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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07D
管理番号 1315547
審判番号 不服2014-18964  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-22 
確定日 2016-06-06 
事件の表示 特願2012-160876「精製ピリジン」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月22日出願公開、特開2012-229259〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2009年5月22日を国際出願日とする特願2011-514264号の一部を平成24年7月19日に新たな特許出願としたものであって、平成24年7月23日に上申書が提出され、平成26年1月22日付けで拒絶理由が通知され、同年5月19日に意見書および手続補正書が提出され、同年6月16日付けで拒絶査定がされ、同年9月22日に拒絶査定不服審判が請求され、当審にて、平成27年10月30日付けで拒絶理由が通知され、平成28年2月2日に意見書および手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
この出願の特許請求の範囲の記載は、平成28年2月2日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載されたとおりであるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】
ピリジンの含有量が99.96質量%以上であり、
ピラジンの含有量が2.3質量ppm未満であり、ピリミジンの含有量が1.1質量ppm未満であり、
320nmにおける単位長あたりの吸光度が0.04cm^(-1)以下であって、当該吸光度は試薬ピリジンの320nmにおける単位長あたりの吸光度よりも低い、精製ピリジン。」

第3 審判合議体が通知した拒絶の理由
平成27年10月30日付けで審判合議体が通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という)の一つは概略以下のとおりである。

理由1:この出願の請求項1?7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1?3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

ア 引用刊行物
刊行物1:特開平2-72161号公報(原審の引用文献1)
刊行物2:日本化学会編 ,新実験化学講座1 基本操作I(昭和50年9月20日)丸善 p.430-437,442-443(原審の参考文献)
刊行物3:Journal of the American Chemical Society, 1956年,Vol.78,p.2173-2176(原審の引用文献3)

刊行物2、3は、出願日時点での技術常識を示すためのものである。

第4 当審の判断
当審は、当審拒絶理由のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物1?2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと判断する。
その理由は以下のとおりである。


1 引用刊行物およびその記載
(1)刊行物
刊行物1:特開平2-72161号公報(原審の引用文献1)
刊行物2:日本化学会編 ,新実験化学講座1 基本操作I(昭和50年9月20日)丸善 p.430-437,442-443(原審の参考文献)

(2)刊行物の記載事項
ア 刊行物1:特開平2-72161号公報
(1a)「(1)UV吸収性の少なくとも1種の他の化合物を混合物がUV級ではなくなるのに十分な程度に含み、かつ触媒上で1種以上のアルデヒドおよび/またはケトンと1種以上のアミンおよび/またはアンモニアとの縮合反応によって得られたピリジン含有反応生成物混合物から、UV級ピリジンを製造する方法であって、前記混合物から、UV級であるのに十分にUV吸収化合物を含有しないピリジンを分離するのに有効なピリジン/水共沸混合物を回収することを特徴とする前記方法。
・・・
(5)前記他の化合物はピラジンまたはアルキルピラジンの少なくとも1種である第1項の方法。
・・・
(7)前記混合物はまた、ピリミジン、アルキルピリミジン、ピロールまたはアルキルピロールを含んでいる第1項の方法。
(8)前記混合物はまた、ピリミジンを含んでいる第5項の方法。
(9)前記非UV級ピリジン混合物中のピラジン化合物の含量は約100?500ppmであり、前記UV級ピリジン中のピラジン化合物の含量は1?20ppmである第5項の方法。
(10)前記UV級ピリジン中のピラジン化合物の含量は10ppm未満である第9項の方法。」(特許請求の範囲(1)(5)(7)(8)(9)(10))

(1b)「本発明のプロセスによって成功的に除去し得る不純物のタイプは、ベンゼンおよびトルエンのような芳香族、メタノールおよびエタノールのようなアルコール類、アセトンのようなケトン類、アセトアルデヒドおよびイソブチルアルデヒドのようなアルデヒド類、アルデヒドメチルイミンのようなイミン類、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、ジメチルアミンアセトニトリルのようなニトリル類、ピロール、N-メチルピロールのようなアルキルピロール、ピリミジンおよびアルキルピリミジン、ピラジンおよびアルキルピラジン(例えばN-メチル-および/または2-メチルピラジン)、ピリダジン、チオフェン等を含むが、しかしこれに限らない。ピコリン類、特にα-ピコリンまたはβ-ピコリンのような同族体も本発明のプロセスによって除去することができる。
本発明後の研究に基づいて、本発明によって成功して除去される最も有力なUV妨害剤はピラジンまたはアルキルピラジンのように見える。他の有力なUV妨害剤はピリミジン、ピロールまたはアルキルピロール、ピリダジン、ニトリル等であるように見える。」(3頁右上欄11行?左下欄12行)

