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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
管理番号 1316007
審判番号 不服2014-19708  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-01 
確定日 2016-06-15 
事件の表示 特願2011-516250「エレクトロニクスパッケージ及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 1月 7日国際公開、WO2010/002377、平成23年10月20日国内公表、特表2011-527100〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2008年6月30日(外国庁受理、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成26年6月3日付け(発送日:平成26年6月5日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年10月1日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その審判の請求と同時に手続補正がされたが、その後、当審において、平成27年5月12日付けで拒絶理由が通知され、平成27年7月24日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 当審の拒絶理由
当審の拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

「拒絶の理由1:本件出願は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(省略)
本件出願の特許請求の範囲の請求項1及び請求項7には、『金属フィルムが、実質的に異方性の結晶単位胞次元を有する結晶粒からなる多結晶構造を有し、前記結晶粒のうちの少なくとも80パーセントの結晶粒について、前記結晶単位胞の1つの次元が、前記基板表面に対して実質的に垂直な方向を向いており、前記金属フィルムの金属原子の前記垂直な方向を向いた単位胞次元に沿った格子拡散係数が、前記単位胞次元のうちの別の次元に沿った格子拡散係数よりも遅』いという記載がある。
そして、この記載を含む請求項1及び請求項7に係る発明を実施するために、発明の詳細な説明には、
『図2は、式(3)によって予測した、体心正方多結晶構造を有するスズでできた金属フィルムの臨界結晶粒径を示す。このような多結晶構造に関しては、長さの異なる1軸、c軸と、長さの等しい2軸、a軸およびb軸とが存在する。垂直な方向を向いた単位胞次元130はc軸に対応し、垂直な方向を向いていない単位胞次元132、134はそれぞれa軸およびb軸に対応する。スズ、亜鉛などの正方晶系の物質に関しては、c軸が結晶単位胞の[001]方向であり、a軸およびb軸がそれぞれ[100]方向および[010]方向に対応する。』(段落【0020】参照。)と、
『臨界結晶粒径は、約20から100℃の範囲の金属フィルム温度で約3から10ミクロンの範囲にあると予測される。』(段落【0021】参照。)と、
『いくつかの場合には、ステップ335で浴に加える金属塩溶液が、約0.1から50重量パーセントの範囲のめっき前初期濃度を有する金属塩の水溶液を含み、または約0.1から50重量パーセントの範囲のめっき前初期濃度を有する金属塩の水溶液である。いくつかの場合には、ステップ340で印加する電流が、約0.0001から100A/m^(2)の範囲の電流密度に維持される。いくつかの場合には、ステップ345で、電解めっき浴の水溶液が、めっきステップ320の全体を通じて、約3から11の範囲のpHに調整され、約3から11の範囲のpHに維持される。いくつかの場合には、電解めっき浴の温度が、約10から100℃の範囲の温度に調整される(ステップ350)。結晶粒の成長速度および結晶学的配向ならびに結晶粒径は、pH、温度およびめっき電流の組合せによって決まる。これらの3つのめっきパラメータを慎重に設定することによって、必要な結晶粒径および配向を有するフィルムを形成することができる。』(段落【0035】参照。)と記載されている。

ここで、pH、温度、電流(電流密度)について整理すると、スズでできた金属フィルムに関して、それぞれ約3から11、約10から100℃、約0.0001から100A/m^(2)の数値範囲が開示されている。

しかしながら、pH、温度、電流(電流密度)について、約3から11、約10から100℃、約0.0001から100A/m^(2)の数値範囲の開示では、組み合わせが無尽蔵にあって、めっきしたスズのc軸あるいは結晶単位胞の[001]方向が基板に対して実質的に垂直なものの割合を80パーセントを超えるようにすることは、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
(省略)」

第3 当審の判断

1 実施可能要件について
特許法第36条第4項第1号は、「発明の詳細な説明」の記載について、「発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」(特許法施行規則第24条の2)により「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである」ことを、その要件として定めている。
そうすると、発明の詳細な説明は、「発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者」が「発明を実施をすることができる程度に明確かつ十分」に記載される必要がある。
そして、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、「エレクトロニクス パッケージ」という物の発明であるところ、物の発明の「実施」には、「その物の生産」(特許法第2条第3項第1号)が含まれる。
したがって、本願の「発明の詳細な説明」は、本願発明の生産ができる程度に十分に記載される必要がある。

2 発明の詳細な説明の記載内容
「前記結晶粒のうちの少なくとも80パーセントの結晶粒について、前記結晶単位胞の1つの次元が、前記基板表面に対して実質的に垂直な方向を向いており、」「前記金属フィルムの金属原子の前記垂直な方向を向いた単位胞次元に沿った格子拡散係数が、前記単位胞次元のうちの別の次元に沿った格子拡散係数よりも遅」い本願発明の金属フィルムに関して、
平成26年5月9日の手続補正により補正された明細書の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。

