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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E04H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E04H
管理番号 1316207
審判番号 不服2015-6581  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-20 
確定日 2016-06-23 
事件の表示 特願2011-277650「支柱及び該支柱の立設方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年6月13日出願公開、特開2013-117146〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成23年12月1日の出願であって、平成27年2月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲及び明細書についての手続補正がなされ、平成27年10月15日付けで当審より拒絶の理由が通知され(以下「当審拒絶理由」という。)、これに対して、同年11月24日(同月26日受付)に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

当審拒絶理由は、次のとおりである。
(1)理由1:本件出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない(明確性要件違反)。
(2)理由2:本件出願は、特許請求の範囲の記載が、同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない(サポート要件違反)。
(3)理由3:この出願の請求項1及び2に係る発明は、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(進歩性欠如)。

2 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、平成27年11月24日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
空間部に沿って防球用ネット又はテント用シートを吊り張りするのに使用する支柱であって、該支柱が下部側を地中に埋設され地上に突出し、テーパー状に幅狭径に形成された上端側と、該上端側に嵌合方式やフランジ方式で上部支柱を嵌入する継部が形成された下部支柱と、前記継部に嵌入することで下部支柱に連結された上部支柱とに分割して形成され、且つ下部支柱が地面の硬柔条件に応じてコンクリートPC杭、又はフランジの形成された鋼管杭で構成し、上部支柱が防球用ネット又はテント用シートを吊り張りする高低が相違する場合に応じて長さの相違する鋼管ポール、又はコンクリートポールで構成された組み合わせであることを特徴とする支柱。」

3 拒絶理由1(明確性要件違反)について
(1)「下部支柱」について
ア 請求項1において「下部支柱が地面の硬柔条件に応じてコンクリートPC杭、又はフランジの形成された鋼管杭で構成し」と記載されているが、「地面の硬柔条件」と「コンクリートPC杭、又はフランジの形成された鋼管杭」との対応関係が不明である。すなわち、地面がどのような場合に、「コンクリートPC杭」、又は「フランジの形成された鋼管杭」のいずれになるのか(選択されるのか)、不明である。
イ また、「地面の硬柔条件」が明確でない。地面が硬いか、柔らかいかが条件であるとしても、その基準(程度)が不明である。
ウ さらに、本願発明は、「支柱」という物の発明であるところ、「下部支柱が地面の硬柔条件に応じてコンクリートPC杭、又はフランジの形成された鋼管杭で構成」するとの特定事項、とくに「地面の硬柔条件に応じて」との特定事項は、「下部支柱」の構造を特定するものではないので、物としての「支柱」も明確でない。例えば、下部支柱がコンクリートPC杭である場合に、コンクリートPC杭の構造が地面の硬柔条件に応じて構成(選択)したかどうかで違いはない。
(2)「上部支柱」について
ア 請求項1において「上部支柱が防球用ネット又はテント用シートを吊り張りする高低が相違する場合に応じて長さの相違する鋼管ポール、又はコンクリートポールで構成された」と記載されているが、「鋼管ポール、又はコンクリートポール」のそれぞれに「長さの相違する」ものがあるのか、「鋼管ポール、又はコンクリートポール」の種類によって「長さ」が「相違する」のかが、明確でない。「鋼管ポール、又はコンクリートポール」の種類によって「長さ」が「相違する」のであれば、「鋼管ポール、又はコンクリートポール」のうちのどれが長く、どれが短いかが明確でなく、また、ポール(の種類)を選択する際の吊り張りする高低(長さ)の基準も明確でない。
イ また、本願発明は、「支柱」という物の発明であるところ、「上部支柱が防球用ネット又はテント用シートを吊り張りする高低が相違する場合に応じて長さの相違する鋼管ポール、又はコンクリートポールで構成された」との特定事項は、「上部支柱」の構造を特定するものではないので、物としての「支柱」も明確でない。例えば、上部支柱が鋼管ポールである場合に、鋼管ポールの構造が上記特定事項によるものかどうかで違いはない。
(3)請求人の主張について
請求人の平成27年11月24日付け意見書(以下「意見書」という。)について検討する。

ア 請求人は、請求項1において、「地面の硬軟条件」と「コンクリートPC杭、鋼管杭又は鉄製杭」との対応関係が不明であり、その基準(程度)が不明であるとの指摘に対して、本願発明は通常地面に穿孔した孔内で型枠材を囲み、該型枠材にコンクリートを流し込み、下部支柱の下端側を挿入するが、地盤が硬い場合は、フランジの形成し易い鋼管杭を使用できる点で地盤に対する対応関係を明確にし、基準を明確にした、と主張している。

