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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1315441
審判番号 不服2015-6319  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-03 
確定日 2016-06-10 
事件の表示 特願2013-103267「偏光板,光学フィルムおよび画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月 5日出願公開,特開2013-174922〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は,平成23年3月28日にした特願2011-070432号の一部を平成25年5月15日に新たな特許出願としたものである。また,特願2011-070432号は,平成19年10月2日にした特願2007-258911号(優先権主張 平成19年4月16日,以下「原出願」という。)の一部を新たな特許出願としたものである。
本件出願の手続きの経緯は,概略,以下のとおりである。
平成25年 6月11日:手続補正書
(以下,この手続補正書による補正を「手続補正1」という。)
平成26年 5月22日:拒絶理由通知(同年同月27日発送)
(特許法50条の2の通知を伴う拒絶理由通知)
平成26年 7月25日:意見書
平成26年 7月25日:手続補正書
(以下,この手続補正書による補正を「手続補正2」という。)
平成26年12月25日:手続補正2の補正却下
平成26年12月25日:拒絶査定(平成27年1月6日送達)
平成27年 4月 3日:手続補正書
(以下,この手続補正書による補正を「本件補正」という。)
平成27年 4月 3日:審判請求

第2 補正の却下の決定
[結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1) 本件補正前(手続補正1の後)の特許請求の範囲の請求項1及び請求項3の記載は,次のとおりである(以下,請求項3に係る発明(請求項2を引用しないもの)を,「本願発明」という。)。なお,手続補正2は却下されている。
ア 請求項1
「 偏光子の少なくとも一方の面に,接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板であって,
接着剤層は,少なくとも1種の硬化性成分を含有する活性エネルギー線硬化型接着剤により形成されており,
接着剤層のTgが,60℃以上であり,かつ,
接着剤層の厚みが,0.01?7μmであることを特徴とする偏光板。」

イ 請求項3
「 接着剤層は,ゲル分率が50重量%以上であることを特徴とする請求項1または2記載の偏光板。」

なお,請求項1に記載された「Tg」は,「ガラス転移温度」を表す記号であり,測定は硬化後の接着剤層について行われ(段落【0149】),硬化前の硬化性成分の物性値ではない。また,「ゲル分率」は,硬化後の接着剤層に残存する不溶分(未架橋モノマー等以外)の重量比のことであり,その測定方法は段落【0150】に記載されている。

(2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(以下,この記載に係る発明を,「本件補正後発明」という。)。なお,下線は当合議体が付したものである(以下同じ。)。
「 偏光子の少なくとも一方の面に,接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板であって,
接着剤層は,少なくとも1種の硬化性成分を含有する活性エネルギー線硬化型接着剤により形成されており,
接着剤層のTgが,60℃以上であり,
接着剤層の厚みが,0.01?4.2μmであり,かつ,
接着剤層は,ゲル分率が50重量%以上であることを特徴とする偏光板。」

(3) 本件補正について
本件補正は,本願発明の接着剤層の厚みについて,「0.01?7μm」とあるのを,本件出願の願書に最初に添付した明細書の段落【0160】(【表1】の実施例4)に基づいて,「0.01?4.2μm」に限定するものである。
したがって,本件補正は,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たすとともに同条5項2号に掲げる事項を目的とするものである。
そこで,本件補正後発明が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反しないか(特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

