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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
管理番号 1315533
審判番号 不服2015-2837  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-13 
確定日 2016-06-08 
事件の表示 特願2013- 77398「半田接続要素」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月 8日出願公開、特開2013-153203〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2008年12月5日(優先権主張外国庁受理 2007年12月11日 独国(DE)、2008年6月25日 独国(DE))を国際出願日とする特願2010-537299号の一部を平成25年4月3日に新たな特許出願としたものであって、平成26年1月9日付けの拒絶理由に対して、同年3月24日に意見書及び手続補正書が提出され、さらに同年4月30日付けの拒絶理由(最後)に対して、同年8月6日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年10月3日付け(発送日:10月14日)で平成26年8月6日の手続補正について補正の却下の決定がなされるとともに拒絶査定がなされ、これに対して、平成27年2月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。
そして、当審において、平成27年10月1日付けで拒絶の理由が通知され、それに対して同年12月2日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成27年12月2日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
ガラスからなり窓ガラスである基体であって、電気部品を接続するための半田接続要素(1)を含み、該半田接続要素(1)が、接続目的で設けられた本体(2)と、前記本体(2)から突起し、かつ前記半田接続要素(1)を前記基体の表面上に半田付けする少なくとも2つの半田足(3)とを有し、前記基体と前記半田接続要素(1)との間の熱膨張の差に起因する応力、および接続された電気部品からの応力が、基体の表面と平行な少なくとも2つの座標方向で半田足(3)の弾性によって相殺されることが可能であり、
本体(2)に、切開部(6)が設けられ、本体(2)の切開部(6)がプラグコネクタ(5’)を取り付けるためのプラグイン突起(5)を形成することを特徴とする、基体。」

第3 刊行物
1.当審の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された特開昭49-97295号公報(以下「刊行物1」という。)には、「電気端子」に関し、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与するものである。以下、同様。)。

ア.「本発明は加熱できる絶縁ガラス、とくに車輌の窓、殊に後部窓に用いられる電気端子であって、1例として、平面あるいは堅いガラスの曲面窓ガラスの上に沈澱させた導電性エナメルの導体に接続され且つ高温でガラス表面に焼付けた電気抵抗を有する窓ガラスに用いられる電気端子に関するものである。
さらに特殊的に云うならば、本発明にかかる電気端子は一般にそのおのおのの端において電流を窓ガラスの加熱抵抗に供給するための集電子の1つに溶接される2つの突出部を含み、これらの2つの突出部は電流供給線にたいして取付端子の役目をする中心部材を有するブリッジに接続される。
本発明の目的は集電子に溶接された突出部が分離したり固着しない危険性を減することである。突出部が電流供給集電子にたいして溶接される瞬間に、端子全体の温度が高温度に上昇して突出部と溶解すべき集電子との間におかれた溶接すべき金属を溶接することができるようにしたものである。窓ガラスを構成するガラスはその大きな熱慣性のために殆ど熱せられない。溶接操作後冷却期間中に2点においてガラスに溶接された端子は変形する傾向を有する。しかしながら窓ガラスそれ自身はその原の寸法にとどまっている。このことは端子、ガラスおよび溶接部分に張力およびねじれ力を生ずる結果となる。ガラスにおける圧縮応力はあまり有害な効果は惹起しない。これにたいして、突出部によって突出部と集電子との間の溶接された金属に伝達される力は溶接点の一方もしくは他方が付着しないという結果をしはしは招く。」(第1ページ右下欄第1行?第2ページ左上欄第10行)

イ.「本発明にかかる1つの様相によれば、窓ガラスに設けられた抵抗素子に電流を供給するために配列されたガラス薄板上の集電子に溶接される1対の突出部を含み、それらの突出部は電流供給電線に付着しうる部材を有するブリッジ部分に接続され、該ブリッジ部分およびまたはそれに隣接する1つの突出部は少くともノッチおよびまたは穴を有するものである。その帯域に設けられたノッチ穴、くぼみもしくはそれに類するものは突出部が脱離する危険を非常に効果的に減少させるものである。これは疑いもなく、溶接を分離するブリッジ部とそれに隣接する突出部分の横方向の剛性度を減少するに貢献し、ある程度まで熱伝導率および熱慣性を減少させることができるものである。」(第2ページ左上欄第15行?右上欄第8行)