(1)「【0018】
金属フィルム110は、結晶粒120からなる多結晶構造を有する。結晶粒120は、実質的に異方性の結晶単位胞次元130、132、134を有する結晶単位胞125を含む。金属フィルムの結晶粒120のうちの少なくとも約80パーセントの結晶粒120について、結晶単位胞125の1つの次元130は、基板表面107に対して実質的に垂直な方向135を向いている。金属フィルム110の金属原子108の垂直な方向を向いた単位胞次元130に沿った格子拡散係数は、単位胞次元のうちの別の単位胞次元132、134に沿った格子拡散係数よりも遅い。」

(2)「【0020】
図1Aおよび1Bを続けて参照する。図2は、式(3)によって予測した、体心正方多結晶構造を有するスズでできた金属フィルムの臨界結晶粒径を示す。このような多結晶構造に関しては、長さの異なる1軸、c軸と、長さの等しい2軸、a軸およびb軸とが存在する。垂直な方向を向いた単位胞次元130はc軸に対応し、垂直な方向を向いていない単位胞次元132、134はそれぞれa軸およびb軸に対応する。スズ、亜鉛などの正方晶系の物質に関しては、c軸が結晶単位胞の[001]方向であり、a軸およびb軸がそれぞれ[100]方向および[010]方向に対応する。」

(3)「【0022】
金属フィルム110は実質的に、実質的に異方性の結晶単位胞次元を有する結晶粒からなる多結晶構造を形成することができる金属元素を含むことができる。すなわち、単位胞次元130、132、134は全てが互いに等しいというわけではなく、好ましくは、少なくとも1つの単位胞次元130の長さが、他の単位胞次元132、134の長さとは約10パーセント異なる。しかしながら、全ての場合に、フィルムの結晶粒のうちの少なくとも約80%の結晶粒について、1つまたは複数の高速拡散単位胞方向が、成長方向、例えば垂直な方向を向いていない単位胞次元に対して垂直な方向を向く。このような金属の非限定的な例はカドミウム、インジウム、スズまたは亜鉛を含む。好ましい金属フィルム110の例は、カドミウム、インジウム、スズまたは亜鉛のうちの1つまたは複数の元素を少なくとも約85重量パーセント含む。(省略)」

(4)「【0024】
垂直な方向を向いていない単位胞次元132、134におけるより速い拡散係数は、より大きな臨界結晶粒径を有するのに役立つ。いくつかの実施形態では、垂直な方向を向いていない単位胞次元132、134におけるこのより速い拡散係数が、他の(垂直な方向を向いた)単位胞次元130における格子拡散係数よりも少なくとも約2倍速く、より好ましくは少なくとも約4倍速い。
【0025】
当業者であれば、垂直な方向を向いた単位胞次元130の拡散係数が、他の次元132、134の拡散係数よりも遅いかどうかをどのように判定するのかを理解していると思われる。例えば、X線回折結晶学、後方散乱電子回折などの技法を使用して、結晶粒120の単位胞125の配向を決定することができる。電子顕微鏡法を使用して、金属フィルム110の平均結晶粒径など、結晶粒120の特性を決定することができる。異なる単位胞方向の拡散係数は、すでに決定されており、文献から用意に入手可能であるか、または従来の技法を使用して決定することができる。異なる単位胞方向の拡散係数を決定するのに広く使用されている1つの技法が、その全体が参照によって本開示に組み込まれる「Diffusion in Solids」、P.G.Shewmon、McGraw Hill New York、1963年およびその参照文献に記載されている関心の物質の放射性同位体である。

