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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1315541
審判番号 不服2013-9876  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-05-29 
確定日 2016-05-30 
事件の表示 特願2008-501344「歯科用コンピュータ・トモグラフィ撮像」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月21日国際公開、WO2006/097576、平成20年 8月21日国内公表、特表2008-532666〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、2006年3月13日(パリ条約による優先権主張、2005年3月14日、フィンランド)を国際出願日とする出願であって、平成25年1月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月29日に審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、平成26年6月3日付けで当審による拒絶理由の通知がなされ、それに対して同年12月5日に意見書及び手続補正書が提出された。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成26年12月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。

「装置1の本体部分10と、または、実際の装置1に属していない固定構造と、接続されたアーム構造であって、該アーム構造は、撮像手段14、15を備えかつ回転中心23の周りに回転可能であるアーム部分13を含み、前記撮像手段は、前記アーム部分13のほぼ両側に配置された、放射線発生源14および撮像検知器15を備える、アーム構造と、
前記放射線発生源14によって作成される放射を1つのビームに制限するためのコリメータ構造と、
前記装置と接続された患者支持手段16、および
前記放射線発生源14および撮像検知器15の動作および運動を制御し、前記アーム構造の運動を制御するための制御手段およびアクチュエータを備える制御システムと
を備える歯科用コンピュータ・トモグラフィ装置であって、
前記撮像手段を備える前記アーム部分13は、少なくとも2つの他の回転可能なアーム部分11、12を介して、前記装置の前記本体部分10と、または前記患者支持手段16に対して固定された前記固定構造と、接続され、前記少なくとも2つのアーム部分11、12のそれぞれが、ほぼ同一平面上に、互いからある距離だけ離間して配置されている少なくとも2つの回転中心21、22、23に対して回転可能であるように構成され、該回転中心21、22、23のうち前記少なくとも2つのアーム部分の最も外側のアーム部分11、12の最も外側の回転中心21、23は、一方は、撮像手段を備える前記アーム部分13と接続し、他方は、前記本体部分10と、または前記患者支持手段16に対して固定されている前記固定構造と接続し、
前記制御システムは、前記撮像手段14、15を備える前記アーム部分13が、撮像される予定の被写体の当該空間に関する画像情報を作成するために、撮像中に静止している回転中心23に対して回転するように、前記アーム構造11、12、13を駆動するための制御コマンド、及び、前記アーム構造11、12、13の作動できる範囲内で、撮像手段14、15を備える前記回転可能なアーム部分13の回転中心23を、撮像を開始する所定の座標点へ、または前記制御システム内で入力されたこのような座標点へ移動させるための制御コマンドを含む、制御ルーチンを備え、
前記制御システムが、パルス化された放射線を生成するように前記放射線発生源15を制御し、かつ照射が遮断されたとき、当該パルスに対し前記撮像検知器14からの画像情報の読み取りが行われるように制御するよう構成され、1つの放射パルスの継続時間が、最大でも、ビームが、意図された再構成ボクセルサイズに対応するある距離を、撮像される予定の空間内で回転するためにかかる時間よりも短いように、または、前記撮像検知器14が、1つの検知器ピクセルの長さに対応する距離を撮像する間に移動するためにかかる時間よりも短いように構成されている、
ことを特徴とする歯科用コンピュータ・トモグラフィ装置。」