2 独立特許要件について
(1) 引用例の記載
本件出願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された刊行物である,特開2005-309401号公報(【公開日】平成17年11月4日,【発明の名称】偏光板,光学フィルムおよび画像表示装置,【出願番号】特願2005-75306号,【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16),【出願人】日東電工株式会社,以下「引用例」という。)には,以下の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,偏光板に関する。また本発明は当該偏光板を用いた光学フィルムに関する。さらには当該偏光板,光学フィルムを用いた液晶表示装置,有機EL表示装置,CRT,PDP等の画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
時計,携帯電話,PDA,ノートパソコン,パソコン用モニタ,DVDプレイヤー,TVなどでは液晶表示装置が急速に市場展開している。液晶表示装置は,液晶のスイッチングによる偏光状態変化を可視化させたものであり,その表示原理から偏光子が用いられている。特に,TV等の用途にはますます高輝度かつ高コントラストな表示が求められ,偏光子にも,より明るく(高透過率),より高コントラスト(高偏光度)のものが開発され導入されている。
【0003】
偏光子としては,たとえば,ポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させ,延伸した構造のヨウ素系偏光子が高透過率,高偏光度を有することから広く用いられている(特許文献1参照)。しかし,ヨウ素系偏光子は短波長側の偏光度が相対的に低いため,短波長側では黒表示での青抜け,白表示での黄色みなどの色相上の問題点を有する。
【0004】
またヨウ素系偏光子は,ヨウ素吸着の際にムラが発生しやすい。そのため,特に黒表示の際には,透過率のムラとして検出され,視認性を低下させるという問題があった。この問題を解決する方法としては,たとえば,ヨウ素系偏光子に吸着させるヨウ素の吸着量を増加させて,黒表示の際の透過率を人間の目の感知限界以下にする方法や,ムラそのものを発生しにくい延伸プロセスを採用する方法などが提案されている。しかしながら,前者は,黒表示の透過率と同時に,白表示の際の透過率も低下させてしまい,表示そのものが暗くなってしまう問題がある。また,後者は,プロセスそのものを置き換える必要があり,生産性を悪くしてしまう問題があった。
【0005】
また従来,偏光子は,その両面に,ポリビニルアルコール系接着剤を用いて,トリアセチルセルロースフィルムなどの保護フィルムを挟持した偏光板として用いられている。しかし,ポリビニルアルコール系接着剤は高温,高湿下で長時間放置すると,吸湿して接着力が低下するためフィルムが剥離し易くなったり,偏光板の寸法安定性が低下したりして,液晶ディスプレイの色相変化が生じるという問題がある。
【0006】
たとえば,接着剤としてウレタンプレポリマーを使用することによって接着性と耐湿熱性を向上させた偏光板が提案されている(特許文献2参照)。また接着剤として水溶性エポキシ化合物を含有したポリビニルアルコール系接着剤を用い,トリアセチルセルロース表面をケン化処理して接着力を向上させる方法が提案されている(特許文献3参照)。また偏光子と保護フィルムを熱硬化性接着剤で接着することによって接着性と耐湿熱性を改良した偏光板が提案されている(特許文献4,特許文献5,特許文献6参照)。さらには,耐熱性に劣るトリアセチルセルロースの替わりに,ポリカーボネートフィルムを保護フィルムに使用することによって接着性,耐熱性を改良した偏光板が提案されている(特許文献7参照)。しかし,接着剤として熱硬化性接着剤を使用しているものは,硬化に要する条件が高温,長時間であり,偏光子の光学特性に悪影響を与える可能性が高く,また生産性の低下を招くおそれがある。また,湿気硬化型ポリウレタン樹脂を用いた場合には,接着力は強固であるが耐水性が不十分であり,偏光板が湿熱環境におかれた場合や水中に浸漬された場合に保護フィルムが剥がれる。これらの問題を解決したものとして,一液型シリコーン系湿気硬化型接着剤が提案されている(特許文献8参照)。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は,偏光子の片面または両面に保護フィルムが積層されている偏光板であって,短波長側においても高偏光度を有し,かつ接着性の良好な偏光板を提供することを目的とする。
【0008】
また本発明は,高透過率,かつ高偏光度を有し,かつ接着性の良好な偏光板を提供することを目的とする。また耐久性が良好であり,黒表示の際の透過率のムラを抑えることができる偏光板を提供することを目的とする。
【0009】
また本発明は,当該偏光板を用いた光学フィルムを提供することを目的とする。さらには当該偏光板,光学フィルムを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。」

ウ 「【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは,前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果,以下に示す偏光板により前記目的を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は,偏光子の片面または両面に接着剤層を介して保護フィルムが積層されている偏光板において,
偏光子は,ヨウ素系吸光体を含有する透光性の水溶性樹脂により形成されるマトリクス中に,微小領域が分散された構造のフィルムからなり,
接着剤層は,活性エネルギー線または活性物質により硬化する樹脂を含有する接着剤により形成されていることを特徴とする偏光板,に関する。」

エ 「【0016】
また,本発明の偏光板は,偏光子と保護フィルムの接着剤層を,活性エネルギー線または活性物質により硬化する樹脂を含有する接着剤により形成しており,接着性が良好である。また耐久性の面でも良好である。」

