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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1316215 |
審判番号 | 不服2015-8962 |
総通号数 | 200 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-05-14 |
確定日 | 2016-06-23 |
事件の表示 | 特願2012- 56202「半導体装置及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月26日出願公開、特開2013-191690〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年3月13日に特許出願をしたものであって、平成26年6月9日付け拒絶理由通知に対して同年8月12日付けで手続補正がなされたが、平成27年2月16日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年5月14日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。 第2 平成27年5月14日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成27年5月14日付の手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 平成27年5月14日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするものであって、請求項1については、 本件補正前に、 「【請求項1】 上金型及び下金型を有する成形金型を用いて半導体装置を製造する方法であって、 室温?200℃に加熱された前記成形金型の前記上金型及び前記下金型のうち一方の金型に、半導体素子搭載基板を配置し、他方の金型に半導体素子非搭載基板を配置する配置工程、 前記半導体素子搭載基板及び前記半導体素子非搭載基板が配置された前記成形金型で熱硬化性樹脂を成形することにより、前記半導体素子搭載基板及び前記半導体素子非搭載基板を一体化させる一体化工程、及び 該一体化した基板を前記成形金型から取り出し、ダイシングすることで個片化する工程を有し、 前記熱硬化性樹脂として、無機充填材を配合したものを用い、該無機充填材の最大粒径を75μm以下とし、かつ、該無機充填材の充填量を、前記熱硬化性樹脂の組成物中の樹脂の総量100質量部に対し、100?1300質量部とすることを特徴とする半導体装置の製造方法。」 とあったところを、 「【請求項1】 上金型及び下金型を有する成形金型を用いて面積2000mm^(2)以上の大型の基板を一括封止する半導体装置を製造する方法であって、 室温?200℃に加熱された前記成形金型の前記上金型及び前記下金型のうち一方の金型に、半導体素子搭載基板を配置し、他方の金型に半導体素子非搭載基板を配置する配置工程、 前記半導体素子搭載基板及び前記半導体素子非搭載基板が配置された前記成形金型で熱硬化性樹脂を成形することにより、前記半導体素子搭載基板及び前記半導体素子非搭載基板を一体化させる一体化工程、及び 該一体化した基板を前記成形金型から取り出し、ダイシングすることで個片化する工程を有し、 前記熱硬化性樹脂として、無機充填材を配合したものを用い、該無機充填材の最大粒径を75μm以下とし、かつ、該無機充填材の充填量を、前記熱硬化性樹脂の組成物中の樹脂の総量100質量部に対し、100?1300質量部とし、 前記半導体素子非搭載基板として、線膨張係数が25ppm/℃以下であり、かつ、厚さが20μm?1mmのものを用いることを特徴とする半導体装置の製造方法。」 とするものである。 2.補正の目的要件について 補正された請求項1に係る発明は、補正前の請求項1の成形金型によって「2000mm^(2)以上の大型基板を一括封止する」ことに限定し、また、補正前の請求項1の半導体素子非搭載基板を「線膨張係数が25ppm/℃以下であり、かつ、厚さが20μm?1mm」のものに限定したものである。 そうすると、本件補正は、発明特定事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下検討する。 3.引用例 (1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2007-66932号公報(平成19年3月15日公開。以下「引用例1」という。)には、「半導体装置およびその製造方法」について、図面とともに以下の記載がある。なお、下線は当審で付与した。 ア.「【0012】 図1は実施例1の半導体装置の断面を示す説明図、図2は実施例1の配線基板の上面を示す説明図である。 