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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04J
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04J
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04J
管理番号 1316421
審判番号 不服2014-915  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-17 
確定日 2016-06-22 
事件の表示 特願2011- 62782「周波数分割多重化を利用する通信システムのパイロット送信およびチャネル推定」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月 8日出願公開,特開2011-176843〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2006年3月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2005年3月7日 米国,2005年7月5日 米国)を国際出願日とする出願である特願2008-500883号の一部を,平成23年3月22日に新たな特許出願としたものであって,平成25年9月6日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成26年1月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされ,同年10月27日付けで当審から拒絶理由の通知がなされ,平成27年4月28日付けで手続補正がなされ,同年7月13日付けで当審から最後の拒絶理由の通知がなされ,同年12月11日付けで手続補正がなされたものである。


第2 補正却下の決定
[結論]
平成27年12月11日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本願発明と補正後の発明
平成27年12月11日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,平成27年4月28日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「多相系列に基づいて第1の系列のパイロットシンボルを形成するように動作するプロセッサと,
前記第1の系列のパイロットシンボルを周波数ドメインに変換して第2の系列の周波数ドメインシンボルを取得し,パイロット送信に使用される各グループの周波数サブバンドにマッピングされる前記第2の系列の周波数ドメインシンボルによって第3の系列のシンボルを形成し,前記第3の系列のシンボルを時間ドメインに変換して,通信チャネルを介して送信する第4の系列の出力シンボルを取得するように動作する変調器と,を備える装置。」
という発明(以下,「本願発明」という。)を,
「多相系列に基づいて第1の系列のパイロットシンボルを形成するように動作するプロセッサと,ここにおいて,前記多相系列は,フラットまたは既知の周波数スペクトルおよび一定または既知の時間ドメインエンベロープを有し,
前記第1の系列のパイロットシンボルを周波数ドメインに変換して第2の系列の周波数ドメインシンボルを取得し,前記第2の系列の周波数ドメインシンボルをパイロット送信に使用される周波数サブバンドのグループにマッピングするとともに,ゼロシンボルを未使用の周波数サブバンドにマッピングすることによって第3の系列のシンボルを形成し,前記第3の系列のシンボルを時間ドメインに変換して,通信チャネルを介して送信する第4の系列の出力シンボルを取得するように動作する変調器と,
を備える装置。」
という発明(以下,「補正後の発明」という。)に変更するものである。
([当審注]:下線部は補正箇所を示す。)

2 補正の適否
(1)新規事項の有無,補正の目的要件
本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において,本願発明の「多相系列」について,「ここにおいて,前記多相系列は,フラットまたは既知の周波数スペクトルおよび一定または既知の時間ドメインエンベロープを有し」との限定を付して,特許請求の範囲を減縮するものである。
また,本件補正は,特許法第17条の2第3項違反及び同法第36条第6項第1号違反との最後の拒絶理由に対して,第3の系列のシンボルを形成するマッピングについて,本願発明の「パイロット送信に使用される各グループの周波数サブバンドにマッピングされる前記第2の系列の周波数ドメインシンボルによって第3の系列のシンボルを形成し,」を,「前記第2の系列の周波数ドメインシンボルをパイロット送信に使用される周波数サブバンドのグループにマッピングするとともに,ゼロシンボルを未使用の周波数サブバンドにマッピングすることによって第3の系列のシンボルを形成し,」と変更して,前記違反を解消するものである。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に適合することは明らかであり,また,同法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮,及び同第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(2)独立特許要件
本件補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否かについて,以下検討する。

ア 補正後の発明
補正後の発明は,上記「1 本願発明と補正後の発明」の項の「補正後の発明」のとおりのものと認める。

ここで,補正後の発明は,その記載からみて,LFDMAに関する発明と認められるところ,2005年3月7日を優先日とする優先権を主張する米国特許出願60/659526に係る優先権書類に記載されているものは,IFDMAに関する発明のみであり,LFDMAに関する発明は記載されていない。そして,LFDMAに関する発明は,2005年7月5日を優先日とする優先権を主張する米国特許出願11/175607に係る優先権書類に記載されている。したがって,補正後の発明についての2005年3月7日を優先日とする優先権主張は認められず,優先日は2005年7月5日となる。

