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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B66C
管理番号 1316277
審判番号 不服2015-6719  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-09 
確定日 2016-06-24 
事件の表示 特願2011-195988「天井クレーン」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月28日出願公開、特開2013- 56742〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本件出願は、平成23年9月8日の出願であって、平成26年9月18日付けで拒絶理由が通知され、平成26年11月21日に意見書が提出されるとともに明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、平成27年1月21日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成27年4月9日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、当審において平成27年11月12日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成28年1月18日に意見書が提出されるとともに明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 本件発明

本件出願の請求項1及び2に係る発明は、平成28年1月18日に提出された手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。

「 【請求項1】
中央部が周辺部よりも高くなるように傾斜した屋根の下方に沿う形状に形成されたガーダと、該ガーダに配設されたガーダ走行部と、該ガーダ走行部を介してガーダが走行する走行レールと、ガーダに沿って横行するトロリとを備えてなる天井クレーンにおいて、前記ガーダの下端板をガーダの幅方向の両側に延出させて形成した延出部の上面をトロリが横行する横行レールに形成するとともに、下端板の下面にトロリの横行駆動用チェーンスプロケットが噛合するチェーンを敷設し、さらに、走行レールを屋根の周辺部の基礎から立設した支持構造物上に敷設するとともに、ガーダに該ガーダの周辺部の傾斜角度より大きな傾斜角度となるように接続したガーダ脚部を介して走行車輪を備えたガーダ走行部を配設し、かつ、ガーダに屋根から吊り下げて配設したガーダの横転防止用の補助レールの膨出部を抱持する補助横転防止ローラを配設したことを特徴とする天井クレーン。」

第3 刊行物

ア 刊行物1の記載事項
当審拒絶理由に引用された、本件出願の出願前に頒布された刊行物である実公昭57-004059号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

a 「 第1図において、1は長手方向に延びて材料等を収納する工場あるいは倉庫等の建物で、この建物1ほ該建物1の長手方向に沿つて屋根2が形成されている。この場合建物は左右対称であるので左半分の説明を省略する。この屋根2は中央部を頂点として左右に傾斜しており、屋根2内は強度的にはり等で構築されていない空間部を有している。また、この建物1内には材料等を吊り上げるための天井クレーン3が取付けられている。
天井クレーン3は建物1内に材料等を収納しあるいは移動するものであつて、駆動部8、クレーンガーダ5、巻上機6とから構成されている。
ランウエイ4は建物1の内部側壁1aに沿つて水平方向に延設されており、屋根2と内部側壁1aとが隣接する付近に設けられた支持部材7上に載置されている。なお、ランウエイ4は対向する側にも同様に取付けられている。また、ランウエイ4はH形鋼等の部材よりなる。
ランウエイ4上には後述するダレーンガーダ5と一体構造として、該クレーンガーダ5をランウエイ4の長手方向に沿つて前後に走行(第1図において)させるための駆動部8が走行自在に載置されている。
この駆動部8は第2図に示すようにサドル8aを有し、このサドル8a上には図示しないがクレーンガーダ5を、ランウエイ4上に沿つて走行させる原動機(図示せず)が載置されており、またサドル8aの下方には間隔を隔てた走行車輪8bと8cとが回転自在に設けられており、ランウエイ4上を走行する。
クレーンガーダ5は屋根2の形状にほぼ近似した傾斜を有する山形状に形成されており、その下端は前記駆動部8に一体に取付けられており、上端は彎曲状の頂部部材5bに支持板9を介してボルト等で緊締し固定されている。なお、クレーンガーダ5はH形鋼等の部材であり、そのクレーンガーダ5には斜辺5a上面に沿つて延びる歯部10(ラックまたはボールギヤ)が形成されている。この歯部10には斜辺5a及び歯部10に沿つて巻上機6がランウエイ4とは直角方向に横行するように設けられている。
巻上機6は第3図及び第4図に示すよう斜辺5aに沿つて横行させるギヤードモータ11と材料等を吊り上げるためのホイスト21とが一体に取り付けられている。
ギヤードモータ11は枠体13に固定されており、ギヤードモータ11の軸部11aには歯車11bが支持されており、また、歯車11bの下部には横行車輪14,15とがクレーンガーダ5の斜辺5aの両側を握持するように軸16で回転自在に支持されている。また、横行車輪14と15間とには歯車17が介在されており、前記ギヤードモータ11の歯車11bと、斜辺5aの歯部10とにそれぞれ噛合して、ギヤードモータ11の回転にともなつて前記クレーンガータ5の斜辺5aに沿つて巻上機6が横行するようになつている。」(第2欄6行ないし第3欄25行)

