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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60C
管理番号 1316208
審判番号 不服2015-6859  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-10 
確定日 2016-06-23 
事件の表示 特願2014-12223号「ランフラットタイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年5月8日出願公開、特開2014-80195号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯 ・本願発明
本願は、平成20年10月7日に出願した特願2008-260737号(以下、「原出願」という。)の一部を平成26年1月27日に新たな特許出願としたものであって、平成27年1月6日付け(発送日:同年1月13日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その請求と同時に明細書を補正する手続補正書が提出されたものである。
そして、本願の請求項1ないし16に係る発明は、願書に添付した特許請求の範囲、平成27年4月10日に手続補正された明細書、及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
一対のビード部及び一対のサイドウォール部と、両サイドウォール部に連なるトレッド部とを有し、前記一対のビード部間にトロイド状に延在してこれら各部を補強するカーカスを具えるランフラットタイヤであって、
前記サイドウォール部のサイドゴムの50℃での損失正接(tanδ)が0.13以下であり、
接地部及びリム接触部以外のタイヤ表面の少なくとも一部に、溝部と突部とでなる乱流発生用凹凸部を延在させることを特徴とするランフラットタイヤ。」

2.引用文献及び引用発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の原出願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-256358号公報(以下、「引用文献1」という。)には、ランフラットタイヤに関し、図面とともに次の事項が記載されている。 (下線は、当審で付与。以下同様。)

(ア)「【請求項3】
一対のビード部及び一対のサイドウォール部と、両サイドウォール部に連なるトレッド部とを有し、前記一対のビード部間にトロイド状に延在してこれら各部を補強する一枚以上のカーカスプライからなるカーカスと、前記サイドウォール部の前記カーカスの内側に配置した一対のサイド補強ゴム層とを備えた空気入りタイヤにおいて、
前記サイドウォール部に、25℃における1%歪時の損失正接(tanδ)が0.15以下のゴム組成物を適用したことを特徴とする空気入りタイヤ。

(イ)「【0001】
本発明は、空気入りタイヤ、特にパンク時にも安全に走行できるサイド補強タイプのランフラットタイヤに関するものである。」

(ウ)「【0003】
しかしながら、タイヤの内圧が低下した状態での走行、所謂ランフラット走行においては、タイヤのサイドウォール部の変形が大きくなるにつれサイド補強ゴム層の変形も大き くなり、その結果、該サイド補強ゴム層の発熱が進んで、サイド補強ゴム層がその破壊限界を超えてしまい、タイヤが故障に至る危険性がある。」

(エ)「【0009】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、ランフラット走行時のタイヤの発熱が小さく、高いランフラット耐久性を有する空気入りタイヤを提供することにある。」

(オ)「【0022】
本発明の空気入りタイヤにおいては、サイドウォール部2に、25℃における1%歪時の損失正接(tanδ)が0.15以下のゴム組成物を適用することが好ましい。25℃における1%歪時の損失正接(tanδ)が0.15以下のゴム組成物は、低発熱性に優れるため、ランフラット走行時の発熱が小さく、サイドウォール部2の発熱、ひいてはタイヤ全体で見た際の発熱を抑制することができる。そのため、25℃における1%歪時の損失正接(tanδ)が0.15以下のゴム組成物をサイドウォール部2に適用することで、ランフラット走行時のサイド補強ゴム層5の温度上昇を抑制して、サイド補強ゴム層5の破壊を抑制し、タイヤのランフラット耐久性を向上させることができる。」

(カ)「【0029】
表1に示す配合処方のカーカスプライのコーティングゴム用ゴム組成物、表2に示す配合処方のサイドウォール用ゴム組成物、表3に示す配合処方のサイド補強ゴム層用ゴム組成物を常法に従ってそれぞれ調製した。また、得られたゴム組成物の損失正接(tanδ)及び動的弾性率(E')を下記の方法で測定した。結果を表1に示す。」
(キ)
「【0040】
また、実施例3の結果から明らかなように、サイドウォール部に、25℃における1%歪時の損失正接(tanδ)が0.15以下のゴム組成物を適用することで、ランフラット走行時のタイヤ内部の温度上昇を抑制して、タイヤのランフラット耐久性を向上させることができる。
【0041】
更に、実施例4の結果から明らかなように、カーカスプライのコーティングゴムに、25℃における1%歪時の損失正接(tanδ)が0.12以下のゴム組成物を適用しつつ、サイドウォール部に、25℃における1%歪時の損失正接(tanδ)が0.15以下のゴム組成物を適用することで、ランフラット走行時のタイヤ内部の温度上昇を更に抑制して、タイヤのランフラット耐久性を大幅に向上させることができる。
【0042】
以上の結果から、カーカスプライのコーティングゴム及びサイドウォール部の少なくとも一方に、25℃における1%歪時の損失正接(tanδ)が特定の値以下の低発熱性のゴム組成物を適用することで、ランフラット走行時のタイヤ内部の温度上昇を抑制して、タイヤのランフラット耐久性を改善できることが分る。」

