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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H02M |
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管理番号 | 1315487 |
審判番号 | 不服2015-11527 |
総通号数 | 199 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-07-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-06-18 |
確定日 | 2016-07-04 |
事件の表示 | 特願2012-516967「低コストの電力供給回路及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 1月 6日国際公開、WO2011/001369、平成24年12月13日国内公表、特表2012-532577、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成22年6月29日(優先権主張2009年7月3日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成26年5月23日付けで拒絶理由が通知され、平成27年2月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月18日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?9に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「安定したDC電流出力を供給するための電力供給回路であって、前記電力供給回路が、DC電圧入力をDC電圧出力に変換するためのLLCコンバータ段を有し、 前記電力供給回路が、 前記LLCコンバータ段のDC電圧出力部に結合されるDC電圧入力部を持ち、且つDC電流出力部を持つ少なくとも1つのヒステリシスコンバータ段を更に有し、 前記LLCコンバータは段には、フィードバック制御がない電力供給回路。」 第3 原査定の理由の概要 この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項 1 ・引用文献 1-3 ・備考 (検討) 引用文献1(特に、段落【0021】、【0057】-【0065】、図1-2参照)、又は、引用文献2(特に、段落【0035】、【0056】、【0059】、図1、9、21、23参照)には、DC電圧入力をDC電圧出力に変換するためのLLCコンバータ段を有し、前記LLCコンバータ段のDC電圧出力部に結合されるDC電圧入力部を持ち、且つDC出力部を持つ少なくとも1つのコンバータ段を更に有し、前記LLCコンバータ段には、フィードバック制御がない電力供給回路、が記載されている。 また、電力供給回路として、ヒステリシスコンバータは、従来周知である(例えば、引用文献3の第5欄第23-25行、図4参照)。 そして、引用文献1又は2に記載された発明において、LLCコンバータ段の出力部に接続されるコンバータ段として、前記周知のヒステリシスコンバータを適用することが、当業者にとって格別困難であるということはできない。 よって、請求項1に係る発明は、引用文献1-3に記載された発明(周知技術を含む)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・請求項 2-3 ・引用文献 1-3 ・備考 (検討) 引用文献1(特に、段落【0062】参照)には、最適な動作を確保し得る単一周波数にて、ハーフブリッジDC-DCコンバータ33をスイッチング動作させる点も記載されている。 ・請求項 4-5 ・引用文献 1-3 ・備考 (検討) 引用文献3(特に、図4参照)には、ヒステリシスコンバータ段が、バックコンバータである点も記載されている。 ・請求項 6 ・引用文献 1-3 ・備考 (検討) 引用文献2(特に、段落【0035】、図1参照)には、AC/DCコンバータ10の出力部に、非調整型インバータAを接続する点も記載されている。 ・請求項 7 ・引用文献 1-3 ・備考 (検討) 引用文献1(特に、段落【0065】参照)には、LED照明用の電源装置である点も記載されている。 ・請求項 8-9 ・引用文献 1-3 ・備考 (検討) 前記請求項1-3における備考を参照のこと。 