• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01Q
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H01Q
審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 H01Q
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01Q
管理番号 1315377
審判番号 不服2015-13440  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-15 
確定日 2016-06-21 
事件の表示 特願2013- 95672「再構成可能なアンテナに関する改良」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月 7日出願公開、特開2013-229877、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は,2008年6月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年6月13日,英国 2007年6月13日,米国)を国際出願日とする特願2010-511732号の一部を平成25年4月30日に新たな特許出願としたものであって,平成26年2月13日付けで拒絶理由が通知され,同年8月21日に意見書及び手続補正書が提出され,同年11月5日付けで最後の拒絶理由が通知され,平成27年2月9日に意見書が提出されたが同年4月3日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がされ,これに対し,同年7月15日に拒絶査定不服審判が請求され,その後,当審において平成28年1月6日付けで拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)が通知され,同年4月6日に意見書と手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は,平成28年4月6日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものと認める。
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「電磁波を送信および/または受信する装置であって,
伝送ラインと,
第1のアンテナ構成をそれぞれ有する複数の第1のアンテナ素子および第2のアンテナ構成をそれぞれ有する複数の第2のアンテナ素子を含み,前記第1のアンテナ構成と前記第2のアンテナ構成とが相違しているアンテナアレイと,
前記アンテナアレイを構成するために,1つ以上の前記アンテナ素子をオンまたはオフに切替えることができる1つ以上のスイッチと,を含み,
ここで,前記アンテナ素子をオンまたはオフに切替えることは,容量性スイッチによる高周波的な接地動作を含んでおり,
前記第2のアンテナ構成が,前記第1のアンテナ構成の回転および反転の少なくとも1つを含む変形を含み,
前記伝送ラインは,前記1つ以上のスイッチのうちの1つを介して,前記第1のアンテナ素子および前記第2のアンテナ素子の各々を直接接続可能である,装置。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由
平成26年 8月21日付けでした手続補正は,下記の点で願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。



補正後の請求項1に「前記伝送ラインは,前記1つ以上のスイッチのうちの1つを介して,前記第1のアンテナ素子および前記第2のアンテナ素子の各々を直接接続可能である」との記載があるが,当該事項は当初明細書等に記載されておらず,当初明細書等の記載から自明であるとも認められない。例えば,段落0094には「図10は,4つの別個のMEMSスイッチ54,56,58および60が,4つの別個のアンテナ62,64,66および68に接続される,本発明のさらなる実施形態である。伝送ライン52は,アンテナを通しての入力および出力を提供する。」との記載があるが,請求項1には,「前記第1のアンテナ構成と前記第2のアンテナ構成とが相違している」との記載や,「前記アンテナアレイを構成するために,1つ以上の前記アンテナ素子をオンまたはオフに切替えることができる」との記載もあるところ,図10のアンテナ構成が相違していることや,アンテナ素子をオンまたはオフに切替えることに関する記載や示唆を,当初明細書等において発見することができない。

2 原査定の理由の判断
平成26年8月21日に提出された手続補正書による補正事項「前記伝送ラインは,前記1つ以上のスイッチのうちの1つを介して,前記第1のアンテナ素子および前記第2のアンテナ素子の各々を直接接続可能である」は,当初明細書の段落【0094】に「図10は,4つの別個のMEMSスイッチ54,56,58および60が,4つの別個のアンテナ62,64,66および68に接続される,本発明のさらなる実施形態である。伝送ライン52は,アンテナを通しての入力および出力を提供する。MEMSスイッチ54,56,58および60は,個々のアンテナ62,64,66および68の各々を,伝送に入っていくかまたは伝送から出てくるかを切替えるために,そして,または電磁信号を受信するために,制御可能である。これは,アンテナを通して送信する信号の位相を変えるために,MEMSスイッチへの入力を制御することによって達成される。」として開示されている。
ここで,図10の実施形態に係る装置は,請求項1の「前記第1のアンテナ構成と前記第2のアンテナ構成とが相違している」との構成を備えていないが,この構成自体は当初明細書の段落【0106】?【0111】及び【図19】?【図21】等に記載された事項の範囲内であり,かつ,段落【0106】「アンテナアレイ100を構成するために1つ以上のアンテナ素子のオン/オフ動作を切替えるように操作可能なMEMSスイッチは,図示されない。」の記載によれば,図面の記載上はMEMSスイッチが省略されてはいるが,上記【図19】?【図21】の各アンテナ素子はMEMSスイッチでオンまたはオフに切替えるものと解するのが相当である。
そうすると,平成26年 8月21日付けでした手続補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