しかしながら、請求人の上記主張は以下のとおり採用できない。
請求人は「地盤が硬い場合は、フランジの形成し易い鋼管杭を使用できる点で地盤に対する対応関係を明確にし、基準を明確にした。」と主張するが、特許請求の範囲の請求項1には、「下部支柱が地面の硬柔条件に応じてコンクリートPC杭、又はフランジの形成された鋼管杭で構成し」と記載されているのみであるから、請求人の主張は特許請求の範囲の記載に基づかないものである。加えて、本願の図2(支柱の立設方法を示すフローチャート)には、「条件 地面柔」がYESの場合は鋼管杭、NOの場合はコンクリート杭との記載があり、請求人の上記主張は図2とも整合していないといえる。
また、「地盤が硬い場合は」とあるが、その基準(程度)が不明である。

イ 請求人は、請求項1において、「鋼管ポール、コンクリートポール又は鉄製ポール」のそれぞれに「長さの相違する」ものがあるのか、「鋼管ポール、コンクリートポール又は鉄製ポール」の種類によって「長さ」が「相違する」のであれば、「鋼管ポール、コンクリートポール又は鉄製ポール」のうちどれが長く、どれが短いかが明確でなく、また、ポールを選択する際の吊り張りする高低の基準も明確でないとの指摘に対して、鋼管ポールはコンクリートポール(型枠で形成するために)に対して容易に形成(長さ方向)することができ、コンクリートポールは鋼管ポールに対して経済的に構成することができる点で、長さの相違等は明確である旨を主張している。

しかしながら、請求人の上記主張は以下のとおり採用できない。
請求人は「鋼管ポールはコンクリートポール(型枠で形成するために)に対して容易に形成(長さ方向)することができ、コンクリートポールは鋼管ポールに対して経済的に構成することができる点で、長さの相違等は明確である」と主張し、当該主張は鋼管ポールがコンクリートポールより長いことを主張するものと解されるが、特許請求の範囲の請求項1には、「上部支柱が防球用ネット又はテント用シートを吊り張りする高低が相違する場合に応じて長さの相違する鋼管ポール、又はコンクリートポールで構成された」と記載されているのみであるから、請求人の主張は特許請求の範囲の記載に基づかないものである。
また、「容易に形成」できることや「経済的」であるとの観点からみた「長さ」の基準(程度)が不明である。

ウ 請求人は、物としての「支柱」が明確でないとの指摘に対して、「フランジの形成された」の補正により、物としての支柱を明確にしたと主張している。

しかしながら、請求人の上記主張は以下のとおり採用できない。
「フランジの形成された」との補正は、「鋼管杭」について補正するものであって、上記(2)イで述べたように、請求項1の「上部支柱が防球用ネット又はテント用シートを吊り張りする高低が相違する場合に応じて長さの相違する鋼管ポール、又はコンクリートポールで構成された」との特定事項は、「上部支柱」の構造を特定するものではないので、物としての「支柱」は明確でない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は明確でないので、本件出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

4 拒絶理由3(進歩性欠如)について
本願発明は、上記3のとおり記載不備があり、その要旨認定は困難であるが、次のとおりに解釈して、進歩性を検討する。
a 上記3(1)ア、イについて
「下部支柱が地面の硬柔条件に応じてコンクリートPC杭、又はフランジの形成された鋼管杭で構成」するとの特定事項は、下部支柱を、地面の硬さの違いにより、コンクリートPC杭、又はフランジの形成された鋼管杭を選択することと解する。
b 上記3(1)ウについて
「地面の硬柔条件に応じて」杭を選択する要件も、発明の構成要素であると解する。
c 上記3(2)アについて
「上部支柱が防球用ネット又はテント用シートを吊り張りする高低が相違する場合に応じて長さの相違する鋼管ポール、又はコンクリートポールで構成」するとの特定事項は、上部支柱を、(強度やコスト等一般的な条件に応じて)鋼管ポール、又はコンクリートポールを選択し、防球用ネット又はテント用シートを吊り張りする高低に応じた長さとすることと解する。
d 上記3(2)イについて
上記cで述べたような上部支柱を選択する要件も、発明の構成要素であると解する。

(1)刊行物1について
ア 刊行物1の記載事項
当審拒絶理由に刊行物1として引用された、本願出願前に頒布された実願平1-126084号(実開平3-63665号)のマイクロフィルム(以下「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下、同様。)。