オ 「【0032】
前記偏光板において,接着剤は,無溶剤系活性エネルギー線硬化型接着剤や,一液型湿気硬化型接着剤など,塗布前の混合工程や塗布後の乾燥工程が不要のものが望ましく,工程上有利となる。無溶剤系活性エネルギー線硬化型接着剤は,特に電子線等の高エネルギー線を使用すれば,熱硬化型に比較して硬化が早く架橋不足等の不具合も低減されるなど,架橋密度を上げやすい特徴がある。また湿気硬化型接着剤は接着性が良好な特徴をもつため,これらの接着剤を使用して偏光板を製造した場合,耐湿熱性などの耐久性に優れたものを得ることができる。無溶剤系活性エネルギー線硬化型接着剤としては,アクリル系,エポキシ系,ウレタン系などの紫外線硬化型,電子線硬化型のものを好適に使用できる。特に電子線硬化型は硬化工程の高速化が容易であり,硬化開始剤等の添加も不要であることから,生産性やコスト面で有利となる。また一液型湿気硬化型接着剤としては,特に一液型シリコーン系が好ましく用いられる。当該接着剤は偏光子との接着性が良好であり,形成される接着剤層の透明性が高く,光異方性もないので,光学的に高性能な偏光板を提供することができる。また湿気硬化型接着剤は,湿気により室温で硬化するので,保護フィルムで密閉されていても偏光子(ポリビニルアルコール)中の水分により硬化する。接着性を向上させるためには,含水率1質量%以上のポリビニルアルコール系偏光子を使用するのが望ましい。
【0033】
また前記偏光板において,保護フィルムの接着面は,コロナ処理,プラズマ処理,フレーム処理,プライマー塗布処理およびケン化処理から選ばれる少なくとも一つの処理が施されていることが好ましい。かかる処理により接着性を向上することができる。」

カ 「【0036】
前記保護フィルムとしては,(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と(B)側鎖に置換および/または非置換フェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂とを含有してなる樹脂組成物,ならびにノルボルネン系樹脂から選ばれるいずれか少なくとも1種を好ましく用いることができる。その他,ポリオレフィン系樹脂,ポリエステル系樹脂およびポリアミド系樹脂から選ばれるいずれか少なくとも1種を好ましく用いることができる。
【0037】
前記材料を用いた保護フィルムは,高温度下や高湿度下において偏光子が寸法変化し,その応力を受けた場合にも安定した位相差値を確保できる。すなわち,高温度,高湿度の環境下においても位相差が生じにくく,特性変化の少ない光学フィルムを得ることができる。特に,熱可塑性樹脂(A),(B)の混合物を含有する保護フィルムが好ましい。」

キ 「【0111】
前記偏光子と保護フィルムとの接着には,活性エネルギー線または活性物質により硬化する樹脂を含有する接着剤を用いる。かかる接着剤はウレタン系,アクリル系,エポキシ系,シリコーン系等の各種のものを用いることができる。活性エネルギー線としては,紫外線,電子線等があげられ,かかる活性エネルギー線等により硬化する接着剤は,活性エネルギー線により硬化する(メタ)アクリロイル基,ビニル基,エポキシ基等の官能基を有する樹脂を含有する。活性エネルギー線硬化型接着剤は,無溶剤系であるのが好ましい。活性エネルギー線硬化型接着剤には適宜に開始剤を含有させることができる。また活性物質により硬化する樹脂を含有する接着剤は,水等が活性物質として作用する湿気硬化型の接着剤があげられる。」

ク 「【0114】
活性エネルギー線硬化型接着剤としては,例えば,アクリル系,メタクリル系,ウレタン系,エポキシ系,ポリエステル系,ポリビニル系など,適宜なものを使用できる。また,活性エネルギー線による硬化反応効率を上げる目的で,各種開始剤を添加してもよい。市販品としては,例えば,三井武田ケミカル株式会社製「タケネートM631N」,ナガセケムテックス株式会社製「DA-314」,Norland Products社製「Norland Optical Adhesive 81」,大日本インキ化学工業株式会社製「Y-101」,「Y-103」,「1071」,「1072」,東洋インキ製造株式会社製「IK419」「IK500」,ジャパンエポキシレジン株式会社製「828」などがあげられる。
【0115】
接着剤の調製に際しては必要に応じて,他の添加剤や,酸等の触媒も配合することができる。
【0116】
本発明の偏光板は,前記保護フィルムと偏光子を,前記接着剤を用いて貼り合わせることにより製造する。接着剤の塗布は,保護フィルム,偏光子のいずれに行ってもよく,両者に行ってもよい。貼り合わせ後には,必要に応じて乾燥工程を施し,接着層を形成する。偏光子と保護フィルムの貼り合わせは,ロールラミネーター等により行うことができる。接着剤層の厚みは特に制限されないが一般には0.05?20μm程度,好ましくは0.1?10μmである。
【0117】
前記接着剤が,活性エネルギー線硬化型接着剤の場合には,貼り合わせ後に,活性エネルギー線により接着層を硬化する。活性エネルギー線の照射量は,一般的に使用する活性エネルギー線の種類,活性エネルギー線硬化型接着剤の種類や塗布厚み,保護フィルムの種類や厚みにより決定される。例えば,活性エネルギー線として紫外線を用いる場合,その照射量は主に使用する保護フィルムの紫外線透過率とその厚みに依存するが,概ね1?10000mJ/cm^(2),好ましくは10?7500mJ/cm^(2),さらに好ましくは50?5000mJ/cm^(2)である。また,活性エネルギー線として電子線を用いる場合,その照射量は主に使用する保護フィルムの厚みに依存するが,概ね1?500kGy,好ましくは3?300kGy,さらに好ましくは5?150kGyである。照射量が低すぎると,活性エネルギー線が保護フィルムを透過する際に減衰して,接着剤に十分照射されず,硬化不十分となるおそれがある。また照射量が多すぎると,保護フィルムや偏光子が変質または分解し,光学特性が好ましくない変化を起こす可能性がある。」

