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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1316212 |
審判番号 | 不服2015-7622 |
総通号数 | 200 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-04-23 |
確定日 | 2016-06-23 |
事件の表示 | 特願2010-260331号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月14日出願公開、特開2012-110428号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成22年11月22日の出願であって、平成26年9月9日付けで手続補正がなされたが、平成27年1月23日(発送日:1月27日)付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成27年4月23日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。 第2 本件補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1.本件補正の概要 本件補正は特許請求の範囲の請求項1の記載の補正であり、 補正前の、 「【請求項1】 遊技球が始動口に入賞することにより当たり抽選を行う抽選手段と、 特別図柄を変動表示させてから停止表示させ、停止表示させる特別図柄によって前記当たり抽選の結果を報知する抽選結果報知手段と、 前記特別図柄の変動表示が保留されている前記当たり抽選の抽選権利の回数を記憶する保留回数記憶手段と、 所定の点灯パターンで点灯するランプと、 所定の動作パターンで動作する可動役物と、 前記ランプの点灯および前記可動役物の動作を制御する制御手段とを備え、 前記制御手段は、前記保留回数記憶手段が記憶している前記抽選権利の回数が予め定められた上限の状態と当該上限未満の状態とにおいて、異なる点灯状態および/または異なる動作状態となるように、前記ランプおよび前記可動役物の少なくとも一方を制御する、遊技機。」 から、 補正後の 「【請求項1】 遊技球が始動口に入賞することにより当たり抽選を行う抽選手段と、 特別図柄を変動表示させてから停止表示させ、停止表示させる特別図柄によって前記当たり抽選の結果を報知する抽選結果報知手段と、 前記特別図柄の変動表示が保留されている前記当たり抽選の抽選権利の回数を記憶する保留回数記憶手段と、 所定の点灯パターンで点灯するランプと、 遊技盤上に設けられ、所定の動作パターンで動作する可動役物と、 前記ランプの点灯および前記可動役物の動作を制御する制御手段とを備え、 前記制御手段は、 前記保留回数記憶手段が記憶している前記抽選権利の回数が予め定められた上限の状態と当該上限未満の状態とにおいて、異なる点灯状態となるように前記ランプを制御すると共に異なる動作状態となるように前記可動役物を制御し、又は、異なる点灯状態となるように前記ランプを制御し、 前記抽選権利の回数が前記上限の状態の場合に前記ランプを第1の点灯パターンで点灯させ、前記抽選権利の回数が前記上限未満の状態の場合に前記ランプを前記第1の点灯パターンとは異なる第2の点灯パターンで点灯させる、遊技機。」 へ補正された(下線部は補正箇所を示す。)。 2.補正の適否 補正後の請求項1は、発明特定事項である「可動役物」を遊技盤上に設けられと特定するとともに、発明特定事項である「前記保留回数記憶手段が記憶している前記抽選権利の回数が予め定められた上限の状態と当該上限未満の状態」の制御を、「異なる点灯状態となるように前記ランプを制御すると共に異なる動作状態となるように前記可動役物を制御し、又は、異なる点灯状態となるように前記ランプを制御し、前記抽選権利の回数が前記上限の状態の場合に前記ランプを第1の点灯パターンで点灯させ、前記抽選権利の回数が前記上限未満の状態の場合に前記ランプを前記第1の点灯パターンとは異なる第2の点灯パターンで点灯させる」と特定したものである。 そして、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。 そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。 3.独立特許要件 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か、について以下に検討する。 (1)本件補正後の請求項1に係る発明 補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、上記1.の補正の概要において示したとおりのものである。 (2)刊行物に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である「特開2005-143983号公報」(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 保留球の数に応じて点灯させる複数の報知ランプを備えたパチンコ遊技機であって、 前記報知ランプの形状が、保留球の数が予め指定された指定数に到達した際に点灯させる指定ランプと、他の非指定ランプとで異なっていることを特徴とするパチンコ遊技機。 【請求項2】 保留球の数に応じて点灯させる複数の報知ランプを備えたパチンコ遊技機であって、 前記報知ランプの点灯色もしくは点灯パターンのうちの少なくとも一方を、保留球の数が予め指定された指定数に到達した際に点灯させる指定ランプと、他の非指定ランプとで異ならせる点灯変更手段を備えることを特徴とするパチンコ遊技機。 ・・・」 (イ)「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 ところで、従来のパチンコ遊技機では、全ての報知ランプの形状や点灯色が同一にされていると共に、互いに近接して配置されているため、どれだけの数の保留球が確保されているのかを遊技者が一見して把握することが困難であった。このため、確保されている保留球の数が上限数に到達しているにも関わらず、遊技者に遊技球の投入を継続させてしまい、遊技球を無駄に消費させてしまうという問題点があった。 【0006】 そこで、本発明は、遊技者に遊技球を無駄に消費させてしまうことを防止可能なパチンコ遊技機を提供することを目的とする。」 (ウ)「【0030】 図1(a)に示すように、パチンコ機1は、当該パチンコ機1の筐体である外枠3と、この外枠3に開閉自在に取り付けられた内枠5とを備える。 そして、内枠5には、遊技者に遊技を提供する遊技盤7と、遊技者が遊技盤7上への遊技球の発射操作を行うためのハンドル9と、遊技盤7における遊技の結果として当該パチンコ機1から賞品として払い出される遊技球(賞球)を貯留する上受け皿11と、上受け皿11が遊技球を貯留しきれなくなるなどして、上受け皿11から排出される遊技球を受ける下受け皿13と、遊技の態様に応じて点灯点滅させることにより、当該内枠5を装飾する内枠ランプ12と、遊技者が希望する保留球の上限数(以下、「希望数」いう。)を設定するための設定部53とが設けられている。ここで、設定部53には、遊技者が保留球の希望数を当該パチンコ機1の上限数(4個)付近の数(3個)に設定するための第1制限スイッチ531と、遊技者が保留球の希望数を当該パチンコ機1の上限数に設定するための第2制限スイッチ533と、遊技者がこれらの設定を解除するための解除スイッチ535とが設けられている(図1(b)参照。)。但し、設定部53では、常に上述の各種スイッチのいずれかが押下された状態となるように設定されている。」 (エ)「【0034】 次に、図2は、パチンコ機1における制御系統の構成ブロック図である。 図2に示すように、パチンコ機1には、CPUやROM、RAMなどを搭載してなり、当該パチンコ機1における遊技を統括する主制御基板31が具備され、この主制御基板31に、CPUやROM、RAMなどを搭載してなる各種制御基板や、各種装置を接続して当該パチンコ機1の制御系統が構築されている。 【0035】 即ち、主制御基板31には、まず、遊技球が始動ゲート27を通過したことを検出するゲートセンサ271と、始動入賞装置19の始動口に遊技球が投入されたことを検出する始動口センサ193と、始動入賞装置19の可動片191を駆動するソレノイド195とが接続されている。」 (オ)「【0044】 続いて、図4は、主制御基板31のCPUが実行する入賞処理の流れを示すフローチャートである。尚、主制御基板31のCPUは、始動口センサ193から遊技球の検出信号を受信する度に、本処理を起動する。 【0045】 図4に示すように、本処理が起動されると、主制御基板31のCPUは、まず、乱数格納領域における乱数rの数値を参照したのち(S100)、主制御基板31のRAMに確保された入賞記憶領域における乱数rの格納数S2が入賞記憶領域の上限数S3(上限数S3=4)に到達しているか否かを確認する(S105)。 【0046】 ここで、上限数S3に到達している場合には(S105:Yes)、S100にて参照した乱数rの数値を入賞記憶領域に格納することなく、本処理を直ちに後述のS150に移行したのち、本処理を終了する。一方、未到達である場合には(S105:No)、S100にて参照した乱数rを入賞記憶領域に格納したのち(S110)、主制御基板31のRAMに確保された希望数設定領域を参照して、希望数S1が設定されているか否かを確認する(S115)。そして、未設定である場合(S115:Yes、つまり、null値が設定されている場合)には、図柄制御基板37に、保留球(乱数r)が確保されている旨を示す非指定シンボル151b(図6(a)を参照。)