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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録(定型) G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録(定型) G06F
管理番号 1315622
審判番号 不服2015-20471  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-16 
確定日 2016-06-28 
事件の表示 特願2011- 65657「印刷管理システム及び印刷管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月22日出願公開、特開2012-203517、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年3月24日の出願であって、平成27年8月13日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成27年11月16日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同時に手続補正がされたものである。

第2 平成27年11月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項6を、
「印刷の指示を受け付けるクライアント端末と、前記クライアント端末からの印刷データに基づいて印刷を行なうプリンタとを用いた、印刷管理方法であって、
(a)前記クライアント端末によって、撮影装置を介して、前記印刷の指示を行なった操作者の顔の画像データを取得する、ステップと、
(b)前記クライアント端末によって、前記印刷の指示に対応する印刷データと前記印刷の指示を行なった操作者の顔の画像データとを前記プリンタに送信する、ステップと、
(c)前記プリンタに対して印刷データの出力が指示された場合に、前記プリンタによって、撮影装置を介して、前記印刷データの出力を指示した操作者の顔の画像データを取得する、ステップと、
(d)前記プリンタによって、前記クライアント端末から送信されてきた、前記印刷の指示を行なった操作者の顔の画像データと、前記印刷データの出力を指示した操作者の顔の画像データとが一致するかどうかを判定し、両者が一致する場合に、送信されてきた前記印刷データを抽出する、ステップと、
(e)前記(d)のステップで抽出された印刷データを媒体に出力する、ステップと、
(f)前記クライアント端末によって、前記印刷の指示によって指定されているプリンタが、当該印刷管理方法で用いられる前記プリンタであるかどうかを判定する、ステップと、
を有し、
前記(f)のステップでの判定の結果、前記プリンタである場合に、前記(a)のステップが実行される、ことを特徴とする印刷管理方法。」から、
「印刷の指示を受け付けるクライアント端末と、前記クライアント端末からの印刷データに基づいて印刷を行なうプリンタとを用いた、印刷管理方法であって、
(a)前記クライアント端末によって、撮影装置を介して、前記印刷の指示を行なった操作者の顔の画像データを取得する、ステップと、
(b)前記クライアント端末によって、前記印刷の指示に対応する印刷データと前記印刷の指示を行なった操作者の顔の画像データとを前記プリンタに送信する、ステップと、
(c)前記プリンタに対して印刷データの出力が指示された場合に、前記プリンタによって、撮影装置を介して、前記印刷データの出力を指示した操作者の顔の画像データを取得する、ステップと、
(d)前記プリンタによって、前記クライアント端末から送信されてきた、前記印刷の指示を行なった操作者の顔の画像データと、前記印刷データの出力を指示した操作者の顔の画像データとが一致するかどうかを判定し、両者が一致する場合に、送信されてきた前記印刷データを抽出する、ステップと、
(e)前記(d)のステップで抽出された印刷データを媒体に出力する、ステップと、
(f)前記クライアント端末によって、前記印刷の指示によって指定されているプリンタが、前記操作者の顔の画像データを取得可能であるかどうかを判定する、ステップと、
を有し、
前記(f)のステップでの判定の結果、前記プリンタが前記操作者の顔の画像データを取得可能である場合に、前記(a)のステップが実行される、ことを特徴とする印刷管理方法。」(下線は補正箇所を示す。)と変更する補正事項を含んでいる。

2.補正の適否
上記補正事項の「指定されているプリンタが、当該印刷管理方法で用いられる前記プリンタであるかどうかを判定する」を「指定されているプリンタが、前記操作者の顔の画像データを取得可能であるかどうかを判定する」とし、「判定の結果、前記プリンタである場合」を「判定の結果、前記プリンタが前記操作者の顔の画像データを取得可能である場合」とする補正は、「当該印刷管理方法で用いられる前記プリンタ」を、「前記操作者の顔の画像データを取得可能であるプリンタ」に限定するものであり、補正前の請求項6に記載された発明と補正後の請求項6に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。

