• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
管理番号 1316566
審判番号 不服2014-9321  
総通号数 200 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-20 
確定日 2016-06-28 
事件の表示 特願2010-507666「ポータブルデバイスの誘導充電システムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年11月13日国際公開、WO2008/137996、平成22年 8月 5日国内公表、特表2010-527226〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2008年5月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2007年5月8日、米国:2007年7月30日、米国:2007年12月12日、米国:2007年12月12日、米国:2007年12月20日、米国:2008年4月7日、米国:2008年5月7日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年1月7日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成26年1月20日)、これに対し、平成26年5月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出され、当審により平成27年3月3日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成27年3月9日)、これに対し、平成27年9月9日付で意見書及び手続補正書が提出されたものである。


2.本願発明
本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年9月9日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「誘導で電力が供給され又は充電されるシステムであって、
平坦または曲線状の表面を有するレシーバコイルを含むレシーバユニットであって、前記レシーバユニットは、ポータブルデバイス又はバッテリ、前記ポータブルデバイス又はバッテリのケースまたは外板、または前記ポータブルデバイス又はバッテリとともに使用される他のアクセサリに結合されまたは組み込まれ、前記レシーバユニットは、前記レシーバコイルの前記平坦または曲線状の表面と垂直な方向の誘導場を介して、ベースユニットからエネルギを受け取る機能を有し、前記ポータブルデバイス又はバッテリの電力供給又は充電に前記エネルギを使用する、レシーバユニットと、
前記レシーバユニットに結合されたレギュレータ回路であって、所定の電圧値又は電流値、または前記ポータブルデバイス又はバッテリの適切な電力パラメータの範囲内になるように、前記レシーバコイルからの電流、または前記レシーバユニットの出力電圧又は出力電流を制御する、レギュレータ回路と、を備える、システム。」


3.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された、特開2006-246633号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

a「少なくとも1個の受電装置と、前記受電装置に電力を供給する電力供給装置とからなる電力供給システムにおいて、
前記電力供給装置は、
前記受電装置に対して電磁誘導により電力を供給する複数の電力供給手段と、
複数の前記電力供給手段のうちの、前記受電装置が載せられた位置に対応する複数の電力供給手段を選択する選択手段と、
前記受電装置から無線で送信されてくる、電力の供給を制御するための制御情報を受信する受信手段と、
前記制御情報に基づいて、選択された複数の前記電力供給手段により前記受電装置へ電力を供給するように制御する制御手段と
を備え、
前記受電装置は、
選択された複数の前記電力供給手段から前記電磁誘導により電力の供給をうける1つの受電手段と、
選択された前記電力供給手段から前記電磁誘導により電力の供給をうけた場合、前記制御情報を無線で送信する送信手段と
を備える
ことを特徴とする電力供給システム。」(【請求項1】)

b「本発明の電力供給システムは、電力供給装置が、受電装置に対して電磁誘導により電力を供給する複数の電力供給手段と、複数の電力供給手段のうちの、受電装置が載せられた位置に対応する複数の電力供給手段を選択する選択手段と、受電装置から無線で送信されてくる、電力の供給を制御するための制御情報を受信する受信手段と、制御情報に基づいて、選択された複数の電力供給手段により受電装置へ電力を供給するように制御する制御手段とを備え、受電装置が、選択された複数の電力供給手段から電磁誘導により電力の供給をうける1つの受電手段と、選択された電力供給手段から電磁誘導により電力の供給をうけた場合、制御情報を無線で送信する送信手段とを備えることを特徴とする。」(【0008】)

c「このシステムは、電力供給装置1と受電装置2とで構成される。電力供給装置1の表面には、電磁波を透過させる材質のシートで形成される設置面1aが設けられている。電力供給装置1は、この設置面1aに、受電装置2が載せられた場合、受電装置2に無線で、必要な電力を供給する。すなわち、電力供給装置1は、電力供給用の配線無しで、受電装置2に電力を供給する。
受電装置2は、例えば、ノート型パーソナルコンピュータ、PDA、携帯電話機、もしくはPHS(Personal Handyphone System)などの機器、または各種機器から取り外すことが可能なバッテリである。」(【0034】-【0035】)

d「図4は、受電装置2の構成の例を示すブロック図である。受電装置2は、受電部21、メモリ121、リアルタイムクロック122、およびバッテリ123により構成される。
受電部21は、受電アンテナ101、整流器102、受電制御部103、端子104、端子105、スイッチ106、および通信部107から構成される。
受電アンテナ101には、上述した電力供給部11の電力供給アンテナ52に電流が流れることにより発生した磁界によって、交流電流が流れる。すなわち、受電アンテナ101は、電力供給アンテナ52が発生した磁界による電磁誘導により電流が流れるコイルである。」(【0052】-【0054】)

e「受電アンテナ101に流れる電流は整流器102に供給される。整流器102は、受電アンテナ101から流れる交流電流を整流し、直流電流を生成する。整流器102は、生成した直流電流を受電制御部103に動作電源として供給する。また、整流器102は、端子104、端子105、およびスイッチ106を介して、バッテリ123に電流を流し、バッテリ123を充電させる。」(【0056】)