よって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由
A この出願の下記の請求項に係る発明は,その優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



1.特表2004-532546号公報
2.特開平2-214306号公報(特に,FIG.1?FIG.7)
3.特開平6-224629号公報(特に,【図1】?【図2】)
4.特開昭56-160104号公報(特に,第3図?第4図)
5.特開2001-284946号公報(特に,【図6】)

請求項1?6に係る発明に対して: 上記引用例1?5

上記引用例1には,3種類の放射素子(316A?316C)を格子状に配列して平面アレイ構成とし,各放射素子にRFスイッチ(318A?318C)を介して伝送ラインを接続してなる複数機能多重帯域フェーズドレイアンテナが記載されている(特に,【図3】)。
また,上記複数機能として,10GHzで動作するレーダなどの高周波機能と2GHzで動作する通信チャネルなどの低周波機能が記載されている(段落【0005】)。
さらに,MEMSスイッチをアンテナアレーの切替スイッチとして用いることも記載されている(【要約】等)。
上記3種類の放射素子(316A?316C)は,異なる周波数を送受信するなど異なる機能を奏するアンテナ素子であるから,その形状や大きさ等のアンテナ構成を異なるものとすることは,当業者であれば普通になし得るものである。

また,アレイアンテナのアンテナ素子として,形状,大きさ,向き等が相違する複数構成のアンテナ素子を用いることにより,周波数ダイバシチ機能や偏波ダイバシチ機能を持たせたアレイアンテナは,上記引用例2?5等に記載されているように周知である。


B 本件出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



【請求項1】「1つ以上の前記アンテナ素子をオンまたはオフに切替えることができる1つ以上のスイッチ」に関し,
本願明細書には,具体的なMEMSスイッチ構成として【図1】?【図13】に記載されたような,伝送ラインを高周波的に接地する容量性スイッチのみが記載され,その機能として【図6】のグラフに示されるような位相制御機能が記載されているのみであるところ,上記「オンまたはオフに切替える」動作が上記容量性スイッチによる高周波的な接地動作を含むのか否かが不明瞭である。

請求項1を引用する請求項2?6についても同様である。


C 本件出願は,発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。



【請求項1】「1つ以上の前記アンテナ素子をオンまたはオフに切替えることができる1つ以上のスイッチ」に関連して,
本願明細書には,「アンテナ素子をオンまたはオフに切替える」,「供給(給電)ラインまたは信号経路に電磁気デバイスを接続および分離する」等の記載があるのみであり(段落【0032】,【0033】,【0054】,【0069】,【0106】,【0123】等),具体的なスイッチの構成が記載されていないため,上記「1つ以上の前記アンテナ素子をオンまたはオフに切替えることができる1つ以上のスイッチ」を具体的にどのように構成するのかが不明瞭である。

請求項1を引用する請求項2?6についても同様である。

したがって,発明の詳細な説明は,請求項1?6に係る発明を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。

2 当審拒絶理由の判断
2-1 理由Aについて
(1)引用例記載事項
ア 引用例1
当審拒絶理由通知で引用した引用例1には,「フェーズドアレイアンテナ」(発明の名称)に関し,以下の事項が記載されている。