(ク)段落【0032】の【表2】から、サイドウォール用のゴム組成物Eの損失正接(tanδ)が0.12であること、段落【0038】の【表4】から、サイドウォール用のゴム組成物Eを適用した実施例3、4があることが、看取しうる。

以上の記載事項、認定事項及び図示内容からみて、本願発明の記載ぶりに倣って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

〔引用発明〕
「一対のビード部及び一対のサイドウォール部と、両サイドウォール部に連なるトレッド部とを有し、前記一対のビード部間にトロイド状に延在してこれら各部を補強する一枚以上のカーカスプライからなるカーカスを具えるランフラットタイヤであって、
前記サイドウォール部に、25℃における1%歪時の損失正接(tanδ)が0.12のゴム組成物Eを適用したランフラットタイヤ。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の原出願の出願前に頒布された刊行物である国際公開2007/032405号(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ケ)「[0001] 本発明は空気入りタイヤに関し、特に劣化が生じやすいタイヤサイド部の温度低減を図ることができる空気入りタイヤに関する。
背景技術
[0002] 空気入りタイヤの温度上昇は、材料物性の変化といった経時的変化を促進したり、高速走行時にはトレッドの破損などの原因になり、耐久性の観点から好ましくない。特に、重荷重での使用となるオフザロードラジアル(ORR)タイヤ、トラックバスラジアル(TBR)タイヤや、パンク走行時(内圧0kPa走行時)のランフラットタイヤにおいては、耐久性を向上させるためにタイヤ温度を低減させることが大きな課題となっている。例えば三日月形補強ゴムを有するランフラットタイヤでは、パンク走行時に補強ゴムに径方向の変形が集中してこの部分が非常に高温に達し、耐久性に多大な影響を与える。」(明細書1頁4?14行)

(コ)「[0007] 本発明の特徴は、タイヤサイド部の少なくとも一部に溝部と突部とでなる乱流発生用凹凸部を延在させた空気入りタイヤであって、乱流発生用凹凸部の高さをh、ピッチをp、幅をwとしたときに、1.0≦p/h≦50.0、且つ1.0≦(p-w)/w≦100.0の関係を満足することを要旨とする。
[0008] 本発明では、乱流発生用凹凸部を故障の発生が起こりやすいタイヤサイド部に設けたことにより、この乱流発生用凹凸部で発生した空気の乱流でタイヤサイド部を放熱促進させることができる。タイヤを構成するゴムは熱伝導性の悪い材料であるため、放熱面積を拡大して放熱を促進させるよりも、乱流の発生を促進させて空気の乱流を直接タイヤサイド部に当てることによる放熱効果が大きくなると考えられる。」(明細書1頁27行?2頁8行)

3.対比、判断
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「一枚以上のカーカスプライからなるカーカス」は、前者の「カーカス」に相当するので、両者の一致点、相違点は、次のとおりである。

〔一致点〕
「一対のビード部及び一対のサイドウォール部と、両サイドウォール部に連なるトレッド部とを有し、前記一対のビード部間にトロイド状に延在してこれら各部を補強するカーカスを具えるランフラットタイヤ。」

〔相違点1〕
本願発明は、「サイドウォール部のサイドゴムの50℃での損失正接(tanδ)が0.13以下であ」るのに対して、
引用発明は、「サイドウォール部」の「ゴム組成物E」が、「25℃における1%歪時の損失正接(tanδ)が0.12」である点。

〔相違点2〕
本願発明は、「接地部及びリム接触部以外のタイヤ表面の少なくとも一部に、溝部と突部とでなる乱流発生用凹凸部を延在させる」のに対して、
引用発明は、かかる乱流発生用凹凸部が特定されていない点。

上記各相違点について以下検討する。
〔相違点1について〕
タイヤに用いられるゴム組成物の損失正接(tanδ)に関して、50℃における損失正接が、25℃のそれとほぼ同じか、あるいは低い値を示すことは周知であり(必要であれば特開2007-203809号公報の【図7】(b)、【図8】(b)や、横浜ゴム株式会社編、「自動車用タイヤの研究」、株式会社山海堂、平成7年4月15日発行、p.161?162、図5-14「tanδの温度依存性」を参照)、引用発明の25℃における損失正接が0.12であるゴム組成物Eは、通常、50℃においては少なくとも0.12以下の損失正接であると認められる。
してみると、引用発明は、相違点1に係る本願発明の構成を実質的に具備しているといえる。
また、引用発明においては、25℃における損失正接が0.12で好適な結果が得られていることを考慮すれば、50℃においても同程度の損失正接で同様の結果が得られることは当業者が容易に予測しうることであり、加えて、引用文献1の段落【0040】の「サイドウォール部に、25℃における1%歪時の損失正接(tanδ)が0.15以下のゴム組成物を適用することで、ランフラット走行時のタイヤ内部の温度上昇を抑制して、タイヤのランフラット耐久性を向上させることができる。」との記載から、損失正接(tanδ)が0.12より少し大きい0.13以下のゴム組成物であっても、ランフラット走行時のタイヤ内部の温度上昇を抑制できることは予測しうることであるから、引用発明のゴム組成物に、50℃における損失正接が0.13以下のものを採用し、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことともいえる。