そこで、本件補正後の前記請求項6に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

ア.刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用した特開2004-252501号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は、当審において注目する部分を示す。)
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はプリンタ等の印刷装置を複数のユーザで共有し、共同で使用する印刷システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
今日、LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)等のネットワーク回線に印刷装置を接続し、複数のユーザが共同使用する印刷システムが構築されている。しかし、このようなシステムでは、本来の利用者(ユーザ)以外の者が印刷装置を使用する場合がある。また、印刷物を他人が持ち去り、場合によっては親展文書や秘密文書を他人に読まれてしまう危険もある。さらに、ユーザ間でシステムの使用料や記録紙等の消耗品の費用分担が曖昧になることもある。
【0003】
そこで、特許文献1に開示するように、親展印刷物や秘密文書等の印刷にID番号やパスワードを使用する印刷装置が提案されている。また、プリンタサーバを設け、プリンタサーバにログインできるユーザに対してのみ印刷を可能にするシステムも提案されている。さらに、プリンタサーバのログイン情報からユーザを識別し、ユーザ毎に課金する印刷システムも提案されている。
・・・中略・・・
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の印刷装置や印刷システムでは以下の問題がある。例えば、印刷の際ID番号やパスワードを使用する印刷装置では、ID番号やパスワードの入力操作が必要であり、更にセキュリティーの為パスワード等を変更する必要もあり、処理も煩雑になる。
【0006】
また、プリンタサーバを導入するシステムでは、費用負担、管理負担が増大し、更にプリンタサーバにログインする操作も必要になり、上記と同様、処理も煩雑になる。
そこで、本発明は上記課題に鑑み、印刷処理の際ID番号やパスワード等の入力が不要であり、プリンタサーバの導入による費用負担等の不利を解消する印刷システムを提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、請求項1記載の発明によれば、ホスト機器に配設され、ユーザの認証情報を採取する第1の認証情報採取手段と、該認証情報を印刷データに融合する融合手段と、該融合手段によって融合された印刷データを印刷装置に出力する出力手段と、該印刷データから前記認証情報を分離する分離手段と、該分離手段によって分離された認証情報と、プリンタ装置に配設された第2の認証情報採取手段が採取した認証情報を比較する比較手段と、該比較手段の比較結果から両認証情報が一致する時、前記印刷データの印刷処理を行う印刷制御手段とを備える印刷システムを提供することによって達成できる。
【0008】
ここで、第1、第2の認証情報採取手段は、例えばCCDカメラであり、CCDカメラによってユーザの顔写真を撮影する。また、第1、第2の認証情報採取手段はCCDカメラ等の撮像手段に限らず、人の瞳を検出するデバイスや、更には声紋や指紋等の人の特徴を検出するデバイスで構成してもよい。
【0009】
また、比較手段は、上記第1、第2の認証情報採取手段が採取した認証情報を、例えばパターンマッチングによって比較し、一致する時上記印刷データに基づく印刷処理を行う。このように構成することにより、ID番号やパスワードを入力することなくユーザ認証を自動的に行うことができ、例えば親展印刷用データや秘密文書であってもセキュリティーを確実に確保しつつ、印刷処理を行うことができる。」

「<第1の実施形態>
図1は、本実施形態の印刷システムの模式図である。同図において、プリンタ装置1は、ホスト機器であるパーソナルコンピュータ(PC)2に接続されている。尚、同図ではプリンタ装置1とパーソナルコンピュータ2は直接1対1で接続されているが、LAN等のネットワーク回線を介して接続されている。したがって、プリンタ装置1はネットワーク回線に接続された不図示のパーソナルコンピュータから出力される印刷データも印刷処理することができる。また、本例のシステムではプリンタサーバは使用しない。
【0016】
プリンタ装置1は、例えばレーザプリンタであり、プリンタ本体3の下部には給紙装置4a、4bが配設され、上部には印刷物の排紙部5が設けられている。また、プリンタ装置1の上面には認証情報採取用デバイス6が配設されている。この認証情報採取用デバイス6は、台座6aによってプリンタ本体3の上面に固設されると共に、台座6aに対して回動可能な回動部6bで構成され、この回動部6bには認証用カメラ6cが取り付けられている。」