ケ 「【0155】
実施例1
(偏光子)
重合度2400,ケン化度98.5%のポリビニルアルコール樹脂を溶解した固形分13重量%のポリビニルアルコール水溶液と,メソゲン基の両末端に一つずつアクリロイル基を有する液晶性単量体(ネマチック液晶温度範囲が40?70℃)とグリセリンとを,ポリビニルアルコール:液晶性単量体:グリセリン=100:5:15(重量比)になるように混合し,液晶温度範囲以上に加熱してホモミキサーにて撹拌して混合溶液を得た。当該混合溶液中に存在している気泡を室温(23℃)で放置することにより脱泡した後に,キャスト法にて塗工,続いて乾燥後に,白濁した厚さ70μmの混合フィルムを得た。この混合フィルムを130℃で10分間熱処理した。
【0156】
上記混合フィルムを30℃の水浴に浸漬して膨潤させたのち,30℃のヨウ素:ヨウ化カリウム=1:7(重量比)の水溶液(染色浴:濃度0.32重量%)に浸漬しながら約3倍に延伸し,その後,50℃のホウ酸3重量%水溶液(架橋浴)に浸漬しながら総延伸倍率が約6倍になるように延伸した後,さらに60℃のホウ酸4重量%水溶液(架橋浴)に浸漬した。さらに,30℃のヨウ化カリウム5重量%水溶液浴に10秒間浸漬して色相調節を行なった。続いて50℃にて4分間乾燥し,本発明の偏光子を得た。」

コ 「【0159】
(保護フィルム)
イソブテンおよびN-メチルマレイミドからなる交互共重合体(N-メチルマレイミド含有量50モル%)75重量部と,アクリロニトリルの含有量が28重量%であるアクリロニトリル-スチレン共重合体25重量部とを塩化メチレンに溶解し,固形分濃度15重量%の溶液を得た。この溶液をガラス板状に敷いたポリエチレンテレフタレートフィルム上に流延し,室温で60分放置した後,当該フィルムから剥がした。100℃で10分間乾燥後に,140℃で10分間,さらに160℃で30分間乾燥して,厚さ100μmの保護フィルムを得た。保護フィルムの面内位相差Reは4nm,厚み方向位相差Rthは4nmであった。
【0160】
(偏光板)
前記保護フィルムを,上記偏光子の両面に,アクリル変性一液型湿気硬化型接着剤(コニシ株式会社製,商品名:ボンド サイレックス「クリアー」)を用いて貼り合わせて偏光板を作製した。接着剤層の厚みは2μmであった。」

サ 「【0161】
実施例2
実施例1において,保護フィルムを,厚さ80μmのノルボルネン系フィルム(JSR社製,アートン:面内位相差Reは4nm,厚み方向位相差Rthは20nm)に変更したこと以外は実施例1と同様にして偏光板を得た。」

シ 「【0166】
実施例7
実施例2において,接着剤を,アクリル系無溶剤電子線硬化型接着剤(ナガセケムテックス株式会社製,商品名:DA-314)に変更し,偏光子と保護フィルムを貼り合わせた後に,電子線照射装置(岩崎電気株式会社製,形式:CB250/30/20A)にて保護フィルム越しに電子線を50kGy照射して接着剤を硬化させたこと以外は実施例2と同様にして偏光板を得た。
【0167】
実施例8
実施例2において,接着剤を,エポキシ系無溶剤紫外線硬化型接着剤(Norland Products製,商品名:Norland Optical Adhesive 81)に変更し,偏光子と保護フィルムを貼り合わせた後に,紫外線照射装置(C-SUN社製,形式:UVC-321AM)にて保護フィルム越しに紫外線を300mJ/cm^(2)照射して接着剤を硬化させたこと以外は実施例2と同様にして偏光板を得た。」