ウ.「第1図に示すごとく、加熱窓ガラスは2つの集電子1-1aを有している。そしてこの集電子1-1aはスクリーン プリンティングによって沈澱させ高温においてガラス窓2に焼付け、集電子1-1aと同じ材料の線もしくは細い小片3から構成される抵抗を加熱してこれらの集電子に接続する。
電源回路は例えば車輛の蓄電池のごとき電源から供給されて端子5-5aを介して供給される。
これらの端子は第2図に示すごとくガラスに溶接された突出部6-6aと帯域10の領域において突出部6-6aに設けられた中心突出部7を含んで構成される。この帯域10は傾斜部分8-8aによって突出部6-6aにもうけられたブリッジを形成し、それによって中心突出部は集電子1から或距離の位置に維持する。この配列は端子を長手方向に差し込むためにある程度の弾性をもつことができるようになっている。
第2図において示される実施例において、ノッチ9は中心突出部の対称中心軸に沿つてブリッジ部10に設けられる。
第3図における実施例においてはノッチの数は12-13にて示すように設けられているが、これは中心突出部の中心軸に対して対称に配置されている。」(第2ページ左上欄第11行?左下欄第15行)

エ.「第1図は加熱ガラス窓のダイアグラム、第2図は第1図のガラス窓に用いられるための本発明にかかる電気端子の透視図、第3図および第4図は第2図の端子の種々の平面図である。
1-1a 集電子
5-5a 電気端子
6-6a 突出部
7 電線に接続しうる部材
10 ブリッジ部
12,13 ノッチ
14 穴。」(第2ページ左下欄第20行?右下欄第10行)

オ.FIG.1?FIG.4


上記記載事項から次の事項が理解できる。
カ.記載事項イの「窓ガラスに設けられた抵抗素子」及び記載事項ウの「スクリーン プリンティングによつて沈澱させ高温においてガラス窓2に焼付け、集電子1-1aと同じ材料の線もしくは細い小片3から構成される抵抗」との記載、及びFig1によれば、ガラス窓2は抵抗素子を有していると認められる。

キ.記載事項ウ、エ、オ及びFig1,2によれば、窓ガラス2は集電子1-1aに溶接される電気端子5-5aを備えており、電気端子5-5aはブリッジ部10、傾斜部分8-8a、突出部6-6a、電線に接続しうる部材7とからなっていると認められる。また、Fig3の実施例は、Fig2の実施例と合わせ見ると、前記ブリッジ部10にノッチ12が、傾斜部分8-8aにノッチ13が、それぞれ形成されていると認められる。さらに、電線に接続しうる部材7と突出部6-6aの間は傾斜部分8-8aとなる部分であって、ノッチ13を含めた凹部が形成されていることが看取される。

これら記載事項、認定事項及び図示内容を総合して、第3図に示された実施例を本願発明に則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「抵抗素子を有しているガラス窓2からなる加熱窓ガラスであって、該ガラス窓2は、集電子1-1aに溶接される電気端子5-5aを備えており、電気端子5-5aは、ブリッジ部10、傾斜部分8-8a、2つの突出部6-6a、電線に接続しうる部材7とからなり、前記ブリッジ部10にノッチ12が、傾斜部分8-8aにノッチ13が、それぞれ形成され、
電線に接続しうる部材7と突出部6-6aの間はノッチ13を含めた凹部が形成されている
加熱窓ガラス。」

2.当審の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された特開平11-345926号公報(以下「刊行物2」という。)には、「半導体装置」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明では上記課題を解決するために、ケース内の半導体チップを外部導出端子により外部と接続可能とした半導体装置において、前記外部導出端子の基板へのはんだ付け部分と前記ケースへの固定部との間に、互いに直交する3軸方向に対して応力を緩和する応力緩和手段を有することを特徴とする半導体装置が提供される。」

