにさらに構成される、請求項7のBS。 【請求項9】 前記システムインジケーションメッセージは周期的に送信される、請求項7のBS。 【請求項10】 前記イベントインジケーションメッセージは例外報告である、請求項7のBS。 【請求項11】 前記送信機は、前記BSがあらかじめ定められた時間期間内に複数の装置から複数の例外報告を受信することに基づいて、前記第1のシステムインジケーションメッセージを送信するようにさらに構成される、請求項7のBS。 【請求項12】 前記送信機は、前記BSがあらかじめ定められた時間期間内に特定タイプの複数のメッセージを受信することに基づいて、前記第1のシステムインジケーションメッセージを送信するようにさらに構成される、請求項7のBS。」 2.本件補正の目的 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1、7については、本件補正前の特許請求の範囲の請求項2、8の発明特定事項である『前記BSが前記広範囲に及ぶ例外イベントから回復したかどうかを判定すること』との事項を同請求項1、7に組み入れると共に、BSが判定をする際のトリガーとなる『システムが回復したことを示すメッセージをネットワーク側のサーバから受信することに基づいて、』との事項を付加して限定することを含むものであり、そして、本件補正前の特許請求の範囲に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 3.独立特許要件についての判断 前述したように、本件補正における本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に関する補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。 3-1.引用文献の記載事項 3-1-1. 原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2009/22752号(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審にて付した。) (ア)「イベント型で報告を行う場合、移動局で監視する通信状況に、例えば ・無線回線障害(Radio Link Failure)、 ・ハンドオーバ障害(HO Failure)、 ・スループット低下、 ・パイロット品質の低下、 等、予め定められた所定の条件に該当し、トリガとなるイベントが発生すると、移動局は当該イベントの発生を、基地局に報告する。 移動局が報告する監視結果としては、例えばイベントの種類、受信状況、および自身の位置が送信される。あるいは、受信状況と自身の位置情報としては、自セル及び周辺セルのパイロット受信品質、GPS(Global Positioning System)位置情報が用いられる。さらに、一時的な移動局ID情報(TMSI(temporary mobile subscriber identification);L3(RRC)での識別子)、時刻情報等が当該報告に含むようにしてもよい。 基地局は、移動局からの報告を受信すると、該報告を、管理サーバに送信する。管理サーバは報告情報を収集し、電力、アンテナのチルト角等、無線パラメータの再設定を行う。 移動局が通信状況の監視結果をイベント型で基地局に送信する際、無線回線障害又は基地局障害等により、通信不能の場合、回線接続が再確立して通信可能となったときに、移動局側にバッファされていた報告が、基地局に送信されることになる。 基地局障害やトンネル通過等による無線回線障害が生じた場合、回線再接続時に、複数の移動局が、基地局に対して一斉に報告を行うことになり、無線ネットワークのトラフィック量が急激に増大する。特に、トンネルの出口等では、多数の報告が集中する可能性があるため、報告がネットワーク負荷に与える影響は大きい。 しかしながら、例えば、トンネルの出口等で移動局から基地局に多量に上げられる報告(トンネル進入時無線回線障害が発生したという報告)が管理サーバに送られたとしても、これらの報告は、無線パラメータの最適化等には貢献しない。すなわち、これらの報告に基づき、管理サーバが、基地局の無線パラメータを変えたところで、トンネル内での無線回線障害はなくならない。したがって、これらの報告(トンネル進入時無線回線障害が発生したという報告)は、無線パラメータの最適化、調整のためには、不要な報告ともいえる。逆に、移動局からの不要な報告の一斉送信は、無線ネットワーク負荷を増大させることになり、他の情報の通信サービスを著しく劣化させる要因ともなる。基地局障害による無線回線障害の報告についても同様なことがいえる。 したがって、無線ネットワーク負荷の増大を防ぐためには、そのような報告を中止させるか抑制することが望まれる。 本発明は、上記知見に基づき創案されたものであって、その目的は、基地局障害時やトンネル進入等による無線回線障害発生ののち回線再接続時における移動局による報告の集中を回避するシステム、方法を提供することにある。」([0008]-[0015]) (イ)「本発明において、前記確率が0と1の範囲の値をとるものとして、前記基地局は、上り回線トラフィック量を測定し、該トラフィック量が予め定められた閾値よりも大の場合、前記確率を0に設定して報知することで、前記移動局に報告を禁止させるようにしてもよい。 前記上り回線トラフィック量が予め定められた閾値以下であり、且つ、報告トラフィック量が、報告件数に関連して予め定められた別の閾値よりも小の場合、前記確率を1に設定して報知することで、前記移動局に報告を許可するようにしてもよい。 前記上り回線トラフィック量が予め定められた閾値以下であり、且つ、前記報告のトラフィック量が前記別の閾値以上の場合、前記確率を相対的に0に近い値に設定して報知し、前記移動局に報告を抑制させるようにしてもよい。」([0021]) (ウ)「本発明において、基地局(または管理サーバ)は、同一内容(イベントの種類と発生場所が同一)の報告を多数受信したとき、その内容の報告は不要であることを報知するようにしてもよい。その際、同一内容の報告から報告禁止セル番号や報告禁止位置の組合せをイベントの種類毎に、自動的に生成するようにしてもよい。」