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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1315468
審判番号 不服2015-5921  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-31 
確定日 2016-06-28 
事件の表示 特願2011- 10484「カラーシフトフィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 4月28日出願公開、特開2011- 85959、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、1999年1月13日(優先権主張1998年1月13日、米国)を国際出願日とする特願2000-539996号を平成23年1月21日に新たな特許出願としたものであって、平成25年4月24日付けで拒絶理由が通知され、同年9月4日付けで手続補正がなされ、平成26年5月28日付けで拒絶理由が通知され、同年11月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成27年3月31日付けで拒絶査定不服審判が請求され、当審において、平成28年1月28日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年4月12日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成28年4月12日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載の事項によりそれぞれ特定されるものと認められるところ、請求項1ないし3に係る発明(以下、本願の請求項1ないし3に係る発明をそれぞれ「本願発明1」ないし「本願発明3」といい、本願発明1ないし3を総称して「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
設計入射角で可視光を選択的に反射および透過するように配列された交互に並べた複数のポリマー層を含む多層光学フィルムであって、該選択的反射が第1および第2可視反射バンドを含み、第1および第2可視反射バンドが、それぞれ、両側が透過率50%以上の領域と隣接している透過率20%未満の領域を有する別個のバンドであり、第1および第2可視反射バンド間の透過領域が0.5%/nm以上のバンドエッジの傾斜を有する多層光学フィルム。
【請求項2】
前記設計入射角で更に赤外反射バンドにおける赤外光を選択的に反射および透過するように配列される請求項1記載の多層光学フィルム。
【請求項3】
前記第1可視反射バンドが一次反射を含み、前記第2可視反射バンドが前記赤外反射バンドの高調波である請求項2記載の多層光学フィルム。」

第3 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
(1)理由1
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

ア 請求項1には、「設計入射角で可視光を選択的に反射および透過するように配列された複数のポリマー交互層を含む多層光学フィルム」(なお、下線は当審で付している。以下同じ。)との記載があるが、当該記載では、「多層光学フィルム」が、異なるポリマー層を交互に積層した「ポリマー交互層」を「複数」含むことを意味するのか、それとも、「複数」の異なるポリマー層を交互に積層した(1つの)「ポリマー交互層」を含むことを意味するのかが不明である。
よって、請求項1に係る発明、及び、請求項1を直接的あるいは間接的に引用する請求項2、3に係る発明は明確でない。
イ 請求項1には、「第1および第2可視反射バンドが、それぞれ、透過率50%以上の領域と両側が隣接している透過率20%未満の領域を有する別個のバンドである」との記載があるが、当該記載では、「第1および第2可視反射バンド」が、それぞれ、「透過率50%以上の領域」と「透過率20%未満の領域」の2つの領域を有することを意味するのか、それとも、それぞれのバンドが、共に、可視光の領域において透過率50%以上の領域を、その両側に隣接して有している「透過率20%未満の領域」であることを意味するのかが不明である。(上記記載が、「第1および第2可視反射バンドが、それぞれ、可視光の領域において透過率50%以上の領域を、その両側に隣接して有している「透過率20%未満の領域」である」ことを意味するのであれば、その旨を明確にされたい。)
よって、請求項1に係る発明、及び、請求項1を直接的あるいは間接的に引用する請求項2、3に係る発明は明確でない。
ウ 請求項2には、「更に前記設計入射角で赤外反射バンドにおける赤外光を選択的に反射および透過するように配列される」との記載があるが、「赤外反射バンド」とは、赤外光の領域全体を意味するのか、あるいは、赤外光の領域全体の中で選択された特定の領域を意味するのか不明である。明細書の記載からは、特定の領域(帯域)の赤外光を反射する波長帯域を意味するものと認められる。
よって、請求項2に係る発明、及び、請求項2を引用する請求項3に係る発明は明確でない。
エ 請求項2には、「更に前記設計入射角で赤外反射バンドにおける赤外光を選択的に反射および透過するように配列される」との記載があるが、当該記載では、更に前記設計入射角で赤外反射バンドにおける赤外光を選択的に反射および透過するように、「何が」配列されるのか明確でない。
よって、請求項2に係る発明、及び、請求項2を引用する請求項3に係る発明は明確でない。

(2)理由2
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用例1.特開平7-325214号公報
引用例2.特開平2-242202号公報

