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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60N
管理番号 1316213
審判番号 不服2015-7819  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-27 
確定日 2016-06-23 
事件の表示 特願2011-146867「座席装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月24日出願公開、特開2013- 14180〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成23年6月30日付けの特許出願であって、平成26年12月19日付けで手続補正書が提出され、平成27年1月16日付けで拒絶の査定がなされ(同査定の謄本の送達(発送)日 同月27日)、これに対し、同年4月27日に拒絶査定に対する審判請求及びこれと同時にする手続補正がなされ、さらに、当審において、平成28年1月13日付けで拒絶理由を通知したところ、指定期間内の同年3月22日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願の発明
本願の請求項1に係る発明は、上記の平成28年3月22日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(以下「本願発明」という。)。
「開口を有する座部のフレームと、
前記フレームの前後方向に沿って前記開口に張り渡される線材で成る複数本のばねと、
前記複数本のばねのうち、少なくとも2本のばねの一部を横断する台座と、
前記台座の座面側に配置される感圧スイッチと、
前記複数本のばねに対して、前記台座及び前記感圧スイッチを挟んだ状態で置かれるクッションパッドとを備え、
前記台座は、前記クッションパッドの下方に前記座面側が位置する状態で、少なくとも前記フレームの左右方向で向かい合う2本のばねに支持されるばね部位を有し、
前記感圧スイッチは、ヒップポイントよりも前方であって前記2本のばねの一方の前記ばね部位と、前記2本のばねの他方の前記ばね部位とを結ぶ直線上に配置されることを特徴とする座席装置。」

3.当審で指摘した拒絶理由の概要
当審において平成28年1月13日付けで通知した拒絶の理由は、特許法第36条第6項第2号の規定に係る理由1と、同第29条第2項の規定に係る理由2であるが、そのうち拒絶の理由2の概要は、本願の請求項1ないし3、5の発明は,本願の出願前の平成23年6月2日に頒布された特開2011-105277号公報(以下「引用例1」という。)、同じく平成20年8月14日に頒布された特開2008-183977号公報(以下「引用例2」という。)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願の前記各請求項の発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとするもので、以下、この拒絶の理由2について検討する。

4.引用例の記載事項と引用発明
(1)引用例1には、図面と共に次の事項が記載されている。(なお、下線は審決で付した。以下同じ。)
ア.「【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明による着座検知装置を車両用シートに適用した一実施形態について図面を参照して説明する。図1はその車両用シート10の全体構成を示す斜視図であり、図2は着座検知装置30を含む部分の拡大断面図であり、図3は車両用シートに取り付けられた着座検知装置30を示す斜視図であり、図4は着座検知装置30を示す斜視図である。
【0026】
車両用シート10は、第1及び第2のシートトラック機構11,12、第1及び第2のロアアーム13,14、バックフレーム16、前方クッションフレーム17、Sばね18、連結シャフト19、およびクッション部材21を備えている。
【0027】
第1のシートトラック機構11は、シートのアウタ側に配置され、フロア側に設けられる第1のロアレール11aと、この第1のロアレール11aに摺動可能に係合する第1のアッパレール11bとからなる。同様に、第2のシートトラック機構12は、シートのインナ側に配置され、フロア側に設けられる第2のロアレール12aと、この第2のロアレール12aに摺動可能に係合する第2のアッパレール12bとからなる。