図1において、1は半導体装置である。 2は下部基板としての配線基板であり、ガラス繊維からなるウィスカを含有した、またはガラス繊維からなる布を埋め込んだガラスエポキシ樹脂により形成された基板であって、そのおもて面には図2に示す複数の配線3からなる配線パターン4が形成され、配線3の所定の部位には基板ボールパッド5が複数形成されている。 【0013】 本実施例のガラスエポキシ樹脂からなる配線基板2の熱膨張率α_(a)は12?16×10^(-6)/℃程度である。 6は半導体チップであり、その下面には複数のバンプ7が配置され、その上面には複数のチップボールパッド8が配置されており、配線3に形成された基板ボールパッド5に最下層の半導体チップ6のバンプ7がフリップチップ方式で電気的に接続され、その上方に複数の半導体チップ6が互いのチップボールパッド8とバンプ7とをフリップチップ方式で電気的に接続して積層されている。本実施例では半導体チップ6が8層に積層されている。 【0014】 9は中間部材としての封止樹脂層であり、樹脂材料を溶融させた封止剤9aを積層された半導体チップ6の間、最下層の半導体チップ6と配線基板2との間および最上層の半導体チップ6と樹脂板10との間、並びに積層された半導体チップ6の周囲に充填し、これを加熱硬化させて形成された配線基板2の面積と略同等の断面積を有する柱状部材であって、半導体チップ6の間等の保護および電気的な絶縁性の確保をする機能を有すると共に、半導体チップ6や配線パターン4等を外部から保護する機能を有している。 【0015】 この場合に、封止樹脂層9による封止は、多少のボイドが形成された状態であってもよい。要は前記の機能を果たすように実質的に封止していれば足りる。 本実施例の封止樹脂層9は、射出成形に用いる粒状のエポキシ樹脂を溶融させた封止剤9aを射出成形により充填して形成され、その熱膨張率α_(b)は6?10×10-6/℃程度であり、上記のガラスエポキシ樹脂からなる配線基板2の熱膨張率α_(a)より小さい熱膨張率α_(b)を有している。 【0016】 上部板としての樹脂板10は、配線基板2とほぼ同等の厚さを有し、配線基板2と略同等の熱膨張率α_(c)を有する樹脂で形成された板状部材であって、積層された半導体チップ6を封止した柱状の封止樹脂層9の上面の全てを覆って配置される。 また、樹脂板10の下面、つまり封止樹脂層9側の面には封止樹脂層9との密着性を向上させるためにエッチング等の化学的な方法やショットピーニング等の機械的な方法等により表面を梨子地状にするの表面処理が施されている。 【0017】 本実施例の樹脂板10は、ガラスエポキシ樹脂で形成された配線基板2とほぼ同等の厚さを有する板状部材であり、その熱膨張率αcは同じ材料からなる配線基板2と同一である。 11は外部端子であり、配線基板2の裏面に配置され、配線基板2のおもて面の所定の配線3と電気的に接続された半田合金等の材料で形成された端子であって、半導体装置1と図示しない実装基板の実装端子とを電気的に接続する機能を有している。」 【0018】 本実施例の半導体装置1は、厚さ0.15mmで1辺が12mmの正方形の配線基板2および樹脂板10と、これらの間に8個積層された1辺が10mmの正方形の半導体チップ6と、これを封止する厚さ0.56mmの柱状の封止樹脂層9で構成される。 図3、図4は実施例1の半導体装置の製造方法を示す説明図である。 図3、図4において、15は下部金型であり、配線基板2を嵌合して搭載するための配線基板2の大きさと略同等の大きさの開口を有し、配線基板2の厚さと略同じ深さの基板搭載穴15aが設けられた矩形の金型である。 【0019】 16は上部金型であり、樹脂板10を嵌合して搭載するための樹脂板10の大きさと略同等の大きさの開口を有し、樹脂板10の厚さと形成する封止樹脂層9の厚さとを合わせた厚さと略同じ深さの上部板搭載穴16aが設けられた矩形の金型であって、その一の側壁に封止剤9aを注入するための注入口17が設けられており、下部金型15の上方に組合わされる。 ・・・(中略)・・・ 【0022】 P3(図3)、積層された半導体チップ6を搭載した配線基板2を下部金型15の基板搭載穴15aに嵌合して搭載する。 P4(図4)、上部金型16に、別に準備した樹脂板10の下面を封止樹脂層9の側に向けて嵌合し、上部板搭載穴16aの底面に保持させて搭載する。 P5(図4)、射出成形機に配線基板2を搭載した下部金型15と、樹脂板10を搭載した上部金型16とを組合せて設置した後に、溶融させた液状の封止剤9aを注入口17から注入して積層された半導体チップ6の間、最下層の半導体チップ6と配線基板2との間および最上層の半導体チップ6と樹脂板10との間、並びに積層された半導体チップ6の周囲に封止剤9aを充填し、その後封止剤9aを160?200℃程度の温度で熱処理して加熱硬化させ、柱状の封止樹脂層9を形成する。」 イ.