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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01F
管理番号 1315606
審判番号 不服2015-11113  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-11 
確定日 2016-06-09 
事件の表示 特願2011-263561「リアクトル」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月13日出願公開、特開2013-118208〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成23年12月1日の出願であって、平成26年10月14日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年11月17日付けで手続補正がなされたが、平成27年4月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月11日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、平成27年6月11日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
リアクトルコアの周りにボビンが形成され、ボビンの周りにコイルが形成されたリアクトル本体と、少なくとも底板からなるケースと、リアクトル本体のコイルとケースの底板の間に配置される伝熱シートと、を備えるリアクトルであって、
前記伝熱シートは、コイルと当接する一方面と、底板の前記コイルと対向する面と当接する他方面と、一方面と他方面を繋ぐ側面と、からなり、
前記底板は凹部を有し、該凹部内に前記伝熱シートが配置されており、該凹部の側面が前記伝熱シートの前記側面と当接する当接面を形成するとともに、
前記リアクトル本体のリアクトルコアと前記ケースの底板の間に、別途の伝熱シートが配置されているリアクトル。」

なお、上記平成27年6月11日付け手続補正による特許請求の範囲についての補正は、実質的に補正前の請求項2を独立形式として補正後の請求項1とし、補正前の請求項1,3ないし5を削除したものであるといえ、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2006/016554号(以下、「引用例」という。)には、「リアクトル」に関し、図面とともに以下の技術事項が記載されている(なお、下線は、当審で付与した。以下、同様。)。
ア.「 [5] 巻線と磁性体のコアとを備え、前記コアの周囲に前記巻線を巻回して形成されるリアクトル部品と、
前記リアクトル部品を収納する熱伝導性ケースと、
前記リアクトル部品の前記巻線の巻回部分と前記熱伝導性ケースの内面とに接触するように設けられる絶縁シートと、
前記熱伝導性ケース内に充填する充填材とを有し、
前記絶縁シートは、前記充填材の熱伝導率以上の熱伝導率を有することを特徴とするリアクトル。」

イ.「[0001] 本発明は、コア及びコイルの発熱を効率良く放熱することができる構造を有するリアクトルに関する。」

ウ.「[0020] 図12は本実施形態のリアクトルの分解斜視図である。図12に示すように、本実施形態のリアクトルは、熱伝導性ケース30の熱伝導性ケース底面31に絶縁シート27を敷き、巻線22をボビン24に巻回し、ボビン24にコア37を挿入して形成されたリアクトル部品を収納している。収納後、熱伝導性ケース底面31は絶縁シート27を介してリアクトル部品の巻線22の図示していない裏面と、熱伝導性ケース底面34は、後述するコア37の磁性体のブロック23のブロック裏面23abと接触する。絶縁シート27は、熱伝導性ケース30と巻線22を電気的に絶縁するために、熱伝導性ケース底面31と巻線22間に挿入されている。リアクトル部品を熱伝導性ケース30に収納後、端子台21を端子台固定用ネジ29で熱伝導性ケース30にネジ止めし、リアクトル部品が熱伝導性ケース30内で移動しないように、リアクトル部品固定用ネジ40でリアクトル部品を固定した後、充填材28を流し込んでいる。」