【0028】
第1及び第2のアッパレール11b,12b上には、サイドフレームとしての第1及び第2のロアアーム13,14が平行リンクを用いたリフト機構を介して設けられている。リフト機構の操作ハンドル15は、第1及び第2のロアアーム13,14の昇降を禁止されているロック状態を、第1及び第2のロアアーム13,14の昇降を許可するアンロック状態に移行させるものである。」
イ.「【0031】
そして、複数のSばね18が、第1のシートトラック機構11側のリフト機構の動きを第2のシートトラック機構12側のリフト機構へ伝達する連結シャフト19と前方クッションフレーム17との間に掛止されている。Sばね18は、クッション部材21を下方から支承する支承部材である。」
ウ.「【0032】
そして、図1、図2に示すように、クッション部材21の下方には、着座検知装置30がSばね18に取付支持されている。なお、クッション部材21の表面は、皮革や繊維やモケット等の表皮22で覆われている。
【0033】
着座検知装置30は、図3、図4に示すように、荷重検知装置40とホルダ50を備えている。
荷重検知装置40は、主として図5に示すように、フィルム状(シート状)に形成されたメンブレンスイッチ41とコネクタ42を備えている。メンブレンスイッチ41は、検出部41aと出力部41bを備えている。検出部41aは、車両用シート10のクッション部20のクッション部材21の下方に配置され荷重情報を検出するものである。
【0034】
検出部41aは、図2(b)に示すように、上部フィルム41a1、下部フィルム41a2、および離隔保持部41a3を備えている。上部フィルム41a1は、上面(外面)がクッション部材21の下面に当接し、内面中央に接点41a4が設けられている。下部フィルム41a2は、下面(外面)がスペーサ60の上面に当接し、内面中央に接点41a5が設けられている。離隔保持部41a3は、上部フィルム41a1および下部フィルム41a2の間に外周縁に沿って介装されている。離隔保持部41a3の硬度は、クッション部材21やスペーサ60の硬度より大きい値に設定されている。これら部材は、弾性材で形成されている。接点41a4と接点41a5は空間をおいて対向するように配設されている。
【0035】
このように構成された検出部41aにおいて、クッション部材21に荷重が加わると、クッション部材21とスペーサ60の硬度が等しい場合には、図2(c)に示すように、上部フィルム41a1はクッション部材21からの荷重により下方に撓み、下部フィルム41a2はスペーサ60からの反力により上方に撓んで、接点41a4と接点41a5が当接する。これにより、検出部41aがオンするので荷重情報を検出することができる。このとき、上部および下部フィルム41a1,41a2の撓み量は同量となる。また、荷重は上部フィルム41a1に集中するため、感度は下がる。」
エ.「【0039】
ホルダ50は、図3、図4、図6に示すように、荷重検知装置40を支承部材であるSばね18に支持させるものであり、ロ字状に形成された板状部材である。ホルダ50は、互いに対向して並設された第1および第2板状部材51,52、および第1および第2板状部材51,52を連結する第1および第2連結部材53,54を備えている。
【0040】
第1板状部材51は、細長い板状に形成された部材であり、その両端がSばね18aの対向する2つの部分18a1,18a2の上部に装架されるようになっている。部分18a1は前側の部分であり、部分18a2は後側の部分である。
【0041】
第1板状部材51の一端(前端)には、Sばね18aの前側部分18a1に脱着可能に係止される第1係止部51aが形成されている。第1係止部51aは、下向きの開口を有しており、その内径はSばね18aより若干小径に形成されている。第1係止部51aは、Sばね18aに外嵌されているので、Sばね18aに対して径方向(車両の前後方向)に相対移動が規制されるものの、Sばね18aの軸方向(車両の左右方向)に相対移動が可能である。
【0042】
第1板状部材51の他端(後端)には、Sばね18aの後側部分18a2に脱着可能に係合される第1係合部51bが形成されている。第1係合部51bは、前側向きの開口(水平方向に開口する)を有する断面細長い溝状に形成されており、その内径はSばね18aより若干大径またはほぼ同径に形成されている。第1係合部51bは、Sばね18aに対して径方向(車両の前後方向)に相対移動が可能であり、かつSばね18aの軸方向(車両の左右方向)に相対移動が可能である。