2 当審拒絶理由の判断
(1)理由1について
ア 平成28年4月12日付け手続補正(以下単に「補正」という。)によって、補正前の請求項1の「複数のポリマー交互層」は「交互に並べた複数のポリマー層」と、補正前の請求項1の「透過率50%以上の領域と両側が隣接している透過率20%未満の領域」は「両側が透過率50%以上の領域と隣接している透過率20%未満の領域」と、それぞれ補正されることにより、当審拒絶理由の上記1(1)ア及びイは解消した。
また、補正により、補正前の請求項1に「第1および第2可視反射バンド間の透過領域が0.5%/nm以上のバンドエッジの傾斜を有する」という特定事項が新たに追加されたものであるが、当該特定事項は明りょうである。
よって、請求項1に係る発明は明確である。
イ 補正によって、補正前の請求項2の「更に前記設計入射角で赤外反射バンドにおける赤外光を」は「前記設計入射角で更に赤外反射バンドにおける赤外光を」と補正され、請求項2が引用する請求項1に係る発明は、設計入射角で可視光を選択的に反射および透過するように配列された多層光学フィルムであり、請求項2に係る発明は、同様の設計入射角で上記可視光に加えて、更に赤外光を選択的に反射および透過するように配列される多層光学フィルムであるから、配列されるのは多層光学フィルムであることは明らかである。
また、反射バンドは、請求項1にも記載されているように、両側が高透過率の領域と隣接している低透過率(高反射率)の領域として定義されるものであり、高反射率の領域の両側に低反射率の領域を有することによって、この高反射率の領域である反射バンドのエッジを鮮明化するものである。請求項1に係る発明は、設計入射角で可視光を選択的に反射および透過するように配列された多層光学フィルムであり、請求項2に係る発明は、同様の設計入射角で上記可視光に加えて、更に赤外光を選択的に反射および透過するように配列される多層光学フィルムである。
したがって、「赤外反射バンド」は、赤外光の領域全体の中で選択された特定の領域、即ち、そのスペクトルから、上記のように、両側が高透過率の領域と隣接している低透過率(高反射率)の領域を意味すると解される。
本願の願書に添付した明細書(以下「本願明細書」という。)には、多層光学フィルムのポリマー層の厚さおよび屈折率は、(特定の入射角度で)光の特定波長の少なくとも一方の偏光を反射し、それ以外の波長については透過的であるように制御されており、種々のフィルム軸に沿って上記層の厚さおよび屈折率を注意深く操作することにより、本願発明のフィルムを、1つ以上のスペクトル領域にわたって鏡または偏光子として作用させることができ、例えば、本願発明のフィルムは、スペクトルの赤外線領域の光の両偏光を反射し且つスペクトルの他の部分を透過するように調節できる(本願明細書の段落【0027】)ことが記載されているから、「赤外反射バンド」は明らかである。
よって、当審拒絶理由の上記1(1)ウ及びエは解消し、請求項2に係る発明は明確となった。