〔相違点2について〕
引用文献2には、「ランフラットタイヤのタイヤ温度を低減させるために、タイヤサイド部の少なくとも一部に溝部と突部とでなる乱流発生用凹凸部を設け、放熱性を高めること」が記載されている。(以下、「引用文献2に記載されている事項」という。)
引用発明と引用文献2に記載されている事項とは、いずれもランフラットタイヤのサイドウォール部の発熱への対策に関する技術である点で共通するから、一層の発熱対策を講じるために、引用発明に引用文献2に記載されている事項を適用し、引用発明のサイドウォール部の少なくとも一部に溝部と突部とでなる乱流発生用凹凸部を形成することは、当業者であれば適宜になし得ることである。
よって、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)作用効果について
本願発明の作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載されている事項から当業者が予測できる範囲内のものであって、格別ではない。

なお、審判請求人は審判請求書((3)(b)(b-2)を参照。)において、次のように主張している。
「50℃でのtanδが0.13より高いと、乱流発生用凹凸部を設けたことによるタイヤ耐久性向上の相乗効果は見られませんでしたが、50℃でのtanδを0.13以下にすることによりタイヤ耐久性が著しく向上しました。
具体的には、乱流発生用凹凸部を設けても、50℃でのtanδ=0.14の場合はタイヤ耐久性が「6」しか向上せず、50℃でのtanδ=0.18の場合はタイヤ耐久性が「5」しか向上せず、顕著な向上は見られません(追加実験例1と本願参考例1の対比、本願比較例1と本願比較例4の対比、上記表4、上記図1)。即ち、タイヤの内圧を大気圧とした状態での走行テストにおける故障発生までの走行距離は、乱流発生凹凸部を設けても、50℃でのtanδ=0.14、tanδ=0.18の場合は5%長くなるだけです(上記表4)。このように、tanδが0.13超の場合、乱流発生用凹凸部を設けることによるタイヤ耐久性の向上は、tanδの値によって、ほとんど差が見られません。
一方、50℃でのtanδが0.13以下となると、タイヤ耐久性が顕著に向上します。例えば、乱流発生用凹凸部を設けることにより、tanδ=0.13ではタイヤ耐久性が「9」増加し、tanδ=0.12ではタイヤ耐久性が「12」増加します(本願実施例3と本願比較例3の対比、本願実施例2と本願比較例2の対比、上記表4、上記図1)。即ち、タイヤの内圧を大気圧とした状態での走行テストにおける故障発生までの走行距離が、tanδ=0.13では8%、tanδ=0.12では11%も長くなります(表4)。このように、tanδ>0.13の場合と異なり、tanδ=0.13を境に、乱流発生凹凸部を設けることでタイヤ耐久性が顕著に向上します。
このような効果は、引用文献1-5からは到底予測することはできない、極めて優れた効果です。」
しかしながら、本件明細書の【表3】の参考例1と実施例3を比較すると、50℃でのtanδの値が参考例1では0.14、実施例3では0.13であるが、タイヤ耐久性は参考例で120、実施例3では121であるから、その差は1であり、tanδ=0.13を境に、乱流発生凹凸部を設けることでタイヤ耐久性が顕著に向上しているとはいえない。
そして、引用発明は、サイドウォール部のゴム組成物の損失正接(tanδ)を0.12とすることで発熱を抑制するものであり、引用文献2に記載されている事項は、タイヤサイド部に乱流発生用凹凸部を設けることで放熱効果を得るものである。両者はいずれもサイドウォール部の熱に対する効果を奏するものであり、それらを組み合わせることにより、両者の効果が相俟ってサイドウォール部の熱対策の効果を奏することは当業者が容易に予測しうることといえる。
よって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載されている事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願発明(請求項1に係る発明)が特許を受けることができない以上、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-04-22 
結審通知日 2016-04-26 
審決日 2016-05-09 
出願番号 特願2014-12223(P2014-12223)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 水野 治彦  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 平田 信勝
島田 信一
発明の名称 ランフラットタイヤ  
代理人 杉村 憲司  
代理人 池田 浩  
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