ス 「【0184】
(評価)
偏光板について下記評価を行った。結果を表2に示す。
【0185】
<接着力>
JIS K6854に準じて,偏光板を幅25mmの大きさに裁断し,常温(23℃),引張り速度100mm/分の条件でT型剥離試験を行い,接着力(N/25mm)を測定した。
【0186】
<耐湿熱性>
偏光板を,50mm×50mmの大きさに裁断し,70℃の温水に浸漬し,いずれかの片面の保護フィルムが完全に剥がれるまでの時間(分)を測定した。」

セ 「【0191】
【表2】

表2に示す通り,実施例では,比較例に比べて接着力,耐湿熱性が良好である。接着力は80N/25mm以上であって,耐湿熱性は120分間以上であれば,より接着性の良好な偏光板を提供できる。また実施例1?4,6?8では位相差値の小さい保護フィルムを用いているため,実施例5に比べて光学特性の変化量が小さく,耐久性が良好であることが分かる。また,ムラが小さく抑えられていることが分かる。」

(2) 引用発明
引用例には,次の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「 偏光子の片面または両面に接着剤層を介して保護フィルムが積層されている偏光板において,
偏光子は,ヨウ素系吸光体を含有する透光性の水溶性樹脂により形成されるマトリクス中に,微小領域が分散された構造のフィルムからなり,
接着剤層は,活性エネルギー線により硬化する樹脂を含有する接着剤により形成される,
偏光板。」

(3) 引用発明との対比
本件補正後発明と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。
ア 偏光子,透明保護フィルム,接着剤層,偏光板
引用発明の「偏光子」,「偏光子の少なくとも一方の面」及び「接着剤層」は,それぞれ,本件補正後発明の「偏光子」,「偏光子の片面または両面」及び「接着剤層」に相当する。また,引用発明の「保護フィルム」が「透明」であることは,引用発明の用途(段落【0001】及び【0002】)からみて自明である。したがって,引用発明の「保護フィルム」は,本件補正後発明の「透明保護フィルム」に相当する。加えて,引用発明は,「偏光子の片面または両面に接着剤層を介して保護フィルムが積層されている偏光板」である。ここで,引用発明の「積層され」と本件補正後発明の「設けられ」は,技術的にみて,同じことを表現している。
そうしてみると,引用発明の「偏光板」は,本件補正後発明の「偏光板」に相当するとともに,「偏光子の少なくとも一方の面に,接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板」の要件を満たす。

イ 活性エネルギー線硬化型接着剤
引用発明の「接着剤層は,活性エネルギー線により硬化する樹脂を含有する接着剤により形成される」ものである。
ここで,本件出願の発明の詳細な説明の段落【0047】には,「活性エネルギー線硬化型接着剤は,電子線硬化型,紫外線硬化型の態様で用いることができる。」と記載されている。また,引用例の段落【0032】には,「無溶剤系活性エネルギー線硬化型接着剤としては,アクリル系,エポキシ系,ウレタン系などの紫外線硬化型,電子線硬化型のものを好適に使用できる。」と記載されている。
そうしてみると,引用発明の「活性エネルギー線」,「硬化する樹脂」及び「接着剤」は,本件補正後発明の「活性エネルギー線」,「硬化性成分」及び「接着剤」に相当する。加えて,引用発明の「接着剤」及び「接着剤層」は,本件補正後発明の「活性エネルギー線硬化型接着剤」及び「接着剤層は,少なくとも1種の硬化性成分を含有する活性エネルギー線硬化型接着剤により形成されており」の要件を満たす。
なお,「樹脂」は,通常,架橋後の高分子を意味するが,引用例の段落【0111】に「活性エネルギー線としては,紫外線,電子線等があげられ,かかる活性エネルギー線等により硬化する接着剤は,活性エネルギー線により硬化する(メタ)アクリロイル基,ビニル基,エポキシ基等の官能基を有する樹脂を含有する。」と記載されているとおり,引用発明でいう「樹脂」は,架橋・硬化前の接着剤成分を意味している。

(4) 一致点
本件補正後発明と引用発明は,以下の構成において一致する。
「 偏光子の少なくとも一方の面に,接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板であって,
接着剤層は,少なくとも1種の硬化性成分を含有する活性エネルギー線硬化型接着剤により形成されている,
偏光板。」

(5) 相違点
本件補正後発明と引用発明は,以下の相違点において相違するか,一応,相違する。
ア 相違点1
本件補正後発明は,「接着剤層のTgが,60℃以上」であるのに対して,引用発明は,「接着剤層のTgが,60℃以上」であるとは特定されていない点。

