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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B05B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B05B
管理番号 1315469
審判番号 不服2015-17906  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-01 
確定日 2016-06-29 
事件の表示 特願2010-269713「エアゾール噴射装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月21日出願公開、特開2012-115792、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願(以下、「本願」という。)は、平成22年12月2日の出願であって、平成22年12月6日に物件提出書が提出され、平成26年10月31日付けで拒絶理由が通知され、平成26年12月24日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年6月26日付けで拒絶査定がされ、平成27年10月1日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、平成27年11月6日に審判請求書の請求の理由を補正する手続補正書(方式)が提出され、平成28年3月22日付けで当審における拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成28年5月23日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成28年5月23日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲並びに出願当初の明細書及び図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、本願の請求項1ないし6に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は次のとおりである。

「 【請求項1】
内部に封入された清涼剤及び噴射剤を含む液体を、噴射流路を介して靴の内部側に対して噴射するエアゾール噴射装置において、
前記噴射流路の噴射口に、バックグラウンドが35dBのときの噴射音を90dB以上とし、かつ、液体を霧状に噴射する微粒子発生部を備え、前記噴射音は、靴の履き口に騒音計のマイクをセットし、噴出口とマイクとの距離が約10cmとなるようにして測定したものであり、かつ、噴射口から発生する音が靴の内部側に形成された閉鎖空間を反射して共鳴するものであることを特徴とするエアゾール噴射装置。
【請求項2】
前記微粒子発生部は、前記噴射流路の内径を1.0mm?2.0mmとして構成したことを特徴とする請求項1のエアゾール噴射装置。
【請求項3】
前記微粒子発生部は、前記噴射流路の内径を1.2mm?1.8mmとして構成したことを特徴とする請求項1のエアゾール噴射装置。
【請求項4】
前記噴射流路をストレートタイプとしたことを特徴とする請求項1?請求項3のいずれか1項のエアゾール噴射装置。
【請求項5】
靴の内部側に対して前記液体を噴射するものであることを特徴とする請求項1?請求項4のいずれか1項のエアゾール噴射装置。
【請求項6】
前記噴射剤は、液化石油ガス又はジメチルエーテルであることを特徴とする請求項1?請求項5のいずれか1項のエアゾール噴射装置。」

第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
(1)平成26年10月31日付け拒絶理由の概要
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1:特開2001-293402号公報
引用文献2:特開2000-25860号公報
引用文献3:特開2009-353号公報
引用文献4:特開2003-106724号公報

・請求項 1、2、6
・引用文献等 1
・備考
引用文献1に記載された発明のエアゾール製品は、噴射ボタンから10cmのところで測定した噴射音を、バックグランドが40dbのときに100db以上となるように数値限定したものであるから、本願請求項1、2、6における、バックグラウンドが35dBのときの噴射音を90dB以上とする数値限定を満足することが認められる。
そして、引用文献1に記載された発明のエアゾール製品に備えた「噴射流路14」及び「ノズルチップ15の流路」は、本願請求項1、2、6に係る発明のエアゾール噴射装置に備えた「噴射流路」に相当する(特に【0017】?【0035】、【0037】、【図1】を参照)。
従って、引用文献1に記載された発明に基づいて本願請求項1、2、6に係る発明とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

・請求項 3、4
・引用文献等 1?3
・備考
噴射流路の内径を1.2mm?1.8mmに数値限定する点(請求項3)、及び噴射流路をストレートタイプにする点(請求項4)は、引用文献2の【0017】及び【図1】、引用文献3の【0033】及び【図1】に記載するように、周知である。

・請求項 5
・引用文献等 1?4
・備考
引用文献4には、エアゾール容器を靴ムレ改善用途とする点が記載されている(特に【0005】を参照)。」

(2)平成27年6月26日付け拒絶査定の内容
「この出願については、平成26年10月31日付け拒絶理由通知書に記載した理由2によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。
●理由2(特許法第29条第2項)について
・請求項 1-6
・引用文献等 1-6
出願人は、意見書において、この出願の請求項1に係る発明では引用文献1に記載された発明と相違して、エアゾール噴射装置に封入する液体を「清涼剤」を含むものとした点を主張している。
しかしながら、引用文献1には、例えば、引用文献4の[0016]及び引用文献5の[表1]に記載する「清涼剤」を含み得る、消臭剤や芳香剤を収容する点が記載されている。
そして、当該消臭剤や芳香剤を収容した際には、周囲の人に気づかれたくない場合があるので、エアゾール噴射装置の噴射音を50dB以下とする点も記載されている([0007]、[0013]を参照)。
そうすると、当該消臭剤や芳香剤を収容した際であっても、周囲に人がいない場合に使用したり、周囲の人に気づかれても良い場合に使用するのであれば、従来通りの、エアゾール噴射装置の噴射音を50dB以上としたものと認められるから、バックグラウンドが35dBのときの噴射音の下限値を「90dB」とすることは、当業者にとって容易である。
さらに、例えば、引用文献6の[0003]には、液の噴射を確認すべく、エアゾール噴射装置の噴射音を大きくする点が記載されている([0003]を参照)。
このように、エアゾール噴射装置の噴射音を噴射状態の確認のためなどに利用することも、当業者にとって容易である。
そうすると、引用文献1に記載のエアゾール製品に収容する液体として「清涼剤」を含むものとすることは、当業者にとって容易である。
そして、奏する効果についても当業者にとって自明であって格別なものとまでは認められない。
従って、請求項1-6に係る発明は、引用文献1-6に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到しえたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>