「【0003】
レーダによる監視,地上および衛星通信,航行,識別および電子逆探装置などの防衛および商用電子システムは,多くの場合,船舶,航空機,衛星または建築物などの単一構造上に配備される。通常,これらのシステムは,電磁スペクトル中の様々な周波数帯域で動作する。多重帯域複数機能動作をサポートするには,通常,いくつかの単一離散アンテナを別々のアンテナ用プラットフォーム上に設置するが,しばしば,これらを担持する構造上で,スペースの取り合いになる。追加のアンテナ用プラットフォームは,余分な重量を追加し,容積を占有し,電磁適合性,レーダ断面および観測上の問題を引き起こす。
【0004】
アンテナ動作に有害な影響を及ぼさずに,異なる周波数および異なる機能で互いに近接してアンテナ開口を動作させることが求められる。多くの場合,単一プラットフォームで多重帯域,広角走査および複数チャネルに対応する能力を有することが望まれる。単一プラットフォームで多重帯域,複数機能能力をもたらす典型的なアーキテクチャを図1に示す。このアンテナ用プラットフォーム100は,複数のアンテナセル110A...Nを備える。各セルは,放射素子116A...N,RFエネルギーを放射素子116A...Nに結合する送信線路114A...N,および位相シフタ,T/R(送受信)モジュール,または各放射素子116A...Nから放射されるRFエネルギーを制御するその他のデバイスなどの放射制御素子112A...N,からなる。アンテナセル110A...Nはそれぞれ,別々の送信または受信機能10A...Nに結合される。送信または受信機能10A...Nはそれぞれ,振幅,位相および/または周波数の独立したプロセスである。たとえば,1つの機能は2GHzの衛星通信信号の送信であり,別の機能は10GHzのレーダ信号の受信であり得る。アンテナ用プラットフォーム100は,2次元で格子状に並べられたいくつかのアンテナセル110A...Nを含む平面アレイを備えることができ,各セル110A...Nは全体として働いて,全体的な所望の機能的特性に関連するファーフィールドビームを生成する。
【0005】
アンテナ用プラットフォームは,異なる密度で同じ格子スペースを占めるアンテナセルを使用して,異なる送信または受信機能を行うことができる。たとえば,10GHzで動作するレーダなどの高周波機能では,いくつかのアンテナセルを使用してビームを精密に誘導することができ,2GHzで動作する通信チャネルなどの低周波機能では,その波長がより長いために,使用するアンテナセルの数をより少なくすることができる。異なる機能を行うために異なる密度のアンテナセルを用いることをアレイシンニングと称することがある。送信または受信機能はそれぞれ,グレーティングローブのない走査を実現するなどの放射性能の最適化,あるいはビーム幅の合成の最適化を行うために,固有の格子間隔を必要とすることがある。グレーティングローブのない走査を実現するには,半波長よりも長い間隔を置いて配置された素子だけを制御しなければならないので,より低い周波数では,位相制御が必要な放射素子の数はより少なくなる。
【0006】
図2に,異なる密度のアンテナセル210A,210B,210Cを使用して,3つの異なるアンテナ機能10A,10B,10Cを行う平面アレイ200を示す。図2では,平面アレイ200の特定の部分である第1機能10Aは4つのアンテナセル210Aを使用し,第2機能10Bは2つの放射素子210Bしか使用せず,第3機能10Cは1つのアンテナセル210Cしか使用しない。アンテナセル210A,210B,210Cはそれぞれ,依然として放射素子216A,216B,216C,送信線路214A,214B,214Cおよび放射制御素子212A,212B,212Cを含む。
【0007】
アレイのシンニング化を行うと,平面アレイ内で必要な素子の数が減ることに留意されたい。たとえば,ある平面アレイが各機能ごとに16個のアンテナセルを使用して3つの機能を提供する場合,このアレイには合計48個のアンテナセルが必要である。これは,48個の放射素子,送信線路および放射制御素子も必要であることも意味する。しかし,図2に示すアレイシンニングを利用する場合,必要なアンテナセルの数,したがってアンテナ構成要素の数は少なくなる。たとえば,図2で,第1機能10Aが合計16個のアンテナセル210Aを使用して所望の性能を実現する場合,16個の放射素子216A,送信線路214Aおよび放射制御素子212Aが必要である。しかし,第2機能10Bに必要なアンテナセル210Bの数はその半分だけであり,そのため,8個の放射素子216B,送信線路214Bおよび放射制御素子212Bしか必要としない。最後に,第3機能10Cに必要なアンテナセル210Cの数は第1機能10Aの1/4であり,そのため,4個の放射素子216C,送信線路214Cおよび放射制御素子212Cしか必要としない。したがって,図2に示すアレイシンニングによって,構成要素の数がかなり減少する。
【0008】
シンニングした平面アレイのアンテナセルは,図2に示すように,単一アレイ内で交互に配置することができる。しかし,放射素子が互いに近接している場合,1つの機能をサポートするアンテナセルからのRFエネルギーが別のアンテナセルに結合することがよくあり,アレイの性能を低減させる。RFエネルギーの結合を低減させる一手法は,図3に示すように,未使用のセルをスイッチで開閉することである。図3では,平面アレイ300内のアンテナセル310A,B,Cはそれぞれ,放射制御素子312A,B,C,RFスイッチ318A,B,C,送信線路314A,B,Cおよび放射素子316A,B,Cからなる。しかし,単にRFスイッチ318A,B,Cで未使用のセル310A,B,Cを切り離すことは望ましくない。というのは,開路状態の有限長送信線路314A,B,Cは,アレイ300にスプリアスインピーダンスを付加する傾向があり,また,スイッチ318A,B,Cが負荷で終端されたときに損失が生じる恐れがあるからである。」