エ.「[0023] 上記熱伝導性ケース30を図15乃至図19に示す。図15は、本実施形態の熱伝導性ケースを端子台用切欠き側から見た斜視図、図16は、本実施形態の熱伝導性ケースを端子台用切欠き対向側から見た斜視図、図17は、図15の矢視CCから見た断面図、図18は、図15の矢視DDから見た断面図、図19は、図15の平面図である。図15乃至19に示す熱伝導性ケース30には、図14に示すリアクトル部品を収納できるようにリアクトル部品の高さ以上の深さを持ち、リアクトル部品の主要部に対応し得る平面を持つ熱伝導性ケース底面31が加工されている。リアクトル部品を収納した場合、熱伝導性ケース底面31は、絶縁シート27を介して巻線22の図示していない裏面と接触する。また、熱伝導性ケース底面31に比べて浅い位置に熱伝導性ケース底面34が加工されている。熱伝導性ケース底面34は、リアクトル部品を収納した場合、後述するコア37の磁性体のブロック23aのブロック裏面23ab(図20参照)と面接触し、当該磁性体のブロック23aを支持している。また、熱伝導性ケース側面35は、コア37の磁性材のブロック23aのブロック側面23ac(図20参照)と面接触可能なようにブロック側面23acに対応する平面及び曲面が形成されている。また、熱伝導性ケース30には、熱伝導性ケース30を強制冷却された筐体等に固定するために4隅にリアクトル固定用穴33が加工されている。さらに、リアクトル部品を収納した場合、リアクトル部品固定用ネジ40で熱伝導性ケース側面35と後述するコア37の磁性体のブロック23aのブロック側面23ac(図20参照)とを圧接させるために用いられるリアクトル部品固定用ネジ穴36が加工されている。また、端子台21を熱伝導性ケース30に固定させるため、縁41aと41bから成る切欠き41を、縁41b側に端子台固定用ネジ穴32を、それぞれ加工している。」

オ.「[0034] 本実施形態の短手方向の断面図を図25に示す。巻線22を仕切部24aと巻枠部24bから構成されるボビン24の巻枠部24bに巻回し、巻枠部24bに磁性体のブロック23a及び23bから構成されるコア37の磁性体のブロック23bとシート材26を挿入して形成されるリアクトル部品を、絶縁シート27と共に熱伝導性ケース30に収納し、水平方向の第1圧接手段と垂直方向の第2圧接手段を用いて、充填材28を熱伝導性ケース30内に流し込む前及び充填材28を熱伝導性ケース30内に流し込んだ後、充填材28が固まるまで、熱伝導性ケース30内でリアクトル部品が移動しないように、リアクトル部品を固定したリアクトルの断面を示している。図25に示すように、巻線22から発生した熱は、巻線27と熱伝導性ケース底面31の間に挿入された絶縁シート27を介して、熱伝導性ケース30に放熱される。従来の絶縁シート7は、図2のように巻線2を熱伝導性ケース1と絶縁するためだけに挿入されており、従来の絶縁シート7の熱伝導率は低く、巻線2から発生した熱が、巻線2-絶縁シート7-熱伝導性ケース1と効率良く放熱されていなかった。そのため、巻線2から発生した熱は絶縁シート7を介さず、巻線2の絶縁シート7と接触していない部分から、巻線2-充填材8-熱伝導性ケース1と放熱されていた。図25に示すように本実施形態では、上記の絶縁シート27の電気特性を維持しつつ、絶縁シート27の熱伝導率を充填材28の熱伝導率以上とした。これにより、巻線22から発生した熱が、巻線22-絶縁シート27-熱伝導性ケース30と効率良く放熱することができる。また、本実施形態では、巻線22は縦巻きでコア37に巻回されているので、コア37で発生する熱を巻線22により周囲へ放熱することができる。また、本実施形態では、巻線22が縦巻きでコア37に巻回されているので、巻線が横巻で巻回されている場合に比して、巻線方向における巻線22の間隔数が多く、絶縁シート27と接触する面積を小さくすることができる。ここで、絶縁シート27を挟んだ巻線22と熱伝導性ケース30とによって発生する浮遊容量は、絶縁シート27と接触する巻線の面積に比例し、絶縁シート27の厚さに反比例する。本実施形態では、上記のように巻線22と絶縁シート27との接触する面積を小さくすることができるので、絶縁シート27を挟んだ巻線22と熱伝導性ケース30とによって発生する浮遊容量を、巻線を横巻きに巻回する場合に比して低減することができる。さらに、このように浮遊容量を低減することができるので、浮遊容量に比例するノイズエネルギーを低減することができる。なお、巻線22の絶縁シート27と接触していない面では、充填材28を介して熱伝導性ケースに放熱している。」