1.特開2001-293402号公報
2.特開2000-025860号公報
3.特開2009-000953号公報
4.特開2003-106724号公報
5.特開2007-031479号公報(新たに追加した文献)
6.特開平11-128776号公報(新たに追加した文献)」


2.原査定の理由についての判断
2.-1 引用文献
(1)引用文献1
(1-1)引用文献1の記載事項
引用文献1には、以下の記載がある。なお、下線は理解の一助のため当審において付加したものである。
(ア)「【要約】
【課題】 エアゾール製品から離れた位置からでも噴霧が開始されたか、あるいは終了したかを確認し得るエアゾール製品を提供する。
【解決手段】 噴射の開始時に、バックグランドが40dBのときに100dB以上の噴射音を発生するエアゾール製品10。エアゾール製品10のボタン11の噴孔19とは反対側には共鳴室17が設けられ、噴射通路14と共鳴室17とは共鳴通路16で連通している。共鳴通路16には、気液分離部材22が充填されている。」(【要約】)

(イ)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも噴射の開始時に、バックグランドが40dBのときに100dB以上の噴射音を発生するエアゾール製品。
【請求項2】 噴射音を増大する共鳴手段を備え、噴孔で発生する噴射の原音を前記範囲まで増大させる請求項1記載のエアゾール製品。
【請求項3】 前記共鳴手段が噴孔の反対側に設けられている請求項2記載のエアゾール製品。
【請求項4】 前記共鳴手段と内容物の通路との間に、気体を通過させ、液体を通過させない気液分離手段が介在されている請求項2記載のエアゾール製品。
【請求項5】 少なくとも内容物の80%の噴射が完了するまで、前記範囲の噴射音を発生し続ける請求項1記載のエアゾール製品。
【請求項6】 前記噴射音のうち、500Hz以下の低周波数域での音量が80dB以上である請求項1、2、3、4または5記載のエアゾール製品。
【請求項7】 噴射時に発生する総噴射音が、バックグランドが40dBのときに、50dB以下であるエアゾール製品。
【請求項8】 前記噴射音のうち、1000Hz以上の高周波数域での音量が40dB以下である請求項5記載のエアゾール製品。
【請求項9】 噴射音の反射部材を備えており、噴射音の波と反射部材で反射された波とが、互いに反対の波形を有する請求項7記載のエアゾール製品。
【請求項10】 内容物が噴射される経路が途中で分かれており、一方の経路を通る波が他方の経路を通る波とが、互いに反対の波形を有する請求項7記載のエアゾール製品。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項10】)

(ウ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はエアゾール製品、とくに特定の音ないし噴射音を発生するエアゾール製品に関する。」(段落【0001】)

(エ)「【0002】
【従来の技術】一般的にエアゾール製品を噴射させる場合、加圧した容器内のエアゾール組成物が噴孔から噴出するときに、その速度や噴出量に応じて、シューといった特有の噴射音を発生する。従来のエアゾール製品では通常は総音量が55?90dBの範囲にあり、40dBのバックグランドを差し引くと、15?50dBである。また噴射速度が大きいため、噴出量が多くなると、とくに1000Hz以上では高周波数になるほど音量が多くなる。
(中略)
【0004】上記のように、従来はオルゴールやブザーなどの発音機構を取り付けたエアゾール製品は知られているが、エアゾール製品の特有の噴射音自体についてはほとんど考慮されておらず、化粧品などのエアゾール製品で、不快に感ずるような大きい噴射音を減少させるといった程度の認識である(たとえば特開平11-236306号後方参照)。したがって周囲の騒音よりいくらか大きい程度(55dB以上)まで低下すればよく、使用者にとっても、ある程度の音量があるほうが使用の実感があるなどで、とくに気にしていない。また、逆に噴射音を周囲の騒音レベルから際だたせるように大きい音量にすることはまったく考えられていない。」(段落【0002】ないし【0004】)