そうすると,上記引用例1(特に,図3)には,以下の発明(以下,「引用発明1」という。)が開示されていると認める。

「複数機能多重帯域フェーズドアレイアンテナであって,
送信線路(314A,314B)と,
複数の第1の放射素子(316A)および複数の第2の放射素子(316B)を含む平面アレイ(300)と,
1つ以上の前記放射素子(316A,316B)をそれぞれの前記送信線路(314A,314B)に接続または切断することができる1つ以上のRFスイッチ(318A,318B)と,を含み,
前記送信線路(314A,314B)は,前記1つ以上のRFスイッチ(318A,318B)のうちの1つを介して,第1の放射素子(316A)および第2の放射素子(316B)の各々と接続する,複数機能多重帯域フェーズドアレイアンテナ。」

(2)対比
本願発明と引用発明1とを対比するに,両者は以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「電磁波を送信および/または受信する装置であって,
伝送ラインと,
第1のアンテナ構成をそれぞれ有する複数の第1のアンテナ素子および第2のアンテナ構成をそれぞれ有する複数の第2のアンテナ素子を含むアンテナアレイと,
前記アンテナアレイを構成するために,1つ以上の前記アンテナ素子をオンまたはオフに切替えることができる1つ以上のスイッチと,を含み,
前記伝送ラインは,前記1つ以上のスイッチのうちの1つを介して,前記第1のアンテナ素子および前記第2のアンテナ素子の各々を直接接続可能である,装置。」

(相違点1)
「第1のアンテナ構成」と「第2のアンテナ構成」に関し,
本願発明では,「前記第1のアンテナ構成と前記第2のアンテナ構成とが相違して」おり,「前記第2のアンテナ構成が,前記第1のアンテナ構成の回転および反転の少なくとも1つを含む変形を含」むのに対し,
引用発明では,第1の放射素子(316A)や第2の放射素子(316B)の「アンテナ構成」自体が明らかではなく,それらの異同も不明である点。

(相違点2)
一致点の「1つ以上の前記アンテナ素子をオンまたはオフに切替えることができる1つ以上のスイッチ」に関し,
本願発明では,「ここで,前記アンテナ素子をオンまたはオフに切替えることは,容量性スイッチによる高周波的な接地動作を含んで」いるのに対し,
引用発明では,「RFスイッチ」の具体的な切替動作が明らかではない点。

(3)判断
上記相違点につき検討する。

(相違点1)について
当審拒絶理由通知で引用した引用例5(特に,図6の実施例)には,「複数の水平偏波用のダイポールアンテナの素子2」と「複数の垂直偏波用のダイポールアンテナの素子8a,8b」を備えた「アンテナアレイ」が記載されており,アンテナの技術分野における技術常識を考慮すると,該「アンテナアレイ」は,「第1のアンテナ構成をそれぞれ有する複数の第1のアンテナ素子および第2のアンテナ構成をそれぞれ有する複数の第2のアンテナ素子を含み,前記第1のアンテナ構成と前記第2のアンテナ構成とが相違しているアンテナアレイ」であって,「前記第2のアンテナ構成が,前記第1のアンテナ構成の回転および反転の少なくとも1つを含む変形を含」む「アンテナアレイ」であるといえる。
しかしながら,引用例5には「【発明が解決しようとする課題】携帯電話等の移動体通信では通信品質を向上させるため,ダイバシチが用いられ,さらにその方法によってスペースダイバシチや,ハイトダイバシチ,偏波ダイバシチなどに分けられる。なかでも偏波ダイバシチは垂直偏波の電波と水平偏波の電波を同時に受信することで,安定した通話を可能にしている。このようなシステムの基地局アンテナには垂直偏波素子と,水平偏波素子の両方を持ち合わせ,それぞれの素子がほぼ同じ指向特性を得られる様に配列した偏波ダイバシチアンテナが必要となる。」(【0004】)と記載されていることから,上記「複数の水平偏波用のダイポールアンテナの素子2」と「複数の垂直偏波用のダイポールアンテナの素子8a,8b」は,1つの通信を行うために同時に電波を送受信するものと認められる。
一方,引用発明1の「複数機能多重帯域フェーズドアレイアンテナ」については,引用例1に「アンテナ動作に有害な影響を及ぼさずに,異なる周波数および異なる機能で互いに近接してアンテナ開口を動作させることが求められる。多くの場合,単一プラットフォームで多重帯域,広角走査および複数チャネルに対応する能力を有することが望まれる。単一プラットフォームで多重帯域,複数機能能力をもたらす典型的なアーキテクチャを図1に示す。・・・(中略)・・・アンテナセル110A...Nはそれぞれ,別々の送信または受信機能10A...Nに結合される。送信または受信機能10A...Nはそれぞれ,振幅,位相および/または周波数の独立したプロセスである。たとえば,1つの機能は2GHzの衛星通信信号の送信であり,別の機能は10GHzのレーダ信号の受信であり得る。」(【0004】),「シンニングした平面アレイのアンテナセルは,図2に示すように,単一アレイ内で交互に配置することができる。しかし,放射素子が互いに近接している場合,1つの機能をサポートするアンテナセルからのRFエネルギーが別のアンテナセルに結合することがよくあり,アレイの性能を低減させる。RFエネルギーの結合を低減させる一手法は,図3に示すように,未使用のセルをスイッチで開閉することである。」(【0008】)と記載されていることから,「複数の第1の放射素子(316A)」および「複数の第2の放射素子(316B)」は,別々の通信を行うために電波を送受信するものと認められる。
そうすると,1つの通信を行うために同時に電波を送受信することを前提とし,それにより「安定した通話を可能に」するよう構成された引用例5記載の「アレイアンテナ」の素子構成を,それぞれが別々の通信を行うために別々の電波を送受信する引用発明1に適用することには阻害要因があり,引用発明1に引用例5記載の技術を適用することが当業者にとり容易であったとはいえない。
他に,引用例2?4の記載からは上記(相違点1)の克服が容易であったといえる根拠を見いだすことはできない。