(5)「【0029】
本開示の他の実施形態は、エレクトロニクス パッケージを製造する方法である。図3は、エレクトロニクス パッケージを製造する方法300の例示的な一実施形態における選択的ステップを示す流れ図を表す。図1A?1Bに示した例示的なエレクトロニクス パッケージ100の任意の実施形態を方法300によって製造することができる。
【0030】
この方法は、ステップ310で基板を用意すること、およびステップ320で基板の表面に金属フィルムをめっきすることを含む。ステップ320では、ウイスカ成長を防ぎまたは軽減する特性を助長するように金属フィルムをめっきする。
【0031】
金属フィルムの組成(例えばカドミウム、インジウム、スズまたは亜鉛)は、結晶粒からなる多結晶構造が実質的に異方性の結晶単位胞次元を有するように選択する。金属フィルムは、結晶粒のうちの少なくとも約80パーセントの結晶粒について、結晶単位胞の1つの次元が、基板表面に対して実質的に垂直な方向を向くようにめっきする。金属フィルムの金属原子の垂直な方向を向いた単位胞次元に沿った格子拡散係数は、別の単位胞次元に沿った格子拡散係数よりも遅い。
【0032】
好ましいいくつかの実施形態では、ステップ320でのめっきが、垂直な方向を向いた単位胞次元に沿って自発的ウイスカ成長が起こる臨界結晶粒径よりも小さい平均結晶粒径を有する結晶粒を提供するように構成される。
【0033】
めっきステップ320は、平均結晶粒径が臨界結晶粒径よりも小さい金属フィルムの形成を促進するように慎重に制御される。具体的には、金属フィルムの形成速度が遅い条件を選択することが望ましい。これは、高度に配向した結晶粒の形成に役立つためである。さらに、めっき液のpHおよびめっき温度の調整を使用して、高度に配向した結晶粒の成長を促進することができる。これは、製造時間をできるだけ短くするため一般に可能な限り速く金属フィルムをめっきするように制御される従来の方法とは対照的である。
【0034】
いくつかの実施形態では、めっきすること(ステップ320)が、基板を電解めっき浴内に配置すること(ステップ330)、所望の金属フィルムの金属塩(例えばスルファミン酸スズ、他の金属スルファミン酸塩などのカドミウム、インジウム、スズまたは亜鉛の金属塩)を含む溶液をめっき浴に加えること(ステップ335)、および電流を印加して基板表面に金属フィルムを形成すること(ステップ340)を含む。
【0035】
いくつかの場合には、ステップ335で浴に加える金属塩溶液が、約0.1から50重量パーセントの範囲のめっき前初期濃度を有する金属塩の水溶液を含み、または約0.1から50重量パーセントの範囲のめっき前初期濃度を有する金属塩の水溶液である。いくつかの場合には、ステップ340で印加する電流が、約0.0001から100A/m^(2)の範囲の電流密度に維持される。いくつかの場合には、ステップ345で、電解めっき浴の水溶液が、めっきステップ320の全体を通じて、約3から11の範囲のpHに調整され、約3から11の範囲のpHに維持される。いくつかの場合には、電解めっき浴の温度が、約10から100℃の範囲の温度に調整される(ステップ350)。結晶粒の成長速度および結晶学的配向ならびに結晶粒径は、pH、温度およびめっき電流の組合せによって決まる。これらの3つのめっきパラメータを慎重に設定することによって、必要な結晶粒径および配向を有するフィルムを形成することができる。」

これらの記載からみると、発明の詳細な説明には、
単位胞次元のうちの別の次元に沿った格子拡散係数よりも遅くなる結晶単位胞の1つの次元の方向が、基板表面に対して実質的に垂直な方向を向いている結晶粒を、少なくとも80パーセントとした金属フィルムを、
pH、温度及び電流密度の組合せを、電解めっき浴を約3から11の範囲のpHとし、約10から100℃の範囲の温度に調整し、印加する電流を約0.0001から100A/m^(2)の範囲の電流密度に維持し、これらの3つのパラメータを慎重に設定して、電解めっきで生産できることが記載されているといえる。

3 めっきについての技術水準
本願の出願日前に公知である特開2001-110666号公報(以下、「刊行物」という。)には、電子部品のSnめっき層について
「電子部品のSnめっき層6を以下の表1?7に示す条件のめっき浴(実施例1?3、比較例1?4)を用いて形成し、平均結晶粒径の異なる数種類のSnめっき層を得た。Snめっき層の平均結晶粒径は、めっき浴の構成剤種とその比率や電流密度等のめっき条件により変化するため、めっき条件を調整することによって所望の平均結晶粒径を有するSnめっき層が得られた。」(段落【0014】)
との記載があり、比較例1ないし3には、電解めっきによるSnめっきのためのめっき浴の条件として、pH、温度(浴温)及び電流密度について、
「pH5.0、室温、0.2A/dm^(2)」(段落【0018】)
「pH6.0、室温、0.5A/dm^(2)」(段落【0019】)
「pH5.2、室温、0.4A/dm^(2)」(段落【0020】)
とすることが記載されている。
なお、「0.2A/dm^(2)」、「0.5A/dm^(2)」及び「0.4A/dm^(2)」は、それぞれ換算すると、「20A/m^(2)」、「50A/m^(2)」及び「40A/m^(2)」である。

4 実施可能要件の判断
刊行物の上記記載に照らせば、本願の発明の詳細な説明の「約3から11の範囲のpH、約10から100℃の範囲の温度、0.0001から100A/m^(2)の範囲の電流密度」は、Snめっき層を形成するにあたって、当業者が通常採り得る条件を含む数値範囲であるといえる。
また、「約3から11の範囲のpH、約10から100℃の範囲の温度、0.0001から100A/m^(2)の範囲の電流密度」の数値範囲は、pH、温度及び電流密度について著しく広範囲を特定しているといえる。