なお、第1係止部51aおよび第1係合部51bは、クッション部材21を支承するSばね18(18a)に取り付けられる取付部である。
【0043】
このように構成された第1板状部材51によれば、乗員が着座した際に、Sばね18aが伸びて前側部分18a1と後側部分18a2との間が拡張しても、その拡張を妨げることはなく、かつ、Sばね18a上に第1板状部材51を確実に支持することができる。
【0044】
また、第1板状部材51には、受圧部51cが形成されている。受圧部51cは、第1係止部51aおよび第1係合部51bを介してSばね18(18a、18b)に支持されるとともに荷重検出装置40の検出部41aの下方に配置され該検出部41aを少なくとも介してクッション部材21からの圧力を受けるものである。受圧部51cは、第1板状部材51の両端の間に凹状に形成されている。」
オ.「【0047】
第2板状部材52は、細長い板状に形成された部材であり、第1板状部材51と同じ長さに設定されている。第2板状部材52の両端は、Sばね18b(Sばね18aに隣り合うSばねである。)の対向する2つの部分18b1,18b2の上部に装架されるようになっている。部分18b1は前側の部分であり、部分18b2は後側の部分である。
【0048】
第2板状部材52の一端(前端)には、Sばね18bの前側部分18b1に脱着可能に係止される第2係止部52aが形成されている。第2係止部52aは、第1係止部51aと同様に形成されている。第2板状部材52の他端(後端)には、Sばね18bの後側部分18b2に脱着可能に係合される第2係合部52bが形成されている。第2係合部52bは、第1係合部51bと同様に形成されている。なお、第2係止部52aおよび第2係合部52bは、クッション部材21を支承するSばね18(18b)に取り付けられる取付部である。
【0049】
このように構成された第2板状部材52によれば、乗員が着座した際に、Sばね18bが伸びて前側部分18b1と後側部分18b2との間が拡張しても、その拡張を妨げることはなく、かつ、Sばね18b上に第2板状部材52を確実に支持することができる。
【0050】
また、第2板状部材52には、荷重検知装置40の出力部41bが接続されているコネクタ42が固定される固定部52cが形成されている。固定部52は、第2板状部材52の両端の間であってその下面に形成されている。固定部52はコネクタ42の固定部用係合部42aが係脱可能に取り付けられるようになっている。なお、固定部52を設けないように構成するようにしてもよい。」
カ.図1の開示から、第1及び第2のロアアーム13,14(サイドフレーム)と、前方クッションフレーム17及び連結シャフト19について着目すると、これらの部材によって四辺形が構成されていて、この四辺形の内部領域は開口といえ、また、この開口は、車両用シートの座部が形成される領域であるから、第1及び第2のロアアーム13,14(サイドフレーム)と、前方クッションフレーム17及び連結シャフト19によって、開口を有する座部のフレームが構成されていることが看取できるといえる。

上記の記載事項及び図示内容を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「着座検知装置を適用した車両用シートであって、
車両用シート10は、第1及び第2のシートトラック機構11,12、サイドフレームである第1及び第2のロアアーム13,14、バックフレーム16、前方クッションフレーム17、Sばね18、連結シャフト19、およびクッション部材21を備えていて、
第1及び第2のロアアーム13,14(サイドフレーム)と、前方クッションフレーム17及び連結シャフト19によって、開口を有する座部のフレームが構成されており、
複数のSばね18が、連結シャフト19と前方クッションフレーム17との間に掛止されて、クッション部材21を下方から支承する支承部材とされ、クッション部材21の下方には、荷重検知装置40とホルダ50を備える着座検知装置30がSばね18に取付支持されており、
荷重検知装置40は、フィルム状(シート状)に形成されたメンブレンスイッチ41とコネクタ42を備え、メンブレンスイッチ41は、検出部41aと出力部41bを備え、検出部41aは、車両用シート10のクッション部材21の下方に配置されて荷重情報を検出するものであって、内面中央に接点41a4が設けられた上部フィルム41a1、内面中央に接点41a5が設けられた下部フィルム41a2、および離隔保持部41a3を備えていて、検出部41aにおいて、クッション部材21に荷重が加わると、接点41a4と接点41a5が当接して、検出部41aがオンすることにより荷重情報を検出することができ、