カ.「[0038] また、本実施形態のリアクトルは、巻線22と磁性体のコア37とを備え、コア37の周囲に巻線22を巻回して形成されるリアクトル部品と、リアクトル部品を収納する熱伝導性ケース30と、リアクトル部品の巻線22の巻回部分と熱伝導性ケース30の内面とに接触するように設けられる絶縁シート27と、リアクトル部品を熱伝導性ケース30に収納した後に、熱伝導性ケース30内に充填する充填材とを有し絶縁シート17は、充填材28の熱伝導率以上の熱伝導率を有している。これにより、巻線22から発生する熱を巻回部分から絶縁シート27を介して効率良く熱伝導性ケース30に伝導させることができる。」

・上記引用例に記載の「リアクトル」は、上記「イ.」の記載事項によれば、放熱構造を有するリアクトルに関し、より具体的には、上記「ア.」、「ウ.」、「カ.」の記載事項、及び図12等によれば、巻線22と磁性体のコア37とを備え、コア37の周囲に巻線22を巻回して形成されるリアクトル部品と、リアクトル部品を収納する熱伝導性ケース30と、リアクトル部品の巻線22の巻回部分と熱伝導性ケース30の内面とに接触するように設けられる絶縁シート27と、熱伝導性ケース30内に充填する充填材28とを有し、絶縁シート27は、充填材28の熱伝導率以上の熱伝導率を有するリアクトルに関するものである。
・上記「ウ.」の記載事項、及び図12によれば、巻線22はボビン24に巻回され、ボビン24にコア27を挿入してリアクトル部品が形成されるものであり、すなわち、巻線22は、ボビン24を介してコア27の周囲に巻回されてなるものである。
・上記記載事項「エ.」、及び図15?19、図24、図25によれば、熱伝導性ケース30は、熱伝導性ケース底面31と、熱伝導性ケース底面31に比べて浅い位置に熱伝導性ケース底面34が加工されてなるものである。
・上記「ウ.」?「カ.」の記載事項、及び図12、図24、図25によれば、絶縁シート27は、熱伝導性ケース30の熱伝導性ケース底面31に敷かれ、熱伝導性ケース底面31は、絶縁シート27を介して巻線22と接触するものである。
そして、絶縁シート27は、充填材28の熱伝導率以上の熱伝導率を有することから、巻線22で発生した熱は当該絶縁シート27を介して熱伝導性ケース30に効率良く放熱される。
・上記記載事項「ウ.」、「エ.」の記載事項、図12、図24、図25によれば、熱伝導性ケース底面34は、コア37の一部の裏面と面接触している。

したがって、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「巻線と磁性体のコアとを備え、前記コアの周囲にボビンを介して前記巻線を巻回して形成されるリアクトル部品と、
前記リアクトル部品を収納する熱伝導性ケースであって、熱伝導性ケース底面31と、当該熱伝導性ケース底面31に比べて浅い位置に前記コアの一部の裏面と面接触する熱伝導性ケース底面34が加工された熱伝導性ケースと、
前記熱伝導性ケース底面31に敷かれ、前記巻線の巻回部分と前記熱伝導性ケース底面とに接触するように設けられる絶縁シートであって、前記熱伝導性ケース内に充填する充填材の熱伝導率以上の熱伝導率を有する絶縁シートと、を有し、
前記巻線で発生した熱が前記絶縁シートを介して前記熱伝導性ケースに効率良く放熱されるようにしたリアクトル。」

4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、
(1)引用発明における「巻線と磁性体のコアとを備え、前記コアの周囲にボビンを介して前記巻線を巻回して形成されるリアクトル部品と」によれば、
引用発明における「巻線」、「コア」、「ボビン」、「リアクトル部品」は、それぞれ本願発明における「コイル」、「リアクトルコア」、「ボビン」、「リアクトル本体」に相当し、
引用発明における「リアクトル部品」は、コアの周囲にボビンを介して巻線を巻回して形成される、すなわち、コアの周りにボビンが形成され、そのボビンの周りに巻線が巻回されるものであるといえるから、
本願発明と引用発明とは、「リアクトルコアの周りにボビンが形成され、ボビンの周りにコイルが形成されたリアクトル本体と」を備える点で一致する。