イ 引用発明及び公知の技術事項等
[引用発明]
当審から通知した最後の拒絶理由に引用されたLG Electronics,PAPR comparison of uplink MA schemes([当審仮訳]:アップリンクMAスキームのPAPRの比較), [online],3GPP TSG RAN WG1 Meeting #41 R1-050475,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/wg1_rl1/TSGR1_41/Docs/R1-050475.zip>,2005年5月3日(媒体に表示された日付)(以下,「引用例」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「

」(1葉目?2葉目)
([当審仮訳]:
2.アップリンクMAスキームのPAPR/CM
このセクションでは,OFDMベースのアップリンク多元接続スキームの基本的な機能を簡単に再検討し,その後,PAPR及びCMのシミュレーション結果を示す。

2.1 検討されたMAスキーム
従来のOFDMA送信機の構造が図1に示される。変調されたNu個のデータシンボルは,S/P変換され,その後,Nc個の総サブキャリアの中から選択されたNu個のサブキャリアにマッピングされる。ここで,NuはUEに割り当てられたサブキャリアの数であり,Ncはアップリンクの全サブキャリアの数である。残りのNc-Nu個のサブキャリアをゼロ詰めした後,NcポイントIFFTが,時間ドメインの出力信号を生成するために実行される。図2に示すように,Nu個のデータシンボルから,Nc個のサブキャリアのうちのNu個のサブキャリアへのマッピングは,例えば(a)ランダム化された割り当て,(b)局在化された割り当て,又は(c)等間隔の割り当て といった,様々なマッピングが可能である。
(図1,図2は省略) )

(イ)「

」(2葉目)
([当審仮訳]:
DFT拡散OFDMA送信機の構造が図3に示される。OFDMAとの違いは,S/ P変換されたデータシンボルが,サブキャリアにマッピングされる前に,NuポイントDFT拡散されていることである。言い換えれば,各サブキャリアは重畳されたDFT拡散データシンボルの一部を運ぶ。DFT拡散OFDMAでも,図2に示されるOFDMAの場合と同様に,Nu個のデータシンボルから,Nc個のサブキャリアのうちのNu個のサブキャリアへの,様々なマッピングが可能である。図2(c)のような等間隔のサブキャリア割り当てのDFT拡散OFDMAの送信信号は,IFDMAのそれと同等であることは,注目に値する。
(図3は省略) )

上記(ア),(イ)の記載及び図面並びに当業者の技術常識を考慮すると,
a 上記(イ)の記載及び図3によれば,DFT拡散OFDMA送信機では,ビットストリームがコンステレーションマッピングされ,S/ P変換されたデータシンボルが,サブキャリアにマッピングされる前に,NuポイントFFT拡散されることが見て取れる。
ここで,上記(ア)の記載によれば,変調されたNu個のデータシンボルがS/ P変換されるのであるから,NuポイントFFT拡散は,Nu個の変調されたデータシンボルを周波数ドメインに変換してNu個の周波数ドメインのデータシンボルを取得するものであることは,技術常識に照らして自明である。

b 上記(ア),(イ)の記載及び図2,図3によれば,DFT拡散OFDMA送信機では,NuポイントFFT拡散の出力であるNu個の周波数ドメインのデータシンボルは,Nc個のサブキャリアのうちのNu個のサブキャリアへマッピングされ,Nc個のサブキャリアのうちの残りのNc-Nu個のサブキャリアはゼロ詰めされ,その後,NcポイントIFFTにより時間ドメインの出力信号に変換されると認められる。