「【0024】
以上の構成において、以下に本例の印刷処理を説明する。
先ず、パーソナルコンピュータ2はアプリケーション印刷実行部10によって印刷データを作成し、プリンタドライバ印刷処理部11に出力し、印刷データを中間コードに変換する。尚、この時作成される印刷データは親展情報であり、所謂親展印刷用データである。
【0025】
また、パーソナルコンピュータ2に取り付けられた認証情報採取用デバイス8では、認証用カメラ8cによってユーザの顔写真が撮影される。この顔写真は認証情報としてマージ処理部12に送られ、マージ処理部12において前述の印刷データにマージされる。
【0026】
このようにして作成された認証情報を含む印刷データはプリンタ装置1のデータ受信/分離部13に送られ、印刷データから認証情報(顔写真の情報)が分離され、認証情報比較処理部16に送られる。一方、印刷データ(親展印刷用データ)は印刷制御処理が施された後、印刷データ保存処理部15によって記録装置17に記録される。
【0027】
このようにして印刷データ(親展印刷用データ)が記録装置17に記録された後、ユーザは親展印刷用データを印刷する為プリンタ装置1に近づく。そして、不図示の操作部を操作し、親展印刷の指示を行う。この指示により、認証情報比較処理部16は認証用カメラ6cから認証情報を読み出し、認証情報の比較を行う。すなわち、認証用カメラ6cによってプリンタ装置1を操作するユーザの顔写真が撮影され、この顔写真のデータが認証情報として認証情報比較処理部16に供給される。
【0028】
したがって、パーソナルコンピュータ2を操作して顔写真の撮影が行われたユーザと同じユーザがプリンタ装置1を操作したのであれば両認証情報は一致する。尚、この認証処理は両認証情報をパターンマッチングすることによって行う。
ここで、両認証情報が一致すれば、図2に示す判断SがOKとなり、記録装置17から印刷部20に親展印刷用データが出力される。そして、印刷処理を行い、印刷結果を前述の排紙部5に出力する。したがって、本例の処理によってユーザは確実に親展印刷物を取得することができ、他人に親展印刷物を見られることもない。また、本例によればID番号やパスワード等を入力することなく、認証用カメラ6c、8cを駆動することによって自動的に認証情報が取得され、ユーザに煩雑な操作を要請することなく親展印刷物の印刷処理を行うことができる。」

上記下線部及び関連する記載によれば、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「印刷装置を複数のユーザで共有し、共同で使用する印刷システムの印刷処理方法であって、
アプリケーション印刷実行部10によって印刷データを作成するパーソナルコンピュータ2に取り付けられた認証情報採取用デバイス8の認証用カメラ8cによってユーザの顔写真が撮影され、この顔写真は認証情報としてマージ処理部12に送られ、マージ処理部12において印刷データにマージされ、
作成された前記認証情報を含む印刷データはプリンタ装置1のデータ受信/分離部13に送られ、印刷データから認証情報(顔写真のデータ)が分離され、認証情報比較処理部16に送られ、印刷データ(親展印刷用データ)は印刷制御処理が施された後、印刷データ保存処理部15によって記録装置17に記録され、
ユーザが親展印刷用データを印刷する為プリンタ装置1に近づき、操作部から、親展印刷の指示の操作を行うと、この指示により、認証用カメラ6cによってプリンタ装置1を操作するユーザの顔写真が撮影され、この顔写真のデータが認証情報として認証情報比較処理部16に供給され、印刷データから分離された顔写真のデータと、プリンタ装置1を操作するユーザの顔写真データをパターンマッチングすることによって認証処理を行い、両認証情報が一致すれば、記録装置17から印刷部20に親展印刷用データが出力され、印刷処理を行い、印刷結果を前述の排紙部5に出力する印刷システムの印刷処理方法。」