上記記載及び図面を参照すると、平坦な表面を有する受電アンテナを含む受電部は機器又はバッテリに組み込まれており、機器又はバッテリは電力供給装置に載せられた場合、受電アンテナの平坦な表面と垂直な方向の磁界を介して、電力供給装置から電力を供給される。

上記記載事項からみて、引用例1には、
「電磁誘導で電力が供給され又は充電される電力供給システムであって、
平坦な表面を有する受電アンテナを含む受電部であって、前記受電部は、機器又はバッテリに組み込まれ、前記受電部は、前記受電アンテナの平坦な表面と垂直な方向の磁界を介して、電力供給装置から電力を供給され、前記機器又はバッテリの動作電源として供給又は充電される、受電部、を備える、電力供給システム。」
との発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。


4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「電磁誘導」、「電力供給システム」、「受電アンテナ」、「受電部」、「機器又はバッテリ」、「磁界」は、それぞれ本願発明の「誘導」、「システム」、「レシーバコイル」、「レシーバユニット」、「ポータブルデバイス又はバッテリ」、「誘導場」に相当する。
引用発明の「電力供給装置から電力を供給され」は、本願発明の「ベースユニットからエネルギを受け取る機能を有し」に相当する。
引用発明の「動作電源として供給又は充電される」は、本願発明の「電力供給又は充電に前記エネルギを使用する」に相当する。

本願発明の「又は」、「または」は、「又は」、「または」の前後に記載された事項のうち何れか一方を充足すればよいので、引用発明の「平坦な表面」は、本願発明の「平坦または曲線状の表面」に相当し、引用発明の「組み込まれ」は、本願発明の「結合されまたは組み込まれ」に相当する。
本願発明の「ポータブルデバイス又はバッテリ、前記ポータブルデバイス又はバッテリのケースまたは外板、または前記ポータブルデバイス又はバッテリとともに使用される他のアクセサリ」は、「ポータブルデバイス又はバッテリ」であるか、「前記ポータブルデバイス又はバッテリのケースまたは外板」であるか、「前記ポータブルデバイス又はバッテリとともに使用される他のアクセサリ」であるかの何れか1つであれば良いから、引用発明の「機器又はバッテリ」は、本願発明の「ポータブルデバイス又はバッテリ、前記ポータブルデバイス又はバッテリのケースまたは外板、または前記ポータブルデバイス又はバッテリとともに使用される他のアクセサリ」に相当する。

したがって、両者は、
「誘導で電力が供給され又は充電されるシステムであって、
平坦または曲線状の表面を有するレシーバコイルを含むレシーバユニットであって、前記レシーバユニットは、ポータブルデバイス又はバッテリ、前記ポータブルデバイス又はバッテリのケースまたは外板、または前記ポータブルデバイス又はバッテリとともに使用される他のアクセサリに結合されまたは組み込まれ、前記レシーバユニットは、前記レシーバコイルの前記平坦または曲線状の表面と垂直な方向の誘導場を介して、ベースユニットからエネルギを受け取る機能を有し、前記ポータブルデバイス又はバッテリの電力供給又は充電に前記エネルギを使用する、レシーバユニット、を備える、システム。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点〕
本願発明は、レシーバユニットに結合されたレギュレータ回路であって、所定の電圧値又は電流値、または前記ポータブルデバイス又はバッテリの適切な電力パラメータの範囲内になるように、レシーバコイルからの電流、または前記レシーバユニットの出力電圧又は出力電流を制御する、レギュレータ回路を備えるのに対し、引用発明は、レシーバコイルからの電流、またはレシーバユニットの出力電圧又は出力電流に対し、この様な限定がなされていない点。


5.判断
電気回路において、当該回路内の電圧・電流が安定するようにレギュレータ回路を用いて所定の値に制御することは周知の事項であり、また、誘導で電力が供給されるシステムにおいて、レシーバユニットにおける電圧・電流が安定するようにレギュレータ回路を用いて所定の値に制御することも周知の事項(必要があれば、特開2006-314181号公報【図9】、特開2006-141170号公報【図2】、特開2005-245078号公報【図7】等参照。)である。
また、本願発明の、「又は」、「または」は、「又は」、「または」の前後に記載された事項のうち何れか一方を充足すればよい。
そうであれば、引用発明においても、レシーバユニットにおける電圧・電流が安定するようにレギュレータ回路を結合して、所定の電圧値又は電流値、またはポータブルデバイス又はバッテリの適切な電力パラメータの範囲内になるように、レシーバコイルからの電流、または前記レシーバユニットの出力電圧又は出力電流を制御することは、当業者が容易に考えられることと認められる。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。


6.むすび
したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、他の請求項を検討するまでもなく、本願を拒絶すべきであるとした原査定は妥当である。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-01-29 
結審通知日 2016-02-01 
審決日 2016-02-17 
出願番号 特願2010-507666(P2010-507666)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 智康  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 矢島 伸一
堀川 一郎
発明の名称 ポータブルデバイスの誘導充電システムおよび方法  
代理人 西島 孝喜  
代理人 上杉 浩  
代理人 須田 洋之  
代理人 大塚 文昭  
代理人 岩崎 吉信  
代理人 熊倉 禎男  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