以上を総合すると,引用例には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「Nu個の変調されたデータシンボルを周波数ドメインに変換してNu個の周波数ドメインのデータシンボルを取得し,前記Nu個の周波数ドメインのデータシンボルをNu個のサブキャリアにマッピングするとともに,Nc-Nu個のサブキャリアはゼロ詰めし,これをNcポイントIFFTにより時間ドメインの出力信号に変換する,DFT拡散OFDMA送信機。」

[公知の技術事項等]
同じく当審から通知した最後の拒絶理由に引用されたSamsung,Uplink Transmission and Multiplexing for EUTRA([当審仮訳]:EUTRAのためのアップリンク送信及び多重化), [online],3GPP TSG RAN WG1 Ad Hoc on LTE R1-050605,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/wg1_rl1/TSGR1_AH/LTE_AH_June-05/Docs/R1-050605.zip>,2005年6月16日(媒体に表示された日付)(以下,「公知例」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(ウ)「

」(1ページ)
([当審仮訳]:
2 局在化されたFDMAと分散化されたFDMAの多重化
局在化されたFDMAと分散化されたFDMAの双方において,低PAPRのために,送信される信号はIFFT演算の前にFFTプリコードされる。対象データを運ぶサブキャリアは,FFTからIFFTへのマッピングにより決定される。LFDMA(局在化されたFDMA)では,対象データは連続するサブキャリア(周波数ドメインスケジューリング)で送信されるが,一方,DFDMA(分散化されたFDMA)では,対象データは均等に散在するサブキャリア(周波数ダイバーシチ)で送信される。)

(エ)「

(中略)

(中略)

」(2?3ページ)
([当審仮訳]:
図1に示すように,データに依存するシグナリング情報(例えば,HARQ及びAMC情報)は,データシンボルと共に,FFT入力で多重化されることができる。FFT入力での多重化は,低いPAPRと低H/W複雑性をもたらす。
(中略)
(図1は省略)

異なるアップリンク物理チャネルの多重化が図2に示される。アップリンクデータのためのHARQ及びAMC情報は,データシンボルと共に,FFT入力で多重化される。アップリンクパイロットはFFT入力でデータと時間多重化される。典型的には,パイロットに値する単一OFDMシンボルが必要とされる。
(中略)
(図2は省略) )

上記(ウ),(エ)の記載及び図1,2並びに当業者の技術常識を考慮すると,データとアップリンクパイロットがFFT入力でFFT block duration単位で時間多重化されることが見て取れる。
そして,図2によれば,データがFFT block duration7個分連続して送信された後に,パイロットがFFT block duration1個分送信されることが見て取れる。ここで,FFTプリコードの後,サブキャリアにマッピングされてIFFT演算されるのであるから,FFT block duration単位が出力のOFDMシンボル単位に相当することは明らかである。
したがって,「IFFT演算の前にFFTプリコードされるものにおいて,データとパイロットとがFFT入力で所定の割合で時間多重化されること。」は,公知であると認められる。

同じく当審から通知した最後の拒絶理由に引用された米国特許出願公開第2004/0047284号明細書(以下,「周知例1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(オ)「[0070] Pilot sequences with constant magnitude spectrum, i.e.,
|S_(pilot)(e^(jw))|^(2)=K,
[0071] are desirable, because this condition reduces noise emphasis (within certain frequency bands) in the estimation process. Examples of sequences having constant magnitude spectrum properties (or, equivalently, "perfect" circular autocorrelation properties) may be found, for example, within a trio of references including: "Phase Shift Codes with Good Periodic Correlation Properties" by R. L Frank and S. A. Zadoff, IRE Trans. Information Theory, October, 1962, pp. 381-382; "Polyphase Codes with Good Periodic Correlation Properties" by D. C. Chu, IEEE Trans. Information Theory, July, 1972, pp. 531-532; and "Periodic Sequences With Optimal Properties for Channel Estimation and Fast Start-up Equalization" by A. Milewski, IBM J. Res. And Development, September 1983, pp. 426-431. Each of these references is hereby incorporated herein in its entirety. 」(5ページ右欄?6ページ左欄)
([当審仮訳]:
[0070] 一定の大きさのスペクトラムを有するパイロット系列,すなわち,
|S_(pilot)(e^(jw))|^(2)=K,
[0071] が,この状態は推定処理において(ある周波数バンド内の)ノイズ強調を減じるので,望ましい。一定の大きさのスペクトラム特性(又は,同等に,「完全な」円形の自己相関特性)を有する系列の例は,例えば,以下の3つ文献(文献名は省略)に見ることができる。これらの参考文献の各々は,その全体が本明細書に組み込まれる。)