引 用 文 献 等 一 覧 1.特開2008-187821号公報 2.特開2006-223092号公報 3.米国特許第4929882号明細書 この出願については、平成26年5月23日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。 なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。 ・備考 出願人は、平成26年8月20日付け意見書において、「従って、本願の出願前に、引用文献1又は2に記載の発明において、LLCコンバータ段の出力部に接続されるコンバータ段として、力率改善のための昇圧チョッパ回路又は実際の溶接パラメータによって調整されるコンバータに代えて、引用文献3に記載のヒステリシスコンバータを適用する動機付けとなり得るものが何もないことから、たとえ当業者といえども、本願の出願前に、このような適用をすることに容易に想到し得たとは到底考えられず、審査官殿による上記の認定は誤りであると思慮致します。」と主張している。 しかしながら、平成26年5月23日付け拒絶理由通知書に示した引用文献1-2に記載されているように、LLCコンバータ段の出力部には、様々な種類のコンバータが接続され得ることは明らかである。してみると、LLCコンバータ段の出力部に接続するコンバータの種類は、周知のコンバータの中から当業者が適宜選択し得る設計的事項であるといえる。ここで、ヒステリシスコンバータが従来周知であること(例えば、平成26年5月23日付け拒絶理由通知書に示した引用文献3参照)に鑑みれば、LLCコンバータ段の出力部に接続するコンバータ段として、周知のヒステリシスコンバータを選択することは、当業者であれば容易に想到し得たことと認められる。したがって、出願人の前記主張を採用することはできない。 よって、請求項1-9に係る発明は、平成26年5月23日付け拒絶理由通知書に示した引用文献1-3に記載された発明(周知技術を含む)に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 当審の判断 1.刊行物1の記載事項・引用発明 原査定において引用された特開2008-187821号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は、当審において注目する部分を示す。) 「【0017】 本発明の目的は、総合効率を高めることができるとともに、構造を簡略化することができる絶縁型AC-DCコンバータおよびそれを用いるLED用直流電源装置を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0018】 本発明の絶縁型AC-DCコンバータは、商用電源からの入力電流を全波整流する全波整流手段と、前記全波整流手段の後段に設けられ、絶縁トランスを有する複合共振型のハーフブリッジDC-DCコンバータから成る第1のコンバータと、前記第1のコンバータの後段に設けられて所望の電圧または電流で安定化された直流電力を直流負荷へ出力し、力率改善のための制御手段を有する昇圧チョッパ回路から成る第2のコンバータとを含むことを特徴とする。 【0019】 上記の構成によれば、商用電源からの入力電流を高周波に変換し、絶縁された直流電流を得る絶縁型AC-DCコンバータにおいて、先ず第1のコンバータとして、絶縁トランスを有する複合共振型のハーフブリッジDC-DCコンバータを用い、さらに第2のコンバータとして、力率改善のための昇圧チョッパ回路を用いる。 【0020】 したがって、第1のコンバータの複合共振動作によって、スイッチング周波数を高めても、スイッチングによる損失の増大を抑制することができる。また、商用電源の電圧変動に対しては、たとえば入力電圧の谷部で複合共振波形を維持するための多少の補正を加えることはあっても、基本的には出力側の昇圧チョッパ回路入力部に電源電圧の全波整流波形と略相似の電圧が得られるように駆動することは容易であり、第2のコンバータでの力率改善動作を容易に行うことができる。さらにまた、ハーフブリッジ回路を用いることによって、絶縁トランスに入力される電圧は、シングルエンド回路などを用いる場合に比べて低くできるので、前記絶縁トランスの小型化に適し、また該第1のコンバータに用いるスイッチング素子も低耐圧化することができ、ON抵抗の小さいMOSFETなどの選定が可能になる。このような損失面の優位性によって、回路全体での効率を高めることができる。 