したがって,上記(相違点2)について検討するまでもなく,本願発明は,引用発明1及び引用例2?5に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

また,請求項2?4は,いずれも請求項1を直接的または間接的に引用する請求項であるから,当該請求項に係る発明も同様に,引用発明1及び引用例2?5に記載された技術に基づいて当業者が容易に想到することができたとはいえない。

よって,当審拒絶理由Aは解消した。

2-2 理由Bについて
平成28年4月6日に提出された手続補正書による手続補正によって,補正前の請求項1に「ここで,前記アンテナ素子をオンまたはオフに切替えることは,容量性スイッチによる高周波的な接地動作を含んでおり」なる構成が付加された。
これにより,「1つ以上の前記アンテナ素子をオンまたはオフに切替えることができる1つ以上のスイッチ」に関し,「容量性スイッチによる高周波的な接地動作を含んで」いることが明らかになった。

請求項1を直接的または間接的に引用する請求項2?4についても同様である。

よって,当審拒絶理由Bは解消した。

2-3 理由Cについて
平成28年4月6日に提出された手続補正書による手続補正によって,補正前の請求項1に「ここで,前記アンテナ素子をオンまたはオフに切替えることは,容量性スイッチによる高周波的な接地動作を含んでおり」なる構成が付加された。
そして,該「容量性スイッチによる高周波的な接地動作」については,本願明細書の「 CPW構成において,MEMSスイッチの固定部は,CPW接地面に接続される。図2に示すように,直流電圧がMEMSブリッジとマイクロ波ラインとの間に印加されるときに,MEMSブリッジを誘電層上に変形させて,ブリッジキャパシタンスを30?100倍増加させる静電気(または他の)力が存在する。このキャパシタンスは,tラインをグラウンドに接続して,マイクロ波周波数で短絡を行い,そして,反射するスイッチに結びつく。バイアス電圧が除去されるときに,MEMSスイッチは,ブリッジの復元するスプリング力のためにその最初の位置に戻る。」(【0014】)にその詳細な動作が記載されている。
そうすると,上記手続補正により,「1つ以上の前記アンテナ素子をオンまたはオフに切替えることができる1つ以上のスイッチ」について,「容量性スイッチによる高周波的な接地動作」を行うための構成が明確になった。

よって,当審拒絶理由Cは解消した。

第5 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-06-07 
出願番号 特願2013-95672(P2013-95672)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01Q)
P 1 8・ 537- WY (H01Q)
P 1 8・ 55- WY (H01Q)
P 1 8・ 536- WY (H01Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 富澤 哲生高野 洋  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 山本 章裕
新川 圭二
発明の名称 再構成可能なアンテナに関する改良  
代理人 多田 繁範  
代理人 寺田 雅弘  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