ホルダ50は、荷重検知装置40を支承部材であるSばね18に支持させるロ字状に形成された板状部材であって、互いに対向して並設された第1および第2板状部材51,52と、第1および第2板状部材51,52を連結する第1および第2連結部材53,54とを備えており、
第1板状部材51の一端(前端)には、Sばね18aの前側部分18a1に脱着可能に係止される第1係止部51aが形成され、他端(後端)には、Sばね18aの後側部分18a2に脱着可能に係合される第1係合部51bが形成されて、第1板状部材51の両端がSばね18aの対向する2つの部分18a1,18a2の上部に装架されるようになっており、また、第1板状部材51には、受圧部51cが形成され、受圧部51cは、第1係止部51aおよび第1係合部51bを介してSばね18(18a、18b)に支持されるとともに荷重検出装置40の検出部41aの下方に配置され、該検出部41aを介してクッション部材21からの圧力を受けるものであり、
第2板状部材52の一端(前端)には、Sばね18b(Sばね18aに隣り合うSばね)の前側部分18b1に脱着可能に係止される第2係止部52aが形成され、他端(後端)には、Sばね18bの後側部分18b2に脱着可能に係合される第2係合部52bが形成されて、第2板状部材52の両端は、Sばね18b(Sばね18aに隣り合うSばね)の対向する2つの部分18b1,18b2の上部に装架されるようになっており、第2係止部52aおよび第2係合部52bは、クッション部材21を支承するSばね18bに取り付けられる取付部とされ、また、第2板状部材52には、荷重検知装置40の出力部41bが接続されているコネクタ42が固定される
車両用シート。」

(2)引用例2には、図面と共に以下の事項が記載されている。
ア.「【0012】
始めに、実施例1の車両用シート1の構成について、図1?図7を用いて説明する。
ここで、図1には、本実施例の車両用シート1の概略構成が斜視図によって表されている。この車両用シート1は、フォークリフト等の産業車両に搭載される操縦座席として適用されている。ここで、本実施例で対象とする産業車両には安全装置が設けられており、作業者が車両用シート1に着座した状態が検知されていないと車両を動かしたりフォークを作動させたりする機械操作が行えないようになっている。
この車両用シート1への着座の検知は、着座部となるシートクッション3の形状内部に配設された第1の着座センサー10や第2の着座センサー20によって行われるようになっている。この第1の着座センサー10や第2の着座センサー20は、その少なくとも一方の着座センサーが作業者の着座を検知した状態となっていれば、着座の検知状態を維持できる構成となっている。以下、車両用シート1の各部の構成について詳しく説明していく。
【0013】
この車両用シート1は、背凭れ部となるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、を有する。ここで、シートバック2は、鉄製の骨格部(図示省略)に発泡ウレタン製のクッションパッド2Pが組み付けられた構成となっている。そして、シートクッション3は、樹脂製の骨格部(図示省略)に発泡ウレタン製のクッションパッド3Pが組み付けられた構成となっている。これらクッションパッド2P,3Pは、その着座面側に塩化ビニル製の表皮2C,3Cがそれぞれ一体成形されている。
ここで、図2には、シートクッション3の構成部品が分解斜視図によって表されている。同図に示されるように、シートクッション3の骨格を成す樹脂製のクッションフレーム3Fには、第1の着座センサー10の検知スイッチとなる押ボタン式のリミットスイッチ11が設けられている。」
イ.「【0014】
このリミットスイッチ11は、クッションフレーム3Fに下側から挿通されることによってクッションフレーム3Fの上面部に突出した態様で組み付けられている。そして、このクッションフレーム3Fの上面部には、薄い鉄板状の受圧板12が設けられている。この受圧板12は、シートクッション3の着座領域の中央部、すなわち作業者が車両用シート1に着座した際に体重が圧し掛かる着座領域の中央位置に配置されている。なお、受圧板12は、図2ではリミットスイッチ11の配設位置を分かり易く示すために上方に反り返して描かれているが、実際には図3に示されるように、その自由状態ではリミットスイッチ11の上側に非接触状態で覆い被さる平板状の形状状態を維持するようになっている。
