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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 B41J
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B41J
管理番号 1315634
審判番号 不服2015-10098  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-01 
確定日 2016-06-28 
事件の表示 特願2011- 3227「液体噴射装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月 2日出願公開、特開2012-143943、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年1月11日の出願であって、平成26年8月8日付けで手続補正がされ、平成27年3月3日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年6月1日付けで拒絶査定不服審判の請求がされ、その後、当審において、平成28年3月2日付けで拒絶の理由を通知したところ、これに対し、同年4月15日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、上記の平成28年4月15日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める(以下、「本願発明」という。)。
「液体を噴射するノズルを有する液体噴射ヘッド、および、当該液体噴射ヘッドが第1の方向に並べて複数固定されるヘッド固定部材を有する液体噴射ヘッドユニットと、
当該液体噴射ヘッドユニットを前記第1の方向に移動させるヘッドユニット移動手段と、
前記第1の方向に沿って配設されたリニアスケール、および、当該リニアスケールに形成された目盛を読み取る検出部を有するリニアエンコーダーと、
を備え、前記リニアエンコーダーからの検出信号に基づき各液体噴射ヘッドの液体噴射を制御する液体噴射装置であって、
液体噴射装置の使用上における基準温度からの予想最大温度変化をΔt、着弾対象上の前記第1の方向におけるドット形成解像度に対応する液体の着弾間隔をP、前記ヘッド固定部材における各液体噴射ヘッドの最長ノズル列間距離をL、前記ヘッド固定部材の線膨張係数をα1、前記リニアスケールの線膨張係数をα2(≠α1)としたとき、L(|α1-α2|)Δt≦P/2を満たすことを特徴とする液体噴射装置。」


第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
(理由1)
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
刊行物1:特開2003-54062号公報

(理由2)
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
刊行物1:特開2003-54062号公報
刊行物2:特開2000-355110号公報
刊行物1に記載の発明において、キャリッジ及びコードストリップそれぞれの材料を、熱膨張係数の差が小さくなるように選択することは、当業者が刊行物2に記載の発明に基づいて容易に想到し得たことである(刊行物1記載のコードストリップは、キャリアストリップと、これに取り付けた樹脂基板とよりなるが、刊行物2に記載のエンコーダスケールのような構造を有し、かつ、キャリッジとの間で熱膨張係数の差の小さいものとなすことは、当業者が容易になし得たことである。)。

2.原査定の理由の判断
(1)刊行物の記載事項
ア.刊行物1
本願の出願日前に頒布された特開2003-54062号公報には、以下の記載がある。(下線は審決による。以下、同様。)
(ア)「【請求項1】 キャリッジの運動の路の方向に延在し、上記キャリッジに取付けられるセンサ手段(26)によって検出可能な複数の位置マーク(20)を有し、且つ、上記キャリッジ(10)と同じ熱膨張係数を有するコードストリップ(18)を有する、上記キャリッジの運動方向(x)に離間されている少なくとも2つの能動素子(28,30,32,34)を保持する移動キャリッジ(10)用の線形位置エンコーディングシステムであって、
上記センサ手段は、上記少なくとも2つの能動素子(28,30,32,34)が作動されるタイミングを制御する単一のセンサ(26)だけを有し、2つの能動素子の作動タイミング間の時間差は、上記センサによって検出されるべき固定の数の位置マーク(20)に対応することを特徴とするシステム。

【請求項6】 能動素子として複数の印刷素子(28,30,32,34)を有する印刷ヘッドキャリッジ(10)を有するプリンタであって、
請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の線形位置エンコーディングシステム(18,26)によって特徴付けられるプリンタ。
【請求項7】 上記印刷素子は、インクジェットノズル(28,30,32,34)である請求項6記載のプリンタ。」
(イ)「【0019】図2に示すように、印刷ヘッドキャリッジ10は、4つの基本色シアン、マゼンタ、黄色、及び黒に対する4つの行のインクジェットノズル28、30、32、及び、34を有する。これら行は、サブ走査方向に延在し、主走査方向に互いから離間されている。」
(ウ)刊行物1に記載の「キャリッジ」、「キャリッジ(10)」及び「印刷ヘッドキャリッジ(10)」が同じものを指し示すことは明らかである。