([0045]) (エ) 上記(ア)ないし(エ)の記載から、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。 <引用発明1> 「基地局障害時やトンネル進入等による無線回線障害発生ののち回線再接続時における移動局による報告の集中を回避する方法であって、 移動局で監視する通信状況が定められた所定の条件に該当し、トリガとなるイベントが発生すると、移動局は当該イベントの発生を、基地局に報告し、基地局は、上り回線トラフィック量を測定し、該トラフィック量が予め定められた閾値よりも大の場合、確率を0に設定して報知することで、前記移動局に報告を禁止させ、また、基地局は、同一内容(イベントの種類と発生場所が同一)の報告を多数受信したとき、その内容の報告は不要であることを報知する、方法。」 3-1-2. 前置報告の際に提示された特開2009-130657号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審にて付した。) (オ)「本発明は,移動通信システムの負荷分散方法及び移動通信システムに関し,特に移動通信網の無線ネットワーク制御装置において発生する輻輳や障害に対して対処する移動通信システムの負荷分散方法及び移動通信システムに関するものである。」(【0001】) (カ)「図3は無線ネットワーク制御装置状態管理サーバにおける処理フローを示す。この例は主に無線ネットワーク制御装置2-1に対して実行される例を示すが,他の無線ネットワーク制御装置2-2,2-3に対しても同様の処理が実行される。 ・・・途中省略・・・ 上記ステップS19において,「規制」状態に設定されている場合,上記CPU使用率変動報告の報告値が正常閾値以下であるか判別し(図3のS24),報告値が正常閾値を越えているとステップS2に戻り,報告値が正常閾値以下の場合は基地局3-1?3-3に無線ネットワーク制御装置2-1が正常回復したことを通知する(同S25)。続いて,上記ステップS9,S15,S22と同様の基地局3-1?3-3と発行コードとの照合を行い(図3のS26),無線ネットワーク制御装置2-1に発行コードを通知し(同S27),状態管理テーブル10の当該無線ネットワーク制御装置2-2の状態を「正常」に設定する。」(【0021】?【0030】) 上記(オ)及び(カ)の記載から、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。 <引用発明2> 「移動通信網の無線ネットワーク制御装置において発生する輻輳や障害に対して対処する移動通信システムの負荷分散方法及び移動通信システムにおいて、無線ネットワーク制御装置状態管理サーバは、CPU使用率変動報告の報告値が正常閾値以下であるか判別し、報告値が正常閾値以下の場合は基地局3-1?3-3に無線ネットワーク制御装置2-1が正常回復したことを通知する、方法。」 3-2.対比 本願補正発明と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。 3-2-1. 引用発明1は、「移動局で監視する通信状況が定められた所定の条件に該当し、トリガとなるイベントが発生すると、移動局は当該イベントの発生を、基地局に報告し、」との事項を備えており、前記「基地局」は「移動局からの報告を受ける」のであるから、引用発明1に係る「基地局」は「移動局からイベントの発生の報告を受信する」ということができる。 また、引用発明1に係る「移動局」は「移動局が監視する通信状況が定められた所定の条件に該当し、トリガとなるイベントが発生する」と「基地局に当該イベントの発生を報告する」のであるから、前記「報告」は「トリガとなるイベントを検出したことに基づいて生成される」ということができる。 更に、引用発明1は、「基地局障害時やトンネル進入等による無線回線障害発生ののち回線再接続時における移動局による報告の集中を回避する方法」であることから、報告を行う移動局は複数あることは明らかである。 そして、引用発明1に係る「移動局」、「報告」、「トリガとなるイベント」はそれぞれ、本願補正発明でいうところの『第1の装置』、『イベントインジケーションメッセージ』、『第1のイベント』に対応するものといえる。 してみると、引用発明1には、本願補正発明でいうところの『BSと通信している複数の装置の少なくとも第1の装置からイベントインジケーションメッセージを受信することであって、前記イベントインジケーションメッセージは、第1のイベントの検出に基づいて生成される、』との事項を備えているといえる。 3-2-2. 引用発明1は、「基地局は、同一内容(イベントの種類と発生場所が同一)の報告を多数受信したとき、その内容の報告は不要であることを報知する、」との事項を備えており、その内容について動作主体等を補足して整理すると、「基地局は、複数の移動局から同一内容の報告を多数受信したとき、その内容の報告を基地局に対して行う事は不要であるとの内容を示すメッセージを前記移動局に対して送信する、」と換言できる。そして、基地局が送信する前記メッセージの送信先である移動局には、本願補正発明でいうところの『前記複数の装置の少なくとも別の装置』が含まれていることは明らかである。 そうすると、引用発明1に係る前記「メッセージ」は、本願補正発明でいうところの『第1のシステムインジケーションメッセージ』に対応し、同様に、引用発明1に係る前記「その内容の報告を基地局に対して行う事は不要であるとの内容」は、本願補正発明でいうところの『BSへ前記第1のイベントに関するイベントインジケーションメッセージを送信することを中止すべきであることを示す』に対応するといえる。 してみると、引用発明1には、本願補正発明でいうところの『第1のシステムインジケーションメッセージを前記複数の装置の少なくとも別の装置に送信することであって、前記システムインジケーションメッセージは、前記BSと通信している前記複数の装置が前記BSへ前記第1のイベントに関するイベントインジケーションメッセージを送信することを中止すべきであることを示す、』との事項を備えているといえる。 