同じく当審から通知した最後の拒絶理由に引用された特開2004-253899号公報(以下,「周知例2」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(カ)「【請求項5】
前記第1のパイロット信号が,CAZAC(Constant Amplitude Zero Auto-Correlation)系列の信号から構成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の送信機。」(2ページ)

(キ)「【0013】
なお,図10に示すシミュレーションにおいては,SC-FDEによる受信を行う場合,そのフレーム構成は,図3(a)に示すように,パイロット信号となるUW(Unique Word :以下,ユニークワードとする)とデータとから構成すると共に,ユニークワードは64チップのCAZAC(Constant Amplitude Zero Auto-Correlation)系列の信号とし,ユニークワード部分とデータ部のそれぞれの先頭には16チップのCP(Cyclic Prefix :以下,サイクリックプリフィックスとする)を挿入する構成とした。また,Rake受信を行う場合,そのフレーム構成は,図3(b)に示すように,パイロット信号とデータとから構成すると共に,パイロット信号は96チップすべてをデータ「1」のBPSK信号とした。 」(5?6ページ)

(ク)「【0042】
ここで,ユニークワードには,例えば,CAZAC(Constant Amplitude Zero Auto-Correlation)系列の信号が使用される。代表的なCAZAC系列の信号には,Chu系列やFrank-Zadoff系列の信号があり,これらの信号は,周波数領域において振幅スペクトルが一定であるという性質を持っている。 」(10ページ)

同じく当審から通知した最後の拒絶理由に引用された特表2003-536291号公報(以下,「周知例3」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(ケ)「【0040】
図3には,1つのフレームの第1のOFDMシンボル内のパイロットの配置が示されている。この場合横軸方向の数字は,OFDMシンボルの種々異なる搬送波を表わしている。符号38は,チャネル推定のために設けられたパイロットを表わしている。符号39は,本発明により第1のシンボルに加算されたパイロットを表わしており,これらはパイロット対もしくはパイロットトリプルを形成するために加えられたものである。これらの付加的なパイロットは,ここではチャネル推定の改善のためにも利用される。これはコヒーレントな復調に必要とされる。
【0041】
パイロット対の配置構成は最初は任意に行われる。この場合は,パイロット対(それらに対してシーケンスが変調される)の数が多ければ多いほど良好なフレーム同期化につながる。これらのパイロットの間には有効情報が存在し,それらはフレーム同期化に利用される第1のシンボル内においても伝送される。非常に良好な相関特性を有する様々な既知のシーケンス(例えばCAZACシーケンス,Milewski-シーケンス,Frank-シーケンス,Lemple-シーケンス,差分量シーケンス“Differenzmengenfolgen”,平方剰余シーケンスなど)毎に異なるメリット係数Λが算出される。その場合,位相状態の少ない10,14及び18のシーケンス長のシーケンスに対しては良好なメリット係数は算出できない。いずれにせよ16のパイロット対を有するシーケンス,Frank-シーケンスは,特に高いメリット係数を有し,それ故に特に堅固である。この場合は4つの位相状態,すなわちQPSKが用いられている。 」(14ページ)