この受圧板12は、可撓性を有しており、作業者が車両用シート1に着座した際の着座荷重によってクッションパッド3Pに押圧されて図示下方に撓み変形するようになっている。
ここで、受圧板12を下側から受けるクッションフレーム3Fの上面部の受面形状は、凹状に湾曲した形状に形成されている。これにより、通常時における受圧板12とクッションフレーム3Fの上面部との間には、一定の隙間が形成されている。そして、受圧板12は、作業者がシートクッション3に着座することにより、その着座荷重を受けてクッションフレーム3Fの上面部に向けて図示下方に撓み変形する。これにより、リミットスイッチ11が押下されてその内部で接点同士が通電可能に接触し、作業者が車両用シート1に着座した状態が検知される。
また、受圧板12は、作業者が車両用シート1から離席したり体を浮かした姿勢状態となったりすることにより、その弾性により撓み変形する前の形状状態に戻る。これにより、リミットスイッチ11の押下状態が解除され、着座の検知状態が解除される。
なお、リミットスイッチ11の基本的構成は一般的な公知のものであるため、これについての詳細な説明は省略する。」
ウ.「【0015】
そして、図2に戻って、クッションパッド3Pとクッションフレーム3Fとの間には、第2の着座センサー20の検知スイッチである長尺面状のメンブレンスイッチ21が設けられている。
このメンブレンスイッチ21は、図5及び図6に示されるように、複数の薄膜状のフィルムが積層された構成となっており、シートクッション3の周縁形状に沿った「コ」符号状に延びる形状に形成されている。なお、図6では、メンブレンスイッチ21の積層構造を分かり易く示すために、各層の厚みが実際の厚みよりも誇張して描かれている。
図2に戻って、このメンブレンスイッチ21のシートクッション3の前端側の周縁部や幅方向の両周縁部に配置される長さ方向の6箇所の位置には、内部に円形状の空間部21T・・(・・は複数を表す)を有した押圧式のスイッチ部が形成されている(詳しくは図5参照)。このメンブレンスイッチ21は、空間部21T・・の形成されたいずれかの部位に作業者の着座に伴う図示下方への押圧荷重が作用することにより、空間部21T・・が厚さ方向に押し潰されるかたちで押圧操作される。これにより、空間部21T・・に設けられた接点同士が通電可能に接触し、作業者の着座状態が検知される。
ここで、図1に戻って、クッションパッド3Pは、その前端側の周縁部や幅方向の両周縁部が着座領域の中央部よりも上方に盛り上がった形状に形成されている。これにより、車両用シート1に着座した作業者が着座姿勢から体を前に乗り出したり横に傾けたりした際に、重心の移動に伴ってシートクッション3の周縁部に体重がかかり易くなっている。したがって、このように作業者の着座姿勢が変化した場合には、シートクッション3の周縁部に沿って配設されたメンブレンスイッチ21によって乗員の着座状態が検知される。
以下、メンブレンスイッチ21の構成について詳しく説明する。」

上記の記載事項からみて、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「着座の検知は、着座部となるシートクッション3の形状内部に配設された第1の着座センサー10や第2の着座センサー20によって行われる車両用シート1において、
受圧板12は、シートクッション3の着座領域の中央部、すなわち作業者が車両用シート1に着座した際に体重が圧し掛かる着座領域の中央位置に配置されており、作業者がシートクッション3に着座することにより、その着座荷重を受けてクッションフレーム3Fの上面部に向けて図示下方に撓み変形し、これにより、第1の着座センサー10の検知スイッチとなるリミットスイッチ11が押下されてその内部で接点同士が通電可能に接触し、作業者が車両用シート1に着座した状態が検知され、
第2の着座センサー20の検知スイッチである長尺面状のメンブレンスイッチ21は、シートクッション3の前端側の周縁部や幅方向の両周縁部に配置され、その配置される長さ方向の6箇所の位置には、内部に円形状の空間部21T・・(・・は複数を表す)を有した押圧式のスイッチ部が形成されており、作業者の着座に伴う押圧荷重が作用することにより、空間部21T・・が厚さ方向に押し潰され、これにより、空間部21T・・に設けられた接点同士が通電可能に接触し、作業者の着座状態が検知される、
車両用シート1。」

5.対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、