イ.対比
補正発明と引用発明を対比する。
(ア)引用発明の「アプリケーション印刷実行部10によって印刷データを作成するパーソナルコンピュータ2」は、補正発明の「印刷の指示を受け付けるクラインアント端末」に相当する。
(イ)引用発明の「プリンタ装置1」は、補正発明の「前記クラインアント端末からの印刷データに基づいて印刷を行うプリンタ」に相当する。
(ウ)引用発明の「パーソナルコンピュータ2に取り付けられた認証情報採取用デバイス8の認証用カメラ8cによってユーザの顔写真が撮影され」る処理は、補正発明の「(a)前記クライアント端末によって、撮影装置を介して、前記印刷の指示を行なった操作者の顔の画像データを取得する、ステップ」に相当するといえる。
(エ)引用発明の「この顔写真は認証情報としてマージ処理部12に送られ、マージ処理部12において印刷データにマージされ、作成された前記認証情報を含む印刷データはプリンタ装置1のデータ受信/分離部13に送られ」る処理は、補正発明の「(b)前記クライアント端末によって、前記印刷の指示に対応する印刷データと前記印刷の指示を行なった操作者の顔の画像データとを前記プリンタに送信する、ステップ」に相当するといえる。
(オ)引用発明の「ユーザが親展印刷用データを印刷する為プリンタ装置1に近づき、操作部から、親展印刷の指示の操作を行うと、この指示により、認証用カメラ6cによってプリンタ装置1を操作するユーザの顔写真が撮影され」る処理は、補正発明の「(c)前記プリンタに対して印刷データの出力が指示された場合に、前記プリンタによって、撮影装置を介して、前記印刷データの出力を指示した操作者の顔の画像データを取得する、ステップ」に相当するといえる。
(カ)引用発明の「この顔写真のデータが認証情報として認証情報比較処理部16に供給され、印刷データから分離された顔写真のデータと、プリンタ装置1を操作するユーザの顔写真データをパターンマッチングすることによって認証処理を行い、両認証情報が一致すれば、記録装置17から印刷部20に親展印刷用データが出力され、印刷処理を行」う処理は、補正発明の「(d)前記プリンタによって、前記クライアント端末から送信されてきた、前記印刷の指示を行なった操作者の顔の画像データと、前記印刷データの出力を指示した操作者の顔の画像データとが一致するかどうかを判定し、両者が一致する場合に、送信されてきた前記印刷データを抽出する、ステップと、(e)前記(d)のステップで抽出された印刷データを媒体に出力する、ステップ」に相当するといえる。
(キ)引用発明の「印刷装置を複数のユーザで共有し、共同で使用する印刷システムの印刷処理方法」は、補正発明と同様の「印刷の指示を受け付けるクライアント端末と、前記クライアント端末からの印刷データに基づいて印刷を行なうプリンタとを用いた、印刷管理方法」といい得るものである。

そうすると、両者は、次の点で一致する。
「印刷の指示を受け付けるクライアント端末と、前記クライアント端末からの印刷データに基づいて印刷を行なうプリンタとを用いた、印刷管理方法であって、
(a)前記クライアント端末によって、撮影装置を介して、前記印刷の指示を行なった操作者の顔の画像データを取得する、ステップと、
(b)前記クライアント端末によって、前記印刷の指示に対応する印刷データと前記印刷の指示を行なった操作者の顔の画像データとを前記プリンタに送信する、ステップと、
(c)前記プリンタに対して印刷データの出力が指示された場合に、前記プリンタによって、撮影装置を介して、前記印刷データの出力を指示した操作者の顔の画像データを取得する、ステップと、
(d)前記プリンタによって、前記クライアント端末から送信されてきた、前記印刷の指示を行なった操作者の顔の画像データと、前記印刷データの出力を指示した操作者の顔の画像データとが一致するかどうかを判定し、両者が一致する場合に、送信されてきた前記印刷データを抽出する、ステップと、
(e)前記(d)のステップで抽出された印刷データを媒体に出力する、ステップと、
を有することを特徴とする印刷管理方法。」