上記(オ)?(ケ)の記載並びに当業者の技術常識を考慮すると,「パイロットシンボルをCAZAC系列(Chu系列,Frank-Zadoff系列等)などの系列から形成すること。」は周知であると認められる(以下,「周知事項1」という。)。

同じく当審から通知した最後の拒絶理由に引用された国際公開第99/63691号(以下,「周知例4」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(コ)「図5は,実施の形態1のOFDMA信号伝送装置におけるサブキャリア割り当ての第2の例を示すサブキャリア割当図を示し,16本のサブキャリアを4ユーザ(A,B,C,D)で分割して使用する場合の例である。
また,例えば16本のサブキャリアがある場合は,各ユーザに4本ずつサブキャリアを割り当てるとすると,4ユーザが収容できる。ここで,図5に示すように,ユーザA送信データを4の余剰が0となるサブキャリアに割り当て,ユーザB送信データを4の余剰が1となるサブキャリアに,ユーザC送信データを4の余剰が2となるサブキャリアに,ユーザD送信データを4の余剰が3となるサブキャリアに割り当てると,ユーザAのみが通信しているときには,4の余剰が0となるサブキャリアしか存在しない。」(7ページ17?26行)


(サ)「(実施の形態5)
図10は,本発明の実施の形態5に係るOFDMA信号伝送装置における送信部に構成を示すブロック図である。
本実施の形態5の特徴は,移動局毎にサブキャリアを連続して割り当てることで,受信側で移動局毎に異なるFFTによって復調できるようにして,FFTの総演算量を削減するとともに,移動局毎に異なるAFCを施せるようにして,性能を向上させるようにした点にある。
図10に示す送信部400は,例えば移動局に用いられるものであり,送信データが入力されるS/P変換器401と,IFFT器402と,P/S変換器403と,D/A変換・直交変調器404と,送信アンプ405と,送信アンテナ406とから主に構成される。
図11は,実施の形態5のOFDMA信号伝送装置におけるサブキャリア割り当ての例を示すサブキャリア割当図を示す。
(中略)
このような構成において,図10に示す送信部400は,例えば移動局であるユーザAの送信部分であるとする。(中略)
ユーザB,C,Dも同様の送信を行うことで,図11に示すように,各ユーザ毎に帯域が分かれた信号が放射される。 」(16ページ4?16行,24?25行,17ページ6?7行)


同じく当審から通知した最後の拒絶理由に引用された特表2004-529524号公報(以下,「周知例5」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(シ)「【0023】
図1Aは,サブキャリア101のような複数のサブキャリアとクラスタ102を示している。クラスタ102のようなクラスタは,図1Aに示すように,少なくとも1つの物理的サブキャリアを保有している論理ユニットとして定義される。クラスタは,連続した又はばらばらのサブキャリアを保有することができる。クラスタとそのサブキャリアの間のマッピングは,固定されていても再構成可能であってもよい。後者の場合,基地局は,加入者に何時クラスタが再定義されるかを通知する。或る実施形態では,周波数スペクトルは512個のサブキャリアを含んでいて,各クラスタは4個の連続したサブキャリアを含んでおり,結果的に128個のクラスタとなる。」(8?9ページ)


上記(コ)?(シ)の記載及び図面並びに当業者の技術常識を考慮すると,OFDMAにおいて,サブキャリアを予めグループ化し,グループ単位にサブキャリア割り当てを行うことが見て取れる。そして,OFDMAにおいて,IFFTを行うためにデータをサブキャリアにマッピングする際には,割り当てられたサブキャリアにマッピングすることは当然である。したがって,「OFDMAにおいて,サブキャリアにマッピングする際に,予め定められたサブキャリアのグループ毎にマッピングすること。」は周知であると認められる(以下,「周知事項2」という。)。

ウ 対比・判断
補正後の発明と引用発明とを対比すると,
(ア)引用発明の「Nu個の変調されたデータシンボル」は明らかに「系列」であるといえ,周波数ドメインに変換される情報シンボルである点で,補正後の発明の「第1の系列のパイロットシンボル」に対応している。そして,引用発明の「Nu個の周波数ドメインのデータシンボル」は,周波数ドメインに変換された周波数ドメインシンボルである点で,補正後の発明の「第2の系列の周波数ドメインシンボル」に対応している。