【0021】 また、上述のような効率面の利点だけではなく、該第1のコンバータは複合共振波形が維持できる範囲内の周波数または単一周波数でスイッチング動作をすればよく、絶縁トランスを介しての負荷側からのフィードバックは不要になる。これによって、第1のコンバータの制御機能を大幅に縮小して、たとえば自励駆動の可能性もあり、制御回路用電源の簡易化、省略によって損失低減が可能となる。 【0022】 さらにまた、2段目のコンバータである昇圧チョッパ回路の入力には、上述のように電源電圧の全波整流波形と略相似の電圧が得られ、高調波歪抑制のために必要な信号は総て1段目のコンバータの出力側、すなわち該2段目のコンバータの入力側で得られるので、絶縁トランスをまたいで該2段目のコンバータへの商用電源側からのフィードフォワード回路も不要である。これによって、該第2のコンバータの力率改善制御に関する回路構成を簡略化することができるとともに、該第2のコンバータの制御電源は第1のコンバータ出力から容易に得られるので、大きな損失にはならない。」 「【0057】 図3は、上述のように構成されるAC-DCコンバータ31,31aの動作を説明するための各部波形図である。商用電源32からの正弦波交流VacをダイオードブリッジDBで全波整流すると、コンデンサC12から電源ライン37,38間へは、VC12で示す脈動した電圧が、ハーフブリッジDC-DCコンバータ33の非平滑電源として出力される。VQ2,IQ2はスイッチング素子Q2の電圧・電流包絡線を示したもので、VQ2包絡線はVC12と一致し、またスイッチング周波数に対して前記直列共振回路を適切なLC直列共振条件に設定し、複合共振波形が維持できる範囲内の周波数または単一周波数で動作させれば、スイッチング電流波形IQ2包絡線もVC12と相似形となる。 【0058】 そして、図4および図5には、ハーフブリッジDC-DCコンバータ33の入力電圧VC12の山部と谷部とにおけるスイッチング素子Q1,Q2のドレイン-ソース間電圧VQ1,VQ2、電流IQ1,IQ2およびコンデンサC1の端子電圧VC1、2次側ダイオードD1,D2の電流ID1,ID2を示している。これらの図4および図5で示すように、絶縁トランスTの2次側に設けられるダイオードD1,D2を流れる電流が、高周波動作の1周期毎に非導通期間を有するように制御回路39によって制御されていると、スイッチング素子Q1またはQ2がONするタイミングでは、スイッチング電流は若干の負電流(MOSFETの内蔵ダイオードを流れる)となるので、ゼロ電流スイッチング(ZCS)動作が可能で、スイッチング損失は極めて小さくなっている。また、スイッチング素子Q1またはQ2がONオンするタイミングでは、デッドオフ期間中にスイッチング素子Q2と並列に接続したコンデンサC13がインダクタL1の共振エネルギーを吸収し、印加電圧は緩やかな傾斜をもって上昇することから、ソフトスイッチングによるゼロ電圧スイッチング(ZVS)動作が可能で、スイッチング損失は極めて小さくなっている。 【0059】 また、上述のようにハーフブリッジDC-DCコンバータ33が共振状態にあると、前記コンデンサC2によってダイオードD1,D2からの電圧を包絡線検波した電圧VC2には、図3で示すように、入力交流電圧Vacに相似の正弦波電圧が現れる。さらに、第3のスイッチング素子Q3を流れる電流はIQ3となり、したがって平滑コンデンサC3の出力電圧は整流・平滑化された所望の直流電圧VC3となる。これらの結果、商用電源32からの入力電流Iacは正弦波となり高調波歪が抑制できる。 【0060】 そして、制御回路40は、前記電圧VC2に、負荷電圧または負荷電流(検出手段は図示していない)を検出し、それらの負荷電圧または負荷電流を予め定める基準値と比較したエラーアンプ出力に前記電圧VC2の検出結果を乗算した結果に基づいて、第3のスイッチング素子Q3のスイッチング電流値を設定し、電流検知抵抗R1で検出された電流値がその電流値となるように、前記第3のスイッチング素子Q3のスイッチングを制御するPFCコントローラを構成する。 【0061】 こうして、第1段目の複合共振型のハーフブリッジDC-DCコンバータ33によって、スイッチング周波数を高めても、スイッチングによる損失の増大を抑制することができる。また、商用電源32の電圧Vacの変動に対しては、たとえば入力電圧Vacの谷部で複合共振波形を維持するための多少の補正を加えることはあっても、基本的には出力側の昇圧チョッパ回路36の入力部に電源電圧Vacの全波整流波形VC12と相似の電圧VC2が得られるように駆動することによって、第1および第2のスイッチング素子Q1,Q2のスイッチング損失を抑制できるとともに、前記絶縁トランスTの2次側に設けられるダイオードD1,D2によって整流され、コンデンサC3で包絡線検波された電圧波形は、商用電源32の全波整流電圧波形と略相似形とすることができる。