そうすると、上記(ア)の記載事項から、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「印刷ヘッドキャリッジ(10)の運動の路の方向に延在し、上記印刷ヘッドキャリッジ(10)に取付けられるセンサ手段(26)によって検出可能な複数の位置マーク(20)を有し、且つ、上記印刷ヘッドキャリッジ(10)と同じ熱膨張係数を有するコードストリップ(18)を有する、上記印刷ヘッドキャリッジ(10)の運動方向(x)に離間されている少なくとも2つの複数のインクジェットノズル(28,30,32,34)を有する印刷ヘッドキャリッジ(10)、上記印刷ヘッドキャリッジ(10)用の線形位置エンコーディングシステム(18,26)によって特徴付けられるプリンタであって、
上記センサ手段は、上記少なくとも2つの能動素子(28,30,32,34)が作動されるタイミングを制御する単一のセンサ(26)だけを有し、2つの能動素子の作動タイミング間の時間差は、上記センサによって検出されるべき固定の数の位置マーク(20)に対応する線形位置エンコーディングシステム(18,26)によって特徴付けられるプリンタ。」

イ.刊行物2
本願の出願日前に頒布された特開2000-355110号公報には、以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】 インクを吐出して記録媒体に画像を記録する記録ヘッドを複数搭載するキャリッジと、
前記各記録ヘッドに対応して設けた複数のエンコーダ検出部と、
前記記録ヘッドの位置を測定するためのエンコーダスケールとを有し、
前記エンコーダスケールの熱膨張係数と前記キャリッジの熱膨張係数とを略等しいものとしたことを特徴とする画像記録装置。」
(イ)「【0013】
【発明の実施の形態】[第一実施形態]本発明に係る画像記録装置の第一実施形態について、図を用いて説明する。図1は第一実施形態に係る画像記録装置の斜視図、図2は画像記録手段(記録ヘッドを4つ設けた場合)の説明図、図3は画像記録手段(記録ヘッドを6つ設けた場合)の説明図である。本実施形態に係る画像記録装置1は搬送手段と画像記録手段とを有している。画像記録手段は記録ヘッド2a?2d、キャリッジ3、エンコーダスケール4、ノズル5a?5d及びエンコーダ検出部6から構成している。
【0014】キャリッジ3はポリフェニレンオキサイド樹脂(熱膨張係数:5×10^(-5))で形成し、シャーシ7上に設けられたガイド軸8及びガイドレール9に摺動可能に取付けられている。記録ヘッド2a?2dは吐出記録用の異なる濃度を有する複数種類のインクを内蔵しており、キャリッジ3に固定されている。
【0015】各記録ヘッド2a?2dに設けられたノズル5a?5dは一般に1つの記録ヘッドあたり複数本近接して設けているが、説明を簡単にするために各記録ヘッドあたり1本とした。このノズル5a?5dと1対1に対応して不図示の発熱素子が設けらており、ノズル5a?5d内のインクを過熱することにより気泡を生じてインクを吐出させる。
【0016】キャリッジ3の各記録ヘッド2a?2dに対応する位置には夫々エンコーダ検出部6a?6dが固定されている。エンコーダスケール4はポリカーボネート樹脂(熱膨張係数:6×10^(-5))で形成し、主走査方向に画像記録装置1の本体に固定されている。」
(ウ)「【0018】次にキャリッジ3は駆動モータ11の回転によりベルト10を介して記録媒体12上で主走査方向に走査される。このとき図2に示すエンコーダ検出部6a?6dはキャリッジ3の移動と共に主走査方向に移動し、記録ヘッド2a?2dの位置を示す信号を送る。この信号に従い記録ヘッド2aの位置を示す信号と画像を形成する位置から他の記録ヘッド2b?2dの吐出のタイミングを決める。このタイミングに従い各発熱素子にパルス電圧を印加してノズル5a?5dから異なる濃度のインクを吐出させ、インクの重ね合わせを行い所望の濃度を記録媒体12上に記録する。

【0020】上記画像記録装置1を用いて半切サイズのように大きな記録媒体に記録したところ、画像記録装置1の内部では記録ヘッド2a?2d、駆動モータ11及び電気回路等からの発熱があるために記録の初期と後半では画像記録装置1の内部の温度が10℃程上昇した。ここで従来の如くキャリッジ3とエンコーダスケール4の熱膨張係数に差があると、熱膨張により各記録ヘッド間の距離とエンコーダスケール4の長さが変化してその対応がずれ、結果としてインクの主走査方向の着弾位置がずれることとなる。
【0021】しかし本実施形態においてはキャリッジ3とエンコーダスケール4の熱膨張係数の差が1×10^(-5)と小さく構成したので、記録ヘッド2a?2dから同一位置に吐出されるべきインク滴の搬送方向の着弾位置のずれは記録の初めと終わりでの差は10μm以下であり、良好な画像が得られた。」
(エ)図2より、複数の記録ヘッド2a?2dが主走査方向に並べてキャリッジに搭載されていることが看取できる。