イ.「【0021】
図1は本形態の外部導出端子36の具体的な形状を示す斜視図である。外部導出端子36は、1枚の金属板を打ち抜き、折り曲げ形成されたものであり、その平板部365をZ-X平面に平行に置いたとき、外部端子部360がY軸方向に平行となるように形成されている。平板部365は、枠体12から張り出した梁状の支持体(図示せず)によって枠体12に固定されている。外部端子部360の中間部分には、2個の切り欠き360a,360bが互いに対向するように形成されている。外部端子部360は、この切り欠き360a,360b部分でほぼ直角に折り曲げられ、図3で示したようにカバー13に係止される。
【0022】
一方、各接続部361,362,363,364は、その板厚に比して十分な長さを持ち、平板部365とほぼ平行に平板部365からZ軸方向に突き出し、途中から下方に向くように折り曲げ形成されている。また、各接続部361,362,363,364には、応力緩和手段としての切り欠き部361a,362a,363a,364aが複数個ずつ形成されている。切り欠き部361a,362a,363a,364aは、例えばX軸方向に沿うとともに、切り欠きの向きが隣どうし互いに逆となるように形成されている。その大きさや数は、各接続部361,362,363,364の抵抗やインダクタンスを考慮して決められている。
【0023】
このような構成の外部導出端子36は、切り欠き部361a,362a,363a,364aの働きによって、接続部361,362,363,364が弾性力を持ち、Y軸方向(上下方向)だけでなく、X軸、Z軸方向への応力を緩和する能力を有している。」

上記記載事項及び図示内容を総合すると、刊行物2には、次の事項(以下「刊行物2記載の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
「基板に接続する半導体チップの外部導出端子に切り欠き部を設けて、切り欠き部の働きにより接続部が弾性力を持つことで、Y軸方向(上下方向)だけでなく、X軸、Z軸方向への応力を緩和すること。」

第4 対比
本願発明と引用発明を対比すると、後者の「電気素子5-5a」は、その機能、構造からみて、前者の「半田接続要素」に相当し、以下同様に、「ブリッジ部10」及び「電線に接続しうる部材7」は両者を合わせて「本体」に、「傾斜部分8-8a」及び「突出部6-6a」は両者を合わせて「半田足」に、「電線に接続しうる部材7」は「プラグイン突起」に、「加熱窓ガラス」は「基体」にそれぞれ相当する。
してみると、引用発明の「抵抗素子を有しているガラス窓2からなる加熱窓ガラス」は本願発明の「ガラスからなり窓ガラスである基体」に相当し、また、「該ガラス窓2は、集電子1-1aに溶接される電気端子5-5aを備えて」いることは「電気部品を接続するための半田接続要素を含」むことに相当する。
また、引用発明の「電気端子5-5aは、ブリッジ部10、傾斜部分8-8a、2つの突出部6-6a、電線に接続しうる部材7とからな」ることは、本願発明の「該半田接続要素が、接続目的で設けられた本体と、前記本体から突起し、かつ前記半田接続要素を前記基体の表面上に半田付けする少なくとも2つの半田足とを有」することに相当する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、
[一致点]
「ガラスからなり窓ガラスである基体であって、電気部品を接続するための半田接続要素を含み、該半田接続要素が、接続目的で設けられた本体と、前記本体から突起し、かつ前記半田接続要素を前記基体の表面上に半田付けする少なくとも2つの半田足とを有する
基体。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
本願発明では、「前記基体と前記半田接続要素(1)との間の熱膨張の差に起因する応力、および接続された電気部品からの応力が、基体の表面と平行な少なくとも2つの座標方向で半田足(3)の弾性によって相殺されることが可能であ」るのに対し、引用発明では、「前記ブリッジ部10にノッチ12が、傾斜部分8-8aにノッチ13が、それぞれ形成され」ている点。