「【0024】 このようにして、配線基板2と樹脂板10との間に柱状の封止樹脂層9で封止された複数の半導体チップ6を積層した本実施例の半導体装置1が製造される。 上記のようにして製造された半導体装置1は、封止樹脂層9の加熱硬化時に封止樹脂層9の上面を全て樹脂板10で覆った状態で硬化させ、その後に同一の熱膨張率を有し、ほぼ同じ大きさの樹脂板10と配線基板2とに封止樹脂層9を挟んだ状態で冷却するので、配線基板2が比較的大きな熱膨張率により収縮したとしても、封止樹脂層9の上下に配置された配線基板2と樹脂板10が同じ程度に収縮して半導体装置1の反りが防止され、封止工程で反りが生ずることはなく、外部端子11の形成工程における保持に支障が生ずることはない。また実装基板への半導体装置1の実装工程における熱処理においても反りが生ずることはない。これにより半導体装置の製造効率を向上させることができる。」 ウ.「【0032】 図7、図8は実施例2の半導体装置の製造方法を示す説明図である。 図7、図8において、25は下部金型であり、実施例1の下部金型15と同様の金型であって、基板搭体載穴25aの開口が本実施例の配線基板2の大きさと略同等の大きさになっていることが異なる。 26は上部金型であり、実施例1の上部金型16と同様の金型であって、樹脂板体21を嵌合して搭載するための樹脂板体21の大きさと略同等の大きさの開口を有する上部板搭載穴26aが設けられていることが異なる。 【0033】 28はダイシングブレードであり、ダイヤモンドの砥粒で形成された薄い砥石である。 以下に、図7、図8を用い、PAで示す工程に従って本実施例の半導体装置の製造方法について説明する。 ・・・(中略)・・・ 【0036】 これにより、配線基板2および樹脂板体21と封止樹脂層9との間が封止樹脂層9の接着作用により接合される。 PA6(図8)、封止樹脂層9の硬化後に、上部金型16を開いて下部金型15から樹脂板体21との間に複数の積層された半導体チップ6を封止した封止樹脂層9を形成した配線基板2を取出し、その冷却後に図示しないステージ等に粘着性を有するダイシングシート等で配線基板2を貼り付けて保持し、これを樹脂板体21上からダイシングブレードにより樹脂板体21の接続部22の略中央部を切断するように、つまり配線基板2の配線パターン4を一つ含むようにして樹脂板体21と封止樹脂層9と配線基板2を切断して個片化する。」 上記アないしウの記載から、引用例1には以下の事項が記載されている。 ・上記アによれば、半導体チップ6と接続された配線基板2を搭載した下部金型15と、上部板としての樹脂板10を搭載した上部金型16とを組合せて設置した後に、配線基板2と樹脂板10との間に封止剤9aを充填し、その後加熱硬化させて封止樹脂層9を形成するものである。 ・上記ウによれば、金型から封止樹脂層9を形成した配線基板2を取出し、樹脂板体21と封止樹脂層9と配線基板2をダイシングブレードにより切断して個片化するものである。なお、上記ウ(実施例2)に記載された樹脂板体21は、上記ア(実施例1)に記載された樹脂板10と同様の機能を有するものであるから、以下「樹脂板」に統一する。 ・上記ア、イによれば、熱膨張率が12?16×10^(-6)/℃程度の配線基板2を用い、半導体装置の反り防止のため、樹脂板10は、配線基板2とほぼ同等の厚さを有し、配線基板2と略同等の熱膨張率のものを用いている。また、配線基板2と樹脂板10の厚さは、0.15mm(150μm)である。 したがって、上記摘示事項及び図面を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「半導体チップと接続された配線基板を搭載した下部金型と、上部板としての樹脂板を搭載した上部金型とを組合せて設置した後に、該配線基板と該樹脂板との間に封止剤を充填し、その後加熱硬化させて封止樹脂層を形成し、 金型から取出した該配線基板と該封止樹脂層と該樹脂板をダイシングブレードにより切断して個片化するものであって、 該配線基板と該樹脂板は、熱膨張率が12?16×10^(-6)/℃程度であり、厚さが150μmのものを用いる半導体装置の製造方法。」 (2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2008-69291号公報(平成20年3月27日公開。以下「引用例2」という。)には、「半導体封止用液状エポキシ樹脂組成物及び半導体装置」について、図面とともに以下の記載がある。なお、下線は当審で付与した。 エ.「【0012】 本発明に係る半導体封止用液状エポキシ樹脂組成物は、 (A)液状エポキシ樹脂 (B)平均粒径が2?20μmの無機質充填剤 (C)硬化促進剤 (D)非反応性有機ケイ素化合物で表面処理された平均粒径が0.01? 0.1μmである無機質充填材 (E)熱可塑性樹脂粒子 を必須成分とするもので、以下これらの成分について詳しく説明する。 ・・・(中略)・・・ 【0016】 [(B)無機質充填剤 ] 本発明においては、膨張係数を小さくする目的から、公知の各種無機質充填剤(B)を添加することができる。無機質充填剤として具体的には、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ボロンナイトライド、窒化アルミニウム、窒化珪素、マグネシア、マグネシウムシリケートなどが挙げられる。中でも真球状の溶融シリカが低粘度化のため望ましい。 【0017】 無機質充填剤は、樹脂と無機質充填剤との結合強度を強くするため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤で予め表面処理したものを配合することが好ましい。このようなカップリング剤としては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、γ-メルカプトシラン等のメルカプトシランなどのシランカップリング剤を用いることが好ましい。ここで表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については、特に制限されるものではない。 【0018】 本発明の組成物を使用する場合、無機質充填剤は、平均粒径が2?20μmであり、最大粒径が75μm以下、特に50μm以下のものが望ましい。平均粒径が2μm未満では粘度が高くなり、多量に充填できない場合があり、一方、20μmを超えると粗い粒子が多くなり、リード線につまり、ボイドとなるおそれがある。なお、この平均粒径、最大粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定装置等によって求めることができ、平均粒径は重量平均値(又はメジアン径)等として得ることができる。 【0019】 この場合、(B)無機質充填剤の配合量としては、(A)液状エポキシ樹脂総量100質量部に対して100?1,000質量部、特に200?800質量部の範囲が好ましい。100質量部未満では、膨張係数が大きく冷熱試験においてクラックの発生を誘発させる。1,000質量部を超えると、粘度が高くなり、流動性の低下をもたらす。」 液状エポキシ樹脂は熱硬化性樹脂であるから、上記エによれば、引用例2には「半導体装置に使用する熱硬化性樹脂に無機質充填剤を配合し、該無機質充填剤の最大粒径を75μm以下とし、該無機質充填剤の充填量を該熱硬化性樹脂100質量部に対して100?1000質量部とする」技術事項が記載されている。 (3)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2009-256583号公報(平成21年11月5日公開。以下「引用例3」という。)には、「液状エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置」について、図面とともに以下の記載がある。なお、下線は当審で付与した。 オ.「【0062】 (実施例1) ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂とビスフェノールFジグリシジル型エポキシ樹脂との混合エポキシ樹脂(エポキシ当量=160、大日本インキ化学工業(株)製、商品名EXA-830LVP)50.0重量部とアミノフェノール型エポキシ樹脂(エポキシ当量=83、住友化学(株)製、商品名ELM-100)50.0重量部と、硬化剤として3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(活性水素当量=63.5、日本化薬(株)製、商品名カヤハードA-A)47.4重量部と、前記合成例1で得たフェニルイソシアネート変性2官能型ポリプロピレングリコール系アミン(変性PPGA-1)13.0重量部と、カップリング剤としてγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3.0重量部、無機充填剤として最大粒径10μm、平均粒径2μmの球状シリカを245重量部とを混合し、これを三本ロールにて混練後、脱泡して液状エポキシ樹脂組成物を得た。得られた液状エポキシ樹脂組成物を上記の方法で評価し、その結果を表1に示す。」 ・・・(中略)・・・ 【0070】 (実施例9) ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂とビスフェノールFジグリシジル型エポキシ樹脂との混合エポキシ樹脂(エポキシ当量=160、大日本インキ化学工業(株)製、商品名EXA-830LVP)50.0重量部と、アミノフェノール型エポキシ樹脂(エポキシ当量=83、住友化学(株)製、商品名ELM-100)50.0重量部と、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(活性水素当量=63.5、日本化薬(株)製、商品名カヤハードA-A)49.6重量部と、前記合成例8で得たフェニルグリシジルエーテル変性1官能型ポリプロピレングリコール系アミン(変性PPGA-8)13.0重量部と、カップリング剤としてγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン4.0重量部、希釈剤としてブチルセルソルブアセテート1.0重量部、顔料としてカーボンブラック0.3重量部、無機充填剤として最大粒径5μm、平均粒径1μmの球状シリカを328.5重量部とを混合し、これを三本ロールにて混練後、脱泡して液状エポキシ樹脂組成物を得た。