そうすると、上記(ア)乃至(エ)の記載事項から、刊行物2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「ノズル内のインクを過熱することにより気泡を生じてインクを吐出して記録媒体に画像を記録する記録ヘッドを複数主走査方向に並べて搭載し、駆動モータの回転によりベルトを介して記録媒体上で主走査方向に走査されるキャリッジと、
前記各記録ヘッドに対応して設けた複数のエンコーダ検出部と、
主走査方向に画像記録装置の本体に固定され、記録ヘッドの位置を測定するためのエンコーダスケールとを有し、
エンコーダ検出部はキャリッジの移動と共に主走査方向に移動し、記録ヘッドの位置を示す信号を送り、この信号に従い記録ヘッドの位置を示す信号と画像を形成する位置から他の記録ヘッドの吐出のタイミングを決め、
キャリッジはポリフェニレンオキサイド樹脂(熱膨張係数:5×10^(-5))で形成し、
エンコーダスケール4はポリカーボネート樹脂(熱膨張係数:6×10^(-5))で形成し、
キャリッジ3とエンコーダスケール4の熱膨張係数の差が1×10^(-5)と小さく構成した画像記録装置。」

(2)対比
そこで、本願発明と引用発明1とを対比すると、
後者の「インクジェットノズル」、「印刷ヘッドキャリッジ」、「コードストリップ」、「位置マーク」、「センサ手段」、「線形位置エンコーディングシステム」及び「プリンタ」は、それぞれ、前者の「液体を噴射するノズル」、「ヘッドユニット移動手段」、「リニアスケール」、「目盛」、「検出部」、「リニアエンコーダー」及び「液体噴射装置」に相当する。
後者の「運動方向(x)」は印刷ヘッドキャリッジの移動方向であるから、「第1の方向」といえる。
後者の「コードストリップ」は、「キャリッジの運動の路の方向に延在」するものであるから、「第1の方向に沿って配設された」といえる。
後者の「プリンタ」の「センサ手段」は、「少なくとも2つの能動素子(28,30,32,34)が作動されるタイミングを制御する」ものであるから、「検出信号に基づき各液体噴射ヘッドの液体噴射を制御する」液体噴射装置といえる。

したがって、両者は、
「液体を噴射するノズルと、
第1の方向に移動させるヘッドユニット移動手段と、
前記第1の方向に沿って配設されたリニアスケール、および、当該リニアスケールに形成された目盛を読み取る検出部を有するリニアエンコーダーと、
を備え、前記リニアエンコーダーからの検出信号に基づき各液体噴射ヘッドの液体噴射を制御する液体噴射装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明が、液体を噴射するノズル「を有する液体噴射ヘッド、および、当該液体噴射ヘッドが第1の方向に並べて複数固定されるヘッド固定部材を有する液体噴射ヘッドユニットと、当該液体噴射ヘッドユニット」を前記第1の方向に移動させるヘッドユニット移動手段を有するのに対して、引用発明1は、そのようなものでない点。

[相違点2]
本願発明が、「液体噴射装置の使用上における基準温度からの予想最大温度変化をΔt、着弾対象上の前記第1の方向におけるドット形成解像度に対応する液体の着弾間隔をP、前記ヘッド固定部材における各液体噴射ヘッドの最長ノズル列間距離をL、前記ヘッド固定部材の線膨張係数をα1、前記リニアスケールの線膨張係数をα2(≠α1)としたとき、L(|α1-α2|)Δt≦P/2を満たす」のに対し、引用発明1は、そのようなものでない点。

(3)判断
ア.(理由1)について
引用発明1は、上記相違点1及び相違点2に係る本願発明の発明特定事項を具備していない。
したがって、本願発明が、引用発明1であるとすることはできない。