(ア)「(1) 直円筒状の鋼管と、この鋼管の一端から間隔を置いて内部に固定した座板と、座板から他端の間の鋼管内面に一体に形成した内張コンクリートとを有する支柱と、元口が前記の鋼管の一端側の座板に接せしめられて鋼管内に挿入され、鋼管内面との間を流動性固化材で固着した鉄筋コンクリート製のテーパー柱とを備えている長尺コンクリート接続柱体。」(実用新案登録請求の範囲)
(イ)「〔産業上の利用分野〕
本考案は、照明柱やゴルフ用ネット柱として使用する地上からの高さが30?50mのような長尺なコンクリート接続柱体に関する。」(1頁13?16行)
(ウ)「従来、上記のような長大な柱を形成するには、第2図に示すように、直円筒状のプレストレストコンクリート管又は鉄筋コンクリート管6の一端から距離をおいて内部に支持板7を固定し、この支持板7を固定した側を上にして地面に植設し、鉄筋コンクリート製のテーパー柱1の元口(大径側端部)を鉄筋コンクリート管6内に挿入して支持板7の上に乗せ、鉄筋コンクリート管6とテーパー柱1の間にモルタルを充填して形成されている。この場合、鉄筋コンクリート管6の外径は1mで肉厚が約15cmにもなるので、テーパー柱1と鉄筋コンクリート柱6との段差がモルタル充填部を含めると20cm近くになり外観上あまり良くない。第3図に示すように、地際側(当審注:「地面側」の誤記と認める。)の支柱として直円筒状の鋼管8を用いると、外径80cm前後となつてテーパー柱1との段差が小さくなり外観は良くなるが、鋼管8の場合、座屈の恐れがあり、それを防止するため鋼管8の厚さを厚くするか鋼管8内にコンクリート9の充填が必要となり、施工費用が高くつく問題がある。」(1頁18行?2頁17行)
(エ)「第1図に本考案による長尺コンクリート柱体の実施例を示す。支柱2は直円筒状の鋼管3の一端から間隔を置いて内側に中空円盤状の座板5が内面に直角に熔接して固定してあり、他端に内側に溶接して固定した座板5との間の内面に膨張性コンクリートからなる内張コンクリート4が遠心成形により一体に形成されている。地上側の支柱2の鋼管3の外径は、地中基礎部分の支柱2の鋼管3の内側に挿入可能の大きさとしてある。一端から間隔を置いて内側に中空円盤状の座板5が内面に直角に熔接して固定した側を上にして、地中基礎部分の支柱2を地中に埋設してから地上側の支柱2を、一端から間隔を置いて内側に中空円盤状の座板5が内面に直角に熔接して固定した側を上にして、地中基礎部分の支柱2の上端内に嵌合して熔接するか、両者の間にモルタルを挿入して固定し、更に地上側の支柱2の上端にテーパー柱1の元口を座板5に乗せて挿入して、鋼管3の内面とテーパー柱1との間に無収縮モルタルを充填して固定されている。」(4頁8行?5頁7行)
(オ)「4.図面の簡単な説明
第1図は本考案による長尺コンクリート接続柱体の一実施例の半部断面側面図、第2図は従来の地面側支柱として鉄筋コンクリート管を用いた長尺コンクリート接続柱体の断面図、第3図は地面側支柱に鋼管を用いた従来の長尺接続柱体の断面図である。」(5頁12?18行)
(カ)上記記載事項(ウ)?(オ)を参照して第1?3図をみると、支柱2及び従来例の地面側支柱である鉄筋コンクリート管6及び鋼管8は、いずれも、下端側を地中に埋設され地上に突出していることが明らかである。

イ 上記アで摘記した事項からみて、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

「照明柱やゴルフ用ネット柱として使用する長尺なコンクリート接続柱体であって、直円筒状の鋼管3と、この鋼管3の一端から間隔を置いて内部に固定した座板5と、座板5から他端の間の鋼管3内面に一体に形成した内張コンクリートとを有する支柱2と、地中基礎部分の支柱2を地中に埋設し、地上側の支柱2の上端に元口が前記の鋼管3の一端側の座板5に接せしめられて鋼管3内に挿入され、鋼管3内面との間を流動性固化材で固着した鉄筋コンクリート製のテーパー柱1とを備えている長尺コンクリート接続柱体。」

(2)刊行物2について
ア 当審拒絶理由に刊行物2として引用された、本願出願前に頒布された実願平4-4286号(実開平6-8635号)のCD-ROM(以下「刊行物2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)「【請求項1】 上端を小径の開口に絞った下部ポールと、この下部ポールの上端開口に挿入して接続する上部ポールとからなり、下部ポール内の上端寄りの位置に、上部ポールの下端部が嵌合する内径を有し、内周に爪を突設した回り止め用のフランジを固定し、上部ポールの下部途中の周壁に下部ポールの上端開口周囲に当接する段部を形成し、この上部ポールの下端部周壁にフランジの爪に係合する切欠を下端縁で開放するように設けた街路灯用ポール。」
(イ)「【0006】
そこでこの考案は、下部ポールと上部ポールの接続部分の外観がスッキリと仕上り、部品点数の削減を図ることができる街路灯用ポールを提供することを課題としている。」