(オ)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の技術背景の元で、以下の課題を見出した点に独自性がある。すなわち、遅延噴射機構を備えた殺虫剤などのエアゾール製品では、室外に待避した使用者は実際に噴射が始まっているのかどうかがわからず、不安になることがある。噴射が開始していることを確認するには、ある程度エアゾール製品の近くに立ち止まり、目視で噴霧を確認するか、噴射音を聞き分け、しかる後に急いで待避する必要がある。しかしそのようにすると薬液を吸い込む危険性があり、エアゾール製品によっては人体に対して好ましくない場合がある。本発明は、ドアの外など、エアゾール製品から離れた位置からでも噴霧が開始されたか、あるいは終了したかを確認し得るエアゾール製品を提供することを第1の課題としている。」(段落【0006】)

(カ)「【0008】
【課題を解決する手段】本発明のエアゾール製品の第1の態様(請求項1)は、少なくとも噴射の開始時に、バックグランドが40dBのときに100dB以上の噴射音を発生することを特徴としている。このようなエアゾール製品では、噴射音を増大する共鳴手段を備え、噴孔で発生する噴射の原音を前記範囲で増大させるのが好ましい(請求項2)。共鳴手段は噴孔の反対側に設けるのがさらに好ましい(請求項3)。また、前記共鳴手段と内容物の通路との間に、気体を通過させ、液体を通過させない気液分離手段が介在されているものが好ましい(請求項4)。さらに少なくとも内容物の80%の噴射が完了するまで、前記範囲の音を発生し続けるものが好ましい(請求項5)。さらに前記噴射音のうち、500Hz以下の低周波数域での音量を80dB以上とするのが好ましい(請求項6)。」(段落【0008】)

(キ)「【0010】
【作用および発明の効果】本発明のエアゾール製品の第1の態様(請求項1)は、噴射の開始時にバックグランドが40dBのときに100dB以上の音を発生するので、室外などの離れた位置からもその音を聞き分けることができる。そのため、噴射が完了したことを室外から容易に確認することができ、室内に戻ってもよいことがわかる。さらに遅延噴射機構を備えたエアゾール製品に適用する場合は、安全な場所から噴射が開始したことを確認することができる。そのため急いで待避する必要がない。さらに噴射音自体を大きくしているので、他の音発生手段を設ける必要がなく、エアゾール製品の構成が簡単になる。」(段落【0010】)

(ク)「【0019】上記のように構成されるエアゾール製品10は、図2のように室内25に、好ましくは待避用のドア26の近くに載置して使用する。まず、図1のボタン11を押し込み、ストッパ24をバルブなどに係合させる。それによりバルブが開放される噴出が始まり、内容物の全量が噴射されるまで噴射が継続する。そのとき、図1のステム12を通ってくる内容物は、共鳴通路16側が塞がれているので、実質的には噴射通路14側に噴出し、先端の噴孔19から噴出する。そして噴孔19自体は従来のものとほど同じであるので、噴霧状態に影響せず、適切な噴霧状態が得られる。
【0020】そして噴出のときに噴孔19に応じた特定の周波数パターンの噴出音を出す。噴射音のかなりの部分は前方にそのまま出ていくが、一部はボタン11自体を伝導して周囲に拡がり、さらにステム12から容器本体に伝わって、容器本体で共鳴されて外部に発散される。さらに残りのエアゾール組成物は、噴射通路14から共鳴通路16に入るが、気液分離部材22により原液と噴射剤(気化した分)とに分離される。そして気化した噴射剤のみが共鳴室17に至る。そして共鳴室17に固有の低音域の周波成分が増幅され、大きい音が発せられる。また共鳴通路16と直交する振動板23についても、その固有の低音域の周波成分で振動を生じ、音量が増大する。
【0021】共鳴室17や振動板23で増大される音の音量は、たとえば総音量で100dB以上とするのが好ましく、また、50Hz以下の低周波成分は80dB以上であるのが好ましい。それにより室外で待機している使用者にも、噴射音がよく聞こえる。
【0022】そして室外に待避している使用者は、噴射音が聞こえている間は噴射が継続していることが分かる。したがって幼児などであっても事前にそのことを知らせておけば、室内に入っていけないことが容易に判断できる。また、噴射音が聞こえなくなると、噴射が終了したことが分かるので、安心して室内25に入ることができる。このように噴射音を大きくする機構と、噴射開始を遅延する機構と、噴射を継続させる機構とが相まって、安心して全量噴射の薫蒸を行うことができる。」(段落【0019】ないし【0022】)