他方、補正発明と引用発明は次の点で相違する。
<相違点1>
補正発明は、「(f)前記クライアント端末によって、前記印刷の指示によって指定されているプリンタが、前記操作者の顔の画像データを取得可能であるかどうかを判定する、ステップ」を有しているのに対し、引用発明は、クライアント端末によって、印刷の指示によって指定されているプリンタが、操作者の顔の画像データを取得可能であるかどうかを判定する処理を有していない点。

<相違点2>
補正発明は、「前記(f)のステップ(クライアント端末によって、前記印刷の指示によって指定されているプリンタが、前記操作者の顔の画像データを取得可能であるかどうかを判定する、ステップ)での判定の結果、前記プリンタが前記操作者の顔の画像データを取得可能である場合に、前記(a)のステップ(クライアント端末によって、撮影装置を介して、前記印刷の指示を行なった操作者の顔の画像データを取得する、ステップ)が実行される」のに対し、引用発明は、クライアント端末によって、印刷の指示によって指定されているプリンタが、操作者の顔の画像データを取得可能であるかどうかを判定する処理の判定の結果、プリンタが操作者の顔の画像データを取得可能である場合に、クライアント端末によって、撮影装置を介して、印刷の指示を行なった操作者の顔の画像データを取得する処理を実行するものではない点。

ウ.判断
上記相違点1について検討する。
刊行物1の段落【0006】?【0007】の記載によれば、引用発明における印刷システムは、「印刷処理の際ID番号やパスワード等の入力が不要であり、プリンタサーバの導入による費用負担等の不利を解消する印刷システムを提供するもの」であり、クライアント端末に配設された第1の認証情報採取手段によりユーザの認証情報を採取すると、該認証情報をプリンタ装置に送信し、プリンタ装置に配設された第2の認証情報採取手段が採取した認証情報と比較し、両認証情報が一致する時、印刷データの印刷処理を行う印刷システムであるから、引用発明における印刷システムは、クライアント端末によって、印刷の指示によって指定されているプリンタは、操作者の顔の画像データを取得可能であることを前提とする印刷システムであり、引用発明自体には、引用発明において、相違点1に係る補正発明の構成を採用する動機付けは認められない。

また、拒絶査定において引用された他の刊行物にも、クライアント端末によって、印刷の指示によって指定されているプリンタが、操作者の顔の画像データを取得可能であるかどうかを判定するステップを有するものは記載されておらず、示唆されてもいない。
なお、拒絶査定において引用文献2として引用された再公表特許第2007/049337号の段落【0037】等の記載によれば、「クライアント端末において印刷に係る処理を行う前に、印刷先のプリンタの性能を判断し、印刷可能なプリンタであるときに印刷に係る処理を続けること」(以下、「公知技術A」という。)自体は本願出願前に公知であったと認められるが、引用発明における印刷システムは、プリンタの中に「顔の画像データを取得可能でないプリンタ」が混在し得ることを想定したシステムであるとは認められない(ネットワーク回線を介してプリンタがクラインアント端末に接続されることは、顔の画像データを取得可能でないプリンタ」が混在し得ることを意味しない。)。
したがって、仮に上記公知技術Aでいう「印刷先のプリンタの性能」を「顔の画像データを取得可能か否か」といった事項を含む上位概念のものと捉えることができたとしても、引用発明には、その公知技術Aを採用すべき理由は存在しない。

ほかに、引用発明において相違点1に係る補正発明の構成を採用することが、当業者が容易に想到し得たことというべき理由は見当たらない。

以上のとおりであるから、相違点2について検討するまでもなく、補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

ほかに、補正発明を特許出願の際独立して特許を受けることができないものというべき理由を発見しない。

よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に適合する。
本件補正のその余の補正事項についても、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。

3.むすび
本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1?6に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2016-06-13 
出願番号 特願2011-65657(P2011-65657)
審決分類 P 1 8・ 121- WYF (G06F)
P 1 8・ 575- WYF (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宮下 誠  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 稲葉 和生
和田 志郎
発明の名称 印刷管理システム及び印刷管理方法  
代理人 特許業務法人ブライタス  

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