イ.(理由2)について
引用発明2については、上記のとおりであって、引用発明2の「インク」、「吐出して」、「ノズル」、「記録ヘッド」、「複数主走査方向に並べて搭載し」、「キャリッジ」、「エンコーダスケール」及び「エンコーダ検出部」は、それぞれ、本願発明の「液体」、「噴射する」、「ノズル」、「液体噴射ヘッド」、「第1の方向に並べて複数固定される」、「液体噴射ヘッドユニット」、「リニアスケール」及び「検出部」に相当する。
また、引用発明2は、「駆動モータの回転によりベルトを介して記録媒体上で主走査方向に走査されるキャリッジ」を有するものであるから、「液体噴射ヘッドユニットを第1の方向に移動させるヘッドユニット移動手段」を有するといえる。
また、引用発明2は、「エンコーダ検出部はキャリッジの移動と共に主走査方向に移動し、記録ヘッドの位置を示す信号を送り、この信号に従い記録ヘッドの位置を示す信号と画像を形成する位置から他の記録ヘッドの吐出のタイミングを決め」るものであるから、「リニアエンコーダーからの検出信号に基づき各液体噴射ヘッドの液体噴射を制御する」といえる。
しかし、引用発明2には、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項の液体噴射ヘッドが第1の方向に並べて複数固定される「ヘッド固定部材」が、示されていない。
また、引用発明2には、キャリッジの熱膨張係数は示されているものの、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項の「ヘッド固定部材の線膨張係数」は示されていないから、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項も、示されていない。
そして、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項及び上記相違点2に係るに本願発明の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。
そして、本願発明は、上記相違点1及び相違点2に係る本願発明の発明特定事項を具備することにより、本願明細書に記載の「液体噴射装置を使用する環境温度が変化した場合においても、ヘッド固定部材に取り付けられている異なる液体噴射ヘッド同士における着弾対象上の液体の相対的な着弾位置ずれが許容範囲内に抑えられる。その結果、例えば、着弾対象としての記録媒体に記録した画像の画質への影響を抑制することができる。また、ヘッド固定部材およびリニアスケールの材料を必ずしも同一にしなくてもよく、材料の選定の自由度が確保される。」(段落【0009】)という作用効果を奏するものである。

したがって、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。


第4 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
(理由1)
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
刊行物2:特開2000-355110号公報
そして、本願出願時において、液体噴射装置による液体着弾間隔は、35.3μmや70μmであることが一般的であったことから(例えば、特開2009-248502号公報の【0036】、特開2009-6700号公報の【0041】及び特開2003-320661号公報の【0045】参照。)、引用文献1記載の発明の「10μm以下」は着弾間隔の半分以下であることが明らかである。
また、引用文献1記載の発明における「キャリッジはポリフェニレンオキサイド樹脂(熱膨張係数:5×10^(-5))で形成され、エンコーダスケールはポリカーボネート樹脂(熱膨張係数:6×10^(-5))で形成され」は、本願明細書に記載の組み合わせ例1に相当する。

(理由2)
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
刊行物2:特開2000-355110号公報
「L(|α1-α2|)Δt≦P/2」を満たすようになすことは当業者が適宜なし得ることである。

なお、当審拒絶理由に対し、平成28年4月15日付けで手続補正書が提出されたが、特許請求の範囲は実質的に補正がなされなかった。

2.当審拒絶理由の判断
(1)刊行物の記載事項
平成28年3月2日付けの拒絶の理由に引用された刊行物、及び、その記載内容は上記「第3 2.(1)イ.刊行物2」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
上記「第3 2.(3)イ.(理由2)について」のとおりであるから、引用発明2は、上記相違点1及び相違点2に係る本願発明の発明特定事項を具備していない。
したがって、本願発明が、引用発明2であるとすることはできない。

また、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項及び上記相違点2に係るに本願発明の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。
そして、本願発明は、上記相違点1及び相違点2に係る本願発明の発明特定事項を具備することにより、本願明細書に記載の「液体噴射装置を使用する環境温度が変化した場合においても、ヘッド固定部材に取り付けられている異なる液体噴射ヘッド同士における着弾対象上の液体の相対的な着弾位置ずれが許容範囲内に抑えられる。その結果、例えば、着弾対象としての記録媒体に記録した画像の画質への影響を抑制することができる。また、ヘッド固定部材およびリニアスケールの材料を必ずしも同一にしなくてもよく、材料の選定の自由度が確保される。」(段落【0009】)という作用効果を奏するものである。
したがって、本願発明は、引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。


第5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1または引用発明2であるとすることはできないし、また引用発明1または引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとものとすることはできないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
 
審決日 2016-06-13 
出願番号 特願2011-3227(P2011-3227)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (B41J)
P 1 8・ 121- WY (B41J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藏田 敦之  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 吉村 尚
藤本 義仁
発明の名称 液体噴射装置  
代理人 津久井 照保  

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