(ケ)「【0034】
【実施例】[実施例1] 図1に示すボタン11を備えたエアゾール容器を製造した。ボタン11の中心孔の径は0.5mm、噴射通路14の径は1.0mm、共鳴通路16の径は1.0mm、共鳴室17の凹所20の深さは2mm、内径は15mm、振動板23は鋼製で、厚さ0.3mm、カバー21はポリエチレン製で厚さ1.5mmとした。この容器に表1のエアゾール組成を50g充填して実施例1のエアゾール製品とした。充填後の内圧は0.7MPa であった。
【0035】
【表1】(審決注:周波数4000Hzにおいて、音量が92.0dB、バックグラウンドが31.6dB、周波数8000Hzにおいて、音量が102.3dB、バックグラウンドが30dB、周波数APにおいて、音量が105dB、バックグラウンドが39.6dBである実施例が記載されている。)
【0036】[比較例1] 共鳴通路16および共鳴室17を有しない以外は、実施例1と同様のボタンを用いたエアゾール製品を比較例1とした。
【0037】実施例1および比較例1のエアゾール製品を噴射させ、そのときの噴射音をリオン株式会社製の普通騒音計NA-29で周波数ごとの音量を測定した。噴射音は噴射ボタンから10cmのところにて測定した。その結果を表2および図7のグラフに示す。
(中略)
【0039】上記のように実施例1では、高音域の音量が100dBを超えており、全体の音量も105dBと100dB以上になる。これに対し、比較例1では、いずれの音域でも100dB以下であり、全体の音量も83.9dBである。したがって共鳴室を設けることにより、音量が約1.2倍になっていることが分かる。」(段落【0034】ないし【0039】)

(1-2)引用発明
上記(1-1)から、引用文献1には、
「内部に封入されたエアゾールを、噴射通路14を介して室内に対して噴射するエアゾール噴射装置において、
前記噴射通路14の噴孔19に、バックグラウンドが39.6dBのときの噴射音を105dBとし、かつ、液体を霧状に噴射するノズルチップ15を備え、前記噴射音は、噴射ボタンから10cmのところにて測定したものである、エアゾール噴射装置。」
という発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(2)引用文献2
(2-1)引用文献2の記載事項
引用文献2には、以下の記載がある。なお、下線は理解の一助のため当審において付加したものである。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 固形分が分散している内容物を噴射するエアゾール製品のノズル構造であって、エアゾール製品の内部と外部を連通する導通路と、その導通路の外部への開口端に設けられる噴孔と、導通路と噴孔との間に介在される中間通路とを備えており、中間通路の内径が導通路より小さく、かつ、噴孔より大きい、ノズル構造。
【請求項2】 前記導通路と中間通路との段差が0.1?2mmである請求項1記載のノズル構造。
【請求項3】 前記中間通路の長さが、その内径の1.2?3倍である請求項1記載のノズル構造。
【請求項4】 前記中間通路の内径が噴孔の内径の1.2?2倍である請求項1記載のノズル構造。
【請求項5】 固形分が分散している内容物を充填した容器と、その容器の開口部に取り付けたバルブと、そのバルブのステムに取り付けた押しボタンとを備えており、その押しボタンに請求項1、2、3または4記載のノズル構造を備えている、エアゾール製品。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項5】)

(イ)「【0017】前記導通路2の内径d2 は固形分の大きさによっても異なるが、従来のノズル構造と同じ程度、たとえば0.5?4mm程度でよく、その長さは通常1?10mm程度である。また噴孔15の内径d3 も通常のエアゾール製品と同じ程度、たとえば0.3?1mm程度で、長さは0.2?1mm程度である。また中間通路16の内径d1 は0.4?2mm程度、好ましくは0.5?1.5mm程度であり、その長さは内径の1.2?3倍程度、すなわち0.5?6mm程度である。」(段落【0017】)

(2-2)引用文献2記載の技術
上記(2-1)及び図1から、引用文献2には次の技術(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されているといえる。