(1c)「本発明は、UV不純物含量の通常量をUV級仕様書を満足するのに十分な程度へ除去することが可能である。・・・ピラジンの場合、10ppmがピリジンをUV仕様書不合格とするのに十分であると決定される。本発明のプロセスを用いて、これらUV吸収剤の妨害量は、商業上UV仕様書を満たすのに必要なレベルへ低下させることができる。これらレベルもしくは含有量範囲は100ppm未満、好ましくは50ppm未満、最も好ましくは25ppm未満、そして特に10ppmまたは5ppm未満、特に1?25または1?20ppm、好ましくは1?10または1?5ppm、またはそれ以下の範囲である。
“UV級ピリジン”とは、以下のものを含む少なくとも1種の商業的UV級仕様書を満たすピリジンを意味する。」(3頁左下欄13行?右下欄11行)

(1d)「一旦本発明に従ってピリジン/水共沸混合物が分離されれば、ピリジンを単離するための慣用技術、例えばベンゼンの添加による共沸混合物の破壊、続いて実質上乾燥したピリジンを製造するための分留を採用することができる。他の慣用技術、例えば乾燥作業、抽出、塩析、再蒸留等を、各種の適切な教科書・・・に論じているような完全に慣用な考慮に従って使用することができる。」(5頁左上欄7?16行)

(1e)「実施例1
U.S.P.4,675,410の方法によって製造した粗製ピリジン(>95%)もしくは1級ピリジン(>98%)1300mlを、2000ml丸底三頸フラスコ、Goodloe 316 ステンレス鋼蒸留パッキングを充てん(審決注:原文は漢字)した鏡つきジャケット付蒸留塔(高さ4フィート、内径2.5cm)、取外しヘッドおよび加熱マントルよりなる蒸留装置に入れる。フラスコのネック中および分離ヘッド中へ取り付けた温度計を使用して温度を測定する。蒸留水を加え、装置を閉じ、還流させる。蒸留が進むにつれ、もっと水を加えることを許容するためそれを周期的に停止する。蒸留の途中総計950ccの水を分けて添加する。還流比50:1を維持する。ピリジン/水共沸混合物(1580cc,B.P.93℃)を集め、水によるその希釈によってUVスペクトルにおいて適切であることを示す。
実施例2
実施例1に記載した態様で製造したピリジン/水共沸混合物・・・丸底フラスコ・・・中へ入れる。・・・混合物を還流比40:1で還流する。ベンゼン/水共沸混合物・・・を除去した後、少量のピリジン/水共沸混合物・・・を集める。少量の初留カット・・・の後、乾燥したUV透明ピリジンを・・・集める。」(実施例1及び2)

(1f)実施例2の表中には、UVピリジン(本発明)のλが320ナノメートルの場合のAが0.025であることが示されている。

(5頁右下欄実施例2中の表)

(1g)

(4頁左上欄)

イ 刊行物2
(2a)「4・7精製と乾燥
4・7・1 乾燥剤の種類と性質
反応試薬や溶媒として使用する試薬は、特に純度が保証されている場合を除いて、その実験に適した精製を行ってから使用するのが常識である。・・・ここでは乾燥に用いられる主な乾燥剤の種類、性質、使用上注意すべき点についてまとめてみた。・・・
水素化カルシウム:・・・脱水容量が大きく、適用範囲が広く、しかも取扱いが容易である。・・・ピリジン・・・などから、こん跡量(含水量0.0005%)の水分を除くのに使用される。・・・
水素化アルミニウムリチウム:・・・きわめて強力な乾燥力をもっている・・・水分を徹底的に除去する場合に使用されている。」(430頁12行?432頁14行)