をディスプレイ15に1つ追加表示させる(S120)。尚、この非指定シンボル151bは、その形状が楕円形に設定されている。 【0047】 一方、S115にて、希望数S1が設定されている場合には(S115:Yes)、入賞記憶領域における乱数rの格納数S2が希望数S1と一致しているか否かを確認する(S130)。ここで、不一致である場合には(S130:No)、本処理をS120に移行する一方、一致している場合には(S130:Yes)、図柄制御基板37に、指定シンボル151a(図6(b)参照)をディスプレイ15に1つ追加表示させる(S135)。尚、この指定シンボル151aは、非指定シンボル151bとは異なり、その形状が星形7角形に設定されている。」 (カ)「【0049】 そして、上述のようにS120やS165の処理を終了すると、賞球制御基板33に賞球の払出を行わせたのち(S150)、本処理を終了する。 続いて、図5は、主制御基板31のCPUが実行する保留球消化処理の流れを示すフローチャートである。尚、主制御基板31のCPUは、本処理を一定の周期にて繰り返し実行する。 ・・・ 【0052】 そして、S210にて取得した乱数rが「大当たり(「通常当たり」及び「確率変動当たり」などを含む。)」に該当しているのか否かを確認し(S230)、「大当たり」に該当していない場合(No:S230、つまり、「はずれ」に該当している場合)には、図柄制御基板37に、はずれ図柄(特別図柄15aが全て一致していない状態)をディスプレイ15に表示させたのち(S240)、本処理を終了する。 【0053】 一方、S230にて、「大当たり」に該当している場合には(S230:Yes)、図柄制御基板37に、大当たり図柄(特別図柄15aが全て一致した状態)をディスプレイ15に表示させる(S250)。そして、予め設定された大当たり遊技処理を実行したのち(S260)、本処理を終了する。」 (キ)「【0065】 例えば、上記実施形態では、遊技者が指定シンボル151aを一見して認識できるように、指定シンボル151aの形状を他の非指定シンボル151bと異ならせていたが、形状以外に、表示色や点滅などの表示パターンを異ならせても良い。 【0066】 又、上記実施形態では、保留球の数に応じた数だけのシンボル151を表示することにより、保留球の数を遊技者に示していたが、保留球の数に応じた1つのシンボルを表示することで保留球の数を示しても良い。この場合、保留球の数が上限数もしくは上限数付近に至った際に表示するシンボルの形状や表示色、表示パターンを他のシンボルと異ならせれば良い。」 (ク)「【0068】 又、上記実施形態では、主制御基板31のCPUは、保留球の数が上限数もしくは上限数付近に到達した際に、ランプ制御基板43に警告ランプ51を点灯させて、遊技球を無駄に消費しないように遊技者に注意を促していたが、これに代えて、音声制御基板39に注意を促す音声を出力させても良い。又、主制御基板31のCPUからの指令に応じて動作可能な模型などの可動物体(所謂ギミック)をパチンコ機1に設置しておいて、保留球の数が上限数もしくは上限数付近に到達した際に、この可動物体を動作させても良い。」 (ケ)上記(エ)には、始動入賞装置19の始動口に遊技球が投入されたことを検出する始動口センサ193が記載され、上記(オ)には、始動口センサ193から遊技球の検出信号を受信する度に、本処理を起動すること、乱数rの数値を参照したのち、乱数rの格納数S2が入賞記憶領域の上限数S3(上限数S3=4)に到達しているか否かを確認し、未到達である場合には、乱数rを入賞記憶領域に格納されることが記載され、上記(カ)には、CPUが実行する保留球消化処理において、取得した乱数rが「大当たり(「通常当たり」及び「確率変動当たり」などを含む。)」に該当しているのか否かを確認し、「大当たり」に該当している場合には大当たり図柄(特別図柄15aが全て一致した状態)をディスプレイ15に表示させることが記載されている。 したがって、遊技球が始動入賞装置19の始動口に投入されることにより乱数rの数値を参照し、CPUは大当たりに該当しているのか否かを確認し、「大当たり」に該当している場合には大当たり図柄(特別図柄15aが全て一致した状態)をディスプレイ15に表示させることが記載されているといえる。 (コ)上記(オ)の入賞記憶領域における乱数rの格納数S2は、上記(ア)の保留球の数に相当することは明らかである。そして、これらは大当たりに該当しているのか否かを確認する回数でもある。 したがって、入賞記憶領域は、保留球の数として大当たりに該当しているのか否かを確認する回数を記憶しているといえる。 (サ)上記(オ)において、CPUは本処理を起動し、入賞記憶領域における乱数rの格納数S2が希望数S1と一致しているか否かを確認し、一致する場合には、図柄制御基板37に、指定シンボル151a(図6(b)参照)をディスプレイ15に1つ追加表示させることが記載されている。 そして、上記(ウ)には、希望数S1が上限数S3(上限数S3=4)とすることが記載されている。