「エアゾール製品のノズル構造において、導通路2の内径d2を0.5?4mmとする技術。」

(3)引用文献3
(3-1)引用文献3の記載事項
引用文献3には、以下の記載がある。なお、下線は理解の一助のため当審において付加したものである。

(ア)「【請求項1】
噴射容量が0.05?0.3cc/回の範囲とされ、一端側が導出口とされたステムが備えられる定量噴射バルブと、少なくとも、制汗成分と、リン酸系界面活性剤と、エタノール及び/又は水とを含む液状組成物が内部に充填される容器本体とを具備するエアゾール容器と、該エアゾール容器に対して前記ステムの一端側に接続するように取り付けられるエアゾール用押釦を具備してなる液状エアゾール型制汗剤製品であって、
前記エアゾール用押釦は、前記ステムの導出口に連通して前記液状組成物を流通させる流通路と、該流通路に連通して前記液状組成物を外部に噴出させる導出路とが押釦本体の内部に設けられてなり、
前記導出路は、前記流通路に接続される導入口から、前記液状組成物を外部へ噴出させる噴口までの流路長Lが0.5?15.0mmの範囲とされるとともに、流路径Dが0.5?1.5mmの範囲とされ、なお且つ、前記流路長Lと流路径Dの比L/Dが0.4?15.0の範囲とされていることを特徴とする液状エアゾール型制汗剤製品。
【請求項2】
噴射容量が0.05?0.3cc/回の範囲とされ、一端側が導出口とされたステムが備えられる定量噴射バルブと、少なくとも、制汗成分と、リン酸系界面活性剤と、エタノール及び/又は水とを含む液状組成物が内部に充填される容器本体とを具備するエアゾール容器と、該エアゾール容器に対して前記ステムの一端側に接続するように取り付けられるエアゾール用押釦を具備してなる液状エアゾール型制汗剤製品であって、
前記エアゾール用押釦は、前記ステムの導出口に連通して前記液状組成物を流通させる流通路が設けられるとともに、該流通路に連通して前記液状組成物を外部に噴出させる導出路が内部に設けられた押釦本体と、前記導出路の噴口に取り付けられ、該噴口に連通される噴射流路を有する噴口部材とからなり、
前記噴口部材の噴射流路の流路径D2と前記導出路の流路径D1との関係が、D1≦D2とされており、
前記導出路の流路長L1と前記噴射流路の流路長L2とを併せた総流路長L3が0.5?15.0mmの範囲とされ、なお且つ、前記総流路長L3と前記導出路の流路径D1の比L3/D1が0.4?15.0の範囲とされていることを特徴とする液状エアゾール型制汗剤製品。
【請求項3】
前記制汗成分が、クロルヒドロキシアルミニウム(ACH)、及び/又は、クロルヒドロキシアルミニウム・プロピレングリコールであることを特徴とする請求項1又は2に記載の液状エアゾール型制汗剤製品。
【請求項4】
噴射容量が0.05?0.3cc/回の範囲とされ、一端側が導出口とされたステムが備えられる定量噴射バルブと、少なくとも、制汗成分と、リン酸系界面活性剤と、エタノール及び/又は水とを含む液状組成物が内部に充填される容器本体とを具備するエアゾール容器に対し、前記ステムの一端側に接続するように取り付けられるエアゾール用押釦であって、
前記ステムの導出口に連通して前記液状組成物を流通させる流通路と、該流通路に連通して前記液状組成物を外部に噴出させる導出路とが押釦本体の内部に設けられてなり、
前記導出路は、前記流通路に接続される導入口から、前記液状組成物を外部へ噴出させる噴口までの流路長Lが0.5?15.0mmの範囲とされるとともに、流路径Dが0.5?1.5mmの範囲とされ、なお且つ、前記流路長Lと流路径Dの比L/Dが0.4?15.0の範囲とされていることを特徴とするエアゾール用押釦。
【請求項5】
噴射容量が0.05?0.3cc/回の範囲とされ、一端側が導出口とされたステムが備えられる定量噴射バルブと、少なくとも、制汗成分と、リン酸系界面活性剤と、エタノール及び/又は水とを含む液状組成物が内部に充填される容器本体とを具備するエアゾール容器に対し、前記ステムの一端側に接続するように取り付けられるエアゾール用押釦であって、
前記ステムの導出口に連通して前記液状組成物を流通させる流通路が設けられるとともに、該流通路に連通して前記液状組成物を外部に噴出させる導出路が内部に設けられた押釦本体と、前記導出路の噴口に取り付けられ、該噴口に連通される噴射流路を有する噴口部材とが備えられ、
前記噴口部材の噴射流路の流路径D2と前記導出路の流路径D1との関係が、D1≦D2とされており、
前記導出路の流路長L1と前記噴射流路の流路長L2とを併せた総流路長L3が0.5?15.0mmの範囲とされ、なお且つ、前記総流路長L3と前記導出路の流路径D1の比L3/D1が0.4?15.0の範囲とされていることを特徴とするエアゾール用押釦。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項5】)

(イ)「【0033】
導出路16の流路径Dは、0.5?1.5mmの範囲とされていることが好ましく、0.8?1.3mmの範囲がより好ましく、0.9?1.2mmの範囲とされていることが最も好ましい。
導出路16の流路径Dが0.5mm未満だと、液状組成物8が内部通路16内において乾燥した際、皮膜形成によって目詰まりを起こし易くなる。
導出路16の流路径Dが1.5mmを超えると、液状組成物8が霧化されにくいために噴射異常が生じ易く、皮膚に均一に付着させるのが困難となり、制汗及び防臭効果が低下する。」(段落【0033】)

(3-2)引用文献3記載の技術
上記(3-1)及び図1から、引用文献3には次の技術(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されているといえる。