後者における「車両用シート」は、その構造、機能、作用等からみて、前者における「座席装置」に相当し、また後者における「(連結シャフト19と前方クッションフレーム17との間に掛止されている)複数のSばね18」は、前者における「前記開口に張り渡される線材で成る複数本のばね」に相当している。
また、後者では、「クッション部材21の下方には、荷重検知装置40とホルダ50を備える着座検知装置30がSばね18に取付支持され」るとしており、当該「ホルダ50」は、「(Sばね18aの上部に装架される)第1板状部材51」と「(Sばね18aに隣り合うSばね)であるSばね18bの上部に装架される)第2板状部材52」と「第1および第2板状部材51,52を連結する第1および第2連結部材53,54」とを備えるところから、前者の「前記複数本のばねのうち、少なくとも2本のばねの一部を横断する台座」に相当し、後者における荷重検知装置40が備える「検出部41a」は、「内面中央に接点41a4が設けられた上部フィルム41a1、内面中央に接点41a5が設けられた下部フィルム41a2、および離隔保持部41a3を備えていて、クッション部材21に荷重が加わると、接点41a4と接点41a5が当接して、検出部41aがオンすることにより荷重情報を検出することができ」るものであって、「検出部41aの下方」に、上記ホルダ50(台座)を構成する第1板状部材51の受圧部51cが配置されているところから、前者における「台座の座面側に配置される感圧スイッチ」に相当する。
また、後者にける「クッション部材21」は、Sばね18により「下方から支承」され、上記のとおり、Sばね18a、18bの「上部」に「ホルダ50」(台座)と「検出部41a(感圧スイッチ)」が位置するところから、前者における「複数本のばねに対して、台座及び感圧スイッチを挟んだ状態で置かれるクッションパッド」に相当する。
さらに、後者の「ホルダ50(台座)」が備える第1板状部材51は、その一端(前端)と他端(後端)とに形成される「第1係止部51aおよび第1係合部51b」によりSばね18aに支持され、同じく第2板状部材52は、その(前端)と他端(後端)とに形成される「第2係止部52aおよび第2係合部52b」によりSばね18bに支持されるところから、後者にける「第1係止部51aおよび第1係合部51b」と「第2係止部52aおよび第2係合部52b」とは、前者における「ばね部位」に相当するものといえ、後者も前者と同様に「台座は、クッションパッドの下方に座面側が位置する状態で、少なくともフレームの左右方向で向かい合う2本のばねに支持されるばね部位を有し」ているといえる。

したがって、両者は、
「開口を有する座部のフレームと、
前記フレームの前後方向に沿って前記開口に張り渡される線材で成る複数本のばねと、
前記複数本のばねのうち、少なくとも2本のばねの一部を横断する台座と、
前記台座の座面側に配置される感圧スイッチと、
前記複数本のばねに対して、前記台座及び前記感圧スイッチを挟んだ状態で置かれるクッションパッドとを備え、
前記台座は、前記クッションパッドの下方に前記座面側が位置する状態で、少なくとも前記フレームの左右方向で向かい合う2本のばねに支持されるばね部位を有する、
座席装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点] 本願発明は、「感圧スイッチは、ヒップポイントよりも前方であって2本のばねの一方のばね部位と、前記2本のばねの他方の前記ばね部位とを結ぶ直線上に配置される」のに対し、引用発明1の検出部41a(感圧スイッチ)が配置される位置は、ヒップポイントに対しての前後関係は明らかでなく、また、2本のばねの一方の第1係止部51aおよび第1係合部51b(ばね部位)と、2本のばねの他方の第2係止部52aおよび第2係合部52b(他方のばね部位)とを結ぶ直線上に存在するとはいえない点。

6.当審の判断
上記の相違点について検討する。
引用発明2における「『リミットスイッチ11』、及び『メンブレンスイッチ21』」、「車両用シート1」は、その構造、機能、作用等からみて、それぞれ本願発明における「感圧スイッチ」、「座席装置」に相当する。