得られた液状エポキシ樹脂組成物を上記の方法で評価し、その結果を表2に示す。」 エポキシ樹脂は熱硬化性樹脂であるから、上記オによれば、引用例3には「半導体装置に使用する熱硬化性樹脂に無機質充填剤を配合し、該無機質充填剤の最大粒径を10μmまたは5μmとし、該無機質充填剤の充填量を該熱硬化性樹脂100重量部に対して245重量部または328.5重量部とする」技術事項が記載されている。 (4)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2003-201416号公報(平成15年7月18日公開。以下「引用例4」という。)には、「表面処理無機充填材、エポキシ樹脂組成物及び半導体装置」について、図面とともに以下の記載がある。なお、下線は当審で付与した。 カ.「【0016】本発明に用いる無機充填材としては、表面に活性水素を含有している無機充填材全般を用いることができる。例えば溶融シリカ、結晶シリカ、タルク、アルミナ、窒化珪素等が挙げられる。無機充填材の表面は、元来化学的に活性であり大気中の水分と反応して活性水素を生成しやすく、特に溶融シリカや結晶シリカの表面にはSi-OH基が多量に存在し、アルミナ表面にはAl-OH基が存在する。これらの無機充填材は単独でも混合して用いてもよい。これらの内では球形度の高い溶融球状シリカを全量或いは一部破砕シリカを併用することが好ましい。無機充填材の平均粒径としては0.01?40μm、最大粒径としては150μm以下が好ましく、特に平均粒径0.2?30μm、最大粒径74μm以下が好ましい。又粒子の大きさの異なるものを混合することによって充填量を多くすることができる。 ・・・(中略)・・・ 【0033】 実施例1 エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、YX-4000HK。エポキシ当量190g/eq、融点105℃、以下E-1という) 47重量部 フェノール樹脂(三井化学(株)製、XLC-LL、水酸基当量165g/eq、軟化点79℃、以下H-1という) 40重量部 1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(以下、DBUという) 5重量部 無機充填材1 900重量部 カーボンブラック 3重量部 カルナバワックス 5重量部 を混合し、熱ロールを用いて、95℃で8分間混練して冷却後粉砕し、エポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を、以下の方法で評価した。結果を表1に示す。」 エポキシ樹脂およびフェノール樹脂は熱硬化性樹脂であるから、上記カによれば、引用例4には「半導体装置に使用する熱硬化性樹脂に無機質充填材を配合し、該無機質充填材の最大粒径を74μm以下とし、該無機質充填材の充填量を該熱硬化性樹脂87重量部に対して900重量部とする」技術事項が記載されている。 4.対比・判断 本願補正発明と引用発明とを対比する。 a.引用発明の「上型金型」及び「下型金型」は、本願補正発明の「上金型」及び「下金型」に相当する。 引用発明の「半導体チップと接続された配線基板」は、半導体チップを搭載している基板であるから、本願補正発明の「半導体素子搭載基板」に相当する。また、引用発明の「上部板としての樹脂板」は、半導体チップの上部に位置するもので該半導体チップを搭載しているものではないから、本願補正発明の「半導体素子非搭載基板」に相当する。 引用発明は、個片化する前の配線基板及び樹脂板を金型に搭載して基板間に封止樹脂層を形成するものであるから、「成形金型を用いて基板を一括封止する半導体装置を製造する方法」である。ここで、引用発明の封止樹脂層は、配線基板と樹脂板とを「一体化」するものといえる。また、引用発明の「封止樹脂」は、加熱硬化させて樹脂層となるものであるから、本願補正発明の「熱硬化性樹脂」に相当する。 よって、引用発明の「半導体チップと接続された配線基板を搭載した下部金型と、上部板としての樹脂板を搭載した上部金型とを組合せて設置した後に、該配線基板と該樹脂板との間に封止剤を充填し、その後加熱硬化させて封止樹脂層を形成し」は、本願補正発明の「上金型及び下金型を有する成形金型を用いて基板を一括封止する半導体装置を製造する方法であって、前記成形金型の前記上金型及び前記下金型のうち一方の金型に、半導体素子搭載基板を配置し、他方の金型に半導体素子非搭載基板を配置する配置工程、前記半導体素子搭載基板及び前記半導体素子非搭載基板が配置された前記成形金型で熱硬化性樹脂を成形することにより、前記半導体素子搭載基板及び前記半導体素子非搭載基板を一体化させる一体化工程」に相当する。 