(イ)本願明細書の【0003】によれば,補正後の発明の「周波数サブバンド」と引用発明の「サブキャリア」とは,表記が異なるのみであって,実質的な差異は無い。
そして,引用発明において,Nc個のサブキャリアのうちのNu個のサブキャリアにマッピングされるのは周波数ドメインのデータシンボルであることに鑑みれば,Nc個のサブキャリアのうちのNc-Nu個のサブキャリアにゼロ詰めされることを,「ゼロシンボルを周波数サブバンドにマッピングする」と称することは任意である。
また,引用発明のNu個の周波数ドメインのデータシンボルがマッピングされるNu個のサブキャリアは,情報の送信に使用されるものであることは明らかである。一方,引用発明のゼロ詰めされるNc-Nu個のサブキャリアは,「未使用の周波数サブバンド」といえる。

(ウ)引用発明のNcポイントIFFTにより時間ドメインに変換された「出力信号」は,サブハンド(サブキャリア)にマッピング後に時間ドメインに変換されて取得されたものである点で,補正後の発明の「第4の系列の出力シンボル」に対応している。

(エ)引用発明において,周波数ドメインに変換する前の系列を「第1の系列」,周波数ドメインに変換した後に周波数ドメインの系列を「第2の系列」,サブハンド(サブキャリア)にマッピングすることにより生成される系列を「第3の系列」,IFFTにより時間ドメインに変換して得られる系列を「第4の系列」と称することは任意である。

(オ)引用発明の「DFT拡散OFDMA送信機」は,「装置」に他ならない。そして,引用発明において,各処理を行う手段を総じて「変調器」と称することは任意である。

以上を総合すると,補正後の発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違している。
(一致点)
「第1の系列の情報シンボルを周波数ドメインに変換して第2の系列の周波数ドメインシンボルを取得し,前記第2の系列の周波数ドメインシンボルを情報の送信に使用される周波数サブバンドにマッピングするとともに,ゼロシンボルを未使用の周波数サブバンドにマッピングすることによって第3の系列のシンボルを形成し,前記第3の系列のシンボルを時間ドメインに変換して,第4の系列の出力シンボルを取得するように動作する変調器と,
を備える装置。」

(相違点1)
一致点の「情報シンボル」,「情報の送信に使用される周波数サブバンド」に関し,補正後の発明はそれぞれ「パイロットシンボル」,「パイロット送信に使用される周波数サブバンド」であり,補正後の発明は当該「パイロットシンボル」を形成するための「多相系列に基づいて第1の系列のパイロットシンボルを形成するように動作するプロセッサと,ここにおいて,前記多相系列は,フラットまたは既知の周波数スペクトルおよび一定または既知の時間ドメインエンベロープを有し,」なる構成をさらに有しているのに対し,引用発明はパイロットの送信について明らかでない点。

(相違点2)
一致点の「情報の送信に使用される周波数サブバンドにマッピングする」に関し,上記相違点1の他,補正後の発明は,「パイロット送信に使用される周波数サブバンドのグループにマッピングする」のに対し,引用発明は周波数サブバンドの「グループ」の構成を有していない点。

(相違点3)
一致点の「第4の系列の出力シンボル」に関し,補正後の発明は「通信チャネルを介して送信する」ものであるのに対し,引用発明は当該事項が明らかにされていない点。