そして、引用発明2では、受圧板12が、シートクッション3の着座領域の中央部、すなわち作業者が車両用シート1に着座した際に体重が圧し掛かる着座領域の中央位置に配置されており、作業者がシートクッション3に着座することにより、その着座荷重を受けてクッションフレーム3Fの上面部に向けて図示下方に撓み変形し、これにより、第1の着座センサー10の検知スイッチとなるリミットスイッチ11が押下されてその内部で接点同士が通電可能に接触し、作業者が車両用シート1に着座した状態が検知されることから、第1の着座センサー10を構成するリミットスイッチ11は、「シートクッション3の着座領域の中央部、すなわち作業者が車両用シート1に着座した際に体重が圧し掛かる着座領域の中央位置」に配置されているといえ、また一般に座席装置において、そのヒップポイントは着座領域の比較的後部に位置することを考慮すると、「ヒップポイントよりも前方」にリミットスイッチ11(感圧スイッチ)を配置していると解することができ、また第2の着座センサー20を構成するメンブレンスイッチ21(感圧スイッチ)は、「シートクッション3の前端側の周縁部に配設」しているから、「ヒップポイントよりも前方」に配置されているといえる。
してみると、引用発明2は、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項である「感圧スイッチは、ヒップポイントよりも前方で配置される」点が示されているといえる。
そして、引用発明1と引用発明2とは、共に座席装置という技術分野に属し、また、両者は、着座を適切に検知するという共通の課題を有するものであるから、引用発明1に引用発明2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
また、引用発明1において、検出部41a(感圧スイッチ)は、車両シート10のクッション部20に乗員が着座した際に、その荷重はクッション部材21を下方に向かって伝わり、支承部材(Sばね18)に支承されているホルダ50で受けて、荷重に係る情報(荷重情報)を検知しているのであるから、検出部41aをホルダ50の座面側のどこに配置するかは、当該引用発明1を実施する際に適宜定めるべき設計的事項であるところ、本願明細書をみても、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項である「感圧スイッチは、2本のばねの一方のばね部位と、前記2本のばねの他方の前記ばね部位とを結ぶ直線上に配置される」とした点に格別の技術的意義があるものではない。また、本願発明は、感圧スイッチの配置に関して、「台座の座面側に配置される」、及び「ヒップポイントよりも前方であって2本のばねの一方のばね部位と、前記2本のばねの他方の前記ばね部位とを結ぶ直線上に配置される」と特定されるのみであるから、少なくとも、感圧スイッチは、台座の座面側で、2本のばねの一方のばね部位と前記2本のばねの他方の前記ばね部位とに囲まれた領域内に配置されるものと解され、引用発明1においても、この点において本願発明と変わるものではないともいえる。
してみると、これらの事項に照らして、引用発明において、相違点に係る本願発明の「感圧スイッチは、2本のばねの一方のばね部位と、前記2本のばねの他方の前記ばね部位とを結ぶ直線上に配置される」発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、引用発明1において、引用発明2を適用することにより、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願補正発明の発明特定事項の全体によって奏される効果も、引用発明1、及び2から当業者が予測し得る範囲内のものである。

なお、「ばね部位」という用語に関して、本件出願明細書の段落【0052】、【0054】、【0062】、【0063】、【0102】、【0103】では、本願発明のように台座が有するもの(台座の一部)ではなく、台座においてばねを受ける溝7に入り込む「ばねの一部」を指す用語として説明されているが、仮に、そのように解釈しても、上記の判断を実質的に変更する必要が生じるものではない。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-04-19 
結審通知日 2016-04-26 
審決日 2016-05-09 
出願番号 特願2011-146867(P2011-146867)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B60N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 一浩  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 黒瀬 雅一
畑井 順一
発明の名称 座席装置  
代理人 森村 靖男  

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