イ 相違点2
本件補正後発明は,「接着剤層の厚みが,0.01?4.2μm」であるのに対して,引用発明は,「接着剤層の厚みが,0.01?4.2μm」であるとは特定されていない点。

ウ 相違点3
本件補正後発明の「接着剤層は,ゲル分率が50重量%以上である」のに対して,引用発明の「接着剤層」は,「ゲル分率が50重量%以上である」とは特定されていない点。

(6) 判断
ア 相違点1について
光学部品を接着するために用いる硬化性組成物を含む接着剤に関する技術分野において,硬化後の接着剤の高温高湿下における耐久性を高めるために,硬化後の接着剤のTgが本件補正後発明の条件を満たす程度に高くなるように接着剤を選定する技術は,本件出願の優先日より前において周知でありかつ慣用されている。また,引用例には,引用発明の偏光板の用途をTV等の液晶表示装置としたとき,高温及び高湿度の環境下における,偏光板の接着剤の耐久性を高めることが課題として挙げられている(段落【0001】?【0006】)。なお,TV等の液晶表示装置における偏光板は,バックライトにさらされ,照射される光の約半分を吸収して高温となるものであるから,求められる耐久性は相当高いと考えられる。
そうしてみると,引用発明において,「接着剤層のTgが,60℃以上であり」の要件を,少なくとも満たす程度にTgを高くすることは,引用例が示唆する範囲内の事項であり,引用発明をTV等の液晶表示装置において実施しようとする当業者において必然的に行うべき事項にすぎない。
(ア)例えば,特開平11-100419号公報(拒絶理由通知の引用文献3,以下「周知例1」という。)の段落【0066】には,「得られる硬化物のガラス転移温度が通常,-30?200℃,好ましくは0?150℃,更に好ましくは30?120℃になるように各成分を配合することが好ましい。ガラス転移温度が低すぎると夏場や日当たりの良い閉め切った室内等で高温になった場合硬化物が軟化して接着力が低下して被着体が剥がれたりずれたりする場合がある。」と記載されており,硬化物が軟化しないよう使用環境の温度より高いTgとすることは周知である。
そして,引用発明をTV等の液晶表示装置において実施する場合に求められる耐久性の程度は,周知例1に記載の「夏場や日当たりの良い閉め切った室内等」よりも厳しいと考えられる。
したがって,引用発明において,「接着剤層のTgが,60℃以上であり」の要件を,少なくとも満たす程度にTgを高くすることは,引用例が示唆する範囲内の事項であり,引用発明をTV等の液晶表示装置において実施しようとする当業者において必然的に行うべき事項にすぎない。

(イ)あるいは,特開2005-290241号公報(拒絶理由通知の引用文献4,以下「周知例2」という。)の段落【0004】には,「フィルム状接着剤は,液晶表示装置(LCD)等の精密機器周辺の接続に使用されるため高い信頼性が要求されている。そこで,導通/絶縁性能に加え,耐環境性が求められており,例えばLCDへ適用される場合は,60℃-90%×1000時間の高温高湿試験や85℃×1000時間の高温放置試験に耐えられる高い耐熱性,耐湿性等が要求される。」と記載されている。
そして,引用発明をTV等の液晶表示装置において実施する場合に求められる耐久性の程度は,周知例2に記載の「LCDへ適用される場合は,60℃-90%×1000時間の高温高湿試験や85℃×1000時間の高温放置試験に耐えられる高い耐熱性,耐湿性等が要求される。」と同程度のものと考えられる。
したがって,引用発明において,「接着剤層のTgが,60℃以上であり」の要件を,少なくとも満たす程度にTgを高くすることは,引用例が示唆する範囲内の事項であり,引用発明をTV等の液晶表示装置において実施しようとする当業者において必然的に行うべき事項にすぎない。

(ウ)加えて,特開2006-8809号公報(拒絶理由通知の引用文献5,以下「周知例3」という。)の段落【0001】及び【0025】には,それぞれ,「本発明は,光通信,計測,医療分野等で使用される光ファイバーに使用される光学接着剤に関し,詳細には,アクリル基又はエポキシ基含有の特定構造のフッ素化合物からなる低屈折率の光学接着剤及び光部品接着方法に関する。」及び「本発明の組成物は,その硬化物のTgが30?110℃であることが好ましい。30℃未満であると,接着後,加熱された場合に柔らかくなり,接着強度が低下しやすい。また,110℃を超えると,硬すぎて衝撃が加わると簡単に剥がれやすい。より好ましくは50?100℃,さらに好ましくは70?90℃である。」と記載されており,硬化物が柔らかくならないよう使用環境の温度以上のTgとすることは周知である。
そして,引用発明をTV等の液晶表示装置において実施する場合に求められる耐久性の程度は,周知例3に記載の「光ファイバーに使用される光学接着剤」と同程度か,それより厳しいものと考えられる。
したがって,引用発明において,「接着剤層のTgが,60℃以上であり」の要件を,少なくとも満たす程度にTgを高くすることは,引用例が示唆する範囲内の事項であり,引用発明をTV等の液晶表示装置において実施しようとする当業者において必然的に行うべき事項にすぎない。