(2b)「4・7・2 有機溶媒の精製
現在市販されている溶媒は、合成反応の溶媒などに用いるには十分純粋で、最も多量に含まれている不純物は水である。そのほかの少量の不純物も、溶媒の由来によって何であるかだいたいわかっている。一般に広く行われている精製法はこれらの主な不純物をだいたい取除く方法である。」(436頁13?17行)

(2c)「(v)ピリジン・・・通常、目的に応じて適当な品位のピリジンを乾燥してそのまま使用し、特別な精製は行なわない。脱水には粒状の酸化バリウム,または粉末の水素化カルシウムと数時間還流後、そのまま蒸留し、粒状水素化カルシウムまたは分子ふるい(Type4A)を加えて保存する。」(443頁5?11行)

2 刊行物1に記載された発明
摘記(1a)には、ピラジンおよびピリミジンを含み、ピラジンの含有率が10ppm未満であるUV級ピリジンが記載されており、摘記(1b)には、ピラジンおよびピリミジンは有力なUV妨害剤であるとされ、摘記(1c)には、その含有量範囲は、好ましくは、1?5ppm又はそれ以下であるとされ、摘記(1e)摘記(1f)には、乾燥したUV透明ピリジンとして、λが320ナノメートルの場合のAが0.025であるUVピリジンが示されているので、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「ピラジンやピリミジン等のUV妨害剤を含めたUV吸収剤の含有量を1?5ppm以下の範囲にした、乾燥したUV透明ピリジンであって、λが320ナノメートルの場合のAが0.025であるUVピリジン」

3 対比・判断
(1)対比

引用発明の「ピリジン」は、本願発明の「精製ピリジン」と、精製工程を経たピリジンを主成分とする組成物であるという点で一致しており、引用発明のAは、可視・紫外線吸収スペクトル法における単位長あたりの吸光度を表していることは技術常識である(機器分析のてびき(1)増補改訂版,1986年2月10日,化学同人,p98,99,102参照)から、引用発明の「λが320ナノメートルの場合のA」とは、本願発明の「320nmにおける単位長あたりの吸光度」に相当する。
そして、引用発明の「λが320ナノメートルの場合のAが0.025」とは、本願発明の「320nmにおける単位長あたりの吸光度が0.04cm^(-1)以下であって」に該当している。
さらに、本願発明の「試薬ピリジンの320nmにおける単位長あたりの吸光度」について、本願明細書においては、【0055】に、唯一「試薬ピリジン」に関する記載が存在し、「320nmにおける単位長あたりの吸光度」が0.0524であることが示されているところ、引用発明の「λが320ナノメートルの場合のAが0.025」という吸光度の値は、その試薬ピリジンの値よりも低いものである。
したがって、引用発明の「λが320ナノメートルの場合のAが0.025である」とは、本願発明の「320nmにおける単位長あたりの吸光度が0.04cm^(-1)以下であって、当該吸光度は試薬ピリジンの320nmにおける単位長あたりの吸光度よりも低い」に該当しているといえる。

したがって、本願発明と引用発明は、

「ピラジンやピリミジンを1?5ppm以下の範囲含有し、320nmにおける単位長あたりの吸光度が0.04cm^(-1)以下であって、当該吸光度は試薬ピリジンの320nmにおける単位長あたりの吸光度よりも低い精製ピリジン」という点で一致し、以下の点で相違するものである。

相違点:本願発明では、「ピリジンの含有量が99.96質量%以上であり、ピラジンの含有量が2.3質量ppm未満であり、ピリミジンの含有量が1.1質量ppm未満であり」と特定されているのに対して、引用発明においては、「ピリジンの含有量が99.96質量%以上」であるとの特定がなく、「ピラジンやピリミジン等のUV妨害剤を含めたUV吸収剤の含有量を1?5ppm以下の範囲にした」と特定している点