以下,上記各相違点について検討する。
(相違点1について)
引用例は3GPPにおける提案文書であり,3Gシステムではデータのみならずパイロット信号が送信されることは技術常識である。そして,PAPRを改善することに関して入力信号がデータ信号であるかパイロット信号であるかを区別する理由は見当たらず,上記イの[公知の技術事項等]の項のとおり「IFFT演算の前にFFTプリコードされるものにおいて,データとパイロットとがFFT入力で所定の割合で時間多重化されること。」も公知である。してみると,引用発明において,パイロット信号が送信される際には「データシンボル」を「パイロットシンボル」とすることは,当然に予定されていると解するのが自然であるし,そうでないとしても,パイロット信号が送信される際に引用発明の「データシンボル」を「パイロットシンボル」とすることは容易になし得ることである。

また,上記イの[公知の技術事項等]の項にて周知事項1として認定したとおり,「パイロットシンボルをCAZAC系列(Chu系列,Frank-Zadoff系列等)などの系列から形成すること。」は周知であり,これらの系列は明らかに「多相系列」といえる。したがって,「多相系列に基づいて第1の系列のパイロットシンボルを形成するように動作するプロセッサ」を備えるようにすることは,引用発明の「データシンボル」を「パイロットシンボル」とすることに伴い,自ずと導出されることにすぎない。

ここで,CAZAC系列(constant amplitude zero auto-correlation sequence)は,その名のとおり,定振幅零自己相関の系列であり,Chu系列,Frank-Zadoff系列,Chu-Zardoff系列等とも呼ばれていることは技術常識である。そして,周知例1(上記イ(オ)参照。)にも記載されているように,これらの系列は一定の大きさのスペクトラム特性を有するものである。また,周知例3ではFrank-シーケンスも例示されているところ,本願明細書の【0043】?【0049】において「フラットまたは既知の周波数スペクトルおよび一定または既知の時間ドメインエンベロープを有」する「多相系列」として例示されているものは,「Chu系列」や「Frank系列」等である。してみると,周知事項1に係るCAZAC系列などの系列も,「フラットまたは既知の周波数スペクトルおよび一定または既知の時間ドメインエンベロープ」を有しているといえることは明らかである。したがって,補正後の発明の「ここにおいて,前記多相系列は,フラットまたは既知の周波数スペクトルおよび一定または既知の時間ドメインエンベロープを有し,」なる限定は,何ら格別な技術的特徴を有するものではなく,引用発明の「データシンボル」を「パイロットシンボル」とすることに伴い,自ずと導出されることにすぎない。

(相違点2について)
引用例(上記イ(ア),図2参照。)には「局在化された割り当て」や「等間隔の割り当て」について言及されているから,引用発明が「局在化された割り当て」や「等間隔の割り当て」への適用も予定していることは明らかである。また,公知例(上記イ(ウ)参照。)にも「LFDMA(局在化されたFDMA)」や「DFDMA(分散化されたFDMA)」について言及されているから,前記公知技術も「LFDMA(局在化されたFDMA)」や「DFDMA(分散化されたFDMA)」への適用も予定していることは明らかである。そして,上記イの[公知の技術事項等]の項にて周知事項2として認定したとおり,「OFDMAにおいて,サブキャリアにマッピングする際に,予め定められたサブキャリアのグループ毎にマッピングすること。」は周知であるから,引用発明において,局在化された割り当てに係るサブキャリア群を,予め定められたサブキャリアのグループとすることは,格別困難なことではない。したがって,引用発明においてマッピングを「パイロット送信に使用される周波数サブバンドのグループにマッピング」とすることは,引用発明の「情報シンボル」を「パイロットシンボル」とすることに伴い適宜なし得ることに過ぎない。

(相違点3について)
引用例は3GPPにおける提案文書であり,その図3によれば,NcポイントIFFTにより時間ドメインに変換されて得た出力信号は,その後サイクリックプリフィクスの付加等の処理をして通信チャネルを介して送信されることは,当業者に明らかである。したがって,相違点3には実質的な差異は無い。

そして,補正後の発明の作用効果も,引用発明及び公知の技術事項等に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。