b 「 本考案は傾斜する屋根を有する建物の内部上方に、前記建物の屋根の形状にほぼ近似した形状のクレーンガーダを傾斜する屋根に沿つて走行自在にし、かつ傾斜するクレーンガーダを巻上機が横行するように構成したので、屋根の下の空間部を利用して材料等を高く積むことが可能となり、したがつて、このような建物であつても有効な荷役容積が得られるのでかなりの材料等を収納することができる。」(第4欄11ないし19行)

イ 上記ア及び図面の記載から分かること

c 上記アのaの記載から、刊行物1には、天井クレーンの発明が記載されていることが分かる。

d 上記アのa及び第1図の記載から、天井クレーン3は、中央部を頂点として左右に傾斜している屋根2の下方に屋根2の形状にほぼ近似した傾斜を有する山形状に形成されたクレーンガーダ5を備えることが分かる。

e 上記アのa及び第1図ないし第4図の記載から、天井クレーン3は、グレーンガーダ5と一体構造の駆動部8と、駆動部8を介してクレーンガーダ5が走行するランウエイ4と、クレーンガーダ5に沿って横行する巻上機6とを備えることが分かる。

f 上記アのa及び第1図ないし第4図の記載から、天井クレーン3は、クレーンガーダ5であるH形鋼の斜辺5aの両側を走行車輪14、15が回転自在に支持し巻上機6が横行するように形成されていることが分かる。

g 上記アのa及び第1図ないし第4図の記載から、天井クレーン3は、クレーンガーダ5の斜辺5aの上面に、ギヤードモータ11の歯車11bが噛合する歯部10(ラックまたはボールギヤ)が形成されていることが分かる。

h 上記アのa及び第1図の記載から、天井クレーン3は、ランウエイ4を屋根2と内部側壁1aとが隣接する付近に設けられた支持部材7上に載置することが分かる。

i 上記アのa並びに第1図及び第2図の記載から、天井クレーン3は、クレーンガーダ5に接続された上下に立ち上がった部分を介して走行車輪8bと8cが設けられた駆動部8と一体に取り付けられていること及びこの上下に立ち上がった部分はクレーンガーダ5の周辺部の傾斜角度よりも大きな角度を有していることが看取できる。
したがって、天井クレーン3は、クレーンガーダ5にクレーンガーダ5の周辺部の傾斜角度より大きな角度となるように接続した上下に立ち上がった部分を介して走行車輪8bと8cが設けられた駆動部8が一体に取り付けられていることが分かる。

ウ 刊行物1に記載された発明
したがって、上記ア及びイを総合すると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1に記載された発明」という。)が記載されていると認める。

「 中央部を頂点として左右に傾斜している屋根2の下方に屋根2の形状にほぼ近似した傾斜を有する山形状に形成されたクレーンガーダ5と、グレーンガーダ5と一体構造の駆動部8と、駆動部8を介してクレーンガーダ5が走行するランウエイ4と、クレーンガーダ5に沿って横行する巻上機6とを備えてなる天井クレーン3において、クレーンガーダ5であるH形鋼の斜辺5aの両側を走行車輪14、15が回転自在に支持し巻上機6が横行するように形成するとともに、クレーンガーダ5の斜辺5aの上面に、ギヤードモータ11の歯車11bが噛合する歯部10(ラックまたはボールギヤ)が形成され、さらに、ランウエイ4を屋根2と内部側壁1aとが隣接する付近に設けられた支持部材7上に載置するとともに、クレーンガーダ5にクレーンガーダ5の周辺部の傾斜角度より大きな角度となるように接続した上下に立ち上がった部分を介して走行車輪8bと8cが設けられた駆動部8が一体に取り付けられた天井クレーン3。」