(2)理由2について
ア 引用例1の記載事項
当審拒絶理由に引用例1として引用され、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布された刊行物である特開平7-325214号公報には、次の事項が図とともに記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】イエロー光を反射する第1の誘電体多層膜と、シアン光を反射する第2の誘電体多層膜とが透明基板の両面または片面に積層され、
前記第1の誘電体多層膜と前記第2の誘電体多層膜はそれぞれ高屈折率層と低屈折率層とが交互に積層され、かつ前記透明基板側から数えて最終層が低屈折率層となる構成であり、
前記第1の誘電体多層膜の光学的膜厚は、低屈折率層が略0.375λ_(Y)、高屈折率層の最終層を除く層が略1.125λ_(Y)および低屈折層の最終層が略0.188λ_(Y)(ただし、λ_(Y)はイエロー光の中心波長)であり、
前記第2の誘電体多層膜の光学的膜厚は、低屈折率層が略0.625λ_(C)、高屈折率層の最終層を除く層が略1.875λ_(C)および低屈折層の最終層が略0.313λ_(C)(ただし、λ_(C)はシアン光の中心波長)であることを特徴とする色フィルタ。
【請求項2】第1の誘電体多層膜および第2の誘電体多層膜において、
低屈折率層はMgF_(2)、SiO_(2)、Al_(2)O_(3)のいずれかであり、
高屈折率層はTiO_(2)、ZnS、CeO_(2)、ZrTiO_(4)、HfO_(2)、Ta_(2)O_(5)、ZrO_(2)のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の色フィルタ。
・・・略・・・」
(イ)「【0067】
【実施例】以下、本発明の投写型表示装置の実施例について説明する。本発明の第1の実施例における投写型表示装置の構成を(図1)に示す。331は光発生手段としての光源、16は本発明の色フィルタ、338はライトバルブ、339は投写レンズである。
【0068】光源331はランプ331a、凹面鏡331b、UVIRフィルタ331cにより構成される。ランプ331aはメタルハライドランプであり、発光管内にディスプロシウム(Dy)とネオジウム(Nd)が封入されているものである。その発光スペクトルを(図7)に示す。(図7)で明らかなように前記メタルハライドランプが放射する光の分光分布はDy、Ndによる多数の連続発光スペクトルと水銀による輝線スペクトルが混在したものである。凹面鏡331bはガラス製で、反射面に可視光を反射し、赤外光を透過させる多層膜を蒸着したものである。ランプ331aからの放射光に含まれる可視光は、凹面鏡331bの反射面により反射し、その反射光は平行に近い光になる。凹面鏡331bから出射する反射光は、UVIRフィルタ331cにより赤外光および紫外光が除去されて出射する。
【0069】以下、本発明の投写型表示装置に用いる本発明の色フィルタ16について説明をする。(図2)に第1の実施例の本発明の色フィルタの拡大モデルを示す。11は屈折率1.52のガラス基板、12は第1の誘電体多層膜、13は第2の誘電体多層膜である。
【0070】ガラス基板11の両面にそれぞれ第1の誘電体多層膜12と第2の誘電体多層膜13を形成している。第1誘電体多層膜12は低屈折率層であるSiO_(2)(屈折率1.46)14a?14fと、高屈折率層であるTiO_(2)(屈折率2.30)15a?15fとの交互12層構成であり、SiO_(2)14aの光学的膜厚が0.188λ_(Y)(λ_(Y)=577nm)、SiO_(2)14b?14fの光学的膜厚が0.375λ_(Y)、TiO_(2)15a?15fの光学的膜厚が1.125λ_(Y)である。また、第2の誘電体多層膜13は低屈折率層であるSiO_(2)14g?14lと、高屈折率層であるTiO_(2)15g?15lとの交互12層構成であり、SiO_(2)14lの光学的膜厚が0.313λ_(C)(λ_(C)=490nm)、SiO_(2)14g?14kの光学的膜厚が0.625λ_(C)、TiO_(2)15g?15lの光学的膜厚が1.875λ_(C)である。
【0071】(図4)に色フィルタ16の分光透過率を示す。第1の誘電体多層膜12がイエロー光(半値幅約550?600nm)、第2の誘電体多層膜13がシアン光(半値幅約475?505nm)をそれぞれピーク波長で90%以上反射し、レッド、グリーン、ブルーの3原色光のみが高い透過率を示している。
【0072】なお、高屈折率層の屈折率と低屈折率層の屈折率層の屈折率差を小さくすれば、さらに反射波長領域の半値幅を狭くすることができる。」
(ウ)「【図2】