以上のとおり,補正後の発明は,引用発明及び公知の技術事項等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 結語
したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成27年12月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願発明は,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「1 本願発明と補正後の発明」の項の「本願発明」のとおりのものと認める。

ここで,本願発明は,その記載からみて,LFDMAに関する発明と認められるところ,2005年3月7日を優先日とする優先権を主張する米国特許出願60/659526に係る優先権書類に記載されているものは,IFDMAに関する発明のみであり,LFDMAに関する発明は記載されていない。そして,LFDMAに関する発明は,2005年7月5日を優先日とする優先権を主張する米国特許出願11/175607に係る優先権書類に記載されている。したがって,本願発明についての2005年3月7日を優先日とする優先権主張は認められず,優先日は2005年7月5日となる。

2 新規事項,サポート要件について
平成27年7月13日付けで当審から通知した最後の拒絶理由の「[理由1,2について]」にて述べたように,本願発明の「パイロット送信に使用される各グループの周波数サブバンドにマッピングされる前記第2の系列の周波数ドメインシンボルによって第3の系列のシンボルを形成し」の構成によれば,第2の系列の周波数ドメインシンボルが図3のサブバンドグループ1?サブバンドグループSの各々の周波数サブバンド全てにマッピングされることを含むと解される。
しかしながら,当該補正の根拠は明らかにされておらず,外国語書面の翻訳文に記載されているものは,【0027】のとおり,「周波数ドメインシンボルは,送信に使用されるN個のサブバンドにマッピングされ,K-N個のゼロシンボルは残りのK-N個のサブバンドにマッピングされて,1系列のK個のシンボルを生成する(ブロック414)。」ものである。そして,上述の内容は記載も示唆もされていなく,自明でもない。このため,当該補正は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。
同様の理由で,本願発明は,発明の詳細な説明に記載されたものではない。

3 進歩性について
本願発明と引用発明とを対比するに,本願発明は補正後の発明から当該補正に係る多相系列についての限定を省き,第3の系列のシンボルを形成するための周波数サブバンドへのマッピングに係る構成を「パイロット送信に使用される各グループの周波数サブバンドにマッピングされる前記第2の系列の周波数ドメインシンボルによって第3の系列のシンボルを形成し」なる構成とするものである。

そして,上記構成を別とすれば,本願発明の構成に補正に係る限定を付加した補正後の発明が,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「ウ 対比・判断」の項で検討したとおり,引用発明及び公知の技術事項等に基づいて容易に発明できたものである。
次に,「パイロット送信に使用される各グループの周波数サブバンドにマッピングされる前記第2の系列の周波数ドメインシンボルによって第3の系列のシンボルを形成し」なる構成について検討すると,引用例は3GPPの提案文書であるところ,3Gシステムでは,ユーザに割り当てるサブキャリア群(リソースブロック)の数は可変であり,また,使用するサブキャリア群(リソースブロック)をホッピングさせることも普通に行われていることに鑑みれば,実際に信号の送信に使用されるサブキャリア群(すなわち,使用される各グループの周波数サブバンド)に周波数ドメインのシンボルをマッピングすることは格別困難なことではない。
してみると,本願発明も,引用発明及び公知の技術事項等に基づいて容易に発明できたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第17条の2第3項,同法第36条第6項第1号,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-01-19 
結審通知日 2016-01-26 
審決日 2016-02-10 
出願番号 特願2011-62782(P2011-62782)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H04J)
P 1 8・ 575- WZ (H04J)
P 1 8・ 55- WZ (H04J)
P 1 8・ 121- WZ (H04J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 洋  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 菅原 道晴
山本 章裕
発明の名称 周波数分割多重化を利用する通信システムのパイロット送信およびチャネル推定  
代理人 堀内 美保子  
代理人 佐藤 立志  
代理人 福原 淑弘  
代理人 河野 直樹  
代理人 峰 隆司  
代理人 野河 信久  
代理人 砂川 克  
代理人 井上 正  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 井関 守三  
代理人 岡田 貴志  
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