エ 刊行物2の記載事項
当審拒絶理由に引用された、本件出願の出願前に頒布された刊行物である登録実用新案第3027912号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

j 「【0007】
【考案の実施の形態】
以下、本考案を図示例に基づいて説明する。
図中Sは、例えば、地下鉄用、電話線、電力線用、上下水道用等の各種トンネル工事に於いて使用され、トンネルを構成するための構成部材となると共に、短円筒を円周方向に沿って適宜分割したような構成のコンクリート製セグメント30を、トンネル先端の掘削部分に搬送できるようにした本考案のセグメント搬送装置を示し、このセグメント搬送装置Sは、トンネル内上方に配設されると共にH鋼材等で構成される走行レール1と、この走行レール1に装着されると共に複数の走行車輪6によって走行レール1に沿って移動可能な自走体5と、走行レール1に装着されると共に複数の走行車輪によって走行レール1に沿って移動可能なチェーンブロック用走行体20とを形成する。そして、走行レール1の下面には、ローラーチェーン3を走行レール1の長手方向に沿って配設し、自走体5には、ローラーチェーン3に噛合するスプロケット11を設ける。すなわち、自走体5に搭載したモータ8の駆動回転力がスプロケット11に伝達され、このスプロケット11を適宜駆動回転せしめることで、自走体5が走行レール1に沿って移動するよう構成されている。それから、チェーンブロック用走行体20には、セグメント30を吊下げ可能なチェーンブロック25を装着し、チェーンブロック用走行体20は、連結ロッド15を介して自走体5に連結される。すなわち、自走体5の移動によって、セグメント30が吊下げられるチェーンブロック用走行体20が走行レール1に沿って自走体5と共に移動するよう構成されている。」(段落【0007】)

k 「【0009】
走行レール1は、適宜レール支持手段(例えば、トンネル内に配されるレール支持体2等)によってトンネル内上方にトンネルに沿うように配設されている。ところで、走行レール1は、図示例のようなH鋼材が主に利用され、その下部の左右張出片部分上面を自走体5の走行車輪6(及びチェーンブロック用走行体20の走行車輪)が転動できるように構成されている。また、レール支持体2は、トンネル内上部に横架配設せしめた適宜鋼材や、トンネル内上部から垂下せしめた適宜吊下げ材や、その他の構造材等が利用される。尚、走行レール1の具体的構成、形状、寸法、材質、具体的支持手段、トンネル内に於ける配設位置、数、レール支持体2の具体的構成、形状、配設位置、数等は、図示例等に限定されることなく適宜自由に設定できるものである。
【0010】
ローラーチェーン3は、適宜間隔で配設される複数の略L字板状のチェーン取付具4を介して走行レール1下面に張設された状態に固定されている。しかも、ローラーチェーン3は、そのチーン素子夫々の係止開口が下向きとなるように固定され、走行レール1下方に配置されるスプロケット11がローラーチェーン3に確実に噛合するようにしてある。尚、ローラーチェーン3の具体的構成、形状、寸法、材質、走行レール1への具体的固定手段、チェーン取付具4の具体的構成、形状、寸法、材質、配設位置、数、走行レール1への固定手段、ローラーチェーン3への固定手段等は、図示例等に限定されることなく適宜自由に設定できるものである。」(段落【0009】及び【0010】)

オ 上記エ及び図面の記載から分かること

l 上記エのjの記載から、刊行物2には、セグメント搬送装置に関する技術が記載されていることが分かる。

m 上記エのj及びk並びに図1ないし図6の記載から、セグメント搬送装置は、走行レール1であるH鋼材の下部の左右張出片部分上面を自走体5の走行車輪6が転動できるように構成され、走行レール1であるH鋼材の下部の左右張出片部分の下面に自走体5のスプロケット11が噛合するローラーチェーン3が張設していることが分かる。