「液状エアゾール型制汗剤製品のノズル構造において、導出路16の流路径Dは、0.5?1.5mmの範囲とされている技術。」

(4)引用文献4
(4-1)引用文献4の記載事項
引用文献4には、以下の記載がある。なお、下線は理解の一助のため当審において付加したものである。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 噴射物の気化熱により靴内の温度を低下させることを特徴とする靴ムレ改善スプレー。
【請求項2】 靴内スプレー後5分間、着用時靴内温度がスプレー前に対して1℃以上低下していることを特徴とする請求項1記載の靴ムレ改善スプレー。
【請求項3】 液化石油ガス、ジメチルエーテルの少なくとも1種からなる噴射剤、及び蒸気圧760mmHgを示す温度が9?60℃である炭化水素化合物から選ばれる1種又は2種以上の混合物10?90質量%が含有されていることを特徴とする請求項1又は2記載の靴ムレ改善スプレー。
【請求項4】 膨張室出口と噴射口との間の流路に屈曲部を有するメカニカルブレイクアップ型アクチュエーターが設けられたエアゾール容器に充填したことを特徴とする請求項1?3の何れか一つに記載の靴ムレ改善スプレー。
【請求項5】 更に、消臭剤及び/又は抗菌剤を含有することを特徴とする請求項1?4の何れか一つに記載の靴ムレ改善スプレー。
【請求項6】 噴射物の気化熱により靴内の温度を低下させることを特徴とする靴ムレ改善方法。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項6】)

(イ)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、長時間靴を履くことによる不快感である靴ムレを瞬時に解消することができる靴ムレ改善スプレーを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記従来の課題等について鋭意検討を重ねた結果、特定成分を含有せしめた剤を靴内にスプレーすることにより、靴内の温度を瞬時に低下させて靴ムレを解消することができる上記目的の靴ムレ改善スプレーが得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。すなわち、本発明は、次の(1)?(6)に存する。
(1) 噴射物の気化熱により靴内の温度を低下させることを特徴とする靴ムレ改善スプレー。
(2) 靴内スプレー後5分間、着用時靴内温度がスプレー前に対して1℃以上低下していることを特徴とする上記(1)記載の靴ムレ改善スプレー。
(3) 液化石油ガス、ジメチルエーテルの少なくとも1種からなる噴射剤、及び蒸気圧760mmHgを示す温度が9?60℃である炭化水素化合物から選ばれる1種又は2種以上の混合物10?90質量%が含有されていることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の靴ムレ改善スプレー。
(4) 膨張室出口と噴射口との間の流路に屈曲部を有するメカニカルブレイクアップ型アクチュエーターが設けられたエアゾール容器に充填したことを特徴とする上記(1)?(3)の何れか一つに記載の靴ムレ改善スプレー。
(5) 更に、消臭剤及び/又は抗菌剤を含有することを特徴とする上記(1)?(4)の何れか一つに記載の靴ムレ改善スプレー。
(6) 噴射物の気化熱により靴内の温度を低下させることを特徴とする靴ムレ改善方法。」(段落【0004】及び【0005】)

(4-2)引用文献4記載の技術
上記(4-1)及び図1から、引用文献4には次の技術(以下、「引用文献4記載の技術」という。)が記載されているといえる。

「エアゾール容器に液化石油ガス、ジメチルエーテルの少なくとも1種からなる噴射剤及び炭化水素化合物を充填した靴ムレ改善スプレーの技術。」

(5)引用文献5
(5-1)引用文献5の記載事項
引用文献5には、以下の記載がある。

(ア)「【0001】
本発明は、霧状の噴射物を形成し、その噴射物を噴霧対象面に対して付着させるための噴霧用エアゾール組成物およびエアゾール製品に関する。」(段落【0001】)

(イ)引用文献5の【表1】には、「実施例7」として、噴霧用エアゾール組成物中に「メントール」を含むものが記載されている。

(5-2)引用文献5記載の技術
上記(5-1)から、引用文献5には次の技術(以下、「引用文献5記載の技術」という。)が記載されているといえる。

「噴霧用エアゾール組成物がメントールを含む技術。」

(6)引用文献6
(6-1)引用文献6の記載事項
引用文献6には、以下の記載がある。なお、下線は理解の一助のため当審において付加したものである。

(ア)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の噴出ノズルは、噴射音や噴出した部分の散布状況で液の噴出は確認できるものの、噴射音が小さかったり、或いは噴出した液の分散が良く、痕跡が判り難い場合など、より確実に液の噴出を確認出来ると良い。」(段落【0003】)

(イ)「【0020】
【発明の効果】以上説明した如く本発明エアゾール用噴出ノズルは、エアゾール容器2の注出管3に液流路Aの基端開口を嵌合させて装着するとともに、液流路A内下端部に設けた弁座4上に玉状弁体5を載置し、且つ、玉状弁体5上面をコイルスプリング6で下方へ圧接して液の噴出時に玉状弁体5が微小上下動をする如く構成したので、液を噴出させている間、玉状弁体の弁座への衝突音が発せられ、この衝突音は噴射音と比較して充分大きく、しかも振動も生じるため確実に液の噴出を認識でき、ノズル先端を狭い隙間に挿入して液の噴出を行っても、確実に液の噴出を認識できるという利点がある。」(段落【0020】)