第3 引用刊行物
1.引用文献1
当審の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2001-518341号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0001】
(技術分野)
本発明は、頭部X線撮影装置に関し、特に歯科用X線撮影に使用されるものに関し、該装置は第2の本体部に接続される第1の本体部と、第3の本体部に接続された他の端を含み、該他の端はその一端に取付けられたX線源及びその他の端に取付けられたX線検出器を有する第4の本体部を有し、該装置において前記第2の本体部及び前記第3の本体部は第1のピボットシャフトを介して互いに接続され、さらに、前記第3の本体部及び前記第4の本体部は第2のピボットシャフトを介して互いに接続され、両方のピボットシャフトは実質的に互いに対して平行である装置に関する。
【0002】
(背景技術)
ヒト頭骨の頭部撮像に関してX線撮影の最も重要なタスクとして、歯列弓のパノラマ断層撮影、正面の歯列弓のX線撮影、顎関節のX線撮影及び頭骨全体の頭型測定用X線撮影が挙げられる。これらの撮像タスクは各種類のX線撮影法、例えば、ナロービーム断層撮影法、リニア断層撮影法、全地場X線透視法、スリットX線透視法、断層合成X線撮影法及びコンピュータ断層撮影法を用いて行うことができる。一部のX線撮影装置構成では、これらの異なる撮像モードはX線撮影操作を開始する前に装置のいくつかの配置を行い、撮像操作用の適切な制御プログラムを選択することにより同一の装置において行うことができる。X線撮影装置の使用における最も重要であり、最も要求度の大きいX線撮影像モードはその基本を次に詳細に述べるパノラマ断層撮影法である。
【0003】
従来のパノラマX線撮影装置の特徴は、X線源を患者の頭骨周囲に旋回するように配置し、歯列弓を頭骨の反対側で旋回するX線検出器によって撮像できることである。画像はフィルム上に直接形成されるか、またはディジタルフォーマットのCCDアレイセンサなど各種類の固体検出器によって保存され、スクリーン上に表示することができる。 」
(2)「【0022】
以下、本発明による機構について、上述した軌道ジオメトリが実現可能であることを説明する。
図2には本発明による装置の基本構成要素として、台座11、第1の本体部12、第2の本体部13、第3の本体部14、第4の本体部15及び患者位置決め支持16が示されている。第1の本体部12は台座11、または、壁もしくは天井に固定されている。第1の本体部12は高さが調節可能な伸縮垂直アームを含むことが最も有利である。または、第1の本体部12は固定直立ブラケットまたは壁もしくは天井に取付けるために適した同様の本体部を含むことができる。
【0023】
図3には第2の本体部13、第3の本体部14及び第4の本体部15、本体部15はその一端に接続されたX線源10及びその他の一端に接続されたX線記録装置20を有する。X線記録装置20はX線撮影フィルム、CCDセンサまたは別の種類のX線検出器であってもよい。第2の本体部13は垂直ピボットシャフト24により第1の本体部12に接続され、第3の本体部14は垂直ピボットシャフト25により第2の本体部13に接続され、第4の本体部15は垂直ピボットシャフト26により第3の本体部14に接続されている。または、本発明は第1の本体部12を第2の本体部13が適切な固定具及び/または固定手段により直接取付けられるX線撮影室の壁及び/または天井に代えることができる。」
(3)「【0025】
図5には駆動モータ21、22及び23のための駆動制御システムのブロック線図が示されている。キーボード31の助けを借りて、必要な制御データをモータ21の制御駆動装置33、モータ22の駆動装置34及びモータ23の駆動装置35を制御する中央コンピュータユニット32に入力する。この制御システムの助けを借りて、本体部13、14及び15は第4の本体部15の移動のための所望の軌道ジオメトリを提供するように移動することができる。」
(4)「【0028】
照射開始前に、すべての可動本体部を片側に方向を変え、患者の位置決め支持16への妨害とならないアクセスを提供し、操作員により患者の照射のための正しい位置への障害とならない整列を可能とする。図8には患者17が適切に位置決めされていることが示されている。患者17の位置決め後、装置の可動本体部はロボットまたは手動のいずれかにより初期位置に駆動され、図9に示した通り照射を開始する。」
(5)「【図2】