カ 刊行物2に記載された技術
したがって、上記エ及びオを総合すると、刊行物2には次の技術(以下、「刊行物2に記載された技術」という。)が記載されていると認める。

「走行レール1であるH鋼材の下部の左右張出片部分上面を自走体5の走行車輪6が転動できるように構成され、走行レール1であるH鋼材の下部の左右張出片部分の下面に自走体5のスプロケット11が噛合するローラーチェーン3が張設したセグメント搬送装置。」

キ 刊行物3の記載事項
当審拒絶理由に引用された、本件出願の出願前に頒布された刊行物である実公昭48-030378号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

n 「 本案は天井又は梁等の建造物上部機構の下面aに、走行用レール12を懸吊型に定置し、車輪9を以つて該レール12に走行自在に吊下げた懸吊走行型サドル8に、主桁1の中間を取付け、該主桁1の両端は公知の車輪3を介して別設のランウエー6上に設けた縦行レール5上に載置走行する様にしたトツプランニング型ホイストクレーンに於ける耐重装置に係るもので、其の目的とする所は長スパンであり、比較的小サイズの主桁を持つて当該主桁自体としては比較的過大なる荷重にも耐えることが出来、比較的大重量の目的物を懸垂走行することも可能とするトツプランニング型ホイストクレーンを提供せんとするにある。」(第1欄17ないし29行)

o 「而して本案に於ては前記の如き構成を有し主桁の両端を縦行レール5に載置走行せしめる形式のものであり、主桁の中間を直接又は間接に天井又は梁等の上部機構に取付けたレール12に車輪9を介して吊下げるものであるから、主桁にかヽる荷重は中間支持を介して走行レールに分担支持されることヽなり主桁が長スパンであり、且つサイズは小形のものにても耐重性を存することヽなり、特に主桁のサイズ強度等を増大する必要なくコスト高をも抑制することが出来るもので効果大である。
殊に斯くの如く中間を懸垂支持する場合は中間を支持しないクレーンに比し、クレーンの自重が軽くなり、主桁の構成も簡易化することが出来るものでクレーンの価格を低廉価せしめることが出来、又同一の走行レールに二個以上のクレーンを取付ける必要のある場合の如きは特に重宝である尚図中4はホイスト、7は原動機、10は緩衝材11は駆動軸である。」(第2欄25行ないし第3欄5行)

ク 上記キ及び図面の記載から分かること

p 上記キのn並びに第1図及び第2図の記載から、刊行物3には、トツプランニング型ホイストクレーンに関する技術が記載されていることが分かる。

q 上記キのn並びに第1図及び第2図の記載から、トツプランニング型ホイストクレーンは、主桁1の両端を車輪3を介してランウエー6上に設けた縦行レール5上に載置走行することが分かる。

r 上記キのn及びo並びに第1図及び第2図(特に第1図)の記載から、トツプランニング型ホイストクレーンの車輪9は、走行用レール12の膨出部を抱持していることが看取できる。
したがって、トツプランニング型ホイストクレーンは、主桁1を天井から懸吊型に定着した走行用レール12の膨出部を抱持する車輪9を介して吊下げることが分かる。

ケ 刊行物3に記載された技術
したがって、上記キ及びクを総合すると、刊行物3には次の技術(以下、「刊行物3に記載された技術」という。)が記載されていると認める。

「主桁1の両端を車輪3を介してランウエー6上に設けた縦行レール5上に載置走行する様にし、主桁1を天井から懸吊型に定着した走行用レール12の膨出部を抱持する車輪9を介して吊下げるトツプランニング型ホイストクレーン。」

第4 対比・判断
本件発明と刊行物1に記載された発明を対比すると、刊行物1に記載された発明における「中央部を頂点として左右に傾斜している屋根2」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本件発明における「中央部が周辺部よりも高くなるように傾斜した屋根」に相当し、以下同様に、「下方に屋根2の形状にほぼ近似した傾斜を有する山形状」は「下方に沿う形状」に、「クレーンガーダ5」は「ガーダ」に、「と一体構造の」は「に配設された」に、「駆動部8」は「ガーダ走行部」に、「ランウエイ4」は「走行レール」に、「巻上機6」は「トロリ」に、「天井クレーン3」は「天井クレーン」に、それぞれ相当する。