(2)引用発明における「前記リアクトル部品を収納する熱伝導性ケースであって、熱伝導性ケース底面31と、当該熱伝導性ケース底面31に比べて浅い位置に前記コアの一部の裏面と面接触する熱伝導性ケース底面34が加工された熱伝導性ケースと」によれば、
(a)引用発明における「熱伝導性ケース」は、本願発明における「ケース」に相当し、
(b)引用発明における「熱伝導性ケース」は、「熱伝導性ケース底面31」と「熱伝導性ケース底面34」とを有しており、少なくとも本願発明でいう「底板」からなることは明らかである。
さらに、引用発明では、熱伝導性ケース底面34が熱伝導性ケース底面31に比べて浅い位置に加工されており、換言すれば、熱伝導性ケース底面31は、熱伝導性ケース底面34に比べて深い位置であるといえるから、引用発明における「熱伝導性ケース」のうち「熱伝導性ケース底面31」を有する空間部分は、本願発明でいう底板の「凹部」ということができる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「少なくとも底板からなるケースと」を備える点、及び「前記底板は凹部を有し」ている点で一致する。

(3)引用発明における「前記熱伝導性ケース底面31に敷かれ、前記巻線の巻回部分と前記熱伝導性ケース底面とに接触するように設けられる絶縁シートであって、前記熱伝導性ケース内に充填する充填材の熱伝導率以上の熱伝導率を有する絶縁シートと、を有し、前記巻線で発生した熱が前記絶縁シートを介して前記熱伝導性ケースに効率良く放熱されるようにした・・」によれば、
(a)引用発明における「絶縁シート」は、熱伝導性ケース内に充填する充填材の熱伝導率以上の熱伝導率を有し、巻線で発生した熱を当該絶縁シートを介して熱伝導性ケースに効率良く放熱させることができるものであることから、本願発明でいう「伝熱シート」に相当するということができ、
(b)引用発明の「絶縁シート」は、熱伝導性ケース底面31に敷かれ、巻線の巻回部分と熱伝導性ケース底面とに接触するように設けられるものであることから、巻線と底板の間、より具体的には、本願発明でいう底板の「凹部」内に配置されているといえ、
本願発明と引用発明とは、「リアクトル本体のコイルとケースの底板の間に配置される伝熱シートと」を備える点、及び「該凹部内に前記伝熱シートが配置され」ている点で一致する。
(c)さらに、引用発明における「絶縁シート」が、一方の面、他方の面及び一方の面と他方の面を繋ぐ側面とからなることは明らかであるから、
本願発明と引用発明とは、「前記伝熱シートは、コイルと当接する一方面と、底板の前記コイルと対向する面と当接する他方面と、一方面と他方面を繋ぐ側面と」からなる点でも一致するといえる。

(4)そして、引用発明の「リアクトル」は、本願発明の「リアクトル」に相当する。

よって、本願発明と引用発明とは、
「リアクトルコアの周りにボビンが形成され、ボビンの周りにコイルが形成されたリアクトル本体と、少なくとも底板からなるケースと、リアクトル本体のコイルとケースの底板の間に配置される伝熱シートと、を備えるリアクトルであって、
前記伝熱シートは、コイルと当接する一方面と、底板の前記コイルと対向する面と当接する他方面と、一方面と他方面を繋ぐ側面と、からなり、
前記底板は凹部を有し、該凹部内に前記伝熱シートが配置されているリアクトル。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
本願発明では、「該凹部の側面が前記伝熱シートの前記側面と当接する当接面を形成する」旨特定するのに対し、引用発明では、そのような明確な特定を有していない点。