(6)「【図3】



2.引用発明
これらの記載事項を含む引用文献1全体の記載及び当業者の技術常識を総合すれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「台座(11)、第1の本体部(12)、第2の本体部(13)、第3の本体部(14)、第4の本体部(15)及び患者位置決め支持(16)を有し、第1の本体部は台座または、壁もしくは天井に固定されており、
第4の本体部はその一端に接続されたX線源(10)及びその他の一端に接続されたX線記録装置(20)を有し、
第2の本体部は第1の垂直ピボットシャフト(24)により第1の本体部に接続され、第3の本体部は第2の垂直ピボットシャフト(25)により第2の本体部に接続され、第4の本体部は第3の垂直ピボットシャフト(26)により第3の本体部に接続されており、
キーボード(31)により必要な制御データを第1のモータ(21)の駆動装置(33)、第2のモータ(22)の駆動装置(34)及び第3のモータ(23)の駆動装置(35)を制御する中央コンピュータユニット(32)に入力し、この制御システムにより、本第2の体部、第3の本体部及び第4の本体部は第4の本体部の移動のための所望の軌道ジオメトリを提供するように移動することができ、
照射開始前に、すべての可動本体部を片側に方向を変え、患者(17)の位置決め支持への妨害とならないアクセスを提供し、患者の位置決め後、装置の可動本体部はロボットにより初期位置に駆動され、照射を開始する、
歯列弓のパノラマX線撮影装置。」

第4 対比・判断
1.対比
本願発明と、上記引用発明を対比する。
(1)引用発明の「第1の本体部」、「第4の本体部」、「X線源」、「X線記録装置」及び「第3の垂直ピボットシャフト」は、それぞれ、本願発明の「本体部分」、「アーム部分」、「放射線発生源」、「撮像検知器」及び「回転中心」に相当する。
引用発明は「第1の本体部は台座または、壁もしくは天井に固定されて」いるから、引用発明は本願発明の「固定構造」に相当する構成を有する。
(2)同様に、引用発明の「患者位置決め支持」、「中央コンピュータユニット」、「モータ」及び「制御システム」は、それぞれ、本願発明の「患者支持手段」、「制御手段」、「アクチュエータ」及び「制御システム」に相当する。
引用発明の「歯列弓のパノラマX線撮影装置」と本願発明の「歯科用コンピュータ・トモグラフィ装置」は、ともに「歯科用X線撮影装置」である点で共通する。
(3)同様に、引用発明の「第2の本体部と第3の本体部」は本願発明の「2つの他の回転可能なアーム部分」に相当する。
そして、引用発明の「第4の本体部」(本願発明の「アーム部分」に相当)が「第2の本体部と第3の本体部」を介して、「第1の本体部」(本願発明の「本体部分」に相当)と接続されていることは明らかである。
また、引用発明の「第1の垂直ピボットシャフト、第2の垂直ピボットシャフト及び第3の垂直ピボットシャフト」が「ほぼ同一平面上に、互いからある距離だけ離間して配置されている」ことは、当業者の技術常識に照らして自明である。
そして、引用発明の「第2の本体部と第3の本体部」のそれぞれが上記垂直ピボットシャフトに対して回転可能であることも自明である。
さらに、引用発明が、本願発明の「回転中心のうち少なくとも2つのアーム部分の最も外側のアーム部分の最も外側の回転中は、一方は、撮像手段を備えるアーム部分と接続し、他方は、本体部分と接続し」ている構成に相当する構成を有することは明らかである。

以上のことから、両者は、
「装置の本体部分と接続されたアーム構造であって、該アーム構造は、撮像手段を備えかつ回転中心の周りに回転可能であるアーム部分を含み、前記撮像手段は、前記アーム部分のほぼ両側に配置された、放射線発生源および撮像検知器を備える、アーム構造と、
前記装置と接続された患者支持手段、および
前記放射線発生源および撮像検知器の動作および運動を制御し、前記アーム構造の運動を制御するための制御手段およびアクチュエータを備える制御システムと
を備える歯科用X線撮影装置であって、
前記撮像手段を備える前記アーム部分は、少なくとも2つの他の回転可能なアーム部分を介して、前記装置の前記本体部分と接続され、前記少なくとも2つのアーム部分のそれぞれが、ほぼ同一平面上に、互いからある距離だけ離間して配置されている少なくとも2つの回転中心に対して回転可能であるように構成され、該回転中心のうち前記少なくとも2つのアーム部分の最も外側のアーム部分の最も外側の回転中心は、一方は、撮像手段を備える前記アーム部分と接続し、他方は、前記本体部分と接続するように構成されている、
歯科用X線撮影装置。」
の点で一致し、以下の各点で相違している。