(3)周知例について
ア 当審拒絶理由に周知例として引用された、本願出願前に頒布された特開2009-167684号公報(段落【0001】,【0002】、図1などを参照。以下「周知例1」という。)には、防球ネットのポールを複数本の鋼管ポールを接合して形成することが開示されている。
イ 当審拒絶理由に周知例として引用された、本願出願前に頒布された特開平4-73381号公報(特許請求の範囲、第1図などを参照。以下「周知例2」という。)には、電柱(支柱)を基礎パイプ1、鋼管ポール2、コンクリートポール3とを結合して形成することが開示されている。また、第3頁右上欄9?15行、及び第1及び3図には、地中に埋設する基礎パイプ1(鋼管杭)や鋼管ポール2にフランジ4、5を形成することも開示されている。
ウ 当審拒絶理由に周知例として引用された、本願出願前に頒布された特開2008-240302号公報(段落【0012】,【0015】,【0018】、図1などを参照。以下「周知例3」という。)には、鋼管及びコンクリート複合ポールを、上下2つの部材で形成し、嵌合連結して形成することが開示されている。
エ 当審拒絶理由に周知例として引用された、本願出願前に頒布された特開2009-197554号公報(段落【0023】、図5などを参照。以下「周知例4」という。)には、コンクリート管11の上部に、鋼管32を挿入して連結したポールが開示されている。
オ 本願出願前に頒布された登録実用新案第3077137号公報(段落【0001】,【0015】,【0022】,【0023】、及び図1,6,7などを参照。以下「周知例5」という。)には、鋼管の支柱1を地中部3の上部に地上部2を嵌入して連結した構成が開示されている。また、段落【0007】,【0011】,【0016】、及び図1には、地中に埋設する鋼管の支柱1にプレート5を形成することが開示されている。

(4)本願発明の検討・判断
ア 対比
(ア)本願発明と刊行物1発明とを対比すると、
刊行物1発明の「コンクリート接続柱体」は、本願発明の「支柱」に相当し、以下同様に、「地中基礎部分」及び「地上側」の「支柱2」、「鉄筋コンクリート製の」「テーパー柱1」、(鋼管3内にテーパー柱1を)「挿入」することはそれぞれ、「下部支柱」、「コンクリートポールで構成された」「上部支柱」、「嵌合方式」で「嵌入」することに相当する。
また、刊行物1発明は、「地上側の支柱2の上端に元口が前記の鋼管3の一端側の座板5に接せしめられて鋼管3内に挿入され、鋼管3内面との間を流動性固化材で固着した鉄筋コンクリート製のテーパー柱1とを備えている」ものであるから、刊行物1発明の「鋼管3の一端側」(「鋼管3」は「支柱2」を構成するものであるから、「支柱2の一端側」であるともいえる。)の部分は、「鉄筋コンクリート製のテーパー柱1」が挿入(嵌入)されるものであるといえるので、本願発明1の「継部」に相当する。

(イ)したがって、両者は、以下の一致点で一致し、相違点1及び2で相違する。
(一致点)
「空間部に沿って防球用ネットを吊り張りするのに使用する支柱であって、該支柱が下端側を地中に埋設され地上に突出し、上端側に上部支柱を嵌合方式で嵌入する継部が形成された下部支柱と、前記継部に嵌入することで下部支柱に連結された上部支柱とに分割して形成され、上部支柱がコンクリートポールで構成された支柱。」

(相違点1)
「上部支柱」と「下部支柱」について、
本願発明は、「下部支柱が地面の硬柔条件に応じてコンクリートPC杭、又はフランジの形成された鋼管杭で構成し」、「上部支柱が防球用ネット又はテント用シートを吊り張りする高低が相違する場合に応じて長さの相違する鋼管ポール、又はコンクリートポールで構成された組み合わせである」のに対して、
刊行物1発明ではその特定がない点。