また、上記(キ)には、指定シンボル151aを、形状以外の点滅などの表示パターンとしても良いことが記載されている。 そして、点滅などの表示パターンは、上記(ア)における報知ランプによる点灯パターンでもあることは明らかであり、上記本処理を起動するCPUにより制御される。 (シ)上記(ク)には、CPUからの指令に応じて動作可能な模型などの可動物体(所謂ギミック)をパチンコ機1に設置しておいて、保留球の数が上限数(もしくは上限数付近)に到達した際に、この可動物体を動作させても良いことが記載されている。 (ス)上記(ア)には、保留球の数に応じて点灯させる複数の報知ランプを備え、前記報知ランプの(点灯色もしくは)点灯パターンのうちの少なくとも一方を、保留球の数が予め指定された指定数に到達した際に点灯させる指定ランプと、他の非指定ランプとで異ならせる点灯変更手段を備えたパチンコ遊技機が記載されている。そして、上記(サ)のとおり、報知ランプはCPUにより制御される。 上記(ア)?(ク)の記載事項及び(ケ)?(ス)の認定事項を総合すると、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「遊技球が始動入賞装置19の始動口に投入されることにより乱数rの数値を参照し、大当たりに該当しているのか否かを確認するCPUと、 「大当たり」に該当している場合には大当たり図柄(特別図柄15aが全て一致した状態)を表示するディスプレイ15と、 保留球の数として大当たりに該当しているのか否かを確認する回数を記憶する入賞記憶領域と、 点滅などの点灯パターンで点灯する報知ランプと、 保留球の数が上限数に到達した際に動作する可動物体と、 報知ランプの点灯および可動物体を制御するCPUとを備え、 前記CPUは、 保留球の数に応じて点灯させる複数の報知ランプを備え、前記報知ランプの点灯パターンのうちの少なくとも一方を、保留球の数が予め指定された指定数に到達した際に点灯させる指定ランプと、他の非指定ランプとで異ならせる点灯変更手段を備えたパチンコ遊技機。」 (3)対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 (a)引用発明の「始動入賞装置19の始動口」、「投入」は、それぞれ、本願補正発明の「始動口」、「入賞」に相当する。また、引用発明の「大当たりに該当しているのか否かを確認するCPU」は、本願補正発明の「当たり抽選を行う抽選手段」に相当する。 したがって、引用発明の「遊技球が始動入賞装置19の始動口に投入されることにより乱数rの数値を参照し、大当たりに該当しているのか否かを確認するCPU」は、本願補正発明の「遊技球が始動口に入賞することにより当たり抽選を行う抽選手段」に相当する。 (b)引用発明の「大当たり図柄」は特別図柄15aが全て一致した状態であるが、「大当たり図柄」となって停止表示する前は、特別図柄15aは「ディスプレイ15」変動表示することは明らかである。また、引用発明の「大当たり図柄」は抽選の結果であり、「ディスプレイ15」は「抽選結果報知手段」でもある。 したがって、引用発明の「大当たり図柄(特別図柄15aが全て一致した状態)を表示するディスプレイ15」は、本願補正発明の「特別図柄を変動表示させてから停止表示させ、停止表示させる特別図柄によって前記当たり抽選の結果を報知する抽選結果報知手段」に相当する。 (c)引用発明の「保留球」は特別図柄15aの変動の保留であることは明らかである。そして、引用発明の「入賞記憶領域」は、大当たりに該当しているのか否か(当たり抽選)の回数を記憶しているから、本願補正発明の「保留回数記憶手段」に相当する。 したがって、引用発明の「保留球の数として大当たりに該当しているのか否かを確認する回数を記憶する入賞記憶領域」は、本願補正発明の「前記特別図柄の変動表示が保留されている前記当たり抽選の抽選権利の回数を記憶する保留回数記憶手段」に相当する。 (d)引用発明の「点滅などの点灯パターン」、「報知ランプ」は、それぞれ本願補正発明の「所定の点灯パターン」、「ランプ」に相当する。 したがって、引用発明の「点滅などの点灯パターンで点灯する報知ランプ」は、本願補正発明の「所定の点灯パターンで点灯するランプ」に相当する。 (e)引用発明の「可動物体」は本願補正発明の「可動役物」に相当する。そして、引用発明の「保留球の数が上限数に到達した際に動作する可動物体」は、CPUからの指示により動くものであるから、「所定の動作パターンで動作」することは明らかである。 したがって、引用発明の「保留球の数が上限数に到達した際に動作する可動物体」と本願補正発明の「遊技盤上に設けられ、所定の動作パターンで動作する可動役物」とは、「所定の動作パターンで動作する可動役物」である点で共通する。 (f)引用発明の「報知ランプの点灯および可動物体を制御するCPU」は、本願補正発明の「前記ランプの点灯および前記可動役物の動作を制御する制御手段」に相当することは明らかである。 (g)引用発明の「指定数」は上記(2)(サ)における「希望数S1」であり、「上限数S3(上限数S3=4)」とすることが可能であるから、引用発明の「保留球の数が予め指定された指定数に到達した際」は、本願補正発明の「前記保留回数記憶手段が記憶している前記抽選権利の回数が予め定められた上限の状態」に相当する。そして引用発明の「報知ランプの点灯パターンを」「保留球の数が予め指定された指定数に到達した際に点灯させる指定ランプと、他の非指定ランプとで異ならせる」ことは、本願補正発明の「上限の状態と当該上限未満の状態とにおいて、異なる点灯状態となるように前記ランプを制御する」ことに相当する。 そして、引用発明において「指定ランプ」における「報知ランプの点灯パターン」は、「非指定ランプ」における「報知ランプの点灯パターン」とは異なるから、前者を「第1の点灯パターン」、後者を「第2の点灯パターン」として区別することは可能である。 一方、本願補正発明において、「前記抽選権利の回数が予め定められた上限の状態と当該上限未満の状態とにおいて、異なる点灯状態となるように前記ランプを制御すると共に異なる動作状態となるように前記可動役物を制御し、又は、異なる点灯状態となるように前記ランプを制御し、」とあるように、本願補正発明は、「前記抽選権利の回数が予め定められた上限の状態と当該上限未満の状態とにおいて、」前記可動役物を制御をせず、異なる点灯状態となるようにランプを制御するのみの構成を含むものである。 したがって、引用発明の「前記CPUは、保留球の数に応じて点灯させる複数の報知ランプを備え、前記報知ランプの点灯パターンのうちの少なくとも一方を、保留球の数が予め指定された指定数に到達した際に点灯させる指定ランプと、他の非指定ランプとで異ならせる」は、本願補正発明の「前記制御手段は、前記保留回数記憶手段が記憶している前記抽選権利の回数が予め定められた上限の状態と当該上限未満の状態とにおいて、異なる点灯状態となるように前記ランプを制御すると共に異なる動作状態となるように前記可動役物を制御し、又は、異なる点灯状態となるように前記ランプを制御し、前記抽選権利の回数が前記上限の状態の場合に前記ランプを第1の点灯パターンで点灯させ、前記抽選権利の回数が前記上限未満の状態の場合に前記ランプを前記第1の点灯パターンとは異なる第2の点灯パターンで点灯させる」ことに相当する。 そうすると、上記(a)?(g)の対比から、両者は、 「遊技球が始動口に入賞することにより当たり抽選を行う抽選手段と、 特別図柄を変動表示させてから停止表示させ、停止表示させる特別図柄によって前記当たり抽選の結果を報知する抽選結果報知手段と、 前記特別図柄の変動表示が保留されている前記当たり抽選の抽選権利の回数を記憶する保留回数記憶手段と、 所定の点灯パターンで点灯するランプと、 所定の動作パターンで動作する可動役物と、 前記ランプの点灯および前記可動役物の動作を制御する制御手段とを備え、 前記制御手段は、 前記保留回数記憶手段が記憶している前記抽選権利の回数が予め定められた上限の状態と当該上限未満の状態とにおいて、異なる点灯状態となるように前記ランプを制御すると共に異なる動作状態となるように前記可動役物を制御し、又は、異なる点灯状態となるように前記ランプを制御し、 前記抽選権利の回数が前記上限の状態の場合に前記ランプを第1の点灯パターンで点灯させ、前記抽選権利の回数が前記上限未満の状態の場合に前記ランプを前記第1の点灯パターンとは異なる第2の点灯パターンで点灯させる、遊技機。」 において一致し、下記の点で相違する。 (相違点) 所定の動作パターンで動作する可動役物において、本願補正発明は遊技盤上に設けられているのに対し、引用発明はそのような特定がない点。 (4)判断 遊技盤上に可動役物を設けることは従来から周知のことであり、特に遊技機の演出効果を高める目的とし、表示装置の演出と連動させ、表示装置の上部、側部等の遊技盤上に設けることは例示するまでもなく周知の技術であり、特に、大当たり時において可動役物を所定の動作パターンで動作することも周知の技術である。そして、可動役物の動作により大当たりを報知することは、これ以上、始動口に向けた遊技球の入球を要さないことを報知することでもある。 一方、引用発明において可動役物を設ける場所について特定されていないが、上記(2)(ク)には、警告ランプ51の点灯に代えて、可動物体を動作させる旨の記載がある。そして、上記(2)で認定は省略しているが刊行物1の【図1】には、警告ランプ51は遊技盤上に設けられていることから、可動役物も警告ランプ51とさほど離れていないところにある可能性は高い。 そうすると、引用発明の可動役物を前記周知技術を参照して遊技盤上に設け、前記相違点に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得ることである。 そして、本願補正発明の効果は、引用発明、周知技術からみて格別なものではない。 