(2)判断
相違点の判断
本願発明において、特許請求の範囲の裏付け記載である表4の記載には、UV320nm吸光度、ピリジン含有量、ピラジン含有量、ピリミジン含有量、水分の項が示され、ピリジン以外の成分として水分が大部分を占めることが数値から理解できる。
刊行物2摘記(2a)?(2c)に記載されるように、ピリジンの0.0005%(5ppm)程度の痕跡量の水分を水素化カルシウムによって、乾燥することは慣用技術であるので、ピラジンやピリミジン等のUV妨害剤を含めたUV吸収剤の含有量を1?5ppm以下の範囲にした引用発明において、摘記(1d)に記載されるように、慣用の乾燥作業をおこなうことは当業者にとって容易になし得る技術的事項であるのだから、乾燥作業を行った場合、当然水分量は、優に0.04質量%(400ppm)以下になっていることは明らかである。また、引用発明において、UV波長における吸収を小さくしたUV級のピリジンにおいて、UV妨害剤は、各成分が、その含有量範囲は、1?5ppm又はそれ以下と極微量まで減少させているのだから、乾燥作業を行った場合、水分量とUV妨害剤を合わせた不純物を400ppm以下として、ピリジンの含有量が99.96質量%以上と特定し、UV妨害剤であるとされるピラジンの含有量上限を検出限界である2.3質量ppm、ピリミジンの含有量上限を検出限界である1.1ppm未満と設定することは当業者が容易になし得る技術的事項である。

イ 効果について
摘記(1c)摘記(1f)に記載されるように、引用発明のピリジンは、UV妨害剤であるピラジンやピリミジンが1?5ppm以下になっており、320nmの吸光度が0.025になっているのであるから、本願発明と同様にUV吸収が低いものとなっており、本願発明の特許請求の範囲の特定に対応した効果は当業者の予測の範囲のものといえる。

ウ 請求人の主張について

審判請求人は、平成28年2月2日付け意見書2?4頁において、本願発明の精製ピリジン、粗製ピリジン、刊行物1記載のピリジン、試薬ピリジンの各320nmにおける単位長あたりの吸光度の比較を審判請求書の図1として示して、本願発明のみが試薬ピリジンの320nmにおける単位長あたりの吸光度より低い精製ピリジンが製造できた旨主張している。

しかしながら、図1には、刊行物1記載のピリジン組成物として、320nmの吸光度が0.1程度のものを示して、本願発明の精製ピリジンと比較しているが、刊行物1には、上記のとおり、λが320ナノメートルの場合のAが0.025であるUVピリジンが明確に記載されており、刊行物1の4頁のUV級ピリジン仕様書(摘記(1g))を前提として、性能を満たすように作成されたものであることを考慮すると(摘記(1c)参照)、その数字は正しいものと理解すべきであり、これを覆す理由はない。
したがって、請求人の刊行物1記載のピリジンとして、320nmの吸光度が0.1程度であるとの刊行物1の記載に基づかない事項を前提とする主張を採用することはできない。

また、審判請求人は、平成28年2月2日付け意見書4?5頁において、試薬ピリジンの水分率を変化させた場合に、320nmから330nmの範囲のUV吸収に実質的に影響のないことを新たに実験した図を示して、刊行物1に記載された発明に刊行物2の水素化カルシウムを用いてその水分量をこん跡量まで低減させても320nmにおける単位長あたりの吸光度が0.04cm^(-1)以下にならないので、本願発明は刊行物1及び2に基いて当業者が容易に想到できない旨主張している。
しかしながら、上記のとおり、刊行物1記載の引用発明として、λが320ナノメートルの場合のAが0.025であるUVピリジンが明確に記載されており、得られているのであるから、刊行物1記載の引用発明とはUV吸収剤の含有量を含めて条件の異なる試薬ピリジンに対して水分率の影響を検討した結果が仮に正しい場合であっても、本願発明が刊行物1及び2に基いて当業者が容易に想到できないとの主張を採用することはできない。

4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明、刊行物1?2に記載された技術的事項、及び出願日当時の技術常識に基づいて、本願出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物1?2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明することができたものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-29 
結審通知日 2016-04-05 
審決日 2016-04-18 
出願番号 特願2012-160876(P2012-160876)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 明子福井 悟  
特許庁審判長 佐藤 健史
特許庁審判官 冨永 保
瀬良 聡機
発明の名称 精製ピリジン  
代理人 大窪 克之  
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