イ 相違点2について
引用例に記載の実施例1では,保護フィルムを偏光子の両面に接着剤を用いて貼り合わせて偏光板を作製した際の接着剤層の厚みが,2μmとされている(段落【0160】)。
ここで,実施例1の接着剤層は,活性エネルギー線により硬化する樹脂を含有する接着剤により形成されたものではないが,活性エネルギー線により硬化する樹脂を含有する接着剤により形成された接着剤層の実施例7及び実施例8(段落【0166】及び【0167】)では,接着剤の組成及び硬化方法を変えた以外は実施例2(段落【0161】)と同様とされ,実施例2は,保護フィルムを変更した以外は実施例1と同様とされている。したがって,実施例7及び実施例8においても,目安となる接着剤層の厚みは2μmである。
そうしてみると,引用例には,当業者が設計の目安として理解する具体値として,本件補正後発明の接着剤層の厚みの範囲内(真ん中)の値が開示されている。
相違点2は,実質的に,相違点であるとはいえない。

ウ 相違点3について
引用例の段落【0032】には,「無溶剤系活性エネルギー線硬化型接着剤は,特に電子線等の高エネルギー線を使用すれば,熱硬化型に比較して硬化が早く架橋不足等の不具合も低減されるなど,架橋密度を上げやすい特徴がある。」と記載されている。そうしてみると,引用発明を具体化するに際しては,接着剤が架橋不足となる不具合を回避するよう,架橋密度を高めるのが好ましいといえる。
したがって,引用発明において,ゲル分率を本件補正後発明の要件(50重量%以上,すなわち,未反応モノマー等の可溶分を半分以下とする要件)を少なくとも満たす程度にまで高めることは,当業者における通常の創意工夫の範囲内の事項である。

(7) 効果について
本件補正後発明の効果に関して,段落【0024】には,「本発明の偏光板では,接着剤層が60℃以上の高Tgになる,活性エネルギー線硬化型接着剤を用いるとともに,接着剤層の厚さを前記範囲に制御することで,高湿下および高温下の過酷な環境下における耐久性を満足させている。」と記載されている。
ここで,引用発明において,接着剤層のTgを60℃以上にすること(相違点1)は当業者が必然的に行うべき事項にすぎず,また,接着剤層の厚さ(相違点2)については,実質的に,相違点であるとはいえない。
本件補正後発明の効果は,引用発明が奏する効果であるか,少なくとも,当業者が期待する効果にすぎない。

(8) 請求人の主張について
ア 請求人は,審判請求書(<架橋密度について>のii)(12頁))において,引用例の段落【0032】には「接着剤の架橋密度を高めるのが好ましい」ことは記載されていない(拡大解釈している)と主張する。
しかしながら,引用例の段落【0032】には,無溶剤系活性エネルギー線硬化型接着剤の特徴として,「熱硬化型に比較して硬化が早く架橋不足等の不具合も低減されるなど,架橋密度を上げやすい」と記載されている。
この記載に接した当業者ならば,架橋不足は不具合であると理解するし,これを回避するためには,無溶剤系活性エネルギー線硬化型接着剤を使用して,架橋密度を上げれば良いと理解する。そして,引用発明は,まさしく,活性エネルギー線により硬化する樹脂を含有する接着剤により接着剤層が形成される発明であるから,引用発明を具体化するに際しては,接着剤が架橋不足となる不具合を回避するよう架橋密度を高めるのが好ましいといえる。