但し、本願補正発明は、成形金型を用いて「面積2000mm^(2)以上の大型の基板」を一括封止させているが、引用発明にはそのような大型基板を対象にする特定はされていない。また、本願補正発明は、「室温?200℃に加熱された」金型を用いているが、引用発明にはそのような特定はされていない。 b.引用発明の「金型から取出した該配線基板と該封止樹脂層と該樹脂板」は、封止樹脂層を介して配線基板と樹脂板とが一体化されたものであるから、本願補正発明の「該一体化した基板」に相当する。 よって、引用発明の「金型から取出した該配線基板と該封止樹脂層と該樹脂板をダイシングブレードにより切断して個片化する」は、本願補正発明の「該一体化した基板を前記成形金型から取り出し、ダイシングすることで個片化する工程を有し」に相当する。 c.引用発明の「熱膨張率が12?16×10^(-6)/℃程度」は、「熱膨張率が12?16ppm/℃」であり、ここでいう「熱膨張率」とは線膨張率か体積膨張率(線膨張率の約3倍)と認められるところ、どちらであっても本願補正発明の「線膨張が25ppm/℃以下」を満たすものである。 よって、引用発明の「該配線基板と該樹脂板は、熱膨張率が12?16×10^(-6)/℃程度であり、厚さが150μmのものを用いる」は、本願補正発明の「前記半導体素子非搭載基板として、線膨張係数が25ppm/℃以下であり、かつ、厚さが20μm?1mmのものを用いる」に相当する。 d.本願補正発明の「前記熱硬化性樹脂として、無機充填材を配合したものを用い、該無機充填材の最大粒径を75μm以下とし、かつ、該無機充填材の充填量を、前記熱硬化性樹脂の組成物中の樹脂の総量100質量部に対し、100?1300質量部とし」は、引用発明の無機充填材にはその旨の特定はない。 よって、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。 <一致点> 「上金型及び下金型を有する成形金型を用いて基板を一括封止する半導体装置を製造する方法であって、 前記成形金型の前記上金型及び前記下金型のうち一方の金型に、半導体素子搭載基板を配置し、他方の金型に半導体素子非搭載基板を配置する配置工程、 前記半導体素子搭載基板及び前記半導体素子非搭載基板が配置された前記成形金型で熱硬化性樹脂を成形することにより、前記半導体素子搭載基板及び前記半導体素子非搭載基板を一体化させる一体化工程、及び 該一体化した基板を前記成形金型から取り出し、ダイシングすることで個片化する工程を有し、 前記半導体素子非搭載基板として、線膨張係数が25ppm/℃以下であり、かつ、厚さが20μm?1mmのものを用いることを特徴とする半導体装置の製造方法。」 <相違点1> 本願補正発明は、成形金型で「面積2000mm^(2)以上の大型の基板を一括封止」しているのに対し、引用発明にはその旨の特定はない。 <相違点2> 本願補正発明は、「室温?200℃に加熱された」金型を用いるのに対し、引用発明にはその旨の特定はない。 <相違点3> 本願補正発明は、「前記熱硬化性樹脂として、無機充填材を配合したものを用い、該無機充填材の最大粒径を75μm以下とし、かつ、該無機充填材の充填量を、前記熱硬化性樹脂の組成物中の樹脂の総量100質量部に対し、100?1300質量部」としたのに対し、引用発明の無機充填材にはその旨の特定はない。 上記相違点1ないし3について検討する。 <相違点1>について。 金型に面積2000mm^(2)以上の大型の基板を搭載して一括封止を行うことは、例えば特開2008-84263号公報(背景技術として記載された段落【0007】ないし【0008】を参照。16mm×12.5mmの配線基板の面積の数十倍の面積を有する大型配線基板を金型に装着し一括封止している点。)、特開2003-246848号公報(段落【0061】ないし【0063】を参照。40mm×150mmの基板を封止成形し一括封止物を得ている点。)に記載されているように周知である。 よって、引用発明の金型に搭載する基板として、周知技術を適用して相違点1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 <相違点2>について。 引用発明には直接金型の温度は特定されていないものの、溶融した熱硬化性樹脂を金型に導くものであるから、金型を加熱しておくのが普通であり(例えば、特開2009-170744号公報の背景技術である段落【0009】、【0012】を参照。)、例えそうでなくても金型は(わざわざ予め冷却させておくことはあり得ず)少なくとも室温レベルであることは自明であるから、引用発明の金型は、基板搭載時に少なくとも室温以上であるといえる。