(6-2)引用文献6記載の技術
上記(6-1)から、引用文献6には次の技術(以下、「引用文献6記載の技術」という。)が記載されているといえる。

「エアゾール噴出ノズルにおいて、液の噴出を確認すべく、大きな音を発する技術。」

2.-2 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、
引用発明における「噴射通路14」は、その技術的意義からみて、本願発明1における「噴射流路」に相当し、以下同様に、「噴孔19」は「噴射口」に、「ノズルチップ15」は「微粒子発生部」に、それぞれ、相当する。
また、引用発明における「エアゾール」は、「エアゾール」という限りにおいて、本願発明1における「清涼剤及び噴射剤を含む液体」に相当する。
また、引用発明における「室内に対して噴射する」は、「所定部に噴射する」という限りにおいて、本願発明1における「靴の内部側に対して噴射する」に相当する。
また、引用発明における「バックグラウンドが39.6dBのときの噴射音を105dB」は、「バックグラウンドが所定値のときの噴射音を90dB以上」という限りにおいて、本願発明1における「バックグラウンドが35dBのときの噴射音を90dB以上」に相当する。
また、引用発明における「噴射ボタンから10cmのところにて測定した」は、「噴出口とマイクとの距離が約10cmとなるようにして測定した」という限りにおいて、本願発明1における「靴の履き口に騒音計のマイクをセットし、噴射ボタンから10cmのところにて測定した」に相当する。
したがって、両者は、
「内部に封入されたエアゾールを、噴射流路を介して噴射するエアゾール噴射装置において、
前記噴射流路の噴射口に、バックグラウンドが所定値のときの噴射音を90dB以上とし、かつ、液体を霧状に噴射する微粒子発生部を備え、前記噴射音は、噴出口とマイクとの距離が約10cmとなるようにして測定したものである、エアゾール噴射装置。」
で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
(1)「エアゾール」を「所定部に噴射する」ことに関して、本願発明1においては、「清涼剤及び噴射剤を含む液体」を「靴の内部側に対して噴射する」ものであるのに対して、引用発明においては、「エアゾール」を「室内に対して」噴射するものである点(以下、「相違点1」という。)。

(2)「バックグラウンドが所定値のときの噴射音を90dB以上」に関して、本願発明1においては、「バックグラウンドが35dBのときの噴射音を90dB以上」とするのに対して、引用発明においては、「バックグラウンドが39.6dBのときの噴射音を105dB」とする点(以下、「相違点2」という。)。

(3)騒音の測定方法に関して、本願発明1においては、「靴の履き口に騒音計のマイクをセットし、噴射ボタンから10cmのところにて測定した」のに対し、引用発明においては、「噴射ボタンから10cmのところにて測定した」点(以下、「相違点3」という。)。

2.-3 判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
本願発明1は、「簡単な構成で噴射しやすく、より高い「冷却効果感」を得ることができるエアゾール噴射装置を提供することを目的とする」(明細書の段落【0007】を参照。)ものである。
そのために、本願発明1の発明特定事項を有するエアゾール噴射装置とし、それにより、「音の影響により心理的に高い冷却効果感を得ることができるとともに、噴射エリアを広範囲なものとできて、液体による効果が得られやすいものとなる」(明細書の段落【0009】を参照。)という作用効果を奏することができる。
それに対して、引用文献1に記載された発明は、「ドアの外など、エアゾール製品から離れた位置からでも噴霧が開始されたか、あるいは終了したかを確認し得るエアゾール製品を提供すること」を課題とし、そのために「少なくとも噴射の開始時に、バックグランドが40dBのときに100dB以上の噴射音を発生する」という構成を有するものである。
すなわち、本願発明1と引用発明とは、どちらも大きな噴射音を発生するものではあるが、その目的が全く相違しており、噴射物も本願発明1においては「清涼剤及び噴射剤を含む液体」、引用発明においては「(殺虫剤等の)エアゾール」と異なっている。
してみると、引用文献1に係る発明において、「エアゾール」を、「清涼剤及び噴射剤を含む液体」に置換するための積極的な動機付けがなく、引用文献1に記載された発明に基づいて上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を、当業者が容易に想到することはできない。

(2)相違点2及び3について
本願発明1と引用発明とは、「噴出口とマイクとの距離が約10cmとなるようにして測定した」「バックグラウンドが所定値のときの噴射音を90dB以上」である点で共通する。
また、引用発明における「バックグラウンドが39.6dBのときの噴射音を105dB」とすることは、本願発明1における「バックグラウンドが35dBのときの噴射音を90dB以上」とすることと重複しているから、上記相違点2は実質的な相違点ではないと判断することもできる。
しかし、本願発明1においては「靴の履き口に騒音計のマイクをセットし、噴射ボタンから10cmのところにて測定した」ものであるが、引用発明においてはそのようにマイクをセットすることは想定されていないから、引用文献1に記載された発明に基づいて上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を、当業者が容易に想到することができたとまでいうことはできない。