ここで、刊行物1に記載された発明における「クレーンガーダ5であるH形鋼の斜辺5aの両側を走行車輪14、15が回転自在に支持し巻上機6が横行するように形成する」に関し、「クレーンガーダ5であるH形鋼の斜辺5aの両側」は、クレーンガーダ5の上端板の延出部の上面であることが理解でき、「巻上機6が横行するように形成」されている以上「クレーンガーダ5であるH形鋼の斜辺5aの両側」には横行レールが形成されていることが理解できる。
したがって、刊行物1に記載された発明における「クレーンガーダ5であるH形鋼の斜辺5aの両側を走行車輪14、15が回転自在に支持し巻上機6が横行するように形成する」は、本件発明における「ガーダの下端板をガーダの幅方向の両側に延出させて形成した延出部の上面をトロリが横行する横行レールに形成する」と、「ガーダの端板をガーダの幅方向の両側に延出させて形成した延出部の上面をトロリが横行する横行レールに形成する」という限りにおいて一致する。
さらに、刊行物1に記載された発明における「クレーンガーダ5の斜辺5aの上面に、ギヤードモータ11の歯車11bが噛合する歯部10(ラックまたはボールギヤ)が形成され」は、本件発明における「(ガーダの)下端板の下面にトロリの横行駆動用チェーンスプロケットが噛合するチェーンを敷設し」と、「(ガーダの)端板にトロリの駆動用部材が噛合する部材を設ける」という限りにおいて一致する。

また、刊行物1に記載された発明における「屋根2と内部側壁1aとが隣接する付近に設けられた」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本件発明における「屋根の周辺部の」に相当し、以下同様に、「支持部材7上」は「基礎から立設した支持構造物上」に、「載置」は「敷設」に、「上下に立ち上がった部分」は「ガーダ脚部」に、「走行車輪8bと8c」は「走行車輪」に、「が設けられた」は「を備えた」に、「一体に取り付けられた」は「を配設した」に、それぞれ相当する。
さらに、刊行物1に記載された発明における「クレーンガーダ5にクレーンガーダ5の周辺部の傾斜角度より大きな角度となるように接続した上下に立ち上がった部分を介して走行車輪8bと8cが設けられた駆動部8が一体に取り付けられた」は、本件発明における「ガーダに該ガーダの周辺部の傾斜角度より大きな傾斜角度となるように接続したガーダ脚部を介して走行車輪を備えたガーダ走行部を配設し」たと、「ガーダにガーダの周辺部の傾斜角度より大きな角度となるように接続したガーダ脚部を介して走行車輪を備えたガーダ走行部を配設した」という限りにおいて一致する。

したがって、本件発明と刊行物1に記載された発明は、
「 中央部が周辺部よりも高くなるように傾斜した屋根の下方に沿う形状に形成されたガーダと、ガーダに配設されたガーダ走行部と、ガーダ走行部を介してガーダが走行する走行レールと、ガーダに沿って横行するトロリとを備えてなる天井クレーンにおいて、ガーダの端板をガーダの幅方向の両側に延出させて形成した延出部の上面をトロリが横行する横行レールに形成するとともに、端板にトロリの駆動用部材が噛合する部材を設け、さらに、走行レールを屋根の周辺部の基礎から立設した支持構造物上に敷設するとともに、ガーダにガーダの周辺部の傾斜角度より大きな角度となるように接続したガーダ脚部を介して走行車輪を備えたガーダ走行部を配設した天井クレーン。」である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点1>
「ガーダの端板をガーダの幅方向の両側に延出させて形成した延出部の上面をトロリが横行する横行レールに形成する」ことに関し、本件発明においては、「ガーダの下端板をガーダの幅方向の両側に延出させて形成した延出部の上面をトロリが横行する横行レールに形成する」のに対し、刊行物1に記載された発明においては、「クレーンガーダ5であるH形鋼の斜辺5aの両側を走行車輪14、15が回転自在に支持し巻上機6が横行するように形成する」点(以下、「相違点1」という。)。