イ 請求人は,審判請求書(<架橋密度について>のiii)(12頁))において,本件補正後発明は,ゲル分率が50重量%以上を満足する場合に耐久性が高い(ヒートショック試験に耐える)という効果を奏すると主張する(段落【0160】の【表1】)。
しかしながら,本件補正後発明の実施例1?21の試験結果と比較例1?3の試験結果を対比すると,良好な耐久性という効果は,ゲル分率が50重量%以上であることによる効果というよりも,接着剤層のTgが高いこと(適切な材料選択及び硬化処理が行われていること)による効果と考えるのが妥当である(本件補正後発明の効果に関する段落【0024】の記載のとおりである。)。
ここで,上記(5)アで述べたとおり,引用発明において,「接着剤層のTgが,60℃以上であり」の要件を,少なくとも満たす程度にTgを高くすることは,引用例が示唆する範囲内の事項であり,引用発明をTV等の液晶表示装置において実施しようとする当業者において必然的に行うべき事項にすぎない。
そうしてみると,耐久性が高い(ヒートショック試験に耐える)という効果は,引用発明の偏光板も奏する効果であり,少なくとも,当業者が期待する効果にすぎない。

加えて,引用発明をTV等の液晶表示装置において実施しようとする当業者において,ヒートショック試験を施すべきこと,及び偏光板をヒートショック試験に耐えうるべきものとすることは技術常識である。
(ア)例えば,特表2002-526808号公報の段落【0024】には,「LCDおよび他の電子表示装置は,広範囲な温度で操作可能であることが好ましい。この種の表示装置は通常携帯型であるため,季節的な天候の変化により高低の激しい温度にさらされる。耐温度性を確実にするため,これらの表示装置には通常,熱衝撃試験を行い,しばしば-35℃?85℃の高速温度サイクルにかける。」と記載されている。
(イ)次に,特開平6-308327号公報の段落【0012】には,「この無機コート膜付き偏光板をMIM(メタル-インシュレーター-メタル)駆動の液晶パネル前面に貼り付け,信頼性試験をおこなった。50℃,90%RHで1000時間の高温高湿試験において,剥がれ,クラック等は発生せず,ヤケも発生しなかった。また-20℃,25℃,60℃の熱衝撃試験においても,異常は認められなかった。」と記載されている。
(ウ)また,特開2006-30982号公報の段落【0042】には,「偏光板/第一の粘着剤/位相差フィルム/第二の粘着剤/ガラス板という積層構成の30インチの大きさの積層体を作成した。該積層体を,熱衝撃試験機(楠本化成(株)製,WINTEC THERMAL SHOCK CHAMBER)内で,-40℃での30分間のエージングと,それに続く85℃での30分間のエージングからなる熱衝撃エージングを200サイクル実施した後に,位相差フィルムの状態を観察した。」と記載されている。
(エ)加えて,特開2006-106016号公報の【0055】には,「ヒートショック試験を行ったところ,偏光板端部にクラックが発生したものの,その長さは1.3mm であり,ほとんど目立たなかった。」と記載されている。
(オ)さらに,特開2001-13321号公報の段落【0029】には,「2枚の光透過性フィルムを,偏光層の表面および裏面に密着した後,接着剤を硬化することは,熱的安定性の高い(熱収縮や熱変形が生じ難い)光学積層体を提供することが容易になる。特に前述の様な多層フィルム(偏光フィルム等)は,線膨張係数等の物理特性も異方性を有するので,ヒートショック等の外的熱作用により波打ち等の変形が起きやすい。したがって,多層フィルムからなる偏光フィルムを含む光学積層体において,光透過性フィルムと偏光層との密着手段として硬化型接着剤を用いた形態は,特に好適な実施形態の1つである。」と記載されている。

引用発明の偏光板がヒートショック試験にも耐えるという効果を奏することは,引用発明の用途からみて自明であり,少なくとも,当業者が期待する効果にすぎない。

(9) 小括
本件補正後発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

3 補正却下のまとめ
本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本件出願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(本願発明)は,前記「第2」1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,概略,本願発明は,本件出願の優先日前に日本国又は外国において頒布された引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて,本件出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

3 引用例に記載の事項及び引用発明について
引用例に記載の事項及び引用発明については,前記「第2」2(1)及び(2)に記載したとおりである。

4 対比及び判断
本願発明は,本件補正後発明の接着剤層の厚みを「0.01?4.2μm」から,「0.01?7μm」に拡張したものであるから,本願発明は,本件補正後発明を発明の要旨に含むものである。
そうしてみると,本件補正後発明が,前記「第2」2(3)?(9)で述べたとおり,引用発明及び周知技術に基づいて,本件出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,本件補正後発明を発明の要旨に含む本願発明も,引用発明及び周知技術に基づいて,本件出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。

第4 まとめ
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,本件出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって,他の請求項に係る発明について審理するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-04-13 
結審通知日 2016-04-14 
審決日 2016-04-26 
出願番号 特願2013-103267(P2013-103267)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾本田 博幸大隈 俊哉  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 樋口 信宏
鉄 豊郎
発明の名称 偏光板、光学フィルムおよび画像表示装置  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  

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