(相違点1)
本願発明が「放射線発生源によって作成される放射を1つのビームに制限するためのコリメータ構造」を有するのに対して、引用発明がそのような構造を有するかどうか不明な点。

(相違点2)
本願発明の撮影装置は「コンピュータ・トモグラフィ装置」であって、本願発明の制御システムが「撮像手段を備えるアーム部分が、撮像される予定の被写体の当該空間に関する画像情報を作成するために、撮像中に静止している回転中心に対して回転するように、アーム構造を駆動するための制御コマンド、及び、前記アーム構造の作動できる範囲内で、撮像手段を備える前記回転可能なアーム部の回転中心を、撮像を開始する所定の座標点へ、または前記制御システム内で入力されたこのような座標点へ移動させるための制御コマンドを含む、制御ルーチンを備え」「パルス化された放射線を生成するように前記放射線発生源を制御し、かつ照射が遮断されたとき、当該パルスに対し前記撮像検知器からの画像情報の読み取りが行われるように制御するよう構成され、1つの放射パルスの継続時間が、最大でも、ビームが、意図された再構成ボクセルサイズに対応するある距離を、撮像される予定の空間内で回転するためにかかる時間よりも短いように、または、前記撮像検知器14が、1つの検知器ピクセルの長さに対応する距離を撮像する間に移動するためにかかる時間よりも短いように構成されている」のに対して、引用発明の撮影装置は「パノラマX線撮影装置」であって、制御装置が上記の制御ルーチンを備えない点。

2.判断
上記各相違点について検討する。
(相違点1について)
歯科用に限らず、X線撮影装置において放射線発生源からの放射をビームに制限するためのコリメータ構造を設けることは、本願の優先日時点で周知の技術である。
引用発明に当該周知技術を付加することに格別の阻害要因も技術的困難性もない。したがって、引用発明に上記相違点1に係る構成を採用することは、当業者が容易になしうる事項である。
(相違点2について)
歯科用X線撮影装置としてコンピュータ・トモグラフィ装置は、本願の優先日時点で周知もの(原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-139902号公報、特開2003-290220号公報参照)であり、引用発明のX線撮影装置として当該周知技術を用いることに、格別の技術的困難性も阻害要因もない。
そして、コンピュータ・トモグラフィ装置で撮像する場合、撮像手段が撮像される予定の被写体の当該空間に関する画像情報を作成するために撮像中に静止している回転中心に対して回転するように制御されること、及び、アーム構造の作動できる範囲内で、撮像手段を備える回転可能なアーム部の回転中心を、撮像を開始する所定の座標点へ移動させるように制御されることは当該装置の撮像原理に照らして当業者に自明の事項(上記各文献参照)である。
しかも、コンピュータ・トモグラフィ装置を「パルス化された放射を作成するように放射線発生源を制御」することも、「放射パルスの継続時間」を「最大でも、ビームが、意図された再構成ボクセルサイズに対応するある距離を撮像される予定の空間内で回転するためにかかる時間よりも短」くなるように制御することも、ともにごく普通に行われている慣用技術である。
してみると、引用発明に周知のコンピュータ・トモグラフィ装置を適用し、上記相違点2に係る構成を採用することは、当業者が容易になしうる事項である。

そして、本願発明の作用・効果も、引用発明及び周知技術から、当業者が予測しうる範囲のものであって、格別なものではない。

以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-24 
結審通知日 2014-12-25 
審決日 2015-01-06 
出願番号 特願2008-501344(P2008-501344)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小田倉 直人  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 神 悦彦
藤田 年彦
発明の名称 歯科用コンピュータ・トモグラフィ撮像  
代理人 臼井 伸一  
代理人 岡部 讓  
代理人 三山 勝巳  
代理人 越智 隆夫  

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