そして、上記ア(段落【0022】の記載を参照。)に記載されているように、金型は最終的に160?200℃にされるものであるから、引用発明の金型は、基板搭載時に200℃以下であるといえる。 よって、相違点2の係る事項は、実質的な相違点ではない。 <相違点3>について。 半導体装置に使用する熱硬化性樹脂に無機充填材を配合することは周知であるところ、無機充填材の最大粒子径や充填量を相違点3のように特定することも、引用例2(上記「3.(2)」を参照。)、引用例3(上記「3.(3)」を参照。)、引用例4(上記「3.(4)」を参照。)に記載されているように周知の技術事項である。 よって、引用発明の熱硬化性樹脂として、周知技術を適用して相違点3の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 したがって、本願発明は、引用発明および周知技術により当業者が容易になし得たものである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明および周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 5.むすび 以上のとおり、本願補正発明は、引用例1に記載された発明および周知技術により容易になし得た発明であるから、特許法第29条第2項に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成27年5月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成26年8月12日付けの手続補正の特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されたものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 上金型及び下金型を有する成形金型を用いて半導体装置を製造する方法であって、 室温?200℃に加熱された前記成形金型の前記上金型及び前記下金型のうち一方の金型に、半導体素子搭載基板を配置し、他方の金型に半導体素子非搭載基板を配置する配置工程、 前記半導体素子搭載基板及び前記半導体素子非搭載基板が配置された前記成形金型で熱硬化性樹脂を成形することにより、前記半導体素子搭載基板及び前記半導体素子非搭載基板を一体化させる一体化工程、及び 該一体化した基板を前記成形金型から取り出し、ダイシングすることで個片化する工程を有し、 前記熱硬化性樹脂として、無機充填材を配合したものを用い、該無機充填材の最大粒径を75μm以下とし、かつ、該無機充填材の充填量を、前記熱硬化性樹脂の組成物中の樹脂の総量100質量部に対し、100?1300質量部とすることを特徴とする半導体装置の製造方法。」 2.引用例 原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びそれらの記載事項は、上記「第2 3.引用例」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、本願補正発明から「2000mm^(2)以上の大型基板を一括封止する」こと、「前記半導体素子非搭載基板として、線膨張係数が25ppm/℃以下であり、かつ、厚さが20μm?1mmのものを用いる」ことを削除したものである。 そうすると、本願発明の構成要素を全て含み、更に上記の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 4.対比・判断」に記載したとおり、引用発明および周知技術により容易になし得たものであるから、本願補正発明から上記事項を省いた本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明および周知技術により容易になし得たものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明および周知技術から容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-04-22 |
結審通知日 | 2016-04-26 |
審決日 | 2016-05-09 |
出願番号 | 特願2012-56202(P2012-56202) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L) P 1 8・ 113- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲吉▼澤 雅博、金田 孝之、秋山 直人 |
特許庁審判長 |
森川 幸俊 |
特許庁審判官 |
関谷 隆一 酒井 朋広 |
発明の名称 | 半導体装置及びその製造方法 |
代理人 | 好宮 幹夫 |