(エ)「【図4】


(オ)色フィルタ16の分光透過率を示す図4(上記(エ))の記載より、分光透過率のグラフにおいて、レッド、グリーン、ブルーの3原色光の透過率が80%以上、例えば、500nm付近で約17%の透過率、508nm付近で約80%の透過率であることが看取でき、看取した数値より傾きを算出すると、約7.8%/nm(=(80-17)/(508-500))となり、90%以上反射するシアン光(半値幅約475?505nm)と、50%以上透過するグリーン光(半値幅505?550nm)との間の傾斜が少なくとも7%/nmであるといえる。
(カ)上記(ア)ないし(オ)から、引用例1には次の発明が記載されているものと認められる。なお、「第1の誘電体多層膜12」と「第1誘電体多層膜12」とは同一の膜12を表すことが明らかであるから「第1の誘電体多層膜12」の用語で統一した。
「ガラス基板11の両面にそれぞれ第1の誘電体多層膜12と第2の誘電体多層膜13を形成し、第1の誘電体多層膜12は低屈折率層であるSiO_(2)(屈折率1.46)14a?14fと、高屈折率層であるTiO_(2)(屈折率2.30)15a?15fとの交互12層構成であり、SiO_(2)14aの光学的膜厚が0.188λ_(Y)(λ_(Y)=577nm)、SiO_(2)14b?14fの光学的膜厚が0.375λ_(Y)、TiO_(2)15a?15fの光学的膜厚が1.125λ_(Y)であり、第2の誘電体多層膜13は低屈折率層であるSiO_(2)14g?14lと、高屈折率層であるTiO_(2)15g?15lとの交互12層構成であり、SiO_(2)14lの光学的膜厚が0.313λ_(C)(λ_(C)=490nm)、SiO_(2)14g?14kの光学的膜厚が0.625λ_(C)、TiO_(2)15g?15lの光学的膜厚が1.875λ_(C)である色フィルタ16であって、
第1の誘電体多層膜12がイエロー光(半値幅約550?600nm)、第2の誘電体多層膜13がシアン光(半値幅約475?505nm)をそれぞれピーク波長で90%以上反射し、レッド、グリーン、ブルーの3原色光のみが80%以上の高い透過率を示し、500nm付近で約17%の透過率、508nm付近で約80%の透過率であり、90%以上反射するシアン光(半値幅約475?505nm)と、50%以上透過するグリーン光(半値幅505?550nm)との間の傾斜が少なくとも7%/nmである、
色フィルタ。」(以下「引用発明」という。)

イ 引用例2の記載事項
当審拒絶理由に引用例2として引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平2-242202号公報には、次の事項が記載されている。
(ア)「[従来の技術とその課題]
多層干渉フィルターは既に公知である。例えばSiO_(2)とTiO_(2)とを交互に真空蒸着したものは、凸版印刷(株)から、また高分子フィルム上にITO(透明導電膜、インジウム・錫酸化物)がスパッタリングされ、ある程度赤外線遮断機能を有するパッシブソーラーフィルムは商品名「東レ・ルミクール」として東レ(株)から市販されている。
従来の多層干渉フィルターは真空蒸着法により製造されるために高価につくことが欠点である。
また従来のパッシブソーラーフィルムの性能は未だ満足できる水準のものではない。
本発明の目的は、真空蒸着法により製造する高価な多層干渉フィルターを低コスト化し、しかも従来の染色性カラーフィルターの性能よりも格段に優れた光学特性を有する多層干渉フィルターおよびその製造方法を提供することにある。
[課題を解決するための手段]
本発明の上記目的は、本発明において提案する、
所望の屈折率を有する高屈折率熱可塑性樹脂と低屈折率熱可塑性樹脂の少なくとも二種類を使用して、これらを予め設定した層厚にするために先ず該設定層厚の数100?数1000倍厚の樹脂シートを作製し、これらのシートを所望の順序で積層し、次いで設定層厚が得られる迄該積層樹脂シートを熱厚延することから成る、多層干渉フィルターおよびその製造方法
の提供によって達成される。
本発明が提案する、高分子フィルム積層体の熱厚延法による多層干渉フィルターによれば、従来の多層干渉フィルターの高価格とパッシブソーラーフィルムの低性能の両欠点が同時に解決できる。
[作用]
すなわち、本発明によれば高性能な分光特性を有する多層干渉フィルターが真空蒸着法などで使用する高価な真空装置を使用せずに製造できる。また本発明による高分子フィルムの積層と厚延による方法によれば、ほぼフィルムのラミネートと同等の低コストで多層干渉フィルターが製造できる。その理由は本発明の方法によれば生産速度が桁違いに向上するからである。本発明の方法で使用できる熱可塑性樹脂の種類は特に限定されないが、熱可塑性透明樹脂としては、特に低圧ポリエチレンとポリスチレンが挙げられる。また、メタクリル酸樹脂も有用である。
本発明における屈折率は、選択した樹脂の種類によって決まるが、例えばポリエチレンの屈折率(n)は1.51、ポリスチレンのそれは1.59?1.60、メタクリル樹脂のそれは1.488?1.490等である。
本発明の方法では、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層して多層干渉フィルターを製造するものであるが、各層厚を所望の厚さにする方法として、予め設定した層厚の数100?数1000倍の厚さの樹脂シートを例えば±3%の精度で作製し、これらのシートを所望の順序で積層し、次いでこれを熱厚延することにより所望の厚さまで薄くする方法が採用され、これにより各層の厚さを設計通りの厚さとすることができる。 本発明の方法で製造した多層干渉フィルターは広義には太陽エネルギーの受動的な制御技術に属するもので、その機能は自由に設計可能であるが、需要の多い機能としては例えば、熱線反射(赤外線しゃ断)、紫外線反射(紫外線しゃ断)が挙げられる。その他、色フィルターフィルム等も考えられる。
用途としては、例えばビル、事務所、学校などの窓材、個人住宅の窓材、農業用フィルムなどが挙げられる。
窓ガラスに蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング法等で熱線反射膜を形成させることは既に実施されており、また高分子フィルム上にITO等をスパッタリングしたフィルムも公知であるが、本発明の製造方法による製品もこれらの用途分野と合致するものである。」(1頁右下欄5行ないし2頁右下欄5行)
(イ)上記(ア)から、引用例2には次の事項が記載されているものと認められる。
「従来のSiO_(2)とTiO_(2)とを交互に真空蒸着した多層干渉フィルターは真空蒸着法により製造されるために高価につくことが欠点であったところ、低コスト化し、格段に優れた光学特性を有するようにした多層干渉フィルターであって、
所望の屈折率を有する高屈折率熱可塑性樹脂と低屈折率熱可塑性樹脂の少なくとも二種類を使用して、これらを予め設定した層厚にするために先ず該設定層厚の数100?数1000倍厚の樹脂シートを作製し、これらのシートを所望の順序で積層し、次いで設定層厚が得られる迄該積層樹脂シートを熱厚延することから成る、多層干渉フィルター。
また、前記多層干渉フィルターの用途として、例えばビル、事務所、学校などの窓材、個人住宅の窓材、農業用フィルム等が挙げられる。」(以下「引用例2の記載事項」という。)