[相違点2]
本願発明では、「本体(2)に、切開部(6)が設けられ、本体(2)の切開部(6)がプラグコネクタ(5’)を取り付けるためのプラグイン突起(5)を形成する」ものであるのに対し、引用発明では、「電線に接続しうる部材7と突出部6-6aの間はノッチ13を含めた凹部が形成されている」点。

第5 当審の判断
[相違点1について]
引用発明は「前記ブリッジ部10にノッチ12が、傾斜部分8-8aにノッチ13が、それぞれ形成され」ており、これらのノッチ12,13は「横方向の剛性度を減少するに貢献し、ある程度まで熱伝導率および熱慣性を減少させることができるものである」(記載事項イ)から、引用発明は加熱用窓ガラスと電気端子との間の熱膨張の差に起因する応力、および接続された電気部品からの応力を相殺することが可能であるといえる。
また、引用発明は、ガラス、電気素子の熱慣性等の違いにより、ガラスや電気素子の溶接部分に張力及びねじれ力を生じることを課題としているものである(記載事項ア参照)。
他方、刊行物2には、セラミック基板上の回路パターンに外部導出端子をはんだ付けするについて、温度変化による外部導出端子の膨張・収縮により、はんだ付け部分にクラックが発生することを防止するために、上記のとおり、基板に接続する半導体チップの外部導出端子に切り欠き部を設けて、切り欠き部の働きにより接続部が弾性力を持つことで、Y軸方向(上下方向)だけでなく、X軸、Z軸方向への応力を緩和することが記載されている。
そして、基体がガラスとセラミックとの違いはあるものの、どちらも金属である半田接続要素や外部端子部との、熱・温度による膨張率の差による応力を緩和するものであるから、引用発明において、本願発明の半田足に相当する傾斜部分8-8a及び突出部6-6aに刊行部2記載の技術事項を適用して、基体の表面と平行な少なくとも2つの座標方向で弾性により応力緩和、すなわち、応力を相殺することは、当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点2について]
引用発明は「電線に接続しうる部材7と突出部6-6aの間はノッチ13を含めた凹部が形成されている」ものであり、この「ノッチ13を含めた凹部」は「電線に接続しうる部材7」を形作っているから、本願発明の「切開部」に相当するものである。
したがって、引用発明は「本体に、切開部が設けられ、本体の切開部がプラグコネクタを取り付けるためのプラグイン突起を形成する」ものであり、この点において、実質的に相違しない。

なお、請求人は、「本願請求項1に係る発明は、『本体(2)に、切開部(6)が設けられ、本体(2)の切開部(6)がプラグコネクタ(5’)を取り付けるためのプラグイン突起(5)を形成する』構成を特徴とする。
本願請求項1に係る発明は、上記構成を備え、切開部によって本体からプラグイン突起を形成することによって、より小さくかつより小型な接続要素を提供でき、空間および材料を節約でき、大量生産に有利であるという格別な効果を奏することができるものである。」(意見書第2ページ下から第9?3行)、また、「刊行物1に開示される発明におけるノッチ13は、電源に接続し得る部材7に単に隣接するものであって、当該部材7を形成するものではない。刊行物1に開示される発明において、ノッチ13が無くとも、電源に接続し得る部材7は依然として存在するものである。」(同第4ページ第6?9行)と主張するが、引用発明において電気端子を形成する際の本体の原型は明らかでなく、電気端子を形成する前の本体を請求人が主張する形状と解する必然性はなく、引用発明は上記のとおり「電線に接続しうる部材7と突出部6-6aの間はノッチ13を含めた凹部が形成されている」ものであり、「ノッチ13を含めた凹部」は全体で切開部に相当するから、請求人の主張は採用できない。

そして、本願発明による効果も、引用発明及び刊行物2記載の技術事項から当業者が予測し得た程度のものである。

したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び刊行物2記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-01-08 
結審通知日 2016-01-12 
審決日 2016-01-27 
出願番号 特願2013-77398(P2013-77398)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 悟史中島 昭浩沼生 泰伸  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 中川 隆司
森川 元嗣
発明の名称 半田接続要素  
代理人 特許業務法人川口國際特許事務所  

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