<相違点2>
「ガーダの板部にトロリの駆動用部材が噛合する部材を設ける」ことに関し、本件発明においては、「(ガーダの)下端板の下面にトロリの横行駆動用チェーンスプロケットが噛合するチェーンを敷設し」ているのに対し、刊行物1に記載された発明においては、「クレーンガーダ5の斜辺5aの上面に、ギヤードモータ11の歯車11bが噛合する歯部10(ラックまたはボールギヤ)が形成され」ている点(以下、「相違点2」という。)。

<相違点3>
「ガーダにガーダの周辺部の傾斜角度より大きな角度となるように接続したガーダ脚部を介して走行車輪を備えたガーダ走行部を配設した」ことに関し、本件発明においては、「ガーダにガーダの周辺部の傾斜角度より大きな傾斜角度となるように接続したガーダ脚部を介して走行車輪を備えたガーダ走行部を配設し」ているのに対して、刊行物1に記載された発明においては、「クレーンガーダ5にクレーンガーダ5の周辺部の傾斜角度より大きな角度となるような上下に立ち上がった部分を介して走行車輪8bと8cが設けられた駆動部8が一体に取り付けられ」ており、「上下に立ち上がった部分」が傾斜しているのか否か不明な点(以下、「相違点3」という。)。

<相違点4>
本件発明においては、「ガーダに屋根から吊り下げて配設したガーダの横転防止用の補助レールの膨出部を抱持する補助横転防止ローラを配設した」ものであるのに対して、刊行物1に記載された発明においては、このような構成を有しているのか否か不明な点(以下、「相違点4」という。)。

上記相違点について検討する。

<相違点1及び2について>
天井クレーンにおいて、巻上機の走行車輪を走行させる箇所をレールの上部の延出部とすること及びレールの下部の延出部とすることは共に本件出願前周知の技術(必要ならば、特開2005-132557号公報(以下、「刊行物4」という。)【0019】及び【0020】並びに【図3】等を参照。以下、「周知技術」という。)であるから、巻上機の走行車輪を走行させる箇所としてレールの上部の延出部を用いるか下部の延出部を用いるかは、当業者における単なる設計的事項にすぎない。
また、走行車輪を走行させる箇所に関して、刊行物2に記載された技術は、「走行レール1であるH鋼材の下部の左右張出片部分上面を自走体5の走行車輪6が転動できるように構成され」ているように、レールの下部の延出部を走行車輪を走行させる箇所として用いたものである。
そして、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された技術は、吊荷を吊り下げ搬送するものという共通の技術分野に属し、移動体が有する部材が噛合する形状が走行車輪を走行させるレールに形成されているという共通の構成を有するものであるから、刊行物1に記載された発明における「クレーンガーダ5であるH形鋼の斜辺5aの両側を走行車輪14、15が回転自在に支持」する構成を、刊行物2に記載された技術及び周知技術に基づき「クレーンガーダ5であるH形鋼」の下部の左右張出片部分の「両側を走行車輪14、15が回転自在に支持」する構成とするとともに、刊行物1に記載された発明における「クレーンガーダ5であるH形鋼の斜辺5aの上面に、ギヤードモータ11の歯車11bが噛合する歯部10(ラックまたはボールギヤ)が形成され」ている構成を刊行物2に記載された技術に基づき、「クレーンガーダ5であるH形鋼」の下部の左右張出片部分の下面にスプロケットが噛合するローラーチェーンが張設した構成として相違点1及び2に係る本件発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば、容易に想到できたことである。

<相違点3について>
刊行物1に記載された発明における、クレーンガーダ5の形状は、上記第3 アのa及びb(刊行物1第1欄37行-第2欄3行及び第4欄11ないし19行)を参酌すると、有効な荷受け容積を得るためのものである。
そうすると、刊行物1に記載された発明における「クレーンガーダ5に接続した上下に立ち上がった部分」の形状については、有効な荷受け容積を確保できる範囲において当業者が適宜設計すべきものであって、「クレーンガーダ5の周辺部の傾斜角度よりも大きな」傾斜「角度」とすることに困難性は見いだせない。
そして、刊行物1に記載された発明における「上下に立ち上がった部分」を「クレーンガーダ5の周辺部の傾斜角度よりも大きな」傾斜「角度」とし、相違点3に係る本件発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば、容易に想到できたことである。