さらにまた、ハーフブリッジ回路を用いることによって、絶縁トランスTに入力される電圧VQ1,VQ2をシングルエンド回路などを用いる場合に比べて低くできるので、トランスTの小型化に適し、また該コンバータ33に用いるスイッチング素子Q1,Q2も低耐圧化することができ、ON抵抗の小さいMOSFETなどの選定が可能になる。こうして、総合効率を高めることができる。 【0062】 また、上述のようにコンバータ33を低耐圧化することができるとともに、該コンバータ33は複合共振波形が維持できる範囲内の周波数または単一周波数でスイッチング動作をすればよく、絶縁トランスTを介しての負荷35側からのフィードバックは不要になる。これによって、制御回路39の機能を大幅に縮小して、たとえば自励駆動の可能性もあり、該制御回路39用電源の簡易化、省略によって一層の損失低減が可能となる。 【0063】 さらにまた、第2段目のコンバータである昇圧チョッパ回路36の入力には、上述のように電源電圧Vacの全波整流波形VC12と略相似の電圧VC2を得ることができ、高調波歪抑制のために必要な信号は総て第1段目のコンバータ33の出力側、すなわち該昇圧チョッパ回路36の入力側で得られるので、絶縁トランスをまたいで該昇圧チョッパ回路36への商用電源側からのフィードフォワード回路も不要である。これによって、該昇圧チョッパ回路36における制御回路40の力率改善制御に要する回路構成を簡略化することができるとともに、該制御回路40の電源はコンバータ33の出力から容易に得られるので、大きな損失にはならない。 ・・・中略・・・ 【0065】 なお、上述のような絶縁型AC-DCコンバータ31,31aは、汎用電源としての有用性は当然ながら、特に入力高調波歪低減が重要な照明器具用電源として最適であり、小型・薄型のLED照明用としてこの効果が期待できる。その場合、図1で示す定電圧制御と、図2で示す定電流制御とでは、輝度を一定にできる定電流制御の方が好適である。」 上記下線部の記載及び関連箇所の記載によれば、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「商用電源からの入力電流を全波整流する全波整流手段と、前記全波整流手段の後段に設けられ、絶縁トランスを有する複合共振型のハーフブリッジDC-DCコンバータから成る第1のコンバータと、前記第1のコンバータの後段に設けられて所望の電圧または電流で安定化された直流電力を直流負荷へ出力し、力率改善のための制御手段を有する昇圧チョッパ回路から成る第2のコンバータとを含む絶縁型AC-DCコンバータであって、 前記第1のコンバータの複合共振型のハーフブリッジDC-DCコンバータは、複合共振波形が維持できる範囲内の周波数または単一周波数でスイッチング動作をすればよく、絶縁トランスを介しての負荷側からのフィードバックは不要であるAC-DCコンバータ。」 2.対比 本願発明と引用発明を対比する。 ア.引用発明の「絶縁型AC-DCコンバータ」は、「所望の電圧または電流で安定化された直流電力を直流負荷へ出力」するものであるから。本願発明と同様の「安定したDC電流出力を供給するための電力供給回路」といい得るものである。 イ.引用発明の「複合共振型のハーフブリッジDC-DCコンバータから成る第1のコンバータ」は、本願発明の「DC電圧入力をDC電圧出力に変換するためのLLCコンバータ段」に相当するといえる。 ウ.引用発明の「第1のコンバータの複合共振型のハーフブリッジDC-DCコンバータは、複合共振波形が維持できる範囲内の周波数または単一周波数でスイッチング動作をすればよく、絶縁トランスを介しての負荷側からのフィードバックは不要である」点は、本願発明の「前記LLCコンバータ段には、フィードバック制御がない」点に相当するといえる。 エ.引用発明の「前記第1のコンバータの後段に設けられて所望の電圧または電流で安定化された直流電力を直流負荷へ出力し、力率改善のための制御手段を有する昇圧チョッパ回路から成る第2のコンバータ」は、本願発明の「前記LLCコンバータ段のDC電圧出力部に結合されるDC電圧入力部を持ち、且つDC電流出力部を持つ少なくとも1つのヒステリシスコンバータ段」と「前記LLCコンバータ段のDC電圧出力部に結合されるDC電圧入力部を持ち、且つDC電流出力部を持つ少なくとも1つのコンバータ段」である点では共通するといえる。 