ウ 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「イエロー光」、「シアン光」及び「レッド、グリーン、ブルーの3原色光」は、いずれも本願発明1の「可視光」に相当する。
(イ)引用発明の「低屈折率層であるSiO_(2)」と「高屈折率層であるTiO_(2)」との交互12層構成である「第1の誘電体多層膜12」及び「第2の誘電体多層膜13」は、本願発明1の「交互に並べた複数のポリマー層」とは、「交互に並べた複数の層」である点で一致する。
(ウ)引用発明は、第1の誘電体多層膜12が可視バンドである「イエロー光」(本願発明1の「可視光」に相当。以下「」に続く()内の用語は本願発明1の用語。)、第2の誘電体多層膜13が可視バンドである「シアン光」(可視光)をそれぞれピーク波長で90%以上反射し、「イエロー光」及び「シアン光」のバンドの両側に位置する可視バンドである「レッド、グリーン、ブルーの3原色光」(可視光)のみが80%以上の高い透過率を示し、500nm付近で約17%の透過率、508nm付近で約80%の透過率となっており、「第1の誘電体多層膜12」及び「第2の誘電体多層膜13」はいずれも多層の光学フィルムであることは明らかであるから、上記(イ)を踏まえると、引用発明と、本願発明1とは、「可視光を選択的に反射および透過するように配列された交互に並べた複数の層を含む多層光学フィルム」で一致する。また、引用発明は、本願発明の「該選択的反射が第1および第2可視反射バンドを含み、第1および第2可視反射バンドが、それぞれ、両側が透過率50%以上の領域と隣接している透過率20%未満の領域を有する別個のバンドであ」るという構成を備える。
(エ)引用発明は、反射バンドである「シアン光」(可視光)と、50%以上透過する「グリーン光」(可視光)との間の傾斜が少なくとも7%/nmであるから、本願発明1の「第1および第2可視反射バンド間の透過領域が0.5%/nm以上のバンドエッジの傾斜を有する」という構成を備えるものである。
(オ)上記(ア)ないし(エ)からみて、本願発明1と引用発明とは、
「可視光を選択的に反射および透過するように配列された交互に並べた複数の層を含む多層光学フィルムであって、該選択的反射が第1および第2可視反射バンドを含み、第1および第2可視反射バンドが、それぞれ、両側が透過率50%以上の領域と隣接している透過率20%未満の領域を有する別個のバンドであり、第1および第2可視反射バンド間の透過領域が0.5%/nm以上のバンドエッジの傾斜を有する多層光学フィルム。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
本願発明1では、可視光を選択的に反射および透過するのが、設計入射角であるのに対し、
引用発明では、可視光を選択的に反射および透過するのが、設計入射角であるかどうか不明である点。