したがって、引用発明において、相違点1及び3に係る本願発明1の発明特定事項を当業者が容易に想到することができたとはいえない。

(2)小括
よって、本願発明1は、引用発明に基づいて、当業者が容易に想到することができたとはいえない。

また、本願発明2ないし6は、本願発明1をさらに限定するものであるから、引用発明及び引用文献2ないし6記載の技術に基づいて当業者が容易に想到することができたとはいえない。

よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することができない。


第4 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要

「 本件出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。



本件出願の請求項1(以下、単に「請求項1」という。)には、「冷感素材の濃度をそれ以上高くすることができないため、冷感素材の濃度調節とは異なる要因を追加して、消費者が実際に感じる冷却効果を高めるか、若しくは心理的に冷却効果が高いように感じさせる、すなわち「冷却効果感」を高める」(本件出願の明細書における発明の詳細な説明(以下、単に「発明の詳細な説明」という。)の段落【0005】)との課題を解決すべく、以下の発明が、達成すべき結果を伴う形式で記載されている。

「内部に封入された清涼剤及び噴射剤を含む液体を、噴射流路を介して噴射するエアゾール噴射装置において、
前記噴射流路の噴射口に、バックグラウンドが35dBのときの噴射音を90dB以上とし、かつ、液体を霧状に噴射する微粒子発生部を備えたことを特徴とするエアゾール噴射装置。」

ここで、発明の詳細な説明の段落【0036】ないし【0042】の記載内容を踏まえると、特に段落【0040】及び図6の記載内容から明らかなように、請求項1に係る発明が必須とする「バックグラウンドが35dBのときの噴射音を90dB以上とし」なる、達成すべき結果を伴う形式で記載された発明特定事項は、「靴の内側に噴射した」場合においてのみ達成されたものである。してみると、請求項1に係る発明が、その発明特定事項として、同発明の達成すべき結果にとって必須である、「エアゾール噴射装置」が「靴の内側に噴射した」との条件を欠いていることは明らかである。
その上、「バックグラウンドが35dBのときの噴射音」が、単なる「噴射口から発生する音」ではなく、「噴射口から発生する音が靴の内部側に形成された閉鎖空間を反射して共鳴する」ものであることも段落【0040】に明記されているところ、請求項1に係る発明が、「噴射音」が「噴射口から発生する音が靴の内部側に形成された閉鎖空間を反射して共鳴する」ものであるとの発明特定事項を欠いていることも明らかである。
また、発明の詳細な説明に記載された請求項1に係る発明の実施例の官能評価は、段落【0037】において開示された条件の下で実施された実験の結果に基づくものである。より具体的には、この実験は、「靴の内側に噴射した」場合のみについていえば、「靴の履き口に騒音計・・・・・中略・・・・・のマイクをセットし、噴射口とマイクとの距離が約10cmとなるようにして各噴射装置を配置した」状態で「噴射音の最大値を測定した」との限定的な噴射音の測定条件の下で実施されたものである。他方で、この実験のみが、請求項1に係る発明の発明特定事項に実質的に対応する、「噴射音」の大きさと「冷却効果感」との相関関係に基づく「噴射音」の大きさの数値限定という、本件出願時の技術常識からは自明とはいえない事項の妥当性の根拠となるところ、本件出願時の技術常識に照らしても、清涼剤及び噴射剤を含む液体を霧状に噴射する噴射音が単に「バックグラウンドが35dBのときの噴射音を90dB以上とし」たものであれば、上記の限定的な噴射音の測定条件を伴わない場合であっても、当該実験及び官能評価で示された程度の「冷却効果感」が得られると当業者が認識できる程度に、具体例又は説明が記載されていない。
したがって、本件出願時の技術常識に照らしても、「エアゾール噴射装置」が「靴の内部側に対して前記液体を噴射するもの」であること、並びに「バックグラウンドが35dBのときの噴射音」が上記の限定的な噴射音の測定条件の下で測定したものであること、及び「噴射口から発生する音が靴の内部側に形成された閉鎖空間を反射して共鳴する」ものであることを、それぞれ発明特定事項として含まない請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
よって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。」

2.当審拒絶理由についての判断

平成28年5月23日付け手続補正書による補正により、当審拒絶理由通知において指摘した特許法第36条第6項第1号の拒絶理由は解消された。

すなわち、当審拒絶理由については解消された。

3.小括
当審拒絶理由については、平成28年5月23日提出の手続補正書によって解消された。
そうすると、もはや、当審拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。


第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-06-17 
出願番号 特願2010-269713(P2010-269713)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B05B)
P 1 8・ 537- WY (B05B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 種子島 貴裕  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 金澤 俊郎
槙原 進
発明の名称 エアゾール噴射装置  
代理人 城村 邦彦  
代理人 熊野 剛  
代理人 前田 礼子  
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