よって、本願補正発明は引用発明及び周知技術に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定に基づいて特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (5)審判請求人の主張について なお、審判請求人は請求書において、「つまり、本発明は、ランプを、保留数が上限未満のときも上限のときも作動させ(点灯させ)、上限未満のときと上限のときとで作動パターン(点灯パターン)を異ならせるものです(以下、本発明の特徴という)。 この特徴によって、本発明によれば、保留数が上限未満のときもランプを作動させることができるので、ランプを用いて、光による演出を継続的に実行しながら保留数が上限であるか否かを報知できるという顕著な効果を奏します(以下、本発明の効果という)。」(請求書第3頁)と主張している。 しかしながら、上記(3)(g)で検討したとおり、引用発明は、保留数が上限のときと上限未満のときで、報知ランプによる点灯パターンを異ならせるものであり、上記と同様の効果を奏するものである。 したがって、請求人の主張は採用できない。 4 むすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年9月9日付けの手続補正書により補正された、上記第2の1.で前述した特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 【請求項1】 遊技球が始動口に入賞することにより当たり抽選を行う抽選手段と、 特別図柄を変動表示させてから停止表示させ、停止表示させる特別図柄によって前記当たり抽選の結果を報知する抽選結果報知手段と、 前記特別図柄の変動表示が保留されている前記当たり抽選の抽選権利の回数を記憶する保留回数記憶手段と、 所定の点灯パターンで点灯するランプと、 所定の動作パターンで動作する可動役物と、 前記ランプの点灯および前記可動役物の動作を制御する制御手段とを備え、 前記制御手段は、前記保留回数記憶手段が記憶している前記抽選権利の回数が予め定められた上限の状態と当該上限未満の状態とにおいて、異なる点灯状態および/または異なる動作状態となるように、前記ランプおよび前記可動役物の少なくとも一方を制御する、遊技機。」 1.刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1の記載事項、引用発明は、上記第2の3.(2)に記載したとおりである。 2.対比・判断 本願発明と引用発明を前記第2の3.(3)を参考にして対比すると、 本願発明は、前記抽選権利の回数が予め定められた上限の状態と当該上限未満の状態とにおいて、異なる動作状態となるように前記可動役物を制御するのに対し、引用発明はそのような特定がない点において相違し、残余の点で一致する。 前記相違点について検討する。 本願発明の「前記抽選権利の回数が予め定められた上限の状態と当該上限未満の状態とにおいて、異なる動作状態となるように前記可動役物を制御する」ことは、上記請求項1の記載から、「前記抽選権利の回数が予め定められた上限の状態と当該上限未満の状態とにおいて、異なる点灯状態に前記ランプを制御することなく、異なる動作状態となるように前記可動役物を制御する」と解釈できる。 しかしながら、刊行物1には、上記第2の3.(2)(ク)において、保留球の数が上限数もしくは上限数付近に到達した際に、警告ランプ51を点灯させるのに代えて、可動物体を動作させても良いとの記載がある。したがって、点灯ランプや警告ランプの点灯に代えて、可動物体のみを動作させることが示唆されているといえるから、上記相違点に係る本願発明の構成は引用発明及び刊行物1の記載事項から当業者が容易に行い得るものである。 そして、本願発明の効果は引用発明からみて格別なものではない。 よって、本願発明は引用発明及び刊行物1の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 3.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項第の規定に基づいて特許を受けることができないものである。 したがって、本願は拒絶すべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-04-22 |
結審通知日 | 2016-04-26 |
審決日 | 2016-05-09 |
出願番号 | 特願2010-260331(P2010-260331) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 澤田 真治 |
特許庁審判長 |
瀬津 太朗 |
特許庁審判官 |
加舎 理紅子 本郷 徹 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 特許業務法人 小笠原特許事務所 |