そうすると、両者は、次の点で一致する。 「安定したDC電流出力を供給するための電力供給回路であって、前記電力供給回路が、DC電圧入力をDC電圧出力に変換するためのLLCコンバータ段を有し、 前記電力供給回路が、 前記LLCコンバータ段のDC電圧出力部に結合されるDC電圧入力部を持ち、且つDC電流出力部を持つ少なくとも1つのコンバータ段を更に有し、 前記LLCコンバータは段には、フィードバック制御がない電力供給回路。」 他方、本願発明と引用発明は次の点で相違する。 <相違点> LLCコンバータ段のDC電圧出力部に結合されるDC電圧入力部を持ち、且つDC電流出力部を持つ少なくとも1つのコンバータ段が、本願発明では、「ヒステリシスコンバータ段」であるのに対し、引用発明では、「力率改善のための制御手段を有する昇圧チョッパ回路から成る第2のコンバータ」である点。 3.判断 上記相違点について検討する。 原査定において引用された米国特許第4,929,882号明細書(以下、「刊行物2」という。)には、ヒステリシスがある電流モードで制御されるDC-DCコンバータが記載されており、本願発明でいう「ヒシステリスコンバータ」自体は、本願優先権主張の日前に公知であると認められる。 しかしながら、刊行物1には、LLCコンバータ段のDC電圧出力部に結合されるDC電圧入力部を持ち、且つDC電流出力部を持つ少なくとも1つのコンバータ段として、力率改善(負荷電流と電圧の位相のずれを少なくする)の制御手段(PFCコントローラ)を有する昇圧チョッパしか記載されておらず、それ以外のコンバータを採用する記載や示唆はない。 そして、本願発明の上記相違点に係る「ヒステリシスコンバータ段」は、LLCコンバータ段のDC出力電圧におけるリップルに影響を及ぼされずに、安定した出力電流を生成する(本願明細書段落【0010】?【0011】、【0034】参照。)という課題を解決するために設けられるものであるのに対し、刊行物1には、そのような課題は記載されておらず、示唆されてもいない。 したがって、引用発明自体には、引用発明において、「力率改善のための制御手段を有する昇圧チョッパ回路から成る第2のコンバータ」に代え、刊行物2に記載されている公知の「ヒシステリスコンバータ」を採用する動機付けはない。 また、原査定の拒絶理由に引用した.特開2006-223092号公報(以下、「刊行物3」という。)には、非調整型DC/DCコンバータのDC出力信号をDC入力とする電気アークプロセス用の溶接出力に変換するのに適した調整型のコンバータを設けた溶接用電源が記載されているが、「ヒシステリスコンバータ」を採用することは記載されておらず、示唆されてもいない。 よって、引用発明において、本願発明の相違点に係る構成を採用することが当業者にとって容易であったということはできない。 したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2、3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 本願請求項2?7に係る発明は、本願請求項1に係る発明をさらに限定したものであるから、本願発明と同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 本願請求項8に係る発明は、本願発明を方法として記載したものであるから、本願発明と同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 本願請求項9に係る発明は、本願請求項8に係る発明をさらに限定したものであるから、本願発明と同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり、本願の請求項1?9に係る発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたとはいえないから、原査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-06-21 |
出願番号 | 特願2012-516967(P2012-516967) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H02M)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 中里 翔平 |
特許庁審判長 |
高瀬 勤 |
特許庁審判官 |
千葉 輝久 和田 志郎 |
発明の名称 | 低コストの電力供給回路及び方法 |
代理人 | 特許業務法人M&Sパートナーズ |