そして、発明の詳細な説明には、pH、温度及び電流密度の具体的な組合せが1例も記載されておらず、また、pH、温度及び電流密度それぞれを増減すると、どのような変化が生ずるのかについて、何ら記載されていない。

そうすると、本願の発明の詳細な説明の記載を参酌して、当業者が本願発明の金属フィルムを生産するためには、「約3から11の範囲のpH、約10から100℃の範囲の温度、0.0001から100A/m^(2)の範囲の電流密度」の中から、真に「単位胞次元のうちの別の次元に沿った格子拡散係数よりも遅くなる結晶単位胞の1つの次元の方向が、基板表面に対して実質的に垂直な方向を向いている結晶粒を、少なくとも80パーセントとする」ための、電解めっきのpH、温度及び電流密度の3つの条件の組合せを、独自に試行錯誤を繰り返して見い出す必要があるといえる。

したがって、本願の発明の詳細な説明は、電解めっきを行う際のpH、温度及び電流密度の3つの条件の組合せの調整について、当業者に過度の負担を強いることになるから、本願発明の金属フィルムの生産ができる程度に十分に記載されているとはいえない。

5 請求人の主張について
平成27年5月12日付け拒絶理由における「pH、温度、電流(電流密度)について、約3から11、約10から100℃、約0.0001から100A/m^(2)の数値範囲の開示では、組み合わせが無尽蔵にあって、めっきしたスズのc軸あるいは結晶単位胞の[001]方向が基板に対して実質的に垂直なものの割合を80パーセントを超えるようにすることは、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。」との指摘に対して、
請求人は、平成27年7月24日付け意見書において、
「(i)(垂直な方向が80%以上である)単位胞の向きについて段落0018に記載し、その単位胞の配向の決定をX線回折結晶学、後方散乱電子回折などの技法を使用して行うことを段落0025に記載しています。
(ii)(垂直方向が水平方向より遅い)拡散係数について段落0024に記載し、その異なる単位胞方向の拡散係数がすでに決定されており、文献から容易に入手可能であるか、または従来の技法を使用して決定することができ、異なる単位胞方向の拡散係数を決定するのに広く使用されている1つの技法が『Diffusionin Solids』、P. G. Shewmon、McGraw Hill New York、1963年およびその参照文献に記載されている関心の物質の放射性同位体であることを段落0025に記載しています。
(iii)平均結晶粒径が臨界結晶粒径より小さく、その平均結晶粒径など、結晶粒の特性を電子顕微鏡法を使用して決定することを段落0025に記載し、臨界結晶粒径GSが数3で表されることを段落0019に記載しています。」とし、
「明細書の記載、特に『結晶粒の成長速度および結晶学的配向ならびに結晶粒径は、pH、温度およびめっき電流の組み合わせによって決まる』および
『印加する電流が、約0.0001から100A/m^(2)の範囲の電流密度に維持される。電解めっき浴の水溶液が、めっきステップ320の全体を通じて、約3から11の範囲のpHに調整され、約3から11の範囲のpHに維持される。電解めっき浴の温度が、約10から100℃の範囲の温度に調整される』および
段落0025の記載(結晶粒の単位胞の配向の決定方法、異なる単位胞方向の拡散係数の決定方法、金属フィルムの平均結晶粒径決定方法)と段落0019の記載(臨界結晶粒径の決定方法)から、電流密度、pH、温度を記載の範囲に調整してめっきを行い、上記(i)-(iii)のようになっているかを、明細書記載の決定方法で判定し、(i)-(iii)のようになっている金属フィルムが、本願発明のフィルムとなります。(i)-(iii)のようになっているかの判定は『当業者が、本願発明の属する技術分野において研究開発(文献解析、実験、分析、製造等を含む)ための通常の技術的手段を用い、明細書及び図面に記載した事項と出願時の技術常識とに基づき、行えるものであり』、『当業者に期待しうる程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要はない』と考えます。」
と主張している。

しかしながら、単位胞次元のうちの別の次元に沿った格子拡散係数よりも遅くなる結晶単位胞の1つの次元の方向が、基板表面に対して実質的に垂直な方向を向いている結晶粒を、少なくとも80パーセントとすることを判定できるからといって、ただちに電解めっきのpH、温度及び電流密度の3つの条件の組合せが明らかになるわけでもなく、また、試行錯誤の数が減るわけでもないから、請求人の上記主張は、採用できない。

6 まとめ
以上のとおりであるから、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に十分に記載したものであるとはいえない。

第4 むすび
したがって、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないので、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-01-13 
結審通知日 2016-01-19 
審決日 2016-02-02 
出願番号 特願2011-516250(P2011-516250)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川内野 真介佐々木 正章遠藤 秀明飛田 雅之  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 内田 博之
冨岡 和人
発明の名称 エレクトロニクスパッケージ及びその製造方法  
代理人 古谷 聡  
代理人 西山 清春  

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