<相違点4について>
下部に走行車輪を備え、高さを有する移動体の上部に設けられたレール及びガイド輪が転倒防止機能を有することは、技術常識であり(必要であれば、当審拒絶理由において例示した、特開2000-152833号公報[段落【0033】ないし【0039】並びに【図2】及び【図6】]等を参照。以下、「技術常識」という。)、刊行物3に記載された技術における「主桁1」はいくらかの高さを有した移動体であることから、「走行用レール12」及び「車輪9」が少なからず転倒防止機能を有することは明らかである。
仮に、刊行物3に記載された技術における「走行用レール12」及び「車輪9」が少なからず転倒防止機能を有することは明らかであると認識することができないとしても、高さを有する移動体は転倒しやすいことは明らかであるから、高さを有する移動体である刊行物1に記載された発明における「ガーダ」に、刊行物3に記載された技術における「走行用レール12」及び「車輪9」を付加することによって、「走行用レール12」及び「車輪9」は転倒防止機能を有することとなる。
そして、刊行物1に記載された発明と刊行物3に記載された技術は、ガーダの両端に設けられた車輪が建物の内壁に延設されたランウエイ上を走行する天井クレーンという共通の技術分野に属し、刊行物3に記載された技術における、主桁の耐重性を高めるという課題は刊行物1に記載された発明においても内包している課題であるから、刊行物1に記載された発明に刊行物3に記載された技術における「主桁1を天井から懸吊型に定着した走行用レール12の膨出部を抱持する車輪9を介して吊下げる」構成を付加して、相違点4に係る本件発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば、容易に想到できたことである。

なお、平成28年1月18日に提出された意見書(以下、「意見書」という。)において、審判請求人は「特開2000-152833号公報(刊行物5)に記載の技術は、上部レールに沿って移動棚を走行させることによって床面レールを不要にするためのものであって、本願発明や刊行物1及び3に記載された天井クレーンの技術にまで普遍化できる記載や示唆は存在しないものと思量いたします。」と主張している。
しかしながら、当審拒絶理由において、特開2000-152833号公報は技術常識の例証に用いたにすぎず、特開2000-152833号公報に記載の技術を刊行物1に記載された発明に適用することを意図したものではない。
また、意見書において審判請求人は「刊行物1に記載された発明に刊行物3に記載された発明における『主桁1を天井から懸吊型に定着した走行用レール12の膨出部を抱持する車輪9を介して吊下げる』構成を付加することは、刊行物1に記載された発明の天井クレーンの設置対象の特殊性(本願発明も同様)、すなわち、屋根の負荷が著しく増大し、建築構造物の強度計算を複雑にすることを考慮しますと、当業者が容易に想到できたこととは言い得ないものと思量いたします。」とも主張している。
しかしながら、刊行物1に記載された発明に刊行物3に記載された技術を適用した場合に、建築構造物の強度計算が仮に複雑になったとしても、主桁の耐重性を高めるという技術的利点が得られるものである。
加えて、刊行物1には建築構造物の強度計算を複雑にしないという課題は記載されていないことから、刊行物1に記載された発明に刊行物3に記載された技術を適用することに阻害要因があるとまではいえない。

そして、本件発明は、全体としてみても、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された技術、刊行物3に記載された技術及び周知技術並びに技術常識から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

したがって、本件発明は、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された技術、刊行物3に記載された技術及び周知技術並びに技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび

以上のとおり、本件発明は、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された技術、刊行物3に記載された技術及び周知技術並びに技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないので、本件出願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-04-21 
結審通知日 2016-04-27 
審決日 2016-05-10 
出願番号 特願2011-195988(P2011-195988)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B66C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邊 義之筑波 茂樹  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 梶本 直樹
槙原 進
発明の名称 天井クレーン  
代理人 森 治  
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