(相違点2)
「下部支柱」の「上端側」について、
本願発明は、「テーパー状に幅狭径に形成され」ているのに対して、
刊行物1発明ではその特定がない点。

イ 相違点1についての検討・判断
(ア)一般的に好適又は最適な材質の材料を選択・採用することは、当業者が通常行う程度のことであって、地中に埋設する杭(柱)を選定する際に地盤(土壌)の特性や支柱を作るコスト等を考慮することは当然のことといえる。
(イ)また、支柱(ポール)において、分割して形成した下部支柱と上部支柱とを接続して1本の支柱を形成することは、上記(3)の周知例1ないし5に記載されているように本願出願前から周知であって、支柱の材質も種々のものが採用されている。加えて、フランジを形成する鋼管杭についても、周知例2(とくに第3頁右上欄9?15行、第1及び3図)には、地中に埋設する基礎パイプ1(鋼管杭)や鋼管ポール2にフランジ4、5を形成することが開示され、また、周知例5(とくに段落【0007】,【0011】,【0016】、及び図1)には、地中に埋設する鋼管の支柱1にプレート5(フランジと機能的に同等のものと解される。)を形成することが開示されているから、本願出願前から周知であったといえる。
(ウ)刊行物1には、従来例ではあるが、本願発明の「下端側を地中に埋設され地上に突出」する「下部支柱」に相当する「地面側支柱」として、「コンクリートPC杭」及び「鋼管杭」に相当する「プレストレストコンクリート管」及び「鋼管」が例示されており、刊行物1発明はこれらに代えて、内張コンクリートと一体の鋼管を用いている。
(エ)上記(ア)ないし(ウ)で説示したことを踏まえると、条件に応じて、最適な材質の杭(柱)を採用することは、当業者が適宜なし得ることに過ぎないといえる。また、同様に、上部支柱に関しても、条件に応じて、最適な材質のポールを採用し、下部支柱と組み合わせることは、当業者が適宜なし得ることに過ぎないといえる。さらに、要求される長さのポールを採用することは、当然のことである。
(オ)以上のとおりであるから、刊行物1発明に周知技術を適用して、本願発明の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(予備的検討)
本願発明の相違点1に係る発明特定事項(とくに条件により杭やポールを選定する事項)は、上記「3の拒絶理由1(明確性要件違反)について」の(1)ウ及び(2)イで述べたように、物の発明を構成する「下部支柱」及び「上部支柱」の構造を特定するものではないから、例えば、下部支柱をコンクリートPC杭とし、上部支柱をコンクリートポールとする支柱や、下部支柱を鋼管杭とし、上部支柱を鋼管ポールとする支柱も含まれるが、その場合には、刊行物1や周知例1、2及び5など本願出願前から周知である支柱と何ら相違するところがないといえる。

ウ 相違点2についての検討・判断
上部と下部に分割されたポールを組み合わせるに際し、下部ポールの接続部である上端を小径に絞ることは、刊行物2に記載されており(上記(2)を参照。)、それによって、本願発明の「テーパー状」と同様に、上端側が「幅狭径に形成」されることになり、該技術を、刊行物1発明の支柱の上端側に採用することは適宜なし得ることである。

エ 請求人の主張について
(ア)請求人は、意見書において、本願の請求項1を「テーパー状に幅狭径に形成された上端側と、該上端側に嵌合方式やフランジ方式で上部支柱を嵌入する継部が形成された下部支柱」と、「地面の硬軟条件に応じてコンクリートPC杭、フランジの形成された鋼管杭」と補正することで、上記相違点1、相違点2との対比を明確にするとともに、各刊行物1及び刊行物2、及び周知技術との相違を明確としたので、本願の請求項1は決して当業者が容易に発明することのできるものでない、と主張している。

(イ)しかしながら、本願発明は、補正によっても、「下部支柱」及び「上部支柱」について、「下部支柱が地面の硬柔条件に応じてコンクリートPC杭、又はフランジの形成された鋼管杭で構成し」、「上部支柱が防球用ネット又はテント用シートを吊り張りする高低が相違する場合に応じて長さの相違する鋼管ポール、又はコンクリートポールで構成された」と特定されており、「下部支柱」が「コンクリートPC杭」又は「フランジの形成された鋼管杭」で構成されているとともに、「上部支柱」が「鋼管ポール」又は「コンクリートポール」で構成されいることが特定できるとしても、その他の構造が具体的に特定されておらず、従来技術のものとの差異が明確でない。
また、先にも述べたように、条件により杭やポールを選定する事項は、物の発明を構成する「下部支柱」及び「上部支柱」の構造を特定するものではない。
よって、請求人の主張は採用できない。

オ むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明、刊行物2に記載の技術事項、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

5 むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、また、本願発明は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-04-06 
結審通知日 2016-04-12 
審決日 2016-04-25 
出願番号 特願2011-277650(P2011-277650)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (E04H)
P 1 8・ 121- WZ (E04H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 夕起子  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 中田 誠
小野 忠悦
発明の名称 支柱及び該支柱の立設方法  

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