[相違点2]
本願発明では、「前記リアクトル本体のリアクトルコアと前記ケースの底板の間に、別途の伝熱シートが配置されている」旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定がない点。

5.判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]について
引用例においても図24や図25によれば、絶縁シートの側面は、熱伝導性ケース底面31を有する空間部分、すなわち本願発明でいう底板の「凹部」の側面と当接しているように見えるところ、例えば原査定の拒絶の理由に引用された特開2009-200209号公報(段落【0022】?【0024】、図2、図3を参照)や特開2007-180281号公報(段落【0028】?【0029】、図5を参照)に見られるように、放熱技術分野において、良好な放熱特性や位置決めを目的として、伝熱(放熱)シートが配置される部材に設けた凹部の側面と伝熱(放熱)シートの側面とが当接するようにすることは周知の技術事項であり、引用発明においても、かかる周知の技術事項を採用して相違点1に係る構成とすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。

[相違点2]について
例えば原査定において提示した特開2008-112856号公報(段落【0014】、【0017】、【0023】、【0026】?【0027】、図5等を参照)には、リアクトルBで発生した熱を当該リアクトルBを収納するケース3に伝達して放熱機能を高めるために、ケース3における、コア1と接触する部位(コア1の両端部の裏面(下面)が接触する中間面32など)にフィルム状に成形され熱伝導性を高めた粘弾性体膜35(本願発明でいう「伝熱シート」に相当)を設けることが記載されているように、コアの一部とケースとの間にいわゆる伝熱シートを設けることは周知といえる技術事項(特に上記特開2008-112856号公報の段落【0027】には、ケース3とコイル2とが近接する部位に粘弾性体膜を設けて、ケース3とコイル2とによって粘弾性体膜が挟まれる構成を採用することもできると記載されている)であり、引用発明においても、かかる技術事項を採用し、コアの一部の裏面と面接触する熱伝導性ケース底面34上に別途の絶縁シート(伝熱シート)を配置するようにして相違点2に係る構成とすることは当業者であれば容易になし得ることである。

そして、上記各相違点を総合的に判断しても本願発明が奏する効果は、引用発明及び周知の技術事項から当業者が予測できたものであって格別なものとはいえない。

なお、請求人は審判請求書において、「(3.3)本願発明のリアクトルは、伝熱シートの側面と当接する当接面を形成する凹部の側面にて伝熱シートの側面を拘束し、リアクトル本体をケースに載置した際のコイルの押圧力により圧縮された状態で配置された伝熱シートの側方への弾性変形を制限して、コイルと伝熱シートの密着力を高めることができる。(3.4)それに対し、引用文献1に開示されているリアクトルは、絶縁シート27が熱伝導性ケース30に収納されているにすぎず、特に図25を参酌すると、伝導性ケース30の側板の厚さも薄いことから、その凹部の側面(特に、伝導性ケース30の側板から構成される凹部の側面)は、絶縁シート27の側方への弾性変形を制限するように絶縁シート27の側面を拘束しているとは言えず、よって、引用文献1の図面のみから、熱伝導性ケース底面により構成される凹部が本願発明の『凹部』に相当し、その凹部の側面が本願発明の『当接面』に相当するとした原査定の審査官の認定は妥当でないと言わざるを得ない。」と主張している。
しかしながら、本願発明は、「(底板の)凹部の側面が伝熱シートの側面と当接する当接面を形成する」と特定しているのみであり、伝熱シートの厚さや材質(特に弾性変形可能なものであること)についての特定は何らなされておらず、請求人の上記主張は、必ずしも特許請求の範囲(請求項1)の記載に基づくものではないから、採用することはできない。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項に論及するまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-04-01 
結審通知日 2016-04-05 
審決日 2016-04-18 
出願番号 特願2011-263561(P2011-263561)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保田 昌晴  
特許庁審判長 森川 幸俊
特許庁審判官 井上 信一
関谷 隆一
発明の名称 リアクトル  
代理人 石川 滝治  
代理人 関谷 三男  
代理人 平木 祐輔  

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