相違点2:
本願発明1では、層がポリマー層であるのに対し、
引用発明では、層が低屈折率層であるSiO_(2)と、高屈折率層であるTiO_(2)である点。

エ 判断
上記相違点2について検討する。
(ア)引用発明の第1の誘電体多層膜12と第2の誘電体多層膜13はともに、SiO_(2)とTiO_(2)との交互12層構成である色フィルタ16であり、要するに、複数の無機層を含む色フィルタであり、該色フィルタが、イエロー光、シアン光をそれぞれピーク波長で90%以上反射し、レッド、グリーン、ブルーの3原色光のみが高い透過率を示し、90%以上反射するシアン光と、50%以上透過するグリーン光との間の傾斜が少なくとも7%/nmであるという特性を有するものである。
(イ)引用例1の請求項1(上記ア(ア))には、引用発明の上位概念としての発明が記載されており、ここでは、誘電体多層膜が複数の無機層からなることを発明特定事項としていないが、引用例1の全体の記載をみても、誘電体多層膜が複数の無機層以外の例えば複数のポリマー層からなることの記載も示唆もなく、引用例1の請求項2(上記ア(ア))に例示されている「MgF_(2)、SiO_(2)、Al_(2)O_(3)のいずれか」、「TiO_(2)、ZnS、CeO_(2)、ZrTiO_(4)、HfO_(2)、Ta_(2)O_(5)、ZrO_(2)のいずれか」以外の材料により前記誘電体多層膜を形成することに当業者が容易に想到するとはいえない。
(ウ)次に、引用例2の記載事項(上記イ(イ))は、所望の屈折率を有する高屈折率熱可塑性樹脂と低屈折率熱可塑性樹脂の少なくとも二種類を使用して樹脂シートを作製し、これらのシートを所望の順序で積層し、次いで設定層厚が得られる迄該積層樹脂シートを熱厚延することから成る多層干渉フィルターであるが、上記(イ)のとおり、引用発明において、無機層をポリマー層に置き換える動機はなく、引用例2の記載事項の構成を適用する動機もない。
(エ)引用発明と引用例2の記載事項とは、対象とする光の波長及び用途において大きく相違するから、仮に、引用発明において、引用例2の記載事項の構成を適用できたとしても、本願発明1の構成である、第1および第2可視反射バンドが、それぞれ、透過率50%以上の領域と両側が隣接している透過率20%未満の領域を有する別個のバンドであり、第1および第2可視反射バンド間の透過領域が0.5%/nm以上のバンドエッジの傾斜を有することが実現できるとする根拠もない。
(オ)以上のとおり、引用例2の記載事項を考慮しても、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明1の構成となすことは、当業者が容易になし得たものということはできない。
(カ)したがって、引用例1には、上記相違点2に係る事項が開示されてなく、しかも、当該事項が引用例2の記載事項から想到容易であるともいえないから、上記相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者が容易に発明することができたものではない。

オ 本願発明2及び3について
本願発明1が、引用発明、引用例2の記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえないのであるから、本願発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加した本願発明2及び3も同様に、引用発明、引用例2の記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。

第4 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

請求項1ないし3について
引用文献1.特表平8-503312号公報
引用文献2.国際公開第97/01778号(参考:特表平11-508380号公報)
引用文献3.特表平9-506837号公報
引用文献4.特開平5-164918号公報
引用文献5.特開平7-296620号公報

2 原査定の理由の判断
引用文献1ないし5には、本願発明の構成である、第1および第2可視反射バンドが、それぞれ、透過率50%以上の領域と両側が隣接している透過率20%未満の領域を有する別個のバンドであり、第1および第2可視反射バンド間の透過領域が0.5%/nm以上のバンドエッジの傾斜を有することは記載されておらず、示唆もない。
してみると、本願発明は、当業者が引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて容易に発明することができたものではない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-06-13 
出願番号 特願2011-10484(P2011-10484)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G02B)
P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 池田 博一  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 樋口 信宏
鉄 豊郎
発明の名称 カラーシフトフィルム  
代理人 山田 卓二  
代理人 北原 康廣  
代理人 田中 光雄  

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