3-2-3. よって、本願補正発明と引用発明1とは、 「基地局(BS)で用いる方法であって、前記方法は、 前記BSと通信している複数の装置の少なくとも第1の装置からイベントインジケーションメッセージを受信することであって、前記イベントインジケーションメッセージは、第1のイベントの検出に基づいて生成される、ことと、 第1のシステムインジケーションメッセージを前記複数の装置の少なくとも別の装置に送信することであって、前記システムインジケーションメッセージは、前記BSと通信している前記複数の装置が前記BSへ前記第1のイベントに関するイベントインジケーションメッセージを送信することを中止すべきであることを示す、ことと、 を備える方法。」 との点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点1> 引用発明1には、本願補正発明でいうところの『前記イベントインジケーションメッセージに基づいて、広範囲に及ぶ例外イベントが差し迫っているかどうかを判定することであって、広範囲に及ぶ例外イベントは、前記BSと通信している前記複数の装置が結果として前記BSとの通信を失うイベントである、こと』との発明特定事項を備えているか明示されていない点。 <相違点2> 第1のシステムインジケーションメッセージを送信するに際して、引用発明1においては、本願補正発明でいうところの『広範囲に及ぶ例外イベントが差し迫っていると判定されるという条件で、』に基づいて行われているのか不明である点。 <相違点3> 引用発明1には、本願補正発明でいうところの『システムが回復したことを示すメッセージをネットワーク側のサーバから受信することに基づいて、前記BSが前記広範囲に及ぶ例外イベントから回復したかどうかを判定すること』なる発明特定事項を備えていない点。 3-3.判断 3-3-1.<相違点3>について 引用発明2には、「無線ネットワーク制御装置状態管理サーバは、CPU使用率変動報告の報告値が正常閾値以下であるか判別し、報告値が正常閾値以下の場合は基地局3-1?3-3に無線ネットワーク制御装置2-1が正常回復したことを通知する」と記載されており、本願補正発明の様に「ネットワーク側のサーバが基地局に対して(無線ネットワーク制御装置が)正常回復したことを通知する」との技術事項は本願出願前に公知であるものの、引用発明1は、上記「3-1.引用文献の記載事項 3-1-1.(イ)」の「前記上り回線トラフィック量が予め定められた閾値以下であり、且つ、報告トラフィック量が、報告件数に関連して予め定められた別の閾値よりも小の場合、前記確率を1に設定して報知することで、前記移動局に報告を許可するようにしてもよい。 前記上り回線トラフィック量が予め定められた閾値以下であり、且つ、前記報告のトラフィック量が前記別の閾値以上の場合、前記確率を相対的に0に近い値に設定して報知し、前記移動局に報告を抑制させるようにしてもよい。」との記載や上記「3-1.引用文献の記載事項 3-1-1.(エ)」で開示されている事項を参酌するに、「基地局が上り回線トラフィック量を測定して移動局からの報告の確率を決定し、移動局による報告の集中を回避する方法」に関する発明であり、本願補正発明の様に「ネットワーク側のサーバからシステムが回復したとのメッセージを受信」する必要性はなく、また、引用発明1をその様な構成に変更する合理的な動機があるともいえない。 したがって、引用発明1に引用発明2で開示された技術事項を付加することは当業者であっても容易に想到し得るとはいえない。 3-3-2.<まとめ> 上記「3-3-1.<相違点3>について」で言及した様に、引用発明1に引用発明2で開示された技術事項を付加することは当業者であっても容易に想到し得るとはいえないのであるから、他の相違点(<相違点1>及び<相違点2>)について検討するまでも無く、本願補正発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明することができたとはいえず、また、他に本願補正発明が特許を受けることができない理由もないから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についての補正事項は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 また、他の請求項についても上記「3-3-1.<相違点3>について」で言及したのと同様に、引用発明1に引用発明2で開示された技術事項を付加することは当業者であっても容易に想到し得るとはいえない。 よって、本件補正のその余の補正事項についても、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。 4.むすび 本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合し、適法になされたものである。 第3 本願発明 本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1-12に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-12に記載された事項(上記「第2 平成27年7月31日付けの手続補正の適否 1.本件補正の内容 (イ)の【請求項1】-【請求項12】)により特定されるとおりのものである。 そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-05-30 |
出願番号 | 特願2013-558075(P2013-558075) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H04W)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 遠山 敬彦 |
特許庁審判長 |
水野 恵雄 |
特許庁審判官 |
佐藤 智康 吉田 隆之 |
発明の名称 | マシン間ネットワーク内でバースト性のあるネットワークへの参加および再参加を処理する方法および装置 |
代理人 | 特許業務法人 谷・阿部特許事務所 |